JP4020475B2 - 除電装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極性または負極性の電荷に帯電している帯電体の帯電量をゼロに近づけるための除電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶製造ライン等において、対象物体が帯電しているとほこり等が付着して製品が不良品となることがあり、また、コンベア等により物体を搬送している場合には、小さい対象物体が帯電することにより製品同士が吸引されて接触してしまい、生産ラインが停止してしまうことがある。このため、静電気の発生を抑制する必要がある個所には、限られたスペースに多数の除電装置が配置される。
【0003】
静電気は対象物体に蓄積されている正または負の電荷により生ずるものであり、静電気に起因する対象物体の帯電電位は大地を基準電位として、対象物体の表面電位を測定することにより決定されている。除電の原理は、このような対象物体に蓄積されている電荷を大地に流し込むか、または蓄積されている電荷とは反対の極性のイオンを吹き付けて帯電電位を中和することにより、対象物体、すなわち帯電体に蓄積されている電荷をゼロに近づけるものである。
【0004】
上記のような除電の原理を応用した除電装置として、従来電極針に高電圧発生部からの直流高電圧または交流高電圧を印加して電極針からプラス、またはマイナスのイオンを発生させて、このイオンを帯電体に吹き付けるようにしたものが知られている。このときの空気中を流れるプラス、またはマイナスのイオン流は、高電圧発生部と大地間の電流として考えることができる。すなわち、高電圧発生部から大地に向かって流れる電流はマイナスのイオン流に相当し、大地から高電圧発生部に向かって流れる電流はプラスのイオン流に相当している。
【0005】
このようなイオン流と電流との相互関係により、除電装置から発生しているプラス、マイナスのイオン量が同数であれば中和されて電流はゼロとなる。図18は、上記のような原理を用いた除電装置の従来例を示す回路図である。図において、1は直流または交流の電源部、2は接続線、3は電源制御回路、4は正極性の高電圧発生回路、5は負極性の高電圧発生回路、6は正極性の電極針、7は負極性の電極針、8はイオンを対象物体である帯電体に吹き付ける際に必要な場合に設けられるファンで電極針に近接した位置に設置されるが、プラス、またはマイナスのイオンの反発力のみでイオンが帯電体に付着する場合にはファンの設置を省略できる。9は接地線、10はプラス、またはマイナスのイオン流に相当する電流を検出する検出抵抗である。
【0006】
電源制御回路3において、3aは電流センサの検出値を表示する表示部、3bは電極針の劣化等により電流センサの検出値、すなわち、イオン量の検出値が所定値よりも少ないときに警報を発生する警報部、3cは検出抵抗10を流れる電流値を検出する電流センサ、3dはA/D変換器、3eは出力制御部である。このような構成の電源制御回路3により、例えば倍電圧発生回路を用いた正極性、負極性の高電圧発生回路4、5の所定の電圧制御と、ファン8の起動停止等の運転制御を行う。
【0007】
前述したように、帯電体に対する除電は、帯電している極性とは逆極性のイオンを吹き付けることにより行われているが、このときのイオンの流れは大地を基準電位として形成されているので、除電装置で形成されているプラス、またはマイナスのイオンのいずれかの極性のイオンの発生量が他方の極性のイオンの発生量よりも多いときには、その差の値は接地線9で検出される電流の大きさに比例する。このため、接地線9に流れる電流の大きさと方向を測定することにより、除電装置からはプラス、またはマイナスのいずれの極性のイオンがどれだけの量多く発生しているかが判定できる。
【0008】
図18の例においては、接地線に接続した検出抵抗10と電流センサ3cを用いて、除電装置から発生するイオンのいずれの極性の量が多いかを判断して、プラス、またはマイナスのイオンの発生量を常に等しくするような制御をしている。すなわち、プラス、またはマイナスのイオンの発生量が同等となるイオンバランスがとれている状態であれば検出抵抗10を流れる電流は検出されない。したがって、接地線を流れる電流の大きさを電源制御回路3の出力制御部3eにフィードバックすることにより正極性または負極性の高電圧発生回路の出力電圧を制御して、イオンバランスをとるようにしている。
【0009】
検出抵抗10に電流が流れていない場合には、高電圧発生回路4、5の電源を切る、または、ファンの電源を切る等の措置を取ることによって節電をしたり、埃の巻き上げを防止することもできる。
【0010】
図19は、出力制御部3eで形成される制御信号により制御される正極性および負極性の高電圧発生回路4、5から出力されるパルス状電圧波形の一例を示すタイミングチャートである。図19には、周期Tのうち時間taでプラスイオンを発生させ、周期Tのうち時間tbでマイナスイオンを発生させるような電圧波形が示されている。図においてHは正または負の高電圧発生回路がオンの期間を、また、Lは正または負の高電圧発生回路がオフの期間を示している。電圧波形の振幅値は、例えば6000Vに選定される。この実施例においては、電流センサにより検出された信号の正負の極性とその大きさに応じて出力制御部3eによる制御信号でパルス幅ta,tbを制御して、イオンバランスを得ている。
【0011】
図20は、図18の構成のような除電装置の前方に正極性に帯電している帯電体11が存在している場合のプラス、またはマイナスのイオンの状態を示す回路図である。帯電体11が正極性に帯電していると、プラスのイオンは帯電体11に対して反発し、マイナスのイオンは帯電体11に対して吸着しやすい。このために、マイナスのイオンが多く発生するようになり、接地線9には大地に向かって瞬時的には電流i1が流れる。
【0012】
この際には、出力制御部3eは除電装置と帯電体間にはマイナスのイオンが多く存在しているものと判断し、除電装置からはプラスのイオンを多く発生させてマイナスのイオンとの中和を図るように動作する。図21はこの場合の動作のタイミングチャートである。図21に示すように周期Tのうち時間tcでプラスイオンを発生させ、時間tdでマイナスイオンを発生させるように、すなわち正極性の高電圧発生回路4のオン期間を負極性の高電圧発生回路5のオン期間よりも長くなるように正極性および負極性それぞれの高電圧発生回路を制御して、イオンバランスが得られるように動作する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図20の例では、帯電体11が正極性に帯電しているのであるから、除電装置はマイナスのイオンを多く発生させてイオンを中和するように動作すべきところ、従来例による正極性および負極性の高電圧発生回路の制御では、上記のように逆にプラスイオンを多く発生させるように動作してしまい帯電体の除電ができない場合が生じるという問題があった。
【0014】
また、除電装置は、電源電圧を高電圧に昇圧するための昇圧トランスや制御装置等の多数の部品を有しており、電極針から発生するイオンを帯電体に吹き付けるためのファンを設置する場合にはファンを含めて、これらの構成部品を一体にしてケース等に配置しているので装置全体が大型となり、限られたスペースには設置できないという問題があった。
【0015】
本発明はこのような問題に鑑みて、帯電体の除電を確実に行うように構成した除電装置の提供を目的とするものである。
【0016】
また、所定量の正負のイオンを発生させるために昇圧トランスの容量を変えることなく限られたスペースに設置できるように、構成部品を分割して収納できるような構成とした除電装置の提供を目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的は請求項1に係る発明において、除電装置を、電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流のピーク値を保持するピーク保持回路と、前記ピーク保持回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設ける構成とすることにより達成される。
【0018】
また、上記目的は請求項2に係る発明において、除電装置を、電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号を形成する信号形成回路と、前記信号形成回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設ける構成とすることにより達成される。
【0019】
また、上記目的は請求項3に係る発明において、除電装置を、電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流のピーク値を保持するピーク保持回路と、前記検出手段で検出される極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号を形成する信号形成回路と、前記ピーク保持回路および信号形成回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設ける構成とすることにより達成される。
【0020】
また、請求項4に係る発明においては、前記請求項1、2または3に記載の発明において、電極手段から発生するイオンを帯電体に吹き付けるファンを設けたことを特徴としている。
【0021】
また、上記目的は請求項5に係る発明においては、前記請求項1、2または3に記載の発明において、除電装置を、前記電源制御回路を一方のユニットに、高電圧発生手段と電極手段とを他方のユニットに分離してそれぞれ別個のケースに収納し、両ユニットをケーブルで接続する構成とすることにより達成される。
【0022】
請求項1の構成では、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して、その電流のピーク値を一旦保持して除電装置を制御している。また、請求項2の構成では、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して,電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号により除電装置を制御している。更に、請求項3の構成では、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して、その電流のピーク値を一旦保持し、電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号により除電装置を制御している。このように請求項1、2、及び3の構成とすることにより、接地線に流れる電流の時間的な変化を考慮して除電装置を制御しているので、確実に帯電体の除電を行うことができる。
【0023】
請求項4の構成とすることにより、電極手段に近接した位置にファンを設けているので、電極手段から発生するイオンを帯電体に吹き付けて除電を効果的に行うことができる。
【0024】
また、請求項5の構成とすることにより、高電圧の構成部品と他の構成部品とを分離してそれぞれ別個のユニットに収納しているので、帯電体に対して設置のスペースを考慮してこれらのユニットを配置できる。各ユニットを接続するケーブルは低電圧の仕様のものが適用され、線径の細いもので足りる。また、ケーブルを作業現場で引き回しても作業員に感電等の危険を及ぼす恐れがない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図3は本発明の原理を説明する回路図であり、図4、図5は除電装置30により帯電体11の除電が終了するまでの接地線9に流れる電流の時間的な変化を示す特性図である。図3において、帯電体11が正極性に帯電しているとすると接地線9には図4に示すようなマイナスのイオン流に相当するi1方向の電流が流れて時間と共に減衰する。また、帯電体11が負極性に帯電しているとすると接地線9には図5に示すようなプラスのイオン流に相当するi2方向の電流が流れて時間と共に減衰する。
【0026】
図3において、接地線9に流れる電流のピーク値は帯電体11の帯電電圧の大きさに応じて大きくなる。図6は、このような接地線9に流れる電流のピーク値と帯電体11の帯電電圧の大きさとの関係を示す特性図であり、帯電体11が正極性に帯電している場合の例である。特性paは、帯電体11の帯電電圧が小さく電流のピーク値は小さな値のiaとなる。特性pbは、帯電体11の帯電電圧が特性paの場合よりも大きく電流のピーク値はibで中位の値となる。特性pcは、帯電体11の帯電電圧が大きく電流のピーク値は大きな値のicとなる。
【0027】
図7は、帯電体の大きさと、接地線9に流れる電流がピーク値から時間的に減衰する傾き、すなわち、ピーク値から減衰する方向の微分信号との関係を示す特性図である。特性Pd1は、帯電体の大きさが小さい場合であり、接地線9に流れる電流がピーク値idから時間的に減衰する傾きS1は大きくなり短時間で減衰する。特性Pd2は、帯電体の大きさが中位の場合であり、接地線9に流れる電流がピーク値idから時間的に減衰する傾きS2はS1よりも緩やかであり減衰時間は特性Pd1よりも長くなる。
【0028】
特性Pd3は、帯電体の大きさが大きい場合であり、接地線9に流れる電流がピーク値idから時間的に減衰する傾きS3はS2よりも更に緩やかであり、減衰時間は特性pd2よりも延長される。このように、帯電体の大きさが大きいほど帯電量も多くなるので、接地線に流れる電流がピーク値から時間的に減衰する傾きは緩やかとなり、減衰時間は長くなる特性を有している。
【0029】
本発明は、図6に示したような接地線に流れる極性の電流のピーク値と帯電体の帯電電圧との関係の特性、および、図7に示したような接地線に流れる極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きと帯電体の大きさとの関係の特性に着目してななされたものである。すなわち、図8の特性図に示すように、接地線に流れる電流を検出して、その正負の極性と、電流のピーク値ie、または接地線に流れる電流の正負の極性と,電流のピーク値ieから時間的に減衰する傾きSe、更には接地線に流れる電流の正負の極性と電流のピーク値ie及びピーク値ieから時間的に減衰する傾きSeを判定し、その判定結果により除電装置を制御してイオンバランスを得るものである。
【0030】
このように、本発明においては除電装置により除電を行う際に接地線に流れる電流の時間的な変化を考慮して除電装置を制御しているので、図20、図21の従来例で説明したように、検出抵抗に流れる瞬時的な電流検出により帯電体の帯電極性と同じ極性のイオンを除電装置から出力してしまい、有効に除電できないという問題は生じない。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態の除電装置の回路図である。図18の従来例と同じところまたは対応するところには同じ符号を付して詳細な説明は省略し、本発明の特徴である電源制御回路3の構成について説明する。接地線9に流れる電流は電流センサ3cにより検出されて増幅器3fにより増幅される。増幅器3fにより増幅された検出電流は、一方ではピークホールド回路3gに入力されてピーク値が一旦保持され、続いて第1のA/D変換器3dに入力されてピーク値の信号をデジタル値に変換し、このデジタル値の信号はマイクロコンピュータ3jに入力される。このように接地線9に流れる電流は検出されるとピークホールド回路3gに入力されてピーク値が保持される構成としているので、瞬間的な外乱信号やノイズ等は除去されて影響は受けない。
【0032】
増幅器3fにより増幅された検出電流は、他方では微分回路3hに入力されて微分され、単位時間毎の増加または減少の割合い、すなわち電流の時間的な傾きの信号を形成する。次にこの微分信号は第2のA/D変換器3iに入力されてデジタル値に変換され、デジタル値に変換された微分信号はマイクロコンピュータ3jに入力される。3kは正の高電圧発生回路4のスイッチング回路、3lは負の高電圧発生回路5のスイッチング回路である。
【0033】
次に本発明の除電装置の動作について説明する。帯電体が正極性に帯電しているものとすると、電源制御回路3の電流センサ3cは図8に示すようなマイナスのイオン流に相当する電流を検出する。そして、ピークホールド回路3gはピーク値ieを保持し、ピークホールド回路で一旦保持されたピーク値の信号は第1のA/D変換器3dを通してデジタル値に変換されマイクロコンピュータ3jに入力される。また、電流センサ3cで検出された信号は微分回路3hにより単位時間毎に微分され、第2のA/D変換器3iを通してデジタル値に変換されマイクロコンピュータ3jに入力される。
【0034】
このようにして、電流センサ3cで検出された電流の極性、そのピーク値、電流の時間的な傾きの信号に相当する微分信号がマイクロコンピュータ3jに入力される。微分信号の中には、電流がピーク値から減衰する方向の微分信号が含まれる。マイクロコンピュータ3jは、電流センサ3cで検出された電流の極性とピークホールド回路で保持された電流のピーク値、または、電流センサ3cで検出された電流の極性と電流がピーク値から減衰する方向の微分信号、更には、電流センサ3cで検出された電流の極性とピークホールド回路で保持された電流のピーク値及び電流がピーク値から減衰する方向の微分信号により、除電装置の制御信号を形成する。
【0035】
すなわち、マイクロコンピュータ3jは上記のような各入力信号に基づいて、除電装置からはいずれの極性のイオンをどれだけの量出力すればイオンバランスが得られるかの判定と演算を実行する。この判定及び演算結果に基づき、前記スイッチング回路3k、3lに対するオン、オフ制御を行い、正極性及び負極性の高電圧発生回路4、5の駆動、停止を制御する。
【0036】
図2は、マイクロコンピュータ3jによりスイッチング回路3k、3lをオン、オフ制御した場合の正極性及び負極性の高電圧発生回路4、5の動作の一例を示すタイミングチャートである。帯電体は正の極性に帯電しているものとすると、除電装置からはマイナスのイオンを多く発生させることによりイオンバランスが得られるので、時刻tから時刻tまでのTa時間は負の高電圧発生回路5を継続して駆動し、この間正極性の高電圧発生回路4は継続して停止としている。
【0037】
マイクロコンピュータ3jは,前記電流センサで検出された極性の電流のピーク値と、検出された極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号に相当する微分信号に基づき、帯電体の帯電電圧の大きさと帯電体の大きさとを判定する。そして、帯電体の帯電電圧を0とするために必要なイオン量が除電装置から出力されるように、上記の負極性の高電圧発生回路5を継続して駆動する時間Taを演算する。
【0038】
なお、以上の例では正極性の高電圧発生回路4、負極性の高電圧発生回路5には正極性および負極性の電極針6、7を取り付ける構成について説明したが、本発明の除電装置においてはイオン発生部の構成はこれに限らず、正極性および負極性の高電圧発生回路には、細線等の長尺状物や突起部を有する部材等の電極手段を取り付けてイオン発生部とすることもできる。
【0039】
図1において、電源制御回路3には表示部3aが設けられている。この表示部3aは、電極針6、7から発生しているプラス、またはマイナスのイオンについて、いずれの極性のイオンがどれだけの量多く発生しているかを検出している電流センサ3cの信号を表示するものであるが、この電流センサ3cの信号は、イオン発生部の上記特性の信号であると共に、帯電体のイオン付着状態の信号であるものと考えることができる。
【0040】
すなわち、帯電体に付着しているイオンが正負の極性でバランスしている状態であれば電流センサ3cの信号はゼロとなるが、いずれかの極性のイオンの付着量が多い場合には電流センサ3cの信号はゼロとはならない。表示部3aに表示されたデータを監視することにより帯電体の除電の状態を作業者は判断できるので、電流センサ3cの信号をゼロとなるように電源制御回路3を制御することにより、帯電体の除電の完了を確認することができる。
【0041】
また、電源制御回路3には警報部3bが設けられている。この警報部3bは、電極針6、7から発生しているプラス、またはマイナスのイオンについて、電極針の摩耗や埃の付着等によりイオンの発生量が所定の範囲よりも少ない場合には警報を発生するものである。警報部の構成としては、正極性および負極性の高電圧発生回路4、5の電圧対電流の特性をモニタリングして、基準値と比較して比較値が一定の範囲外であれば警報信号を発生する構成とすることができる。このような警報部を設けることにより、作業者は、除電装置のメンテナンスを適正に行うことができる。
【0042】
図9は、本発明の除電装置の各構成部品をユニット化してケースに収納する例の配置図である。図に示すように、ユニット12には直流または交流の電源部1、接続線2、電源制御回路3、接地線9、検出抵抗10を配置してケースに収納する。また、ユニット13には、正極性の高電圧発生回路4、負極性の高電圧発生回路5、正極性の電極針6、負極性の電極針7、ファン8を配置してケースに収納する。ファン8は設けない場合もある。ユニット12,13は、両端にコネクタを有するケーブル14により接続する。なお、電源部として商用周波数の電源を使用する場合等には、電源部1はユニット12とは分離して配置することができる。
【0043】
除電装置は、帯電体の存在している場所によってはスペースの関係等によりできるだけ小型であることが要請されるが、一定の高電圧を発生するためには昇圧トランスの容量の関係から小型化には限界がある。図9のように除電装置を二つのユニットに分割するとイオンの発生、吹き付けに必要な正極性の電極針6、負極性の電極針7、ファン8を配置したユニット13のみをユニット12から分離して帯電体の近傍に設置できるので、除電装置を小型化したと同様にスペースの問題は解消できる。
【0044】
しかも、高電圧発生部はユニット13にまとめて配置しているので、低圧側のユニット12から配線されるケーブル14は細い線径のものが使用でき、ケーブル内は低圧の電圧が印加されているので床面等に引き回しても作業者が感電等の事故を引き起こす恐れがなく、作業者の安全が図れる。
【0045】
図10は、別の実施の形態を説明する回路図である。この例では、接地線に検出抵抗を接続することに代えて、帯電体11に近接した位置にセンサヘッド16を配置する構成としている。帯電体11の帯電極性と帯電電圧の大きさをセンサヘッド16により検出し、検出信号はセンサコントローラ15に設けた表示部17を介してA/D変換器18に供給する。センサヘッド16の検出信号により帯電体の帯電の状態を表示部17に表示するので、作業者は帯電体の帯電の状態を帯電体に近い位置で確認できる。
【0046】
A/D変換器18によりデジタル信号に変換された検出信号は、電源制御回路3に入力され、帯電体に帯電されている極性とは逆極性のイオンを帯電体に大量に吹き付けるように、正極性または負極性の高電圧発生回路4、5の一方の出力電圧を一時的に大きくするように制御して、帯電体から急速に除電する。高電圧発生回路の電圧が低下して定常値に達すると、センサヘッドを用いない通常の運転モードに移行し、イオンバランスした状態を保持して、帯電体の帯電をゼロに近づける。
【0047】
図11は、図10に示されたようなセンサコントローラ15を用いてセンサヘッド16の校正を行う例の回路図である。図11に示すようにセンサコントローラ15には、直流24Vの電源15a、直流24Vを例えば直流1000Vに昇圧するDC/DCコンバータ15b、センサヘッド16の検出出力が入力され、当該の入力値を表示する表示部やセンサ感度を調整する調整部等が設けられている制御回路15c、10MΩ程度の感電防止用抵抗15d、校正用出力端子15eが設けられている。19は金属板、20は校正用出力端子15eに導線で接続されている校正用ヘッドである。
【0048】
次に、上記のようなセンサコントローラ15によるセンサヘッド16の校正機能について説明する。DC/DCコンバータ15bで1000Vに昇圧された直流電圧を校正用出力端子15eから出力し、校正用ヘッド20を金属板19に接触させると、感電防止用抵抗15dを通して金属板19は1000Vに帯電する。この状態でセンサヘッド16により金属板19の帯電電圧を検出し検出値を制御回路15cに入力する。入力された帯電電圧を制御回路15cに設けた表示部により確認する。表示部に表示された入力値をみながらセンサ感度を調整して、表示される入力値が1000Vになるようにセンサヘッド16の校正を行う。
【0049】
図12は、センサコントローラ15を用いて除電装置30の除電能力を評価し、メンテナンスの必要性の有無を判断する例の回路図である。図11と同様にして校正用出力端子15eから1000Vの直流電圧を出力し、校正用ヘッド20を金属板19に接触させて金属板19を1000Vに帯電させる。このときに除電装置30がない場合には、センサヘッド16による金属板19の帯電電圧の検出値は1000Vとなる。
【0050】
次に、除電装置30を配置して除電装置30からマイナスのイオンを金属板19に吹き付けて除電すると、センサヘッド16による金属板19の帯電電圧の検出値は、金属板19の帯電電圧1000Vから除電装置30による除電値を減算した値となり、この検出値が制御回路15cに設けた表示部に表示される。この表示された検出値から除電装置30の除電能力を評価し、所定の除電がなされていない場合にはメンテナンスが必要であるものと判断する。
【0051】
除電装置30の除電能力が低下する原因としては、長期間の放電による電極針の劣化、ほこり等の異物の付着、ファンを用いる場合にはエアフィルタの目詰りによる風量の低下等がある。上記のようにして除電装置30の除電能力が低下していると判断された場合には、電極針やエアフィルタのメンテナンスを行い除電装置30の除電能力を回復させる。
【0052】
図13は、除電装置30の収納ケースの一例を示す概略の斜視図である。図において、31は電源部等を収納する基体ケース、32は電極針等を収納する補助ケース、33は補助ケース32の前面に取り付けられ、電極針に直接作業者の手が触れないように保護しているメッシュ板である。補助ケース32は基体31に着脱自在に取り付けられ、メッシュ板33は補助ケース32に着脱自在に取り付けられている。
【0053】
図14は、電極針を固定する例を示す平面図である。補助ケース32には電極針6の固定板34が配置されており、固定板34には電極針の本数分の着脱部35が設けられ電極針6は着脱部35に固定されている。劣化した電極針6を交換する場合には、基体ケース31から補助ケース32を取外し、補助ケース32の前面に固定されているメッシュ板33を取外す。補助ケース32に配置されている固定板34の着脱部35から劣化した電極針6を1本ずつ引き抜き、新らしい電極針を当該の着脱部35に装着する。
【0054】
図14の構成では、劣化した電極針を作業者が1本ずつ着脱部35から引き抜き、新らしい電極針を当該の着脱部35に装着するので電極針の先端部に手が触れ、安全性が損なわれれる恐れがある。このために、図15の平面図に示すようにして電極針を固定する部分を改良している。図15において、36はプリント基板、36a、36bはプリント基板36の両端に形成されている引出片である。電極針6はプリント基板36に直接に固定されている。なお、電極針6はプリント基板36に代えて絶縁物や金属で複数の針を固定する構成とすることもできる。
【0055】
電極針6が劣化すると、引出片36a,36bに手をかけてプリント基板36を補助ケース32から引出し、すべての電極針6をプリント基板36ごと新しいものと交換する。このため、電極針6の交換時には直接に電極針6に手を触れないので作業の安全が図れる。電極針6には同じ高電圧が印加されて放電するのでほぼ同時期に劣化するものと考えられ、このようにすべての電極針6の交換を行っても電極針6を無駄にするものではない。また、プリント基板36は安価に入手できるので、電極針6と同時にプリント基板36も交換することにしてもコストの上でそれ程の負担増とはならない。
【0056】
以上の例は、直流の高電圧を用いた除電装置の例であるが、本発明は交流の高電圧を用いた除電装置にも適用できる。図16は、交流を用いた除電装置の原理を示す回路図である。図において、20は電源部、21は昇圧トランス、22は電極針、8はファンである。昇圧トランス21の一次側巻線は、商用周波数電源等の低圧の電源部20に接続され、二次巻線からは例えば3000〜10000ボルト程度の交流高電圧を出力して電極針22に印加し、電極針22からはプラス、またはマイナスのイオンが交互に発生する。
【0057】
電極針22は対象物体からある距離をおいて配置されているが、プラス、またはマイナスのイオンの反発力によりイオンが飛ばされて帯電体に付着する。この反発力が弱くてそのままでは電極針から発生したイオンが帯電体には付着しにくい場合には、図示のように電極針から発生したイオンを帯電体に吹き付けるためにファン8が設けられることがある。電極針22から発生するプラス、またはマイナスのイオンは、前記したファン8により帯電体に吹き付けられ、帯電電位を中和して除電する。
【0058】
図17は、本発明による除電装置に交流の高電圧を用いた例を説明する回路図である。図において、20は交流電源、21は昇圧トランス、22は電極針である。電源制御回路3には、A/D変換器23、直流バイアス電源回路24、検出回路25、制御回路26、電圧制御回路27が設けられている。28は検出抵抗である。昇圧トランス21の出力側からは、電源電圧を所定の電圧に昇圧した高電圧の交流が得られ、電圧制御回路27を介して所定の電圧が電極針22に印加される。電極針22の先端部からは、プラス、またはマイナスのイオンが交互に出力される。
【0059】
この例では、昇圧トランス21の二次側巻線の接地線に、直流バイアス電源回路24を介して検出抵抗28を接続しているので、検出抵抗28には電極針22から発生しているイオンに相当する正負の直流電流が流れる。図1の直流高電圧を用いた除電装置と同様にして、検出回路25により除電装置の電極針22から発生しているプラス、またはマイナスのイオン量の差が判断でき、この差をゼロにするように制御回路26の信号により電圧制御回路27を制御して、イオンバランスを得る。検出回路25では交流電源周波数をカットするローパスフィルタ等の手段により、正負のイオン量の差を検出することができる。制御回路26に、検出回路25で検出された電流のピークホールド回路や、微分回路を設けることにより図1の直流高電圧を用いた除電装置と同様に除電装置を制御できる。
【0060】
なお、交流型の除電装置においては、電源側からは正負のサイクルで電圧が供給されているので、電極針22では原理的にはプラス、またはマイナスのイオンが交互に同量発生することになるが、オフセットの影響等により常に正負のイオンが同量電極針22から発生しているわけではない。このため、昇圧トランス21と電極針22の間に電圧制御回路27を設けて電圧のレベル調整をすることにより、電極針22からの正負のイオン発生量を調整している。
【0061】
交流型の除電装置においても、プラス、またはマイナスのイオンを交互に出力する手段としては、電極針22に代えて、細線等の長尺状物や突起部を有する部材を用いる構成とすることもできる。
【0062】
更に、交流型の除電装置においても、図1に記載したような直流型の除電装置と同様に、対象物に付着したイオンの正負の極性と量を表示する表示装置と、電極針から出力されるイオン量が所定の範囲外となると警報を発生する警報装置を設ける構成とすることもできる。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して、その電流のピーク値を一旦保持して除電装置を制御している。また、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して,電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号により除電装置を制御している。更に、接地線に流れる正負の極性の電流を検出して、その電流のピーク値を一旦保持し、電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号により除電装置を制御している。このような構成とすることにより、接地線に流れる電流の時間的な変化を考慮して除電装置を制御しているので、確実に帯電体の除電を行うことができる。
【0064】
また、電極手段に近接した位置にファンを設けることにより、電極手段から発生するイオンを対象物体に吹き付けて除電を効果的に行うことができる。
【0065】
また、高電圧の構成部品と他の構成部品とを分離してそれ別個のユニットに収納しているので、対象物体に対して設置のスペースを考慮してこれらのユニットを配置できる。各ユニットを接続するケーブルは低電圧の仕様のものが適用され、線径の細いもので足りる。また、ケーブルを作業現場で引き回しても作業員に感電等の危険を及ぼす恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る除電装置の好適な実施の形態における構成を示す回路図である。
【図2】本発明に係る除電装置のタイミングチャートである。
【図3】本発明の基本原理を示す回路図である。
【図4】除電装置の一般的な特性図である。
【図5】除電装置の一般的な特性図である。
【図6】除電装置の一般的な特性図である。
【図7】除電装置の一般的な特性図である。
【図8】本発明の基本原理を示す特性図である。
【図9】本発明に係る除電装置の実施の形態における他の構成を示す配置図である。
【図10】除電装置にセンサヘッドを付設した例の構成を示す回路図である。
【図11】センサコントローラの機能の一例を示す回路図である。
【図12】センサコントローラの機能の他の例を示す回路図である。
【図13】除電装置の収納ケースの一例を示す斜視図である。
【図14】電極針取付けの一例を示す平面図である。
【図15】電極針取付けの他の例を示す平面図である。
【図16】交流を用いた除電装置の基本原理を示す回路図である。
【図17】交流を用いた除電装置に本発明を用いた例を示す回路図である。
【図18】除電装置の従来例を示す回路図である。
【図19】従来例の除電装置のタイミングチャートである。
【図20】従来例の除電装置の電源制御装置の一例を示す回路図である。
【図21】従来例の除電装置のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 電源部
2 接続線
3 電源制御回路
4 正極性の高電圧発生回路
5 負極性の高電圧発生回路
6 正極性の電極針
7 負極性の電極針
8 ファン
9 接地線
10 検出抵抗
11 帯電体
12 第1のユニット
13 第2のユニット
14 ケーブル
15 センサコントローラ
16 センサヘッド
17 表示装置
18 A/D変換器
19 金属板
20 校正用ヘッド
30 除電装置
36 プリント基板

Claims (5)

  1. 電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流のピーク値を保持するピーク保持回路と、前記ピーク保持回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設けてなる除電装置。
  2. 電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号を形成する信号形成回路と、前記信号形成回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設けてなる除電装置。
  3. 電源電圧を所定の電圧に昇圧し正および負の極性の高電圧を発生する高電圧発生手段と、前記高電圧発生手段から高電圧が供給されて先端部からプラスとマイナスのイオンを発生する電極手段と、前記高電圧発生手段の駆動、停止を制御する電源制御回路とを有する除電装置であって、前記電源制御回路には、電極手段から発生しているプラスとマイナスのイオン量の差に相当する正または負の極性の電流を除電装置と大地間に接続した接地線から検出する検出手段と、前記検出手段で検出される極性の電流のピーク値を保持するピーク保持回路と、前記検出手段で検出される極性の電流がピーク値から時間的に減衰する傾きの信号を形成する信号形成回路と、前記ピーク保持回路および信号形成回路からの信号により、正または負のいずれの極性の高電圧発生手段を駆動するかを判定し、当該極性の高電圧発生手段の駆動継続時間を演算する演算制御手段とを設けてなる除電装置。
  4. 前記電極手段から発生するイオンを帯電体に吹き付けるファンを設けたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の除電装置。
  5. 前記電源制御回路を一方のユニットに、高電圧発生手段と電極手段とを他方のユニットに分離してそれぞれ別個のケースに収納し、両ユニットをケーブルで接続する構成としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の除電装置。
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