JP4021910B2 - 建設機械の運転室 - Google Patents

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Description

本発明は、建設機械の運転室に関し、特に詳細には乗降口を開閉するドアを有する建設機械の運転室に関する。
油圧式ミニショベル等の建設機械は、車体上に配設された運転室や作業機等を旋回させて作業を行うように構成されている。この運転室に作業員が乗降するために開閉されるドアは、閉められた状態だけでなく開けられた状態でも作業が行われる。図10は、大型の建設機械60を示しており、車体61上に旋回可能に設けられた旋回台62を有し、この旋回台62に運転室63が取り付けられている。このような大型の建設機械60の場合は、旋回半径R′が大きいため、運転室63のドア64を開いた状態でもこのドア64が旋回半径R′から突出することはないが、小型の建設機械の場合はその旋回半径も小さくなるため運転室のドアが開かれた状態では旋回半径からドアが突出する可能性がある。そのため、ドアが開けられた状態でも旋回半径からドアが突出しないように設計された建設機械の運転室が知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、ドアは前後がレールに沿ってスライド移動することにより平面視において運転室の外周面に沿って移動して開閉可能に構成され、かつ、ドアを含む運転室の側面を平面視において外側に凸の曲面状に形成することにより、開けられた状態でもドアが運転室の旋回半径から突出することはない。
特開平4−353129号公報
しかしながら、前後をレールに沿ってスライド移動させるドアの場合、その構造上、ドアを開閉するハンドルはドアが閉まる方向側(これを前側とする)に設けられ、一方、ドアが開けられたときや閉められたときにその状態で保持するロックはドアの開けられる方向側(これを後側とする)に設けられる。そのため、ドア中央部にハンドルとロックを繋いでロックをストライカに対して係脱する機構部が必要となり、その機構部が配設される部分には窓等を設けることができず視界が遮られることや、ドアの構造が複雑となり製造コストが増加すること、さらには、ドアが厚くなって重量が増加すること等の課題がある。また、開閉時の操作性においても、スライド機構を構成するローラとスライドレールのガタ付きによる開閉フィーリングの悪化や、閉まる直前のドアの軌跡が、前側は運転室にこすりつける方向に移動し、後側は運転室の側面に沿って移動するため操作フィーリングが悪化するだけでなく、ドアのシール不良による水漏れの原因にもなっている。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、閉止位置若しくは開放位置に保持するロックおよびこのロックを操作するハンドルを前部に集中して配置したドアを有する建設機械の運転室を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る運転室は建設機械に配設されるものであり、内部に運転室空間を有し、この運転室空間に連通する乗降口が形成された運転室筐体と、前方に移動して乗降口を閉じ、後方に移動して乗降口を開くように乗降口に取り付けられるドアと、一端が運転室筐体に水平に揺動自在に枢結され、他端がドアの前端部に水平に揺動自在に枢結されたリンク部材と、ドアの前端部に配設され、一端側枢結部を中心としたリンク部材の前方への揺動に応じてドアが前方に移動して乗降口を閉じる閉止位置に位置したときに、運転室筐体に配設されたドア閉め時用ストライカに係合してドアの前端部を閉止位置で保持するドア閉め時用ロックと、ドアの前端部に配設され、一端側枢結部を中心としたリンク部材の後方への揺動に応じてドアが後方に移動して開かれたときに、運転室筐体に配設されたドア開け時用ストライカに係合してドアが開けられた状態を保持するドア開け時用ロックと、ドアの前端部に配設され、ドア閉め時用ロックおよびドア開け時用ロックと連動して、ドア閉め時用ストライカ若しくはドア開け時用ストライカとの係合を解除するハンドルとから構成される。
この発明でいう建設機械としては、例えば、実施形態における油圧式ミニショベル50のように、運転室が車体上に旋回自在に配設されて構成されるものがある。
上記リンク部材が、ドアの前端部の上下に水平に揺動自在に枢結された上リンク部材および下リンク部材から構成されることが好ましい。また、下リンク部材が、運転室筐体の床面より下側に配設されて運転室空間内に突出しないように構成することが好ましい。
さらに、ドアの後端部に運転室筐体の外面に前後に延びて設けられたスライドレールに沿って前後にスライド移動する後部スライド部材を設け、ドアの後端部を後部スライド部材を介して運転室筐体に前後にスライド移動可能に取り付けて構成しても良い。このとき、スライドレールが乗降口の後方において、運転室筐体の外面の上下方向略中央部に前後に延びて配設されることが好ましい。
一方、一端が運転室筐体に水平に揺動自在に枢結され、他端がドアの後端部に水平に揺動自在に枢結された後リンク部材により、ドアの後端部が運転室筐体の乗降口の後部に取り付けられても良い。
なお、閉じられたドアを含む運転室筐体の側面の一部が平面視において前後方向に延びた平面状に形成されていることが好ましい。
本発明に係る建設機械の運転室を以上のように構成すると、閉められる直前のドアの軌跡が従来からあるヒンジ式ドアと同様にドアの内側に向かうため開閉フィーリングが良く、また、運転室筐体とドアの間をシールするシール部材も運転室筐体に真っ直ぐ押しつけられるため、耐久性、水密性を高くすることができる。また、スライドレールからスライド部材が外れたとしても、前部がリンク部材で支持されているため、ドアが運転室筐体から外れて落下することがなく安全性を高くすることができる。さらに、ドアを開けられた状態又は閉められた状態に固定するロックとハンドルとをドアの前端部に集中して配置することにより、ドアの構造が簡単になり軽量化や製造コストの低減が可能となり、また、ドアの中央部に窓を設けて運転室内からの視界を広くすることができる。
このとき、リンク部材をドアの上下に取り付けられた上下リンク部材で構成することにより、ドア前部のガタ付きを無くし開閉フィーリングを向上させることができ、下リンク部材を運転室空間に突出させないことにより、乗降性や安全性を低下させることがない。また、スライドレールを上下方向略中央部に設けることにより、ドアをスムーズに開閉させることができる。
あるいは、ドアの後端部を後リンク部材で運転室筐体に支持することにより、スムーズなドアの開閉操作を可能とする。
また、ドアを含む運転室筐体の側面の一部を平面視において直線上に形成することにより、この運転室の前後部分の幅を大きくすることができ、特に、運転室に搭乗した作業者の足下を広くすることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、本発明に係る運転室を説明する前に、この運転室を有する建設機械の一例として油圧式ミニショベル50について図2を用いて説明する。ミニショベル50は、クローラ装置により走行可能に構成された車体51上に上方に突出した旋回台52を有し、この旋回台52上に運転室53とエンジン室54を有して構成されている。旋回台52は車体51に対して水平旋回可能であり、また、この運転室筐体1の前部には、上下に揺動可能で、屈伸可能な作業機55が枢結されており、油圧シリンダ等で駆動されて作業を行うように構成されている。この運転室53を構成する運転室筐体1の側部には、運転室53に対して作業員が乗降するために開閉されるドア2が設けられている。
それでは、この運転室53に取り付けられたドア2の構造の第1実施例について図1〜図8を用いて説明する。なお、以降の説明において、ドア2が閉まる方向(図1における矢印Fの方向)を前方として説明する。ドア2は、図1に示すように、前部がリンク機構20により運転室筐体1に取り付けられ、後部がスライド機構30により運転室筐体1に取り付けられてこの運転室筐体1に形成されて運転室空間1aに連通する乗降口15を開閉可能に構成されている。リンク機構20は一端が運転室筐体1に揺動自在に枢結され、他端がドア2に揺動自在に枢結されてこのドア2の上下に取り付けられる上リンク部材3と下リンク部材4とから構成される。一方、スライド機構30は、運転室筐体1の外側部に設けられたスライドレール5と、このスライドレール5に沿ってスライド移動するスライド部材6とから構成される。このスライド機構30は乗降口15の上下方向略中央部に設けられている。
リンク機構20を構成する上下リンク部材3,4は、図3及び図4に示すように、一端(固定端3a,4a)が運転室筐体1に揺動自在に枢結され、他端(移動端3b,4b)がドア2の前部の上下端に揺動自在に枢結されている。なお、この上下リンク部材3,4の固定端3a,4aの上下に延びる揺動軸は、平面視において一致しており、移動端3b、4bの上下に延びる揺動軸も、平面視において一致している。このため、図3及び図4に示すように、ドア2が開閉するときに、上下リンク部材3,4は固定端3a,4aを中心に旋回(揺動)する。また、下リンク部材4の固定端4aは、運転室筐体1の床下に取り付けられており、この固定端4aを含む下リンク部材4が運転室筐体1内(運転室空間1a)に突出することはないため、乗降性や安全性を低下させることがない。
スライド機構30は、図1、図5及び図6に示すように、運転室筐体1の外側で乗降口15の後方の上下方向略中央部に前後方向に延びて取り付けられたスライドレール5と、ドア2に取り付けられこのスライドレール5に沿ってスライド移動するスライド部材6とから構成される。スライドレール5は、外側に開口を向けた溝が形成されており、この溝の上面部は、その先端が下方に折り曲げられてレール溝5aを形成している。スライド部材6は、ドア2の内側(運転室筐体1側)で後部の上下方向略中央に取り付けられ、後述するストッパ11,12と嵌合する突当部6a、この突当部6aに揺動自在に枢結された揺動部6b、並びに、スライドレール5の溝に挿入されてこのこの溝内をスライド移動するガイドローラ6c及びセンタローラ6dを有して構成されている。
スライドレール5にスライド部材6がスライド移動可能に取り付けられている状態では、ガイドローラ6cは、スライドレール5のレール溝5a内に位置してこのレール溝5aに沿って転がってスライド移動し、センタローラ6dはスライドレール5の溝内の下面5bに沿って転がってスライド移動する。上述のように、レール溝5aを形成するスライドレール5の上面の先端は下方に折り曲げられているため、ガイドローラ6cがこのレール溝5aから外れないようにするとともに、このレール溝5aに沿ってスライド部材6をガイドしてスライド移動させるように構成されている。また、スライド部材6の揺動部6bは突当部6aに対して揺動することができるため、図6に示すようにスライドレール5が曲がって取り付けられていても、この揺動部6bを揺動させてドア2はスライド移動することができる。
ドア2の前部にはこのドア2が閉じられた状態を保持するドア閉め時用ロック7が設けられ、図3に示すように閉められたドア2の対向する部分の運転室筐体1(乗降口15の前方)に設けられたドア閉め時用ストライカ8に係止されるように構成されている。また、ドア2の前部にはこのドア2が開けられた状態を保持するドア開け時用ロック9が設けられ、図4に示すように開けられたドア2の対向する部分の運転室筐体1(乗降口15の後方)に設けられたドア開け時用ストライカ10に係止されるように構成されている。なお、本実施例においては、ドア2の前部に設けられたドア閉め時用ロック7とドア開け時用ロック9とは図1に示すように別部材として設けられているが、共通部材として構成することも可能である。
運転室筐体1には、ドア2が開けられた状態でこのドア2の後部の突当部6aと嵌合して開けられた状態を保持するドア開け時用ストッパ11と、ドア2が閉められた状態でこのドア2の後部の突当部6aと嵌合して閉じられた状態を保持するドア閉め時用ストッパ12とが設けられている。ドア開け時用ストッパ11は、図5に示すようにスライドレール5の後方に取り付けられたブラケット11bと、このブラケット11bに取り付けられ、スライドレール5と略平行に延びる(前後に延びる)突起部11aとから構成される。また、ドア閉め時用ストッパ12は、図6に示すようにスライドレール5の前方に取り付けられたブラケット12bと、このブラケット12bに取り付けられ、運転室筐体1に対して外方に延びる突起部12aとから構成される。いずれのストッパ11,12も、ドアが開けられた状態若しくは閉められた状態で、スライド部材6の突当部6aと突起部11a,12aが嵌合するように構成されている。ドア開け時用ストッパ11の突起部11aは、図5に示すように突当部6aの側部に形成された嵌合部6eに挿入されて嵌合し、ドア閉め時用ストッパ12の突起部12aは、図6に示すように突当部6aの先端部に形成された嵌合部6fに挿入されて嵌合する。なお、ドア開け時用ストッパ11は、スライド部材6がスライドレール5の後端から外れるのを規制する役目も有している。
従来の前後がスライド移動するドアの場合、ドアを開けて固定するためにドア前方にタブテール(凹凸形状を差し込んで固定する部品)を配設し、その相手部品を運転室筐体(センタピラー部)に配設していたが、ドア前方の上下部内側に取り付け用の無骨なブラケットが必要となるため安全性を損ねたり視界を遮ったりしており、また、同様に運転室筐体の後部外面にもストッパが張り出し、デザインや安全性を損ねていた。しかしながら、本実施例の構成によれば、ドアの後部を固定するためのドア開け時用ストッパ11だけがスライドレール5の後部に沿って取り付けられているだけで、ドア閉め時用ストッパ12や突当部6a等は、ドア2の内側に隠れて外部からは視認することができず、外観(デザイン)、安全性、視界性が向上する。
この、ドア2の前部には運転室筐体1内若しくは外からドア2を開閉するためのハンドル13が設けられており、ドア閉め時用ロック7及びドア開け時用ロック9と連動してストライカ8,10との係合を開放してドア2の開閉が可能なように構成されている。このようなドア2を開閉するための機構がドア2の前部(図1の場合は、上下方向略中央部)に集中して配設されているため、ドア2の構造が簡単になり、ドア2の厚みを薄くすることや、従来プレス成形していたものをパイプフレーム等で製作することができる。そのため、ドア2の軽量化や製造コストの低減が可能になる。さらに、ドア2の中央部に窓14を設けて運転室筐体1内からの視界を広くすることができる。
図3はドア2が閉められた状態を示している。ドア2を閉めた時は、ドア2の前部に設けられたドア閉め時用ロック7とストライカ8が係合して前部が固定される。また、同時にスライド部材6の突当部6aに形成された嵌合部6fにドア閉め時用ストッパ12の突起部12aが嵌合して後部が固定される。この状態においては、ドア2の前部は上下リンク部材3,4に支持されているためガタ無く運転室筐体1に固定される。
図4はドア2が開けられた状態を示している。ドア2を開けた時は、ドア2の前部に設けられたドア開け時用ロック9とストライカ10が係合して前部が固定される。また、同時にスライド部材6の突当部6aに形成された嵌合部6eにドア開け時用ストッパ11の突起部11aが嵌合して後部が固定される。この時も、ドア2の前部は上下リンク部材3,4に支持されているためガタ無く運転室筐体1に固定される。
このように、ドア2の前部をリンク機構20で支持することにより、スライドレール5からスライド部材6が外れたとしてもドア2はリンク機構20で保持されるため運転室筐体1から外れて落下することがなく、安全性を高くすることができる。
スライドレール5とスライド部材6のガイドローラ6c、センタローラ6dとの間には、このガイドローラ6cやセンタローラ6dが回転するための隙間があり、またこのガイドローラ6cやセンタローラ6dを保持する揺動部6bも突当部6aに対して揺動するように構成されているため、ドア2の後部がガタつく原因となる。しかしながら、上述のように、ドア2が開かれた時も閉められた時も、このスライド部材6のドア2に固定されている突当部6aにストッパ11,12が嵌合して固定されるため、ドア2を固定するだけでなく、ガタ無く安定支持することも可能となる。また、ドア2の固定のためにストッパ11,12と嵌合する部分を別途設けずに、スライド部材6の突当部6aに嵌合部6e,6fを形成して構成することにより、運転室筐体1の側面がすっきりとしてデザインを損ねることがない。
以上のように構成されたドア2が開閉されるときの軌道について図7を用いて説明する。上述のように、ドア2の前部はリンク機構20により揺動され、後部はスライド機構30によりスライド移動されるため、ドア2の開閉時の軌道はこのリンク機構20とスライド機構30によって決定されることとなり、前部は図7の軌道C1に沿って移動し、後部は軌道C2に沿って移動する。このため、ドア2が閉まる直前の軌道は図7に示すように、前部は矢印Aの方向、すなわち、ヒンジ式ドアが閉まるときと同様に、ドア2の内側に向かうように構成される。従来の前後がスライド移動するドアの場合、閉まる直前はレールに沿って転がるローラの回転方向(前後方向)と異なる方向(ドア内側方向)に向かうため、ローラが回転せず滑ることになり、ドアの操作力が重くなって開閉フィーリングが悪化するが、本実施例の場合は、リンク機構20の揺動のためそのような操作量の増加は無く開閉フィーリングは良い。また、ドアの前部をスライド移動させる方式の場合、ガタがあるため開閉フィーリングが悪化するが、本実施例の場合は、ドア2の前部はリンク機構20により支持されているためガタがなく、開閉フィーリングは良い。さらに、ドア2の運転室筐体1との間をシールするためにドア2に取り付けられたシール部材(図示せず)も、矢印Aの方向に押しつけられるように構成されるため、従来のスライド式ドアのように横滑りすることがなく、耐久性、水密性を高くすることができる。
なお、図3に示すように、ドア閉め時用ストッパ12の嵌合部6fに対する差込み角度は上下リンク部材3,4の固定端3a,4a又はドア閉め時用ロック7及びストライカ8との係合点とスライド部材6の枢結部とを結ぶ直線に直交する方向Dと角度θを持ったこのスライド部材6の移動方向Eに対して平行に設定されている。このため、ドア2の後部は、スライドレール5の形状により、矢印Aの方向よりも前方に傾けた矢印Bの方向になるように構成される。そのため、ドア2の前部でドア閉め時用ロック7とストライカ8を係合させて固定することで、ガタ付きなくドア2を閉めた状態に固定することができる。また、スライド機構30により、ドア2の後部を運転室筐体1側にスライド移動させることができるため、ドア2が閉じられた状態で、ドア2の後部と運転室筐体1とは略同一面上に位置するように構成できるため、ドア2の後部が運転室筐体1の側面から突出するようなことが無い。
次に、この運転室53(運転室筐体1)の形状であるが、図8(A)に示すように、運転室筐体1のドア2が取り付けられた側面の一部1aが平面視において前後方向に延びる直線状に形成されている。そして、この直線状に形成された側部1aより前方の前部1bを平面視において曲率半径rで外側に凸の曲線状に形成されている。従来の運転室のドア側の側部は平面視においてドアを含んで外側に凸の曲線状に形成されているため、運転室の前後部で幅方向が狭くなり、特に、運転室に搭乗した作業者の足下が狭くなっていた。しかしながら、本実施例の構成とすることにより、同じ運転室幅であれば、一部を直線状にすることにより運転室53に搭乗した作業者の足下を広くすることができる。このとき、側部1aを構成するドア2の後部も直線状に形成されるため、図8(B)に示すように、ドア2を開いた状態で、このドア2の後部の一部が旋回半径Rから突出する場合もあるが、ドア2を開けた状態の運転室53の運転室幅L1は、従来の前後がスライド移動するドアの場合とほぼ同等であり、実用上は問題ない。
なお、ドア2が大型化して重量が重い場合は、リンク機構20を構成する上下リンク部材3,4の強度を補強するために、図9に示すように回転ローラ16を取り付けてドア2の重量を支持するように構成することも可能である。この場合、上下リンク部材3,4の下方に図示しない平板状の支持部材を設け、この支持部材上を回転ローラ16が転がってドア2が開閉されるように構成される。このとき、回転ローラ16は、リンク部材3,4の側部から側方に延びる軸受部16bとこの軸受部16bに対して回転可能に取り付けられたローラ部材16aとから構成し、このローラ部材16aの回転軸が、リンク部材3,4の固定端3a(4a)と移動端3b(3b)とを結ぶ線上に位置して延びるように構成される。この回転ローラ16は、ドア2の重量によっては、上リンク部材3若しくは下リンク部材4のいずれか一方に設けることもできる。
また、以上の実施例においては、スライド部材6の突当部6aに嵌合部6e,6fを設けて、ストッパ11,12の突起部11a,12aを嵌合させるように構成した場合について説明したが、ストッパ11,12に嵌合部を設け、突当部6aにこの嵌合部に嵌合する突起部を設けて構成することも可能である。
第1実施例においては、ドア2の前部をリンク機構20で指示し、後部をスライド機構30で指示した場合について説明したが、前後部ともリンク機構、若しくは、スライド機構で指示して構成することも可能であり、以下にそれぞれの構成について説明する。なお、以降の説明においては、第1実施例と同一の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
まず、第2実施例としてドア2の前後をリンク機構120で支持した場合について図11〜図13を用いて説明する。この第2実施例において、リンク機構120は、前後に並んで取り付けられた前リンク部材103および後リンク部材104で構成されており、一端(固定端103a,104a)が運転室筐体1の上部に揺動自在に枢結され、他端(移動端103b,104b)がドア2の上部の前後に揺動自在に枢結されている。
また、ドア2の後部にはドア2が開けられた状態で運転室筐体1の後部に取り付けられたストッパ11と嵌合して開けられた状態を保持し、ドア2が閉じられた状態で運転室筐体1の略中央部に取り付けられたストッパ12と嵌合して閉じられた状態を保持する突当部106が設けられている。この突当部106は、第1実施例におけるスライド部材6の突当部6aと同一の形状をしている。
このように第2実施例においても、ドア2が閉められた状態では(図12)、ドア2の前部に設けられたドア閉時用ロック7と運転室筐体1に設けられたストライカ8とが係合してドア2の前部が固定されるとともに、突当部106とストッパ12とが係合してドア2の後部が固定される。また、ドア2が開けられた状態では(図13)、ドア2の前部に設けられたドア開時用ロック9と運転室筐体2に設けられたストライカ10とが係合してドア2の前部が固定されるとともに、突当部106とストッパ11とが係合してドア2の後部が固定される。
以上のように、ドア2をリンク機構120のみで支持するように構成しても、ハンドル13、ドア閉時用ロック7、および、ドア開時用ロック9をドア2の前部に集中して配置することができるため、ドア2の構造が簡単になり、ドア2の厚みを薄くすることや、パイプフレーム等で製作することができ、さらに、ドア2の中央部に窓14を設けることができる。
なお、図11においては、ドア2の上部にリンク機構120を設けて構成した場合を示したが、ドア2の下部にもリンク機構120と同様の機構を設けて上下を支持するように構成することも可能である。また、ストッパ11,12と突当部106の組は、機体(例えば、油圧式ミニショベル50)の車格や要求強度により増やすことができる(例えば、図11に示すストッパ11′,12′と突当部106′)。
次に、第3実施例として、ドア2の前後をスライド機構30,230,240のみで支持した場合について図14〜図16を用いて説明する。この第3実施例において、ドア2の前部の上部は上スライド機構230で支持され、前部の下部は下スライド機構240で支持され、後部の上下方向略中央部は第1実施例と同様のスライド機構30で支持されている。
上スライド機構230は、運転室筐体1に形成された乗降口の上辺に沿ってこの運転室筐体1に取り付けられた上スライドレール203と、この上スライドレール203に沿ってスライド移動する上スライド部材303とから構成され、下スライド機構240は、乗降口の下辺に沿って運転室筐体1に取り付けられた下スライドレール204と、この下スライドレール204に沿ってスライド移動する下スライド部材304とから構成される。
この第3実施例においても、ドア2が閉められた状態では(図15)、ドア2の前部に設けられたドア閉時用ロック7と運転室筐体1に設けられたストライカ8とが係合してドア2の前部が固定されるとともに、突当部6aとストッパ12とが係合してドア2の後部が固定される。また、ドア2が開けられた状態では(図16)、ドア2の前部に設けられたドア開時用ロック9と運転室筐体2に設けられたストライカ10とが係合してドア2の前部が固定されるとともに、突当部6aとストッパ11とが係合してドア2の後部が固定される。
そのため、ドア2をスライド機構30,230,240のみで支持するように構成しても、ハンドル13、ドア閉時用ロック7、および、ドア開時用ロック9をドア2の前部に集中して配置することができるため、ドア2の構造が簡単になり、ドア2の厚みを薄くすることや、パイプフレーム等で製作することができ、さらに、ドア2の中央部に窓14を設けることができる。
本発明の第1実施例に係る建設機械の運転室を示す側面図である。 本発明に係る運転室を有する建設機械の一例を示す側面図である。 第1実施例においてドアを閉めた時の運転室の要部を示す平面図である。 第1実施例においてドアを開けた時の運転室の要部を示す平面図である。 第1実施例においてドア開け時用ストッパを含むスライド機構の要部を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は背面図である。 第1実施例においてドア閉め時用ストッパを含むスライド機構の要部を示す平面図である。 第1実施例においてドアを開閉するときの軌跡を示す平面図である。 本発明に係る運転室の形状を示す平面図であり、(A)はドアを閉じた時の形状を示す図であり、(B)はドアを開けた時の形状を示す図である。 第1実施例において回転ローラを設けたリンク部材を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。 従来の大型建設機械を示す平面図である。 本発明の第2実施例に係る建設機械の運転室を示す側面図である。 第2実施例においてドアを閉めた時の運転室の要部を示す平面図である。 第2実施例においてドアを開けた時の運転室の要部を示す平面図である。 本発明の第3実施例に係る建設機械の運転室を示す側面図である。 第3実施例においてドアを閉めた時の運転室の要部を示す平面図である。 第3実施例においてドアを開けた時の運転室の要部を示す平面図である。
符号の説明
1 運転室筐体
1a 運転室空間
2 ドア
3 上リンク部材
4 下リンク部材
5 スライドレール
6 スライド部材
7 ドア閉め時用ロック
8 ドア閉め時用ストライカ
9 ドア開け時用ロック
10 ドア開け時用ストライカ
13 ハンドル
15 乗降口
50 油圧式ミニショベル(建設機械)
51 車体
53 運転室
103 前リンク部材
104 後リンク部材

Claims (8)

  1. 建設機械の運転室であって、
    内部に運転室空間を有し、前記運転室空間に連通する乗降口が形成された運転室筐体と、
    前方に移動して前記乗降口を閉じ、後方に移動して前記乗降口を開くように前記乗降口に取り付けられるドアと、
    一端が前記運転室筐体に水平に揺動自在に枢結され、他端が前記ドアの前端部に水平に揺動自在に枢結されたリンク部材と、
    前記ドアの前記前端部に配設され、前記一端側枢結部を中心とした前記リンク部材の前方への揺動に応じて前記ドアが前方に移動して前記乗降口を閉じる閉止位置に位置したときに、前記運転室筐体に配設されたドア閉め時用ストライカに係合して前記ドアの前記前端部を閉止位置で保持するドア閉め時用ロックと、
    前記ドアの前記前端部に配設され、前記一端側枢結部を中心とした前記リンク部材の後方への揺動に応じて前記ドアが後方に移動して開かれたときに、前記運転室筐体に配設されたドア開け時用ストライカに係合して前記ドアが開けられた状態を保持するドア開け時用ロックと、
    前記ドアの前端部に配設され、前記ドア閉め時用ロックおよび前記ドア開け時用ロックと連動して、前記ドア閉め時用ストライカ若しくは前記ドア開け時用ストライカとの係合を解除するハンドルとから構成されたことを特徴とする建設機械の運転室。
  2. 前記運転室が車体上に旋回自在に配設されて前記建設機械が構成されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の運転室。
  3. 前記リンク部材が、前記ドアの前記前端部の上下に水平に揺動自在に枢結された上リンク部材及び下リンク部材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の運転室。
  4. 前記下リンク部材が、前記運転室筐体の床面よりも下側に配設されて前記運転室空間内に突出しないように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の建設機械の運転室。
  5. 前記ドアの後端部に、前記運転室筐体の外面に前後に延びて設けられたスライドレールに沿って前後にスライド移動する後部スライド部材を設け、前記ドアの後端部を前記後部スライド部材を介して前記運転室筐体に前後スライド移動可能に取り付けて構成したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械の運転室。
  6. 前記スライドレールが前記搭乗口の後方において、前記運転室筐体の外面の上下方向略中央部に前後に延びて配設されていることを特徴とする請求項5に記載の建設機械の運転室。
  7. 一端が前記運転室筐体に水平に揺動自在に枢結され、他端が前記ドアの後端部に水平に揺動自在に枢結された後リンク部材により、前記ドアの後端部が前記運転室筐体の前記乗降口の後部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の運転室。
  8. 閉じられた前記ドアを含む前記運転室筐体の側面の一部が平面視において前後方向に延びた平面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の運転室。
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