JP4026495B2 - サーバの切り換え制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両内の通信端末に接続されるサーバを切り換える制御を行う装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年開発されている建設機械には、車体の現在位置、サービスメータの計時値(累積稼動時間)、車体内で発生した過去のエラー履歴などの車両状態の情報(以下車両状態データ)を収集するコントローラなどの各種コントローラが搭載されている。こうした車載コントローラ内には、CPUが設けられており、フラッシュメモリなどのEEPROM(電気的に消去可能なROM)に記憶された車載プログラムにしたがい演算処理を実行し車両状態データの収集、外部との送受信等の処理を行う。たとえば車載のコントローラと外部のサーバとはインターネット等の通信手段を介して通信自在に接続されており、車載コントローラで収集された車両状態データがサーバに送信される。あるいはサービスマンが建設機械まで出向き車載コントローラにパーソナルコンピュータを接続して車両状態データをパーソナルコンピュータに取り込む。
【0003】
車載プログラムをバージョンアップした場合や車両ごとにエラーコード生成、異常判断のためのしきい値等を変更したい場合には、上記フラッシュメモリに記憶された旧い車載プログラムを新しい車載プログラムに書き換える必要がある。
【0004】
(従来技術1)
特許文献1(特開平10−212739号公報)には、建設機械に関し、その稼動データ収集用のコントローラを設けるとともに、遠隔地にサーバとして機能もつ監視装置を設けて、これら稼動データ収集用コントローラと監視装置とを通信装置によって接続して、監視装置からの要求に応じて稼動データ収集用コントローラ内の稼動データ処理プログラムを書き換えるという発明が記載されている。通常運用時には建設機械内の稼動データ収集用コントローラは、稼動データ処理プログラムにしたがい稼動データを収集しこれを処理して、監視装置からの要求に応じて、処理した稼動データを監視装置に送信する。書き換え時には監視装置から新しい稼動データ処理プログラムが建設機械に送信され、建設機械内の稼動データ収集用コントローラで旧い稼動データ処理プログラムが新しい稼動データ処理プログラムに書き換えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
車載プログラムを書き換える対象の建設機械の台数が多い場合に、ある特定の建設機械のグループで通常の運用処理を行いながら他の建設機械のグループで並行して書き換え処理を行いたいとの要望がある。
【0006】
通常運用時にサーバ(監視装置)と建設機械との間で送受信されるデータは、車体の現在位置、サービスメータの計時値、エラーコードなどのデータにすぎないためそのデータ量は、たとえば数バイト程度と小さい。これに対して書き換え時にサーバ(監視装置)と建設機械との間で送受信されるデータは、プログラムであるため、そのデータ量は数百キロバイトと大きい。つまり書き換え時に送受信されるデータ量は、通常運用時に送受信されるデータ量と比較して桁違いに巨大なものとなる。
【0007】
このため通常運用処理と書き換え処理とを同時に同じサーバ(監視装置)で行うことにすると、サーバ(監視装置)には高い負荷がかかるとともに通信路を占有する。これによりプログラム書き換えの処理に時間がかかり、サーバ(監視装置)が通常運用を行っている他の建設機械との間で車両状態データの送受信がスムーズに行われなくなるおそれがある。この結果、サーバ(監視装置)側で取得すべき車両状態データが通信路の途中で消失したりデータ受信までに時間遅れが生じたり、最悪の場合にはシステムがダウンして通常運用に支障をきたすおそれがある。
【0008】
ここで建設機械で収集される車両状態データは、建設機械のユーザにとって重要な情報を含んでおり、リアルタイムに車両状態データをサーバ(監視装置)側で取得できなくなることは、システムの品質保証上、許されない場合がある。
【0009】
この点、上記特許文献1には、通常運用処理と書き換え処理とを監視装置で並行に処理することに関する記載はない。また多数の建設機械との間で書き換え処理を行うことに関する記載はない。
【0010】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、サーバと多数の車両(たとえば建設機械)との間で通常の運用処理と並行して書き換え処理を行うにあたり、データの送受信が安定して行われるようにすることを解決課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用、効果】
第1発明は、
第1のサーバ(2)と第2のサーバ(3)とが車両(50)内の車載コントローラ(20)に通信手段(14、15、8、9、10、11)によって通信自在に接続されており、
これら第1のサーバ(2)および第2のサーバ(3)にはそれぞれ自己のサーバを識別するサーバ識別ID(ID1、ID2)が対応づけられるとともに、車載コントローラには各第1のサーバ識別ID、第2のサーバ識別IDに対応するコントローラ識別ID(ID3、ID4)が対応づけられており、
前記車載コントローラ(20)で第1のサーバ識別ID(ID1)に対応するコントローラ識別ID(ID3)が設定されると、車両(50)側では、車載コントローラ(20)と第1のサーバ(2)との通信接続が可能な状態にし、前記車載コントローラ(20)で第2のサーバ識別ID(ID2)に対応するコントローラ識別ID(ID4)が設定されると、車両(50)側では、車載コントローラ(20)と第2のサーバ(3)との通信接続が可能な状態にするようにし、
初期状態では、前記車載コントローラ(20)に第1のサーバ識別ID(ID1)に対応するコントローラ識別ID(ID3)が設定されており、第2のサーバ(3)から前記車両(50)に対して通信接続を確立する指令が送信された場合に、所定時間だけ、前記車載コントローラ(20)に第2のサーバ識別ID(ID2)に対応するコントローラ識別ID(ID4)が設定されること
を特徴とする。
【0012】
第2発明は、第1発明において、
第1のサーバ(2)は、車両状態データを、車載コントローラ(20)と送受信する通常運用サーバ(2)であって、
第2のサーバ(3)は、車載コントローラ(20)内の車載プログラムを書き換える新しい車載プログラムを送信する書き換えサーバ(3)であること
を特徴とする。
【0013】
第1発明、第2発明によれば、図8に示すように、車両50と第1のサーバ2、第2のサーバ3との間で通信接続を切り換えることができる。このためサーバに高い負荷がかかったりデータ量の大きいプログラムの送信によって通信路が占有されることがなくなり、サーバと多数の車両との間でデータの送受信が安定して行われる。
【0014】
第1発明、第2発明のうち第2発明では、特に建設機械などの車両50と通常運用サーバ2、書き換え専用サーバ3といった各サーバとの間で通信接続を切り換えることができる。このため多数の建設機械が存在する場合に、ある建設機械と通常運用サーバ2との通信接続を確立して通常運用処理を行いつつ、これと並行して他の建設機械と書き換え専用サーバ3との通信接続を確立して書き換え処理を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は実施形態の全体の装置構成を示している。なお以下の実施形態では車両として建設機械50を想定し、この建設機械50内の車載プログラム60を書き換え専用サーバ3からの要求に応じてリモートで書き換える場合を想定する。
【0016】
本実施形態のシステムでは、建設機械50が通常運用サーバ2、書き換え専用サーバ3とにそれぞれ通信手段(無線通信11、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線14、15)より相互に送受信自在に接続されている。
【0017】
通常運用サーバ2は、イントラネット4の中に位置し、インターネット7に接続している。これにより通常運用サーバ2は、インターネット7、イントラネット4の各クライアント端末のサーバとして機能する。この通常運用サーバ2には、ネットワーク中の自己を識別するID(サーバ識別ID)であるIPアドレス「ID1」が付与されている。建設機械50には通常運用サーバ2と通信可能な後述する通信端末(通信コントローラ30)が搭載されており、この通信端末にはサーバ識別ID「ID1」に対応するIPアドレス「ID3」が付与されている(図10参照)。
【0018】
書き換え専用サーバ3は、イントラネット5の中に位置し、インターネット7に接続している。これにより書き換え専用サーバ3は、インターネット7、イントラネット5の各クライアント端末のサーバとして機能する。この書き換え専用サーバ3には、ネットワーク中の自己を識別するID(サーバ識別ID)であるIPアドレス「ID2」が付与されている。建設機械50には書き換え専用サーバ3と通信可能な後述する通信端末(通信コントローラ30)が搭載されており、この通信端末にはサーバ識別ID「ID2」に対応するIPアドレス「ID4」が付与されている(図10参照)。
【0019】
他の建設機械とサーバとの対応関係も同様である。
【0020】
図10は複数の建設機械50、50a、50b…と通常運用サーバ2、書き換え専用サーバ3との対応関係を示している。
【0021】
建設機械50a内の通信端末には、通常運用サーバ2のサーバ識別ID「ID1」に対応するIPアドレス「ID5」が付与されているとともに、書き換え専用サーバ3のサーバ識別ID「ID2」に対応するIPアドレス「ID6」が付与されている。
【0022】
また建設機械50b内の通信端末には、通常運用サーバ2のサーバ識別ID「ID1」に対応するIPアドレス「ID7」が付与されているとともに、書き換え専用サーバ3のサーバ識別ID「ID2」に対応するIPアドレス「ID8」が付与されている。
【0023】
各ID1、ID3、ID5、ID7…で特定されるサーバ、通信端末は1つのイントラネット4を構成している。
【0024】
また各ID2、ID4、ID6、ID8…で特定されるサーバ、通信端末は1つのイントラネット5を構成している。
【0025】
建設機械50の車体内には、パケットデータ通信用の無線機を内蔵した通信コントローラ30が設けられている。通信コントローラ30のアンテナ31と地上波用のアンテナ10との間でパケット通信による無線通信11が行われる。アンテナ10は専用線9を介して地上波基地局8に接続している。地上波基地局10は、たとえば携帯電話基地局である。地上波基地局10は、専用線14、15を介してイントラネット4、5にそれぞれ接続している。
【0026】
建設機械50の車体内には、通信コントローラ30以外に情報収集コントローラ20、エンジンコントローラ40等の各コントローラが設けられており、これら各コントローラは、所定の通信プロトコルにしたがって通信が行われる車体内通信回線51によって相互に通信可能に接続されている。
【0027】
建設機械50の車体の各部には、エンジン57の冷却水、バッテリ53の電圧、GPSセンサなどが配設されており、これら各センサはセンサ群52を構成している。なおGPSセンサはGPS衛星から送信される電波を受信して、自己の建設機械50の絶対位置を検出する。また建設機械50の車体内には、カレンダ、タイマが設けられている。カレンダ、タイマは、年、月、日、時刻(時、分、秒)を計時する。また建設機械50の車体内にはサービスメータSMRが設けられている。サービスメータSMRはエンジン57の累積稼動時間を計時する。
【0028】
情報収集コントローラ20内では、バス線24を介して、CPU21とフラッシュメモリ22とRAM(随時書き込み読み出しメモり)23とが相互にデータの入出力が自在に接続されている。なおフラッシュメモリ22は、EEPROM(電気的に消去可能なROM)の一種である。またRAM23の代わりにフラッシュメモリなどのEEPROMを用いてもよい。フラッシュメモリ22の所定記憶領域には、後述するように、車載プログラム60が記憶されている。またフラッシュメモリ22の所定記憶領域には、後述するように車載プログラム60を書き換える書き換え処理を行う書き換え制御プログラム61記憶されている。
【0029】
CPU21は車載プログラム60にしたがい演算処理を行い、車両状態データを生成する。車両状態データはRAM23のデータ領域に記憶される。
【0030】
たとえば始動ロックが有効と設定されている場合には、カレンダ、タイマの計時値等を取り込んで、設定された始動ロック時間帯になると始動ロック設定指令を出力して後述する始動ロックを行い始動ロック時間帯外の時間になると始動ロック解除指令を出力する処理を行う。
【0031】
RAM23のデータ領域には、以下のような車両状態データが記憶される。
【0032】
・自己のIPアドレス(ID3、ID4)
・車載プログラム60の現在のバージョン
・通信端末(通信コントローラ30)の開局検査が完了したという開局検査完了情報
・建設機械50の機種、型式、機番
・サービスメータSMRの計時値(累積稼動時間)
・バッテリ53の現在の端子電圧(バッテリ端子電圧情報)
・冷却水の温度
・GPSセンサで検出された自己の車両の現在の絶対位置(絶対位置情報)
・車体内で発生したエラーコードの履歴
・現在キースイッチ54がオンされている(ACC位置にある)か否かを示すキースイッチ情報
・現在始動ロックが有効か無効であるか、現在設定されている始動ロックの時間帯などの始動ロック情報
バス線24は情報収集コントローラ20外のサービスメータSMR、センサ群52にインターフェースを介して接続しており、またバス線24はコントローラ20外の車体内通信回線51にインターフェースを介して接続している。
【0033】
なお本実施形態では、通信コントローラ30と情報収集コントローラ20とを別体にして、通信端末である通信コントローラ30のIPアドレス「ID3」、「ID4」を情報収集コントローラ20に設定しているが、通信端末としての通信コントローラ30と情報収集コントローラ20の機能を1つのコントローラで達成するように構成してもよい。
【0034】
建設機械50の車体内には、始動ロック回路55が組み込まれている。
【0035】
この始動ロック回路55はリレー等で構成されキースイッチ54と、エンジン57を始動するスタータ56との間に介在されている。スタータ56の電源は車載のバッテリ53であり、このバッテリ53は各コントローラ20、30、40の電源でもある。
【0036】
始動ロック設定指令がエンジンコントローラ40から出力されると、始動ロック回路55のリレーが付勢されて始動ロック設定状態になる。すなわちキースイッチ54がオン(ACC位置)されたとしても、バッテリ53の端子電圧がスタータ56には印加されなくなる。これによりスタータ56が作動不能の状態となりエンジン57を始動することができなくなる。これに対してエンジンコントローラ40から始動ロック解除指令が出力されると始動ロック回路55のリレーが消勢されて始動ロック解除状態になる。すなわちキースイッチ54をオン(ACC位置)にすることによってスタータ56が作動してエンジン57を始動することができる。上記始動ロック設定指令、始動ロック解除指令は、車載プログラム60にしたがい情報収集コントローラ20から車体内通信回線51を介してエンジンコントローラ40に与えられる。始動ロック設定指令、始動ロック解除指令は、現在始動ロックが「有効」と設定されている場合に、情報収集コントローラ20から出力される。なお始動ロック時間帯に入ったか否かは情報収集コントローラ20内のカレンダ、タイマの計時値に基づき判断される。
【0037】
またキースイッチ54がオンされた(ACC位置にある)という情報は、エンジンコントローラ40から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。
【0038】
・サーバの切り換え制御
通常運用サーバ2は、建設機械50を含む複数の建設機械内の車両状態データを管理している。
【0039】
書き換え専用サーバ3は、車載プログラム60の書き換えをリモートで行うサーバである。
【0040】
通常運用サーバ2は、マスターファイル6を備えている。通常運用サーバ2に取り込まれた最新の車両状態データはマスターファイル6に格納される。
【0041】
一方、書き換え専用サーバ3は、マスターファイル6′を備えている。通常運用サーバ2内のマスターファイル6の記憶データは、インターネット7を介して書き換え専用サーバ3内に取り込まれ、マスターファイル6と同記憶内容つまり「レプリカ」としてのマスターファイル6′が作成される。
【0042】
つぎに図8を併せ参照して建設機械50がいずれのサーバと接続を確立するかその接続切り換えの制御について説明する。
【0043】
初期状態では、建設機械50の車載コントローラ20には、通常運用サーバ2のサーバ識別ID「ID1」に対応する自己のIPアドレス「ID3」が「有効」と設定されており、書き換え専用サーバ3のサーバ識別ID「ID2」に対応する自己のIPアドレス「ID4」が「無効」と設定されている(通常運用モード)。情報収集コントローラ20で「有効」と設定された自己のIPアドレスのデータ「ID3」は、情報収集コントローラ20から車体内通信回線51を介して通信コントローラ30内に取り込まれる。
【0044】
通常運用サーバ2から建設機械50の車両状態データを要求する指令が、専用線14、地上波基地局8、専用線9、アンテナ10を介して無線通信11として建設機械50に送信されると、建設機械50のアンテナ31で受信され、このデータは通信コントローラ30に取り込まれる。通常運用サーバ2から送信されるデータ中には、サーバ識別ID「ID1」を含んでいる。通信コントローラ30では現在IPアドレス「ID3」が設定されており、受信したデータにはサーバ識別ID「ID1」が含まれているので、両者は対応している(「ID1」、「ID3」であり同一ネットワークである)と判断して、通信接続を確立し、建設機械50側から車両状態データの送信が可能な状態にする(図8のステップ401の判断YES)。
【0045】
このため車両状態データを要求する指令が通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。たとえば現在のサービスメータSMRの計時値を要求する指令が情報収集コントローラ20内に取り込まれると、RAM23のデータ領域に記憶されている現在のサービスメータSMRの計時値が情報収集コントローラ20から車体通信回線51を介して通信コントローラ30内に取り込まれ、通信コントローラ30のアンテナ31から無線通信11として送信され、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線14を介して通常運用サーバ2に取り込まれる。
【0046】
また始動ロックの有効、無効、始動ロック時間帯という始動ロック情報を設定する指令が通常運用サーバ2から建設機械50に送信された場合についても同様にして、情報収集コントローラ20に指令された始動ロック情報が設定される。
【0047】
なお通常運用サーバ2の各クライアント端末から通常運用サーバ2を介して建設機械50に対して同様な指令を与えるようにしてもよい。
【0048】
また建設機械50で特定の異常が発生したり、特定の時刻になるなど特定のイベントが発生した場合には、そのイベント発生時点でRAM23に記憶されている異常内容や定期的に送信すべき車両状態データなどが情報収集コントローラ20から車体通信回線51を介して通信コントローラ30内に取り込まれ、通信コントローラ30のアンテナ31から無線通信11として送信される(自動発信)。自動発信された車両状態データは、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線14を介して通常運用サーバ2に取り込まれる。
【0049】
通常運用サーバ2に取り込まれた建設機械50の車両状態データは、通常運用サーバ2に属するネットワーク、つまりインターネット7、イントラネット4に接続されている各クライアント端末から通常運用サーバ2にアクセスすることにより各クライアント端末の表示画面に表示される。
【0050】
通常運用サーバ2に取り込まれた最新の車両状態データはマスターファイル6に格納されるとともに、インターネット7を介してマスターファイル6′に格納される(図8のステップ405)。
【0051】
車載プログラム60をバージョンアップした場合や建設機械ごとにエラーコード生成や異常判断のためのしきい値等を変更したい場合には、上記フラッシュメモリ22に記憶されている旧い車載プログラム60′が新しい車載プログラム60に書き換えられる。なお以下の説明では旧い車載プログラム60にダッシュを付与して新しい車載プログラム60と区別する。
【0052】
書き換え専用サーバ3から建設機械50の車載プログラム60を書き換える指令が専用線15、地上波基地局8、専用線9、アンテナ10を介して無線通信11として建設機械50に送信されると、建設機械50のアンテナ31で受信され、このデータは通信コントローラ30内に取り込まれる。
【0053】
書き換え専用サーバ3から送信されるデータ中には、サーバ識別ID「ID2」を含んでいる。通信コントローラ30では現在IPアドレス「ID3」が設定されており、受信したデータにはサーバ識別ID「ID2」が含まれているので、両者は対応していない(「ID2」、「ID3」であり同一のネットワークではない)と判断して、通信接続を切断する(図8のステップ401の判断NO)。
【0054】
識別IDが不一致により通信接続が切断されたという情報は通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。これを受けて情報収集コントローラ20では、書き換え専用サーバ3のサーバ識別ID「ID2」に対応する自己のIPアドレス「ID4」が「有効」に切り換えられ、通常運用サーバ2のサーバ識別ID「ID1」に対応する自己のIPアドレス「ID3」が「無効」に切り換えられる(書き換えモード)。情報収集コントローラ20で「有効」と設定された自己のIPアドレスのデータ「ID4」は、情報収集コントローラ20から車体内通信回線51を介して通信コントローラ30内に取り込まれる(図8のステップ402)。
【0055】
書き換え専用サーバ3は、通信接続が切断されたことを受けて書き換え指令を建設機械50に対して再度送信する。書き換え専用サーバ3から送信されるデータ中には、サーバ識別ID「ID2」を含んでいる。通信コントローラ30では現在IPアドレス「ID4」が設定されており、受信したデータにはサーバ識別ID「ID2」が含まれているので、両者は対応している(「ID2」、「ID4」であり同一ネットワークである)と判断して、通信接続を確立する(図8のステップ403の判断YES)。
【0056】
以後、一定の条件をクリアすることを前提として、書き換え専用サーバ3からの指令に応じて情報収集コントローラ20で車載プログラム60を書き換える処理が行われる(図8のステップ404)。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、建設機械50と通常運用サーバ2、書き換え専用サーバ3といった各サーバとの間で通信接続を切り換えることができる。このため図10に示すように多数の建設機械50、50a、50b…が存在する場合に、ある建設機械と通常運用サーバ2との通信接続を確立して通常運用処理を行いつつ、これと並行して他の建設機械と書き換え専用サーバ3との通信接続を確立して書き換え処理を行うことができる。このためサーバに高い負荷がかかったりデータ量の大きいプログラムの送信によって通信路が占有されることがなくなり、サーバと多数の建設機械との間でデータの送受信が安定して行われる。
【0058】
書き換え専用サーバ3からの指令に応じて車載プログラム60を書き換える処理の手順は図2に示される。
【0059】
・通常運用モードへの復帰制御
同図2に示すように、図8のステップ403で建設機械50と書き換え専用サーバ3との間で通信接続が確立すると(図2のステップ101)、情報収集コントローラ20でタイマがセットされ、タイマタスクが実行される(ステップ102、108、109)。
【0060】
ここでタイマのセット時間は、書き換え処理に要する時間に余裕を見込んだ時間Tに設定される。
【0061】
情報収集コントローラ20はマルチタスクで動作しておりタイマタスクは他タスクつまり書き換えタスク(ステップ103〜107)とは独立して動作する。このため他タスクが暴走したとしてもタイマタスクが確実に動作して自己リセット処理により旧車載プログラム60′を起動させることが可能になる(ステップ109)。
【0062】
書き換えタスク(ステップ103〜107)が正常に終了した場合には、タイマはセット時間Tが経過する前にクリアされ、新しい車載プログラム60に書き換えられる。
【0063】
これに対して書き換えタスク(ステップ103〜107)の途中で通信異常やハングアップが発生すると、タイマのセット時間Tを超えても書き換え処理が終了しないことになり(ステップ108の判断YES)、リセット処理を実行し、旧い車載プログラム60′が起動される。
【0064】
更に建設機械50とサーバとの通信状態が書き換えモードから通常運用モードに切り換えられる。すなわち情報収集コントローラ20では、書き換え専用サーバ3のサーバ識別ID「ID2」に対応する自己のIPアドレス「ID4」が「無効」に復帰され、通常運用サーバ2のサーバ識別ID「ID1」に対応する自己のIPアドレス「ID3」が「有効」に復帰される(通常運用モード)。情報収集コントローラ20で「有効」と設定された自己のIPアドレスのデータ「ID3」は、情報収集コントローラ20から車体内通信回線51を介して通信コントローラ30内に取り込まれる。このため以後通常運用サーバ2と建設機械50との間での通信接続が可能となり通常運用処理を行うことができる(ステップ109)。
【0065】
以上のように本実施形態によれば、書き換え処理を行っている途中に通信異常やハングアップなどの異常が発生した場合であっても確実に旧い車載プログラム60′を起動させて情報収集コントローラ20の機能を維持することができる。このため通常の運用処理を確実に行うことができ情報収集コントローラ20が機能しなくなることによる作業効率低下を防止することができる。またタイマのセット時間Tが経過すれば書き換えモードから通常運用モードに移行するので、書き換え処理のための通信によって通信路が長時間占有されることが回避され通常の運用処理のための通信を確保して通常の運用処理に支障を来さないようにすることができる。
【0066】
・車両状態データのチェック処理
図2のステップ101で書き換え専用サーバ3と建設機械50の通信コントローラ30との通信接続が確立されると、書き換え専用サーバ3から送信されてきた書き換え指令が通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。
【0067】
情報収集コントローラ20が書き換え指令を受けると、つぎのステップ103で、まず現在の車両状態データをチェックする処理が実行され、更につぎのステップ104で、チェック結果に応じて車載プログラム60の書き換え処理を実行すべきか否か(書き換え処理が可能か否か)の判断処理が実行される。
【0068】
ステップ103、104のチェック処理、判断処理は、書き換え専用サーバ3で行われる。すなわち情報収集コントローラ20は書き換え指令を受けると、チェックすべき車両状態データを情報収集コントローラ20から車体通信回線51を介して通信コントローラ30に送信する。このためチェックすべき車両状態データは通信コントローラ30のアンテナ31から無線通信11として送信され、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線15を介して書き換え専用サーバ3に取り込まれる。
【0069】
書き換え専用サーバ3は、受信した車両状態データをチェックし、つぎの条件がすべて満たされていることを条件として、書き換え処理を実行すべきと判断する。
【0070】
1)始動ロック中ではないこと
2)建設機械50が稼動中ではないこと
3)現在の旧い車載プログラム60′が書き換え対象のバージョンであること
上記1)の「始動ロック中ではないこと」を書き換え処理の実行の条件としたのは、書き換え処理の途中で情報収集コントローラ20が機能しなくなるおそれがあり、情報収集コントローラ20が機能しなくなることにより始動ロックを解除する指令を出力できなくなるおそれがあるからである。建設機械50は過酷な状況で稼動されることが多く、たとえば建設機械の周囲が崖であったり周囲に倒壊物があるような状況下で始動ロック解除が不可能になると、危険に晒されることになる。
【0071】
「始動ロック中ではないこと」は、情報収集コントローラ20に記憶されている始動ロック情報に基づき判断される。たとえば始動ロックが「無効」に設定されている場合、始動ロックが「有効」かつ現在の時刻が始動ロック時間帯外である場合に、「始動ロック中ではない」と判断される。
【0072】
上記2)の「建設機械50が稼動中ではないこと」を書き換え処理の条件としたのは、稼動中の建設機械50に新しい車載プログラム60を送信中に、稼動状態によっては(たとえば走行中)通信が途絶えたり通信が不安定になり、書き換え処理が正常に終了しないおそれがあるからである。
【0073】
「建設機械50が稼動中ではないこと」は、情報収集コントローラ20に記憶されているキースイッチ情報に基づき判断される。たとえばキースイッチ54がオフされている(ACC位置オフ)である場合に、「建設機械50が稼動中ではない」と判断される。なお建設機械50が稼動中であるか否かは、オルタネータの端子電圧を検出したり、エンジン57の回転数を検出したりすることによっても、判断することができる。
【0074】
上記3)の「現在の旧い車載プログラム60′が書き換え対象のバージョンであること」を条件としたのは、当然に書き換え処理を行う必要がないからである。前述したように現在の車載プログラムのバージョンは、車両状態データとして情報収集コントローラ20に記憶されている。
【0075】
そのほかに以下の条件を適宜加えるようにしてもよい。
【0076】
4)開局検査が完了した通信端末(通信コントローラ30)であること
5)バッテリ端子電圧が正常範囲であること
6)建設機械50が無線通信11を安定して行える場所や安全な場所に位置していること
上記4)の「開局検査が完了した通信端末(通信コントローラ30)であること」を条件としたのは、サーバ側で建設機械50を管理する準備ができていないからである。
【0077】
上記5)の「バッテリ端子電圧が正常範囲であること」を条件としたのは、バッテリ53の端子電圧が正常範囲から外れていると、情報収集コントローラ20のCPU21を安定して動作することができず書き換え処理が正常に終了しないおそれがあるからである。「バッテリ端子電圧が正常範囲であること」は情報収集コントローラ20に記憶されているバッテリ端子電圧情報に基づき判断される。
【0078】
上記6)の「建設機械50が無線通信11を安定して行える場所や安全な場所に位置していること」を条件としたのは、建設機械50に新しい車載プログラム60を送信中に、通信が途絶えたり通信が不安定になり、書き換え処理が正常に終了しないおそれがあるからである。またコントローラが機能しなくなったとしても建設機械50の安全が確保されるからである。「建設機械50が無線通信11を安定して行える場所や安全な場所に位置していること」は情報収集コントローラ20に記憶されている絶対位置情報に基づき判断される。
【0079】
なお上記条件1)〜6)がすべて満たされることを書き換え処理実行の条件とするのではなく、これら1)〜6)のうちいずれか1つあるいは2以上の組合せを書き換え処理実行の条件としてもよい。
【0080】
書き換え専用サーバ3は、情報収集コントローラ20に記憶されている車両状態データを参照して書き換え処理実行の可否を判断するようにしているが、マスターファイル6′には、建設機械50の最新の車両状態データが格納されているので、マスターファイル6′に格納されている車両状態データを参照して書き換え処理実行の可否を判断してもよい。また情報収集コントローラ20に記憶されている車両状態データとマスターファイル6′に格納されている車両状態データを併せ参照して書き換え処理実行の可否を判断してもよい。
【0081】
図7は、情報収集コントローラ20に記憶されている車両状態データとマスターファイル6′に格納されている車両状態データを併せ参照する場合に、両者のデータを検証する処理の手順を示している。
【0082】
すなわち書き換え専用サーバ3と建設機械50の通信コントローラ30との通信接続が確立されると(ステップ301)、建設機械50より、情報収集コントローラ20内部のチェックすべき車両状態データが書き換え専用サーバ3に送信され、書き換え専用サーバ3で取得される(ステップ302)。一方書き換え専用サーバ3はマスターファイル6′を参照して同じチェックすべき車両状態データを取得している。そこでマスターファイル6′を参照して予め取得しておいた車両状態データと情報収集コントローラ20内部より取得された車両状態データとを比較して(ステップ303)、両者が同一であるか否かが判断される。たとえば始動ロック情報についてマスターファイル6′のデータと情報収集コントローラ20内部のデータとが同一であるかが判断される(ステップ304)。
【0083】
この結果両者が同一である場合には(ステップ304の判断Y)、図2のステップ103のチェック処理が実行され、更に図2のステップ104の書き換え可否判断処理が実行されることになる(ステップ305)。しかし両者が同一でない場合には(ステップ305の判断N)、以降のチェック処理、書き換え可否判断処理を中断して、データが異なる原因を解析する処理が実行される(ステップ306)。
【0084】
書き換え専用サーバ3が、書き換え処理を実行すべきと判断した場合には(図2のステップ104の判断YES)、書き換え専用サーバ3から建設機械50にその旨のデータが送信されて、以後情報収集コントローラ20で旧い車載プログラム60′を新しい車載プログラム60に書き換える実行されることになる(ステップ105、106、107)。しかし書き換え専用サーバ3が、書き換え処理を実行すべきでないと判断した場合には(図2のステップ104の判断NO)、書き換え専用サーバ3から建設機械50にその旨のデータが送信されて情報収集コントローラ20に取り込まれる。情報収集コントローラ20はこれを受けて、タイマがセット時間Tを超えた場合と同様に、リセット処理を実行し、旧い車載プログラム60′を起動させる。更に建設機械50とサーバとの通信状態が書き換えモードから通常運用モードに切り換えられる。このため以後通常運用サーバ2と建設機械50との間での通信接続が可能となり、通常運用処理を行うことができる(ステップ109)。
【0085】
以上のように本実施形態によれば、書き換え処理にあたり車両状態データを事前にチェックするようにしたので、書き換え処理が正常に終了しなくなる事態や危険な状態になることを事前に回避することができる。特に始動ロック状態のまま情報収集コントローラ20が機能しなくなる事態を回避できるので、稼働率が低下する事態を事前に回避することができる。
【0086】
・書き換え処理(車両状態データの退避処理)
つぎに図2に図3を併せ参照して、図2のステップ105、106、107の書き換え処理について説明する。図3(a)〜(f)はフラッシュメモリ22、RAM23の状態の遷移を示している。
【0087】
このうち図3(a)は書き換え前のフラッシュメモリ22、RAM23の状態を示している。同図3(a)に示すように、フラッシュメモリ22のプログラム領域には、車載プログラム60′が記憶されている。なおフラッシュメモリ22の図示していない記憶領域には書き換え制御プログラム61が記憶されている。
【0088】
書き換え制御プログラム61は、旧い車載プログラム60′を新しい車載プログラム60に書き換える処理を行うプログラムである。
【0089】
RAM23はワーク領域23a、23cと車両状態データ60dが記憶されているデータ領域23bとからなる。ワーク領域23a、23cは空容量の領域である。
【0090】
書き換え専用サーバ3が、書き換え処理を実行すべきと判断した場合には(図2のステップ104の判断YES)、書き換え専用サーバ3からその旨のデータが専用線15、地上波基地局8、専用線9、アンテナ10を介して無線通信11として建設機械50に送信され、建設機械50のアンテナ31で受信され、通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。これを受けて情報収集コントローラ20のCPU21は、図3(b)に示すようにRAM23のデータ領域23bから車両状態データ60dを読み出し、これを情報収集コントローラ20から車体通信回線51を介して通信コントローラ30に送信する。このため車両状態データ60dは通信コントローラ30のアンテナ31から無線通信11として送信され、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線15を介して書き換え専用サーバ3に取り込まれる。
【0091】
書き換え専用サーバ3は、車両状態データ60dをサーバ3内の所定の記憶媒体に記憶させ退避させる(図2のステップ105)。
【0092】
書き換え専用サーバ3に車両状態データ60dが退避されると、書き換え専用サーバ3から新しい車載プログラム60が専用線15、地上波基地局8、専用線9、アンテナ10を介して無線通信11として建設機械50に送信され、建設機械50のアンテナ31で受信され、通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。これを受けて情報収集コントローラ20のCPU21は、図3(c)に示すように、受信した新しい車載プログラム60をRAM23のテンポラリ領域23dに一時的にバッファする。このテンポラリ領域23dは、ワーク領域23a、23cのみならずデータ領域23bを含んでいる。すなわち新しい車載プログラム60の容量はRAM23全体の領域に相当する程度に大きい場合が多いが、車両状態データ60dを退避させてデータ領域23bを新しい車載プログラム60のバッファ領域として使用することができるようになったので、確実にRAM23上に大容量の新しい車載プログラム60をバッファすることができるようになる。
【0093】
なおフラッシュメモリ22に記憶されている書き換え制御プログラム61はRAM23の所定の記憶領域にコピーされ、これによりコピーされたRAM23上の書き換え制御プログラム61にシステム制御権が移され、フラッシュメモリ22は書き換えモードとなる。このため以後図3(d)に示すように、RAM23上の書き込み制御プログラム61にしたがい、フラッシュメモリ22上の旧い車載プログラム60′がRAM23上の新しい車載プログラム60によって書き換えられる。すなわちRAM23のテンポラリ領域23dにバッファされている新しい車載プログラム60をCRCチェックした後、この新しい車載プログラム60がフラッシュメモリ22のプログラム領域、つまり旧い車載プログラム60′が記憶されている領域にコピーされ、旧い車載プログラム60′が新しい車載プログラム60に書き換えられる(図2のステップ106)。
【0094】
図3(e)に示すように新しい車載プログラム60がフラッシュメモリ22にコピーされると、情報収集コントローラ20からその旨のデータが車体通信回線51を介して通信コントローラ30に送信され、更に通信コントローラ30のアンテナ31から無線通信11として送信され、アンテナ10、専用線9、地上波基地局8、専用線15を介して書き換え専用サーバ3に取り込まれる。
【0095】
書き換え専用サーバ3は、これを受けて、記憶媒体に退避されていた車両状態データ60dを専用線15、地上波基地局8、専用線9、アンテナ10を介して無線通信11として建設機械50に送信する。車両状態データ60dは建設機械50のアンテナ31で受信され、通信コントローラ30から車体内通信回線51を介して情報収集コントローラ20内に取り込まれる。これを受けて情報収集コントローラ20のCPU21は、図3(f)に示すように、受信した車両状態データ60dをRAM23の元のデータ領域23bに書き込み戻す処理を行う(ステップ107)。
【0096】
なお書き換え処理が終了するとCPU21は自己リセット処理を行う。このためシステム制御権がフラッシュメモリ22に移され、フラッシュメモリ22が通常モードになり、フラッシュメモリ22のプログラム領域に記憶されている新しい車載プログラム60が起動する。
【0097】
ところで、旧い車載プログラム60′が新しい車載プログラム60に書き換えられると、車両状態データ60dのアドレスが変更されることがある。そこで書き換え専用サーバ3に車両状態データ60dが退避されている間に、新しい車載プログラム60に対応するように車両状態データ60dのアドレスを変更するなど、車両状態データ60dを書き換える処理を行い、書き換えられた車両状態データ60dを、RAM23の元のデータ領域23bに書き込み戻すようにしてもよい。
【0098】
以上のように本実施形態によれば、サービスメータSMRの計時値(累積稼動時間)や車体内で発生した過去のエラー履歴など、書き換え処理にあたってリセットされてはならない継承したい車両状態データ60dを、書き換え処理の際に、RAM23のデータ領域23bから書き換え専用サーバ3の記憶媒体に退避させておき書き換え処理終了後に、元のデータ領域23bに書き込み戻すようにしたので、継承したい車両状態データ60dを、情報収集コントローラ20のメモリ上に確実に残すことができる。また車両状態データ60dを退避させた後のデータ領域23bを、新しい車載プログラム60のバッファ領域として使用するようにしたので、情報収集コントローラ20内の小容量のメモリ上で大容量の車載プログラム60を確実にバッファでき、書き換え処理を確実に行わせることができる。
【0099】
上述した実施形態では、車両状態データ60dを建設機械50の外部の書き換え専用サーバ3の記憶媒体に退避させるようにしているが、書き換え処理の際に別の記憶領域あるいは別の記憶媒体に車両状態データ60dを退避できればよく、建設機械50の内部で退避させるようにしてもよい。
【0100】
図5は同じRAM23上の別の記憶領域に車両状態データ60dを退避させる場合のメモリの状態遷移を示している。以下図5を図6のフローチャートを併せ参照して説明する。
【0101】
すなわち図5(a)に示すようにRAM23のデータ領域23bに記憶されている車両状態データ60dは、RAM23の最後尾の記憶領域23eにコピーされ退避される(図6のステップ201)。つぎに図5(b)に示すように、データ領域23bを含むテンポラリ領域23dに、書き換え専用サーバ3から受信した新しい車載プログラム60が一時的にバッファされる(図6のステップ202)。
【0102】
つぎに図5(c)に示すようにRAM23のテンポラリ領域23dにバッファされている新しい車載プログラム60がフラッシュメモリ22のプログラム領域にコピーされる(図6のステップ203)。この書き換え処理後に、RAM23上のテンポラリ領域23dに残されている新しい車載プログラム60はクリアされる(ステップ204)。
【0103】
つぎに図5(d)に示すようにRAM23の最後尾の記憶領域23eに退避されていた車両状態データ60dが、RAM23の元の正規の位置であるデータ領域23bに書き込み戻される(図6のステップ205)。この書き込み戻し後に、RAM23の最後尾の記憶領域23eに残されている車両状態データ60dはクリアされる(ステップ206)。
【0104】
なお上記ステップ204、206のクリア処理は必要に応じて行えばよく、クリアしないままプログラム、データを残したままにしておいてもよい。
【0105】
図5では同じ記憶媒体であるRAM23上の別の記憶領域に車両状態データ60dを退避させるようにしているが、車体内のRAM23とは別の記憶媒体に同様にして退避させるようにしてもよい。たとえば図1に示すように、建設機械50には情報収集コントローラ20以外に通信コントローラ30、エンジンコントローラ40等々のコントローラが備えられている。そこで書き換え処理の際に情報収集コントローラ20から車体内通信回線51を介して別のコントローラ内の記憶媒体に車両状態データ60dを退避させておき、書き換え処理終了後に別のコントローラから情報収集コントローラ20内のRAM23上の元のデータ領域23bに車両状態データ60dを書き込み戻すようにしてもよい。
【0106】
上述した実施形態では、車両状態データ60dを別の記憶領域に退避させるようにしているが、書き換え処理時に車両状態データ60dがリセットされなければよく、必ずしも別の領域に退避させる必要はない。
【0107】
すなわち図4に示すように、RAM23のデータ領域23bを上書きが不可能な領域として設定するとともに、RAM23のテンポラリ領域23dを上書きが可能な領域として設定する。このため書き換え専用サーバ3から送信された新しい車載プログラム60は、上書き可のテンポラリ領域23bに一時的にバッファされるが、上書き不可のデータ領域23bにはバッファされない。これにより、書き換え処理時にデータ領域23bに記憶されている車両状態データ60dがリセットされてしまう事態を防止できる。
【0108】
以上説明した実施形態では、2つのサーバそれぞれで通常運用処理、書き換え処理が行われる場合を想定して説明したが、1つのサーバで通常運用処理、書き換え処理を行わせるようにしてもよい。たとえば通常運用サーバ2で通常運用処理のみならず書き換え処理も行わせるようにしてもよい。
【0109】
図9は通常運用サーバ2と建設機械50との間で通常運用モードと書き換えモードとを切り換える処理を行う処理手順を示している。
【0110】
この場合、通常運用サーバ2側のアプリケーションプログラムと建設機械50側のアプリケーションプログラムとの間の通信プロトコルとして、UDPとTCPの2つのトランスポート層のプロトコルが用意される。
【0111】
このため通常運用サーバ2からUDPの通信プロトコルにしたがってデータが送信されると、建設機械50側の通信コントローラ30は、UDPのアプリケーションプログラムとの接続を確立し、他方のTCPのアプリケーションプログラムとの接続を無効にする(ステップ501の判断Y)。これを受けて建設機械50の通信コントローラ30は通常運用モードであると判断し、以後情報収集コントローラ20を介して通常運用処理を実行させる(ステップ503)。これに対して通常運用サーバ2からTCPの通信プロトコルにしたがってデータが送信されると、建設機械50側の通信コントローラ30は、TCPのアプリケーションプログラムとの接続を確立し、他方のUDPのアプリケーションプログラムとの接続を無効にする(ステップ502の判断Y)。これを受けて建設機械50の通信コントローラ30は書き換えモードであると判断し、以後情報収集コントローラ20を介して書き換え処理を実行させる(ステップ504)。
【0112】
またサーバを2つ設ける場合に、一方のサーバを主として使用し他方のサーバを予備用のサーバとして使用する実施も可能である。たとえば一方でサーバで通常運用処理と書き換え処理を行うが、このサーバをメンテナンスしている場合などに他方の予備用のサーバを稼動させて通常運用処理と書き換え処理を行わせるようにしてもよい。この場合も2つのサーバと建設機械との間での通信接続の切り換えは、上述した実施形態の方法を適用することができる。
【0113】
また本実施形態では、車両として建設機械50を想定しているが、本発明は一般自動車等、任意の車両の車載プログラムを書き換える場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本実施形態のシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図2は実施形態の書き換え処理の手順を示す図である。
【図3】図3(a)〜(f)はフラッシュメモリ、RAMの状態遷移を示す図である。
【図4】図4は上書きが不可のデータ領域を示す図である。
【図5】図5(a)〜(d)はフラッシュメモリ、RAMの状態遷移を示す図である。
【図6】図6はデータを退避する場合の処理手順を示す図である。
【図7】図7はマスターファイルとの間で検証を行う場合の処理手順を示す図である。
【図8】図8はサーバの切換え処理の手順を示す図である。
【図9】図9は、通常運用モードと書き換えモードとの切換え処理の手順を示す図である。
【図10】図10はサーバと建設機械の対応関係を示す図である。
【符号の説明】
2 通常運用サーバ
3 書き換え専用サーバ
4、5 イントラネット
6、6′ マスターファイル
7 インターネット
8 地上波基地局
9、14、15 専用線
10 アンテナ
11 無線通信
20 情報収集コントローラ
21 CPU
22 フラッシュメモリ
23 RAM
30 通信コントローラ
50 建設機械
Claims (3)
- 第1のサーバ(2)と第2のサーバ(3)とが車両(50)内の車載コントローラ(20)に通信手段(14、15、8、9、10、11)によって通信自在に接続されており、
これら第1のサーバ(2)および第2のサーバ(3)にはそれぞれ自己のサーバを識別するサーバ識別ID(ID1、ID2)が対応づけられるとともに、車載コントローラには各第1のサーバ識別ID、第2のサーバ識別IDに対応するコントローラ識別ID(ID3、ID4)が対応づけられており、
前記車載コントローラ(20)で第1のサーバ識別ID(ID1)に対応するコントローラ識別ID(ID3)が設定されると、車両(50)側では、車載コントローラ(20)と第1のサーバ(2)との通信接続が可能な状態にし、前記車載コントローラ(20)で第2のサーバ識別ID(ID2)に対応するコントローラ識別ID(ID4)が設定されると、車両(50)側では、車載コントローラ(20)と第2のサーバ(3)との通信接続が可能な状態にするようにし、
初期状態では、前記車載コントローラ(20)に第1のサーバ識別ID(ID1)に対応するコントローラ識別ID(ID3)が設定されており、第2のサーバ(3)から前記車両(50)に対して通信接続を確立する指令が送信された場合に、所定時間だけ、前記車載コントローラ(20)に第2のサーバ識別ID(ID2)に対応するコントローラ識別ID(ID4)が設定されること
を特徴とするサーバの切り換え制御装置。 - 第1のサーバ(2)は、車両状態データを、車載コントローラ(20)と送受信する通常運用サーバ(2)であって、
第2のサーバ(3)は、車載コントローラ(20)内の車載プログラムを書き換える新しい車載プログラムを送信する書き換えサーバ(3)であること
を特徴とする請求項1記載のサーバの切り換え制御装置。 - 前記所定時間は、
前記車載コントローラ(20)と第2のサーバ(3)の通信接続で行われる処理が終了するまでの時間か又は予め設定された時間の何れか短い時間であること
を特徴とする請求項1記載のサーバの切り換え制御装置。
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