JP4023363B2 - 有機廃棄物処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物を利用して有機廃棄物の分解処理を行う有機物廃棄処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から微生物を利用して有機廃棄物を発酵させて分解処理する有機廃棄物処理装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)この有機廃棄物処理装置は発酵分解室内にバイオチップと称する木質細片等の担体を有機廃棄物処理材(以降、処理材と称す)として充填してある。そして、有機廃棄物を有機廃棄物投入口から発酵分解室内に投入し、攪拌手段によって攪拌しながら処理材に生息する微生物の働きで有機廃棄物を発酵させて分解処理するものである。微生物による有機廃棄物の分解反応は、温度、酸素、水分等の要因に大きく影響され、これらの要因のどれか1つでも適性範囲外であると分解処理は進まない。そのため、処理材の攪拌、加熱、通風手段等を設けて、発酵分解室内の環境を分解に好適な条件に維持しようとしている。
【0003】
しかし、有機廃棄物が定格量以上投入されたり、油等の処理時間がかかるものが投入されたりした場合は、処理材内部の環境が分解に寄与する微生物の生息に必要な条件から外れてしまい、分解処理が停止してしまうことがある。そうなると、処理材のpHが低下し、いわゆる酸敗状態となり、投入した有機廃棄物が腐敗状態のまま発酵分解室内に残留する。このような状態になると処理材を全量取り出して、新しい処理材と交換しなければならない。
【0004】
前記問題点を解決するために、有機廃棄物の単位時間当たりの供給量を所定量以下に制御する手段を備えた有機廃棄物処理装置や投入機が提案されている。これは、有機廃棄物を1度貯蔵室に貯蔵し、有機廃棄物を少量づつ発酵分解室に供給することによって分解処理能力の向上を狙ったものである。(例えば、特許文献2,3参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開平8−173938号公報(2頁左欄第16行〜第28行)
【特許文献2】
特開2003−62477号公報(4頁右欄第13行〜第29行、図1〜図3)
【特許文献3】
特開2003−62551号公報(3頁右欄第37行〜第41行、4頁右欄第13行〜右欄第24行、図1、図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、有機廃棄物の供給量を所定量以下にしたとしても、例えば水分を極端に多く含んだ有機廃棄物を投入した場合は、装置の水分処理能力を超えて処理材が水分過多となり、結果として腐敗してしまうという問題点があった。通常、このような問題を解決するためには、処理材の容積を大きくすることで処理材の緩衝作用によって酸敗を回避することができるが、装置が大型化し、コストも上昇してしまう。
【0007】
そこで、貯蔵室から発酵分解室に有機廃棄物を供給する手段としてスクリュを用いたものが提案された。しかし、新鮮な生ごみや水分が少ない生ごみではスクリュの回転数に応じて単位時間当たり一定量の生ごみを供給することができるが、水分が多いおかゆ状の生ごみや腐敗により液状化した生ごみではスクリュから生ごみが逆流して生ごみの搬送量が減少してしまうことがある。このようなときに予めスクリュの運転時間を設定して運転した場合には、次の日の投入時になっても生ごみが残留してしまうことになる。一方、スクリュの運転時間をおかゆ状の生ごみに合わせて設定すると通常の生ごみは単位時間当たりの供給量が多くなってしまい、分解を悪化させるとともに動力費も無駄に消費されるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、分解発酵処理の安定性を向上させ、且つランニングコストの低減を図った有機廃棄物処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、微生物が生息した処理材を有し、処理材と有機廃棄物とを共に攪拌して有機廃棄物の発酵分解処理を行う発酵分解室と、発酵分解室内にて上下方向を軸方向とした回転軸に攪拌羽根を設けて処理材と有機廃棄物とを攪拌する攪拌手段と、有機廃棄物を貯蔵する有機廃棄物貯蔵室と、正転時には有機廃棄物貯蔵室の下部から発酵分解室の下部に有機廃棄物を供給し、逆転時には発酵分解室の下部から有機廃棄物貯蔵室の下部へ処理材を供給して有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物と処理材とを混合させるスクリュと、スクリュを第1の時間正転させる制御、及び第2の時間逆転させることで、スクリュの逆転時に有機廃棄物貯蔵室内で処理材と混合された有機廃棄物を、スクリュの正転時に発酵分解室へ搬送する制御を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段を備え、前記制御部は検知した処理材の水分率に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物が含有する水分率の検知手段と、前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段とを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の水分率及び処理材の水分率に基づいて第2の時間を設定して、前記発酵分解室から有機廃棄物貯蔵室に供給する処理材の量を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材温度の検知手段を備え、前記制御部は検知温度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材が発生する炭酸ガス濃度の検知手段を備え、前記制御部は検知した炭酸ガス濃度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1において、前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する重量センサを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて前記第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1において、前記スクリュの駆動トルクを検出することで前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する手段を備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、前記制御部は、スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、前記制御部は、スクリュを第3の時間間隔で、第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、有機廃棄物を投入するため前記有機廃棄物貯蔵室に設けた開口に覆設された蓋と、蓋の開閉を検知する手段とを備え、前記制御部は蓋が開状態から閉状態になったことを検知すると、前記スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は本実施形態の有機廃棄物処理装置の概略構成を示すものであり、有機廃棄物1(生ごみ、チップ等)を貯蔵する有機廃棄物貯蔵室2と、微生物を生息させたコンポスト等の有機廃棄物処理材3(以降、処理材3と称す)を収容する発酵分解室4とを具備しており、有機廃棄物貯蔵室2の側面下部と発酵分解室4の側面下部との間は供給筒8で接続されている。
【0021】
有機廃棄物貯蔵室2は大量の有機廃棄物1を貯蔵できるように大きなホッパを備えており、その上面に形成した開口には有機廃棄物投入蓋9が覆設され、さらに有機廃棄物投入蓋9の開閉を検知する投入蓋開閉検知手段10が設けられている。有機廃棄物貯蔵室2内の下部には有機廃棄物1及び処理材3を搬送するスクリュ5が供給筒8に貫入して設けてある。
【0022】
スクリュ5は水平方向に配置される回転軸5aの外周に螺旋状のスクリュー羽根5bを設け、スクリュ外径−シャフト(回転軸5a)外径:φ120mm−φ35mm,ピッチ90mm,スクリュ羽根5bの厚み6mmの寸法で形成されている。そして、回転軸5aを回転させてスクリュ5を駆動することによって、スクリュー羽根5bによる搬送作用で正転時には有機廃棄物貯蔵室2内の有機廃棄物1を回転軸5aに沿って搬送し、有機廃棄物1が供給筒8を介して発酵分解室4に供給される。逆転時には発酵分解室4内の処理材3を回転軸5aに沿って搬送し、処理材3が供給筒8を介して有機廃棄物貯蔵室2に供給される。
【0023】
また有機廃棄物貯蔵室2内にはこのスクリュ5の上方に有機廃棄物破砕装置6が設けてあり、有機廃棄物破砕装置6は水平方向に配置される回転軸6aの外周に有機廃棄物破砕用のパドル羽根6bを突設して形成される。そして、回転軸6aが回転することによって、パドル羽根6bが有機廃棄物貯蔵室2内の有機廃棄物1を破砕するもので、さらにはスクリュ5上で、例えばキャベツ等の丸い野菜等の大型の有機廃棄物1が空回転して破砕されない状態を予防する。
【0024】
上記スクリュ5及び有機廃棄物破砕装置6はモータ21によりチェーン22を介して各々の回転軸5a,6aが回転することによって駆動される。
【0025】
発酵分解室4内には攪拌装置7が設けてあり、この攪拌装置7は発酵分解室4内の略中央に垂直方向(上下方向)に配置される回転軸7aの外周に水平方向に攪拌羽根7bを突設して形成される。そして、駆動部23で回転軸7aを回転させることによって、発酵分解室4内で、攪拌羽根7bが有機廃棄物1と処理材3とを混合しながら下部から上部へと持ち上げる。この攪拌装置7の駆動部23と、上記のスクリュ5,有機廃棄物破砕装置6を駆動するモータ21とは制御部24によって各々の動作を制御される。
【0026】
次に、制御部24によるスクリュ5及びパドル6の動作について説明する。まず、有機廃棄物投入蓋9を開き、開口から有機廃棄物貯蔵室2内に有機廃棄物1を投入する。有機廃棄物投入蓋9を開いている間は使用者の安全のため、投入蓋開閉検知手段10からの開検知信号によって、制御部24はスクリュ5及びパドル6を駆動しないように制御上でインタロック等の処理を行っている。あるいは投入蓋開閉検知手段10の代わりに、有機廃棄物投入蓋9の開時にオフし、閉時にオンする運転スイッチを有機廃棄物投入蓋9に取り付けて、スクリュ5及びパドル6の駆動のオン・オフを行ってもよい。
【0027】
そして制御部24はタイマ回路(図示なし)を備えており、有機廃棄物投入蓋9が閉まっているとき、モータ21に所定の時間(第3の時間)間隔で、所定時間(第2の時間)の逆転を行ってから所定時間(第1の時間)の正転を行わせることで、スクリュ5及びパドル6は所定の時間(第3の時間)間隔で、所定時間(第2の時間)逆転してから所定時間(第1の時間)正転する。本実施形態では1時間毎に逆転時間30秒、正転時間60秒としており、逆転動作が終了して2秒経過した後に正転動作を行う。これらの各時間は実験によって設定される。
【0028】
このようにスクリュ5を逆転させることで、発酵分解室4内の粉末状の処理材3を有機廃棄物貯蔵室2内に取り込み、有機廃棄物1と処理材3とを混合させて粘度を向上させることで、次のスクリュ5の正転時に有機廃棄物貯蔵室2から発酵分解室4に有機廃棄物1を搬送しやすくなり、その量もほぼ一定量となり、ランニングコストも低減される。
【0029】
(実施形態2)
図2は本実施形態の有機廃棄物処理装置の概略構成を示すものであり、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。本実施形態では、有機廃棄物貯蔵室2内に水分センサ11、発酵分解室4内には水分センサ12を各々設置し、水分センサ11,12は制御部24に接続されている。水分センサ11は、有機廃棄物貯蔵室2内のスクリュ5近傍、且つ供給筒8との接続口8a近傍の底面に設置され、有機廃棄物1の体積含水率Aを検知する。水分センサ12は、発酵分解室4内の発酵分解が活発な側面低位置に設置され、処理材3の体積含水率Bを検知する。なお、水分センサ11は有機廃棄物貯蔵室2内の側面であってもよい。
【0030】
さらに、スクリュ5と有機廃棄物破砕装置6とは別々のモータ21a,21bによって各々チェーン22a,22bを介して別々に駆動されている。
【0031】
以下、制御部24によるスクリュ5及びパドル6の動作について説明する。まず、有機廃棄物投入蓋9を開き、開口から有機廃棄物貯蔵室2内に有機廃棄物1を投入し、有機廃棄物投入蓋9を閉めた直後に、制御部24は投入蓋開閉検知手段10からの閉検知信号によって、モータ21bを駆動し、チェーン22bを介してパドル6を駆動して、有機廃棄物1の均一化を行う。
【0032】
その後、有機廃棄物貯蔵室2内の水分センサ11で有機廃棄物1の体積含水率Aを検知すると同時に、発酵分解室4内の水分センサ12で処理材3の体積含水率Bを検知してから、制御部24はモータ21aを駆動し、チェーン22aを介してスクリュ5を逆転させる。スクリュ5を逆転させることで発酵分解室4から有機廃棄物貯蔵室2に処理材3が供給され、処理材3は有機廃棄物1と混合することで有機廃棄物1の粘度を向上させる。
【0033】
制御部24は、体積含水率A,Bに基づくスクリュ5の逆転時間を図3に示すテーブルに記憶しており、有機廃棄物1の体積含水率A、処理材3の体積含水率Bが各々低い場合は、スクリュ5の逆転時間を短くして処理材1の供給量を少なくし、体積含水率A、Bが高い場合は、逆転時間を長くして処理材1の供給量を多くすることで、有機廃棄物貯蔵室2内の有機廃棄物1の粘度を適切に調整している。
【0034】
そして逆転動作が終了した後、制御部24はスクリュ5を正転させることで有機廃棄物貯蔵室2から発酵分解室4に有機廃棄物1を供給して、有機廃棄物1を発酵させて分解処理する。
【0035】
ここで、一般的に処理材3によって有機廃棄物1が分解する反応は次の反応式で表される。
・炭水化物の分解
Cm(HO)n+mO → mCO+nHO …(式1)
・タンパク質、脂質の分解
CxHyNzOp+aO → CuHvNwOq+bCO+dHO+eNH
…(式2)
式1及び式2にみられるように、有機廃棄物1を分解反応させるには酸素が必要であり、有機廃棄物1の分解に伴って炭酸ガス、アンモニア、水等が発生する。
【0036】
一方、分解反応に必要な酸素が微生物に十分に供給されないと、次のような有機酸生成反応が起こり、処理材3のpHが低下してしまう。
12 → 6CHCOOH …(式3)
これは、分解に必要な酸素が微生物に十分供給されずに通常は有機廃棄物1に支配的に作用する好気性菌による式1のような反応が、嫌気性菌による式3のような反応に傾くためである。そして通常の有機廃棄物1の分解過程では多少の有機酸が生成されたとしても式1のように炭酸ガスにまで酸化されてしまうか、処理材3に含まれるアルカリ成分で中和され、pHを大きく低下させるまでには至らない。ところが、定格量以上の有機廃棄物1が発酵分解室4に供給されたり、発酵分解室4内での分解反応が活発で炭酸ガスが多く発生しているときに多量の有機廃棄物1が供給されたりすると、式3のような有機酸生成反応が支配的になり、処理材3のpHが低下することにもなり、このことを酸敗と称する。
【0037】
そして、処理材3中の水分が過剰な場合には処理材3と空気中の酸素との接触が十分に行われなくなり、式1に示す反応中での酸素が微生物に十分供給されないということも酸敗の原因の1つとなっている。そこで制御部24は、処理材3の体積含水率Bに基づくスクリュ5の正転時間を図4に示すテーブルに記憶しており、発酵分解室4内底部の処理材3の体積含水率Bが高い場合は、スクリュ5の正転時間を短くして有機廃棄物1の供給量を少なくし、発酵分解室4内の発酵分解による発熱で水分蒸発を行い、発酵分解処理を良好に継続することができる。体積含水率Bが低い場合は、スクリュ5の正転時間を長くして有機廃棄物1の供給量を多くし、体積含水率Bを増加させる。有機廃棄物1の80%は水分で構成されているので、発酵分解室4に有機廃棄物1を多く供給すれば処理材3の水分を増加させて発酵分解処理を良好に継続することができる。したがって、発酵分解の安定性が向上し、且つランニングコストの軽減も可能になる。
【0038】
例えば有機廃棄物1がおかゆ状のドロドロの状態の場合、図5に示すようにスクリュ5による有機廃棄物1の発酵分解室4への供給が、自重によって圧密状態となっている発酵分解室4内下部の処理材3aに阻まれる恐れがあるが、この場合でも、制御部24がスクリュ5を逆転させ、発酵分解室4内の処理材3を有機廃棄物貯蔵室2内に引き入れ、おかゆ状の有機廃棄物1と処理材3とを混合させることで、有機廃棄物貯蔵室2内の有機廃棄物1の含水率を搬送可能な程度まで低下させることができ、有機廃棄物1がおかゆ状からある程度の固さを持った状態になり、次にスクリュ5を正転させることで発酵分解室4内への供給が可能になる。
【0039】
なお、上記スクリュ5の正転時間、逆転時間は、スクリュ5の径及び回転数、処理材3の種類、発酵分解室4の容積等によって異なり、実験によって決定する。
【0040】
次に、図6は有機廃棄物1を発酵分解室4に供給してからの経過時間と、処理材3の温度(「○」線で示す)、及び処理材3内の炭酸ガス濃度(「△」線で示す)との関係を示すグラフであり、炭酸ガスの発生は処理材3の温度と相関関係があり、処理材3の温度が高いときは有機廃棄物1の分解が活発であることを表している。言い換えれば、処理材3の温度が高いときは有機廃棄物1が十分に分解されていないとも言える。
【0041】
図7は処理材3の温度と比増殖速度(分解速度)との関係を示すグラフであり、分解速度のピークは処理材3の温度が60℃前後のときであることを表している。このように処理材3の温度によって処理材3の微生物の活性度が判るので、処理材3の温度を検知する熱電対13を発酵分解室4の側面に備えて、制御部24に接続し、制御部24が処理材3の温度によってスクリュ5の正転時間を変化させることで有機廃棄物1の発酵分解室4への供給量を変える。例えば、処理材3の温度(発酵分解室4の底部)が50〜60℃のときはスクリュ5の正転時間を短くし、有機廃棄物1の供給量を低減して処理材3の微生物の活動を抑え、それ以外の温度のときはスクリュ5の正転時間を長くし、有機廃棄物1の供給量を増加させて処理材3の微生物の活動を促す。
【0042】
さらに処理材3の微生物の活性度は処理材3の温度以外にも処理材3内の炭酸ガス濃度でも把握することができ、例えば、処理材3の温度が60℃前後のときに有機廃棄物1を発酵分解室4に供給した場合、急激な分解反応が起こり、処理材3の内部の酸素濃度が減少して、嫌気的な反応が急激に発生する場合があるが、このような場合は、処理材3内の炭酸ガス濃度を検知するCO2センサ14を備えて、制御部24に接続し、炭酸ガス濃度によってスクリュ5の正転時間を変化させることで有機廃棄物1の発酵分解室4への供給量を変えることにより分解処理を良好に継続することができる。
【0043】
さらに図8に示すように水分センサ12とCO2センサ14とで各々検知した処理材3内の処理材3の体積含水率と炭酸ガス濃度とに基づいて、あるいは図9に示すように水分センサ12と熱電対13とで各々検知した処理材3の体積含水率と処理材3の温度とに基づいて、制御部24が有機廃棄物供給手段(モータ21a,チェーン22a,スクリュ5等から成る)を制御してもよい。
【0044】
次に、有機廃棄物貯蔵室2に残っている有機廃棄物1の量が乏しくなってきた場合、スクリュ5の回転数が一定であっても有機廃棄物貯蔵室2から発酵分解室4への有機廃棄物1の供給量は低減するが、図2に示すように有機廃棄物貯蔵室2の発酵分解室4とは反対側の端に重量センサ15を取り付けて有機廃棄物貯蔵室2を片持ち支持することで有機廃棄物貯蔵室2に残っている有機廃棄物1の重量を検知して、この検知した有機廃棄物1の重量が所定の値以下になった場合は、重量センサ15を接続した制御部24がスクリュ5の正転時間を長くすることで、有機廃棄物1の供給量を一定に保つことができ、発酵分解処理を安定して行うことができる。あるいは、スクリュ5を駆動するモータ21aのモータ電流からモータ21aの負荷率が判るので、電流測定器16で検出したモータ電流値が所定の値以下になった場合は、有機廃棄物1の残量が乏しくなったと判断して、スクリュ5の正転時間を長くすることもできる。
【0045】
さらには、制御部24がスクリュ5を逆転して発酵分解室4から有機廃棄物貯蔵室2に搬送した処理材3に、有機廃棄物貯蔵室2の内壁やスクリュ5に付着した有機廃棄物1を吸着させて、再びスクリュ5を正転させて発酵分解室4内に搬送することで、有機廃棄物貯蔵室2の内壁やスクリュ5に付着した有機廃棄物1が腐敗して悪臭を発生することを防止することができるとともに、有機廃棄物貯蔵室2内の有機廃棄物1を余すことなく発酵分解室4内に供給することができる。
【0046】
また、有機廃棄物投入蓋9を閉じた状態で、有機廃棄物貯蔵室2内に有機廃棄物1を貯蔵している間に、有機廃棄物1自体の臭いや腐敗による腐敗臭が問題になることがある。本実施形態では、図1,図2に示すように有機廃棄物貯蔵室2と発酵分解室4との各側面の上端付近を配管29で接続し、発酵分解室4に脱臭器とファン(図示なし)とを設置して、発酵分解室4内の臭いを含む空気を脱臭器に吸い込ませている。このとき、ファンによって発酵分解室4内は数mmAqの負圧になっており、有機廃棄物貯蔵室2内の臭いを含む空気は配管29を介して発酵分解室4に吸い込まれている。すなわち、有機廃棄物貯蔵室2及び発酵分解室4内の空気は脱臭器に吸い込まれて脱臭される。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明は、微生物が生息した処理材を有し、処理材と有機廃棄物とを共に攪拌して有機廃棄物の発酵分解処理を行う発酵分解室と、発酵分解室内にて上下方向を軸方向とした回転軸に攪拌羽根を設けて処理材と有機廃棄物とを攪拌する攪拌手段と、有機廃棄物を貯蔵する有機廃棄物貯蔵室と、正転時には有機廃棄物貯蔵室の下部から発酵分解室の下部に有機廃棄物を供給し、逆転時には発酵分解室の下部から有機廃棄物貯蔵室の下部へ処理材を供給して有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物と処理材とを混合させるスクリュと、スクリュを第1の時間正転させる制御、及び第2の時間逆転させることで、スクリュの逆転時に有機廃棄物貯蔵室内で処理材と混合された有機廃棄物を、スクリュの正転時に発酵分解室へ搬送する制御を行う制御部とを備えるので、有機廃棄物貯蔵室内で有機廃棄物と処理材とを混合させて粘度を向上させることで、次のスクリュの正転時に有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に有機廃棄物を搬送しやすくなり、その量もほぼ一定量となり、分解発酵処理の安定性を向上させ、且つランニングコストの低減を図ることができるという効果がある。また、有機廃棄物が液状に近い状態で有機廃棄物貯蔵室に残り続けることがなくなり、衛生的である。
【0048】
請求項2の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段を備え、前記制御部は検知した処理材の水分率に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御するので、簡易に分解発酵状態の度合を検知することができて、発酵分解処理の安定性が向上し、且つランニングコストの軽減も可能になるという効果がある。
【0049】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物が含有する水分率の検知手段と、前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段とを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の水分率及び処理材の水分率に基づいて第2の時間を設定して、前記発酵分解室から有機廃棄物貯蔵室に供給する処理材の量を制御するので、有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の粘度を適切に調整することができるという効果がある。
【0050】
請求項4の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材温度の検知手段を備え、前記制御部は検知温度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御するので、簡易に分解発酵状態の度合を検知することができて、分解発酵処理の安定性を向上させることができるという効果がある。
【0051】
請求項5の発明は、請求項1において、前記発酵分解室内の処理材が発生する炭酸ガス濃度の検知手段を備え、前記制御部は検知した炭酸ガス濃度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御するので、請求項4と同様の効果を奏する。
【0052】
請求項6の発明は、請求項1において、前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する重量センサを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて前記第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御するので、有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の量に関わらず有機廃棄物の供給量を一定とすることができ、分解発酵処理の安定性をさらに向上させることができるという効果がある。
【0053】
請求項7の発明は、請求項1において、前記スクリュの駆動トルクを検出することで前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する手段を備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御するので、請求項6と同様の効果を奏する。
【0054】
請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、前記制御部は、前記スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させるので、効率よく請求項1と同様の効果を得ることができるという効果がある。
【0055】
請求項9の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、前記制御部は、前記スクリュを第3の時間間隔で、第2の時間逆転させてから第1の時間正転させるので、一定時間毎に自動的に処理を行うことができるという効果がある。
【0056】
請求項10の発明は、請求項1乃至7いずれかにおいて、有機廃棄物を投入するため前記有機廃棄物貯蔵室に設けた開口に覆設された蓋と、蓋の開閉を検知する手段とを備え、前記制御部は蓋が開状態から閉状態になったことを検知すると、前記スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させるので、有機廃棄物の投入毎に処理を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の有機廃棄物処理装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態2の有機廃棄物処理装置の構成を示す図である。
【図3】同上の体積含水率に対する逆転時間示す図である。
【図4】同上の体積含水率に対する正転時間示す図である。
【図5】同上の液状有機廃棄物の状態を示す図である。
【図6】同上の有機廃棄物処理材の温度とCO2ガス濃度との経時関係を示す図である。
【図7】同上の有機廃棄物処理材の温度と比増殖速度との関係を示す図である。
【図8】同上の体積含水率とCO2ガス濃度とによる制御ブロックを示す図である。
【図9】同上の体積含水率と温度とによる制御ブロックを示す図である。
【符号の説明】
1 有機廃棄物
2 有機廃棄物貯蔵室
3 有機廃棄物処理材
4 発酵分解室
5 スクリュ
6 有機廃棄物破砕装置
7 攪拌装置
8 供給筒
24 制御部

Claims (10)

  1. 微生物が生息した処理材を有し、処理材と有機廃棄物とを共に攪拌して有機廃棄物の発酵分解処理を行う発酵分解室と、発酵分解室内にて上下方向を軸方向とした回転軸に攪拌羽根を設けて処理材と有機廃棄物とを攪拌する攪拌手段と、有機廃棄物を貯蔵する有機廃棄物貯蔵室と、正転時には有機廃棄物貯蔵室の下部から発酵分解室の下部に有機廃棄物を供給し、逆転時には発酵分解室の下部から有機廃棄物貯蔵室の下部へ処理材を供給して有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物と処理材とを混合させるスクリュと、スクリュを第1の時間正転させる制御、及び第2の時間逆転させることで、スクリュの逆転時に有機廃棄物貯蔵室内で処理材と混合された有機廃棄物を、スクリュの正転時に発酵分解室へ搬送する制御を行う制御部とを備えることを特徴とする有機廃棄物処理装置。
  2. 前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段を備え、前記制御部は検知した処理材の水分率に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
  3. 前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物が含有する水分率の検知手段と、前記発酵分解室内の処理材が含有する水分率の検知手段とを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の水分率及び処理材の水分率に基づいて第2の時間を設定して、前記発酵分解室から有機廃棄物貯蔵室に供給する処理材の量を制御することを特徴とする請求項1または2記載の有機廃棄物処理装置。
  4. 前記発酵分解室内の処理材温度の検知手段を備え、前記制御部は検知温度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
  5. 前記発酵分解室内の処理材が発生する炭酸ガス濃度の検知手段を備え、前記制御部は検知した炭酸ガス濃度に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
  6. 前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する重量センサを備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて前記第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
  7. 前記スクリュの駆動トルクを検出することで前記有機廃棄物貯蔵室内の有機廃棄物の重量を検知する手段を備え、前記制御部は検知した有機廃棄物の重量に基づいて第1の時間を設定して、前記有機廃棄物貯蔵室から発酵分解室に供給する有機廃棄物の量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機廃棄物処理装置。
  8. 前記制御部は、前記スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の有機廃棄物処理装置。
  9. 前記制御部は、前記スクリュを第3の時間間隔で、第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の有機廃棄物処理装置。
  10. 有機廃棄物を投入するため前記有機廃棄物貯蔵室に設けた開口に覆設された蓋と、蓋の開閉を検知する手段とを備え、前記制御部は蓋が開状態から閉状態になったことを検知すると、前記スクリュを第2の時間逆転させてから第1の時間正転させることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の有機廃棄物処理装置。
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