JP4026245B2 - ガラス繊維織物の表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維織物を有機シラン化合物により表面処理する方法に関する。さらに詳しくは、プリント配線板に供されるガラス繊維織物において、樹脂とガラス繊維織物との接着性を高める為の有機シラン化合物によるガラス繊維織物の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維織物はその優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性等の特性からプリント配線板の強化材として需要が多い。優れた耐熱性を有するプリント配線板を得るために、ガラス繊維織物への樹脂の含浸性を高めガラス繊維織物と樹脂との接着を強固にならしめるため、ケイ素原子を核とする化合物である有機シラン化合物を水溶液の形態でガラス繊維織物表面に付着させた後、該ガラス繊維織物を加熱乾燥するガラス繊維織物の被覆処理が広く行われている。該被覆処理において、有機シラン化合物は水溶液の形態にすることにより加水分解しシラノール化し、加熱乾燥することによりシラノール化した有機シラン化合物がガラス界面と縮合すると考えられる。
【0003】
しかし、プリント配線板は、赤外線フュージング、ソルダーコーティング、ウェーブソルダリング、リフローソルダリングなどの半田処理およびホットエアー処理など加熱による過酷な条件に晒される。そのため、上記の周知の従来技術である被覆処理方法では、プリント配線板はミーズリングやクレージングを起こし、外観上の問題や電気絶縁性の低下等の問題を発生させることがある。
【0004】
これは、有機シラン化合物により被覆処理したガラス繊維織物のガラス界面は部分的に次の▲1▼または▲2▼のような不適切な状態になっているためと考えられる。
▲1▼シラノール化した有機シラン化合物同士が縮合し、ガラス界面と縮合能力がないシラノール縮合体を形成し、ガラス繊維織物表面に付着しているだけの状態。
▲2▼有機シラン化合物が加水分解せず、ガラス繊維織物表面に付着しているだけの状態。
【0005】
このような問題を解決するために、有機シラン化合物を付着させたガラス繊維織物を過熱水蒸気雰囲気中に晒す表面処理方法が特開昭60−39477号に開示されている。しかし、この方法によれば有機シラン化合物をガラス繊維織物に付着させ、乾燥前の湿潤状態のまま100℃を越え、絶対湿度が0.1[kg・H2O/kg・dry air]以上の過熱水蒸気雰囲気下にガラス繊維織物を晒すことが必須であることから、表面処理装置の改造等新たな設備投資が必要になる。さらに、被覆処理後絶対湿度が0.1[kg・H2O/kg・dry air]以下の雰囲気中で一旦乾燥させた後、ガラス繊維織物を過熱水蒸気雰囲気下に晒しても期待される効果が得られない。
また、有機シラン化合物で被覆処理したガラス繊維織物に温水を施与する表面処理方法が特開平4−257368号に開示されている。しかし、この方法は、シラノール縮合体や加水分解していない有機シラン化合物が温水によりガラス界面上から流出してしまい、有機シラン化合物で被覆処理されていないガラス界面が露出することがあり満足できる表面処理方法ではない。
【0006】
一方、有機シラン化合物をそのままか有機溶剤溶液の形態でガラス繊維織物に付着させ、該ガラス繊維織物に水分を付与し湿潤させた後、乾燥する表面処理方法が、特開昭57−38348号に開示されている。また、湿潤したガラス繊維織物を有機シラン化合物そのままか有機溶剤溶液の形態で被覆処理する表面処理方法が、特開平5−239771号に開示されている。これら特開昭57−38348号および特開平5−239771号に開示された表面処理方法は有機シラン化合物をそのままか有機溶剤溶液の形態でガラス繊維表面に付着させるため、開示された水分付与方法では有機シラン化合物がガラス界面上で十分に加水分解せず、シラノール化した有機シラン化合物により均一な被覆処理がされないことがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガラス繊維織物への樹脂の含浸性を高めるためことにより、該ガラス繊維織物を強化材とする耐熱性に優れたプリント配線板を得る為、有機シラン化合物によりガラス繊維織物を均一に被覆処理する表面処理方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラス繊維織物の表面処理方法は、ガラス繊維織物を有機シラン化合物で被覆処理した後、該ガラス繊維織物を調湿処理することにより、シラノール化した有機シラン化合物とガラス界面を均一に縮合させることを特徴とする。
【0009】
本発明の表面処理方法において、有機シラン化合物で被覆処理したガラス繊維織物を調湿処理することにより、ガラス界面で次の▲1▼または▲2▼のような現象が進行していると考えられる。
▲1▼シラノール縮合体および加水分解していない有機シラン化合物が、加水分解しシラノール化し、ガラス界面と縮合する。
▲2▼シラノール縮合体および加水分解していない有機シラン化合物が、ガラス界面から離脱し、ガラス繊維織物表面に付着しているだけのシラノール化した有機シラン化合物がガラス界面と縮合する。
【0010】
上記▲1▼および▲2▼の現象が進行する為には、調湿処理において適度の絶対湿度および適度の処理時間が必須である。すなわち、該調湿処理は、絶対湿度と処理時間は経験的に求めた条件である、X≧0.015、かつT≧0.004/X2(ただし、Xは絶対湿度[kg・H2O/kg・dry air]、Tは処理時間[Hr])を満たす条件で行う。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の表面処理方法に用いるガラス繊維織物のガラス組成はEガラス、Sガラス、Dガラスなど用途により適宜選定すればよく、特に限定するものではない。また、ガラス繊維織物は繊維状に紡糸したガラス繊維を用いればよく、ガラス繊維織物の製織方法は、平織り、朱子織り、綾織りなど特に限定するものでなく、用途により適宜選定すれば良い。有機シラン化合物によりガラス繊維織物を被覆処理するに先立って、ガラス繊維織物は例えば熱脱油などにより表面を清浄にしておくことが望ましい。
【0012】
本発明の表面処理方法に用いる有機シラン化合物は一般式Rn・Si・X4−n(ただし、n=1〜3)で表わされる。この式において、Xは任意の一価の加水分解しうる置換基、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基などであり、各置換基は同一でも異なってもよい。Rは少なくとも炭素原子を一つ有する置換基であればよく、例えばアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、フェニル基、アルキル基などが挙げられる。有機シラン化合物としては周知のシランカップリング剤を挙げることができる。周知のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0013】
本発明の表面処理方法において、有機シラン化合物は水系の形態で浸漬や噴霧などによりガラス繊維織物に付着させる。
有機シラン化合物成分の濃度は0.01〜5重量%が好ましい。ガラス繊維の表面に付着させる有機シラン化合物の量はガラス繊維織物に対し0.001〜0.5重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲である。
【0014】
本発明の表面処理方法において、有機シラン化合物は水系の形態にすることにより加水分解しシラノール化する。該有機シラン化合物を付着させたガラス繊維織物は絞液した後に加熱乾燥し、有機シラン化合物によりガラス繊維織物を被覆処理する。該加熱乾燥は、シラノール化した有機シラン化合物がガラス界面と縮合するために好ましい条件であればよく、該加熱乾燥の温度、時間などの加熱乾燥条件は特に限定しない。ガラス繊維織物の態様、有機シラン化合物の種類や付着量などによって異なるが、一般に乾燥温度110〜170℃、乾燥時間10秒〜10分間連続して行うのが製造効率上望ましい。
【0015】
本発明の表面処理方法における調湿処理は、温度20℃〜100℃の範囲で行う。20℃未満の温度では、X≧0.015(ただし、Xは絶対湿度[kg・H2O/kg・dry air])の条件を満足する事が困難であり、100℃を超える温度は不要であるばかりでなく、有機シラン化合物により均一にガラス繊維織物を被覆処理できないことがある。これは、100℃を超える温度での調湿処理はガラス界面と縮合しているシラノール化した有機シラン化合物に何らかの悪影響を及ぼす為と推測される。
【0016】
有機シラン化合物を被覆処理したガラス繊維織物を調湿処理するには、該被覆処理したガラス繊維織物に樹脂を含浸するに先立って行えばよく、ガラス繊維織物の被覆処理後直ちにおこなっても、ガラス繊維織物の被覆処理後数時間ないし数日後調湿処理しても、いずれでもよい。さらに、有機シラン化合物を被覆処理したガラス繊維織物を調湿処理した後、調湿状態のまま該ガラス繊維織物に樹脂を含浸させても、または調湿処理後乾燥させて該ガラス繊維織物に樹脂を含浸させても、いずれでもよい。
【0017】
有機シラン化合物で被覆処理したガラス繊維織物の調湿処理するには、通常ガラス繊維織物をロール状にして行うのが製造効率上有利である。この場合、調湿処理するにあたり、特にガラス繊維織物のロール中心部においても、X≧0.015、かつT≧0.004/X2(ただし、Xは絶対湿度[kg・H2O/kg・dry air]、Tは処理時間[Hr])の条件を満たすように調湿処理の絶対湿度、時間などを考慮すればよい。
【0018】
また、本発明に用いられるガラス繊維織物のガラス繊維の集束に合成樹脂系の集束剤を用いることもできる。この場合、有機シラン化合物は集束剤の一成分として配合される。例えばアミン付加やエチレンオキサイド付加によりエポキシ樹脂を変性した樹脂、ウレタン樹脂を変性した樹脂などを主成分とする合成樹脂系集束剤に、有機シラン化合物を配合する。この場合は、ガラス繊維織物の脱油工程を省略することができる。ガラス繊維織物は有機シラン化合物を含む合成樹脂系集束剤で被覆処理され、該ガラス繊維織物の調湿処理はガラス繊維織物への樹脂の含浸に先立って行えばよい。
【0019】
【実施例】
<実施例1>
(1)ガラス繊維織物
常法により脱油処理した下記仕様の日東紡績(株)製WEA116E(商品名)を用いた。
使用ガラス糸 ECE225 1/0
経糸打込み本数 60本/25mm
緯糸打込み本数 58本/25mm
質量 105g/m2
厚み 0.1mm
【0020】
(2)有機シラン化合物処理液の調整
有機シラン化合物としてN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩である東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SZ−6032(商品名)を用い、該有機シラン化合物を固形分として0.5重量%含有する酢酸3.0重量%の水溶液を得た後、この水溶液に0.1重量%のメタノールを加え有機シラン化合物処理液を調整した。
【0021】
(3)有機シラン化合物によるガラス繊維織物の被覆処理
(1)で得たガラス繊維織物を(2)で得た有機シラン化合物処理液に浸漬し、マングルを用いてピックアップ30重量%となるように絞液した後、110℃で5分間加熱乾燥して、ガラス繊維織物を有機シラン化合物で被覆処理した。該被覆処理したガラス繊維織物を400mm×350mmにカットし、ガラス繊維織物片とした。
【0022】
(4)ガラス繊維織物の調湿処理
(3)で得たガラス繊維織物片を温度40℃、相対湿度90%に調整した雰囲気中で2.5時間調湿処理し、ガラス繊維織物片を表面処理した。
【0023】
(5)プリプレグの製造
(4)で得た表面処理したガラス繊維織物片を、下記組成のエポキシ樹脂ワニス(G−10処方)に浸漬し、予備乾燥して樹脂分50%のプリプレグを得た。
[エポキシ樹脂ワニスの組成]
・エピコート1001 ・・・80重量部
(油化シェルエポキシ(株)製商品名)
・エピコート154 ・・・20重量部
(油化シェルエポキシ(株)製商品名)
・ジシアンジアミド ・・・ 4重量部
・ベンジルジメチルアミン ・・0.2重量部
・ジメチルフォルムアミド ・・・30重量部
【0024】
(6)積層板の製造
(5)で得たプリプレグを4枚、さらに該プリプレグの上下に厚さ18μmの銅箔を重ね、常法により加熱成形し厚さ0.4mmの銅張積層板を作成し実施例1の試験片とした。
【0025】
<実施例2>
ガラス繊維織物片の調湿処理条件が温度80℃、相対湿度20%の雰囲気下で1.5時間処理した以外は実施例1と同様の方法で実施例2の試験片を作成した。
【0026】
<実施例3>
ガラス繊維織物片の調湿処理条件が温度35℃、相対湿度45%の雰囲気下で16時間処理した以外は実施例1と同様の方法で実施例3の試験片を作成した。
【0027】
<比較例1>
ガラス繊維織物片を調湿処理せず、温度25℃で相対湿度40%の雰囲気下で240時間放置した以外は実施例1と同様の方法で比較例2の試験片を作成した。
【0028】
<比較例2>
ガラス繊維織物片の調湿処理条件が温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下で1時間処理した以外は実施例1と同様の方法で比較例2の試験片を作成した。
【0029】
<比較例3>
ガラス繊維織物片の調湿処理条件が温度35℃、相対湿度45%の雰囲気下で12時間処理した以外は実施例1と同様の方法で比較例3の試験片を作成した。
【0030】
<比較例4>
ガラス繊維織物片の調湿処理条件が温度110℃、相対湿度10%の過熱水蒸気雰囲気下で1分間処理した以外は実施例1と同様の方法で比較例4の試験片を作成した。
【0031】
<比較例5>
ガラス繊維織物片の調湿処理に代え、ガラス繊維織物片を80℃の温水に1秒間浸漬した後、120℃3分間乾燥した以外は実施例1と同様の方法で比較例5の試験片を作成した。
【0032】
<半田耐熱性試験方法>
各試験片をエッチング処理し、銅張積層板の両面にある銅箔を取り除き、121℃のプレッシャークッカーで1時間、2時間、3時間、4時間処理した後、260℃の半田槽に20秒間浸漬し、浸漬後の各試験片の状態を目視により評価した。
各ガラス繊維織物片の調湿処理条件を表1に示し、各試験片の半田耐熱性試験の評価結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表2から判るように、実施例1〜3の試験片は、比較例1〜5の試験片に比べ半田耐熱性に優れている。
【0036】
【発明の効果】
本発明の表面処理方法により得られたガラス繊維織物は優れた樹脂含浸性を有する為、成形用などの繊維強化樹脂複合材料の強化材としも好適である。
Claims (3)
- ガラス繊維織物に有機シラン化合物の水系液を付着させた後、ガラス繊維織物を加熱乾燥することにより、ガラス繊維織物を有機シラン化合物で被覆処理し、その後、前記ガラス繊維織物を、温度20〜100℃の範囲で、X≧0.015およびT≧0.004/X2(ただし、Xは絶対湿度[kg・H2O/kg・dry air]、Tは処理時間[Hr])の条件を満たす雰囲気下に晒す調湿処理をすることを特徴とするガラス繊維織物の表面処理方法。
- ガラス繊維織物をロール状にして調湿処理を行う請求項1に記載のガラス繊維織物の表面処理方法。
- 前記加熱乾燥は、乾燥温度110〜170℃である請求項1又は請求項2に記載のガラス繊維織物の表面処理方法。
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CN115196889B (zh) * | 2022-08-01 | 2024-01-30 | 中国科学院合肥物质科学研究院 | 一种用于超导磁体热处理后玻璃纤维表面改性及绝缘增强方法 |
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- 1998-10-07 JP JP28539698A patent/JP4026245B2/ja not_active Expired - Lifetime
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