JP4022443B2 - ポリカプロラクトンポリオールおよびそれを含む接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカプロラクトンポリオール、およびそれを用いた熱剥離容易性接着剤組成物または熱剥離容易性−熱活性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、3官能以上のポリカプロラクトンポリオールは、3個以上のヒドロキシル基を有する化合物を開始剤として、これにε−カプロラクトンを開環付加重合させて製造される。しかしながら、4官能以上のポリカプロラクトンポリオールを得るためには、4個以上のヒドロキシル基を有する化合物を開始剤として使用しなければならないが、そのような4官能以上のヒドロキシル化合物は、その立体障害の故に、ε−カプロラクトンを効率よく開環付加重合させることができず、4官能以上のポリカプロラクトンポリオールを効率よく製造することは困難であった。
【0003】
特開2000-l19624号公報は、ヒドロキシル基とフェニル基を含有する粘着性ポリマーと結晶性ポリエステルとを含む接着剤組成物を開示している。ここに開示された接着剤組成物を用いて、加熱圧着(加熱後の圧着または加熱しながらの圧着)により、物品を被着体に接着することができる。ここに記載の接着剤組成物は、結晶性ポリエステルとしてポリカプロラクトンを使用しており、粘着性ポリマー中のヒドロキシル基とフェニル基が、ポリカプロラクトンとの相溶性を良好にしている。
【0004】
また、特開2002-53834号公報および特開2002-53835号公報は、(1)アクリル系粘着性ポリマーおよび(2)結晶性ポリカプロラクトンまたは結晶性ポリカプロラクトンジオールとジイソシアネートとを反応させて得た(ポリカプロラクトンポリウレタン)を含む接着剤組成物を開示している。ここに開示の接着剤組成物を用いると、加熱により接着力が下がり、再剥離が容易になる。粘着性ポリマー中のヒドロキシル基とフェニル基が、結晶性ポリカプロラクトンまたは結晶性ポリカプロラクトンポリウレタンとの相溶性を良好にしている。
【0005】
特開2002-146330号公報には、低いガラス移転点Tgを有する、炭素数4〜10のアルキル基持つアルキルアクリレート(例えば、n−ブチルアクリレート)を主成分とした粘着性ポリマーと結晶性ポリカプロラクトンポリウレタンを含む熱剥離容易性接着剤組成物が開示されている。
【0006】
ところで、接着剤の低温特性を向上させるために、低いTgを与える2−エチルヘキシルアクリレートを主成分として含むアクリル系粘着剤を使用することが好ましいが、上記ポリカプロラクトンおよびポリカプロラクトンポリウレタンは、2−エチルヘキシルアクリレートを主成分として含むアクリル系粘着剤との相溶性が悪いため、接着剤組成物が熱活性接着性および熱剥離容易性を発現しない。
【0007】
米国特許第5412035号(特表平6-510548号公報に対応)には、20〜40℃の範囲の少なくとも1つの温度で感圧接着剤となる粘着剤と結晶性高分子からなる接着剤組成物が開示されている。この組成物は熱剥離容易性を有する。なお、この特許明細書(公報)には結晶性高分子として、ポリカプロラクトンなどのポリエステルを使用することは開示されていない。
また、米国特許第5192612号には、粘着性ポリマー、脱粘着性樹脂であるポリカプロラクトン、脱粘着微粒子である無機粒子を含む粘着剤が開示されている。この粘着剤は、改良された常温での位置決め性と再貼付け性を有している。しかし、この特許明細書は、熱剥離容易性については言及していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題の1つは、熱剥離容易性接着剤または熱剥離容易性−熱活性接着剤として有用な、新規なポリカプロラクトンポリオールを提供することである。
本発明が解決しようとする別の課題は、熱剥離容易性接着剤または熱剥離性−熱活性接着剤の接着性成分として使用できる接着剤組成物(これらを総称して「熱剥離性/熱活性接着剤組成物」と言うことがある)を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記課題は、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと、多官能性エポキシ化合物または多官能性アジリジン化合物とを反応させて得られるポリカプロラクトンポリオール、および結晶性ポリカプロラクトンポリオールおよびアクリル系粘着性ポリマーを含んでなる接着剤組成物であって、結晶性ポリカプロラクトンポリオールが本発明のポリカプロラクトンポリオールである接着剤組成物により解決される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリカプロラクトンポリオールは、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと、多官能性エポキシ化合物または多官能性アジリジン化合物とを反応させて合成される。
【0011】
カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールは、既知であり、例えば、2,2−ジメチロールアルカン酸を開始剤としてε-カプロラクトンを開環付加重合して製造することができる。
カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールの数平均分子量は、通常200〜100,000、好ましくは300〜50,000である。数平均分子量が500以上のカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールは、融点40〜60℃の結晶性ポリマーである。
【0012】
カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと多官能性エポキシ化合物または多官能性アジリジン化合物とを反応させると、ポリカプロラクトンジオールの多量体が生成する。
多官能性エポキシ化合物としては、好ましくは少なくとも2官能性、より好ましくは2〜6官能性のエポキシ化合物が用いられる。
【0013】
多官能性エポキシ化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレン・ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレン・ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0014】
多官能性アジリジン化合物としては、好ましくは少なくとも2官能性、より好ましくは2〜6官能性のアジリジン化合物が用いられる。
多官能性アジリジン化合物の好ましい例としては、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジン、ジフェニルメタン−ビス−4,4'−N,N‘−ジエチレンウレア、3−ヒドロキシ−2,2'−ビスヒドロキシメチルプロパノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−{1−(2−メチルアジリジニル)}プロピオネート]などが挙げられる。
多官能性アジリジン化合物は、多官能性エポキシ化合物に比べ、カルボキシル基との反応性に富むため、反応に触媒を必要とせず、比較的マイルドな条件で本発明のポリカプロラクトンポリオールを得ることができるから、好適である。
【0015】
本発明のポリカプロラクトンポリオールの重量平均分子量は、通常200〜600,000であり、好ましくは600〜300,000である。
ポリカプロラクトンポリオール分子量は、原料であるカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールの分子量、多官能性エポキシまたはアジリジン化合物の官能数、およびカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと多官能性エポキシまたはアジリジン化合物との当量比などにより、適宜調節することができる。
【0016】
本発明のポリカプロラクトンポリオールは、例えば以下のような条件で合成することができる。
多官能性エポキシ化合物を用いる場合、反応温度は、通常、60〜180℃、好適には、80〜160℃、より好適には、100〜150℃である。
多官能性アジリジン化合物を用いる場合、反応温度は、通常、0〜160℃、好適には、20〜140℃、より好適には、40〜120℃である。
反応時間は、多官能性エポキシ化合物および多官能性アジリジン化合物のいずれを用いる場合も、通常、0.5〜24時間、好適には、0.5〜12時間、より好適には、0.5〜6時間である。
反応は、通常、溶媒の不存在下で行われるが、反応混合物の粘度を調整する目的で、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶媒を用いても良い。
【0017】
多官能性エポキシ化合物を用いる場合、触媒として、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール、N,N'−ジメチルドデシルアミンなどの3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物などが使用される。
触媒の量は、通常、0.001〜10wt%、好適には、0.01〜5wt%である。
多官能性アジリジン化合物を使用する場合には、通常、触媒は不要である。
【0018】
本発明のポリカプロラクトンポリオールを製造する反応は、好ましくは、窒素等の不活性ガス雰囲気行う。これは、反応物と空気中の水分との接触を避け、効率的に反応を進めるためである。
【0019】
本発明の熱剥離性/熱活性接着剤組成物は、
a)本発明のポリカプロラクトンポリオールの中の結晶性ポリオール、および
b)粘着性ポリマー
を含んでなる。
本発明のポリカプロラクトンポリオールを結晶性にするには、好ましくは、数平均分子量1000以上のカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールを原料として用いて、ポリカプロラクトンポリオールを合成する。
【0020】
粘着性ポリマーの分子量は、所定の接着力が発揮される範囲であれば良く、通常は重量平均分子量で10,000〜1,000,000の範囲である。または、粘着性ポリマーとともに粘着付与剤及び/または可塑剤を使用することもできる。
【0021】
本発明で用いられる粘着性ポリマーは、常温(約25℃)で粘着性を示すポリマーであり、本発明の結晶性ポリカプロラクトンポリオール自体の融点以上の温度に加熱した時に、このポリカプロラクトンポリオールと相溶可能であるポリマーを含有する。
粘着性ポリマーは、例えば、アクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、ポリオレフィン系、ウレタン系、シリコーン系ポリマーなどである。粘着性ポリマーは、これらポリマーの1種単独、または2種以上の混合物から構成される。
【0022】
粘着性および凝集力の調節の簡便さ、および本発明の結晶性ホリカプロラクトンポリオールとの相溶性をより高めるため、アクリル系ポリマーが粘着性ポリマーとして好適である。
アクリル系粘着性ポリマーの分子量は、所定の接着力が発揮される範囲であれば良く、通常は重量平均分子量で10,000〜1,000,000の範囲である。
【0023】
または、粘着性ポリマーとともに必要に応じて、各種の添加剤、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤などを使用することもできる。
【0024】
アクリル系粘着性ポリマーとして好適に使用できるアクリル系ポリマーとしては、
(A)25℃以下のホモポリマーのガラス転移点を有するモノマー、
(B)(A)と共重合可能な極性モノマー
とを含んでなる混合モノマーを重合して得たポリマーである。このようなポリマーは通常の方法、例えば、塊状重合、溶液重合などにより共重合させて調製することができる。
【0025】
上記(A)成分としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、ラウリルメタアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
上記(B)成分としては、(メタ)アクリル酸などの不飽和酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素含有モノマーなどが挙げられる。
特に、(A)成分として2−フェノキシエチルアクリレート、(B)成分として2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレートを含むアクリル系粘着性ポリマーは、本発明のポリカプロラクトンポリオールとの相溶性に優れるため、好適である。
【0026】
また、上記(A)および(B)成分のほかに、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル、アクリロイルベンゾフェノンなどの共重合可能なモノマー成分(C)を本発明の熱剥離性/熱活性接着剤としての性能を損なわないかぎり共重合することができる。
また、通常の架橋剤を併用することにより、上記(B)成分は、架橋性官能基としても機能することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤を併用した場合、上記不飽和酸やヒドロキシル基が架橋性官能基として機能し、また、エポキシ系、アジリジン系、オキサゾリン系架橋剤を併用した場合、不飽和酸が架橋性官能基として機能する。
また、共重合可能なモノマー成分(C)として、アクリロイルベンゾフェノンを使用することにより光架橋可能な粘着性ポリマーとすることもできる。
【0027】
上記アクリル系粘着性ポリマーに含まれる成分(A)および成分(B)の組成割合は、(A)成分が、通常50〜99質量%、好適には55〜99質量%、特に好適には60〜99質量%であり、(B)成分が、通常1〜50質量%、好適には1〜45質量%、特に好適には1〜40質量%である。
(A)成分の量が50質量%より少ないと、接着剤組成物の接着性が低下する。一方、(A)成分の量が99質量%を超えると、接着剤組成物の凝集力が低下し、のり残りを生じる恐れがある。
任意成分である(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計に対して、通常0〜20質量%、好適には0〜15質量%、特に好適には0〜10質量%である。
【0028】
本発明の接着剤組成物に含まれる結晶性ポリカプロラクトンポリオールおよび粘着性ポリマーの割合は、接着剤組成物全体に対し、結晶性ポリカプロラクトンポリオール5〜95重量%、粘着性ポリマーおよび95〜5重量%である。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、熱活性接着剤および熱剥離性接着剤の両方の性質を併せ持つことができる。すなわち、ポリカプロラクトンポリオールの融点以上に加熱すると、ポリカプロラクトンポリオールが融解し、粘着性ポリマーと相溶する。その際、低Tg(−60℃)であるポリカプロラクトンポリオールが可塑剤として作用し、組成物の接着力を下げる。この低接着力は、ポリカプロラクトンポリオールが再結晶化するまで持続し、再剥離容易性が発現する。その後、ポリカプロラクトンポリオールが再結晶化すると、接着剤組成物の凝集力が増加し、高接着力が発現する(熱活性接着力)。
【0030】
粘着性ポリマーのTgとポリカプロラクトンポリオールの配合量を調節することにより、接着剤組成物の常温でのタックをコントロールすることができる。例えば、ポリカプロラクトンポリオールを、ポリカプロラクトンポリオールと粘着性ポリマーの合計量に対して、30質量%以上配合すると、常温でのタックを容易に低くすることできるため、位置合せなどが容易となり、加熱再剥離容易な熱活性接着剤として好適に使用できる。また、2−フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートを含むアクリル系粘着性ポリマーを使用した場合、このポリマーのTgが比較的高いため、常温でのタックを低く抑えることができ、加熱再剥離容易な熱活性接着剤としてさらに好適である。
【0031】
一方、通常の2−エチルヘキシルアクリレートやn-ブチルアクリレートを主成分としたアクリル系粘着性ポリマーを使用し、ポリカプロラクトンポリオールを、ポリカプロラクトンポリオールとアクリル系粘着性ポリマーの合計量に対して、30質量%以下使用すれば、常温でのタックが高くすることができるため、加熱再剥離容易な感圧接着剤とすることができる。
【0032】
本発明のポリカプロラクトンポリオールは、上記のように接着剤組成物の成分として使用できるほか、通常のポリオールと同様に使用することができ、例えば、ポリウレタンのポリオール成分として使用することができる。
本発明のポリカプロラクトンポリオールをポリオール成分として調製したポリウレタン樹脂や、それを含むポリウレタン塗料やポリウレタン粘着剤および接着剤は、ポリウレタンが分子構造にポリカプロラクトン(Tg=−60℃)を有するため、可撓性を有し、また、4官能以上の水酸基を有するため高度に3次元架橋され、架橋物は高耐熱性を有する。
【0033】
【実施例】
<ポリカプロラクトンポリオールの調製>
実施例1
カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業株式会社製商品名PLACCEL(登録商標)220BA;数平均分子量Mn=2000)100質量部、および3官能アジリジン化合物として2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート](株式会社日本触媒製商品名ケミタイト(登録商標)PZ-33)7.88質量部を、80℃で15時間反応させて、重量平均分子量Mw=13,000のポリカプロラクトンポリオールを得た。アジリジン骨格の消失は、1H-NMRおよび13C-NMRにより確認した。
【0034】
実施例2
実施例1で用いたカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール(PLACCEL(登録商標)220BA)100質量部、4官能エポキシ化合物としてペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業株式会社製商品名デナコール(登録商標)EX-411)11.65質量部、およびN,N'−ジメチルドデシルアミン0.1質量部を、140℃で18時間反応させて、重量平均分子量Mw=16,000のポリカプロラクトンポリオールを得た。エポキシ骨格の消失は、1H-NMRおよび13C-NMRにより確認した。
【0035】
実施例3
実施例1で用いたカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール(PLACCEL(登録商標)220BA)100質量部および2官能アジリジン化合物としてイソフタロイルビス(2-メチルアジリジン)6.17質量部を、トルエン117.23質量部中で、80℃で4時間反応させて、重量平均分子量Mw=9,000のポリカプロラクトンポリオールを得た。アジリジン骨格の消失は、1H-NMRおよび13C-NMRにより確認した。
【0036】
実施例4−6及び比較例1、並びに実施例7−9及び比較例2−3
<接着フィルムの製造>
表1または表2に示すアクリル系ポリマー、結晶性ポリマーおよび架橋剤を、表1または表2に示す配合で、酢酸エチル/トルエン(70:30質量比)混合溶剤中で混合した。得られた混合溶液を、厚み35μmのポリウレタンフィルム上に塗布し、オーブン中100℃で5分間乾燥させ、厚み30μmの接着剤層を有する接着フィルムを作成した。
この接着フィルムを、以下の試験に付した。結果を表1または表2に示す。なお、表1は、熱剥離容易性−熱活性接着剤として使用した接着剤組成物の結果を、表2は、熱剥離容易性粘着剤として使用した接着剤組成物の結果を示す。
【0037】
<タックテスト>
タック試験機としてRHESCA製Probe Tack Tester RPT100を使用した。25℃/50%RHの雰囲気下、接着フィルムの接着剤面に、ステンレス鋼(SUS304)製0.5mmΦのプロープを、50gの荷重を1秒間加えて圧着し、600mm/分の速度で剥がし、その時の粘着力を測定した。粘着力が10N以下のものは、位置合わせなどが容易な熱活性接着剤として好適である。また、粘着力が10Nを超えるものは、接着のための加熱が必要ない、感圧接着剤として好適である。
【0038】
<初期接着力>
作成した接着フィルムを、25℃でメラミン塗装板に、2kgローラーを1往復させて圧着した。25℃で24時間放置した後、180°剥離力を300mm/分の剥離速度で測定した。室温でのタックが高いものは高接着力を発揮する。
【0039】
<熱活性接着力>
作成した接着フィルムを、80℃で5kg/cm2の荷重下で1分間、メラミン塗装板に加熱圧着した。25℃で24時間放置した後、180°剥離力を300mm/分の剥離速度で測定した。アクリル系粘着性ポリマーと結晶性ポリマーの相溶性に優れているものは、高い接着力を発揮する。
【0040】
<熱剥離容易性>
作成した接着フィルムを、80℃で5kg/cm2の荷重下1分間、メラミン塗装板に加熱圧着したのち、25℃で24時間放置した。貼り合せたサンプルを80℃のオーブン中で3分間加熱後、オーブンより取り出し、25℃で6分間放置後、180°剥離力を300mm/分の剥離速度で測定した。アクリル粘着性ポリマーと結晶性ポリマーの相溶性に優れているものは、加熱後6分たっても低接着力が持続し、再剥離容易である。
【0041】
接着力減少率(%)は、次式:
【数1】
接着力減少率(%)
=(80℃で6分加熱後の接着力)×100/(80℃で24時間加熱後の接着力)
で求めた。
接着力減少率85%未満のものは、十分な熱剥離容易性を示している。
【0042】
<熱剥離容易性−熱活性接着剤としての評価>
実施例4―6の接着剤組成物は、結晶性ポリマーとアクリル系粘着性ポリマーの合計量に対して、結晶性ポリマーとして本発明のポリカプロラクトンポリオールを配合しているため、室温でのタックが低い。また、アクリル系ポリマーと結晶性ポリマーとの相溶性が良好のため、十分な熱活性接着力を発揮し、また、さらに加熱することにより、熱剥離容易性を発揮する。従って、位置合せが容易な、熱剥離容易性−熱活性接着剤として有効である。
【0043】
比較例1
株式会社日本触媒社製アロセット(登録商標)8167(2−エチルヘキシルアクリレート系粘着剤の酢酸エチル・トルエン溶液)に、数平均分子量2,900/重量平均分子量4,900のポリカプロラクトンジオール(PLACCEL(登録商標)220BA)と架橋剤を添加した。
得られた架橋物は、タックが低いため、位置合せ容易な接着剤となるが、アクリルポリマーと結晶性ポリマーとの相溶性が悪いため、相分離が強く熱活性接着力が低い。また、熱剥離容易性も発現しない。
【0044】
<熱剥離容易性粘着剤としての評価>
実施例7−9の接着剤組成物では、結晶性ポリマーの添加量が少ないため、室温でのタックが高く、加熱しなくても高い接着力を発揮する。また、アクリルポリマーと結晶性ポリマーとの相溶性が良好のため、十分な熱剥離容易性を発揮する。
【0045】
比較例2
株式会社日本触媒製アロセット(登録商標)8167に架橋剤のみを添加した。結晶成分が含まれないため、組成物は、熱活性接着剤としての性能は発揮せず、また、熱剥離容易性も観察されない。
比較例3
株式会社日本触媒製アロセット(登録商標)8167に、数平均分子量6,400/重量平均分子量l3,000のポリカプロラクトンポリウレタンと架橋剤を添加した。アクリルポリマーとの相溶性が不十分であるため、十分な熱剥離容易性が発現しない。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1及び表2の注:
1)アロセットTM8167:株式会社日本触媒製2−エチルヘキシルアクリレート系粘着剤の酢酸エチル・トルエン溶液。
2)アロセットTM8142:株式会社日本触媒製n−ブチルアクリレート系粘着剤の酢酸エチル・トルエン溶液。
3)接着ポリマー 1:2−フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/n−ブチルアクリレート/アクリル酸(30:15:50:5質量比)共重合体。
4)PCL 220BA:ダイセル化学工業社製カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール商品名PLACCEL(登録商標)220BA(Mn=2,900、Mw=4,900)。
5)架橋剤(A):イソフタロイルビス(2-メチルアジリジン)。
6)架橋剤(B):綜研化学株式会社製商品名M−5A(金属キレート系架橋剤)。
7)PCL-PUR:ダイセル化学工業株式会社製ポリカプロラクトンジオール商品名PLACCEL(登録商標)220(Mn=2,000)とイソホロンジイソシアネートとをモル比2:1で反応させた、ポリカプロラクトンポリウレタン(Mn=6,4900、Mw=13,000)。
Claims (5)
- カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと、多官能性エポキシ化合物とを反応させて得られる、重量平均分子量が200〜600,000のポリカプロラクトンポリオール。
- カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオールと多官能性アジリジン化合物とを反応させて得られる、重量平均分子量が200〜600,000のポリカプロラクトンポリオール。
- 結晶性ポリカプロラクトンポリオールおよび粘着性ポリマーを含んでなる接着剤組成物であって、結晶性ポリカプロラクトンポリオールが請求項1または2に記載のポリカプロラクトンポリオールであることを特徴とする接着剤組成物。
- 接着剤組成物全質量に対して、ポリカプロラクトンポリオールを30質量%以上含み、熱活性を有している請求項3に記載の接着剤組成物。
- ポリカプロラクトンポリオールを、接着剤組成物全質量に対して50質量%以下含み、粘着性を有する請求項3に記載の接着剤組成物。
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