JP4028112B2 - 金型冷却方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型内のキャビティに溶湯を充填して鋳造成形する際、前記金型を冷却する金型冷却方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金型内に形成されたキャビティに溶湯を充填し、前記溶湯を固化させることにより、所望の形状の鋳造品を得る鋳造成形が行われている。この場合、キャビティに充填された溶湯を円滑に固化させるとともに、金型を冷却する冷却装置が設けられるのが通常である。
【0003】
ここで、有底円筒形状の鋳造品を鋳造成形する従来技術に係る冷却装置を図9乃至図12に示す。
【0004】
この冷却装置1は、内部に空洞部2が形成された鋳抜きピン3と、前記空洞部2に臨み該空洞部2に対し冷却液を供給する供給管4と、前記空洞部2に連通し該空洞部2に貯留された冷却液が排出される排出ポート5とを有する。なお、参照数字6は、図示しない金型によって鋳造成形された鋳造品を示す。
【0005】
なお、図9および図10は、横型の冷却構造を有する鋳抜きピン3を採用した場合を示し、図11および図12は、縦型の冷却構造を有する鋳抜きピン3を採用した場合を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術に係る冷却装置1では、供給管4から供給される冷却液の流量と空洞部2内の体積差により、鋳造時において冷却水が蒸発してしまい空洞部2内に発生する蒸気によって冷却能力が低下するという不都合がある。
【0007】
すなわち、空洞部2の上部側に発生する蒸気や空気の層によって空間部7が形成されることにより、冷却が不均一となり冷却効率が低下するという不都合がある。
【0008】
また、前記冷却能力の低下により、オーバーヒート部8には、鋳造品に対して悪影響を及ぼす、いわゆるひけや鋳造品の表面部が金型に凝着する、いわゆるとられが発生するという不都合がある。
【0009】
従来技術では、このような冷却能力の低下に対し、冷却水量を大幅に増大させて対処しているが、冷却水量が増大するのに伴って金型が過冷却状態となりキャビティ内に充填された溶湯が急激に冷却されるため、湯廻り不良等が発生するという他の不都合がある。
【0010】
本発明は、前記の種々の不都合を考慮してなされたものであり、冷却水の接触表面積並びに冷却容量をそれぞれ減少させ、しかも鋳造品の肉厚に対応して冷却性に指向性を持たせることにより、簡易に最適な鋳造品質を安定して得ることが可能な金型冷却方法および装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、鋳造成形を行う際に金型を冷却するための方法であって、
冷却水が流通する冷却通路を螺旋状に形成し、鋳造品の肉厚に対応して前記螺旋状の冷却通路の始点を振り分けることにより、冷却性に指向性を持たせることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、鋳造成形を行う際に金型を冷却するための装置であって、
金型のキャビティに組み込まれた鋳抜きピンの孔部内にインサート部材が挿入され、前記インサート部材の外周面には冷却水が流通する螺旋状の冷却通路が形成され、前記螺旋状の冷却通路の始点は、鋳造品の肉厚に対応して所定の方向に振り分けられて設定されるとともに、
冷却性の指向性に対応する方向の前記冷却通路の幅または深さが、他の方向と比較して大きく設定されることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、冷却性に指向性を持たせることにより、鋳造時において、熱影響の多い部分の冷却性を部分的に増大させ、鋳造品の厚肉部の内部品質を向上させることができる。
【0014】
さらに、冷却通路を螺旋状に形成することにより、冷却水の接触表面積が減少し、しかも冷却水の流量を少なくすることにより、冷却水が蒸発し、発生した蒸気を容易に外部に排出させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る金型冷却方法について、それを実施する装置との関連において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0016】
図1において、参照数字10は、本発明の実施の形態に係る金型冷却装置を示す。この金型冷却装置10は、図示しない金型のキャビティ内に配設された鋳抜きピン12の孔部14内に挿入され、略円柱状に形成されたインサート部材16と、前記インサート部材16に形成される冷却通路18とを有する。
【0017】
なお、前記インサート部材16を、熱伝達性が良好な金属製材料、例えば、銅合金等によって形成することにより、冷却効率をより一層向上させることができる。
【0018】
前記金型冷却装置10は、略同軸状に形成された内管20と外管22とを有する二重管24が設けられたジョイント部材26を備え、前記内管20はジョイント部材26から所定長だけ突出してインサート部材16の貫通孔に嵌合されるように形成されている。前記二重管24は、前記冷却通路18に連通し該冷却通路18に冷却液を供給する図示しないインレットポートと、前記冷却通路18に連通し該冷却通路18から冷却液が排出される図示しないアウトレットポートとを有する。
【0019】
前記冷却通路18は、ジョイント部材26から突出する二重管24の内管20によって構成されインサート部材16の軸線方向に沿って貫通する第1通路28と、前記第1通路28に連通し中心部から半径外方向に向かって延在する第2通路30と、前記第2通路30に連通しインサート部材16の外周面に沿って螺旋状に形成された第3通路32とを有する。前記第3通路32の終端部は、インサート部材16とジョイント部材26の間に形成された空間部34(図3参照)を介して二重管24の外管22内の通路に連通するように形成されている。
【0020】
本実施の形態に係る金型冷却装置10では、冷却性の指向性が、図2に示すように、インサート部材16の中心部から半径外方向に向かって延在する第2通路30の方向、すなわち、矢印A方向となるように設定され、他の方向と比較して矢印A方向に向かって冷却効率が向上するように設けられている。
【0021】
けだし、螺旋状に形成された第3通路32の開始点を任意の方向に振り分けることにより、その振り分けられた方向において螺旋状に周回する多くの溝部が配置されるからである。従って、特に冷却効果が必要とされる鋳造品の厚肉部を形成する金型部分に対しても、鋳造品の形状に対応して部分的に冷却効果を向上させることができる。
【0022】
後述するように、例えば、鋳造品の厚肉部を形成する第1キャビティと前記鋳造品の薄肉部を形成する第2キャビティとが対称に配置された金型構造の場合には、薄肉部と比較して冷却しずらい厚肉部が矢印A方向となるように金型冷却装置10を設定すると好適である。
【0023】
前記螺旋状の第3通路32は、実質的に断面半円状の溝部からなり、前記溝部は略同一の断面積で一定に形成されている。
【0024】
本発明の実施の形態に係る金型冷却装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0025】
先ず、図示しない冷却液供給源と二重管24のインレットポートとを接続し、図示しない冷却液貯留源とアウトレットポートとを接続しておく。また、鋳抜きピン12は、図示しない金型のキャビティ内に配設されているものとする。
【0026】
図示しない金型のキャビティ内に溶湯を注入する際、図示しない冷却液供給源を付勢してインレットポートより冷却液を供給する。前記冷却液は、二重管24の内管20に沿って流通し、インサート部材16の軸線方向に沿って延在する第1通路28を流通する。さらに冷却液は、インサート部材16の上部の中心部から半径外方向に向かって延在する第2通路30並びにインサート部材16の外周面に螺旋状に形成された第3通路32に沿って流通する。第3通路32の終端から導出された冷却液は、インサート部材16とジョイント部材26との間に形成された空間部34並びに二重管24の外管22を経由してアウトレットポートから図示しない冷却液貯留源に排出される。
【0027】
本実施の形態では、図2に示すように、第2通路30の方向、すなわち、インサート部材16の中心部から半径外方向に向かう矢印A方向に冷却性の指向性が設定されている。
【0028】
従って、例えば、鋳造品の厚肉部を形成するキャビティが矢印A方向となるように金型冷却装置10を配設することにより、他の方向と比較して矢印A方向に向かって冷却効率を向上させることができる。
【0029】
次に、インサート部材16の外周面に形成された溝部の変形例を図4乃至図7に示す。なお、冷却性の指向性は、同様に矢印A方向に設定されているものとする。
【0030】
図4に示す第1変形例では、第3通路36が断面矩形状の深い角溝からなる螺旋状の溝部によって形成され、前記溝部の溝幅および深さが略一定に形成されている点に特徴がある。また、図5に示す第2変形例では、第3通路38の一部である矢印A方向側の溝部40の溝幅を大きく形成している点に特徴がある。換言すると、矢印A方向と反対側の溝部42の溝幅に対して矢印A方向側の溝部40の溝幅を大きく設定している。
【0031】
さらに、図6に示す第3変形例では、第1変形例の角溝からなる溝部に代替して第3通路44を深い丸溝を有する溝部46によって形成している点に特徴がある。さらにまた、図7に示す第4変形例では、第3通路48を深い丸溝によって形成するとともに、矢印A方向と反対側の溝部50の溝幅に対して矢印A方向側の溝部52の溝幅を大きく設定している点に特徴がある。
【0032】
このように、螺旋状に形成された溝部の一部の断面形状を、例えば、丸形、角形等の種々の断面形状とし、あるいは溝部の深さを変化させることにより、冷却性に指向性を持たせ、且つ冷却能力を自在に制御することができる。この結果、鋳造時において、熱影響の多い部分の冷却性を部分的に増大させ、鋳造品の厚肉部の内部品質を向上させることができる。
【0033】
また、本実施の形態では、螺旋状の冷却通路18をインサート部材16の外周面に形成することにより、冷却水の接触表面積を減少させ、しかも冷却水の流量を少なくすることにより、冷却水が蒸発し、発生した蒸気を容易に外部に排出することができる。この結果、冷却能力を低下させることがなく、湯廻り不良等の発生を防止して、高精度の品質を有する鋳造品を得ることができる。
【0034】
次に、車両用のエンジンのシリンダブロックを製造する金型に適用した他の実施の形態に係る金型冷却装置70を図8に示す。なお、前記金型冷却装置10と同一の構成要素には同一の参照数字を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
この金型54は、前記シリンダブロックに対応する形状からなるキャビティ56が形成された金型本体58と、前記金型本体58内に挿入され、シリンダブロックのボアを形成するボア用鋳抜きピン60とを有する。
【0036】
前記キャビティ56は、ボア用鋳抜きピン60を間にして略対称に配置され、鋳造成形によってシリンダブロックの厚肉部が形成される第1キャビティ62と、前記シリンダブロックの薄肉部が形成される第2キャビティ64とを含む。
【0037】
他の実施の形態に係る金型冷却装置70は、金型54のキャビティ56内に配設されたボア用鋳抜きピン60の孔部72内に挿入され、略円柱状に形成されたインサート部材74と、前記インサート部材74に形成される冷却通路18とを有する。
【0038】
前記金型54の孔部72には、前記インサート部材74の冷却通路18に連通し該冷却通路18に冷却液を供給する内管20と、前記冷却通路18に連通し該冷却通路18から冷却液が排出される外管22とを有する二重管24が設けられたジョイント部材76が挿入される。なお、ボア用鋳抜きピン60並びにジョイント部材76の外周面には、環状溝を介して、キャビティ56並びに空間部34を密封するシール部材78、80a、80bがそれぞれ装着されている。
【0039】
この金型冷却装置70では、シリンダブロックの厚肉部を形成する第1キャビティ62側に指向性が設定されており、冷却通路18を流通する冷却液の冷却作用下に、前記厚肉部に対する冷却性を制御することにより、前記厚肉部の内部品質を向上させ、高精度な品質を有するシリンダブロックを安定して得ることができる。
【0040】
なお、その他の作用効果は、前述した実施の形態と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0042】
すなわち、従来技術と比較して、冷却水の接触表面積並びに冷却容量をそれぞれ減少させることができる。
【0043】
また、鋳造品の肉厚に対応して冷却性に指向性を持たせることにより、簡易に最適な鋳造品質を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る金型冷却装置の分解縦断面図である。
【図2】前記金型冷却装置の横断面図である。
【図3】鋳抜きピンの孔部内に挿入された前記金型装置の縦断面図である。
【図4】インサート部材の外周面に螺旋状に形成された溝部の第1変形例を示す正面図である。
【図5】インサート部材の外周面に螺旋状に形成された溝部の第2変形例を示す正面図である。
【図6】インサート部材の外周面に螺旋状に形成された溝部の第3変形例を示す正面図である。
【図7】インサート部材の外周面に螺旋状に形成された溝部の第4変形例を示す正面図である。
【図8】車両用のエンジンのシリンダブロックを製造する金型に適用した他の実施の形態に係る金型冷却装置の縦断面図である。
【図9】横型の冷却構造を有する鋳抜きピンを採用した場合における従来技術に係る冷却装置の縦断面図である。
【図10】図9に示す従来技術に係る冷却装置の動作説明図である。
【図11】縦型の冷却構造を有する鋳抜きピンを採用した場合における従来技術に係る冷却装置の縦断面図である。
【図12】図11に示す従来技術に係る冷却装置の動作説明図である。
【符号の説明】
10、70…金型冷却装置 12…鋳抜きピン
14、72…孔部 16、74…インサート部材
18…冷却通路 20…内管
22…外管 24…二重管
26、76…ジョイント部材
28、30、32、36、38、44、48…通路
34…空間部 40、42、46、50…溝部
54…金型 56、62、64…キャビティ
58…金型本体 60…ボア用鋳抜きピン
Claims (2)
- 鋳造成形を行う際に金型を冷却するための方法であって、
冷却水が流通する冷却通路を螺旋状に形成し、鋳造品の肉厚に対応して前記螺旋状の冷却通路の始点を振り分けることにより、冷却性に指向性を持たせることを特徴とする金型冷却方法。 - 鋳造成形を行う際に金型を冷却するための装置であって、
金型のキャビティに組み込まれた鋳抜きピンの孔部内にインサート部材が挿入され、前記インサート部材の外周面には冷却水が流通する螺旋状の冷却通路が形成され、前記螺旋状の冷却通路の始点は、鋳造品の肉厚に対応して所定の方向に振り分けられて設定されるとともに、
冷却性の指向性に対応する方向の前記冷却通路の幅または深さが、他の方向と比較して大きく設定されることを特徴とする金型冷却装置。
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