JP4026993B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型リチウムイオン二次電池の如く、密閉容器内に発電要素となる巻き取り電極体が収容されて、該巻き取り電極体が発生する電力を正極端子部及び負極端子部から外部へ取り出すことが可能な非水電解液二次電池に関し、特に、外部から加わる振動や衝撃に対する耐久性を向上させた非水電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な機器の電源として、高出力、高エネルギー密度を発揮し、且つ長期にわたって安定した使用が可能な二次電池が注目されている。特に、自動車等の排ガスによる大気汚染が世界的な問題となっているなかで、クリーンなエネルギー源である非水電解液二次電池を搭載した電気自動車の開発が進んでいる。
【0003】
電気自動車などの電源として用いられる大容量の円筒型非水電解液二次電池においては、例えば図9に示すように、電池缶(9)の内部に、正極と負極の間にセパレータを介在させて渦巻き状に巻き取った巻き取り電極体(92)が収容されると共に、電解液が注入されており、巻き取り電極体(92)は、極柱(94)を介して電極端子機構(91)に電気接続されている(特開平10-125347号)。
尚、図9に示す非水電解液二次電池においては、巻き取り電極体(92)の中央部に巻き芯(93)が貫通すると共に、巻き取り電極体(92)と極柱(94)の間には、弾性体からなるスペーサ(95)が介在して、振動や衝撃の作用による巻き取り電極体(92)の移動が防止されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9に示す如き従来の非水電解液二次電池においては、電気自動車等の電源として用いた場合、激しい振動が繰り返し加わることによって、巻き取り電極体(92)に巻き崩れが発生したり、巻き芯(93)に対して巻き取り電極体(92)が位置ずれを生じる虞れがあり、これによって、巻き取り電極体(92)と電極端子機構(91)の間の電気接続が切断される等の問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、外部から振動や衝撃が加わった場合にも、電池缶内で巻き取り電極体が確実に固定され、巻き崩れや位置ずれの生じる虞れのない非水電解液二次電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係る非水電解液二次電池において、巻き取り電極体 ( 2 ) の正極 (21) 及び負極 (23) はそれぞれ、帯状の芯体の表面に活物質層を形成して構成されている。
ここで、正極 (21) 及び負極 (23) の内、少なくとも一方の電極の芯体は2枚の金属箔を重ねて構成され、前記2枚の金属箔にはそれぞれ片面にのみ活物質層が形成され、両金属箔の活物質層の形成されていない表面が互いに対向して、両表面間に、非水電解液を吸収して膨張する樹脂シート (200) が介在し、該樹脂シート(200)が、正極(21)、負極(23)及びセパレータ(22)と共に巻き取られている。
【0007】
上記本発明の非水電解液二次電池においては、その製造工程にて、巻き取り電極体(2)を電池缶(1)内に収容すると共に、該電池缶(1)内に電解液を注入することによって、巻き取り電極体(2)内の樹脂シート(200)が電解液を吸収して膨張する。これによって、前記2枚の金属箔の間隔が押し拡げられ、樹脂シート (200) を含む電極の厚さが大きくなる。この結果、巻き取り電極体(2)を構成する正極(21)、セパレータ(22)及び負極(23)の巻き取り状態が緊密となって、巻き取り固さが増大する。
従って、外部から振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)に巻き崩れが発生する虞れはない。
【0008】
尚、樹脂シート(200)は、アクリル樹脂を主体とする樹脂材料、若しくは、塩化ビニル、塩化/酢酸ビニル共重合体又はビニルブチラール樹脂を主体とする樹脂材料から形成することが出来る。これらの樹脂材料は、非水電解液を吸収することによって膨張する。
【0009】
又、樹脂シート(200)の厚さは、非水電解液を吸収しない状態で5μm以上、50μm以下の範囲に形成することが出来る。これによって、樹脂シート(200)に適度な大きさの膨張が発生して、巻き取り電極体(2)の巻き取り固さが適度な大きさとなる。即ち、樹脂シート(200)の厚さが5μm未満では、巻き取り固さが不足し、樹脂シート(200)の厚さが50μmを越えると、巻き取り固さが過大となって、電極にしわが発生する。
【0011】
更に具体的には、樹脂シート(200)と前記金属箔の間に帯状のリードが介在し、該リードの先端部が、正極端子部又は負極端子部に連結されている。
該具体的構成においては、前記2枚の金属箔がリードによって互いに電気的に導通し、電気的に一体の芯体を構成しており、該芯体の表面には活物質層が形成されているので、1枚の電極として機能が発揮されることになる。
【0012】
又、具体的構成において、巻き取り電極体(2)は、樹脂シート(200)が非水電解液を吸収することによって膨張し、その外周面が密閉容器の内周面に圧着している。
これによって、巻き取り電極体(2)は、電池缶(1)の内周面に挟圧されて、電池缶(1)の内部に強く固定されることになる。従って、振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)が電池缶(1)の内部で移動する虞れはない。
【0013】
更に、巻き取り電極体(2)の中央部に巻き芯(20)が密に貫通している構成によれば、巻き取り電極体(2)の中央部へ向かう変形は巻き芯(20)によって阻止されるので、巻き取り電極体(2)は外向きに膨張して、巻き取り電極体(2)の外周面と電池缶(1)の内周面の間に大きな圧着力を発生させることが可能である。
又、巻き取り電極体(2)が巻き芯(20)の外周面に強く圧着して、巻き芯(20)に対する固定強度が増大するので、外部から振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)が巻き芯(20)に対して位置ずれを生じる虞れはない。
【0014】
【発明の効果】
本発明に係る非水電解液二次電池によれば、外部から振動や衝撃が加わった場合にも、電池缶内で巻き取り電極体が確実に固定され、巻き崩れや位置ずれが生じる虞れはない。この結果、長期にわたって安定した使用が可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を円筒型リチウムイオン二次電池に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係る二次電池は、図1に示す如く、筒体(11)の両端開口部に蓋体(12)(12)を溶接固定してなる円筒状の電池缶(1)を具え、電池缶(1)の内部には、図2に示す如く巻き取り電極体(2)が収容されると共に、非水電解液が注入されている。
又、両蓋体(12)(12)には、正負一対の電極端子機構(4)(4)とガス排出弁(13)(13)が取り付けられている。
【0016】
巻き取り電極体(2)は、図3に示す如く、リチウム複合酸化物を含む正極(21)と炭素材料を含む負極(23)の間にセパレータ(22)を介在させ、これらを巻芯(20)の外周面に渦巻き状に巻き取って構成されている。巻き芯(20)は、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはセラミックス等の絶縁性材料からなり、長手方向の両端面にはそれぞれ円形の凹部(25)が形成されている。
【0017】
又、巻き取り電極体(2)には、正極(21)と接触して巻き軸方向に伸びる複数本の正極リード(3A)と、負極(23)と接触して巻き軸方向に伸びる複数本の負極リード(3B)とが挟み込まれており、これらのリードの先端部は巻き取り電極体(2)から突出している。
【0018】
図4に示す如く、正極(21)は、芯体となるアルミニウム箔(26)の両面に正極活物質(27)(27)を塗布して構成されており、該正極(21)の片面に複数本の正極リード(3A)が接合されている。
一方、負極(23)は、2枚の銅箔(28)(28)を重ねて芯体を構成しており、該芯体の両面に負極活物質(29)(29)が塗布されている。
負極(23)を構成する2枚の銅箔(28)(28)の間には、アクリル製の樹脂シート(200)が介在すると共に、樹脂シート(200)の両面と2枚の銅箔(28)(28)の内面との間にはそれぞれ、複数本の負極リード(3B)の基端部が介在している。
【0019】
ここで、負極リード(3B)は、図5に示す如く基端部が長手方向に裂かれて、3本のリード片(32)(33)(33)が形成されており、中央のリード片(32)と両側のリード片(33)(33)の間に樹脂シート(200)が挟み込まれている。これによって、図4の如く、中央のリード片(32)が樹脂シート(200)と一方の銅箔(28)の間に介在すると共に、両側のリード片(33)(33)が樹脂シート(200)と他方の銅箔(28)の間に介在することになり、両銅箔(28)(28)の相互の電気的導通が図られている。
尚、正極リード(3A)はアルミニウム箔から形成され、負極リード(3B)は銅箔から形成されている。
【0020】
図2に示す如く、巻き取り電極体(2)から引き出された複数本の正極リード(3A)の先端部(31)は、正極端子となる一方の電極端子機構(4)に接続される。同様に、巻き取り電極体(2)から引き出された複数本の負極リード(3B)の先端部(31)は、負極端子となる他方の電極端子機構(4)に接続される。
これによって、巻き取り電極体(2)が発生する電力を、正負一対の電極端子機構(4)(4)から外部に取り出すことが出来るのである。
【0021】
図7に示す如く、蓋体(12)には、その中央部に貫通孔(14)、外周部にねじ孔(15)が開設されており、貫通孔(14)には電極端子機構(4)が取り付けられ、ねじ孔(15)にはガス排出弁(13)がねじ込まれる。
【0022】
電極端子機構(4)は、図2及び図7に示す構造を有している。 即ち、蓋体(12)の貫通孔(14)には、図2に示す如く、一対の絶縁パッキング(8)(81)が互いに係合した状態で装着される。図7に示す如く上側の絶縁パッキング(8)は円板部(85)及び円筒部(86)から形成される一方、下側の絶縁パッキング(81)はリング状に形成され、互いに係合した状態で、蓋体(12)の貫通孔(14)の内周面及び内周縁に密着する。
【0023】
蓋体(12)の貫通孔(14)に装着された一対の絶縁パッキング(8)(81)の中央孔には、挟持部材(5)が蓋体(12)の外側から挿通される。挟持部材(5)は、ネジ軸部(52)の頭部に六角柱のねじ込み操作部(51)を一体に具えると共に、下端面には、前記巻き芯(20)の凹部(25)に嵌入可能な凸部(53)が形成されている。
挟持部材(5)のネジ軸部(52)には、蓋体(12)の外側から、第1挟圧ナット(6)及び端子ナット(61)が螺合すると共に、蓋体(12)の内側から、第2挟圧ナット(7)が螺合しており、第1挟圧ナット(6)と第2挟圧ナット(7)によって絶縁パッキン(8)(81)が挟圧されている。
又、蓋体(12)と絶縁パッキング(8)の円板部(85)の対向面間にOリング(82)が介在すると共に、絶縁パッキング(8)の円板部(85)と挟圧ナット(6)の対向面間にOリング(83)が介在している。
【0024】
図2に示す如く、巻き芯(20)の端面と挟持部材(5)の先端面とは互いに圧接され、巻き芯(20)の端面に形成された凹部(25)に対し、挟持部材(5)の先端面に形成された凸部(53)が嵌入している。これによって、巻き取り電極体(2)は、巻き芯(20)の両端面が一対の挟持部材(5)(5)の先端面によって両側から挟圧され、電池缶(1)内に強固に固定されている。
そして、巻き取り電極体(2)から伸びる複数本の正極リード(3A)の先端部(31)が、巻き芯(20)の一方の端面と正極側の挟持部材(5)の先端面の間に挟持されて、正極側の電極端子機構(4)との電気的接続が為されている。又、同様に、巻き取り電極体(2)から伸びる複数本の負極リード(3B)の先端部(31)が、巻き芯(20)の他方の端面と負極側の挟持部材(5)の先端面の間に挟持されて、負極側の電極端子機構(4)との電気的接続が為されている。
【0025】
上記円筒型リチウム二次電池の製造工程においては、先ず図3に示す巻き取り電極体(2)を作製する。上述の如く、リチウム複合酸化物を含む正極(21)と炭素材料を含む負極(23)の間にセパレータ(22)を介在させると共に、それぞれ複数本の正極リード(3A)及び負極リード(3B)を所定位置に挟み込んで、これらを巻き芯(20)の外周面に渦巻き状に巻回する。
【0026】
尚、巻回作業においては、図6に示す如く、先ずセパレータ(22)の先端部を巻き芯(20)の外周面に複数回、巻き付ける。ここで、巻き芯(20)には、セパレータ(22)の先端部を挿通すべきスリット(24)が開設されており、スリット(24)にセパレータ(22)の先端部を挿通した状態で巻き芯(20)を回転させることによって、巻き芯(20)の外周面にセパレータ(22)の先端部を巻き付けることが出来る。従って、セパレータ(22)の先端部を巻き芯(20)の外周面に接着固定する必要はなく、巻回作業は容易である。
又、巻き取り電極体(2)の最外周面は、セパレータ(22)によって覆う。
【0027】
次に、図8に示す如く電池缶(1)の筒体(11)内に巻き取り電極体(2)を収容し、巻き取り電極体(2)から伸びる複数本の正極リード(3A)の先端部(31)を巻き芯(20)の一方の端面に係合せしめる。又、巻き取り電極体(2)から伸びる複数本の負極リード(3B)の先端部(31)を巻き芯(20)の他方の端面に係合せしめる(図示省略)。
又、各蓋体(12)に電極端子機構(4)を固定する。ここで、第1挟圧ナット(6)及び第2挟圧ナット(7)は、絶縁パッキン(8)(81)によって十分な液密性が得られるまで締め込む。
【0028】
その後、レーザ溶接又はビーム溶接を用いて両蓋体(12)(12)を筒体(11)の両開口部に溶接固定する。これによって、図2に示す如く、巻き芯(20)の各端面に電極端子機構(4)の挟持部材(5)の先端面が当接し、若しくは僅かな間隔をおいて対向することになる。
この状態で、両電極端子機構(4)(4)の挟持部材(5)(5)をねじ込むことによって、巻き芯(20)の両端面が両挟持部材(5)(5)の先端面によって両側から挟持されると共に、巻き芯(20)の両端面と挟持部材(5)(5)の先端面との間に、それぞれ複数本の正極リード(3A)及び負極リード(3B)の先端部(31)が挟持される。
【0029】
その後、蓋体(12)のねじ孔(15)から電池缶(1)の内部に電解液を注入する。これによって、巻き取り電極体(2)内の樹脂シート(200)が電解液を吸収して膨張する。この結果、巻き取り電極体(2)を構成する正極(21)、セパレータ(22)及び負極(23)の巻き取り状態が緊密となって、巻き取り固さが増大する。
【0030】
又、巻き取り電極体(2)は、樹脂シート(200)が非水電解液を吸収することによって膨張し、その外径が拡大して、図2に示す様に巻き取り電極体(2)の外周面が電池缶(1)の筒体(11)の内周面に圧着する。この結果、巻き取り電極体(2)は電池缶(1)の内部に固定されることになる。
ここで、巻き取り電極体(2)の中央部には、巻き芯(20)が密に嵌入しているので、巻き取り電極体(2)の中央部へ向かう変形は巻き芯(20)によって阻止される。この結果、巻き取り電極体(2)は外向きに膨張し、巻き取り電極体(2)の外周面と電池缶(1)の内周面の間には、大きな圧着力が発生して、巻き取り電極体(2)は電池缶(1)の内部に確実に固定される。又、巻き取り電極体(2)と巻き芯(20)の間にも大きな圧着力が発生して、両者が互いに強固に固定される。
【0031】
最後に、図1に示す如く各蓋体(12)にガス排出弁(13)をねじ込んで固定することによって、本発明に係る円筒型リチウム二次電池が完成する。
【0032】
上記本発明の円筒型リチウム二次電池によれば、樹脂シート(200)が電解液を吸収して巻き取り電極体(2)の巻き取り固さが増大するので、外部から振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)に巻き崩れが発生する虞れはない。
又、巻き取り電極体(2)は、その中央部が巻き芯(20)によって確実に支持されると同時に、外周面に電池缶(1)の内周面に圧着されて、電池缶(1)の内部に強固に固定されているので、外部から振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)が電池缶(1)の内部で位置ずれを生じる虞れはない。
【0033】
上記本発明の円筒型リチウムイオン二次電池(本発明電池1〜9)と、樹脂シートを具えない比較例電池とを作製して、その性能を評価した。先ず、各電池に共通の製造工程を説明した後、電池毎に異なる組立工程について説明する。
【0034】
正極の作製
正極活物質としての平均粒径5μmのLiCoO2(リチウム複合酸化物)粉末と、導電剤としての人造黒鉛とを、重量比9:1で混合し、正極合剤を作製した。次に、結着剤であるポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2ピロリドン(NMP)に溶解させて、NMP溶液を調製した。そして、正極合剤とポリフッ化ビニリデンの重量比が95:5となる様に正極合剤とNMP溶液を混合して、スラリーを調製した。
そして、このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法により塗布し、150℃で2時間の乾燥を施して、図4に示す正極(21)を得た。
【0035】
負極の作製
炭素塊(d002=3.356Å;Lc>1000)に空気流を噴射して粉砕し、負極活物質としての炭素粉末を得た。又、結着剤であるポリフッ化ビニリデンをNMPに溶解させてNMP溶液を調製し、炭素粉末とポリフッ化ビニリデンの重量比が85:15となる様に炭素粉末とNMP溶液とを混練して、スラリーを調製した。
そして、厚さ20μmの銅箔を2枚用意し、前記スラリーを各銅箔の片面にドクターブレード法によって塗布し、150℃で2時間の真空乾燥を施して、図4に示す負極(23)を得た。
【0036】
電解液の調製
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1で混合した溶媒に、LiPF6を1mol/Lの割合で溶解し、電解液を調製した。
【0037】
セパレータ
セパレータとして、イオン透過性を有するポリプロピレン製の微多孔質膜を用意した。
【0038】
本発明電池1〜9の組立
直径10mmの巻芯にセパレータを数回巻いた後、正極(21)と負極(23)の間にセパレータ(22)が介在する様に、セパレータ(22)、正極(21)、セパレータ(22)、及び負極(23)を重ね合わせ、更に、負極(23)を構成する2枚の銅箔(28)(28)の間に厚さ8μmのアクリル製の樹脂シート(200)を挟み込んで、これらを渦巻き状に巻回し、巻き芯(20)を具えた巻き取り電極体(2)を作製した。尚、巻き取り電極体(2)の巻き取り過程においては、図4に示す如く、樹脂シート(200)と銅箔(28)(28)の間に、厚さ50μm、幅2cmのニッケル製の負極リード(3B)の基端部を挟み込むと共に、正極(21)とセパレータ(22)の間には、厚さ50μm、幅2cmのアルミニウム製の正極リード(3A)の基端部を挟み込んだ。
【0039】
この様にして得られた巻き取り電極体(2)を筒体(11)の内部に装填し、巻き取り電極体(2)から伸びる正極リード(3A)及び負極リード(3B)をそれぞれ正極側及び負極側の電極端子機構(4)(4)に連結した後、筒体(11)の両端開口部に蓋体(12)(12)を溶接固定し、電池缶(1)の内部に電解液を注入して、直径57mm、長さ220mmの本発明電池1を組み立てた。
又、樹脂シート(200)の厚さが3μm、5μm、7.5μm、10μm、25μm、50μm、75μm、或いは100μmであること以外は上記本発電池1と同様にして、本発明電池2〜9を組み立てた。
【0040】
比較例電池の組立
更に、樹脂シート(200)が省略されていること以外は上記本発明電池1と同様にして、比較例電池を組み立てた。
【0041】
出力特性の評価
本発明電池1〜9及び比較例電池に対し、振幅1mm、周波数10〜55Hzの振動を、掃引速度1Hz/minで互いに直角に交わるXYZ方向へ100分間加え、出力特性(放電深度DOD:50%にて15秒間の放電を行なったときの出力密度)を測定した。そして、振動を加える前と後の出力密度の差を求めた。その結果を表1及び表2に示す。
【0042】
【表1】
【表2】
【0043】
表1から明らかな様に、本発明電池1では、比較例電池よりも出力密度の低下が小さくなっている。これは、巻き取り電極体(2)に樹脂シート(200)を挟み込むことによって、巻き取り電極体(2)が電池缶(1)の内部に確実に固定されて、巻き取り電極体(2)の巻き崩れや位置ずれが防止されたことによるものである。
【0044】
又、表2から明らかな様に、樹脂シートの厚さが5〜50μmの範囲では、出力密度の低下が20W/kg以下に抑えられているが、樹脂シートの厚さが3μm以下の電池や、樹脂シートの厚さが75μm以上の電池では、出力密度の低下が20W/kgを越えている。
これは、樹脂シートの厚さが3μm以下では、樹脂シートの膨張による巻き取り電極体の固定が不十分となり、振動によって巻き取り電極体に巻き崩れが生じ、或いは巻き芯と巻き取り電極体の間に位置ずれが生じた結果、正極リードと正極の間、並びに負極リードと負極の間の接触状態が悪化して、集電性能が低下したことによるものと考えられる。
又、樹脂シートの厚さが75μm以上では、樹脂シートの膨張によって巻き取り電極体に過大な圧力が作用して、正極や負極にしわが生じた結果、正極リードと正極の間、並びに負極リードと負極の間の接触状態が悪化して、集電性能が低下したことによるものと考えられる。
【0045】
本発明電池B及びその評価
図4に示す負極リード(3B)の基端部を銅箔(28)(28)にスポット溶接して接合すること以外は本発明電池1と同様にして、本発明電池Bを作製し、前記同様の方法により出力特性を評価した。その結果、本発明電池Bにおいては、出力密度の低下が15W/kgとなり、本発明電池1における出力密度の低下(15W/kg)と同等の値が得られた。
【0046】
従って、負極リード(3B)の基端部を銅箔(28)(28)にスポット溶接することなく、単に挟み込むだけの接合構造を採用した場合でも、振動を受けることによる出力特性の低下は小さく、該接合構造の採用によって製造工程を簡略化することが可能である。
尚、正極リード(3A)についても同様に、巻き取り電極体(2)に単に挟み込むだけの接合構造の採用によって、製造工程を簡略化することが可能である。
【0047】
本発明電池C及びその評価
図2に示す巻き芯(20)を省略し、正極リード(3A)及び負極リード(3B)の先端部(31)は電極端子機構(4)の挟圧部材(5)の端面に溶接すること以外は本発明電池1と同様にして、本発明電池Cを作製し、前記同様の方法により出力特性を評価した。その結果、本発明電池Cにおいては、出力密度の低下が20W/kgであり、本発明電池1における出力密度の低下(15W/Kg)よりも若干、低下量が大きくなったが、比較例電池Aにおける出力密度の低下(34W/Kg)よりは、大幅に低下量が小さくなった。
【0048】
この結果から、巻き取り電極体(2)に巻き芯(20)が装備されていない場合においても、樹脂シート(200)の膨張によって、振動による巻き取り電極体(2)の巻き崩れや電池缶(1)に対する位置ずれが阻止されて、出力密度の低下を防止することが出来ると言える。
また、巻き取り電極体(2)に巻き芯(20)が装備されていない場合よりも装備されている場合の方が、振動による巻き取り電極体(2)の巻き崩れや電池缶(1)に対する位置ずれが阻止されて、出力密度の低下を防止出来ることが判る。
【0049】
上述の如く、本発明に係る円筒型リチウムイオン二次電池によれば、巻き取り電極体(2)に挟み込まれている樹脂シート(200)の膨張によって、巻き取り電極体(2)を構成する正極(21)、セパレータ(22)及び負極(23)の巻き取り状態が緊密となって、巻き取り固さが増大すると同時に、巻き取り電極体(2)の電池缶(1)内部における固定が確実なものとなるので、外部から振動や衝撃が加わったとしても、巻き取り電極体(2)に巻き崩れや位置ずれが発生する虞れはなく、これによって、出力密度の低下が防止される。
【0050】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、負極リード(3B)の接合構造は、は、図4及び図5に示すように1本の負極リード(3B)で樹脂シート(200)を挟み込む構造に限らず、樹脂シート(200)と一方の銅箔(28)の間、並びに樹脂シート(200)と他方の銅箔(28)の間に、交互に負極リード(3B)を介在させる構造を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る円筒型リチウムイオン二次電池の外観を示す斜視図である。
【図2】該円筒型リチウムイオン二次電池の内部構造を表わす断面図である。
【図3】巻き取り電極体の一部展開斜視図である。
【図4】正極及び負極の積層構造を表わす拡大断面図である。
【図5】負極リードの接合構造を表わす拡大斜視図である。
【図6】巻き芯にセパレータを巻き付ける工程を示す斜視図である。
【図7】電極端子機構の分解斜視図である。
【図8】電池の組立工程を示す断面図である。
【図9】従来の円筒型非水電解液二次電池の概略構造を表わす断面図である。
【符号の説明】
(1) 電池缶
(11) 筒体
(12) 蓋体
(2) 巻き取り電極体
(20) 巻き芯
(21) 正極
(26) アルミニウム箔
(27) 正極活物質
(22) セパレータ
(23) 負極
(28) 銅箔
(29) 負極活物質
(3A) 正極リード
(3B) 負極リード
(32) リード片
(33) リード片
(200) 樹脂シート
(4) 電極端子機構
Claims (6)
- 電池缶(1)の内部に、それぞれ帯状の正極(21)と負極(23)の間にセパレータ(22)を介在させてなる巻き取り電極体(2)が収容されると共に、非水電解液が注入され、前記正極 (21) と負極 (23) はそれぞれ、帯状の芯体の表面に活物質層を形成して構成され、巻き取り電極体(2)が発生する電力を、電池缶(1)に設けられた正極端子部及び負極端子部から外部へ取り出すことが可能な非水電解液二次電池において、巻き取り電極体 ( 2 ) の正極 (21) と負極 (23) の内、少なくとも一方の電極の芯体は2枚の金属箔を重ねて構成され、前記2枚の金属箔にはそれぞれ片面にのみ活物質層が形成され、両金属箔の活物質層の形成されていない表面が互いに対向して、両表面間に、非水電解液を吸収して膨張する樹脂シート (200) が介在し、該樹脂シート(200)が、前記正極(21)、負極(23)及びセパレータ(22)と共に巻き取られていることを特徴とする非水電解液二次電池。
- 樹脂シート(200)は、アクリル樹脂を主体とする樹脂材料、若しくは、塩化ビニル、塩化/酢酸ビニル共重合体又はビニルブチラール樹脂を主体とする樹脂材料から形成されている請求項1に記載の非水電解液二次電池。
- 樹脂シート(200)は、非水電解液を吸収しない状態での厚さが5μm以上、50μm以下の範囲に形成されている請求項1又は請求項2に記載の非水電解液二次電池。
- 樹脂シート (200) と前記金属箔の間に帯状のリードが介在し、該リードの先端部が、正極端子部又は負極端子部に連結されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 樹脂シート (200) が非水電解液を吸収して、巻き取り電極体 ( 2 ) の外周面が電池缶 ( 1 ) の内周面に圧着している請求項1乃至請求項4の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 巻き取り電極体 ( 2 ) の中央孔には巻き芯 (20) が密に貫通している請求項5に記載の非水電解液二次電池。
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