JP4025183B2 - 位相調整回路及びそれを備えたフィードフォワード増幅器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入出力端子間における高周波信号の移相量を変化させる位相調整回路、及び位相調整回路を備えたフィードフォワード増幅器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の位相調整回路の一例として非特許文献1に示すものが挙げられる。非特許文献1の90°ハイブリッドを用いたディジタル型位相調整回路においては、入力信号は90°ハイブリッドを介して2つのPINダイオードに印加される。PINダイオードがOFFの場合は開放端で信号が反射され、PINダイオードがONの場合はPINダイオードで信号が反射されるので、PINダイオードのON/OFFを切り換えることで高周波信号の移相量を切り換えることができる。また、非特許文献1の90°ハイブリッドを用いたアナログ型位相調整回路においては、入力信号は90°ハイブリッドを介して2つのバラクタダイオードに印加され、バラクタダイオードの容量を変化させることで高周波信号の移相量を変化させることができる。
【0003】
【非特許文献1】
宮内一洋、山本平一共著「通信用マイクロ波回路」、第7版、電子情報通信学会、平成6年6月10日、p.314−321
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の位相調整回路において、広帯域高周波信号の移相量の周波数特性については図7に示すようなシフトのみの変化が可能であり、例えば図8に示すような広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができないという課題があった。
【0005】
例えばフィードフォワード増幅器においては、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路に関して位相周波数特性の傾き差が発生するため、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量を得るためには、例えば図8に示すように、広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる位相調整回路が必要となる。しかしながら、従来の位相調整回路では広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができないため、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量が得られないという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる位相調整回路を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量が得られるフィードフォワード増幅器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明に係るフィードフォワード増幅器は、入力信号を増幅する主増幅器を備え、入力信号の一部と主増幅器からの出力信号の一部とを、歪検出用の振幅及び位相の相互関係を調整して結合することで、主増幅器にて発生した歪成分を含む歪検出信号を生成する歪検出ループと、歪検出信号と主増幅器からの出力信号とを、歪除去用の振幅及び位相の相互関係を調整して結合することで、歪成分が低減された低歪出力信号を生成する歪除去ループと、歪検出ループで結合対象とされる2つの信号経路に歪検出用パイロット信号を送り、歪検出用パイロット信号を歪検出信号中から検出し、その検出レベルに基づき歪検出用の振幅及び位相の相互関係の調整を行う歪検出ループ制御手段と、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路に歪除去用パイロット信号を送り、歪除去用パイロット信号を低歪出力信号中から検出し、その検出レベルに基づき歪除去用の振幅及び位相の相互関係の調整を行う歪除去ループ制御手段と、を有するフィードフォワード増幅器であって、歪除去ループは、位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整手段を備え、歪除去ループ制御手段は、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路における位相周波数特性の傾き差を歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき算出し、該位相周波数特性の傾き差に基づき位相傾き調整手段を制御し、前記位相傾き調整手段は、一端が入出力端子間の主伝送線路と接続され、他端が接地され、両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きが可変であるインピーダンス調整回路を備え、該インピーダンス調整回路の両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させる位相調整回路であることを特徴とする。
【0009】
このように、歪除去ループは、位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整手段を備え、歪除去ループ制御手段は、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路における位相周波数特性の傾き差を歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき算出し、該位相周波数特性の傾き差に基づき位相傾き調整手段を制御するので、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路における位相周波数特性の傾き差を補正することができる。したがって、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量を得ることができる。
【0010】
また、本発明に係るフィードフォワード増幅器であって、前記歪除去用パイロット信号は、局部発振信号を用いて基本パイロット信号を周波数変換することで得られる和周波数成分及び差周波数成分の上側及び下側パイロット信号であり、前記歪除去ループ制御手段は、低歪出力信号中から検出した上側及び下側パイロット信号を局部発振信号を用いて直交位相で逆周波数変換し、逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号を分離した状態で出力する検出側ミキサと、直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を求める減算器と、基本パイロット信号を参照信号とし、減算器からの出力信号を入力して同期検波を行い、位相傾き制御信号を出力する同期検波手段と、を備え、位相傾き制御信号を前記位相周波数特性の傾き差として前記位相傾き調整手段を制御することを特徴とする。
【0011】
このように、直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を、基本パイロット信号を参照信号として同期検波することにより、検出したパイロット信号から歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路における位相周波数特性の傾き差を得ることができる。そして、この傾き差に基づき位相傾き調整手段を制御することにより、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量を得ることができ、かつ正確で安定した歪除去制御を実現できる。
【0012】
また、本発明に係る位相調整回路は、前記フィードフォワード増幅器に用いられる位相調整回路であって、前記インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備え、該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする。
【0013】
このように、インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備えているので、可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、インピーダンス調整回路の両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る位相調整回路であって、前記インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、並列共振器と、を直列に備え、該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする。
【0015】
このように、インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、並列共振器と、を直列に備えているので、可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、インピーダンス調整回路の両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。
【0016】
また、本発明に係る位相調整回路は、入出力端子間における高周波信号の移相量を変化させる位相調整回路であって、入出力端子間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備え、該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする。
【0017】
このように、入出力端子間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備えているので、可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。
【0018】
さらに、本発明に係る位相調整回路であって、前記可変インピーダンス素子は、PINダイオードであり、該PINダイオードに流す電流を変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る位相調整回路であって、前記インピーダンス調整回路は2つ備えられ、前記インピーダンス調整回路の各々の一端は、ともに規定長の伝送線路を介して入出力端子間の主伝送線路と接続され、それらの接続位置間の距離は前記規定長と略等しく、前記インピーダンス調整回路の各々の一端同士は、前記規定長の別の伝送線路を介して接続され、前記位相調整回路は90°ハイブリッド型位相調整回路であることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明に係る位相調整回路であって、前記インピーダンス調整回路は2つ備えられ、前記インピーダンス調整回路の各々の一端は、ともに規定長の伝送線路を介して入出力端子間の主伝送線路と接続され、それらの接続位置間の距離は前記規定長と略等しく、前記位相調整回路はローデッドライン型位相調整回路であることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0026】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の構成を示す等価回路図であり、本発明を90°ハイブリッド型位相調整回路に適用した場合を示す。入力端子102と出力端子104との間の主伝送線路106に2つの伝送線路108,110の一端が接続され、それらの接続位置間の距離はLに設定されている。2つの伝送線路108,110の線路長はともにLに設定され、それらの他端同士がLの線路長の伝送線路112を介して接続されている。さらに、伝送線路108の他端にはインピーダンス調整回路114の一端114aが接続され、伝送線路110の他端にはインピーダンス調整回路116の一端116aが接続されている。そして、インピーダンス調整回路114,116の他端114b,116bはともに接地されている。なお、線路長Lの値の一例については、伝送対象である所定の帯域幅を有する広帯域高周波信号の中心周波数における波長をλ0とすると、λ0/4に設定されている。
【0027】
インピーダンス調整回路114は、その両端114a,114bの間に、可変インピーダンス素子としてのPINダイオード118と、直列接続されたインダクタ120及びコンデンサ122で構成される直列共振器124と、を並列に備えている。PINダイオード118については、アノード側が伝送線路108の他端と接続され、カソード側は接地されている。同様に、インピーダンス調整回路116についても、その両端116a,116bの間に、可変インピーダンス素子としてのPINダイオード128と、直列接続されたインダクタ130及びコンデンサ132で構成される直列共振器134と、を並列に備えており、PINダイオード128のアノード側が伝送線路110の他端と接続され、カソード側が接地されている。また、図1では省略しているが、PINダイオード118,128に流れる電流は外部からの制御信号によって制御することができ、PINダイオード118,128の抵抗値を制御することができる。そして、直列共振器124,134の共振周波数は、ともに伝送対象である所定の帯域幅を有する広帯域高周波信号の帯域内に設定され、例えばその中心周波数に設定されている。
【0028】
次に本実施形態の動作について説明する。本実施形態の90°ハイブリッド型位相調整回路は、インピーダンス調整回路114,116の両端間におけるインピーダンスの変化に応じて、入出力端子間における高周波信号の移相量が変化する。
【0029】
直列共振器124,134の共振周波数近傍においては、PINダイオード118,128に流す電流を変化させてPINダイオード118,128の抵抗値を変化させても、インピーダンス調整回路114の両端114a,114b間におけるインピーダンス、及びインピーダンス調整回路116の両端116a,116b間におけるインピーダンスはともにほとんど変化しない。したがって、直列共振器124,134の共振周波数近傍においては、PINダイオード118,128に流す電流を変化させても入力端子102〜出力端子104間における高周波信号の移相量は略一定となる。
【0030】
一方、直列共振器124,134の共振周波数から離れた周波数においては、PINダイオード118,128に流す電流を変化させてPINダイオード118,128の抵抗値を変化させると、インピーダンス調整回路114の両端114a,114b間におけるインピーダンス、及びインピーダンス調整回路116の両端116a,116b間におけるインピーダンスは、PINダイオード118,128の抵抗値に応じてそれぞれ変化する。そして、直列共振器124,134の共振周波数から離れた周波数ほど電流の変化に対するインピーダンスの変化割合は大きくなる。したがって、直列共振器124,134の共振周波数から離れた周波数においては、PINダイオード118,128に流す電流を変化させることで、入力端子102〜出力端子104間における高周波信号の移相量を変化させることができる。さらに、直列共振器124,134の共振周波数から離れた周波数ほど電流の変化に対する移相量の変化割合は大きくなる。
【0031】
このように、本実施形態のインピーダンス調整回路114,116においては、PINダイオード118,128に流す電流を変化させることで、両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを変化させることができる。したがって、本実施形態の位相調整回路においては、例えば図8に示すように、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。
【0032】
なお、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させるためには、直列共振器124,134のQ値を大きくすることが好ましい。ここで、中心周波数2140MHzでの数値の一例を挙げると、インダクタ120のインダクタンスが7.4nHでコンデンサ122の容量が0.74pFで50Ωの負荷を並列に接続したときの直列共振器124のQ値は約2となる。
【0033】
そして、図2に示すように、インピーダンス調整回路114,116の構成については、ともにPINダイオードと、並列共振器と、を両端間に直列に備えていてもよい。図2においては、並列共振器144は並列接続されたインダクタ140及びコンデンサ142により構成され、その一端がインピーダンス調整回路114の一端114aと接続されている。並列共振器144の他端にはPINダイオード138のアノード側が接続され、そのカソード側は接地されている。同様に、並列共振器154は並列接続されたインダクタ150及びコンデンサ152により構成され、その一端がインピーダンス調整回路116の一端116aと接続されている。並列共振器154の他端にはPINダイオード148のアノード側が接続され、そのカソード側は接地されている。なお、並列共振器144,154の共振周波数は、ともに伝送対象である所定の帯域幅を有する広帯域高周波信号の帯域内に設定され、例えばその中心周波数に設定されている。
【0034】
並列共振器144,154の共振周波数近傍においては、PINダイオード138,148に流す電流を変化させてPINダイオード138,148の抵抗値を変化させても、インピーダンス調整回路114の両端114a,114b間におけるインピーダンス、及びインピーダンス調整回路116の両端116a,116b間におけるインピーダンスはともにほとんど変化しない。したがって、並列共振器144,154の共振周波数近傍においては、PINダイオード138,148に流す電流を変化させても入力端子102〜出力端子104間における高周波信号の移相量は略一定となる。
【0035】
一方、並列共振器144,154の共振周波数から離れた周波数においては、PINダイオード138,148に流す電流を変化させてPINダイオード138,148の抵抗値を変化させると、インピーダンス調整回路114の両端114a,114b間におけるインピーダンス、及びインピーダンス調整回路116の両端116a,116b間におけるインピーダンスは、PINダイオード138,148の抵抗値に応じてそれぞれ変化する。そして、並列共振器144,154の共振周波数から離れた周波数ほど電流の変化に対するインピーダンスの変化割合は大きくなる。したがって、並列共振器144,154の共振周波数から離れた周波数においては、PINダイオード138,148に流す電流を変化させることで、入力端子102〜出力端子104間における高周波信号の移相量を変化させることができる。さらに、並列共振器144,154の共振周波数から離れた周波数ほど電流の変化に対する移相量の変化割合は大きくなる。
【0036】
このように、図2に示すインピーダンス調整回路114,116においても、PINダイオード138,148に流す電流を変化させることで、両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを変化させることができる。したがって、図2に示す位相調整回路においても、例えば図8に示すように、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。なお、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させるためには、並列共振器144,154のQ値を大きくすることが好ましい。
【0037】
以上の説明においては、本発明を90°ハイブリッド型位相調整回路に適用した場合について説明したが、本発明の適用が可能な位相調整回路は90°ハイブリッド型位相調整回路に限るものではなく、例えば図3に示すローデッドライン型位相調整回路、図4に示すサーキュレータ型位相調整回路においても本発明の適用が可能である。
【0038】
図3に示すローデッドライン型位相調整回路においては、入力端子102と出力端子104との間の主伝送線路106に2つの伝送線路108,110の一端が接続され、それらの接続位置間の距離はLに設定されている。2つの伝送線路108,110の線路長はともにLに設定され、伝送線路108の他端にはインピーダンス調整回路114の一端114aが接続され、伝送線路110の他端にはインピーダンス調整回路116の一端116aが接続されている。インピーダンス調整回路114,116の他端114b,116bはともに接地されている。そして、図3におけるインピーダンス調整回路114,116の構成は図1における構成と同様であるが、図2における構成と同様であってもよい。また、線路長Lの値の一例については、伝送対象である所定の帯域幅を有する広帯域高周波信号の中心周波数における波長をλ0とすると、λ0/4に設定されている。
【0039】
図4に示すサーキュレータ型位相調整回路においては、サーキュレータ158の3ポートが入力端子102、出力端子104及び伝送線路108の一端にそれぞれ接続されている。伝送線路108の他端にはインピーダンス調整回路114の一端114aが接続され、その他端114bは接地されている。そして、図4におけるインピーダンス調整回路114の構成は図1における構成と同様であるが、図2における構成と同様であってもよい。また、線路長Lの値の一例については、伝送対象である所定の帯域幅を有する広帯域高周波信号の中心周波数における波長をλ0とすると、λ0/4に設定されている。
【0040】
さらに、図1〜4に示す構成と比較すると信号の損失は大きくなるものの、図5,6に示す構成においても、図1〜4に示す構成と同様に、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを十分に変化させることができる。
【0041】
図5に示す位相調整回路においては、インピーダンス調整回路114の一端114aは主伝送線路106と接続され、インピーダンス調整回路114の他端114bは接地されている。インピーダンス調整回路114は、PINダイオード138と、並列共振器144と、をその両端間に直列に備えている。
【0042】
図6に示す位相調整回路においては、入力端子102と出力端子104との間に、PINダイオード118と、直列共振器124と、を並列に備えている。
【0043】
なお、図1〜6におけるPINダイオード118,128,138,148については、アノードとカソードの接続を入れ換えてもよい。
【0044】
(2)第2実施形態
図9は、本発明の第2実施形態に係るフィードフォワード増幅器の構成を示すブロック図である。フィードフォワード増幅器は、主増幅器5にて発生した歪成分を含む歪検出信号を生成する歪検出ループ21、この歪成分を出力信号中から除去または抑圧する歪除去ループ22、歪検出用パイロット信号を出力し歪検出用パイロット信号の検出レベルに基づき歪検出ループ21を最適に制御する歪検出ループ制御手段30及び歪除去用パイロット信号を出力し歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき歪除去ループ22を最適に制御する歪除去ループ制御手段23を備えている。歪検出ループ21は、分配回路3、ベクトル調整回路4、主増幅器5、遅延回路6及び方向性結合器7を備えており、歪除去ループ22は、振幅調整回路8、移相調整回路9、位相傾き調整回路16、補助増幅器10、方向性結合器11及び遅延回路12を備えている。歪除去ループ制御手段23は、発振回路41,42、注入側ミキサ43、検出側ミキサ38、加減算回路39、同期検波回路44及び演算回路40を備えており、詳細な構成については後述する。
【0045】
なお、図9においては歪検出ループ制御手段30の詳細な構成について省略しているが、歪検出ループ制御手段30の構成は、本実施形態の歪除去ループ制御手段23と同様の構成であってもよいし、あるいは従来の歪検出ループ21の最適化を行うための構成であってもよい。
【0046】
分配回路3は、入力端子1からの入力信号をベクトル調整回路4及び遅延回路6に分配する。ベクトル調整回路4は、分配された入力信号の振幅及び移相量を調整して主増幅器5へ出力する。主増幅器5は、ベクトル調整回路4からの信号を増幅して方向性結合器7へ出力する。遅延回路6は、分配された入力信号を遅延させ、方向性結合器7へ出力する。方向性結合器7は、主増幅器5からの出力信号を遅延回路12を介し方向性結合器11に供給する一方で、主増幅器5からの出力信号の一部を分岐して遅延回路6からの信号と結合させ、その結果得られた歪検出信号を振幅調整回路8に供給する。振幅調整回路8は、方向性結合器7からの信号の振幅を調整して移相調整回路9へ出力する。移相調整回路9は、振幅調整回路8からの信号の移相量を調整して位相傾き調整回路16へ出力する。位相傾き調整回路16の構成及び作用については後述する。補助増幅器10は、位相傾き調整回路16からの信号を増幅して方向性結合器11へ出力する。方向性結合器11は、遅延回路12により遅延された信号と補助増幅器10にて増幅された信号を結合し、その結果得られた低歪出力信号を出力端子2を介し図示しない後段の回路へ出力する。
【0047】
ここで、分配回路3により分配され、方向性結合器7にて結合の対象となる2種類の信号のうち、主増幅器5を通り方向性結合器7に供給される信号には、主増幅器5にて発生する歪成分が含まれている。一方、遅延回路6を通り方向性結合器7に供給される信号には歪成分は含まれていない。したがって、方向性結合器7にて結合の対象となる2種類の信号に含まれる成分のうち、主増幅器5へ入力される信号に対応する成分同士を、方向性結合器7内の信号結合点にて同振幅かつ逆位相の状態で結合することにより、主増幅器5にて発生する歪成分を検出することができる。また、方向性結合器11にて結合の対象となる2種類の信号のうち、遅延回路12を通り方向性結合器11に供給される信号には、主増幅器5にて発生した歪成分が含まれている。そして、補助増幅器10を通り方向性結合器11に供給される信号については、主として主増幅器5にて発生した歪成分のみを含む信号となるので、方向性結合器11にて結合の対象となる2種類の信号に含まれる歪成分同士を、方向性結合器11内の信号結合点にて同振幅かつ逆位相の状態で結合することにより、方向性結合器11から出力端子2を介し出力される信号から歪成分を除去することができる。
【0048】
方向性結合器7内の信号結合点において以上のような振幅、位相関係が成立するように、ベクトル調整回路4により主増幅器5に入力される信号の振幅及び移相量が制御される。また同様に、方向性結合器11内の信号結合点において以上のような振幅、位相関係が成立するように、利得調整回路8及び移相調整回路9により位相傾き調整回路16に入力される信号の振幅及び移相量が制御される。
【0049】
ベクトル調整回路4は例えば従来の直交変調回路により、利得調整回路8は例えば従来の可変減衰回路あるいは可変抵抗により、移相調整回路9は例えば従来の可変移相回路によりそれぞれ構成される。ベクトル調整回路4の代わりに利得調整回路8及び移相調整回路9を用いることも、利得調整回路8と移相調整回路9の代わりにベクトル調整回路4を用いることも、また、利得調整回路8と移相調整回路9の順序の入れ替えも可能である。遅延回路6、12は、それぞれ並行して設けられている主増幅器5側及び補助増幅器10側の信号経路において発生する信号遅延を補償するために設けられており、各種の遅延線等で構成される。
【0050】
フィードフォワード増幅器においては、周囲温度の変化、構成部品の性能の経時変化等に対処し常に最適な制御状態を得るため、歪検出ループ制御手段30は歪検出用パイロット信号を歪検出ループ21内に送り、歪検出用パイロット信号の検出レベルに基づき歪検出ループ21を最適に制御する。その場合に、歪検出用パイロット信号は、分配回路3より前段の信号経路上の点において注入され、方向性結合器7内の信号結合点から補助増幅器10を経て方向性結合器11内の信号結合点に至る経路上の任意の点において検出される(図9では方向性結合器7と利得調整回路8の間で検出した場合を示している)。同様に、歪除去ループ制御手段23は歪除去用パイロット信号を歪除去ループ22内に送り、歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき歪除去ループ22を最適に制御する。
【0051】
本実施形態においては、歪除去ループ22を最適に制御するために、信号の振幅及び位相を制御するだけでなく、振幅周波数特性の傾き及び位相周波数特性の傾きをも制御する。そのために、歪除去ループ22は、振幅周波数特性の傾きの調整が可能な振幅傾き調整回路27と、位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整回路16と、を備えている。そして、歪除去ループ制御手段23は、歪除去ループ22で結合対象とされる2つの信号経路における振幅周波数特性の傾き差及び位相周波数特性の傾き差を歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき算出し、この算出結果に基づき振幅傾き調整回路27及び位相傾き調整回路16を最適に制御する。
【0052】
上記の歪除去ループ22の最適化を行うための歪除去用パイロット信号として、増幅器の使用周波数帯域より上側の周波数と下側の周波数に設定された2つのパイロット信号が分配回路3内の信号分岐点から主増幅器5を経て方向性結合器7内の信号分岐点に至る経路上の任意の点において信号経路に注入される(図9では主増幅器5の複数の増幅器段の間に注入した場合を示している)。さらに、これらの2つのパイロット信号については、発振回路41から出力されたIF帯の周波数fPの基本パイロット信号を、発振回路42から出力されたRF帯の周波数fLの局部発振信号を用いて、注入側ミキサ43により周波数変換することで、周波数fL−fPの下側パイロット信号及び周波数fL+fPの上側パイロット信号として発生させている。
【0053】
注入された下側及び上側パイロット信号は、方向性結合器11と出力端子2の間に設けられている分配回路13にて分岐された信号から取り出されるが、その際に、分配回路13にて分岐された信号経路には、下側及び上側パイロット信号がそれぞれ属する周波数成分を取り出すための狭帯域フィルタ14、15が設けられており、この狭帯域フィルタ14、15によって2つの狭帯域成分がそれぞれ取り出される。
【0054】
狭帯域フィルタ14、15によって取り出された2つの狭帯域成分は、出力端子2からの出力信号中に残留している下側及び上側パイロット信号とみなすことができ、狭帯域フィルタ14、15からの出力信号は歪除去ループ制御手段23に入力される。
【0055】
歪除去ループ制御手段23内においては、狭帯域フィルタ14、15によって取り出された周波数fL−fPの下側パイロット信号及び周波数fL+fPの上側パイロット信号が後述する構成の検出側ミキサ38に入力され、検出側ミキサ38からの出力がfPの周波数成分を取り出すための狭帯域フィルタ62に入力され、周波数fPに逆周波数変換されたパイロット信号が取り出される。そして、これらのパイロット信号が後述する構成の加減算回路39に入力され、その出力が後述する構成の同期検波回路44に入力される。そして、同期検波回路44からの出力に基づき演算回路40内で発生させた制御信号が利得調整回路8、移相調整回路9、振幅傾き調整回路27及び位相傾き調整回路16に入力され、振幅と位相及びそれらの周波数特性の傾きの調整量が最適に制御される。
【0056】
図10は検出側ミキサ38、加減算回路39及び同期検波回路44の構成の一例を示すブロック図である。検出側ミキサ38に別々の信号経路で入力された周波数fL−fPの下側パイロット信号及び周波数fL+fPの上側パイロット信号のそれぞれは、90度分配器45、46により、90度の位相差を持つ2つの信号に分配される。また、検出側ミキサ38に入力された発振回路42からの周波数fLの局部発振信号が同相分配器47により同位相の4つの信号に分配される。そして、90度の位相差に分配された周波数fL−fPの下側パイロット信号及び周波数fL+fPの上側パイロット信号(4つの信号)のそれぞれを、4つの信号経路に分配された周波数fLの局部発振信号を用いて乗算器48、49、50、51により逆周波数変換することで、周波数fPの信号に変換する。その際に、乗算器48及び50には同相成分の信号が入力され、乗算器49及び51には直交成分の信号が入力される。そして、乗算器48、49、50、51のそれぞれの出力を狭帯域フィルタ62に入力する。狭帯域フィルタ62では、周波数fPの成分が取り出され、その出力が加減算回路39に入力される。
【0057】
加減算回路39内では、乗算器48からの出力信号と乗算器50からの出力信号が加算器52により加算され、乗算器49からの出力信号と乗算器51からの出力信号が加算器53により加算される。一方、乗算器48からの出力信号と乗算器50からの出力信号が減算器54により減算され、乗算器49からの出力信号と乗算器51からの出力信号が減算器55により減算される。そして、加算器及び減算器からのそれぞれの出力を同期検波回路44に入力する。
【0058】
同期検波回路44では、入力された発振回路41からの周波数fPの基本パイロット信号が同相分配器56により同位相の4つの信号に分配される。そして、加算器52、53からの出力信号及び減算器54、55からの出力信号のそれぞれを、4つの信号経路に分配された周波数fPの基本パイロット信号を用いて乗算器57、58、59、60により、直流電圧に変換し、乗算器57、58、59、60からの各出力を演算回路40に入力する。
【0059】
ここで、乗算器57からの出力は、同位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の和を基本パイロット信号を参照信号として同期検波した結果であり、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の利得誤差を示す直流電圧とみなすことができる。そして、演算回路40では、乗算器57からの出力電圧に基づき発生させた制御信号を利得調整回路8に与える。また、乗算器59からの出力は、直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の和を基本パイロット信号を参照信号として同期検波した結果であり、これらの両信号経路間の位相誤差(逆位相状態で誤差なし)を示す直流電圧とみなすことができる。そして、演算回路40では、乗算器59からの出力電圧に基づき発生させた制御信号を移相調整回路9に与える。
【0060】
一方、乗算器58からの出力は、同位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を基本パイロット信号を参照信号として同期検波した結果であり、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の振幅周波数特性傾き誤差を示す直流電圧とみなすことができる。そして、演算回路40では、乗算器58からの出力電圧に基づき発生させた制御信号を振幅傾き調整回路27に与える。また、位相傾き制御信号としての乗算器60からの出力は、直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を基本パイロット信号を参照信号として同期検波した結果であり、これらの両信号経路間の位相周波数特性傾き誤差を示す直流電圧とみなすことができる。そして、演算回路40では、乗算器60からの出力電圧に基づき発生させた制御信号を位相傾き調整回路16に与える。
【0061】
次に、振幅周波数特性の傾きの調整が可能な振幅傾き調整回路27の具体的な構成の一例について図11を用いて説明する。
【0062】
図11は、補助増幅器10内の1段における等価回路の一例を示す図である。信号は入力端子25から信号増幅を行うバイポーラトランジスタ29のベース端子へ入力される。バイポーラトランジスタ29のエミッタ端子は接地され、コレクタ端子には振幅傾き調整回路27の入力が接続されている。図11における振幅傾き調整回路27は、コンデンサ及びインダクタを含み、その出力端子26に接続される回路、例えば次段の増幅回路に対してインピーダンス整合をとる。さらに、振幅傾き調整回路27には、容量可変のバラクタダイオード24が備えられており、そのカソード側には乗算器58からの出力電圧に基づく制御信号が入力される制御信号端子28が備えられている。
【0063】
図11において制御信号端子28への電圧を変化させることにより、バラクタダイオード24の容量が変化し、振幅傾き調整回路27の入出力間のインピーダンスを変化させることができる。振幅傾き調整回路27の入出力間のインピーダンスが変化すると、その出力への反射損による損失が変化するため、補助増幅器10の振幅周波数特性の傾きを変化させることができる。したがって、乗算器58からの出力電圧に基づく制御信号によって、例えば図12に示すように、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の振幅周波数特性傾き差を補正することができる。このように、図11における振幅傾き調整回路27は、入出力間のインピーダンスが可変の整合回路として機能する。
【0064】
ただし、実際はバラクタダイオード24の容量を変化させると、補助増幅器10の位相周波数特性の傾きは僅かではあるが変化する。したがって、バラクタダイオード24によって振幅周波数特性の傾きの補正を行う範囲については、位相周波数特性の傾きの変化が歪抑圧に悪影響を与えないように実験的または解析的にに定める。
【0065】
なお、図11においては、制御信号により整合回路のインピーダンスを変化させることができればよいので、振幅傾き調整回路27の構成は図11に示す構成に限るものではない。そして、振幅傾き調整回路27は入力端子25とバイポーラトランジスタ29のベース端子の間に設けられていてもよい。また、バイポーラトランジスタ29の代わりにFETを用いてもよい。
【0066】
次に、位相傾き調整回路16の具体的な構成の一例について説明する。
【0067】
位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整回路16は、第1実施形態の図1〜6のいずれか1に図示した位相調整回路によって実現できる。図1〜6における入力端子102は図7における移相調整回路9の出力と接続され、図1〜6における出力端子104は図7における補助増幅器10の入力と接続される。そして、図1〜6では省略しているが、演算回路40内で乗算器60からの出力電圧に基づき発生させた制御信号は、図1,3の回路を用いる場合はPINダイオード118,128の電流を制御するための制御信号として用いられ、図2の回路を用いる場合はPINダイオード138,148の電流を制御するための制御信号として用いられ、図4,6の回路を用いる場合はPINダイオード118の電流を制御するための制御信号として用いられ、図5の回路を用いる場合はPINダイオード138の電流を制御するための制御信号として用いられる。先述したように、図1〜6の位相調整回路はPINダイオードに流す電流を変化させることで、入出力端子間における広帯域高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることができる。したがって、位相傾き調整回路16として図1〜6の位相調整回路のいずれか1を用いることで、例えば図13に示すように、乗算器60からの出力電圧に基づく制御信号により歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の位相周波数特性傾き差を補正することができる。
【0068】
なお、図9においては、位相傾き調整回路16が移相調整回路9と補助増幅器10との間に設けられている場合を示しているが、位相傾き調整回路16は歪除去ループ22中に設けられていさえいれば、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の位相周波数特性傾き差を補正することができる。
【0069】
本実施形態においては、歪除去ループ22を最適に制御するために、信号の振幅及び位相を制御するだけでなく、振幅周波数特性の傾き及び位相周波数特性の傾きをも制御している。より詳細には、歪除去ループ制御手段23は、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間に振幅周波数特性の傾き差及び位相周波数特性の傾き差を歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき算出する。そして、これらの算出結果に基づく制御信号によって、歪除去ループ22内に備えられた振幅周波数特性の傾きの調整が可能な振幅傾き調整回路27及び位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整回路16を制御している。ここで、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間に振幅周波数特性の傾き差及び位相周波数特性の傾き差がなければ、利得調整回路8及び移相調整回路9を用いて補助増幅器10側の信号経路の振幅周波数特性及び位相周波数特性を上下にシフトして調整することで、広い周波数帯域に渡って両信号経路の振幅周波数特性を同振幅に一致させ、かつ位相周波数特性を逆位相に一致させることができる。したがって、本実施形態のフィードフォワード増幅器は、例えば図12,13に示すように、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の振幅周波数特性の傾き差及び位相周波数特性の傾き差を補正することで、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量を得ることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、同位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を、基本パイロット信号を参照信号として同期検波することにより、検出した上側及び下側パイロット信号から歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の振幅周波数特性の傾き差を得ることができる。そして、直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を、基本パイロット信号を参照信号として同期検波することにより、検出した上側及び下側パイロット信号から歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の位相周波数特性の傾き差を得ることができる。これらの傾き差に基づく制御信号によって振幅傾き調整回路27及び位相傾き調整回路16を制御することで、広い周波数帯域に渡って十分な歪抑圧量を得ることができ、かつ正確で安定した歪除去制御を実現できる。
【0071】
そして、振幅傾き調整回路27は、容量可変のバラクタダイオード24を備えたインピーダンスが可変の整合回路として機能するので、振幅周波数特性の傾き差に基づく制御信号によってバラクタダイオード24の容量を制御することで、補助増幅器10の振幅周波数特性の傾きを変化させることができる。したがって、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の振幅周波数特性の傾き差を補正することができる。
【0072】
さらに、位相傾き調整回路16として、第1実施形態の図1〜6のいずれか1に示す位相調整回路を用い、位相周波数特性の傾き差に基づく制御信号によってPINダイオードの電流を制御することで、歪除去ループ22内の補助増幅器10を通る信号経路と遅延回路12を通る信号線路との間の位相周波数特性の傾き差を補正することができる。
【0073】
なお、本実施形態においては、図示はしないが検出側ミキサ38において、90度分配器45、46を同相分配器に置き換え、かつ同相分配器47を90度分配器に置き換えて、乗算器48及び50に同相成分の信号を入力し、乗算器49及び51に直交成分の信号を入力する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の構成を示す等価回路図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の他の構成を示す等価回路図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の他の構成を示す等価回路図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の他の構成を示す等価回路図である。
【図5】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の他の構成を示す等価回路図である。
【図6】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路の他の構成を示す等価回路図である。
【図7】 従来の位相調整回路による移相量の周波数特性の変化を説明する図である。
【図8】 本発明の第1実施形態に係る位相調整回路による移相量の周波数特性の変化の一例を説明する図である。
【図9】 本発明の第2実施形態に係るフィードフォワード増幅器の構成を示すブロック図である。
【図10】 本発明の第2実施形態における検出側ミキサ、加減算回路及び同期検波回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】 本発明の第2,3実施形態における補助増幅器内の1段における等価回路の一例を示す図である。
【図12】 本発明の第2,3実施形態における振幅傾き調整回路による振幅周波数特性の補正の一例を説明する図である。
【図13】 本発明の第2,3実施形態における位相傾き調整回路による位相周波数特性の補正の一例を説明する図である。
【符号の説明】
4 ベクトル調整回路、5 主増幅器、8 利得調整回路、9 移相調整回路、10 補助増幅器、16 位相傾き調整回路、21 歪検出ループ、22 歪除去ループ、23 歪除去ループ制御手段、24 バラクタダイオード、27 振幅傾き調整回路、30 歪検出ループ制御手段、38 検出側ミキサ、39 加減算回路、44 同期検波回路、114,116 インピーダンス調整回路、118,128,138,148 PINダイオード、124,134 直列共振器、144,154 並列共振器。
Claims (8)
- 入力信号を増幅する主増幅器を備え、入力信号の一部と主増幅器からの出力信号の一部とを、歪検出用の振幅及び位相の相互関係を調整して結合することで、主増幅器にて発生した歪成分を含む歪検出信号を生成する歪検出ループと、
歪検出信号と主増幅器からの出力信号とを、歪除去用の振幅及び位相の相互関係を調整して結合することで、歪成分が低減された低歪出力信号を生成する歪除去ループと、
歪検出ループで結合対象とされる2つの信号経路に歪検出用パイロット信号を送り、歪検出用パイロット信号を歪検出信号中から検出し、その検出レベルに基づき歪検出用の振幅及び位相の相互関係の調整を行う歪検出ループ制御手段と、
歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路に歪除去用パイロット信号を送り、歪除去用パイロット信号を低歪出力信号中から検出し、その検出レベルに基づき歪除去用の振幅及び位相の相互関係の調整を行う歪除去ループ制御手段と、
を有するフィードフォワード増幅器であって、
歪除去ループは、位相周波数特性の傾きの調整が可能な位相傾き調整手段を備え、
歪除去ループ制御手段は、歪除去ループで結合対象とされる2つの信号経路における位相周波数特性の傾き差を歪除去用パイロット信号の検出レベルに基づき算出し、該位相周波数特性の傾き差に基づき位相傾き調整手段を制御し、
前記位相傾き調整手段は、一端が入出力端子間の主伝送線路と接続され、他端が接地され、両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きが可変であるインピーダンス調整回路を備え、
該インピーダンス調整回路の両端間におけるインピーダンスの周波数特性の傾きを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させる位相調整回路であることを特徴とするフィードフォワード増幅器。 - 請求項1に記載のフィードフォワード増幅器であって、
前記歪除去用パイロット信号は、局部発振信号を用いて基本パイロット信号を周波数変換することで得られる和周波数成分及び差周波数成分の上側及び下側パイロット信号であり、
前記歪除去ループ制御手段は、
低歪出力信号中から検出した上側及び下側パイロット信号を局部発振信号を用いて直交位相で逆周波数変換し、逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号を分離した状態で出力する検出側ミキサと、
直交位相で逆周波数変換された上側及び下側パイロット信号の差を求める減算器と、
基本パイロット信号を参照信号とし、減算器からの出力信号を入力して同期検波を行い、位相傾き制御信号を出力する同期検波手段と、
を備え、
位相傾き制御信号を前記位相周波数特性の傾き差として前記位相傾き調整手段を制御することを特徴とするフィードフォワード増幅器。 - 請求項1に記載のフィードフォワード増幅器に用いられる位相調整回路であって、
前記インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備え、
該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする位相調整回路。 - 請求項1に記載のフィードフォワード増幅器に用いられる位相調整回路であって、
前記インピーダンス調整回路は、その両端間に、可変インピーダンス素子と、並列共振器と、を直列に備え、
該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする位相調整回路。 - 請求項1に記載のフィードフォワード増幅器に用いられる位相調整回 路であって、
入出力端子間に、可変インピーダンス素子と、直列共振器と、を並列に備え、
該可変インピーダンス素子のインピーダンスを変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする位相調整回路。 - 請求項3〜5のいずれか1に記載の位相調整回路であって、
前記可変インピーダンス素子は、PINダイオードであり、
該PINダイオードに流す電流を変化させることで、入出力端子間における高周波信号の移相量の周波数特性の傾きを変化させることを特徴とする位相調整回路。 - 請求項3又は4に記載の位相調整回路であって、
前記インピーダンス調整回路は2つ備えられ、
前記インピーダンス調整回路の各々の一端は、ともに規定長の伝送線路を介して入出力端子間の主伝送線路と接続され、それらの接続位置間の距離は前記規定長と略等しく、
前記インピーダンス調整回路の各々の一端同士は、前記規定長の別の伝送線路を介して接続され、
前記位相調整回路は90°ハイブリッド型位相調整回路であることを特徴とする位相調整回路。 - 請求項3又は4に記載の位相調整回路であって、
前記インピーダンス調整回路は2つ備えられ、
前記インピーダンス調整回路の各々の一端は、ともに規定長の伝送線路を介して入出力端子間の主伝送線路と接続され、それらの接続位置間の距離は前記規定長と略等しく、
前記位相調整回路はローデッドライン型位相調整回路であることを特徴とする位相調整回路。
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