JP4020437B2 - 電動機用の軸受洗浄装置 - Google Patents

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Description

技術分野
この発明は、軸受を電動機から取り外すことなく洗浄可能な電動機用の軸受洗浄装置に関し、軸受の洗浄およびグリース充填を定期的に実施しなければならない鉄道車両用の主電動機の軸受を洗浄するのに適した電動機用の軸受洗浄装置に関する。
背景技術
従来から、鉄道車両用の主電動機の軸受は、定期的に洗浄されている。この主電動機の軸受は、多くの場合、主電動機の外側にあるカバーを取り外すだけで、軸受の外側端面が外部に露出するような位置にあるので、主電動機から軸受を取り外さなくても、噴射ノズルから噴射される洗浄液を軸受に吹き付けて洗浄することができる。
但し、主電動機には各種電気部品が内蔵されているので、主電動機から軸受を取り外さずに洗浄する場合は、主電動機の内部へ洗浄液が浸入するのを防止することが重要である。通常、軸受の内側端面に隣接する位置には、軸受側から電動機の内部へ異物が侵入するのを阻止するためにシール部が形成されているので、このシール部を洗浄液が通過しなければ、主電動機の内部へ洗浄液が浸入するのを防止することができる。
洗浄液がシール部を通過しないようにするために、従来は、例えば、噴射ノズルを軸受部に対して傾斜させて低い噴射圧で洗浄液を噴射するという方法がとられていた。
しかし、このような方法では、洗浄に長時間を要し、かつ充分な洗浄がされないという問題があった。
こうした問題を解決するために、日本特開平7−185479号には、電動機の内部へ加圧空気を送り込むことにより、電動機内部からシール部の隙間を介して軸受側へ向かう気流を発生させ、この気流の力で洗浄液がシール部を通過しないようにする技術が開示されている。
しかし、主電動機の内部へ送り込まれた加圧空気は、すべてがシール部の隙間を介して軸受側へ向かう気流になる訳ではなく、一部は主電動機の内部へと向かう気流として分散してしまうため、この分散した分をも補うように、過剰に高い圧力で加圧空気を送り込まなければ、シール部の隙間を介して軸受側へ向かう気流が十分に発生せず、所期の効果を得ることができないという問題があった。
また、過剰に高い圧力で加圧空気を送り込むために、加圧能力が高い加圧機構を採用したとしても、加圧空気を送り込むために利用可能な通路はそれほど太いものではないため、この細い通路が障害となって電動機内部の圧力はたいして上昇せず、期待するほどの強い気流がシール部の隙間に発生しないという問題、あるいは、加圧機構の加圧能力が十分に活かされないという問題もあった。
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、軸受を電動機から取り外すことなく洗浄可能で、特に、電動機内部へ加圧空気を送り込まなくても、洗浄時に汚物やグリースを含む洗浄液が電動機内部に浸入するのを防止できる電動機用の軸受洗浄装置を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明は、外側端面を電動機の外部に露出させ得る位置、かつ内側端面を前記電動機内部への異物の侵入を阻止するために設けたシール部に隣接させた位置に配置され、その位置において前記電動機の回転軸を回転可能に支持する軸受を、前記電動機から取り外すことなく洗浄可能な電動機用の軸受洗浄装置であって、前記軸受に向かって洗浄液を噴射可能な噴射ノズルと、前記軸受側を減圧することにより、前記電動機内部から前記シール部の隙間を介して前記軸受側へ向かう気流を発生させる減圧機構とを備え、前記噴射ノズルから噴射される洗浄液は、前記軸受の回転中心となる軸線に対して傾いた角度で噴射されることにより、前記軸線に一致する角度で噴射される場合よりも前記シール部へ突入する勢いが弱められていることを特徴とするものである。
このように構成された軸受洗浄装置によれば、減圧機構が、軸受側を減圧することにより、電動機内部からシール部の隙間を介して軸受側へ向かう気流を発生させるので、電動機内部へ加圧空気を送り込まなくても、シール部の隙間に所期の方向へ向かう気流が発生する。減圧に伴って電動機内部で発生する気流は、すべての最終的にシール部の隙間を介して軸受側へ向かう気流として収束するので、加圧空気を送り込んだ場合のように、無駄な方向へ分散してしまう気流は発生しない。
また、減圧される軸受側は電動機の外部であり、細い通路を介して減圧する必要はまったくないので、減圧能力の高い減圧機構を採用すれば、相応に強い気流がシール部の隙間に発生するようになり、また、減圧機構の能力を十分に活かすことができることにもなる。
さらに、噴射ノズルから噴射される洗浄液は、シール部へ突入するような勢いを弱めるために、軸受の回転中心となる軸線に対して傾いた角度で噴射される。
次に、本発明の軸受洗浄装置は、前記減圧機構が、開口部の周縁を前記電動機側に、密着させることにより、密閉されたチャンバーを形成可能な中空体と、前記チャンバー内の空気を吸引する吸引ポンプとを備えてなり、前記噴射ノズルが、前記チャンバー内に配置されて、前記中空体の開口部を介して前記チャンバー側へ露出した状態にある前記軸受に向かって洗浄液を噴射可能に構成されているとよい。
このように構成された軸受洗浄装置によれば、チャンバー内の空気を吸引ポンプで吸引してチャンバー内を減圧でき、しかも、チャンバー内で洗浄が行われるので、チャンバーの外へ洗浄液が飛び散るのを防止することができる。
なお、中空体の開口部の周縁を電動機側に密着させるに当たっては、開口部の周縁に変形を伴って電動機側に密着するパッキンを設けるとよい。また、開口部の周縁は、電動機の外装に密接させてもよいし、軸受の外輪部分など、軸受自体の一部に洗浄対象としなくてもよい部分があれば、そのような部分に密接させてもよい。
次に、本発明の軸受洗浄装置が、上記チャンバーおよび減圧ポンプを備えている場合、洗浄後の廃液を前記チャンバーから流出させる排水管と、該排水管を介して流出する廃液が溜まる排水タンクとを備え、前記吸引ポンプが前記排水タンク内の空気を吸引可能に接続され、該排水タンク内に溜まる廃液が到達し得る最高水位よりも高い位置に、当該排水タンク内における前記排水管からの流入口、および当該排水タンク内における前記吸引ポンプ側への吸引口を設けてあるとよい。
このように構成された軸受洗浄装置によれば、吸引ポンプを作動させることにより、空気が排水管を介して排水タンクへと流れるので、チャンバー内が減圧されるのはもちろんのこと、廃液の排水管への流入が促されるようになり、チャンバー内からの廃液の回収効率が良好になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明にかかる好ましい軸受洗浄装置の全体構造を示す正面図である。第2図は、同軸受洗浄装置の洗浄機構を中心に示す断面図である。第3図は、電動機用の軸受洗浄装置の減圧機構を中心に示す断面図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明をより詳細に説明するために、添付の図面に従って本発明にかかる電動機用の軸受洗浄装置の一例を説明する。なお、添付の図面は、理解しやすくするために、細部の詳細な構造については省略して描いてある。
第1図は、この発明にかかる好ましい軸受洗浄装置の全体構造を示す正面図である。
この軸受洗浄装置は、ベースフレーム1と、ベースフレーム1に固定されたレール3に沿って前進/後退可能な可動フレーム5と、各可動フレーム5上に構成された洗浄機構7と、上面側に主電動機が載置される架台9と、軸受の洗浄時に洗浄機構7から流出する廃液が排水管11を介して流れ込む排水タンク13と、排水タンク13に接続された吸引ポンプ15とを備え、排水タンク13および吸引ポンプ15は、箱17に収容されている。
第2図は、上記洗浄機構7を中心に示す断面図である。
洗浄機構7は、上述の可動フレーム5に対して固定された中空体であるフード20を備え、フード20の内部には、回転部材22が軸受23によって回転可能に支持されている。回転部材22の先端には、2本の噴射ノズル24が取り付けられ、回転部材22の外周面には、外周面を1周する2条の環状溝26が形成されている。そして、回転部材22の内部には、1つの環状溝26から1つの噴射ノズル24へと延びる洗浄液流路28が形成されている。環状溝26には、フード20側に形成された洗浄液注入口30から洗浄液が供給され、この洗浄液が、洗浄液流路28を経て噴射ノズル24へと至り、噴射ノズル24から噴射される。
また、回転部材22は、ベルト32を介してモータ34に連結され、モータ34側から伝達される動力で回転駆動されるようになっている。回転部材22の中心に固定された中心軸36の一端には、軸受38が設けられ、この軸受38に連結された油圧シリンダ40を作動させることにより、洗浄機構7全体が可動フレーム5とともに移動する構造になっている。なお、軸受38は、支持板42、ダンパー44、および連結具46を介して、フード20にも連結されている。
第3図は、この軸受洗浄装置の減圧機構を中心に示す断面図である。
上記フード20の下方には、排水管11の一端が接続され、この排水管11の他端は、排水タンク13の許容最高水位(排水タンク内に溜まる廃液が到達し得る最高水位)よりも上方において排水タンク13に接続されている。また、同じく排水タンク13の許容最高水位よりも上方には、吸引ポンプ15も接続されている。
また、フード20の開口部の周縁には、外方へ突出するパッキン50が設けられている。このパッキン50は、洗浄機構7が可動フレーム5とともに電動機60側へ移動した際に、電動機60側に密着するものである。
なお、電動機60は、外側端面が電動機60の外部に露出する位置、かつ内側端面が電動機60の内部への異物の侵入を阻止するシール部62に隣接する位置に配置されて、その配置位置において電動機60の回転軸64を回転可能に支持する軸受66を備えている。この軸受66は、電動機60側に固定された外輪66a、外輪66aの内側に配置された内輪66b、外輪66aと内輪66bとの間に介在する複数の転動体66cによって構成され、隣接する転動体66cの間には隙間があり、この隙間や転動体66cとシール部62との間にあるグリースポケット68には、使用状態では必要量のグリースが充填されている。
次に、上記軸受洗浄装置の使用方法について説明する。
洗浄対象となる電動機60は、あらかじめ軸受66を覆うカバーが取り外された状態で、架台9の上面側に搭載される。この状態で、油圧シリンダ40を作動させて洗浄機構7を可動フレーム5とともに移動させると、フード20に設けられたパッキン50が、軸受66の外輪66aに密着し、これにより密閉されたチャンバーCが形成される。
この状態において、吸引ポンプ15を作動させると、チャンバーC内が減圧され、電動機60の内部からシール部62の隙間を介して軸受66側へ向かう気流(第3図中に実線矢印で示す流れ)が発生する。どの程度減圧するかは、洗浄液の噴射圧やシール部62の構造によっても変わるため、一概には特定できないが、この例においては、吸引ポンプ15において、−20cmHgの負圧を発生させるように設定した。
また、モータ34を作動させることにより、回転部材22が回転し、この状態で洗浄液注入口30に、図示しないポンプから加熱および加圧された洗浄液を供給すると、旋回する噴射ノズル24から軸受66に向かって洗浄液が噴射される。この例では、洗浄液として、90℃、50kg/cm2の洗浄用高温高圧水を用い、これを7〜8分間かけて約200リットル噴射して洗浄を行った。もちろん、これ以外の洗浄液、例えば、灯油、代替フロンなどを使用することもでき、温度、圧力、噴射量、噴射時間などの諸条件も、適宜変更することができる。なお、概略構造を図示している都合上、図には表れないが、噴射ノズル24から噴射される洗浄液は、シール部62へ突入するような勢いを弱めるために、軸受66の回転中心となる軸線に対して僅かに(約6度だけ)傾いた角度で噴射される。
このようにした洗浄を行うと、転動体66c間の隙間やグリースポケット68に溜まった汚れやグリースが洗浄液に洗い流される。この廃液は、排水管11を介して排水タンク13へと流れるが、排水管11には吸引ポンプ15による吸引に伴う気流も生じているため、廃液の排水管11への流出が促される。また、洗浄液の噴射に伴って軸受66に衝突した洗浄液が飛散するが、その飛沫はチャンバーCの外へ飛び出すことがなく、排水管11へ流れ込む気流に乗って、チャンバーC内に滞留することなく排水タンク13へと回収される。さらに、洗浄液は転動体66c間の隙間を通ってシール部62へ到達するが、シール部62からは気流が吹き出しているため、シール部62を経て電動機60の内部へ洗浄液が侵入することはない。
特に、減圧に伴って電動機60の内部で発生する気流は、すべて最終的にシール部62の隙間を介して軸受66側へ向かう気流として収束するので、加圧空気を送り込んだ場合のように、無駄な方向へ分散してしまう気流は発生せず、シール部62の隙間に比較的強い気流を発生させることができる。また、加圧空気を送り込む場合とは異なり、細い通路を介して減圧する必要はまったくないので、吸引ポンプ15の能力に応じた負圧が、軸受66の外側端面付近に現れることになり、これもシール部62の隙間に比較的強い気流を発生させるのに寄与し、また、吸引ポンプ15の能力を最大限に活かすことができることにもなる。
以上、本発明にかかる電動機用の軸受洗浄装置の一例を説明したが、本発明は上記の具体的形態に限定されない。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明にかかる電動機用の軸受洗浄装置は、電動機を解体することなく電動機の軸受を洗浄することができるので、解体が困難な比較的大型の電動機の軸受を洗浄するのに有用であり、特に、鉄道車両用の主電動機のように、定期的に軸受の洗浄が行われる場合には、解体の手間をかけることなく保守整備を行うことができるので、きわめて便利である。

Claims (3)

  1. 外側端面を電動機の外部に露出させ得る位置、かつ内側端面を前記電動機内部への異物の侵入を阻止するために設けたシール部に隣接させた位置に配置され、その位置において前記電動機の回転軸を回転可能に支持する軸受を、前記電動機から取り外すことなく洗浄可能な電動機用の軸受洗浄装置であって、
    前記軸受に向かって洗浄液を噴射可能な噴射ノズルと、
    前記軸受側を減圧することにより、前記電動機内部から前記シール部の隙間を介して前記軸受側へ向かう気流を発生させる減圧機構と
    を備え、
    前記噴射ノズルから噴射される洗浄液、前記軸受の回転中心となる軸線に対して傾いた角度で噴射されることにより、前記軸線に一致する角度で噴射される場合よりも前記シール部へ突入する勢いが弱められている
    ことを特徴とする電動機用の軸受洗浄装置。
  2. 前記減圧機構が、
    開口部の周縁を前記電動機側に密着させることにより、密閉されたチャンバーを形成可能な中空体と、
    該チャンバー内の空気を吸引する吸引ポンプとを備えてなり、
    前記噴射ノズルが、前記チャンバー内に配置されて、前記中空体の開口部を介して前記チャンバー側へ露出した状態にある前記軸受に向かって洗浄液を噴射可能に構成されている
    ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の電動機用の軸受洗浄装置。
  3. 洗浄後の廃液を前記チャンバーから流出させる排水管と、
    該排水管を介して流出する廃液が溜まる排水タンクとを備え、
    前記吸引ポンプが前記排水タンク内の空気を吸引可能に接続され、
    該排水タンク内に溜まる廃液が到達し得る最高水位よりも高い位置に、当該排水タンク内における前記排水管からの流入口、および当該排水タンク内における前記吸引ポンプ側への吸引口を設けてある
    ことを特徴とする請求の範囲第2項に記載の電動機用の軸受洗浄装置。
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