JP4023717B2 - スピルリナのプロテオグリカン抽出物およびその使用方法 - Google Patents
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Description
(発明の属する技術分野)
本発明は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物とその使用方法に関する。
【0002】
(発明の技術的背景)
1970年代以降、研究者は藻類生物、特に藍藻類に関する研究により多くの注意を払っている。そのような研究は主に藻類生物の栄養価と毒性に集中している。藻類生物のうち、スピルリナは、1974年に開催された食糧農業機関の国連会議において早くもヒトの優れた将来的な食物資源となりうると考えられていた。
【0003】
藻類生物の抽出物が医薬として使用可能であるかどうかを確かめるために、1980年代以降、藻類生物の種々の抽出物の特性が研究された。そのような研究のうち、藍藻類の抽出物、特にスピルリナの抽出物の重要性が大きいと考えられていた。
【0004】
日本国特許出願第58−12832号は、白血病細胞の成長を阻害する微小藻類およびスピルリナから抽出されたプロテオグリカンについて開示している。しかしながら、そのようなプロテオグリカンの他の活性は上記出願には開示されていない。スピルリナからプロテオグリカンを抽出するプロセスが開示されてはいるが、そのプロセスは、スピルリナの細胞壁を破砕するステップを含んでいない。従って、上記日本国特許出願におけるプロセスは、工業的に大量にではなく、実験室でのみ適用されるものと予想される。
【0005】
本発明は、スピルリナのプロテオグリカンの抽出およびスピルリナのプロテオグリカン抽出物の治療活性に関する本発明者らの研究に前に基づいて提起されたものである。
(発明の概要)
本発明の1つの目的は、治療上有効量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物と、任意選択で医薬として許容される担体とを含有する組成物を提供することにある。
そのような組成物は、抗ガン、ヘモグラムの改善、耐照射、DNA修復、抗ウイルス、免疫増強、または樹状突起様細胞の活性化のために使用され得る。
【0006】
本発明の別の目的は、
a.重量で5〜20倍の水にスピルリナの乾燥粉末を溶解し、細胞壁の破砕を行うステップと、
b.ステップ(a)で得られた溶液を60〜100℃で加熱し、冷却して溶液から液相を分離するステップと、
c.液相のpHを3.8〜4.2に調整し、ろ過するステップと、
d.ろ物をpH7に調整し、濃縮する乾燥するステップと、
から成る、スピルリナのプロテオグリカン抽出物を調製するプロセスを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、
a.重量で5〜20倍の水にスピルリナの乾燥粉末を溶解し、細胞壁の破砕を行うステップと、
b.ステップa)で得られた溶液を60〜100℃で加熱し、冷却して溶液から液相を分離するステップと、
c.液相のpHを3.8〜4.2に調整し、ろ過するステップと、
d.ろ物をpH7に調整し、濃縮するステップと、
から成るステップにより調製されるスピルリナのプロテオグリカン抽出物を提供することにある。
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物と、任意選択で医薬として許容される担体とを含有する医薬組成物を提供する。本発明の組成物では、使用されるスピルリナプロテオグリカン抽出物の量が治療上有効な量である。藻類生物は人間に副作用がないため、本発明に使用されるスピルリナプロテオグリカン抽出物は一般にさらに精製する必要がない。しかしながら、必要な場合には、抽出物は、高純度の生成物を得るためにさらに処理することが可能である。
【0008】
当業者は、本発明に使用されるスピルリナプロテオグリカン抽出物の量(本願ではこれを用語「治療上有効な量」と一般に称する)を容易に決定することが可能である。スピルリナプロテオグリカン抽出物の量は、患者の体重、年齢、疾病状態等によって決定される。上述したように、本発明に使用されるスピルリナプロテオグリカン抽出物は副作用がなく、患者に直接投与することが可能である。この場合、組成物は医薬として許容される担体を含まない。組成物が医薬として許容される担体を含む場合、抽出物と担体は、所望の調製物を得るために、この分野の従来プロセスに従って混合することが可能である。一般に、組成物中の活性成分の量は0.1〜99.0重量%であり得る。
【0009】
本発明に使用される医薬として許容される担体には、溶媒、賦形剤および崩壊剤のような当該技術分野で慣習的に使用されているものが含まれる。医薬組成物は、経口溶液、カプセル、トローチ、錠剤、粉剤、顆粒剤、シロップ、座薬などを始めとする任意の従来の形式として調製され得る。
【0010】
藻類のプロテオグリカンの抽出のために、本発明では原料として藻類の粉末が好ましくは使用される。ステップa)の細胞壁の破砕は、超音波処理、急速な撹拌、浸透圧を変化させる溶解、または酵素性分解を始めとする当該技術分野の任意の従来の方法で行われ得る。
【0011】
藻類粉末の表面上の培養物や不純物を除去するために、粉末の表面は、少量の水で第1に洗浄され得る。一般に、本発明のステップb)での加熱時間は、0.5時間〜2時間、好ましくは1時間であり、加熱温度は、60℃〜100℃、好ましくは80℃〜95℃、より好ましくは95℃である。
【0012】
本発明のプロセスに使用される水の量は、使用される藻類粉末の量の重量で8〜15倍、好ましくは重量で10倍であり得る。
ステップc)において、溶液は、pH<7に、好ましくはpH2.0〜4.5、より好ましくはpH3.8〜4.2に、最初に調節される。このステップで該pH値に調節するために、HClまたはH2SO4溶液およびNa2CO3またはNaHCO3溶液のような従来の酸/塩基を使用し得る。
【0013】
本発明において、固相と液相間の分離方法は、減圧ろ過、分子篩いろ過、遠心およびその同等物のような当該技術分野で慣習的に使用されているものである。本発明には細胞壁を破砕する処理が含まれているため、スピルリナプロテオグリカン抽出物をより高い収量で得ることが可能である。
【0014】
発明のプロセスによって得られた藻類のプロテオグリカン抽出物は、抗がん、耐照射、免疫増強、DNA修復、樹状突起様細胞活性化、造血機能改善、およびその同等の活性のような活性を有して得る。
【0015】
本発明を、以下の実施例でさらに詳しく説明する。
スピルリナプロテオグリカン抽出物の調製
実施例1
3kgのスピルリナ粉末を3Lの水に溶解し、続いてろ過した。溶液に30Lの水を加え、速やかに撹拌した。得られた溶液を88℃で1時間加熱した。冷却後、溶液を加圧下でろ過した。その後、濾液を、HClの希釈溶液でpH3.8に調整し、一晩維持した。遠心後、上清をNa2CO3溶液でpH7に調整した。得られた沈降物を急速乾燥し、72.3%のプロテオグリカンを含むスピルリナの天然抽出物0.599kgを得た。
【0016】
実施例2
3kgのスピルリナ粉末を24Lの水に溶解し、撹拌し、90℃で1時間加熱した。冷却後、結果物を減圧下でろ過した。濾液をHClでpH4.2に調整し、一晩維持した。ろ過後、濾液をNa2CO3溶液でpH7に調整した。得られた沈降物を乾燥し、71.2%のプロテオグリカンを含むスピルリナの天然抽出物0.549kgを得た。
【0017】
生物アッセイ
1.耐照射活性
中国医科大学(Chinese\~University\~of\~Medical\~Sciences)の動物センターから購入した150匹のC−57マウス(18−22g)を使用した。それらのうち、120匹のマウスを60Co−γで600rad、8.64rad/分照射した。
【0018】
照射したマウスを各々30匹ずつの、コントロール群、低用量群、中用量群、高用量群に分け、照射していないマウスをブランクコントロール群として使用した。低用量、中用量、高用量群のマウスには、実施例1で得たスピルリナのプロテオグリカン抽出物をそれぞれ10mg/kg/d、20mg/kg/d、40mg/kg/dの用量で投与した。ブランク群およびコントロール群のマウスには抽出物を投与しなかった。10日間で、各グループにおけるマウスの生存率を以下の表に示した。
【0019】
【表1】
この結果、投与群のマウスの生存率がコントロールでよりも著しく高いことが示され、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が特に中用量かそれより高用量で有効な耐照射活性を有することが証明された。
【0020】
2.造血機能およびヘモグラムの改善および血板数の増大
実験1. ヘモグラム検査
中国医科大学の動物センターから購入したC−57マウス(18−22g)を使用した。120匹のマウスを60Co−γで600rad、8.64rad/分照射した。
【0021】
照射したマウスをコントロール群、ポジティブコントロール群、低用量群、中用量群、および高用量群に分け、照射していないマウスをブランク群として使用した。ポジティブ群のマウスには、shengxuewan(天津達仁堂製薬工場、中国)を6000mg/kg/d(生体に通常投与する20倍量)投与した。低用量、中用量、高用量群のマウスには、実施例1で得たスピルリナのプロテオグリカン抽出物をそれぞれ10mg/kg/d、20mg/kg/d、40mg/kg/dの用量で投与し、ブランク群およびコントロール群のマウスには抽物を投与しなかった。血液サンプルを照射後1日目、3日目、6日目にマウスの尾静脈から採取し、従来のヘモグラム検査方法により検査した。
【0022】
結果が以下のように示された。
【0023】
【表2】
表のデータはWBC(白血球数)±SE(標準誤差)で表しており、総白血球数は計数の50倍に等しい。( )内のデータは照射コンロール群と比較したP値であり、nは各群の動物の数である。
【0024】
実験2
ある海軍の部門は、参与者が種々の程度で放射の損害を受ける、強い放射条件下のプロジェクトを取り扱っていた。本発明によるスピルリナのプロテオグリカン抽出物を投与した後、患者の白血球数は増加し、患者の免疫は増強された。それは、本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物が白血球を増加させる効果があることを示した。
【0025】
実験3
白血球と血小板のレベルが健常者よりも比較的低い30人について試験した。スピルリナのプロテオグリカン抽出物を患者に1日2回、毎回3錠、経口投与した。1ヶ月後、73パーセントの患者で、白血球と血小板が著しく増大し、食事、休息、および精神の状態が改善した。他の26パーセントの患者にはほとんど効果がなかったが、その理由は彼らの元々の白血球数が低くなく、正常範囲に維持されていたためであった。
【0026】
実験4 血小板計数アッセイ
中国政府によって発行された前臨床研究に関する新規薬剤のガイドラインの要請によれば、ビーグル犬に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の治療上の有効性が観察された。ビーグル犬を6.5Gy60Co−γで不均一に照射した。ポジティブコントロール群として、鄭州製薬株式会社より製造された白血球増大経口液をビーグル犬に投与した。処理群として、照射前の3日間、および24日間連続して、本発明のプロテオグリカン抽出物より作られたカプセル(360mg)をビーグル犬に投与した。その結果、ポジティブコントロール群の犬に関する白血球、顆粒白血球、赤血球、ヘマトグロビン、末梢血の血球の比体積にはほとんど変化が起こらなかった。しかしながら、各処理群の犬に関する血小板量は、照射後の2週目および4週目で、コントロール群の血小板量よりも明らかに高かった(P<0.01)。さらに、処理群の犬の骨髄スライドにおいて、骨髄大核細胞の回復も、大核細胞の量の増大と同様、加速された。処理群の犬の末梢血の白血球の変換率も、照射コントロール(ブランクコントロール)群およびポジティブコントロール群の変換率より高かった。
【0027】
以上の結果は、本発明のプロテオグリカン抽出物が、照射後のビーグル犬の末梢血の血小板の量と白血球の変換率を明らかに回復させ、ビーグル犬の骨髄大核系の赤芽球の増殖を促進することを示した。従って、治療剤として、高用量で放射線療法および化学療法で腫瘍患者を治療したり、血小板を書いたり免疫機能が減小した急性照射患者を治療したりすることが予想される。
【0028】
3.種々の腫瘍細胞系の成長阻害
本発明のプロテオグリカン抽出物は、U937、HL60、およびP388等のヒト白血球細胞系だけでなく、ヒト肺ガンA549、ヒト肝細胞肝がんHepG2、ヒト胃腺がんMKN−28、HCT116の増殖に対して、インビトロで顕著な阻害効果を有していた。また、本発明のプロテオグリカン抽出物は、マウスS180肉腫、B16黒色腫、およびヒト胃腺がんMKN−28、SGC−7901およびヒト肺腺がんLAX83ヌードマウス異種移植片の成長に対して、インビボで明らかな阻害効果を有していた。
【0029】
実験1
インビトロにおける種々の腫瘍の成長阻害
試験した腫瘍細胞系は以下の通りであった:
P388:マウスリンパ腫
U937:ヒト単球白血病
HL60:ヒト骨髄白血病
K562:ヒト赤白血病
A−549:ヒト非小型細胞肺がん
SPC−A4:ヒト肺腺がん
DMS−114:ヒト小型細胞肺がん
NCI−H23:ヒト肺腺がん
SGC−7901:ヒト胃中程度分化腺がん
MKN−28:ヒト胃高程度分化腺がん
HCT−116:ヒト結腸低程度分化腺がん
Hep−G2:ヒト肝細胞肝がん
MCF−7:ヒト胸がん
A−431:ヒト皮膚鱗状がん
以上の細胞系はすべて発明者の研究室に保存し、培養している。
測定
懸濁した腫瘍細胞系P−388、U−937、HL−60およびK−562を、ミクロ培養テトラゾリウム(MTT)アッセイにより測定した。90μl培地の腫瘍細胞を、実験中に細胞を成長の指数関数的段階に維持するのに適した密度で、96ウェルミクロ培養プレートの各々に接種した。その後、本発明において得られたプロテオグリカン抽出物の溶液を各ウェルに10μl/ウェルとなるよう加えた。予備アッセイの結果によれば、スピルリナのプロテオグリカン抽出物は5つの濃度に対して作製し、その各々を三連のウェルで試験した。細胞を含まないブランクとDMSOコントロールを調製すべきである。37℃で48時間さらにインキュベートし、50μlの3成分溶液(10%SDS−5%イソブタノール−0.01mol/L HCl)を各ウェルに加え、プレートをCO2下で一晩インキュベートした。プレートリーダーで570nmの波長における光学濃度(OD)を読み取った。細胞増殖の阻害率を以下の式により計算し、IC50値をLogit法により計算した。
【0030】
他の細胞系を硫酸ローダミンB(SRB)アッセイにより測定した。付着腫瘍細胞をまず24時間付着させてから、MTTアッセイと同じ方法で培養した。簡単に説明すると、24時間の付着後、スピルリナのプロテオグリカン抽出物をウェルに加え、プレートを37℃で72時間培養した。培地を除去し、細胞を100μlのトリクロロ酢酸の10%コールド溶液により核ウェルに固定し、4℃で1時間インキュベートした。プレートを、脱イオン水で5回洗浄し、空気乾燥した。その後、細胞を1つのウェル当たり1%酢酸(体積/体積)の100μlSRB(シグマ)溶液で15分間染色した。染色後、上清は除去し、プレートを1%酢酸で素早く5回洗浄して未結合染料を除去し、空気乾燥した。結合した染料を、150μlの10mmol/Lトリス塩基で各ウェルにて可溶化し、次に、570nmの波長における光学濃度(OD)をプレートリーダで読み取った。阻害率およびIC50値を、MTTアッセイと同じ方法により計算した。
【0031】
成長阻害率(%)=(ODコントロール−OD処理)×100%/ODコントロール
表1 インビトロでの腫瘍細胞系の増殖に関するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の阻害率(%)とIC50値
濃度(mg/ml)
【0032】
【表3】
【0033】
実験2 スピルリナのプロテオグリカン抽出物のDNAトポイソメラーゼに対する阻害効果とDNAに対する直接的影響
【0034】
真核生物のDNA位相構造は、2つのクラスのキー酵素であるトポイソメラーゼI(Topo I)およびトポイソメラーゼII(Topo II)により制御される。Topo Iは一本鎖DNAの分解を起こすことが可能であり、真核細胞の存続に必要ではないが、DNA複製、転写および染色体構成に重要な役割を果たしている。Topo IIは細胞に必要であり、二本鎖DNAの分解を触媒することが可能であり、DNA複製、転写、組換え、ならびに正確な染色体構造の形成、染色体分離および縮合に重要な役割を果たしている。それらの重要な機能および触媒特性によって、Topo IとTopo IIは、臨床における化学療法剤の広範な標的分子として認識されている。
【0035】
DNAの挿入を有するDNAトポイソメラーゼ阻害剤はDNAと直接結合するが、DNAを分解せず、「分子はさみ」としての他の種類の化合物がDNAを直接切断し得る。DNAトポイソメラーゼ阻害剤および分子はさみはいずれもDNA代謝を乱し、これは細胞死を引き起こす。
【0036】
方法
1.Topo I活性に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の効果
スピルリナのプロテオグリカン抽出物はTopo I媒介超コイルPBR322の緩和を阻害し得る。
2.Topo I活性に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の効果
スピルリナのプロテオグリカン抽出物は、Topo II媒介kDNAの脱連環を阻害し得る。
【0037】
実験結果は図2および図3に示した。
スピルリナのプロテオグリカン抽出物は、図2に示されるTopo I媒介超コイルPBR322緩和を阻害し得る。
図2において、
レーン1:PBR322コントロール;
レーン2:1μ Topo I粗酵素抽出物溶液;
レーン3:50μM OPT;
レーン4〜10:0.64、3.2、16、80、400、2000、10000μg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物のDMSO可溶性成分;
レーン11〜17:0.64、3.2、16、80、400、2000、10000μg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物の水溶性成分
スピルリナのプロテオグリカン抽出物は、図3に示されるTopo II媒介kDNA脱連環を阻害し得る。
【0038】
レーン1:kDNAコントロール;
レーン2と10:1μ Topo II粗酵素抽出物溶液;
レーン3:50mM VP16;
レーン4〜9:0.64、3.2、16、80、400、2000μg/mlのスピルリナプロテオグリカン抽出物のDMSO可溶性成分
レーン11〜17:0.64、3.2、16、80、400、2000μg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物の水溶性成分
レーン18:20%DMSO
【0039】
結果として、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の2種類の成分が、Topo I媒介超コイルPBR322緩和およびTopo II媒介kDNA脱連環の両方において、Topo IおよびTopo II活性を共に阻害することが示された。しかし、それらの間には比較的明らかな相違があった。水溶 性成分はTopo I、Topo IIに対して高い阻害効果を有しており、Topo I活性に対しては3.2μg/ml用量、Topo II活性に対しては16μg/ml用量で、完全な阻害効果を示した。DMSO可溶性成分の完全阻害用量は、Topo Iに対しては80μg/ml、Topo IIに対しては2000μg/mlであった。
【0040】
以上の実験は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の水溶性成分がトポイソメラーゼを阻害する主な活性成分であり、その阻害機構として、まずDNAと相互作用し、DNAコンホメーションの変化を誘導し、次に酵素と基質の接触を無効にし、酵素活性を減小させるか場合によっては失わせるものと考えられる。
【0041】
要約すると、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の両方の成分がTopo IとTopo IIに対して明らかな効果を有している。さらに、水溶性成分は二本鎖DNAの分解を直接誘導することもできる。
【0042】
実験3 チロシンキナーゼタンパク質(PTK)に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の効果
チロシンキナーゼタンパク質(PTK)はシグナル伝達における重大な要素であり、細胞の成長、増殖および形質転換に関与している。腫瘍遺伝子の多くの発現産物はPTK活性を有している。PTK活性は正常細胞より形質転換細胞ではるかに高い。従って、腫瘍細胞の予期しない成長が、PTK活性を減少させることにより制御される可能性があることが仮説として設けられる。
【0043】
表皮成長因子受容体(EGFR)は、受容体型のPTKであり、分子量17kDaの1186アミノ酸から成る一本鎖の膜貫通型糖タンパク質であり、哺乳動物の上皮膜に広く分布している。EGFRのC末端はリン酸化後に多くの細胞基質を認識してそれを活性化し、細胞の代謝、成長、発がんに影響を及ぼす。EGFRが多くの腫瘍で過剰発現しており、EGFRが腫瘍の転移と予後の悪さに強く関わっていることを多くの研究者が示している。本発明の研究では、PTKのリン酸化に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物の効果を観察するために、PTKを拾い上げるEGFR含有A431細胞を使用した。
【0044】
結果
【0045】
【表4】
結果として、プロテオグリカン抽出物がPTK活性に顕著な阻害効果を有することが示された。プロテオグリカン抽出物は、ほぼ完全に1.2mg/mlの用量でPTKのチロシンリン酸化を阻害し、0.3mg/mlの用量で65〜67%の阻害率を有し、0.07mg/mlのより低用量でも37.7%の阻害率を有していた。
【0046】
上記実験は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物がPTKのチロシン残基のリン酸化を顕著に阻害し得ることを示した。考えられる機構は、それが腫瘍細胞の悪性の成長を防ぐためにキナーゼを阻害することで、PTKを媒介としたシグナル伝達を中断させるということである。
【0047】
実験4.ヒト白血病HL−60細胞にアポトーシスを引き起こすスピルリナのプロテオグリカン抽出物
一連の遺伝子によって制御されたアポトーシスは、プログラム細胞死である。その制御の乱れは、悪性の腫瘍形成に深く関与していた。現在、多くの抗がん剤が腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こすことができることはよく知られている。また、抗がん作用は腫瘍細胞アポトーシスを誘導する能力と関係している。細胞アポトーシスの誘導は、恐らく、種々の機構で腫瘍に干渉する抗がん剤に共通の経路であり、従って、細胞アポトーシスは治療の効力を評価するための1つの方法になっており、また、腫瘍細胞のアポトーシスの誘導は腫瘍治療のためのターゲットである。
【0048】
実験と結果
アガロースゲル電気泳動
細胞アポトーシスが起こった時、エンドヌクレアーゼは活性であり、DNAはヌクレオソーム間で開裂し、約180〜200bpのDNA断片またはその倍数断片が生じた。アガロースゲル電気泳動は特異的DNAラダーを検出することができた(図4参照)。図4において、参照数字1はコントロール群を示し、参照数字2は1mg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物の群を示し、参照数字3は3mg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物の群を示し、参照数字4は6mg/mlのスピルリナのプロテオグリカン抽出物の群を示した。
【0049】
フローサイトメトリー
細胞アポトーシスが起こった時、分断して生じたDNA断片が細胞から出て、細胞中のDNA量が減少した。フローサイトメトリー法はG1相以前の細胞(アポトーシス細胞とも呼ばれる)を検出することができ、該細胞におけるDNA量は二倍体細胞のDNA量よりも少ない。実験の結果を図5に示した。
【0050】
実験により、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、インビトロでもインビボでも、ヒト固形腫瘍および白血病の広幅スペクトルに阻害効果を有することが実証された。スピルリナのプロテオグリカン抽出物は、細胞の増殖のシグナル伝達経路を防ぐことによりEGF−Rチロシンキナーゼタンパク質の阻害剤として腫瘍細胞の成長を阻害し、また、DNA複製、転写、遺伝子発現に干渉することによりトポイソメラーゼの阻害剤として腫瘍にアポトーシスを誘導した。スピルリナのプロテオグリカン抽出物はほとんど毒性を持たず、長期間臨床的に使用することができた。スピルリナのプロテオグリカン抽出物は有意な抗腫瘍効果を有すると共に、効果を及ぼすべき明確な標的を有しており、がんの治療に有望な薬剤となるはずである。
【0051】
4.DNAの修復
実験1 骨髄損
実験
中国医科大学の動物センターから購入した体重18〜22gのC−57マウスを、60Co−γで600radの線量で8.64rad/分照射した。
【0052】
【表5】
エラー! 参照元が見つかりません。
照射後のマウスを、照射コントロール群、低用量群、中用量群、および高用量群に分けた。コントロール群のマウスは照射しなかった。コントロール群および照射コントロール群のマウスを薬剤を用いずに処理し、低用量群のマウスを10mg/kg/日の用量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理し、中用量群のマウスを20mg/kg/日の用量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理し、高用量群のマウスを40mg/kg/日の用量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理した。照射後2日目に、各群からランダムに選択した10匹のマウスを、組織切片を得るため検死した。切片を750倍に拡大した顕微鏡で観察した。
【0053】
図6に示した実験結果によると、マウスへの放射線に関する損傷が照射コントロール群において最も顕著であることが実証された。この群では、マウスの骨髄が網目状であり、骨髄の細胞増殖が中断され、骨髄の未成熟細胞は4%を湿るに過ぎず、有糸分裂は観察されなかった。骨髄の毛細血管は損傷を受け、出血が起こり、「血だまり」を生じていた。薬剤で処理した群のマウスの損傷は低減された。
【0054】
実験2 骨髄DNA量の決定
マウスを上述のように照射、処理した。照射後の6日目に、各群からランダムに選択した10匹のマウスを検死した。軟組織をすべて除去したインタクトな大腿骨を、10mlの0.005M CaCl2溶液で洗浄し、骨髄をすべて遠心管に入れ、4℃に30分間保ち、2500rpmで15分間遠心した。沈殿物を5mLの0.2モル/l HClO4溶液で完全に混合し、90℃で15分間加熱し、冷却後遠心した。286nmにおける上清のOD値を検出した。DNA含量:1OD=33μg/ml DNA。
【0055】
実験結果を以下に列挙した:
【0056】
【表6】
結果は図7にも示してあり、図7は、処理群のDNA含量が照射コントロール群のDNA含量よりも高いことを実証した。中用量、高用量またはポジティブコントロール群は、照射コントロール群と比較して、有意差があった(P<0.01)。本発明による抽出物が骨髄細胞を保護し、DNAに対し明らかな修理効果を有することが示された。
【0057】
5.抗ウイルス実験
臨床病理学:
患者1::XXX、中年男性、北京市大興の農業家。ウイルス肝炎に罹患し、その後肝硬変となった。10年後、重大な腹水液があり、消化管に出血が生じた。本発明のスピルリナのプ
テオグリカン抽出物より作製したカプセルで1日2回、1回1カプセルで治療した後、60日後には腹水液や多量出血はほとんどなかった。90日後の腹水液はほとんどなく、自分の日常生活に対応することができ、回復した。1999年に、10年前のCT結果と比較して、病院でCTテストを行ったが、病巣は拡大しないか、悪化していなかった。病理学者によれば、10年間肝硬変に罹っていた病変が患者で拡大していないのは珍しいということであった。
【0058】
患者2:XXX、北京の小学校校長。ウイルス肝炎を十分に治療しなかったため、肝硬変に罹患し、深刻な腹水液と消化管での多量出血を伴い、死亡が予定されていた。スピルリナのプロテオグリカン抽出物で1日2回、1回1カプセル、継続して60日間治療した後、腹水液は明らかに減少し、多量出血はなかった。90日間の治療後、腹水液はほとんどなく薬物での180日間の治療後、自分の日常生活に対応することができ、仕事に再び戻り、気分が良くなった。1999年に、301病院でCTテストを行ったが、病巣は見つからなかった。病理学者によれば、ウイルスが阻害されたと考える根拠があると思われた。
【0059】
6.粘膜損傷の修復
中国医科大学の動物センターから購入した体重18〜22gのC−57マウスを、60Co−γで600radの線量で8.64rad/分照射した。
照射後のマウスを、コントロール群、低用量群、中用量群、および高用量群に分けた。ブランクコントロール群のマウスは照射しなかった。ブランクコントロール群および照射コントロール群のマウスを、薬剤を用いずに処理した。低用量群のマウスを10mg/kg/日の用
の本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理し、中用量群のマウスを20mg/kg/日の用量の本発明のスピルリナプロテオグリカン抽出物で処理し、高用量群のマウスを40mg/kg/日の用量の本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理した。照射後の7日目および14日目に、各群からランダムに選択した10匹のマウスを検死し、小腸の組織切片を作製した。切片を顕微鏡で観察し、写真撮影し、計数した。
【0060】
実験データは、コントロール群のマウスでは放射線がマウスの小腸粘膜の上皮細胞へ大きな害を起こし、マウスの粘膜の上皮細胞を損傷させ、破壊さえしたことを示した。これはさらに、
細胞の層をむき出しにした。しかしながら、処理群マウスの小腸粘膜の上皮細胞への放射線による害は、コントロール群と比較して、著しく減少した。
【0061】
7.免疫系の増強
実験1
γグロブリン含量
中国医科大学の動物センターから購入した体重18〜22gのC−57マウスを、60Co−γで600radの線量で8.64rad/分照射した。
照射後のマウスを、照射コントロール群と照射処理群に分けた。コントロール群および処理コントロール群のマウスは照射しなかった。マウスの眼窩から採取した血液を遠心し、そこから血清を得た。血清を染色後クロマトグラフ分析した。血清中のγグロブリン含量をピーク値により計算した。
【0062】
結果は以下の通りだった。
【0063】
【表7】
結果は図8にも示してあり、図8は照射群でも非照射群でも、処理群のマウスのγグロブリン含量が対応するコントロール群のγグロブリン含量より高いことを実証した。γグロブリン含量は身体の免疫機能を示すため、γグロブリンパーセンテージの増加は、身体の免疫機能の改善を示した。
【0064】
実験2 Tリンパ球テスト
体重18〜22gのマウスを、1群当たり10匹のマウスの、ブランクコントロール群、ポジティブコントロール群、高用量群および低用量群にランダムに分けた。処理群のマウスは、10mg/kg/dの用量のCTXを注入してから、上述と同じ用量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で経口的に処理した。ポジティブコントロール群のマウスは、10mg/kg/dの用量のCTXで処理してから、水で経口的に処理した。コントロール群のマウスは水で経口的に処理しただけである。処理を10日間連続して行った後、処理を2日間停止した。血液を、リンパ球切片を得るためにマウスの眼窩から採取した。インキュベーションと染色後、Tリンパ球パーセンテージを決定した。
【0065】
結果は以下の通りだった。
【0066】
【表8】
エラー! 参照元が見つかりません。
結果は図9にも示してあり、図9は、マウスにCTXを注入した後でマウスのTリンパ球の含量が有意に減少することを実証した。しかしながら、処理群のマウスのTリンパ球の含量は、特に高用量群において、増大した(P<0.01)。これは、本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物が身体の免疫機能を増強させる機能および骨髄細胞を保護する機能を有していることを示した。
【0067】
8.CD43+造血幹細胞/祖先細胞の増殖に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物
材料と方法
すべての細胞を、5%CO2の大気下で、37℃にて15%FCS RPMI 1640培地中で対応する細胞因子と共に培養した。
【0068】
臍帯血液CD34+造血幹細胞/祖先細胞
臍帯血液のサンプルは、北京医科大学の婦人科・産科の人民病院より得た。ヘパリンの最終濃度は20U/mlだった。血液採取後、サンプルを5時間以内にCD34+細胞について選別した。臍帯血液はPBSで希釈した。赤血球を0.1%メチルセルロースで沈降させ、上清を集めた。単球(MNC)をリンパ球分離剤を用いて分離した。CD34抗体としてQBEND−10と、ヒツジ抗マウスIgG1免疫ビーズ(Miltenyi Biotec社,ドイツ)を用いた。マークを付けた細胞を、磁場中で分離カラムに通過させた。マークのない細胞を溶出により除去する。カラムは磁場から取り除き、加圧下で溶出した。CD34+細胞を集めて計数した。
【0069】
細胞因子
CD34+細胞の培養における細胞因子とその製造元を以下に列挙した。
【0070】
【表9】
抗体
フローサイトメトリーに使用されるモノクローナル抗体には、Pharmingen社より購入したCD34−FITC、HLA−DR−FITC、CD33−PE、CD1a−PE、CD42b−PEが含まれる。
【0071】
CD43+造血幹/祖先細胞の増殖と分化に対する影響の検出
CD43+造血幹/祖先細胞を、IMDM、15%FCS、15%HS、40ナノグラム/ml FL、20ng/ml Tpo、200ng/ml SCF、10ng/ml IL−6、10ng/ml IL−3および2×104u/ml G−CSから成る培地で培養した。CD34+細胞を24−細胞プレートで、3×104細胞/ml、1ml/細胞でインキュベート、培養した。1群として3つの細胞を0、0.2、0.4および0.8μg/mlの用量でスピルリナのプロテオグリカン抽出物でそれぞれ処理した。細胞を5%のCO2と飽和湿度下で37℃にて培養し、48時間ごとに細胞因子を添加した。10日間の培養後、細胞を採取し、対応する蛍光抗体を用いて細胞表現を検出した。
【0072】
実験結果:
FL、TPO、SCF、IL−6、IL−3およびG−CSFの存在下では、CD34+細胞の増殖は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度と負の関係を示した。すなわちスピルリナのプロテオグリカン抽出物がない場合、細胞増殖と分化は活発となり、菌体数および分化速度は増大した。10日間の培養後、ほとんどのCD34+細胞は成熟細胞に分化した。スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度が増大すると、細胞増殖は減少し、細胞の変形および細胞の固着は顕微鏡で観察すると増大した。これは、スピルリナのプロテオグリカン抽物が、細胞因子により上昇されたCD34+細胞の増殖を逆転し、CD34+細胞の分化速度を減少させ得ることを実証した。培養後、処理群のCD34+細胞ならびに顆粒・核祖先細胞のパーセンテージは、細胞因子で処理しただけの群のそれらよりも高かった。
【0073】
種々の濃度のスピルリナのプロテオグリカン抽出物で処理し、CD34+細胞を10日間の培養後フローサイトメトリーにより検出した。結果を以下に示した:
【0074】
【表10】
上記の表から、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度が増大した時、CD34+細胞の含量もそれに従って有意に増大した。また、顆粒・核祖先細胞を表すCD34+CD33+の含量や、単球祖先細胞を表わすCD34+CD42b+細胞の含量も同様であった。やはり上記の表から、樹状細胞(DC)を表すCD1a+とHLA−DR+の含量がスピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度の増大と共に有意に増大することが示された。培養物中には多くの典型的な樹状細胞が現れた。これは、本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物が、ピークを抽出物0.4mg/ml用量として、CD34+を樹状細胞へと分化させる効果を有することを示した。スピルリナのプロテオグリカン抽出物はリンパ球を刺激して、細胞因子を分泌させる。
【0075】
以下の表は、種々の用量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物がリンパ球を刺激して、IL−2、IL−3、GM−CSFおよびIFN−γを分泌させることを示した。これは、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、リンパ球を刺激して、M−CFSを分泌させるのに有意な効果を有することを示した。この分泌は使用する抽出物の用量と相関がある。使用されるスピルリナのプロテオグリカン抽出物の用量が増大すると、GM−CSFの分泌はそれに対応して増大した。スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度が0.8μg/mlである時、GM−CSF分泌量は未処理のものの分泌量の1.15倍であった。しかしながら、IL−2、IL−3およびIFN−γの分泌に対するスピルリナのプロテオグリカン抽出物による刺激の効果は有意ではなかった。
【0076】
【表11】
結論:
1.スピルリナのプロテオグリカン抽出物は、細胞因子の存在下で臍帯CD34+造血幹/祖先細胞の増殖をネガティブに制御し、CD34+細胞の分化を大いに遅らせる。CD34+細胞培養系では、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の増大に伴い、CD34+造血幹/祖先細胞、CD34+CD33+脊髄祖先細胞、およびCD34+CD42b+大核祖先細胞の含量が、細胞因子しか添加していない群のそれらに比べて、ずっと高くなった。これにより、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、細胞因子のCD34+の増殖を部分的に阻害し、造血幹/祖先細胞の分化を遅らせ、脊髄祖先細胞および大核祖先細胞を高い比率にし、造血をより長時間を維持することが明らかとなった。動物実験では、スピルリナのプロテオグリカン抽出物による骨髄球と血小板の補給が細胞因子より遅くに起こるが、スピルリナのプロテオグリカン抽出物による骨髄球と血小板の維持がはっきり証明されることが期待された。
【0077】
2.樹状細胞(DC)は最も効率的な抗原提示細胞(APC)であり、宿主の免疫反応に重要な役割を果たす。樹状細胞は突然変異細胞を認識し、エフェクター細胞にシグナルを送り、遂には腫瘍細胞を殺すことが可能である。インビボでは、DCが機能をとるためには数が少なすぎる場合が多い。従って、DCの数を増加させる方法は、抗腫瘍免疫療法およびその臨床への応用の研究における焦点の1つとなる。本発明では培養系にGM−CSM、IL−4、またはTNF−αなどのDC誘導因子を加えなかったが、Cdla+はHLA−DR+細胞(DCの重要な表面マーカー)の割合はスピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度の増加と共に増大する。これは、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、CD34+造血幹/祖先細胞のDCへの分化を引き起こすことが可能であることを示している。スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度が0.4μg/mlである時、誘導効率は最も高くなる(CDla+およびHLA−DR+細胞の含量は、コントロール群でそれぞれ1.70%および26.87%から23.12%および6.49%へ増加した)。これは、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、抗腫瘍免疫療法において潜在的価値を有すると共に広い展望があることを示唆している。
【0078】
3.スピルリナのプロテオグリカン抽出物はリンパ球を顕著に刺激して、抽出物の用量と典型的な相関をなして、GM−CSFを分泌することができる。GM−CSFの分泌は、スピルリナのプロテオグリカン抽出物の濃度の増加に伴って明らかに増加する(0.8μg/mlの濃度では11.5倍のGM−CSF分泌の増加)。これにより、スピルリナのプロテオグリカン抽出物が造血機能の回復を改善でき、造血細胞の増殖の促進に広い効果を有することは明らかである。さらに、GM−CSFは、DCの増殖、成熟、機能(本発明のスピルリナのプロテオグリカン抽出物によって引き起こされたDC形成の考えられる機構の1つである)を促進する最重要な細胞因子のうちの1つである。
【図面の簡単な説明】
【図1】マウスのヘモグラムに対する本発明のヘモグラム改善組成物の効果を示す。
【図2】Topo I媒介超コイルDNAの緩和を阻害する本発明のスピルリナプロテオグリカン抽出物の効果を示す。
【図3】Topo II媒介kDNAの脱連環を阻害する本発明のスピルリナプロテオグリカン抽出物の効果をグラフで示す。
【図4】ヒトHL−60細胞アポトーシスを引き起こす本発明のスピルリナプロテオグリカン抽出物のアガロースゲル電気泳動分析を示す。
【図5】本発明のスピルリナプロテオグリカン抽出物の濃度とアポトーシス細胞数のパーセンテージとの関係をグラフで示す。
【図6】マウスの骨髄細胞に対する本発明の種々の組成物の効果をグラフで示す。
【図7】本発明の種々の組成物の影響下のマウスの骨髄DNA含量を示す。
【図8】マウスのγタンパク質含量に対する種々の用量の本発明の組成物の効果を示す。
【図9】Tリンパ球に対する本発明の組成物の効果をグラフで示す。
Claims (19)
- 治療上有効な量のスピルリナのプロテオグリカン抽出物と、任意選択で医薬として許容される担体とを含有する組成物であって、
前記スピルリナのプロテオグリカン抽出物が、
a)重量で5〜20倍の水にスピルリナの乾燥粉末を溶解し、細胞壁の破砕を行うステップと、
b)ステップa)で得られた溶液を60〜100℃で加熱し、冷却して溶液から液相を分離するステップと、
c)液相のpHを3.8〜4.2に調整し、ろ過するステップと、
d)ろ物をpH7に調整し、濃縮するステップと、
から成るステップにより調製される組成物。 - ステップa)の水が前記乾燥粉末の8〜15倍で使用される、請求項1に記載の組成物。
- ステップa)の水が前記乾燥粉末の10倍で使用される、請求項2に記載の組成物。
- ステップb)が80℃〜95℃の温度で行われる、請求項1に記載の組成物。
- ステップb)が90℃の温度で行われる、請求項4に記載の組成物。
- ステップd)がろ物をさらに乾燥させることを含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が抗ガン、ヘモグラムの改善、耐照射、DNA修復、抗ウイルス、免疫増強、または樹状突起様細胞の活性化のために使用される、請求項1に記載の組成物。
- スピルリナのプロテオグリカン抽出物を調製するプロセスであって、
a)重量で5〜20倍の水にスピルリナの乾燥粉末を溶解し、細胞壁の破砕を行うステップと、
b)ステップa)で得られた溶液を60〜100℃で加熱し、冷却して溶液から液相を分離するステップと、
c)液相のpHを3.8〜4.2に調整し、ろ過するステップと、
d)ろ物をpH7に調整し、濃縮するステップと、
から成るステップを含むプロセス。 - ステップa)の水が前記乾燥粉末の8〜15倍で使用される、請求項8に記載のプロセス。
- ステップa)の水が前記乾燥粉末の10倍で使用される、請求項9に記載の組成物。
- ステップb)が80℃〜95℃の温度で行われる、請求項8に記載のプロセス。
- ステップb)が90℃の温度で行われる、請求項11に記載のプロセス。
- ステップd)がろ物をさらに乾燥させることを含む、請求項8に記載のプロセス。
- スピルリナのプロテオグリカン抽出物であって、
a)重量で5〜20倍の水にスピルリナの乾燥粉末を溶解し、細胞壁の破砕を行うステップと、
b)ステップa)で得られた溶液を60〜100℃で加熱し、冷却して溶液から液相を分離するステップと、
c)液相のpHを3.8〜4.2に調整し、ろ過するステップと、
d)ろ物をpH7に調整し、濃縮するステップと、
から成るステップにより調製されるスピルリナのプロテオグリカン抽出物。 - ステップa)の水が前記乾燥粉末の8〜15倍で使用される、請求項14に記載のスピルリナのプロテオグリカン抽出物。
- ステップa)の水が前記乾燥粉末の10倍で使用される、請求項15に記載のスピルリナのプロテオグリカン抽出物。
- ステップb)が80℃〜95℃の温度で行われる、請求項14に記載のスピルリナのプロテオグリカン抽出物。
- ステップb)が90℃の温度で行われる、請求項17に記載のスピルリナのプロテオグリカン抽出物。
- ステップd)がろ物をさらに乾燥させることを含む、請求項14に記載のスピルリナのプロテオグリカン抽出物。
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