JP2011027018A - エンジン制御装置 - Google Patents

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工三 加藤木
Hiroaki Hoshika
浩昭 星加
Takanobu Ichihara
隆信 市原
Kazuhiko Kanetoshi
和彦 兼利
Seiji Asano
誠二 浅野
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Abstract

【課題】エンジン始動後に燃焼安定度を許容範囲に保ちつつ排気ガス温度を速やかに上昇させて触媒の早期活性化を図ることのできるエンジン制御を提供する。
【解決手段】排気ガス温度及び/又は触媒温度を検出ないし推定するとともに、エンジンの運転状態に基づき、前記排気ガス温度及び/又は触媒の目標温度を設定し、前記温度検出手段により検出ないし推定された現在温度と前記目標温度とに基づき、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータ(点火時期、燃料噴射量、排気弁開時期)を変化させる冷機始動用燃焼制御を行なう。燃焼安定度が許容範囲内である場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、燃焼安定度が許容範囲外である場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させる。
【選択図】図6

Description

本発明は、車載用エンジンに好適な制御装置に係り、特に、冷機始動後において燃焼安定性をさほど低下させることなく触媒を速やかに昇温させてその早期活性化を図ることのできるエンジン制御装置に関する。
近年、自動車を取り巻く環境は、排気ガスレベル(排気エミッション特性)と燃費の向上が必須となっている。車載用ガソリンエンジンは、排気ガスに含まれる規制物質、HC、CO、NOx等は主に排気通路に設けられた三元触媒によって浄化処理されている。
三元触媒の処理効率は触媒温度に依存し、特に、常温(冷却水温≒25℃)でエンジンを始動した場合、触媒が排気ガスによって加熱されて触媒温度が所定の温度(以下、活性化温度と称することがある)に達するまでの間は、触媒による規制物質の処理(浄化)効率が低い。
排気ガス中に含まれる規制物質の全量を低減するには、エンジン始動後、できるだけ早く触媒温度を前記活性化温度に上げることが必要である。
エンジン始動後に触媒を速やかに昇温させてその早期活性化を図るべく、従来においては、例えば、下記特許文献1等にも見られるように、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータとしての、燃料噴射量、点火時期、吸排気弁の開閉時期、吸排気弁のリフト量、燃料噴射時期等を制御することが知られている。
排気ガス温度は、エンジンの燃焼効率に依存する。爆発(膨張)行程終了前に排気弁を開いて(通常より早開きして)エンジンの燃焼効率を下げると、高温の燃焼廃ガス(排気ガス)が排気通路を流れる。
また、排気弁を開き始める時期(以下、開時期と称す)は通常であっても、点火時期を遅らせて燃焼が終了する前に排気弁を開くことでも、高温の排気ガスが排気通路を流れる。
このようにして、高温の排気ガスを排気通路に流すことで、触媒が速やかに活性化温度に達し、これによって、冷機始動後、より短時間で触媒が機能することになる。
なお、始動後に触媒を迅速に昇温する技術として下記特許文献2等がある。
特開2008-223643号号公報 特許第3799898号公報
しかしながら、触媒の昇温に重点をおくと、燃焼効率が下がり、エンジンの燃焼安定性が低下する。さらに、昇温速度が速過ぎると、触媒内部に温度勾配が生じて、触媒担体であるセラミックに熱応力がかかって、セラミック担体に亀裂が入る虞もある。
このため、エンジンの燃焼安定度性や排気ガス温度の上昇度合いを考慮した制御が必要である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、エンジン始動後に燃焼安定度を許容範囲に保ちつつ排気ガス温度を速やかに上昇させて触媒の早期活性化を図ることのできるエンジン制御を提供することにある。
上記目的を達成すべく、本発明に係るエンジン制御装置は、基本的には、エンジン始動後において燃焼安定度を許容範囲内に保ちつつ触媒を可及的に速やかに昇温させてその早期活性化を図るべく、排気ガス温度及び/又は触媒温度を検出ないし推定するとともに、エンジンの運転状態に基づき、前記排気ガス温度及び/又は触媒の目標温度を設定し、前記温度検出手段により検出ないし推定された現在温度と前記目標温度とに基づき、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータを変化させる冷機始動用燃焼制御を行なうことを特徴としている。
前記制御パラメータとしては、好ましくは、燃料噴射量、空燃比、燃料噴射時期、点火時期、及び吸排気弁開閉時期のうちの少なくとも一つが用いられる。
好ましい態様では、燃焼安定度が許容範囲内である場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、燃焼安定度が許容範囲外である場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させるようにされる。
より具体的な好ましい態様では、前記燃焼安定度として、気筒間における燃焼状態(エンジントルク、回転数、排気空燃比等)のばらつき度合いを求め、該ばらつき度合いが所定値以下の場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させるようにされる。
他の好ましい態様では、排気通路における前記触媒の上流側の近傍に複数の排気温度センサが配備され、該複数の排気温度センサから得られる信号に基づいて、前記排気ガス温度及び/又は触媒温度を検出ないし推定するようにされる。
別の好ましい態様では、吸入空気量又は排気ガス流量を検出ないし推定する流量検出手段が備えられ、該流量検出手段により検出ないし推定された吸入空気量又は排気ガス流量に基づいて、前記排気ガス温度及び/又は触媒温度を補正するようにされる。
本発明に係るエンジン制御装置の好ましい態様では、例えば、燃焼安定度を表す指標となる、気筒間における燃焼状態(エンジントルク、回転数、排気空燃比等)のばらつき度合いを求め、該ばらつき度合いが所定値以下の場合には、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータ(燃料噴射量、空燃比、燃料噴射時期、点火時期、吸排気弁開閉時期等)を、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させるようにされるので、エンジン始動後に燃焼安定性をさほど損なうことなく排気ガス温度を速やかに上昇させることができ、これにより、冷機始動後に触媒がより短時間で活性化温度に達して、効率良く機能することになり、その結果、燃焼安定性をさほど損なうことなく、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
本発明に係るエンジン制御装置の一実施形態をそれが適用された車載用エンジンと共に示す概略構成図。 図1に示されるコントロールユニットの内部及び入出力構成の説明に供される図。 コントロールユニットによる燃焼制御の説明に供される機能ブロック図。 燃焼安定度が許容範囲内にあるか否かを判定するためのルーチンの一例を示すフローチャート。 冷機始動用燃焼制御ルーチンの一例を示すフローチャート。 冷機始動用燃焼制御を行なった場合の動作説明に供されるタイムチャート。 排気通路に備えられるセンサユニット(排気温度センサ、排気流量センサ)の概略斜視図(A)、及び結線図(B)。 図7に示される排気温度センサ及び排気流量センサを用いた排気ガス温度検出手法の一例を示す図。 触媒温度計算ルーチンの一例を示すフローチャート。 排気温度センサ診断(フェイルセーフ)用ルーチンの一例を示すフローチャート。 排気流量センサの診断(フェイルセーフ)用ルーチンの一例を示すフローチャート。
以下、本発明のエンジン制御装置の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るエンジン制御装置の一実施の形態を、それが適用された車載用エンジンの一例と共に示す概略構成図である。
図示のエンジン1は、例えば4つの気筒を有する多気筒エンジンであって、シリンダ1Aと、このシリンダ1Aの各気筒内に摺動自在に嵌挿されたピストン22と、を有し、該ピストン22上方には燃焼(作動)室16が画成される。各気筒の燃焼室16には、点火プラグ8が臨設されている。
燃料の燃焼に供せられる空気は、吸気通路6の始端部に設けられたエアクリーナ9から取り入れられ、エアフローセンサ2を通り、電制スロットル3を通ってコレクタ6aに入り、このコレクタ6aから前記吸気通路6の下流端に配在された吸気弁15Aを介して各気筒の燃焼室16に吸入される。また、前記吸気通路6の下流部分(吸気マニホールド)には、吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁7が配備されている。なお、本例では、ポート噴射式が採用されているが、筒内噴射式でもよいことは勿論である。また、吸気通路6には、スロットル3をバイパスするバイパス通路4が付設され、該通路4にはISCバルブ5が配備されている。
燃焼室16に吸入された空気と燃料噴射弁7から噴射された燃料との混合気は、点火プラグ8による火花点火により燃焼せしめられ、その燃焼廃ガス(排気ガス)は、燃焼室16から排気弁15Bを介して排気通路10に排出され、そこに備えられた三元触媒11に流入して浄化された後、外部に排出される。
また、排気通路10における三元触媒11より上流側には排気空燃比を検出する空燃比センサ12が配備され、さらに、排気通路10における三元触媒11の上流側の近傍には、排気ガス温度を検出する排気温度センサ31と排気ガス流量を検出する流量センサ33とからなるセンサユニット30が配備されている(後で詳述)。なお、前記空燃比センサ12は、排気中に含まれる酸素の濃度に対して線形の出力特性を持つ。
そして、本例では、エンジン1の種々の制御を行うため、マイクロコンピュータ(演算処理部51)を内蔵するコントロールユニット(ECU)50が備えられている。
コントロールユニット50は、それ自体はよく知られているもので、基本的には、図2に示される如くに、CPU51A、ROM51B、RAM51C、アナログ入力回路52、パルス入力回路53、デジタル入力回路54、デジタル出力回路55、パルス出力回路56、通信回路57、A/D変換回路等で構成される。
コントロールユニット50には、入力信号として、イグニッション(IG)スイッチ64、ブレーキペダルスイッチ65、電気負荷(エアコン等)スイッチ66等からのON/OFF信号、ギアポジションセンサ67からのギア比・ギアポジションを表す信号、エアフローセンサ2により検出される吸入空気量に応じた信号、スロットルセンサ20により検出されるスロットル開度に応じた信号、クランク角センサ14から得られるクランクシャフト17の回転(エンジン回転数)・位相をあらわす信号、カム角センサ24から得られるカムシャフト18の回転・位相に応じた信号、空燃比センサ12から得られる排気空燃比に応じた信号、シリンダ1Aに配設された水温センサ13により検出されるエンジン冷却水温に応じた信号、アクセルペダルセンサ61から得られるアクセルペダルの踏み込み量(運転者の要求トルクを示す)に応じた信号、吸気管圧力センサ62により検出される吸気管内圧力に応じた信号、吸気温センサ68により検出される吸気温度に応じた信号、排気流量センサ33により検出される排気ガス流量に応じた信号、排気温度センサ31(後述するように第1排気温度センサ31A及び第2排気温度センサ31Bからなっている)により検出される排気ガス温度に応じた信号、等が供給される。
なお、クランク角センサ14からは、例えば、回転角1度毎に信号パルスが出力され、このパルスの時間間隔又は所定時間内に発生するパルス数に基づいてエンジン回転数が演算される。また、クランク角センサ14からの信号と特定のクランク角度(例えば圧縮上死点位置)を示すカム角センサ24からの信号とを用いて気筒判別が行なわれる。
また、本例のエンジン1には、吸気弁15A及び排気弁15Bの開閉時期(開時期及び/又は閉時期)を変化させるべく、図示はされていないが、吸排気カムシャフトに、それぞれ可変動弁(VVT=可変バルブタイミング)機構としてのアクチュエータが付設されるとともに、それらの位相を検出するための位相センサが添設されている。
コントロールユニット50は、前記した各種の入力信号に基づいて、エンジンの運転状態を認識し、この運転状態に基づいて、燃料噴射量、点火時期等のエンジンの主要な操作量を演算する。コントロールユニット50で演算された燃料噴射量は開弁パルス信号に変換され、所定のタイミングでパルス出力回路56から燃料噴射弁7に送られる。また、コントロールユニット50で演算された点火時期で点火されるように駆動信号がパルス出力回路56からから点火プラグ(点火コイル)8に送られる。
また、コントロールユニット50には、各入力信号や出力信号の診断結果や内部データのモニタ用に、通信回路57が設けられている。
次に、図3を参照しながら、コントロールユニット50が、エンジン始動後に燃焼安定度を許容範囲内に維持しながら排気ガス温度を可及的に速やかに上昇させて触媒の早期活性化を図るべく実行する冷機始動用燃焼制御について説明する。
本実施例では、燃焼安定度が許容範囲内であるとき、言い換えれば、気筒間における燃焼状態のばらつき度合いが所定値以下のときには、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータ(ここでは、燃料噴射量、点火時期、及び排気弁の開時期)を、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えているときには、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させる前記冷機始動用燃焼制御を行なうようにされる。
前記気筒間における燃焼状態のばらつき度合いは、燃焼状態検出判定手段70において次のようにして求める。
すなわち、まず、爆発行程毎に、クランク軸が所定のクランク角度範囲を回転するに要した時間(所要時間)を計測する。前記「所定のクランク角度範囲」は、例えば、各気筒の爆発行程(ピストンが上死点から下死点に達するまでの)での回転角度(4気筒の場合は180度)でもよいし、各気筒の爆発行程における所定のクランク角度位置X(CA)からY(CA)までの回転角度でもよく、この「所定のクランク角度範囲」は、クランク角センサ14及びカム角センサ24からの信号に基づいてクランク角度ウィンド用カウンタ71により定められ、前記所要時間は、CPU内クロック信号が供給される所要時間計測手段72により計測される。
次いで、燃焼状態ばらつき判定手段74において、前記計測された所要時間を用いて気筒間における燃焼状態(発生トルク)のばらつき度合いを求め、該燃焼状態のばらつき度合いが所定値以下の場合は、燃焼安定度は許容範囲内である旨を、また、前記ばらつき度合いが所定値を超える場合は、燃焼安定度は許容範囲外である旨を、後述する昇温・安定化判定手段83に伝える。
より詳細には、燃焼状態検出判定手段70においては、所定のクランク角度毎に発生するクランク角度センサ信号をトリガとして、CPU内のタイマをインプットキャプチャすることにより、インプットキャプチャ割り込みを使って、クランク角センサ信号のエッジ時間間隔を計測する。
例えば、クランク角センサを構成する歯付きディスクプレートにおける、特定の気筒の上死点に対応した部位を歯欠けとし、クランク角センサからのパルス信号のエッジ時間間隔が1つ前のエッジ時間間隔に対して所定の比率以上であれば、歯欠け部位として認識し、これを特定の気筒の上死点に対応した基準角度位置とする。その後のインプットキャプチャ割り込み毎に、割り込み発生回数をカウントし、第1のカウント回数に達したときを起点として時間計測を開始し、第2のカウント数に達するまで時間間隔を積算して、第1のカウント回数に対応したクランク角度位置と第2のカウント回数に対応した角度位置の角度間隔を通過する時間間隔(前記所要時間)を求める。このようにして、気筒毎にクランク軸が所定のクランク角度範囲を回転するに要した時間(所要時間)Tnを求める(図4のステップ101)。
次に、気筒毎に所要時間T(n)の差分(1次微分値)ΔT(n)を求める。
差分(1次微分値)ΔT(n)は、ΔT(n)=T(n)-T(n-1)として求め(図4のステップ102)、さらに、差分の差分(2次微分値)ΔT2(n)=ΔT(n)-ΔT(n-1)を計算する(図4のステップ103)。
これらの演算結果から、差分(1次微分値))ΔT(n)は1爆発行程毎の発生トルクの差分(変動量)に相関した値となり、2次微分値ΔT2(n)は発生トルクの変化方向を表す。特に、2次微分値が負の場合は、発生トルクが一時的に減少した後にすぐに発生トルクが回復する現象を表すので、気筒間における燃焼状態のばらつき度合いに相関した値となる。したがって、1次微分値が上限しきい値以上であるか、又は、2次微分値が下限しきい値未満である場合は、気筒間における燃焼状態のばらつき度合いが所定値(許容上限値)以下であることを示しているので、燃焼安定度は許容範囲内である旨を昇温・安定化判定手段83に伝える(図4のステップ105)。それに対し、1次微分値が上限しきい値未満であるか、又は、2次微分値が下限しきい値以上である場合は、気筒間における燃焼状態のばらつき度合いが所定値(許容上限値)を超えていることをことを示しているので、燃焼安定度は許容範囲外である旨を昇温・安定化判定手段83に伝える(図4のステップ106)。
一方、前記燃焼状態検出判定手段70における燃焼状態のばらつき度合い判定と並行して、冷機始動用燃焼制御手段80において冷機始動用燃焼制御を行なう。
前記冷機始動用燃焼制御手段80は、エンジン始動状態判定手段81と、目標温度設定手段82と、昇温・安定化判定手段83と、燃焼制御手段84とを備える。
エンジン始動状態判定手段81は、エンジン始動時の冷却水温及び/又は吸気温度に基づいてエンジン始動が暖機後か、冷機始動かを判断する。冷機始動であれば、前回のエンジン停止時の温度差から、触媒11の温度の初期値を推定する。
さらに、エンジンの始動後の経過時間又は爆発行程回数をカウントアップして、エンジンの排気ガスによる発熱量を求める。発熱量と排気温度センサ31から求めた排気ガス流の温度から、触媒11を加熱する熱伝達量を求める。
熱伝達量をエンジン始動時から積算し温度上昇度合いを算出する。温度上昇度合いを触媒11の初期温度に加算して、触媒温度を推定する。
目標温度設定手段82は、前記エンジン始動状態判定手段81から得られる上記情報に基づき、目標温度(触媒活性化温度)を設定する。
昇温・安定化判定手段83は、前記燃焼状態ばらつき判定手段74からの、燃焼安定度が許容範囲内であるか、許容範囲外であるかの情報と、前記目標温度(触媒活性化温度)と前記エンジン始動状態判定手段81で求められた触媒温度とに基づいて、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させる昇温優先制御を行なうべきか、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させる燃焼安定化制御を行なうべきかを判定し、その判定結果を燃焼制御手段84に伝える。
前記昇温優先制御及び燃焼安定化制御には、前記制御パラメータとして、点火時期、燃料量(燃料噴射量)、及び排気弁開時期のうちの少なくとも一つを用いる。
より詳細には、燃焼安定度が許容範囲内であり、触媒活性化温度(目標温度)から現在の触媒温度を減じた値(差)が所定値より大きく、かつ、現在の触媒温度が触媒活性化温度(目標温度)よりも低い場合は、燃焼制御手段84により、前記制御パラメータとしての点火時期、燃料量(燃料噴射量)、及び排気弁開時期を、排気ガス温度を高める方向に変化させる昇温優先制御を行なう。
具体的には、図6において実線で示される如くに、点火時期を、エンジン回転数と負荷に応じて定められた基本点火時期に対して遅角(リタード)させる、燃料噴射量を増量する、排気弁開時期を、エンジン回転数と負荷に応じて定められた基本開時期より早める制御を行なう。
それに対し、燃焼安定度が許容範囲外となった場合、並びに、触媒活性化温度(目標温度)から現在の触媒温度を減じた値(差)が所定値以下になった場合は、図6において破線(時点td以降)で示される如くに、点火時期の遅角(リタード)量を減らして、基本点火時期に徐々に戻す、燃料噴射量を減量する、排気弁開時期を、前記基本開時期に徐々に戻す制御を行なう。
ここで、触媒温度が活性化温度に達していない場合、点火時期を通常の点火時期よりもリタードさせることで、排気ガス温度をより上昇できる。この場合、燃焼安定度が許容範囲から逸脱しないように、点火時期を徐々にリタードしていく。燃料噴射量の増量についても同様である。また、排気弁の開時期を早めることで、排気弁の開期間(クランク角度幅)は一定でも排気ガス温度を上昇できる。なお、排気弁の開時期を早める他に、排気弁開期間を通常よりも長くする(開き始める時期は一定で閉じる時期を遅くする)ことでも同様である。
図5は、コントロールユニット50が実行する冷機始動用燃焼制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
この冷機始動用燃焼制御ルーチンは、例えば10ms毎の周期で繰り返し実行され、まず、ステップ111において、エンジンの運転状態を表すパラメータとして、吸入空気量、エンジン回転数、エンジンの負荷率、水温、吸気温度を取り込む。続くステップ112において、エンジンの吸入空気量を回転数で割ることにより、1爆発行程毎の吸入空気量を求め、吸入空気量に応じた基本燃料噴射量を算出し、さらに、エンジン回転数と負荷率、及び水温から補正量を算出して、基本燃料噴射量量に乗じることで、燃料噴射量を算出する。
続くステップ113では、エンジン回転数と負荷率に応じて予め用意されているマップから基本点火時期を求める。
次のステップ114では、エンジン始動後の経過時間又は爆発回数を積算し、積算値に基づいてマップから触媒11の目標温度としての活性化温度を求める。
ステップ115では、前記したように、燃焼安定度が許容範囲内であるか、許容範囲外であるかを判断し、許容範囲内である場合はステップ116に進み、許容範囲外である場合はステップ118に進む。
ステップ116では、前記触媒活性化温度(目標温度)と排気温度センサ31からの信号に基づいて求められる触媒温度との差を算出し、この差が所定値より大きい場合はステップ117に進み、所定値以下の場合はステップ118に進む。
ステップ117では、点火時期を、エンジン回転数と負荷に応じて定められた基本点火時期に対して遅角(リタード)させる、燃料噴射量を増量する、排気弁開時期を、エンジン回転数と負荷に応じて定められた基本開時期より早める前記昇温優先制御を行なう。
それに対し、ステップ118では、点火時期の遅角(リタード)量を減らして、基本点火時期に徐々に戻す、燃料噴射量を減量する、排気弁開時期を、前記基本開時期に徐々に戻す燃焼安定化制御を行なう。
なお、排気ガス温度を上昇させるべく、点火時期を遅くする、燃料を増量する、排気弁開時期を早めるようにしているが、エンジンの運転状態への反映は、点火時期制御が最も速く、次に、燃料増量制御、そして、排気弁開時期制御の順に遅くなる。
このため、制御量の変化は、点火時期の変化量を大きく、燃料量、そして、排気弁開時期の順に変化量を小さく設定することが望ましい。
また、燃焼安定度が許容範囲内にあるか否かを判定するために用いるしきい値は、点火時期用、燃料増量用、排気弁開時期用に分けて、点火時期用のしきい値を、最も燃焼安定度を検出しやすくなる値に設定し、燃料増量用、排気弁開時期用の順で、燃焼安定度を検出しにくくすることも可能である。
以上のように、本実施形態においては、燃焼安定度を表す指標となる、気筒間における燃焼状態(エンジントルク、回転数、排気空燃比等)のばらつき度合いを求め、該ばらつき度合いが所定値以下の場合には、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータ(点火時期、燃料噴射量、排気弁開時期)を、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させるようにされるので、エンジン始動後に燃焼安定性をさほど損なうことなく排気ガス温度を速やかに上昇させることができ、これにより、冷機始動後に触媒がより短時間で活性化温度に達して、効率良く機能することになり、その結果、燃焼安定性をさほど損なうことなく、排気ガス浄化性能を向上させることができる。
次に、上記実施例で使用されているセンサユニット30(排気温度センサ31、排気流量センサ33)について、図7、図8を参照しながら説明する。
温度センサ31(第1排気温度センサ31A、第2排気温度センサ31B)は細い白金線であり、白金線を複数のブロックに分けて巻いてある。白金線全体は排気ガスにさらされ、白金線を支える支持棒により、排気通路外へ信号を取り出す。支持棒は、電流を流す電流エレメントと白金線両端の電圧を検出する電圧エレメントの4本が1セットとなり、2つのブロックに白金線を分けた場合は、支持棒は8本になる。この場合、グランド側の電流エレメントを共通化することで7本にすることも可能である。
白金線の抵抗値は温度に依存するので、白金線の抵抗値を測定することで温度センサ信号に応じた温度が判る。
排気ガス量は、定常状態ではエンジンの吸入空気量と等しいが、加速や減速のような過渡状態では吸入空気量と排気通路を流れる空気量には時間差があり、一致しない。
このため、温度測定用とは別に、排気ガス量測定用のエレメント(排気流量センサ33)を用意しておく。排気ガス量を測定するエレメント33には、温度測定用とは別の電流を流す。排気ガス量がゼロのときに600℃となるような電流を流し、ガス流があればガス流による放熱によって、エレメント温度が低下する。600℃からの温度差がガス流に依存するので、600℃からの温度差からガス量の基本値QEXを求める。
しかし、真のガス温度が600℃に近い場合は、放熱量が異なるので、真のガス温度による流量補正を行ってガス流量FIQAを求める。
複数のブロック毎に分けた白金線にそれぞれ一定の電流を流すことで、白金線の抵抗値に応じた電圧がセンサ信号として取り出され、CPUのA/D変換器の入力に接続する。CPUのA/D変換結果を、白金線に対応してAD1、AD2とし、電圧から温度に変換する変換テーブル検索結果から、センサ温度はTGAS1、TGAS2は次のように求められる。
TGAS1 = TBLGAS(AD1)
TGAS2 = TBLGAS(AD2)
TGAS1に対応する白金線は排気通路の中央に近い位置にあり、TGAS2に対応する白金線は温度センサの取り付けケース部に近い。このため、センサを取り付けた排気通路全体の温度が排気ガスの温度に等しくなるまで加熱した定常状態では、TGAS1=TGAS2となる。
しかし、TGAS1に対応する白金線は排気通路の中央に近い位置にあり、TGAS2に対応する白金線は温度センサの取り付ケースに近い。このため、エンジンが冷機始動であれば、それぞれの白金線の温度は過渡的にずれが生じる。
また、白金線の温度は温度センサの取り付けケース部からの距離に反比例して取り付けケース部の温度の影響を受ける。このため、それぞれの白金線の抵抗値から読み取った温度から真のガス温度を推定する。
図8に温度検出手法の一例を示す。
まず、TGAS1とTGAS2の差分DTGASを求める。
DTGAS = TGAS1-TGAS2
ここで、温度センサの構造上、ガス温度とセンサケース温度が異なる場合、ガスにさらされるセンサエレメント部分とセンサを支える支持体が異なる温度になる。このため、それぞれのセンサエレメントの温度差と、センサ支持体の温度差の差も考慮する必要がある。よって、それぞれのセンサ支持体温度の挙動は、ガス温度とセンサケース温度の両方の影響を受ける。例えば、ガス温度とセンサケースの温度差をTGCとすると、TGC∝DTGASとなる。
すなわち、真のガス温度を推定するためには、DTGASのべき乗に比例した値を使うことが望ましい。よって、DTGASをべき乗に変換するための変換テーブルを用いて、比例分をDTGASP=table(DTGAS)とする。
さらに、センサエレメントとセンサケースが持っている熱容量が、真の温度測定に対して1次遅れの要素を持つため、1次遅れ分を補償するための時間微分値に応じた補正量を求める。この場合も、センサエレメントとセンサケースの両方の熱容量を考慮して、時間微分値をべき乗して、補正量とする。
実際には、2つのセンサエレメント温度の平均値TGAS12=(TGAS1+TAGS2)/2を算出し、さらに、所定時間差に基づいて時間微分値DTGAS12=TGAS12-TGAS12[n-1]を求める。微分値の計算は所定の時間毎、又は、1爆発毎に差分をとってもよい。
さらに、べき乗に変換するための変換テーブルを用いて、微分分DTGASD=table(DTGAS12)とする。
また、温度の差分値はガス量に依存する。このため、ガス量FIQAを入力として、比例分と微分分に対応した補正係数を求める。ガス量は吸入空気量計で測定した値でも可能だが、エンジン運転状態が過渡時には、吸入空気量と排気ガス量には時間的なずれがある。このため、排気ガス量の方が望ましい。
そして、比例分の補正係数CQAGPと、微分分の補正係数CQAGDを求める。
CQAGP = TQAGP(FIQA)
CQAGD = TQAGD(FIQA)
比例分と微分分にそれぞれ対応した補正係数を乗じて、温度補正分DTGASD=DTGASP×CQAGP+DTGASD×CQAGDを求め、さらにTGAS1に加算して、ガス温度の推定値TGASを、
TGAS = TGAS1 + DTGAS
として求める。
600℃とガス温度推定値TGASとの差分を入力として、ガス量の基本値に対する補正値KDLTTHを求める。
次に、ガス温度推定値を入力として、ガスの密度に応じた補正値KPを求める。
KDLTTHとKPをガス量の基本値QEXに乗算することで、排気ガス量FIQAをリアルタイムに求める。
図9は、触媒温度計算ルーチンの一例を示し、このルーチンでは、ステップ121において、1ms毎に、排気ガス温度に関与するパラメータとして、排気流量センサ信号と第1及び第2の排気温度センサ信号、合計3つの信号をA/D変換して、温度を取り込む。
ステップ122において、排気流量センサ信号を入力としてテーブル検索結果からガス流量の基本値QEXを求める。
続くステップ123で、同時に2つの排気温度センサ信号を入力としてテーブル検索結果から、それぞれの温度を算出し、2つの温度から、真のガス温度TGASを計算モデルを用いて算出する。
ステップ124では、真のガス温度TGASに応じて、流量に対する補正量KDLTTHとKPを算出し、ガス流量の基本値QEXに乗じる計算モデルを用いて、ガス流量FIQAを算出する。
次いで、ステップ125において、エンジンの運転状態と、ガス流量FIQA、ガス温度等から触媒に伝達される熱量を算出する計算モデルを用いて、触媒の温度を算出する。
図10、図11に、排気温度センサ及び排気流量センサの診断(フェイルセーフ)用フローチャートの一例を示す。
図10のステップ141〜144のように、第1及び第2排気温度センサのA/D変換値が所定の範囲を逸脱しているときは、温度センサの故障であり、排気ガス温度を測定することができない。この場合、エンジンの運転状態から推定する計算モデルを用いることで(ステップ144)、代用が可能である。
また、図11のステップ151〜153のように、排気ガス量を検出する排気流量センサのA/D変換値が所定の範囲を逸脱しているときも、触媒の温度を推定することができない。この場合は吸入空気量を排気ガス量に用いることで代用が可能である(ステップ153)。
1 エンジン
2 エアフローセンサ
7 燃料噴射弁
12 空燃比センサ
14 クランク角センサ
31 排気温度センサ
33 排気流量センサ
50 コントロールユニット
70 燃焼状態検出判定手段
80 冷機始動用燃焼制御手段

Claims (9)

  1. エンジン始動後において燃焼安定度を許容範囲内に保ちつつ触媒を可及的に速やかに昇温させてその早期活性化を図るべく、排気ガス温度及び/又は触媒温度を検出ないし推定するとともに、エンジンの運転状態に基づき、前記排気ガス温度及び/又は触媒の目標温度を設定し、前記温度検出手段により検出ないし推定された現在温度と前記目標温度とに基づき、エンジンの燃焼状態に関与する制御パラメータを変化させる冷機始動用燃焼制御を行なうことを特徴とするエンジン制御装置。
  2. 前記制御パラメータとして、燃料噴射量、空燃比、燃料噴射時期、点火時期、及び吸排気弁開閉時期のうちの少なくとも一つを用いることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 燃焼安定度が許容範囲内である場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、燃焼安定度が許容範囲外である場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記燃焼安定度として、気筒間における燃焼状態のばらつき度合いを求め、該ばらつき度合いが所定値以下の場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
  5. エンジントルクを検出するとともに、該検出トルクを用いて気筒間におけるトルクのばらつき度合いを求め、該トルクのばらつき度合いが所定値以下の場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させることを特徴とする請求項4に記載のエンジン制御装置。
  6. エンジン回転数を検出するとともに、該検出回転数を用いて気筒間における回転数のばらつき度合いを求め、該回転数のばらつき度合いが所定値以下の場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させることを特徴とする請求項4に記載のエンジン制御装置。
  7. 排気空燃比を検出するとともに、該検出空燃比を用いて気筒間における空燃比のばらつき度合いを求め、該空燃比のばらつき度合いが所定値以下の場合には、前記制御パラメータを、排気ガス温度を高める方向に変化させ、前記ばらつき度合いが所定値を超えている場合には、前記制御パラメータを、燃焼安定度を高める方向に変化させることを特徴とする請求項4に記載のエンジン制御装置。
  8. 排気通路における前記触媒の上流側の近傍に複数の排気温度センサが配備され、該複数の排気温度センサから得られる信号に基づいて、前記排気ガス温度及び/又は触媒温度を検出ないし推定することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
  9. 吸入空気量又は排気ガス流量を検出ないし推定する流量検出手段が備えられ、該流量検出手段により検出ないし推定された吸入空気量又は排気ガス流量に基づいて、前記排気ガス温度及び/又は触媒温度を補正することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
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