JP4023780B2 - 受光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体として例えばDVD,DVD−R,DVD−RW,CD−ROM,CD−R,CD−RWなどの光ディスクから光ピックアップ光学系を介して光情報を読み取るために用いられる信号受光用フォトダイオードなどの受光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク装置に用いる光ピックアップ用光学系は、光源からの光束を、対物レンズを介して光ディスクなどの記録媒体上に集光させ、その反射光束を上記対物レンズを介して受光素子に導くためのシステムであり、記録媒体上に情報を記録したり、または記録媒体上に記録された情報を読み取るのに用いられる。
【0003】
このような光ピックアップ光学系が正しく機能するためには、対物レンズの焦点を記録媒体面上に一致させるためのフォーカシングエラー信号と、光束の焦点位置を記録トラック上に一致させるためのトラッキングエラー信号とを読み取る必要がある。このような記録媒体面およびその記録トラックに対する光束の位置調整を行った上で、光ピックアップ光学系が記録媒体上に記録された情報信号であるRF信号を読み取ることが可能となるのである。
【0004】
以下に、光ピックアップ光学系で多く用いられている非点収差方式による焦点調整方法について詳細に説明する。
【0005】
従来の光ピックアップ光学系用の受光素子の一例を図7に示している。
【0006】
図7は、従来の光ピックアップ光学系用の受光素子の平面図である。図7において、光ピックアップ光学系用の受光素子100は、四つの受光素子部(分離素子部)A〜Dに分割されており、これらの受光素子部A〜Dにそれぞれ対応する各受光領域がそれぞれ表面側に設けられている。
【0007】
図7(a)に示すように、四つの受光領域の中央部分の円形(破線部)は、対物レンズ(図示せず)の焦点を記録媒体面上に一致させたときの記録媒体面から反射する反射光束Raの断面形状を示している。記録情報信号(光情報)であるRF信号を読み取る前に、図7(a)に示すような円形になるように対物レンズなどの光学系を位置調整する。
【0008】
また、図7(b)および図7(c)に示すように、各受光領域の中央部分の楕円形(破線部)は、対物レンズの焦点位置が記録媒体面上からずれた場合の反射光束Rb,Rcの断面形状を示している。これは、シリンドリカルレンズの作用により、図7(b)および図7(c)のように反射光束Rb,Rcの断面形状が楕円形状となり、この場合に、以下の方法でフォーカシング調整およびトラッキング調整が行われている。
【0009】
各受光領域に対応した四つの受光素子部(分離素子部)A〜Dからの光電変換信号をそれぞれIa〜Idとすると、フォーカシングエラー信号If=Ia+Ic−(Ib+Id)で表される。ここで、フォーカシングエラー信号If=0となるように、つまり反射光束の断面形状が円形状(図7(a))となるように対物レンズなどの光学系を位置調整し、対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致させるようにする。
【0010】
また、トラッキングエラー信号It,It’はそれぞれ、It=Ia−Ib、It’=Ic−Idで表される。ここで、トラッキングエラー信号It,It’=0とすることで、受光すべき反射光束の断面中心が各受光領域に対応した四つの受光素子部(分離素子部)A〜Dの分離共有点中心Xからのずれを調整する。
【0011】
また、RF信号Irfは、Irf=Ia+Ib+Ic+Idで表される。対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したとき、つまり受光すべき反射光束の断面が円形状(図7(a))になったとき、上記RF信号Irfの読み出しを行うようにしている。
【0012】
ここで、従来の光ピックアップ光学系用受光素子100の断面構造例を図8に示し、その等価回路の一例を図9に示している。
【0013】
図8に示すように、光ピックアップ光学系用の受光素子100は、P型半導体基板101上に、分離壁であるP型半導体壁102と、P型半導体壁102により田の字状に4分割されたN型半導体エピタキシャル層103とが配設されて構成されている。
【0014】
N型半導体エピタキシャル層103は、四つの受光領域A〜Dに分離された四つの各受光素子部から構成されている。このP型半導体基板101−N型半導体エタビタキシャル層103間、P型半導体分離壁102−N型半導体エピタキシャル層103間にP−N接合構造を有している。
【0015】
受光した信号光によりP型半導体基板101、P型半導体分離壁102、N型半導体エピタキシャル層103で発生したキャリアは、前記したP−N接合構造に達して光電変換電流Ipdとなる。また、N型半導体エピタキシャル層103の各受光素子部にはそれぞれ各電極104がそれぞれ配設されている。図9のように、電極104からN型半導体エピタキシャル層103とP型半導体基板101およびP型半導体分離壁102とのP−N接合部を介して、光電流(光電変換電流Ipd)が接地(GND)側に流れる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の受光素子100の応答速度は、発生した光キャリアが拡散して移動することにより低下する成分と、P−N接合容量に起因するCR時定数による成分とから決定され、光キャリアの拡散移動距離が長くなれば、受光素子100の応答速度も低下し、P−N接合容量が大きくなれば、受光素子100の光変換応答速度(信号検出処理速度)も低下する。
【0017】
従来の受光素子100では、受光表面以外は全てP−N接合からなっている。従来の受光素子構造のままで、P−N接合容量を低減するためには、受光素子サイズを小さくするしか方法はなかった。
【0018】
対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したとき、つまり受光すべき反射光束の断面形状が円形状になったときのRF信号を読み出す場合のみを考慮すれば、受光素子形状を図7(a)に示す破線部分の円形状の小さな素子とすることは可能であるが、フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号を読み取るためには、各受光領域A〜Dに上記各エラー信号を読み取る信号調整領域が必要であり、前述したような小円形状の受光領域を持つ小型の受光素子とすることは困難である。
【0019】
一方、先に挙げられる特開昭58−88842号公報「受光素子」には、光情報読取り用の受光素子であって、その中心部分に配置された第1の受光素子部と、この受光素子部の周辺に放射状に分割して配置された第2の受光素子部とを有する受光素子が提案されている。
【0020】
しかしながら、上記特開昭58−88842号公報「受光素子」では、RF信号用の第1の受光素子部と、フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出処理用の第2の受光素子部とを分離独立させているために、フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出処理用の第2の受光素子部で光電変換される信号成分は極端に小さくなってS/N比が悪化し、高速のフォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出処理には不向きである。
【0021】
この受光素子では、S/N比改善、高速のフォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出処理のためには、放射状に分割して配置されたフォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号読取り用の全ての第2の受光素子部に対して増幅回路が必要になる。
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、P−N接合容量の低減により信号検出処理速度の高速化とS/N比の改善を図ることができる受光素子を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の受光素子は、分離壁によって分割された4つの分離素子部を有し、該4つの分離素子部にはそれぞれ、RF信号を検出する第1の受光領域と、該第1の受光領域の外側に位置しフォーカシングエラー信号とトラッキングエラー信号を検出する第2の受光領域とを備えた受光素子において、該分離壁は、該第1の受光領域から該第2の受光領域に至る方向に一方導電型半導体壁と絶縁体壁とがこの順に配設されており、該第1の受光領域を分離する分離壁を該一方導電型半導体壁とし、該第2の受光領域を分離する分離壁を該絶縁体壁とするものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0024】
また、好ましくは、本発明の受光素子において、一方導電型半導体基板上に、前記4つの分離素子部を構成する他方導電型半導体層が設けられており、前記第1の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層とが直接接続され、前記第2の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層との間に絶縁体層が設けられている。
【0025】
本発明の受光素子は、分離壁によって分割された4つの分離素子部を有し、該4つの分離素子部にはそれぞれ、RF信号を検出する第1の受光領域と、該第1の受光領域の外側に位置しフォーカシングエラー信号とトラッキングエラー信号を検出する第2の受光領域とを備えた受光素子において、一方導電型半導体基板上に、該4つの分離素子部を構成する他方導電型半導体層が設けられており、該第1の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層とが直接接続され、該第2の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層との間に絶縁体層が設けられているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子における第1の受光領域における前記一方導電型半導体基板と前記他方導電型半導体層との直接接続領域が円形である。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子において、光束の焦点が記録媒体上に一致した場合の前記第1の受光領域への光束照射面積と前記直接接続領域が同等の面積を有している。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子における絶縁体壁の厚さは、その厚さ方向両側に配置される前記分離素子部を電極とする寄生容量がP−N接合容量に比べて1/10程度の小さ値となるような厚さとする
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子における絶縁体層の厚さは、その厚さ方向両側に配置される前記分離素子部と前記一方導電型半導体基板とを電極とする寄生容量がP−N接合容量に比べて1/10程度の小さい値となるような厚さとする。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子における分離壁を放射状に配設すると共に、該分離壁の放射状中心位置を前記第1の受光領域に含めている。
【0031】
さらに、好ましくは、本発明の受光素子において、前記第1の受光領域にのみ、前記4つの分離素子部のそれぞれを放射状に更に分割する分離壁として他の一方導電型半導体壁が更に設けられている。
【0032】
上記構成により、以下、その作用を説明する。従来の受光素子では、受光面以外の複数の受光素子部外周面全体がP−N接合分離構造で形成されているため、各受光素子部外周面全体のP−N接合容量が大きくなり、光変換応答特性(信号検出処理特性)の改善が困難であった。
【0033】
これに対して、本発明では、例えば、高速光変換応答特性を必要とする、RF信号光が照射される第1の受光素子部の第1の受光領域、つまり対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したときの反射光束が照射される円形受光領域の少なくとも一部に対応した受光素子部のみP−N接合分離構造とし、光キャリアの拡散成分を低減しつつ、その他の分離壁および分離層は絶縁体分離構造とすることにより、P−N接合容量の低減が図られる。このようにして、P−N接合容量を低減することにより、信号検出処理速度の高速化を図ることが可能となる。また、この場合にも、従来のように第1の受光素子部と第2の受光素子部とを互いに分離独立させていないために、第2の受光素子部で光電変換される信号成分は極端に小さくなることもなくS/N比の悪化もない。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の受光素子の参考例1および各実施形態〜4について図面を参照しながら説明する。
参考例1
図1は、本発明の参考例1における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。図1において、光ピックアップ光学系用の受光素子1は、一方導電型のP型半導体基板(図示せず)上に、受光すべき光束の中心部近傍の円形光束部分を受光可能とする円形受光領域(第1の受光領域)を有する第1の受光素子部2と、この第1の受光素子部2の周辺に配設されその円形光束部分の周囲の光束を受光する第2の受光領域を有する矩形状の第2の受光素子部3と、この第2の受光素子部3の外周部分を外部と分離する分離壁としてのP型半導体壁4とを有する構造となっている。
【0035】
第1の受光素子部2の第1の受光領域は、記録媒体上に光束の焦点が一致したときの反射光束が照射される照射領域が最小の円形状となるが、この最小円形状の照射領域と略同じ円形面積に形成されている。即ち、第1の受光素子部2の円形領域は、その光束の焦点が一致したときの記録媒体からの反射光束が照射される最小円形状の照射領域と面積的に一致させる。これによって、この最小円形状の第1の受光領域を表面に持つ第1の受光素子部2では、従来のように分離壁がないことからP−N接合容量が削減されて高速な光変換応答(信号検出処理)が可能となる。
【0036】
第2の受光素子部3は、第1の受光素子部2の外側周辺部に配設されており、フォ一カシングエラー信号検出およびトラッキングエラー信号検出に用いられる。このフォーカシングエラー検出およびトラッキングエラー検出領域(第2の受光領域)は、更に後述するが、第1の受光領域よりも光変換応答速度が遅い領域であってもよい。
【0037】
本発明では、P−N接合容量の低減による受光素子の光変換応答速度の高速化を目的とするものであり、16倍速DVD−ROMピックアップ用受光素子を一例とした場合、RF信号帯域=140MHzが最も広帯域を必要とする信号であり、トラッキングエラー信号帯域およびフォーカスエラー信号帯域は、22KHz〜10MHz程度の帯域の応答速度があれば十分エラー信号を読み取ることができる。したがって、対物レンズの焦点が、記録媒体面上に一致したとき、つまり受光すべき反射光束の断面形状が最小の円形状(焦点が最も絞られた円形状)になった場合のRF信号(光情報)を読み取るとき、最も高速な光変換応答を必要とし、また、反射光束の断面が図7(b)および図7(c)に示したように楕円形状のとき、つまりトラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号を読み取るとき、RF信号ほどの光変換応答速度は必要としない。
【0038】
これらの第1の受光領域に対応した第1の受光素子部2と、第2の受光領域に対応した第2の受光素子部3とは一つの受光素子1内に設けられており、第1の受光素子部2と第2の受光素子部3とが互いに分離壁などで分離された受光素子構造ではない。また、第2の受光素子部3自体も従来のように分離壁などで複数に分離された分割受光素子構造ではない。
【0039】
さらに、第1の受光素子部2および第2の受光素子部3は共にN型半導体エピタキシャル層で構成されており、P型半導体基板とN型半導体エピタキシャル層との間にP−N接合容量を有している。
【0040】
したがって、本参考例1では、フォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出用の第2の受光素子部3では、第1の受光素子部2ほど高速な光変換応答性を必要とせず、従来の特開昭58−88842号公報「受光素子」のように複数の分離素子部に分離する分離壁と分離素子部間をP−N接合構造とする必要がないことから、第2の受光素子部3での分離壁を省略している。これによって、従来の特開昭58−88842号公報「受光素子」に記載の受光素子に比べてP−N接合容量を低減して、RF信号検出処理速度(光変換応答速度)を高速化しつつ、第1の受光素子部2と第2の受光素子部3とが分離独立していないことから第2の受光素子部3でのS/N比改善をも図ることができる。
【0041】
なお、本参考例1によれば、高速光変換応答特性を必要とする、RF信号光が照射される受光部分、つまり対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したときの反射光束が照射される第1の受光素子部2のみP型半導体基板とのP−N接合構造としてもよく、この場合、光キャリアの拡散成分を低減しつつ、その他の第2の受光素子部3とP型半導体基板間に絶縁体分離層を設けて絶縁体層分離構造とすることにより、P−N接合容量を更に低減することができて、更なる光変換応答速度(RF信号検出処理速度)の高速化を図りつつS/N比改善をも図ることができる。
(実施形態2)
上記参考例1では受光素子を分離壁がない状態で第1の受光素子部2と第2の受光素子部3とで構成したが、本実施形態2では これに加えて、第1の受光素子部2および第2の受光素子部3を放射状に複数に分離する分離壁が設けられ、かつ第1の受光素子部2の分離壁をP型半導体壁(一方導電型半導体壁)とし、第2の受光素子部3を絶縁体壁とした場合である。
【0042】
図2は、本発明の実施形態2における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。図2において、光ピックアップ光学系用受光素子11は、P型半導体基板(図示せず)上に、受光すべき光束の中心部近傍の円形光束部分を受光可能とする円形受光領域を有する第1の受光素子部12と、この第1の受光素子部12の周辺に配設されその円形光束部分の周囲の光束を受光する矩形状の第2の受光素子部13と、この第2の受光素子部13の外周部分を分離すると共に、「田の字状」に均等に四つの分離素子部A〜Dに分離する分離壁14とを有する構造となっている。
【0043】
第1の受光素子部12の受光領域は、光束の焦点が記録媒体上に一致したときにその反射光束が照射される最小円形状の照射領域と略同じ円形状の面積に形成されている。即ち、第1の受光素子部12の円形状の受光領域は、その反射光束が照射される最小円形状の照射領域と面積的に一致させる。この第1の受光素子部2では、詳細に後述するが、最小円形状の受光領域を高速光変換応答可能なRF信号検出領域とすることができる。
【0044】
第2の受光素子部13は、第1の受光素子部12の外側周辺に配設されており、フォーカシングエラー信号検出およびトラッキングエラー信号検出に用いられる。第1の受光素子部12の周辺部領域にあるフォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出領域(第2の受光領域)は、前述したように、第1の受光領域よりも光変換応答速度が遅い領域であってもよい。これらの第1の受光素子部12と第2の受光素子部13は互いに一つの受光素子内に設けられており、互いに分離壁などで分離された分割受光素子構造ではない。
【0045】
ここで、最小円形状の受光領域を高速光変換応答可能なRF信号検出領域とするための接合容量低減構造例を図3に示している。
【0046】
図3は、図2の光ピックアップ光学系用受光素子の接合容量低減構造図である。図3において、光ピックアップ光学系用受光素子11は、P型半導体などの一方導電型半導体基板15上に、受光素子内部のN型半導体などの半導体エピタキシャル層16と、この半導体エピタキシャル層16の周囲を外部の所定導電型半導体層17から分離すると共に、半導体エピタキシャル層16を平面視「田の字」状に均等に4分割する分離壁14とを有している。
【0047】
半導体エピタキシャル層16は、各受光領域に対応した各分離素子部A〜Dに均等に4分割されている。この半導体エピタキシャル層16において、前述したように、高速光変換応答可能なRF信号検出領域の円形状の第1の受光素子部12と、その周辺に配設されフォーカシングエラー信号およびトラッキングエラー信号検出領域の第2の受光素子部13とを有している。
【0048】
分離壁14は、図3の斜線部に示すP型半導体壁141と、その外側の絶縁体分離壁142とで構成されている。
【0049】
P型半導体壁141は、各分離素子部A〜Dの分離壁共有点中心X近傍(放射状中心X近傍位置)つまり第1の受光素子部12の領域内に配設され、受光素子内部のN型半導体の半導体エピタキシャル層16との間でP−N接合容量を形成している。
【0050】
絶縁体分離壁142は、第2の受光素子部13を各分離素子部A〜Dの一部にそれぞれ分離する分離壁を絶縁体壁としている。絶縁体分離壁142は、N型半導体の半導体エピタキシャル層16との間でP−N接合容量を形成していない。
【0051】
以上の本実施形態2のP−N接合容量低減構造によれば、分離壁14をP型半導体層141と絶縁体分離層142とに分け、絶縁体分離層142と半導体エピタキシャル層16とがP−N接合を形成しない分だけP−N接合面積が低減されて接合容量を低減すると共に、P型半導体層141と半導体エピタキシャル層16とはP−N接合を形成し第1の受光素子部12においてはP−N接合面積に変化がないことから接合容量の低減もないが第1の受光素子部12での光変換信号応答の遅延もない。
【0052】
このように、RF信号検出領域(第1の受光素子部12)とフォーカシングエラー検出およびトラッキングエラー検出領域(第2の受光素子部13)とを、一つの受光素子内で分けることにより、受光素子内のP−N接合容量を低減し、受光素子の信号の高速光変換応答を可能とする。また、光束の焦点が記録媒体上に一致したときの反射光束の断面が円形であることにより、反射光束の断面円形状と一致させるように、第1の受光素子部12の円形状の面積を極力小さくすることで、P−N接合容量の更なる低減が可能となる。
【0053】
なお、本実施形態2では、第1の受光素子部12を分離する分離壁をP導電型半導体壁141とし、第2の受光素子部13を分離する分離壁を絶縁体分離壁142としたが、これに限らず、分離壁14は、第1の受光領域から第2の受光領域に至る方向にP導電型半導体壁と絶縁体分離壁とをこの順で形成していてもよい。即ち、第1の受光素子部12の素子領域内にP型半導体壁141の他に絶縁体分離壁142を含んでいてもよいし、第2の受光素子部13の素子領域内に絶縁体分離壁142の他にP型半導体壁141を含んでいてもよいが、少なくとも第1の受光素子部12にP型半導体壁141を含んでいる必要があるし、第2の受光素子部13に絶縁体分離壁142を含んでいる必要がある。これによって、対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したときの反射光束が照射される円形受光領域の少なくとも一部に対応した受光素子部(第1の受光素子部12よりも小さくてもよいし大きくてもよい)のみP−N接合分離構造とすることができる。
(実施形態3)
上記実施形態2では、P−N接合容量低減方法として、分離壁14をP型半導体壁141と絶縁体分離壁142とに分け、絶縁体分離壁142と半導体エピタキシャル層16とはP−N接合を形成しない分だけP−N接合面積を低減するようにしたが、本実施形態3では、更にP−N接合容量を低減する方法として、上記実施形態2の接合容量低減構造に加えて、第1の受光素子部12の直下にP導電型半導体基板15を配設しかつ、第2の受光素子部13の直下に絶縁体分離層18を介して導電型半導体基板15を配設する場合である。
【0054】
図4は、本発明の実施形態3における光ピックアップ光学系用受光素子の接合容量低減構造図である。なお、図2および図3と同様の作用効果を奏する部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図4において、光ピックアップ光学系用の受光素子21は、少なくとも第2の受光素子部13に対応したN型半導体エピタキシャル層16とP導電型半導体基板15との間に絶縁体分離層18を設けることで、P−N接合容量の低減を図っている。
【0056】
第1の受光素子部12にも絶縁体分離層18を設け、信号光波長λが、λ=400nmである場合は、光キャリアの発生が、ほとんど受光素子表面近傍で起こるため、問題とはならないが、記録媒体としてのCD−ROMなどの信号源であるλ=780nmでは、光の進入長が長く光キャリアの一部発生が、半導体基板側で起こり、光変換効率の低下が起こる。この対策として、第1の受光素子部12の下側には、P型半導体基板15とN型エピタキシャル半導体層16によるP−N接合を形成し、第2の受光素子部13の下側に位置するP型半導体基板15とN型エピタキシャル半導体層16間には絶縁体分離層18を有することで上記問題を解決している。
【0057】
なお、本実施形態3では、絶縁体層である絶縁体分離層18が第2の受光素子部13とP導電型半導体基板15との間に配設され、一方導電型半導体基板(P型半導体基板15)が第1の受光素子部12の直下(図4の円形斜線部分)に配設されるようにすることのよりP−N接合容量を低減するようにしたが、これに限らず、一方導電型半導体基板(P型半導体基板15)上に第1の受光素子部12および第2の受光素子部13が配設され、第1の受光素子部12および第2の受光素子部13とP型半導体基板15との間のうち、少なくとも第2の受光素子部13とP型半導体基板15との間の一部に絶縁体層を設けてもよい。即ち、第1の受光素子部12の直下にP型半導体基板15が存在し、第1の受光素子部12とP型半導体基板15とでP−N接合構造を形成するようにしたが、第2の受光素子部13の一部の直下にP型半導体基板15が存在し、第2の受光素子部13の一部とP型半導体基板15とでP−N接合構造を形成するようにしてもよく、それ以外は絶縁体分離層18にて第2の受光素子部13の残る部分とP型半導体基板15とを分離するようにしてもよい。また、第1の受光素子部12の一部の直下にP型半導体基板15が存在し、第1の受光素子部12の一部とP型半導体基板15とでP−N接合構造を形成するようにしてもよく、それ以外は絶縁体分離層18にて第1の受光素子部12の残る部分および第2の受光素子部13とP型半導体基板15とを分離するようにしてもよい。
【0058】
なお、P−N接合断面図を図5(a)に示し、絶縁体分離壁断面図を図5(b)に示している。前述した接合容量は、P−N接合の場合、接合部近傍に形成される空乏層により、P型半導体、N型半導体を電極とする容量構造(寄生容量構造)となり、絶縁体分離壁を用いた場合も絶縁体壁を両側に位置する所定導電型半導体層を電極とする容量構造(寄生容量構造)となる。このため、P−N接合による単位面積あたりの接合容量を1fF/μm2程度とした場合、この接合容量に対して十分低減された容量値(1/10程度)となるように絶縁体分離壁の幅を調整すればよい。
【0059】
即ち、絶縁体壁および絶縁体層による接合容量はその厚さによって容易に小さく制御できる。よって、絶縁体壁142および絶縁体層18による接合容量の厚さは、その厚さ方向両側に配置される分離素子部A〜DやP型半導体基板15を電極とする寄生容量が十分に小さな値(1fF/μm2の1/10程度)となるような厚さに設定すればよい。
(実施形態4)
本実施形態4では、RF信号受光領域である第1の受光素子部32(図6)の発生キャリアの拡散移動時間を更に低減し、高速光変換応答性能(高速信号検出性能)を向上させる場合である。本実施形態4の受光素子構造図を図6に示している。
【0060】
図6は、本発明の実施形態4における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。なお、上記図2〜図5と同様の作用効果を奏する部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図6において、光ピックアップ光学系用受光素子31は、これを各分離素子部A〜Dに分離する分離壁(P型半導体壁141と絶縁体分離壁142)とは別に、第1の受光素子部32において、P型半導体基板表面からN型エピタキシャル層16表面に達するP型半導体壁33の分離壁を複数個(ここでは4つ)放射状に有することで、RF信号検出領域(第1の受光領域32)にP−N接合壁面を追加し、光発生キャリアの拡散移動時間成分を低減して、更なる信号検出応答性の高速化を実現可能とする。
【0062】
また、以上の実施形態〜4において、第1の受光領域は、光束の焦点が記録媒体上に一致した場合の光束照射面積と同等の最小円形状の面積を有している。この観点からも、第1の受光領域においてはP−N接合容量(寄生容量)が小さくなって高速光変換応答(高速信号検出応答)を行うことができる。このように、受光素子の寄生容量は、PN接合の空乏層からなる容量から形成されていることから、受光素子の受光面積にもその寄生容量値が依存している。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高速光変換応答特性を必要とする、RF信号光が照射される受光部分、つまり対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致したときの反射光束が照射される受光部分を高速光変換応答可能な第1の受光素子部とし、その他の受光領域を低速光変換応答で十分な第2の受光素子部とするように、一つの受光素子内を従来のように分離独立させることなく区分したため、接合容量の低減とS/N比改善を図ることができる。具体的には例えば、第1の受光素子部はP−N接合分離構造として、光キャリアの拡散成分を低減しつつ、その他の第2の受光素子部の分離壁および分離層は絶縁体分離壁および分離層とすることで接合容量の低減を図ることができる。このようにして、接合容量の低減による信号検出処理速度の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例1における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。
【図2】 本発明の実施形態2における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。
【図3】 図2の光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す接合容量低減構造図である。
【図4】 本発明の実施形態3における光ピックアップ光学系用受光素子の接合容量低減構造図である。
【図5】 (a)は図4の光ピックアップ光学系用受光素子のP−N接合構造部分の断面図、(b)は同絶縁体分離壁部分の断面図である。
【図6】 本発明の実施形態4における光ピックアップ光学系用受光素子の要部構成を示す平面図である。
【図7】 従来の光ピックアップ光学系用受光素子の平面図であって、(a)は対物レンズの焦点が記録媒体面上に一致した場合の反射光束の断面形状を含んで示す図、(b)および(c)は、対物レンズの焦点位置が記録媒体面上からずれた場合の
反射光束の断面形状を含んで示す図である。
【図8】 従来の光ピックアップ光学系用受光素子の断面構造例を示す斜視図である。
【図9】 図8の光ピックアップ光学系用受光素子の等価回路例を示す回路図である。
【符号の説明】
1,11,21,31 受光素子
2,12 第1の受光素子部
3,13 第2の受光素子部
4 P型半導体壁
14 分離壁
141 P導電型半導体壁
142 絶縁体分離壁
15 P型半導体基板
16 半導体エピタキシャル層
17 所定導電型半導体層
18 絶縁体分離層
A〜D 分離素子部

Claims (9)

  1. 分離壁によって分割された4つの分離素子部を有し、該4つの分離素子部にはそれぞれ、RF信号を検出する第1の受光領域と、該第1の受光領域の外側に位置しフォーカシングエラー信号とトラッキングエラー信号を検出する第2の受光領域とを備えた受光素子において、
    該分離壁は、該第1の受光領域から該第2の受光領域に至る方向に一方導電型半導体壁と絶縁体壁とがこの順に配設されており、該第1の受光領域を分離する分離壁を該一方導電型半導体壁とし、該第2の受光領域を分離する分離壁を該絶縁体壁とする受光素子。
  2. 一方導電型半導体基板上に、前記4つの分離素子部を構成する他方導電型半導体層が設けられており、前記第1の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層とが直接接続され、前記第2の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層との間に絶縁体層が設けられている請求項1記載の受光素子。
  3. 分離壁によって分割された4つの分離素子部を有し、該4つの分離素子部にはそれぞれ、RF信号を検出する第1の受光領域と、該第1の受光領域の外側に位置しフォーカシングエラー信号とトラッキングエラー信号を検出する第2の受光領域とを備えた受光素子において、
    一方導電型半導体基板上に、該4つの分離素子部を構成する他方導電型半導体層が設けられており、該第1の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層とが直接接続され、該第2の受光領域では該一方導電型半導体基板と該他方導電型半導体層との間に絶縁体層が設けられている受光素子。
  4. 前記第1の受光領域における前記一方導電型半導体基板と前記他方導電型半導体層との直接接続領域が円形である請求項2または3に記載の受光素子。
  5. 光束の焦点が記録媒体上に一致した場合の前記第1の受光領域への光束照射面積と前記直接接続領域が同等の面積を有している請求項4に記載の受光素子。
  6. 前記絶縁体壁の厚さは、その厚さ方向両側に配置される前記分離素子部を電極とする寄生容量がP−N接合容量に比べて1/10程度の小さ値となるような厚さとする請求項に記載の受光素子。
  7. 前記絶縁体層の厚さは、その厚さ方向両側に配置される前記分離素子部と前記一方導電型半導体基板とを電極とする寄生容量がP−N接合容量に比べて1/10程度の小さい値となるような厚さとする請求項2または3に記載の受光素子。
  8. 前記分離壁を放射状に配設すると共に、該分離壁の放射状中心位置を前記第1の受光領域に含めた請求項1または3に記載の受光素子。
  9. 前記第1の受光領域にのみ、前記4つの分離素子部のそれぞれを放射状に更に分割する分離壁として他の一方導電型半導体壁が更に設けられている請求項に記載の受光素子。
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