JP4025170B2 - 耐食性、溶接性および表面性状に優れたステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐食性、溶接性および表面性状に優れたステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高濃度の塩素イオンおよび硫酸イオンが存在する腐食環境下においても優れた耐食性を有するとともに、溶接性および表面性状にも優れるステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大気中あるいは水中のような使用環境下においては、普通鋼では腐食が進行する使用環境であるため、SUS304に代表されるような、Fe−Cr−Ni系ステンレス鋼が広く使用されている。また、化学プラントなどに代表される特殊な使用環境下においては、低pH、比較的高い塩素イオン濃度あるいは室温ではない比較的高い温度での環境となるため、SUS316に代表されるMoを2mass%程度含有するFe−Cr−Ni−Mo系ステンレス鋼が多く使用されている。
【0003】
しかしながら、SUS316クラスのステンレス鋼であっても、比較的厳しい使用環境下、例えば、塩素イオン濃度を10,000ppm程度、硫酸イオン濃度を500ppm程度含むような水溶液中で使用した場合には、応力腐食割れや隙間腐食あるいは孔食を生じることがある。
【0004】
そこで、上記のような過酷な条件下においても極めて高い耐食性を有するステンレス鋼として、Mo:6mass%以上、N:0.05〜0.30mass%およびCu:0.3〜2.0mass%を含み、かつS:0.0002mass%以下からなるFe−Cr−Ni−Mo−Cu系ステンレス鋼が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、ステンレス鋼中のS濃度をできるだけ低減させることにより、優れた耐食性を得る方法である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のステンレス鋼では、鋼中に不可避的に混入する非金属介在物の量や組成によっては、十分な耐食性が得られない場合がある。つまり、鋼中のS濃度をできるだけ低下するには、通常、Alを用いて脱酸し、さらに石灰石を投入することにより脱Sを行うが、この際、多量のアルミナ系介在物が生成してクラスターを形成し、表面性状を悪化させてしまうという問題点がある。
【0006】
また、特許文献1の技術は、真空誘導炉を用いてステンレス鋼を製造する方法であるため、大量生産には適していないという問題点がある。そのため、電気炉、AOD、VODおよび連続鋳造機などに代表されるステンレス鋼の汎用生産設備を用いて、効率良くかつ、安価に製造する技術が要求されている。
【0007】
また、特許文献2には、オーステナイト系ステンレス鋼にTiを添加することにより、熱間加工性を改善するとともに表面性状を悪化させるアルミナクラスターの生成を抑制し、さらに、Ti添加に起因した連続鋳造のノズル詰まりを防止するために、耐食性を劣化させない範囲内でCaを適量添加する技術が提案されている。しかしながら、この技術では、添加したTiとNとが結合して硬質のTiNを形成し、ストリンガーと呼ばれる表面疵を発生しやすいという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−87855号公報
【特許文献2】
特開2000−1759号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、たとえ化学組成を適正な範囲に制御したとしても、鋼中に不可避的に混入する非金属介在物の量や組成によっては、十分な耐食性が得られず、さらにアルミナ介在物やTiNなどが形成されると、表面庇を発生させる原因となってしまう。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術が抱えている問題点を解決し、とくに、塩素イオンならびに硫酸イオンが高濃度に存在する溶液環境下においても、応力腐食割れや隙間腐食、孔食を起こすことのない優れた耐食性を有し、かつ、溶接性および表面性状にも優れたステンレス鋼を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記特性を有するステンレス鋼を、汎用のステンレス鋼生産設備を用いて、安価に製造する方法を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記従来技術の抱える問題点を解決するため、とくにステンレス鋼に含まれる非金属介在物の量および組成が、ステンレス鋼の耐食性、溶接性および表面性状に与える影響について、以下の検討を行った。
【0012】
まず、実験室にてマグネシアるつぼあるいはアルミナるつぼを用いて、Fe−23mass%Cr−24mass%Ni−6.5mass%Mo−1mass%Cu−0.2mass%N合金を溶解し、この溶鋼中に、CaO−SiO−Al−MgO−F系スラグを添加した後、Si,Mn,Al,CaおよびMgのうちのいずれか1種または2種以上を添加して脱酸を行った後、鋳造し、種々の介在物組成を有する鋼塊を得た。この鋼塊を鍛造し、熱間圧延した後、さらに冷間圧延し、板厚3mmの冷延鋼板とした。この冷延鋼板について、耐食性および溶接性を評価した。
【0013】
まず、耐食性の評価は、上記冷延鋼板からサンプルを採取し、使用環境を模擬した腐食溶液(Clイオン:20,000ppm、Fイオン:200ppm、SO 2−イオン:750ppm、NO イオン:1,000ppm、pH=4〜5)中に浸漬し、応力腐食割れ、隙間腐食および孔食についての試験を行った。なお、各試験は、後述する実施例に記載した方法で行った。
【0014】
また、溶接性は、上記試験片を電流値:120A、溶接速度:200mm/分の条件でTIG溶接を行い、ビード上に発生した黒点の有無により溶接性を評価した。この黒点は、ビード上に生成した酸化物欠陥であり、この欠陥が存在すると、その部位の耐食性を劣化させたり、外観不良を引き起こしたりする。また、この試験と同時に、目視により表面疵の発生有無も調査した。
【0015】
上記試験の結果、発明者らは、非金属介在物が、MgO・Al(スピネル)、MgO(マグネシア)、CaO−Al系酸化物(カルシウムアルミネート)およびCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物(シリケート)のうちの1種または2種以上からなる組成である場合には、耐食性、溶接性および表面性状が共に優れるステンレス鋼が得られることを知見した。
【0016】
また、Caの含有量が0.01mass%を超えると、介在物の組成がCaO単体となり、耐食性が劣化すると同時に、溶接時に黒点が発生することがわかった。その原因は、耐食性については、CaOが水溶性で不安定であるため、また、溶接性については、CaO系介在物が溶融池で浮上して集中するためと考えられた。さらに、鋼中のCa濃度は、O濃度とも関連があり、Oが0.0001mass%未満と低くなると、Caが0.01mass%を超えてしまうこともわかった。
【0017】
また、鋼中のAl濃度が0.1mass%を超えると、介在物の組成がAl(アルミナ)となってクラスターを形成し、表面欠陥を発生すると共に、溶接時に黒点を発生させることがわかった。
【0018】
さらに、O濃度が0.01mass%を超えて高くなると、JIS G0555に規定された清浄度が0.05を超えてしまうため、鋼板表面の介在物量が多くなって耐食性を劣化させることがわかった。また、Sを0.0002mass%未満に下げ過ぎると、溶接時の溶け込み性を悪くすることもわかった。
【0019】
本発明は、上記知見に基づいて開発されたものであって、
C≦0.03mass%、Si:0.01〜1.5mass%、Mn:0.01〜2.0mass%、Cr:19.0〜25.0mass%、Ni:17.0〜40.0mass%、Mo:5.0〜10.0mass%、Al:0.001〜0.1mass%、Cu:0.01〜2.0mass%、Co:0.001〜2mass%、N:0.05〜0.3mass%、P≦0.03mass%、S:0.0002〜0.002mass%、Mg:0.00005〜0.01mass%、Ca:0.00005〜0.01mass%、O:0.0001〜0.01mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼において、該ステンレス鋼中に含まれる非金属介在物が、MgO・Al,CaO−Al系酸化物,MgOおよびCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物のうちの1種または2種以上からなることを特徴とする耐食性、溶接性および表面性状に優れるステンレス鋼である。
【0020】
なお、本発明は、前記非金属介在物において、MgO・Alの組成が、MgO≧5mass%かつAl≦95mass%、CaO−Al系酸化物の組成が、CaO:30〜60mass%かつAl:40〜70mass%であること、また、CaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物が、鋳造後のスラブ中または鋼塊中にガラス質として存在することが好ましい。
【0021】
また、本発明の鋼は、鋼中の非金属介在物が、JIS G0555に規定されたB系およびC系の形態であり、かつ、JIS G0555に規定された清浄度が0.05以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、上記ステンレス鋼を製造するに当たり、電気炉に原料を装入して溶解し、AODおよび/またはVODにおいてArまたは窒素と酸素とを吹精して脱炭し、その後、石灰石および蛍石を投入してCaO−SiO −Al −MgO−F系スラグを形成し、さらにAlまたはAlおよびフェロシリコンを投入してクロム還元、脱酸および脱硫を行った後、連続鋳造法または普通造塊法によりスラブとすることを特徴とする耐食性、溶接性および表面性状に優れるステンレス鋼の製造方法を提案する。なお、上記CaO−SiO −Al −MgO−F系スラグ組成は、CaO:30〜80mass%、SiO ≦20mass%、Al :5〜40mass%、MgO:1〜30mass%およびF≦20mass%であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明の前記普通造塊法は、鋳造して得た鋼塊を熱間鍛造してスラブとする方法であることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係るステンレス鋼において、各成分組成を上記範囲に限定した理由について説明する。
C≦0.03mass%
Cは、オーステナイト安定化元素であるが、多量に存在すると、CrおよびMo等と結合して炭化物を形成し、母材に含まれる固溶CrおよびMo量を低下させ、耐食性を劣化させる。そのため、C含有量は0.03mass%以下とした。なお、好ましくは0.025mass%以下であり、より好ましくは0.02mass%以下である。
【0025】
Si:0.01〜1.5mass%
Siは、耐酸性ならびに耐孔食性の向上に有効であると共に、脱酸にも有効な元素である。しかしながら、Si含有量が0.01mass%未満では、その効果が十分に得られず、一方、1.5mass%を超えて存在すると、Fe,CrおよびMoから構成されるシグマ相の生成を促し、脆化を引き起こすほか、溶接性を低下させる。そのため、Si含有量は、0.01〜1.5mass%と規定した。なお、好ましくは0.02〜1.0mass%であり、より好ましくは0.03〜0.5mass%である。
【0026】
Mn:0.01〜2.0mass%
Mnは、脱酸に有効な元素である。Mn含有量が0.01mass%未満では、その効果が十分に得られず、逆に、2.0mass%を超えて存在すると、Siと同様にシグマ相の生成を促進し、脆化を招く。そのため、Mn含有量は0.01〜2.0mass%と規定した。なお、好ましくは0.02〜1.5mass%であり、より好ましくは0.03〜1.3mass%である。
【0027】
Cr:19.0〜25.0mass%
Crは、耐食性を確保するために必要不可欠な不動態皮膜を、鋼板表面に形成させる元素であり、耐酸性、耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善するための母材構成成分として、最も重要な元素である。しかしながら、Cr含有量が、19.0mass%未満では、使用される腐食環境下(例えば、塩素イオン濃度約10,000ppm、硫酸イオン濃度約500ppm、フッ素イオン濃度約100ppm、硝酸イオン濃度約1,000ppm)における十分な耐食性(耐酸性、耐応力腐食割れ性、耐隙間腐食性ならびに耐孔食性)が得られない。逆に、含有量が25mass%を超えると、シグマ相を生成して脆化を招くばかりか、完全なオーステナイト相に制御することができない。以上の理由から、Cr含有量は19.0〜25.0mass%と規定した。なお、好ましくは19.5〜24.0mass%であり、より好ましくは19.5〜23.5mass%である。
【0028】
Ni:17.0〜40.0mass%
Niは、母材をオーステナイト相に制御するために必要な元素である。また、耐酸性と共に、塩化物を含む高温の腐食環境下における耐食性(耐酸性、耐応力腐食割れ性、耐隙間腐食性ならびに耐孔食性)を改善する効果を有する。対象とする使用環境下(例えば、塩素イオン濃度約10,000ppm、硫酸イオン濃度約500ppm、フッ素イオン濃度約100ppm、硝酸イオン濃度約1,000ppm)で、その効果を有効に発揮するためには、Ni含有量が17.0mass%以上であることが必要である。一方、Ni含有量が40.0mass%を超えると、この効果は飽和する。そこで、Ni含有量は17.0〜40.0mass%と規定した。なお、好ましくは、22.0〜38.0mass%であり、より好ましくは、22.5〜37.0mass%である。さらに好ましくは、22.5〜28.5mass%である。
【0029】
Mo:5.0〜10.0mass%
Moは、耐酸性、耐応力腐食割れ性、耐隙間腐食性ならびに耐孔食性といった耐食性を確保するために重要な元素であるため、鋼中に5.0mass%以上含有されていることが好ましい。しかしながら、Moの含有量が高すぎると、シグマ相の生成を促進させ、母材の脆化を招く。そのため、Mo含有量は、5.0〜10.0mass%と規定した。好ましくは5.2〜9.0mass%であり、より好ましくは6.0〜8.0mass%である。
【0030】
Al:0.001〜0.1mass%
Alは、脱酸に必要不可欠な元素である。Al含有量が0.001mass%未満では、酸素濃度の上昇を招き(O>0.01mass%)、JIS G0555に規定された清浄度が0.05を超えて高くなり、耐食性とくに耐孔食性を低下させる。しかし、0.1mass%を超えて含有すると、黒点を発生して溶接性を低下させるばかりか、介在物の組成がアルミナ質となり、クラスター起因の表面庇を発生させる。そのため、Alの含有量は0.001〜0.1mass%と規定した。なお、好ましくは0.003〜0.08mass%であり、より好ましくは0.005〜0.05mass%である。
【0031】
Cu:0.01〜2.0mass%
Cuは、耐酸性を改善する元素であり、その効果は、Cuが0.01mass%以上の場合に有効に働く。しかし、2.0mass%を超えて含有させると、熱間加工性を低下させる。そのため、Cuの含有量は0.01〜2.0mass%と規定した。なお、好ましくは、0.02〜1.8mass%であり、より好ましくは0.5〜1.6mass%である。さらに好ましくは、0.7〜1.6mass%である。
【0032】
N:0.05〜0.3mass%
Nは、耐食性の向上に有効な成分であり、0.05mass%以上含有させた場合に、その効果が発揮される。しかし、0.3mass%を超えて含有させることは、Nの溶鋼への溶解限に近づくことから精錬時間が著しく長くなり、コストの上昇を招く。そのため、N含有量は0.05〜0.3mass%と規定した。なお、好ましくは0.08〜0.28mass%であり、より好ましくは0.10〜0.25mass%である。
【0033】
P≦0.03mass%
Pは、耐食性を低下させるほか、熱間加工性も低下させる有害元素である。このため、P含有量は低いほど好ましく、0.03mass%以下することが好ましい。なお、より好ましくは0.028mass%以下であり、さらに好ましくは0.025mass%以下である。
【0034】
S:0.0002〜0.002mass%
Sは、溶接時の溶け込み性を向上させる有効な元素である。しかし、含有量が多すぎると、Mnと結合してMnSを生成し、耐食性および熱間加工性を低下させる。そのため、S含有量は0.0002〜0.002mass%の範囲とした。なお、好ましくは0.0003〜0.0018mass%であり、より好ましくは0.0005〜0.0015mass%である。
【0035】
Mg:0.00005〜0.01mass%
Mgは、鋼中の非金属介在物の組成を、耐食性に悪影響のない成分系、すなわちMgO・Al、MgOあるいはCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物に制御するために有用な元素である。その効果は、含有量が0.00005mass%未満では得られず、逆に、0.01mass%を超えて含有させると、連続鋳造機のノズル閉塞を引き起こし、操業を阻害する。さらに、鋼中にMg起因の気泡欠陥をもたらすという問題もある。そのため、Mg含有量は0.00005〜0.01mass%と規定した。好ましくは0.0001〜0.005mass%であり、より好ましくは0.0001〜0.002mass%である。さらに好ましくは0.0002〜0.002mass%である。
【0036】
Ca:0.00005〜0.01mass%
Caは、Mgと同様、鋼中の非金属介在物の組成を、耐食性に悪影響を与えない成分系、すなわちCaO−Al系酸化物あるいはCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物に制御するために必要な元素である。その効果は、含有量が0.00005mass%未満では得られず、逆に0.01mass%を超えて存在すると、CaO単体からなる介在物を生成し、耐食性および溶接性を劣化させる。そのため、Ca含有量は0.00005〜0.01mass%の範囲内と規定した。好ましくは0.0001〜0.005mass%、より好ましくは0.0001〜0.002mass%である。さらに好ましくは0.0002〜0.002mass%である。
【0037】
O:0.0001〜0.01mass%
Oは、鋼中に0.01mass%を超えて存在すると、非金属介在物の量が著しく増加し、JIS G0555に規定された清浄度が0.05を超え、耐孔食性を低下させる。逆に、含有量が0.0001mass%未満になると、スラグ中に存在するCaOが還元されて溶鋼中のCa濃度が0.01mass%を超えるため、CaO介在物が形成されて耐食性および溶接性に悪影響を及ぼす。そのため、O濃度は適正値に制御しなければならず、本発明では0.0001〜0.01mass%の範囲内に制限した。好ましくは0.0002〜0.008mass%であり、より好ましくは0.0003〜0.005mass%である。さらに好ましくは0.0005〜0.005mass%である。
【0038】
なお、本発明にかかるステンレス鋼においては、Ni原料として、Coを含有する安価なNi源を用いて製造してもよい。この場合のCoの含有量は、下記範囲内であることが好ましい。
Co:0.001〜2mass%
Coは、Niと同様に、母材をオーステナイト相に制御するのに有効な元素である。その含有量が0.001mass%未満では、高価な高純度Ni原料を使用せねばならず、一方、2mass%を超えて含有させるには、逆にNiよりも高価な純Coを添加する必要があり、いずれも原料コストの上昇を招く。そのため、本発明においては、Co含有量を0.001〜2mass%とするのが好ましい。
【0039】
また、本発明では、上記必須とする成分に加えて、Tiを、下記の範囲で添加してもよい。
Ti:0.015mass%未満
Tiは、Cと結合してTiCを形成し、耐食性を改善する元素である。しかしながら、TiはNと結合して硬質のTiNを形成し、ストリンガーと呼ばれる表面欠陥を発生しやすい。そのため、Ti含有量は0.015mass%未満とすることが好ましい。
【0040】
また、本発明においては、上記成分に加えてさらに、熱間加工性を改善する目的で、B、CeおよびLaのうちのいずれか1種または2種以上を、0.01mass%以下添加してもよい。
【0041】
また、本発明では、非金属介在物を、耐食性、溶接性および表面性状に悪影響を与えないものとするために、該非金属介在物が、MgO・Al、CaO−Al系酸化物、MgOおよびCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物のうちの1種または2種以上から構成されていることを必須の要件としている。これらの介在物は、基本的に、アルミナのような大型のクラスターを形成しないため、鋼板の表面性状には悪影響を与えることがない。また、これらの介在物は、腐食水溶液(例えば、塩素イオン濃度約10,000ppm、硫酸イオン濃度約500ppm、フッ素イオン濃度約100ppm、硝酸イオン濃度約1,000ppm)に対し、不溶性で安定であるため、局部電池を形成しないかあるいは介在物から腐食物質を発生しないことから耐食性を劣化させることもない。
【0042】
上記非金属介在物が、上記特性を有するためには、MgO・AlおよびCaO−Al系酸化物の組成、およびCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物の性状は、以下の条件を満たすことが好ましい。
【0043】
MgO・Al
MgO・Al中のMgO濃度が5mass%未満と低い場合(Al濃度が95mass%超えの場合)、介在物の特性が急激にアルミナ質に変化し、鋼板表面にクラスター起因の表面庇を発生させたり、溶接性を劣化させたりする。そのため、MgO・Alの組成は、MgO≧5mass%およびAl≦95mass%であることが好ましい。
【0044】
CaO−Al系酸化物
CaO−Al系酸化物中のAl濃度が70mass%を超えて高い場合、介在物の特性が急激にアルミナ質に変化するため、鋼板表面にクラスター起因の表面庇を発生させたり、溶接性を低下させたりする。一方、CaO−Al系酸化物中のCaO濃度が60mass%を超えて高い場合には、CaO単体の介在物が急激に晶出し、耐食性が低下する。そのため、CaO−Al系酸化物の組成は、CaO:30〜60mass%かつAl:40〜70mass%の範囲内であることが好ましい。なお、MgOは、本願が対象としている水溶液環境に対して安定であるため、CaO−Al系介在物中に20mass%程度以下含有していても構わない。
【0045】
CaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物
CaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物は、結晶化するとCaO単体を晶出し、耐食性を劣化させるため、その性状は、ガラス質であることが望ましい。そのためには、CaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物の組成は、連続鋳造後のスラブあるいは普通造塊工程で得られる鋼塊の冷却速度(0.1〜10,000℃/sec)で、ガラス化する組成であることが好ましい。この条件を満たすためには、上記介在物を構成する各酸化物の組成は、CaO:1〜40mass%、SiO:10〜70mass%、Al:5〜40mass%、MgO:0.1〜25mass%およびMnO:0.1〜40mass%の範囲内にあることが好ましい。また、この複合酸化物には、CrとFeOが合計で20mass%程度以下含まれていてもガラス化には影響しない。
【0046】
また、本発明の鋼が耐食性、溶接性および表面性状に優れた特性を有するためには、板厚10mm程度以下に圧延された鋼板中に存在する介在物は、JIS G0555に規定されたB系およびC系の形態から構成されており、かつJIS G0555に規定された鋼板の清浄度は0.05以下であることが好ましい。以下に、その理由を示す。
【0047】
介在物形態
熱間圧延または冷間圧延された鋼板中に存在する非金属介在物は、MnSのように、JIS G0555に規定されたA系介在物として存在すると、耐食性に悪影響を及ぼす。そのため、本発明では、鋼中の非金属介在物は、JIS G0555に規定されたB系あるいはC系の形態を示すものに限定する。
【0048】
清浄度:0.05以下
JIS G0555に規定された鋼の清浄度は、0.05を超えて高くなると、孔食の起点を著しく増加させ、耐孔食性を低下させる要因となる。そのため、本発明にかかるステンレス鋼においては、清浄度を0.05以下、好ましくは0.045以下、より好ましくは0.04以下と規定した。
【0049】
次に、本発明にかかるステンレス鋼の製造方法について説明する。
基本的に、上記の通り規定した成分からなるステンレス鋼の製造方法であり、原料を電気炉に装入して溶解し、AODおよび/またはVODにおいて、Arまたは窒素と酸素とを吹精して脱炭精錬した後、石灰石および蛍石を添加してスラグを形成し、さらにAlまたはAlおよびフェロシリコンを投入してクロム還元、脱酸および脱硫した後、連続鋳造法または普通造塊法によりスラブとすることを特徴とする耐食性、溶接性および表面性状に優れたステンレス鋼の製造方法である。なお、本発明では、普通鋳造法においては、鋳塊からスラブを得るために熱間鍛造法を用いる。また、上記スラブを、熱間圧延し、あるいはさらに冷間圧延することにより、所望の板厚の耐食性、溶接性および表面性状に優れたステンレス鋼板を得ることができる。以下、具体的に説明する。
【0050】
溶解原料は、とくに限定はしないが、例えばフェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム、クロム、鉄屑、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑、モリブデン、モリブデン含有屑、三酸化モリブデン、銅および銅含有屑から、適宜選択することができる。とくに、Ni源(フェロニッケル、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑、純ニッケル)は、Coを含有していることが多いが、本発明で規定するCo含有量の範囲内(2mass%以下)であれば、比較的安価なNi源を使用することができる。ただし、Pは、精錬過程で除去することが困難であるため、本発明で規定した範囲(0.03mass%以下)となるように、溶解原料を選択することが好ましい。
【0051】
原料を電気炉等で溶解した後は、AODおよび/またはVODにおいて、Arまたは窒素と酸素とを吹精して脱炭精錬を行い、Cを0.03mass%以下とする。ここで、AOD炉、VOD鍋あるいは取鍋に使用する耐火物は、スラグ中に適正なMgO濃度を供給し、介在物を先述した組成に制御するため、さらには、形成するスラグに対して十分な耐溶損性を付与するという観点から、MgO−C、Al−MgO−C、ドロマイトおよびマグネシアクロムれんがから適宜選択することが好ましい。
【0052】
その後、スラグ相に移行した有価金属であるCrの酸化物を、AlまたはAlおよびフェロシリコンを投入することにより、クロム還元して回収する。なお、AlまたはAlおよびフェロシリコンは、石灰石および螢石を投入してスラグ形成した際に、AlおよびSiがそれぞれ、Al:0.001〜0.1mass%、Si:0.01〜1.5mass%の範囲内となるように投入することが好ましい。この理由は、これらの脱酸剤(AlまたはSi)が、前記のとおりCr酸化物の脱酸剤として働くと共に、スラグ中に存在するCaOあるいはMgOを還元し、CaあるいはMgとして溶鋼中に回収するためであり、この時、スラグ上に脱酸剤を投入することで、CaおよびMgの還元をより容易にすることができるからである。なお、CaまたはMgの含有量が、本発明に規定する範囲内に満たない場合には、Ca−Si、Ca−AlおよびNi−Mg等の副原料を適宜添加しても構わない。
【0053】
また、前記スラグ組成は、CaO−SiO−Al−MgO−F系であることが好ましく、その組成範囲は、溶鋼中のAl,CaおよびMgを本発明において規定する濃度範囲内に制御するのに好適な組成、例えば、CaO:30〜80mass%、SiO≦20mass%、Al:5〜40mass%、MgO:1〜30mass%およびF≦20mass%であることが好ましい。その他の成分として、FeO,S,PおよびTiOを合計で5%以下の範囲で含んでもよい。また、耐火物はマグネシア系であるので、耐火物保護のために、スラグ中にマグネシア煉瓦屑を適宜添加しても構わない。
【0054】
その後、ArあるいはNガスを吹きこみ、攪拌することによって、脱酸および脱硫を行い、O濃度を0.0001〜0.01mass%の範囲内に、S濃度を0.0002〜0.002mass%の範囲内に制御する。なお、O濃度が0.0001mass%未満に低下すると、前記のとおりCaO介在物が生成し、耐食性および溶接性に悪影響を与える。そのため、O濃度は、スラグ中のCaO濃度が80mass%を超えないように制御することが好ましい。この方法によれば、スラグ塩基度が高くなりすぎて、脱酸が進行し過ぎることも抑制することができる。S濃度については、基本的にスラグを使って脱硫し、0.002mass%以下まで低下させる。しかしながら、前記のとおりS濃度が0.002mass%未満に低下してしまうと、溶接時の溶け込み性を悪化させるため、FeSなどのS源を適量添加して調整することが好ましい。また、Nは、VODあるいはAODの工程で、Nガスを溶鋼中に吹き込むことで添加することができる。
【0055】
このようにして成分および非金属介在物組成を制御した溶鋼を、連続鋳造法あるいは普通造塊法によりスラブを製造する。なお、連続鋳造法の場合、縦型連続鋳造機にて鋳込むことが好ましい。これは、本鋼種は、高温強度が比較的高いため、湾曲部を含むタイプの連続鋳造機では、スラブ割れを起こす危険性があるからである。また、溶鋼の過熱度は、その製造性を考慮し、連続鋳造法の場合は10〜60℃、普通造塊法の場合は30〜150℃とすることが好ましい。また、連続鋳造におけるタンディッシュ内および普通造塊におけるインゴット内は、Al,MgおよびCaといった溶鋼中の活性成分の酸化を防止するため、ArあるいはNガスでシールすることが好ましい。なお、普通造塊法の場合には、鋳造して得た鋼塊を熱間鍛造してスラブとすることが好ましい。また、スラブから鋼板を得るために行う熱間圧延および冷間圧延は、常法により行うことができる。
【0056】
なお、本発明にかかるステンレス鋼は、とくに排煙脱硫設備に用いられることが好ましいが、これに限定されるものではなく、他の用途、たとえば、海洋構造物、食品貯蔵用途、熱交換器、ごみ焼却炉などにも適用することができる。
【0057】
【実施例】
容量60トンの電気炉により、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム、鉄屑、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑、モリブデン、銅および銅含有屑を原料として溶解後、AODにて酸化精錬を行った後、VODにて酸素を吹き込み、仕上脱炭を行った後、石灰石および螢石を投入し、CaO−SiO−Al−MgO−F系スラグを生成させ、さらに、アルミニウムおよび/またはフェロシリコンを投入し、クロム還元、脱酸および脱硫を行った後、連続鋳造により、あるいは普通造塊法にて得た鋳塊を熱間鍛造することによりスラブとした。なお、一部のチャージでは、VODのみで精錬を行った。その後、このスラブを熱間圧延し、冷間圧延して板厚3mmの鋼板とした。
【0058】
このようにして得られた冷延鋼板および仕上精錬時に採取したスラグについて、以下の評価を行った。
(1)化学成分:鋼板から切り出したサンプル中について、OおよびNは、酸素・窒素同時分析装置(不活性ガス−インパルス加熱溶融法:堀場製作所製EMGA−520)を用いて、また、CおよびSは、炭素・硫黄同時分析装置(酸素気流中燃焼−赤外線吸収法:堀場製作所製
EMIA−520)を用いて、その他の元素については、蛍光X線分析装置を用いて分析を行った。
【0059】
(2)スラグ組成:取鍋から採取したスラグを粉砕し、蛍光X線分析装置を用いて、スラグの成分組成を分析した。
【0060】
(3)非金属介在物組成:鋼板から切り出したサンプルを鏡面研磨し、EDSを用いて、介在物をランダムに20点を選び定量分析した。
【0061】
(4)介在物の形態および清浄度:光学顕微鏡によって圧延方向に平行な断面を400倍で60視野観察し、「JIS G0555」に準拠して測定を行った。
【0062】
(5)表面性状:コイルの表裏面の全長を目視により観察し、表面欠陥数をカウントした。
【0063】
(6)耐食性試験:使用環境を模擬した腐食溶液(Clイオン:20,000ppm、Fイオン:200ppm、SO 2−イオン:750ppm、NO イオン:1,000ppm、pH=4〜5)を用い、下記3種類の試験により評価を行った。なお、この腐食溶液は、蒸留水にNaCl,NaF,NaSOおよびNaNOの各試薬を溶解して作製したものである。
a.応力腐食割れ性試験
図1に示したように、30×50mmと15×50mmの2枚の試験片を重ねて、3箇所をスポット溶接した。この試験片を、上記溶液を入れたオートクレーブ試験装置中にセットし、120℃で50日間の腐食試験を行った。試験後、図1中に示した位置でナゲット部を切断し、光学顕微鏡で観察することにより、ナゲットを含む断面に存在する隙間部における腐食の有無を確認した。
b.隙間腐食性試験
図1に示す試験片を上記溶液中に浸し、60℃で50日間の腐食試験を行った。試験後、図1に示す位置でナゲット部を切断し、光学顕微鏡で観察することにより、ナゲットを含む断面に存在する隙間部における腐食の有無を確認した。
c.孔食性試験
鋼板から、50×200mmの試験片を切り出し、中心部をTIG溶接し、図2に示したようなビードを形成した。この試験片を、上記の腐食溶液中に浸し、60℃で50日間の腐食試験を行った。試験後、光顕観察により、ビード部周辺に発生した孔食腐食の有無を確認した。
【0064】
(7)溶接性:電流120A、溶接速度200mm/分の条件でTIG溶接を行い、ビード上に発生した黒点の有無を目視により調査した。
【0065】
鋼板の成分組成の分析結果を表1に、スラグの成分組成の分析結果を表2に、非金属介在物の組成および介在物の形態、清浄度の測定結果を表3に、そして、表面性状、耐食性試験、溶接性の調査結果を表4に示す。表1〜4の結果によれば、発明例No.1〜11は、すべて本発明の規定した成分組成範囲を満足しており、表面性状および耐食性ともに問題はなかった。一方、比較例No.12は、スラグ中のFeO濃度が高く、Al濃度も0.001mass%未満と低かったため、脱酸および脱硫が十分に行われなかった。そのため、介在物中のFeOおよびCr濃度が高く、さらに、MnS起因のA系介在物も発生し、さらに、清浄度が0.05を超えて高くなり、各耐食性試験においても腐食が確認された。
【0066】
さらに、No.13およびNo.18は、スラグ中のCaOが高かったこと、および、O濃度が低かったことにより、溶鋼中のCa濃度が0.01mass%を超えて高くなってしまった。そのため、CaO単体からなる非金属介在物が生成してしまい、各耐食性試験において腐食が確認された。さらに、溶接時に黒点も発生した。
【0067】
また、No.14は、溶鋼中のAl濃度が0.1mass%を超えて高かったため、アルミナ単体の非金属介在物を生成し、クラスター起因の表面庇が発生した。さらに、溶接時の黒点の発生も認められた。
【0068】
No.15は、No.12と同様に、スラグ中のFeO濃度が高く、SiおよびAl濃度が低かったため、脱酸および脱硫が不十分となった。その結果、介在物中のFeOおよびCr濃度が高くなり、さらに、MnS起因のA系介在物も発生して清浄度が0.05を超えて高くなり、各耐食性試験において腐食の発生が確認された。
【0069】
No.16は、Al濃度が0.1mass%を超えて高く、MgおよびCa濃度も0.00005mass%未満と低かったため、アルミナ単体の非金属介在物を生成し、クラスター起因の表面庇が発生した。さらに、溶接時の黒点も発生した。
【0070】
No.17は、スラグ中のMgO濃度が高かったため、溶鋼中のMg濃度が0.01mass%を超えて高くなった。そのため、操業時にノズル閉塞を生じ、鋳造を途中で停止することとなり、製品を得ることができなかった。
【0071】
【表1】
Figure 0004025170
【0072】
【表2】
Figure 0004025170
【0073】
【表3】
Figure 0004025170
【0074】
【表4】
Figure 0004025170
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塩素イオンおよび硫酸イオンを比較的高濃度に含む溶液中においても優れた耐食性を有すると共に、溶接性および表面性状にも優れた特性を有するステンレス鋼を得ることができる。本発明のステンレス鋼を用いることにより、比較的厳しい腐食環境下で使用される各種設備などの性能を一段と向上することが可能となり、産業上極めて有効な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】応力腐食割れ性試験、隙間腐食性試験に用いたスポット溶接した試験片を示す図である。
【図2】孔食性試験井に用いたTIG溶接した試験片を示す図である。

Claims (7)

  1. C≦0.03mass%、
    Si:0.01〜1.5mass%、
    Mn:0.01〜2.0mass%、
    Cr:19.0〜25.0mass%、
    Ni:17.0〜40.0mass%、
    Mo:5.0〜10.0mass%、
    Al:0.001〜0.1mass%、
    Cu:0.01〜2.0mass%、
    Co:0.001〜2mass%、
    N:0.05〜0.3mass%、
    P≦0.03mass%、
    S:0.0002〜0.002mass%、
    Mg:0.00005〜0.01mass%、
    Ca:0.00005〜0.01mass%、
    O:0.0001〜0.01mass%、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼において、該ステンレス鋼中に含まれる非金属介在物が、MgO・Al,CaO−Al系酸化物,MgOおよびCaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物のうちの1種または2種以上からなることを特徴とする耐食性、溶接性および表面性状に優れるステンレス鋼。
  2. 前記非金属介在物において、MgO・Alの組成が、MgO≧5mass%かつAl≦95mass%であり、CaO−Al系酸化物の組成が、CaO:30〜60mass%かつAl:40〜70mass%であることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼。
  3. 前記非金属介在物において、CaO−SiO−Al−MgO−MnO系酸化物が、鋳造後のスラブ中または鋼塊中にガラス質として存在することを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼。
  4. 上記鋼は、鋼中の非金属介在物が、JIS G0555に規定されたB系およびC系の形態であり、かつ、JIS G0555に規定された清浄度が0.05以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼を製造するに当たり、電気炉に原料を装入して溶解し、AODおよび/またはVODにおいてArまたは窒素と酸素とを吹精して脱炭し、その後、石灰石および蛍石を投入してCaO−SiO −Al −MgO−F系スラグを形成し、さらにAlまたはAlおよびフェロシリコンを投入してクロム還元、脱酸および脱硫を行った後、連続鋳造法または普通造塊法によりスラブとすることを特徴とする耐食性、溶接性および表面性状に優れるステンレス鋼の製造方法。
  6. 上記CaO−SiO −Al −MgO−F系スラグ組成は、CaO:30〜80mass%、SiO ≦20mass%、Al :5〜40mass%、MgO:1〜30mass%およびF≦20mass%であることを特徴とする請求項5に記載の耐食性、溶接性および表面性状に優れるステンレス鋼の製造方法。
  7. 前記普通造塊法は、鋳造して得た鋼塊を熱間鍛造してスラブとする方法であることを特徴とする請求項5または6に記載のステンレス鋼の製造方法。
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