JP4026534B2 - 炊飯器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱コイルに流れる高周波電流をスイッチング手段により制御し鍋を加熱する炊飯器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の炊飯器は図5に示すように構成していた。以下、その構成について説明する。
【0003】
図5に示すように、鍋1は水や米を入れるもので、電気回路モデルで示しており、この鍋1は磁束を通す金属を複数用いた積層体で構成している。加熱コイル2は、複数の銅線を束ねたリッツ線で構成し、鍋1と加熱コイル2は電磁気的に結合している。つまり、加熱コイル2に電流が流れることにより、加熱コイル2に磁束が発生し、この磁束が鍋1の金属を通過することにより、鍋1の金属に電流が流れ、この電流と金属の抵抗により鍋1を加熱するようにしている。
【0004】
共振コンデンサ3は、加熱コイル2に並列接続しており、加熱コイル2と並列共振回路を構成している。スイッチング手段4は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子と、この半導体素子に逆接続した逆接続ダイオードで構成し、加熱コイル2に流れる高周波電流を制御する。
【0005】
整流平滑手段6は、ダイオードブリッジ7、チョークコイル8、コンデンサ9で構成し、100V、60Hzの交流電源5を整流している。このとき、コンデンサ9の容量は数μFと小さいので、加熱コイル2に高周波電流を流した場合、大きなリプルを発生し、交流電源5を整流した波形と同一となるが、20数kHzの高周波電圧を平滑することができる。
【0006】
ピーク電圧設定手段61は、2つ以上の抵抗からなる分圧回路で構成しており、スイッチング手段4の両端電圧の基準電圧を設定する。この基準電圧は700V付近になるように、トリミングやボリュームにて調整済みである。
【0007】
ピーク電圧検知手段62は、スイッチング手段4に印加される電圧を2つ以上の抵抗で分圧する分圧回路と、この分圧回路の出力ピーク値を保持するピークホールド回路で構成している。ここで、ピークホールド回路は、分圧回路の出力をベース端子に入力するトランジスタと、このトランジスタのエミッタ端子に接続した電解コンデンサと、この電解コンデンサに並列接続した放電抵抗とで構成している。このとき、電解コンデンサと放電抵抗の時定数は、交流電源5の半周期よりも十分長い時間になるように設定している。
【0008】
AD変換器63は、マイクロコンピュータ内部に予め設けたものを使用している。このAD変換器63は、ピーク電圧検知手段62の出力電圧をAD変換し、その値を導通時間設定手段65に出力する。
【0009】
零電圧検知手段64は、交流電源5の両端にフォトカプラを接続することで構成している。フォトカプラは、交流電源5の両端電圧が所定値を越えるとハイを導通時間設定手段65に出力し、交流電源5の両端電圧が所定値以下であるとローを出力する。
【0010】
導通時間設定手段65はマイクロコンピュータで構成している。この導通時間設定手段65は、零電圧検知手段64の出力エッジを検知するごとに、ピーク電圧設定手段61とピーク電圧検知手段62の出力を比較して、スイッチング手段4の導通時間を設定し、駆動手段13に設定された導通時間、ハイを出力する。
【0011】
駆動手段13は、PNPトランジスタ、NPNトランジスタからなるプッシュプル回路で構成している。駆動手段13は、導通時間設定手段64のハイ、ローの信号を受けて、スイッチング手段4を構成するIGBTのゲートに信号を出力する。IGBTは、この信号を受けてオンオフし、加熱コイル2に電流を流したり、遮断したりする。
【0012】
上記構成において動作を説明する。炊飯を開始すると、導通時間設定手段65を構成するマイクロコンピュータは、零電圧検知手段64の出力エッジを検知すると、ピーク電圧設定手段61とピーク電圧検知手段62の出力を比較して、ピーク電圧設定手段61の出力が大きければ、スイッチング手段4の導通時間を現在の設定よりも長くし、ピーク電圧設定手段61の出力が小さければ、スイッチング手段4の導通時間を現在の設定よりも短くする。そして、導通時間設定手段65は設定された時間ハイを駆動手段13に出力する。
【0013】
駆動手段13は、スイッチング手段4をオンし、加熱コイル2に電流を流す。このときの導通時間をTd、整流平滑手段6の印加電圧をV、加熱コイル2のインダクタンスをLとすると、Td時に加熱コイル2に流れている電流ILは、
IL=(V/L)×Td
で表すことができる。つまり、加熱コイル2の電流ILは、導通時間や整流平滑手段6の印加電圧に比例している。なお、このときに加熱コイル2にたまるエネルギーをWLとすると、
WL=1/2×L×IL2
で表すことができる。この加熱コイル2のエネルギーWLは共振コンデンサ3との共振エネルギーになる。共振コンデンサ3にたまるエネルギーをWC、共振コンデンサ3の両端電圧をVCとすると、
WC=1/2×C×VC2
で表すことができる。加熱コイル2のエネルギーWLが共振コンデンサ3のエネルギーWCに変換されるので、
WL=WC
となる。なお、スイッチング手段4の両端電圧Vswは整流平滑手段6の出力電圧Vと共振コンデンサ3の両端電圧VCの和となる。
【0014】
以上の動作をまとめると、大きく2つのことがわかる。第1は、スイッチング手段4の導通時間を長くするほど、加熱コイル2に流れる電流が大きくなり、加熱コイル2にたまるエネルギーも大きくなるが、共振コンデンサ3の両端電圧も大きくなり、その結果、スイッチング手段4の両端電圧が大きくなるということである。第2は、導通時間が同じでも、整流平滑手段6の印加電圧が変化すると加熱コイル2に流れる電流が変化するので、スイッチング手段4の両端電圧も変化するということである。
【0015】
図6は交流電源5の1周期における、主要部の動作波形を示している。図6(a)は交流電源5の電圧波形を示している。図6(b)は交流電源5の入力電流波形を示している。図6(c)は整流平滑手段6の出力電圧波形を示している。図6(d)はスイッチング手段4の両端電圧の包絡線を示している。図6(e)は加熱コイル2に供給される電流(すなわち、スイッチング手段4を構成するIGBTが導通しているときの電流)の包絡線を示している。
【0016】
図6に示すように、交流電源5の半周期の間は、導通時間が一定なため、加熱コイル2に供給される電流は整流平滑手段6の出力電圧に比例して変動している。つまり、整流平滑手段6の出力電圧は交流電源5の電圧に対応しているので、加熱コイル2に供給される電流は交流電源5の電圧に対応して変動していることとなる。
【0017】
以上のように、従来の炊飯器は、交流電源5の半周期ごとにスイッチング手段4の両端電圧のピーク値と設定値を比較してスイッチング手段4の導通時間を設定し、スイッチング手段4の両端電圧を設定値に抑えるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
【特許文献1】
特開平5−114472号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、交流電源5の半周期ごとにスイッチング手段4の導通時間を変更するので、加熱コイル2に流れる電流が整流平滑手段6の電圧に応じて変動する。そのため、加熱コイル2により大きな高周波電力を供給できるよう電流を増やそうとしても、整流平滑手段6の電圧がピークのときに、スイッチング手段4の両端電圧が最大定格を越えてしまうという問題があった。
【0020】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、交流電源の入力電流の変化に対応して、スイッチング手段の導通時間の設定を瞬時に変更することで、交流電源の電圧が低いときに、入力電流が大きくなるようにスイッチング手段の導通時間を長くし、加熱コイルに供給する高周波電流を大きくできるようにすることを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、鍋と電磁気的に結合し高周波電力を供給して前記鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルと共振回路を構成する共振コンデンサと、前記加熱コイルに流れる高周波電流を制御するスイッチング手段と、前記加熱コイルに電力を供給する交流電源と、前記交流電源を整流平滑する整流平滑手段と、前記交流電源の入力電流を設定する電流設定手段と、前記交流電源の入力電流の包絡線を検知し、この包絡線を全波整流する包絡線検知手段と、前記スイッチング手段の導通時間を設定する導通時間設定手段とを備え、前記導通時間設定手段は、前記電流設定手段と前記包絡線検知手段の出力に応じて導通時間を設定するよう構成し、導通時間の設定値に上限値を設けたものである。
【0022】
これにより、交流電源の入力電流の変化に対応して、スイッチング手段の導通時間の設定を瞬時に変更することで、交流電源の電圧が低いときには、スイッチング手段の導通時間を長くして加熱コイルに流れる電流を大きくすることができ、加熱コイルに供給される高周波電力を大きくすることができる。同時に、スイッチング手段の導通時間を長くしても導通時間に上限値を設けているので、加熱コイルに流れる高周波電流の周波数範囲を限定することとなり、加熱コイルに流れる高周波電流の周波数が人間の可聴周波数域に入るのを防止することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、鍋と電磁気的に結合し高周波電力を供給して前記鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルと共振回路を構成する共振コンデンサと、前記加熱コイルに流れる高周波電流を制御するスイッチング手段と、前記加熱コイルに電力を供給する交流電源と、前記交流電源を整流平滑する整流平滑手段と、前記交流電源の入力電流を設定する電流設定手段と、前記交流電源の入力電流の包絡線を検知し、この包絡線を全波整流する包絡線検知手段と、前記スイッチング手段の導通時間を設定する導通時間設定手段とを備え、前記導通時間設定手段は、前記電流設定手段と前記包絡線検知手段の出力に応じて導通時間を設定するよう構成し、導通時間の設定値に上限値を設けたものであり、交流電源の入力電流の変化に対応して、スイッチング手段の導通時間の設定を瞬時に変更することで、交流電源の電圧が低いときに、スイッチング手段の導通時間を長くして加熱コイルに流れる電流を大きくすることができ、加熱コイルに供給される高周波電力を大きくすることができる。同時に、スイッチング手段の導通時間を長くしても導通時間に上限値を設けているので、加熱コイルに流れる高周波電流の周波数範囲を限定することとなり、加熱コイルに流れる高周波電流の周波数が人間の可聴周波数域に入るのを防止することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、包絡線検知手段の出力値の平均値を検出する平均電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の平均値を設定する平均電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記平均電流検知手段と前記平均電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにしたようにしたものであり、入力電流波形に歪みが生じても、入力電流の平均値を一定に制御することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、交流電源の入力電流の実効値を検知する実効電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の実効値を設定する実効電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記実効電流検知手段と前記実効電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにしたものであり、入力電流波形に歪みが生じても、入力電流の実効値を一定に制御することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、上記請求項2または3に記載の発明において、電流設定手段は、入力電流の設定値に上限値を設けたものであり、入力電流の設定値が過大になり、家庭用のブレーカが切れ、炊飯が中断するのを防止することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、鍋1は水や米を入れるもので、電気回路モデルで示しており、この鍋1は磁束を通す金属を複数用いた積層体で構成している。ただし、これは一例で、必ずしも積層体で構成する必要はなく、金属めっき処理をした鍋や、同一の金属のみを材料とした鍋でも構わない。鍋1を積層体や同一金属のみで構成する場合は、金属の厚さを管理するのが容易である。鍋1を金属めっき処理した場合は、表面の金属のみを変更するだけで、様々な種類の鍋を作成できる。
【0029】
加熱コイル2は、複数の銅線を束ねたリッツ線を更に20数本で撚った線で構成しており、高周波電流が流れたときの電流分布を均一にしている。特に図示していないが、加熱コイル2の上には鍋1を載置しており、鍋1と加熱コイル2は電磁気的に結合している。つまり、加熱コイル2に電流が流れることにより、加熱コイル2に磁束が発生し、この磁束が鍋1の金属を通過することにより、鍋1の金属に電流が流れ、この電流と金属の抵抗により鍋1を加熱するようにしている。
【0030】
共振コンデンサ3は、高周波電流が流れても損失の少ないポリプロピレンコンデンサを使用し、加熱コイル2に並列接続しており、加熱コイル2と並列共振回路を構成している。スイッチング手段4は、加熱コイル2に流れる高周波電流を制御するもので、MOSFETやIGBTなどの半導体素子と、この半導体素子に逆接続した逆接続ダイオードで構成している。MOSFETやIGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、大電流を流すことができるという利点がある。
【0031】
整流平滑手段6は、ダイオードブリッジ7、チョークコイル8、コンデンサ9で構成し、100V、60Hzの交流電源5を整流平滑している。このとき、コンデンサ9の容量は数μFと小さく、加熱コイル2に高周波電流を流した場合、リプルが生じる。本実施例では、このリプル電圧は、交流電源5の電圧と同じとなる。
【0032】
電流設定手段10は、交流電源5の入力電流を設定するもので、マイクロコンピュータ内のROM、DA変換器などで構成している。本実施例の炊飯器には、炊飯、保温などの複数の動作モードがあり、これらの動作モードそれぞれに対応して、交流電源5の入力電流を設定できるようになっている。この入力電流の設定値(以下、入力電流設定値という)はマイクロコンピュータ内のROMに記憶されている。つまり、電流設定手段10は、ROMから動作モードに対応して入力電流設定値を呼び出し、この入力電流設定値をDA変換器でアナログ電圧に変換して、導通時間設定手段に12に出力している。
【0033】
包絡線検知手段11は、交流電源5の半周期における入力電流の包絡線を検知するもので、この包絡線検知手段11は、交流電源5と整流平滑手段6の間に設けた電流トランスと、この電流トランスの出力を全波整流するダイオードブリッジと、このダイオードブリッジの出力電圧を分圧する分圧回路とで構成している。本実施例では、ダイオードブリッジの出力を平滑する必要がないので、平滑用コンデンサを省略し、実装面積を小さくできる。ただし、これは一例で、電流検知抵抗をダイオードブリッジ7とコンデンサ9の間に設け、その両端電圧を検知する構成にしてもよい。
【0034】
導通時間設定手段12は、スイッチング手段4の導通時間を設定するもので、オペアンプなどを用いた増幅回路と、コンパレータなどを用いた発振回路とで構成している。増幅回路は、電流設定手段10により設定する入力電流設定値と、包絡線検知手段11により検知する入力電流の包絡線を誤差増幅し、発振回路に出力する。発振回路は増幅回路の出力電圧に応じてハイ信号の時間を変化させ、ロー信号の時間を一定にすることで発振周波数を変化させる。
【0035】
このように、導通時間設定手段12をアナログ回路で構成する場合は、演算スピードの遅いマイクロコンピュータを使用することができるので、低コスト化、マイコン消費電力の削減が可能である。
【0036】
ただし、これは一例であり、演算スピードの速いマイクロコンピュータを使用し、導通時間設定手段12をこのマイクロコンピュータで構成することもできる。例えば、最近のマイクロコンピュータにはAD変換器やPWM出力端子が内蔵されているので、包絡線検知手段11の出力をAD変換器に入力し、AD変換器のデジタル出力と入力電流設定値を比較して、導通時間を設定する。この導通時間に応じて、マイクロコンピュータのPWM端子からハイまたはローの信号を出力することで、スイッチング手段4をオンオフすることができる。この場合には、オペアンプやコンパレータなどのアナログ回路分の実装面積を減らすことができる。
【0037】
駆動手段13は、PNPトランジスタ、NPNトランジスタからなるプッシュプル回路で構成している。この駆動手段13は、導通時間設定手段11のハイ、ローの信号を受けて、スイッチング手段4を構成するIGBTのゲートに信号を出力する。IGBTは、この信号を受けてオンオフし、加熱コイル2に電流を流したり、遮断したりする。
【0038】
上記構成において動作を説明する。まず、炊飯が開始されると、電流設定手段10が動作モードごとに決められた入力電流設定値Isを設定する。本実施例では、各動作モードごとに入力電流設定値があるが、ここでは、一例として、Is=10Aを設定する。
【0039】
交流電源5の電圧が低いときには、整流平滑手段6の出力電圧も低いので、加熱コイル2への印加電圧が低くなる。このため、整流平滑手段6の出力電圧が高いときと同じ導通時間では加熱コイル2に流れる電流は小さくなる。このときの導通時間をTd、整流平滑手段6の印加電圧をV、加熱コイル2のインダクタンスをLとすると、Td時に加熱コイル2に流れている電流ILは、
IL=(V/L)×Td
で表すことができる。
【0040】
加熱コイル2に供給する電流が小さければ、そのときの交流電源5から整流平滑手段6への入力電流Iinも小さくなる。つまり、包絡線検知手段11が検知する入力電流値Iinが入力電流設定値Isより低くなるので、導通時間設定時間12を構成する増幅回路は出力電圧を大きくする。すると、導通時間設定手段12を構成する発振回路がハイ信号を長くするので、瞬時にスイッチング手段4の導通時間が長くなる。この結果、加熱コイル2に流れる電流が増え、交流電源5より供給される入力電流Iinも入力電流設定値Isに近づく。
【0041】
逆に、交流電源5の電圧がピーク値付近のときには、整流平滑手段6の出力もピーク値付近に上昇し、加熱コイル2への印加電圧が高くなるので、導通時間が同じ場合、整流平滑手段6の出力が低いときに比べ、加熱コイル2に流れる電流が大きくなる。つまり、包絡線検知手段11が検知する入力電流値Iinが入力電流設定値Isより大きくなるので、増幅回路は出力電圧を小さくする。発振回路はこの出力電圧に応じてハイ信号を短くするので、スイッチング手段4の導通時間が短くなり、交流電源5より供給される入力電流Iinは入力電流設定値Isまで低下する。
【0042】
図2(a)は交流電源5の電圧波形を示している。図2(b)は交流電源5の入力電流波形を示している。図2(c)は整流平滑手段6の電圧波形を示している。図2(d)は加熱コイル2に流れる電流ILのうち整流平滑手段6より供給される電流の包絡線を示している。図2に示すように、交流電源5の電圧が低いときと高いときの加熱コイル2に流れる電流の差を小さくなっている。
【0043】
このように、交流電源5の入力電流を入力電流設定値Isに制御することで、交流電源5の電圧が低いときでも加熱コイル2に流す高周波電流を大きくすることができるので、スイッチング手段4の導通時間を交流電源5の半周期ごとに制御していたときに比べ、交流電源5の半周期全体の電力量を増加することができる。
【0044】
したがって、従来の炊飯器と入力電流を同じにすれば、交流電源5の電圧が高いときのスイッチング手段4の導通時間を短くすることができ、スイッチング手段4の両端電圧を低くすることができる。これにより、従来の炊飯器に比べ、スイッチング手段4の電圧定格が低いものを使用することができる。スイッチング手段4にMOSFETを使用する場合には、電圧定格が低くなればオン抵抗も小さくなるので、損失を下げることができる。また、スイッチング手段4の両端電圧が低くなることで、200V電源の地域にも対応することができる。
【0045】
(実施例2)
図3は、本発明の第2の実施例の導通時間設定手段の回路構成を示しており、この導通時間設定手段は導通時間の設定値に上限値を設けたもので、増幅回路21は、オペアンプ22、抵抗23、24からなる反転増幅回路として構成している。この増幅回路21は、電流設定手段10により設定する入力電流設定値Isと包絡線検知手段11により検知する入力電流Iinの差分を抵抗23、24の抵抗値の比率で誤差増幅している。
【0046】
リードラグフィルタ25は、2つの抵抗26、27と電解コンデンサ28の直列回路で構成している。導通時間制限回路29は、ツェナーダイオードで構成している。本実施例では、このツェナーダイオードのツェナー電圧で上限値を設定することにより、リードラグフィルタ25の出力値が所定値以下に制限されている。
【0047】
発振回路30は、複数のコンパレータで構成し、この発振回路30は、リードラグフィルタ25の出力値に応じてハイの出力時間を変化させるとともにローの出力時間を一定にすることで、駆動手段13への出力信号の発振周波数を変化させる。他の構成は上記実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0048】
上記構成において導通時間設定手段の動作について説明する。整流平滑手段6の出力電圧が低いときには、出力電圧が高いときに比べ導通時間が同じでも加熱コイル2に流れる高周波電流が小さくなるので、交流電源5より供給される入力電流Iinも小さくなる。
【0049】
したがって、入力電流Iinが入力電流設定値Isよりも小さくなるので、増幅回路21の出力は大きくなる。このため、リードラグフィルタ25の出力も大きくなるが、ツェナーダイオードの動作電圧以上には増加しない。発振回路30は、この出力電圧に応じてハイ信号の出力時間を変えているので、ハイ信号は一定時間までしか増加しないことになる。
【0050】
本実施例では、発振回路30はハイ信号の出力時間を変化させるとともにロー信号の出力時間を一定にしているので、発振周波数は一定値以下には下がらないこととなる。
【0051】
このように、導通時間設定手段が設定する導通時間に上限値を設けることにより、加熱コイル2に流れる高周波電流の周波数に下限値を設けることができるので、加熱コイル2に流れる高周波電流の周波数が人間の可聴周波数範囲の上限値20kHzより下がらないようにすることができ、騒音の小さい炊飯器を実現することができる。
【0052】
なお、本実施例における導通時間設定手段の構成はこれに限るものではなく、例えば、マイクロコンピュータを利用しても構わない。
【0053】
(実施例3)
図4に示すように、平均電流設定手段41は、交流電源5の入力電流の平均値を設定するもので、本実施例では、マイクロコンピュータで構成している。本実施例の炊飯器には、炊飯、保温などの複数の動作モードがある。この動作モードごとに対応した平均入力電流の設定値(以下、平均電流設定値Iasという)を設けている。この平均電流設定値Iasはマイクロコンピュータ内のROMなどに記憶されている。つまり、平均電流設定手段41は、動作モードごとにROMデータから所定の平均電流設定値Iasを呼び出している。
【0054】
平均電流検知手段42は、交流電源5の入力電流の平均値を検知するもので、包絡線検知手段11の出力電圧の平均値を検知するようにしている。この平均電流検知手段42は、オペアンプと、このオペアンプの出力を平滑する電解コンデンサと、この電解コンデンサに並列接続した抵抗とで構成している。
【0055】
電流設定手段43は、平均電流検知手段42と平均電流設定手段41の出力に応じて入力電流の設定値を変更するもので、マイクロコンピュータ内のAD変換器と演算回路で構成している。他の構成は上記実施例1と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
上記構成において動作を説明する。まず、炊飯が開始されると、平均電流設定手段41により動作モードごとに決められた電流設定値Iasを設定する。つぎに、電流設定手段43により動作モードごとに決められた初期値を電流設定値Isとして設定する。本実施例では、電流設定値Isの初期値を10Aとしている。
【0057】
さらに、電流設定手段43は平均電流設定値Iasと平均電流検知手段42により検知した平均電流値を比較し、変動電流値dIsを設定する。その後、電流設定手段43は、
Is=Is+dIs
に基づいて、電流設定値Isを変更する。ここで、電流設定値Isの更新タイミングは交流電源5の半周期につき1回である。導通時間設定手段12は、この電流設定値Isと包絡線検知手段11により検知した入力電流値を比較して導通時間を設定する。
【0058】
図4に示す主要部の波形は図2と同じである。つまり、交流電源5の入力電流波形は正弦波にはならないが、平均電流を検知するので、波形変化による入力電流変動の影響を抑えることができる。
【0059】
このように、本実施例では、電流設定手段43が平均電流設定手段41と平均電流検知手段42の出力に応じて、入力電流設定値Isを更新するので、入力電流の波形変化に対応することができ、入力電流のばらつきを抑えることができる。
【0060】
なお、入力電流設定値Isに上限値を設けることもできる。例えば、電流設定手段43を構成するマイクロコンピュータのROMに予め入力電流設定値の上限値を記憶しておき、この上限値と電流設定手段43が設定した入力電流設定値Isとを比較する工程を追加する。この比較工程で、入力電流設定値Isが上限値より大きければ、電流設定手段43は入力電流設定値を上限値に変更する。
【0061】
このように、電流設定手段43が設定する入力電流設定値に上限値を設けることにより、家庭内のブレーカが遮断しないように入力電流を抑えることができる。したがって、過大な電流が流れることでブレーカが落ちて炊飯できなくなるのを防止することができる。
【0062】
また、入力電流の平均値を検知する代わりに実効電流検知手段を設け、入力電流の実効値を検知するようにしてもよい。この場合、実効電流検知手段は電流トランスの出力値の実効値を検知する実効値検知回路で構成する。実効値検知回路はオペアンプなどので構成することができる。入力電流の実効値を検知する場合も、平均値を検知する場合と同様に、入力電流波形の変化に対応でき、容易に入力電流値を推測することができる。さらに、実効値を検知する場合は、交流電源5の電圧を検知することで、入力電力を正確に把握することができるので、より電力供給の安定した炊飯器を提供することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に記載の発明によれば、スイッチング手段の導通時間を設定する導通時間設定手段は、交流電源の入力電流を設定する電流設定手段と交流電源の入力電流の包絡線を検知する包絡線検知手段の出力に応じて、導通時間を設定するよう構成したから、整流平滑手段の電圧が低いとき、すなわち交流電源の電圧が低いときに加熱コイルに流す電流を増加することができるので、スイッチング手段の両端電圧が低いままで、加熱コイルから鍋への高周波電力の供給を増加することができる。また、導通時間設定手段は、導通時間の設定値に上限値を設けたから、加熱コイルに流れる高周波電流の動作周波数に下限を設けることができるので、人間の可聴周波数範囲外の動作周波数にすることができ、低騒音の炊飯器を提供できる。
【0064】
また、請求項2に記載の発明によれば、包絡線検知手段の出力値の平均値を検出する平均電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の平均値を設定する平均電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記平均電流検知手段と前記平均電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにしたから、入力電流波形に歪みが生じても、入力電流の平均値を一定に制御することができ、炊飯器の入力電力を一定に制御することができる。
【0065】
また、請求項3に記載の発明によれば、交流電源の入力電流の実効値を検知する実効電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の実効値を設定する実効電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記実効電流検知手段と前記実効電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにしたから、入力電流波形に歪みが生じても、入力電流の実効値を一定に制御することができ、炊飯器の入力電力を一定に制御することができる。
【0066】
また、請求項4に記載の発明によれば、電流設定手段は、入力電流の設定値に上限値を設けたから、入力電流を一定値に抑えることができるので、ブレーカが切れることがなくなり、炊飯が中断するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例の炊飯器の一部ブロック化した要部回路図
【図2】 同炊飯器の要部電圧、電流波形図
【図3】 本発明の第2の実施例の炊飯器の導通時間設定手段の回路図
【図4】 本発明の第3の実施例の炊飯器の一部ブロック化した要部回路図
【図5】 従来の炊飯器の一部ブロック化した要部回路図
【図6】 同炊飯器の要部電圧、電流波形図
【符号の説明】
1 鍋
2 加熱コイル
3 共振コンデンサ
4 スイッチング手段
5 交流電源
6 整流平滑手段
10 電流設定手段
11 包絡線検知手段
12 導通時間設定手段
Claims (4)
- 鍋と電磁気的に結合し高周波電力を供給して前記鍋を加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルと共振回路を構成する共振コンデンサと、前記加熱コイルに流れる高周波電流を制御するスイッチング手段と、前記加熱コイルに電力を供給する交流電源と、前記交流電源を整流平滑する整流平滑手段と、前記交流電源の入力電流を設定する電流設定手段と、前記交流電源の入力電流の包絡線を検知し、この包絡線を全波整流する包絡線検知手段と、前記スイッチング手段の導通時間を設定する導通時間設定手段とを備え、前記導通時間設定手段は、前記電流設定手段と前記包絡線検知手段の出力に応じて導通時間を設定するよう構成し、導通時間の設定値に上限値を設けた炊飯器。
- 包絡線検知手段の出力値の平均値を検出する平均電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の平均値を設定する平均電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記平均電流検知手段と前記平均電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにした請求項1に記載の炊飯器。
- 交流電源の入力電流の実効値を検知する実効電流検知手段と、前記交流電源の入力電流の実効値を設定する実効電流設定手段とを備え、電流設定手段は、前記実効電流検知手段と前記実効電流設定手段の出力に応じて入力電流の設定値を変更するようにした請求項1に記載の炊飯器。
- 電流設定手段は、入力電流の設定値に上限値を設けた請求項2または3記載の炊飯器。
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