JP4023407B2 - 動力出力装置およびその制御方法並びに自動車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに自動車に関し、詳しくは、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびその制御方法並びに動力出力装置を備える自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンと、このエンジンのクランクシャフトをキャリアに接続すると共に車軸に機械的に連結された駆動軸にリングギヤを接続したプラネタリギヤと、このプラネタリギヤのサンギヤに動力を入出力する第1モータと、駆動軸に動力を入出力する第2モータとを搭載したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、駆動軸に要求される要求動力に基づいてエンジンの運転ポイントを設定し、この運転ポイントでエンジンが運転されるよう第1モータを駆動制御し、要求動力が出力されるよう第2モータを駆動制御する。第1モータの制御では、第1モータの瞬時の目標回転数と将来の目標回転数とを算出し、算出した両目標回転数が共に値0を含む−RからRまでの範囲内にあるときにはこの範囲内を超えるまで目標回転数を−RまたはRに固定している。これにより、第1モータが値0の回転数でロックされて過大な電流が流れて第1モータのインバータが過熱するのを防止している。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−184506号公報(第11頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
モータは、一般的に回転角によりトルクに山谷が生じる。したがって、トルクが谷となる回転角でモータがロックすると、回転数を変更する場合に設定される程度のトルク指令の変更ではロックから離脱することができない場合が生じる。このため、モータが値0を含む−RからRまでの範囲内で回転しないように目標回転数を−RやRに固定しても、−RからRまでの範囲が小さいときにはモータがこの範囲を超える際に値0でロックする場合もある。
【0005】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに自動車は、電動機や発電機などの電力と動力とのやりとりを行なう駆動機器の駆動回路が過熱するの防止することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびその制御方法は並びに自動車は、駆動機器が値0の回転数でロックするのを抑止することを目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに自動車は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、
該電力動力入出力手段を駆動する第1駆動回路と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
該電動機を駆動する第2駆動回路と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を介して電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
操作者の操作に基づいて前記駆動軸に要求される要求動力を設定する要求動力設定手段と、
該設定された要求動力に基づいて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
該検出された駆動状態が前記電力動力入出力手段および/または前記第1駆動回路の発熱を誘引する熱負荷駆動状態にないときには前記設定された目標運転ポイントに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が前記熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と前記設定された目標運転ポイントとに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、
前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を運転制御し、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動されるよう前記第1駆動回路を介して該電力動力入出力手段を駆動制御し、前記駆動軸に前記設定された要求動力に基づく動力が出力されるよう前記第2駆動回路を介して前記電動機を駆動制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の動力出力装置では、操作者の操作に基づいて駆動軸に要求される要求動力を設定し、この設定した要求動力に基づいて内燃機関の目標運転ポイントを設定する。続いて、電力動力入出力手段の駆動状態が電力動力入出力手段やこの電力動力入出力手段を駆動する第1駆動回路の発熱を誘引する熱負荷駆動状態にないときには、設定した目標運転ポイントに基づいて電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、電力動力入出力手段の駆動状態が熱負荷駆動状態にあるときには、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と設定した目標運転ポイントとに基づいて電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する。そして、設定した目標運転ポイントで運転されるよう内燃機関を運転制御し、設定した目標駆動状態で駆動されるよう第1駆動回路を介して電力動力入出力手段を駆動制御し、駆動軸に設定した要求動力に基づく動力が出力されるよう電動機を駆動する第2駆動回路を介して電動機を駆動制御する。即ち、電力動力入出力手段の駆動状態が熱負荷駆動状態にあるときには、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動している経過時間に基づいて電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定するのである。したがって、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動している経過時間を考慮して電力動力入出力手段を駆動制御すること、例えば熱負荷駆動状態から離脱するよう電力動力入出力手段を駆動制御することができる。この結果、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で長時間に亘って駆動するのを抑止することができる。
【0009】
こうした本発明の動力出力装置において、前記目標駆動状態設定手段は、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にないときには前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態で駆動している経過時間に基づいて該電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態から離脱する方向に作用する補正用駆動状態を設定すると共に該設定した補正用駆動状態と前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するための前記電力動力入出力手段の仮駆動状態とに基づいて目標駆動状態を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より迅速に熱負荷駆動状態から離脱するよう電力動力入出力手段を駆動制御することができる。
【0010】
この補正用駆動状態と仮駆動状態とに基づいて目標駆動状態を設定する態様の本発明の動力出力装置において、前記目標駆動状態設定手段は前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態で駆動している経過時間が長いほど大きな補正用駆動状態を設定して目標駆動状態を設定する手段であるものとするこもできる。こうすれば、電力動力入出力手段をより迅速に熱負荷駆動状態から離脱させることができる。
【0011】
また、補正用駆動状態と仮駆動状態とに基づいて目標駆動状態を設定する態様の本発明の動力出力装置において、前記目標駆動状態設定手段は、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態および仮駆動状態を設定して該電力動力入出力手段を駆動制御すると該電力動力入出力手段の駆動状態が前記熱負荷駆動状態になるときには該電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態にはならない駆動状態となるよう目標駆動状態を設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動するのを抑止することができる。
【0012】
本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子に対して該第2の回転子の相対的な回転を伴って該第1の回転子と該第2の回転子の電磁作用による電力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する発電機であるものとすることもできる。この場合、前記熱負荷駆動状態は、前記発電機の回転数が値0を含む所定回転数範囲の駆動状態であるものとすることもできる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記駆動状態検出手段は前記発電機の回転数を検出する手段であり、前記目標駆動状態設定手段は、前記検出された発電機の回転数が前記所定回転数範囲内のときには、該検出された回転数が前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するために前記発電機に要求される要求回転数より小さいときには正の補正トルクを前記補正用駆動状態として設定すると共に該検出された回転数が前記要求回転数より大きいときには負の補正トルクを前記補正用駆動状態として設定し、該設定した補正トルクと前記要求回転数で前記発電機を駆動するための要求トルクとを加えた目標トルクを前記目標駆動状態として設定する手段であるものとすることもできる。
【0013】
本発明の自動車は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、該電力動力入出力手段を駆動する第1駆動回路と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、該電動機を駆動する第2駆動回路と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を介して電力のやりとりが可能な蓄電手段と、操作者の操作に基づいて前記駆動軸に要求される要求動力を設定する要求動力設定手段と、該設定された要求動力に基づいて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、該検出された駆動状態が前記第1駆動回路の発熱を誘引する熱負荷駆動状態にないときには前記設定された目標運転ポイントに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が前記熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と前記設定された目標運転ポイントとに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を運転制御し、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動されるよう前記第1駆動回路を介して該電力動力入出力手段を駆動制御し、前記駆動軸に前記設定された要求動力に基づく動力が出力されるよう前記第2駆動回路を介して前記電動機を駆動制御する制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が機械的に車軸に接続されて走行することを要旨とする。
【0014】
この本発明の自動車では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、熱負荷駆動状態から離脱するよう電力動力入出力手段を駆動制御することができる効果や電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で長時間に亘って駆動するのを抑止することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
【0015】
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)操作者の操作に基づいて前記駆動軸に要求される要求動力を設定し、
(b)該設定した要求動力に基づいて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定し、
(c)前記電力動力入出力手段の駆動状態を検出し、
(d)前記検出した駆動状態が前記電力動力入出力手段の発熱を誘引する熱負荷駆動状態にないときには前記設定した目標運転ポイントに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出した駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が前記熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と前記設定した目標運転ポイントとに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、
(e)前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を運転制御し、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動されるよう該電力動力入出力手段を駆動制御し、前記駆動軸に前記設定された要求動力に基づく動力が出力されるよう前記電動機を駆動制御する
ことを要旨とする。
【0016】
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、操作者の操作に基づいて駆動軸に要求される要求動力を設定すると共にこの設定した要求動力に基づいて内燃機関の目標運転ポイントを設定し、電力動力入出力手段の駆動状態が電力動力入出力手段の発熱を誘引する熱負荷駆動状態にないときには、設定した目標運転ポイントに基づいて電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、電力動力入出力手段の駆動状態が熱負荷駆動状態にあるときには、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と設定した目標運転ポイントとに基づいて電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する。そして、設定した目標運転ポイントで運転されるよう内燃機関を運転制御し、設定した目標駆動状態で駆動されるよう第1駆動回路を介して電力動力入出力手段を駆動制御し、駆動軸に設定した要求動力に基づく動力が出力されるよう電動機を駆動する第2駆動回路を介して電動機を駆動制御するから、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で駆動している経過時間を考慮して電力動力入出力手段を駆動制御すること、例えば熱負荷駆動状態から離脱するよう電力動力入出力手段を駆動制御することができる。この結果、電力動力入出力手段が熱負荷駆動状態で長時間に亘って駆動するのを抑止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0018】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にモータMG1の回転数Nm1が値0近傍となる際の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば8msec毎)に繰り返し実行される。
【0025】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,エンジン22の回転数Ne,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクシャフト26に取り付けられたクランクポジションセンサ23aからの信号に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。ここで、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じて入出力制限Win,Woutを設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0026】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定し(ステップS110)、設定した要求パワーPe*についてはなまし処理を実行する(ステップS120)。ここで、要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。要求パワーPe*に対してなまし処理を施すのは、要求パワーPe*の変化に対するエンジン22の応答遅れを考慮するためである。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めることができる。
【0027】
続いて、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS130)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図6に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0028】
次に、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算する(ステップS140)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2に減速ギヤ35のギヤ比Grを乗じたリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、エンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで定常運転したときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。
【0029】
【数1】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ−Nm2/(Gr・ρ) …(1)
【0030】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると、計算した目標回転数Nm1*が閾値−Nrefと閾値Nrefとにより設定されるロック領域にあるか否かを判定する(ステップS150)。目標回転数Nm1*が負のロック領域にあるとき、即ち目標回転数Nm1*が閾値−Nrefより大きく値0未満のときには、値−Nrefを目標回転数Nm1*に設定し(ステップS160)、目標回転数Nm1*が値0か正のロック領域にあるとき、即ち目標回転数Nm1*が値0以上で閾値Nref未満のときには、値Nrefを目標回転数Nm1*に設定する(ステップS170)。このように設定することにより、目標回転数Nm1*がロック領域内で設定されるのを回避することができる。目標回転数Nm1*がロック領域内にならないようにするのは、以下の理由による。モータMG1の回転数Nm1がロック領域内にあるときには、何かの拍子にモータMG1の回転数Nm1が値0でロックされる場合がある。このときにモータMG1から大きなトルクを出力すると、三相交流の1相に過大電流が流れ、インバータ41が過熱し、場合によっては破損する。こうした状況を回避するために、モータMG1の回転数Nm1が値0でロックしないよう目標回転数Nm1*を調整するのである。したがって、モータMG1の回転数Nm1がロック領域にあるモータMG1の駆動状態は、モータMG1やインバータ41の発熱を誘引する熱負荷駆動状態であるということができる。
【0031】
続いて、設定した目標トルクTe*に基づいてモータMG1のトルク指令Tm1*の設定に用いる基準トルクTbsを設定する(ステップS180)。実施例では、目標トルクTe*をエンジン22から出力したときに動力分配統合機構30のサンギヤ31に作用するトルクを押さえるトルクとして設定するものとし、次式(2)により計算するものとした。
【0032】
【数2】
Tbs=−ρ・Te*/(1+ρ) …(2)
【0033】
次に、モータMG1のトルク指令Tm1*の設定に用いるロック脱出トルクToutを設定する(ステップS190)。ロック脱出トルクToutの設定は、実施例では、図8に例示するロック脱出トルク設定ルーチンにより行なわれる。このルーチンが実行されると、モータMG1の回転数Nm1が閾値−Nrefと閾値Nrefとにより設定されるロック領域にあるか否かを判定する(ステップS300)。回転数Nm1がロック領域にないときには、ロック脱出トルクToutに値0を設定して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。回転数Nm1がロック領域にあるときには回転数Nm1がロック領域に滞留している時間に基づいて仮脱出トルクTtmpを設定する(ステップS320)。仮脱出トルクTtmpは、実施例では、図9の脱出トルク設定マップに例示するように、滞留時間が長くなるほど大きな値が設定されるものとした。このように、滞留時間が長くなるほど大きな値を設定するのは、モータMG1の回転数Nm1をより確実に最小限のトルクによりロック領域から脱出させるためである。モータMG1の回転数Nm1がロック領域にあるときの不都合については上述した。そして、目標回転数Nm1*と回転数Nm1とを比較して(ステップS3309、目標回転数Nm1*が回転数Nm1以上のときには設定した仮脱出トルクTtmpをそのままロック脱出トルクToutとして設定して(ステップS340)、本ルーチンを終了し、目標回転数Nm1*が回転数Nm1未満のときには仮脱出トルクTtmpに値−1を乗じたものをロック脱出トルクToutとして設定して(ステップS350)、本ルーチンを終了する。このように、目標回転数Nm1*と回転数Nm1とを比較することにより、ロック領域から制御の方向にロック脱出トルクToutの方向を設定するのである。
【0034】
図2の駆動制御ルーチンに戻る。こうしてロック脱出トルクToutを設定すると、基準トルクTbsと目標回転数Nm1*と回転数Nm1との偏差を打ち消すフィードバック項とロック脱出トルクToutとの和として次式(3)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS200)。実施例では、フィードバック項としては比例項と積分項とにより構成した。式(3)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0035】
【数3】
Tm1*=Tbs+k1(Nm1*−Nm1)+k2∫(Nm1*−Nm1)dt+Tout …(3)
【0036】
トルク指令Tm1*を計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmax,Tminを次式(4),(5)により計算すると共に(ステップS210)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを式(6)により計算し(ステップS220)、計算したトルク制限Tmax,Tminの範囲内で仮モータトルクTm2tmpを制限した値をモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する(ステップS230)。このようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力する要求トルクTr*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(6)は、前述した図7の共線図から容易に導き出すことができる。
【0037】
【数4】
Tmax=(Wout−Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tmin=(Win−Tm1*・Nm1)/Nm2 …(5)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(6)
【0038】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS240)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0039】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、目標回転数Nm1*がロック領域内となるときにはロック領域外となるよう目標回転数Nm1*の大きさにより目標回転数Nm1*に閾値−Nrefか閾値Nrefを設定するから、モータMG1の回転数Nm1が値0でロックするのを抑止することができる。また、モータMG1の回転数Nm1がロック領域にあるときには、その滞留時間が長くなるほど大きなロック脱出トルクToutを設定してトルク指令Tm1*に反映させるから、迅速により確実にモータMG1の回転数Nm1をロック領域から脱出させることができる。しかも、目標回転数Nm1*が回転数Nm1以上のときには正の値のロック脱出トルクToutをトルク指令Tm1*に反映させ、目標回転数Nm1*が回転数Nm1未満のときには負の値のロック脱出トルクToutをトルク指令Tm1*に反映させるから、より迅速にロック領域から脱出することができる。これらの結果、モータMG1を駆動するインバータ41が過熱するのを防止することができる。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、目標回転数Nm1*がロック領域内となるときには目標回転数Nm1*が負のときに閾値−Nrefを目標回転数Nm1*として設定し、目標回転数Nm1*が値0か正のときに閾値Nrefを目標回転数Nm1*に設定するものとしたが、目標回転数Nm1*がロック領域を通過するまではロック領域に入る側の閾値を目標回転数Nm1*に設定するものとしてもよい。例えば、目標回転数Nm1*が負側からロック領域を通過する場合、ロック領域を通過するまでは閾値−Nrefを目標回転数Nm1*に設定するのである。こうしても、モータMG1の回転数Nm1が値0でロックするのを抑止することができる。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1の回転数Nm1がロック領域にあるときには、その滞留時間が長くなるほど滑らかな曲線をもって大きくなる仮脱出トルクTtmpを導出してロック脱出トルクToutを設定するものとしたが、その滞留時間が長くなるにしたがって段階的に大きくなる仮脱出トルクTtmpを導出してロック脱出トルクToutを設定するものとしてもよい。この場合、段数は如何なる数であっても構わない。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、目標回転数Nm1*が回転数Nm1以上のときには正の値のロック脱出トルクToutを設定し、目標回転数Nm1*が回転数Nm1未満のときには負の値のロック脱出トルクToutを設定したが、目標回転数Nm1*の符号と同一の符号となるようロック脱出トルクToutを設定するものとしてもよいし、回転数Nm1の符号と同一の符号となるようロック脱出トルクToutを設定するものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1のトルク指令Tm1*を基準トルクTbsとフィードバック項とロック脱出トルクToutとの和として設定したが、モータMG1のトルク指令Tm1*をフィードバック項とロック脱出トルクToutとの和として設定するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1のトルク指令Tm1*の計算に用いる基準トルクTbsを、目標トルクTe*をエンジン22から出力したときに動力分配統合機構30のサンギヤ31に作用するトルクを押さえるトルクとして設定したが、そのときにエンジン22から出力しているトルクに伴ってサンギヤ31に作用するトルクを押さえるトルクとして設定するものとしてもよいし、エンジン22の出力トルクを推定してその出力トルクに伴ってサンギヤ31に作用するトルクを押さえるトルクとして設定するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】 バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】 バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】 要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】 エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*および目標トルクTe*を設定する様子を示す説明図である。
【図7】 動力分配統合機構30の回転要素を力学的に説明するための共線図の一例を示す説明図である。
【図8】 ロック脱出トルク設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】 脱出トルク設定マップの一例を示す説明図である。
【図10】 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図11】 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35,減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b,64a,64b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。
Claims (9)
- 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、少なくとも動力を入出力可能な発電機を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、
該電力動力入出力手段を駆動する第1駆動回路と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
該電動機を駆動する第2駆動回路と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を介して電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
操作者の操作に基づいて前記駆動軸に要求される要求動力を設定する要求動力設定手段と、
該設定された要求動力に基づいて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記電力動力入出力手段が有する発電機の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
該検出された駆動状態が前記発電機の回転数が値0を含む所定回転数範囲の駆動状態である熱負荷駆動状態にないときには前記設定された目標運転ポイントに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が前記熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と前記設定された目標運転ポイントとに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定する目標駆動状態設定手段と、
前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を運転制御し、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動されるよう前記第1駆動回路を介して該電力動力入出力手段を駆動制御し、前記駆動軸に前記設定された要求動力に基づく動力が出力されるよう前記第2駆動回路を介して前記電動機を駆動制御する制御手段と、
を備える動力出力装置。 - 前記目標駆動状態設定手段は、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にないときには前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態で駆動している経過時間に基づいて該電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態から離脱する方向に作用する補正用駆動状態を設定すると共に該設定した補正用駆動状態と前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するための前記電力動力入出力手段の仮駆動状態とに基づいて目標駆動状態を設定する手段である請求項1記載の動力出力装置。
- 前記目標駆動状態設定手段は前記検出された駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態で駆動している経過時間が長いほど大きな補正用駆動状態を設定して目標駆動状態を設定する手段である請求項2記載の動力出力装置。
- 前記目標駆動状態設定手段は、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するよう前記電力動力入出力手段の目標駆動状態および仮駆動状態を設定して該電力動力入出力手段を駆動制御すると該電力動力入出力手段の駆動状態が前記熱負荷駆動状態になるときには該電力動力入出力手段が該熱負荷駆動状態にはならない駆動状態となるよう目標駆動状態を設定する手段である請求項2または3記載の動力出力装置。
- 前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸の3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力した動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段を有する手段であり、前記発電機は前記第3の軸に動力を入出力する発電機である請求項1ないし4いずれか記載の動力出力装置。
- 前記電力動力入出力手段は、前記発電機からなり、該発電機は前記内燃機関の出力軸に取り付けられた第1の回転子と前記駆動軸に取り付けられた第2の回転子とを有し該第1の回転子に対して該第2の回転子の相対的な回転を伴って該第1の回転子と該第2の回転子の電磁作用による電力の入出力により該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する発電機である請求項1ないし4いずれか記載の動力出力装置。
- 請求項1ないし6いずれか記載の動力出力装置であって、
前記駆動状態検出手段は前記発電機の回転数を検出する手段であり、
前記目標駆動状態設定手段は、前記検出された発電機の回転数が前記所定回転数範囲内のときには、該検出された回転数が前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関を運転するために前記発電機に要求される要求回転数より小さいときには正の補正トルクを前記補正用駆動状態として設定すると共に該検出された回転数が前記要求回転数より大きいときには負の補正トルクを前記補正用駆動状態として設定し、該設定した補正トルクと前記要求回転数で前記発電機を駆動するための要求トルクとを加えた目標トルクを前記目標駆動状態として設定する手段である
動力出力装置。 - 請求項1ないし7いずれか記載の動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が機械的に車軸に接続されて走行する自動車。
- 内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され少なくとも動力を入出力可能な発電機を有し電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段が有する発電機および前記電動機と前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を介して電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)操作者の操作に基づいて前記駆動軸に要求される要求動力を設定し、
(b)該設定した要求動力に基づいて前記内燃機関の目標運転ポイントを設定し、
(c)前記電力動力入出力手段が有する発電機の駆動状態を検出し、
(d)前記検出した駆動状態が前記発電機の回転数が値0を含む所定回転数範囲の駆動状態である熱負荷駆動状態にないときには前記設定した目標運転ポイントに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、前記検出した駆動状態が前記熱負荷駆動状態にあるときには前記電力動力入出力手段が前記熱負荷駆動状態で駆動している経過時間と前記設定した目標運転ポイントとに基づいて前記電力動力入出力手段の目標駆動状態を設定し、
(e)前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を運転制御し、前記設定された目標駆動状態で前記電力動力入出力手段が駆動されるよう該電力動力入出力手段を駆動制御し、前記駆動軸に前記設定された要求動力に基づく動力が出力されるよう前記電動機を駆動制御する
動力出力装置の制御方法。
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