JP4029273B2 - 電気化学セル用電極材料およびそれを用いた電気化学セル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ジスルフィド基を有する電気化学セル用電極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
高エネルギ−密度が期待できる電気化学セル用電極材料として、有機硫黄化合物であるジスルフィド系化合物が米国特許第4,833,048号公報に示されている。この有機硫黄化合物は最も簡単にはR−S−S−R(Rは炭化水素、Sは硫黄を示す)で示され、S−S結合は電解還元反応により開裂し、電解質中の金属イオンM+とで2R-・M+で表される金属塩を生成する。この金属塩は電解酸化反応により元のR−S−S−Rに戻る。金属イオンM+を供給・捕捉する金属Mとジスルフィド系化合物を組み合わせた金属−ジスルフィド二次電池が前述の米国特許に提案されている。この電池は、150Wh/kg以上の高エネルギー密度が期待できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記金属塩は有機電解液に溶解しやすいため、例えば有機電解液を用いる電気化学セル、特に二次電池用の電極材料として用いようとした場合に、困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載されているように、分子内に、電解酸化還元反応が可能な硫黄と、フェナントレン構造と、を有している有機硫黄化合物からなる電気化学セル用電極材料である。
【0005】
即ち、酸化還元可能な有機硫黄化合物が、フェナントレン構造を有していることにより、電解液への溶解性を抑制することが可能である。また。フェナントレン構造を有することから、導電剤としてカーボン材料を使用した場合になじみが良く、有機硫黄化合物と導電剤との電子の授受が容易に進行する。
【0006】
また、本発明は請求項2に記載されているように、3,6−フェナントレンジチオール、1,10−ジチオフェナントレン、4,5−ジチオフェナントレン、またはその金属塩からなる電気化学セル用電極材料である。
【0007】
3,6−フェナントレンジチオール、1,10−ジチオフェナントレン、4,5−ジチオフェナントレン、またはその金属塩であれば、比較的合成が容易である。
【0008】
また、本発明は、請求項3に記載されているように、これらの電気化学セル用電極材料を用いた電気化学セルである。
本発明の電極材料は、キャパシタや電池等の電気化学セルに用いることができる。電池としては、プロトン系電池や、非プロトン系電池に用いることができる。
【0009】
【発明実施の形態】
以下、リチウム電池用電極材料として本発明の電極材料を用いることを想定して記載するが、本発明は、以下の記述により限定されるものではない。
【0010】
本発明の電気化学セル用電極材料をリチウム電池の正極活物質として用いる場合、負極活物質には、一般にリチウム電池用負極に用いられる材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−スズ、リチウム−アルミニウム−スズ、リチウム−ガリウム、およびウッド合金などのリチウム含有合金、さらに、以下のような炭素材料が挙げられる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、無定形炭素、繊維状炭素、粉末状炭素、石油ピッチ系炭素、石炭コークス系炭素がある。これら炭素材料は、直径あるいは繊維径が0.01〜10μm、繊維長が数μmから数mmまでの粒子あるいは繊維が好ましい。特に前記炭素材料が、
エックス線回折等による分析結果;
格子面間隔(d002) 0.333〜0.350nm
a軸方向の結晶子の大きさ La 20nm以上
c軸方向の結晶子の大きさ Lc 20nm以上
真密度; 2.00〜2.25g/cm3
のグラファイトは高容量を示すことから好ましい。しかしながら、これらの範囲に限定されるものではない。
【0011】
さらに、炭素材料にはスズ酸化物や珪素酸化物といった金属酸化物を添加したり、リンやホウ素を添加し改質を行うことも可能である。また、グラファイトとリチウム金属、リチウム含有合金などを併用することや、あらかじめ電気化学的に還元することによって、本発明に用いる炭素質材料にあらかじめリチウムを挿入することも可能である。
【0012】
本発明の電気化学セル用電極材料をリチウム電池の負極活物質として用いる場合、正極活物質には、一般にリチウム電池用正極に用いられる材料を用いることができる。例えば、リチウムに対して3V以上の放電電圧を示すリチウム含有遷移金属酸化物、リン酸塩などの材料が好適に用いられる。特に、4V以上の放電電位が得られる材料は、高い電池電圧が得られるためエネルギー密度が向上し、より好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、一般式LiyCo1-xMxO2、LiyMn2-xMXO4{Mは、IからVIII族の金属(例えば、Li,Ca,Cr,Ni,Fe,Co,Mn等の1種類以上の元素)であり、異種元素置換量を示すx値については置換できる最大量まで有効であるが、好ましくは放電容量の点から0≦x≦1である。また、リチウム量を示すy値についてはリチウムを可逆的に利用しうる最大量が有効であるが、好ましくは放電容量の点から0<y≦2である。}が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、本発明の電極材料は負極に用いる場合、比較的貴な電位にあるため、より貴な電位で作動する正極活物質が好ましい。
【0013】
上記リチウム含有遷移金属酸化物に、その他の活物質をさらに混合して用いることができる。例えば、CuO、Cu2O、Ag2O、CuS、CuSO4などのI族金属化合物、TiS2、SiO2、SnOなどのIV族金属化合物、V2O5、V6O12、VOx、Nb2O5、Bi2O3、Sb2O3などのV族金属化合物、CrO3、Cr2O3、MoO3、MoS2、WO3、SeO2などのVI族金属化合物、MnO2、Mn2O3などのVII族金属化合物、Fe2O3、FeO、Fe3O4、FePO4、Ni2O3、NiO、CoO3、CoOなどのVIII族金属化合物等が挙げられる。さらに、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料などの導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の電極材料の形成方法としては、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコーダーなどの手段を用いて、集電体上に任意の厚さおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。なお、これらの手段を用いた場合、電解質層および集電体と接触する電気化学的活性物質の実表面積を増加させることが可能である。
【0015】
本発明の電極材料は、その電極合剤に必要に応じて導電剤、結着剤、フィラー等を添加することができる。
【0016】
前記導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば何でも良い。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。その添加量は1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0017】
前記結着剤としては、通常、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース等といった熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類のようにリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。その添加量としては、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0018】
前記フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、アエロジル、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は0〜30重量%が好ましい。
【0019】
本発明の電極材料に、さらに、硫黄、セレン、テルルなどのカルコゲン元素を添加することも可能である。前記カルコゲン元素は、電極材料が有するジスルフィド基のS−S結合に付加し、電気化学的容量がさらに増大する。前記カルコゲン元素の添加量は、本発明の電極材料に対して、30重量%以下が好ましい。
【0020】
正極集電体及び負極集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。負極集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。これらの形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発砲体、繊維群の形成体等が用いられる。厚さは特に限定はないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極には耐酸化性に優れているアルミニウム箔が、負極には還元場において安定であり、且つ電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、およびそれらの一部を含む合金箔が好ましい。さらに、電気化学的活性物質層と集電体との密着性が優れている粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが望ましい。このような粗面を得る目的で電解箔は優れている。
【0021】
本発明の電極材料を用いた電池の外装材としては、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属缶を用いることが可能であるが、重量エネルギー密度の観点から、金属箔と樹脂フィルムを積層した金属樹脂複合フィルムが好ましい。金属箔の例として、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、SUS、チタン、金、銀等、ピンホールのない箔であれば何でもよいが、軽量で安価なアルミニウム箔が好ましい。また、外面にポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム等の突き刺し強度が優れた樹脂フィルムを、内面にポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等の熱可塑性であって融着可能なフィルムを配した樹脂フィルムも好適に用いられる。耐溶剤性の観点からこのような樹脂フィルムの開口部は、熱可塑性樹脂で封止することが望ましい。
【0022】
本発明の電極材料を用いた電池のセパレータは、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリイミド系、及びフッ素樹脂系の微孔膜や不織布を用いることが可能である。それらの中で、濡れ性の悪い微孔膜には界面活性剤等の処理を施すことが好ましい。
【0023】
上記セパレータの空孔率は、強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
【0024】
本発明の電極材料を用いた電池における電解質に用いるイオン性化合物としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、NaClO4、NaI、NaSCN、NaBr、KClO4、KSCN、などのLi、NaまたはKの1種を含む無機イオン塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、(CH3 )4NBF4、(CH3)4NBr、(C2H5)4NClO4、(C2H5)4NI、(C3H7)4NBr、(n−C4H9)4NClO4、(n−C4H9)4NI、(C2 H5)4N−maleate、(C2H5)4N−benzoate、(C2H5)4N−phtalateなどの四級アンモニウム塩、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウムなどの有機イオン塩等が例示される。
【0025】
上記イオン性化合物は、有機溶剤等に溶解して用いることができる。前記有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル;ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル;酢酸メチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル;テトラヒドロフランまたはその誘導体、1,3−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、メチルジグライムなどのエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジオキサランまたはその誘導体;スルホラン、スルトンまたはその誘導体などの単独またはそれら2種以上の混合物などを添加することも可能である。しかしこれらに限定されるものではない。このような有機溶剤を添加することにより、サイクル特性や安定性等の電池特性を改善することができる。
【0026】
上記の電解液は、電極間に本発明のセパレータを挟み込み積層したり、巻き込んだりした後に上記電解液を注液してもよい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが真空含浸方法や加圧含浸方法を用いてもよい。
【0027】
本発明の電極材料を用いた電池の電解質として、−20〜60℃の温度で固体あるいは固形状であるリチウムイオン伝導性の固体電解質を用いることもできる。前記固体電解質は、上記イオン性化合物を溶解させたポリエチレンオキサイド誘導体又は少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体又は少なくとも該誘導体を含むポリマー、ポリフォスファゼンや該誘導体、イオン解離基を含むポリマー、リン酸エステルポリマー誘導体、さらにポリビニルピリジン誘導体、ビスフェノールA誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオライド、フッ素ゴム等に非水電解液を含有させた高分子マトリックス材料(ゲル電解質)、及び無機固体電解質等のイオン導伝性化合物からなるものを用いることができる。
【0028】
本発明の電極材料を用いた電池の電極としては、電極材料の電解質への溶出を抑制しつつ、十分なイオン伝導性を確保するために前記固体電解質と複合して用いることが好ましい。例えば、以下に述べる方法で得られた3,6−フェナントレンジチオール及び導電剤であるアセチレンブラックを混練し、さらに前記ポリエチレンオキサイド誘導体であるアクリレート変性ポリエチレングリコールと前記イオン性化合物であるLiN(CF3SO2)2及びラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加え混練し、アセトニトリルを加えてできたペースト状物質をアルミニウム箔上に塗布し、約80℃に加熱してアセトニトリルを除去し、さらに約100℃で熱架橋を行い電極として用いる方法が挙げられる。架橋の方法としてはラジカル開始剤を用いる熱架橋やUV架橋の他に、活性光線を用いる方法も好ましい。
また、本発明の電極材料である有機硫黄化合物をあらかじめ酸化処理してジスルフィド化処理しておくことも可能である。リチウム電池の電極材料として用いる場合、チオールの活性プロトンはリチウムと反応して水素ガスを発生するため、あらかじめ酸化処理しておくことが望ましい。
【0029】
【実施例】
[3,6−フェナントレンジチオール(36PDT)の合成]
3,6−PDTの合成はパラブロモトルエンを出発原料にして6段階で合成した。
【0030】
[第1段階:パラブロモベンジルブロマイドの合成]
パラブロモトルエン20.6ml(168.5mmol)を四塩化炭素200mlに混ぜ、N−ブロモスクシンイミド30g(168.5mmol)と、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3g(1.8mmol)を加え、80℃で二時間還流した。その後室温まで冷却し、セライトにより不溶物を除き、濾液を濃縮して得られた粗結晶をジエチルエーテルで再結晶することでパラブロモベンジルブロマイドを得た。
【0031】
[第2段階:パラブロモベンズアルデヒドの合成]
パラブロモベンジルブロマイド8.5g(50mmol)をクロロホルム50mlに溶解させ、撹拌をしながらヘキサメチレンテトラミン9.09g(65mmol)を徐々に加え溶解させた。室温で3時間ほど撹拌を続けると白色沈殿(パラブロモベンジルブロマイドヘキサメチレンテトラミン塩)が析出してくるので、これを濾取し、30分ほど風乾した。得られた白色沈殿12.12g(31mmol)を酢酸水溶液100ml(酢酸90ml、水10ml)に加え、120℃で16時間還流した。その後、温度を維持したまま水100mlを加え10分ほど加熱撹拌を続けた後、室温まで冷却するとパラブロモベンズアルデヒドが結晶で析出してくるので、濾取し、水、飽和重曹水の順でよく洗浄し、風乾してパラブロモベンズアルデヒドを得た。
【0032】
[第3段階:パラブロモベンジルブロマイドトリフェニルホスフィン塩の合成]
パラブロモベンジルブロマイド11.89g(47.6mmol)をアセトン50mlに溶解させ、撹拌しながらトリフェニルホスフィン13.11g(50mmol)を徐々に加え溶解させた。室温で2時間ほど撹拌を続けると目的物が析出してくるのでこれを濾取し、十分に風乾してパラブロモベンジルブロマイドトリフェニルホスフィン塩を得た。
【0033】
[第4段階:トランス−4,4’−ジブロモスチルベンの合成]
窒素気流下、パラブロモベンジルブロマイドトリフェニルホスフィン塩9.23g(18mmol)とパラブロモベンズアルデヒド4g(21.6mmol)を乾燥THF(テトラヒドロフラン)100mlに懸濁させておき、そこへ乾燥THF50mlとターシャリーブトキシカリウム(t−BuOK) 2.63g(23.4mmol)で調製した溶液を徐々に滴下していった。室温で5時間ほど撹拌した後、水で反応を止め、ジエチルエーテルで抽出し、水、飽和食塩水でよく洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧蒸留して得られた粗生成物をクロロホルムで再結晶してトランス−4,4’−ジブロモスチルベンを得た。
【0034】
[第5段階:3,6−ジブロモフェナントレンの合成]
4,4’−ジブロモスチルベン676mg(2mmol)をシクロヘキサン250mlに溶かし、ヨウ素一片を加え、室温で高圧水銀灯を用いて撹拌しながら紫外線を照射した。その後ヨウ素の色が消えるまで(約3時間)紫外線照射・撹拌を続けた。溶液のヨウ素色が消えたら紫外線照射を止め、反応溶液を減圧下にて溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製することで3,6−ジブロモフェナントレンを得た。
【0035】
[第6段階:3,6−フェナントレンジチオールの合成]
3,6−ジブロモフェナントレン336.03mg(1mmol)を乾燥THF50mlに溶かし、−78℃に冷却し20分撹拌した。その後、温度を保ったまま1.6M ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液1.26mlをゆっくり滴下していった。更に温度に気を付けながら約1時間撹拌を続けた後、あらかじめ昇華精製しておいた硫黄64mg(2mmol)を加え、その後13分間撹拌を続けた。10%塩酸で反応を止め、トルエンで抽出し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ減圧下、溶媒を除去することで3,6−フェナントレンジチオールを得た。
【0036】
[1,10−ジチオフェナントレン(110DTP)および4,5−ジチオフェナントレン(45DTP)の合成]
110DTP及び45DTPの合成は、Ashe,A.J.III; Kampf, J.W.; Savla,P.M. The Reaction of Sulfur with Dilithio Compounds.The Syntheses and Structures Phenanthro[1,10-cd]-1,2-dithiole and Phenanthro[4,5-cde][1,2]dithiin. Heteroatom Chem.,vol.5,no.4,1994,pp.113-119.に記載の方法に基づいて行った。
【0037】
窒素雰囲気下、1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液13mlと乾燥TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)3mlを室温で30分ほど混ぜておく。これを「溶液1」とする。別の容器にフェナントレン0.9g(5mmol)を測りとり、真空下で乾燥した後、窒素雰囲気下にする。ここに先ほど用意した「溶液1」を、トランスファーチューブを用いて、徐々に滴下していく。滴下後、60℃で3時間加熱撹拌し、室温に戻した後、乾燥THF25mlでうすめ、−78℃まで冷却し、あらかじめ昇華精製しておいた硫黄1.28g(40mmol)を加え、温度を保ちながら約3時間撹拌した後、室温にて12時間撹拌を続けた。その後、10%塩酸で反応を止め、クロロホルムで抽出し、有機層を水、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下にて溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することで4,5−ジチオフェナントレン及び1,10−ジチオフェナントレンを得た。
【0038】
(試験セル1)
図1に示す試験セルを試作した。上記で得られた36PDT34mg及びアセチレンブラック10mgをめのう乳鉢で混練し、12重量%ポリフッ化ビニリデンを溶解したN−メチルピロリドン溶液283mgを加え、さらに混練した。次に約2mlのN−メチルピロリドンを加え、ペースト状にした。前記ペースト状物質を作用極集電体12としてのアルミニウム箔上に塗布し、約80℃に加熱してN−メチルピロリドンを除去し、作用極集電体12上に36PDTを含む作用極材料11が形成された作用極1を得た。
【0039】
電解質兼セパレータ3として、不織布に担持させたイオン伝導性化合物を用いた。電解質兼セパレータ3の作製方法は以下の通りである。すなわち、ポリエチレン製の不織布にイオン伝導性化合物層を担持させるべく、アクリレート変性ポリエチレングリコール10重量%、四フッ化ホウ酸リチウム6重量%及びエチレンカーボネート30重量%を混合したものを、上記不織布両面にキャストし、不活性ガス雰囲気中、電子線量80kGyの電子線を照射して硬化させ、電解質兼セパレータ3を得た。これによって得られた電解質兼セパレータ3の厚さは、30μmであった。
【0040】
対極集電体22としてのニッケル板に対極材料21としてのリチウムを圧着することにより対極2を得た。作用極1および対極2にそれぞれ端子6,6を取り付けた。前記対極2、前記電解質兼セパレータ3及び前記作用極1の順に積層して電気化学セル要素4を構成し、外装体5に金属樹脂複合フィルムを用い、試験セル1を作製した。
【0041】
(試験セル2)
前記36PDTに代えて前記110PDTを用いたこと以外は試験セル1と同様に組立て、試験セル2を得た。
【0042】
(試験セル3)
前記36PDTに代えて、45PDTを用いたこと以外は試験セル1と同様に組立て、試験セル3を得た。
【0043】
得られた試験セル1,2,3に対し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。走査電位の上下限を+1.5〜+3.0Vとし、10mV/secの速度2サイクルのリニアスキャンにより測定した。結果を図3,5,7に示す。
【0044】
前記試験セル1,2,3について、作用極および対極をそれぞれ正極および負極とする電池として次の操作を行った。試験セル1に対し、電流0.1mA、終止電圧4.0Vの定電流充電を行った後、電流0.1mA、終止電圧1.5V定電流放電を行った。また、試験セル2,3に対し、電流0.1mA、終止電圧1.5Vの定電流放電を行った後、電流0.1mA、終止電圧3.7V定電流充電を行った。その結果、図4,6,8に示される充放電特性を得た。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明の電極材料を用いることにより、高容量で、サイクル特性が優れた電極を得ることができる。また、電極作製段階で溶剤に可溶な活物質から、溶剤に不溶な活物質へと加工ができるため、薄く塗布することが可能であり、レートを要求される電池への応用性は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験セルの外観図である。
【図2】 試験セルの断面図である。
【図3】 試験セル1による電流−電位特性図である。
【図4】 試験セル1の充放電特性図である。
【図5】 試験セル2による電流−電位特性図である。
【図6】 試験セル2の充放電特性図である。
【図7】 試験セル3による電流−電位特性図である。
【図8】 試験セル3の充放電特性図である。
【符号の説明】
1 作用極
11 作用極材料
12 作用極集電体
2 対極
21 対極材料
22 対極集電体
3 電解質兼セパレータ
4 電気化学セル要素
5 外装体
6 端子
Claims (3)
- 分子内に、電解酸化還元反応が可能な硫黄と、フェナントレン構造と、を有している、ジスルフィド基を有する有機硫黄化合物からなる電気化学セル用電極材料。
- 前記有機硫黄化合物が、3,6−フェナントレンジチオール、1,10−ジチオフェナントレン、4,5−ジチオフェナントレン、またはその金属塩である請求項1記載の電気化学セル用電極材料。
- 請求項1または2記載の電気化学セル用電極材料を用いた電気化学セル。
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