JP4018992B2 - セラミック回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック基板に銅または銅合金から成る金属回路板を活性金属ろう材を介して接合して成るセラミック回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パワーモジュール用基板やスイッチングモジュール用基板等の回路基板として、セラミック基板上に活性金属ろう材を介して銅または銅合金等から成る金属回路板を接合して成るセラミック回路基板が用いられている。
【0003】
このようなセラミック回路基板は、具体的には以下の方法によって製作される。まず、銀−銅合金にチタン,ジルコニウム,ハフニウムおよびこれらの水素化物の少なくとも1種を添加した活性金属粉末に有機溶剤、溶媒を添加混合して成る活性金属ろう材ペーストを準備する。
【0004】
次に、例えばセラミック基板が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ、可塑剤、溶剤等を添加混合して泥漿状と成すとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術により複数のセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を得た後、これらを所定寸法に切断し、次にグリーンシートを必要に応じて複数枚積層するとともに還元雰囲気中で約1600℃の温度で焼成し、グリーンシートを焼結一体化させてセラミック基板を形成する。
【0005】
次に、セラミック基板に活性金属ろう材ペーストを所定のパターンに印刷するとともに乾燥し、しかる後、活性金属ろう材ペースト上に銅または銅合金から成る金属回路板を載置する。
【0006】
最後に、セラミック基板と金属回路板との間に配した活性金属ろう材ペーストを非酸化性雰囲気中で約900℃の温度に加熱して溶融させ、この活性金属ろう材によりセラミック基板と金属回路板とを接合することによって、セラミック回路基板が製作される。
【0007】
このようにして製作されたセラミック回路基板は、これにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor−Field Effect Transistor)等の半導体素子を半田等の接着材を介して実装した後、外部入出力用の端子が一体成型された樹脂ケース内に装着され、半導体モジュールとなる。そして、この半導体モジュールは、ロボットなどの産業機器から電車の駆動部や電気自動車などの幅広い用途に使用され、厳しい環境下での高い信頼性が要求されている。
【0008】
しかしながら、この端子一体成型の樹脂ケースの製作には、成型用金型が必要であり製造コストが高いことから、半導体モジュールの製造コストが増加する難点があった。また、端子一体成型の樹脂ケースにセラミック回路基板を組み込んだ後、樹脂ケースの端子部とセラミック回路基板の金属回路板とをボンディングワイヤなどで電気的に接続する必要もあり、製造工程数が増加するという問題点があった。
【0009】
このため、端子を金属回路板に半田や超音波接合法等で直接接合するセラミック回路基板や、金属回路板の一部を端子として延出させた端子一体型のセラミック回路基板が採用されるようになってきている。
【0010】
しかしながら、半田により端子を金属回路板に接合する場合、その後の半導体素子などの電子部品を実装するときの加熱によって接合がはずれないように、その加熱温度よりも融点が高い90%鉛−錫合金等の高温半田(融点300℃程度)が必要であることから、この高温半田を加熱溶融させることによる熱履歴によって、金属回路板とセラミック基板との熱膨張差によりセラミック基板にクラックが発生する。また、回路パターンを外部環境から保護したり、電子部品をプリント配線板に表面実装する際に行われる半田付け工程で不必要な部分に半田が付着しないようにするための250℃程度の耐熱性しかないエポキシ樹脂系のソルダーレジストが使用できないという問題点を有していた。
【0011】
また、超音波接合によって端子を接合する場合、例えば金属回路板に接触させた端子の接合部の表面には10〜50MPaの圧力で超音波発振ホーンが押圧されるため、この高圧力が端子の接合部直下のセラミック基板に金属回路板とろう材とを介して加わり、また超音波振動により発生する約500℃以上の熱が瞬間的に端子の接合部直下のセラミック基板に加わることにより、セラミック基板に微小なクラックが生じることがあり、その場合、セラミック回路基板の機械的強度が低下し、信頼性が著しく劣化するという問題点を有していた。
【0012】
このような問題点を解決するために、構造がよりシンプルで実装の工程数が少なく信頼性の高い、金属回路板の一部を端子部として延出させた端子一体型のセラミック回路基板が採用されるようになってきている。この金属回路板は、圧延加工法や打ち抜き加工法等の従来周知の金属加工法を施すことによって、所望の回路配線パターン形状に製作される。または、セラミック基板と略同形状の金属板をろう付けした後にエッチングにより不要な金属部分を除去して回路配線パターンの形成を行なうことによって製作される。
【0013】
なお、この場合、図3に従来のセラミック回路基板の断面図で示すように、セラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端aと、金属回路板2と活性金属ろう材3との接合端bとは対向する位置にある。すなわち、セラミック回路基板を平面視したときに重なった位置となっている。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−164461号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3のセラミック回路基板においては、セラミック回路基板に超音波接合等による熱衝撃が繰り返し加えられた際に、セラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端aに、セラミック基板1と活性金属ろう材3との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力と、金属回路板2と活性金属ろう材3との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力とが重畳して加わることとなり、セラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端aにクラックが発生しやすくなり、その結果、接合強度や熱伝導性、電気絶縁性が低下し、信頼性が低下するという問題点を有していた。
【0016】
したがって、本発明は上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、端子一体型のセラミック回路基板において、セラミック基板と金属回路板とを活性金属ろう材を介して接合した後に熱衝撃が繰り返し加えられても、セラミック基板の活性金属ろう材との接合端に熱膨張差により発生する熱応力が集中することが無く、その結果、セラミック基板にクラックが発生しない、信頼性の高いセラミック回路基板を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板の上面に活性金属ろう材を介して銅または銅合金から成る金属回路板が接合されて成るセラミック回路基板であって、前記セラミック基板は、その上面で前記活性金属ろう材の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、前記金属回路板と前記活性金属ろう材との接合端と対向する位置から前記接合端よりも内側に存在する前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との接合端にわたる開口を有する溝状の前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との非接合領域が、前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との接合端に沿って設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板は、その上面で活性金属ろう材の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、金属回路板と活性金属ろう材との接合端と対向する位置からその接合端よりも内側に存在するセラミック基板と活性金属ろう材との接合端にわたる開口を有する溝状のセラミック基板と活性金属ろう材との非接合領域が、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端に沿って設けられていることから、セラミック回路基板を平面視したときに金属回路板と活性金属ろう材との接合端およびセラミック基板と活性金属ろう材との接合端が重なることはない。その結果、セラミック回路基板に繰り返し熱衝撃が加えられた際に、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端に、セラミック基板と活性金属ろう材との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力と、金属回路板と活性金属ろう材との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力とが重畳して加わることがなくなる。したがって、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端にクラックが発生して接合強度や熱伝導性、電気絶縁性が低下することのない信頼性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック回路基板について以下に詳細に説明する。図1は、本発明のセラミック回路基板の実施の形態の一例を示す断面図、図2は図1のセラミック回路基板の平面図である。これらの図において、1はセラミック基板、2は金属回路板、3は活性金属ろう材、4は金属回路板2の端子部、5は溝状の非接合領域、Aはセラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端、Bは金属回路板2と活性金属ろう材3との接合端である。なお、図2では溝状の非接合領域5を点線で示している。
【0020】
本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板1の上面に活性金属ろう材3を介して銅または銅合金から成る金属回路板2が接合されて成るセラミック回路基板であって、セラミック基板1は、その上面で活性金属ろう材3の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、金属回路板2と活性金属ろう材3との接合端Bと対向する位置から接合端Bよりも内側に存在するセラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端Aにわたる開口を有する溝状のセラミック基板1と活性金属ろう材3との非接合領域5が、セラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端Aに沿って設けられている。
【0021】
本発明におけるセラミック基板1は、その一辺の長さが20〜200mm程度、厚みが0.2〜1.0mm程度の四角形状であり、その上面に銅または銅合金から成る金属回路板2が活性金属ろう材3を介して接合される。このセラミック基板1は、金属回路板2を支持する支持部材であり、酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体(アルミナセラミックス),ムライト(3Al2O3・2SiO2)質焼結体,炭化珪素(SiC)質焼結体,窒化アルミニウム(AlN)質焼結体,窒化珪素(Si3N4)質焼結体等の電気絶縁材料であるセラミックスから成る。
【0022】
またセラミック基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ、可塑剤、溶剤を添加混合して泥漿状となし、その泥漿物を用いて従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシート(セラミック生シートで、以下、グリーンシートともいう)を得、しかる後、グリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、約1600℃の高温で焼成することによって製作される。
【0023】
セラミック基板1は、その厚みを0.2〜1.0mmとすることがよく、セラミック回路基板の小型化、薄型化の要求を満足するため、金属回路板2を接合したときのセラミック基板1の割れ抑制のため、および搭載される半導体素子(図示せず)が発生する100℃以上の熱の伝熱性を向上させるためといった点で好ましい。セラミック基板1の厚みが0.2mm未満では、セラミック基板1に金属回路板2を接合したときに発生する熱応力により、セラミック基板1に割れ等が発生しやすくなる傾向がある。他方、1.0mmを超えると、セラミック回路基板の薄型化への対応が困難となるとともに、搭載される半導体素子が発生する100℃以上の熱をセラミック基板1を介して良好に放熱することが困難となる傾向がある。
【0024】
また、金属回路板2は、銅または銅合金から成り、その一端部は外部電気回路(図示せず)と電気的に接続される端子部4とされており、セラミック基板1の上面に活性金属ろう材3を介して以下のようにして接合される。
【0025】
まず、銀−銅合金粉末等から成る銀ろう粉末やアルミニウム−シリコン合金粉末等から成るアルミニウムろう粉末に、チタン,ジルコニウム,ハフニウム等の活性金属やその水素化物の少なくとも1種から成る活性金属粉末を2〜5質量%添加した活性金属ろう材3に、適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して得た活性金属ろう材ペーストを、セラミック基板1の上面に従来周知のスクリーン印刷法で金属回路板2に対応した所定パターンに印刷する。なお、金属回路板2の端子部4は、セラミック基板1の上面に対してほぼ垂直に折り曲げて使用されるため、セラミック基板1の端子部4に対応する部分には活性金属ろう材ペーストを印刷しない。
【0026】
そして、金属回路板2を活性金属ろう材ペーストのパターン上に載置し、または活性金属ろう材ペーストが印刷されたセラミック基板1を金属回路板2上に活性金属ろう材ペーストが金属回路板2と接合するように載置し、これらを真空中、または中性もしくは還元雰囲気中で、所定温度(約900℃)で加熱処理し、活性金属ろう材ペーストを溶融させることにより、セラミック基板1の上面に金属回路板2が接合されセラミック回路基板となる。
【0027】
なお、セラミック基板1と金属回路板2との接合は、活性金属ろう材3がセラミック基板1上面の溝状の活性金属ろう材3との非接合領域5に流入しないように、活性金属ろう材ペーストが印刷されたセラミック基板1を金属回路板2上に載置して行なうことが好ましい。または、金属回路板2のセラミック基板1との接合領域に活性金属ろう材ペーストを印刷し、活性金属ろう材ペーストが印刷された金属回路板2上にセラミック基板1を載置して接合することが好ましい。
【0028】
そして、上記のようにセラミック基板1と金属回路板2との組立体を加熱して活性金属ろう材ペーストを溶融させると、溶融して膨張した活性金属ろう材ペーストは金属回路板2の表面を濡れて外側に広がるが、セラミック基板1の非接合領域5においては濡れ広がるのが有効に抑制される。すなわち、セラミック基板1のセラミック表面は元々活性金属ろう材3の濡れ性が悪い(溶融した活性金属ろう材3の接触角が大きい)うえに、溝状の非接合領域5の端では溶融した活性金属ろう材3に対する接触角がより大きくなっているため、溶融した活性金属ろう材3が非接合領域5に入り込むのを効果的に抑えることができる。その結果、活性金属ろう材3の端部に図1のような傾斜したメニスカスが形成される。
【0029】
また、金属回路板2は、銅または銅−亜鉛合金(亜鉛の含有量が30質量%以下)、銅−錫合金(錫の含有量が5質量%以下)、銅−白金合金(白金の含有量が5質量%以下)、銅−パラジウム合金(パラジウムの含有量が5質量%以下)、銅−ニッケル合金(ニッケルの含有量が5質量%以下)等の銅合金のインゴット(塊)に、圧延加工法や打ち抜き加工法等の従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば厚さ0.5mmの所望の回路配線パターン形状に製作される。このとき、回路配線パターンと一体となった端子部4も同時に形成される。
【0030】
なお、金属回路板2の厚みは、セラミック回路基板の小型化、薄型化の要求を満足するため、また20〜50Aといった大電流の信号を流す際の電気抵抗の仕様を満足するため、さらにはセラミック基板1と接合したときのセラミック基板1の割れ防止のためといった観点から、0.1〜1.0mmが好ましい。金属回路板2の厚みが0.1mm未満の場合、電気抵抗が大きくなるため20〜50Aといった大電流の信号が良好に流れにくくなる傾向があり、他方1.0mmを超えると、薄型化への対応が困難となるとともに、セラミック基板1と金属回路板2とを接合したときに発生する熱応力により、セラミック基板1に割れ等が発生しやすくなる傾向がある。
【0031】
なお、金属回路板2が無酸素銅から成るのがよく、その場合活性金属ろう材3が酸化されにくくなり濡れ性が良好となるため、金属回路板2をセラミック基板1に強固に接合することができる。
【0032】
また、端子部4は金属回路板2の一部であり、その室温でのビッカース硬度が100Hv以上となるように加工を施こすことが好ましい。これは、通常の端子として使用されるタフピッチ銅のビッカース硬度80Hvに対して、それ以上の硬度とすることにより、端子一体型のセラミック回路基板を樹脂ケースに実装する際に端子部4の変形や曲がりが少なくなり、搭載される半導体素子等の電子部品を安定して作動させることができるためである。
【0033】
端子部4のビッカース硬度を100Hv以上にするための加工方法としては、無電解ニッケルめっき加工や衝撃加工、半田皮膜形成加工等が好適に使用される。
【0034】
無電解ニッケルめっき加工は、例えば、燐を含む無電解ニッケルめっきを端子部4に被着し、その後250℃以上の温度で熱処理を行ない、ニッケル−燐を結晶化させてビッカース硬度を100Hv以上とする加工方法である。このとき、ニッケル皮膜中に含まれる燐は8質量%以上にするとよい。燐が8質量%未満では、ニッケル−燐化合物の結晶化が十分になされず、その結果、端子部4のビッカース硬度が100Hv以上とならない傾向がある。なお、燐以外に、ニッケルと化合物を生成してビッカース硬度が100Hv以上となるホウ素等を用いてもよい。
【0035】
また、無電解ニッケルめっきの厚みは1.5μm以上がよい。1.5μm以下の場合、端子部4のビッカース硬度を増加させる効果が小さく、100Hv以上のビッカース硬度が得られなくなる傾向がある。さらに、250℃以上の熱処理を行なうのは、その熱処理を行なわないと、ニッケル−燐化合物の結晶化が全く進まず、ビッカース硬度の上昇も起こらないことがあるためである。この熱処理は、めっき皮膜を形成した後に行なってもよいし、めっき皮膜を形成したセラミック回路基板に半田等により半導体素子等の電子部品を実装する際の熱処理を利用して行なってもよい。
【0036】
また、端子部4への衝撃加工としては、例えば、サンドブラスト,ウエットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法),金型による押圧等が挙げられる。ブラストによる衝撃加工の場合は、端子部4のみに施してもよいし、セラミック回路基板全体をブラスト処理して異物除去等の工程と兼ねることもできる。金型による押圧加工は、例えば、端子部4を金型に入れてハンマー等で端子部4のみを叩くようにした装置を用いればよい。
【0037】
さらに、端子部4への半田皮膜形成加工としては、例えば、半田めっきによる半田皮膜加工や半田ディッピングによる半田皮膜の形成加工が挙げられる。半田はSnを含むPb−Sn系やSn−Ag系などの半田が使用され、Snが端子部4の銅とCu−Sn合金を生成することにより、端子部4のビッカース硬度が上昇する。
【0038】
そして、本発明のセラミック回路基板においては、セラミック基板は、その上面で活性金属ろう材3の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、金属回路板2と活性金属ろう材3との接合端Bと対向する位置からその接合端よりも内側に存在するセラミック基板1と活性金属ろう材3との接合端Aにわたる開口を有する溝状のセラミック基板1と活性金属ろう材3との非接合領域5が、接合端Aに沿って設けられている。この構成により、セラミック回路基板1を平面視したときに接合端A,Bが重なることがなく、セラミック回路基板1に繰り返し熱衝撃が加えられた際に、接合端Aに、セラミック基板1と活性金属ろう材3との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力と、金属回路板2と活性金属ろう材3との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力とが重畳して加わることはなくなる。その結果、接合端Aにクラックが発生して接合強度や熱伝導性、電気絶縁性が低下することのない信頼性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0039】
この溝状の非接合領域5は、その幅がセラミック基板1の厚みの0.05〜2倍であることが好ましい。0.05倍未満の場合、非接合領域5に活性金属ろう材3が流入して、セラミック回路基板を平面視したときに接合端A,Bが重なる危険性がある。2倍を超えると、非接合領域5の部位でセラミック基板1の強度が急激に低下し、端子部4を折り曲げて使用する際に非接合領域5でセラミック基板1が破壊される危険性が大きくなる。
【0040】
また、溝状の非接合領域5の深さはセラミック基板1の厚みの10〜40%が好ましい。10%未満の場合、非接合領域5に活性金属ろう材3が容易に流入して、セラミック回路基板を平面視したときに接合端A,Bが重なる危険性がある。40%を超えると、非接合領域5の部位でセラミック基板1の強度が急激に低下し、端子部4を折り曲げて使用する際に非接合領域5で破壊される危険性が大きくなる。
【0041】
さらに、溝状の非接合領域5の断面形状は、半円形状、半楕円形状、三角形状、四角形状等の多角形状の種々の形状とし得る。応力を分散させるという観点からは、内周面に不連続点を有しない半円形や半楕円形状、角部が曲面状とされた三角形状や四角形状等の多角形状が好ましい。
【0042】
また、金属回路板2の端子部4は、活性金属ろう材3の接合端Bから端までの長さが5〜20mm程度であることが好ましい。5mm未満の場合、端子部4を上方向に折り曲げて使用する際に折り曲げることが困難となる傾向があり、20mmを超えると、金属回路板2が必要以上に大きくなるため高コストとなる。
【0043】
なお、本実施の形態では、溝状の非接合領域5をセラミック基板1上面でセラミック基板1と金属回路板2との間に設けた例を示したが、セラミック基板1の一端面から対向する端面にかけて形成してもよい。この場合、金属回路板2をセラミック基板1に接合した後、非接合領域5でセラミック基板1を分割し一端部を分離除去することにより、端子部4をセラミック基板1よりも外側に容易に延出させることができ、端子部4を折り曲げることが容易になる。また、この場合、溝状の非接合領域5の断面形状を三角形とするのがよく、非接合領域5でセラミック基板1を良好に分割することができる。
【0044】
この溝状の非接合領域5は、焼成後にセラミック基板1となるグリーンシートの所定の位置に、プレス加工により焼成後に溝状となるように加圧加工を施しておくことにより形成される。
【0045】
かくして、本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板1と金属回路板2との間に配されている活性金属ろう材ペーストを非酸化性雰囲気中で約900℃に加熱して溶融させ、セラミック基板1に金属回路板2を接合することによって製作され、さらにこれに半導体素子等の電子部品を半田等の接着材を介して実装した後、樹脂ケース内に装着することにより半導体モジュールとなる。
【0046】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明のセラミック回路基板は、セラミック基板は、その上面で活性金属ろう材の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、金属回路板と活性金属ろう材との接合端と対向する位置からその接合端よりも内側に存在するセラミック基板と活性金属ろう材との接合端にわたる開口を有する溝状のセラミック基板と活性金属ろう材との非接合領域が、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端に沿って設けられていることから、セラミック回路基板を平面視したときに金属回路板と活性金属ろう材との接合端およびセラミック基板と活性金属ろう材との接合端が重なることはない。その結果、セラミック回路基板に繰り返し熱衝撃が加えられた際に、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端に、セラミック基板と活性金属ろう材との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力と、金属回路板と活性金属ろう材との間に生じる両者の熱膨張差により発生する熱応力とが重畳して加わることがなくなる。したがって、セラミック基板と活性金属ろう材との接合端にクラックが発生して接合強度や熱伝導性、電気絶縁性が低下することのない信頼性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のセラミック回路基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】 図1のセラミック回路基板の平面図である。
【図3】 従来のセラミック回路基板の断面図である。
【符号の説明】
1:セラミック基板
2:金属回路板
3:活性金属ろう材
4:端子部
5:溝状の非接合領域
A:セラミック基板と活性金属ろう材との接合端
B:金属回路板と活性金属ろう材との接合端
Claims (1)
- セラミック基板の上面に活性金属ろう材を介して銅または銅合金から成る金属回路板が接合されて成るセラミック回路基板であって、前記セラミック基板は、その上面で前記活性金属ろう材の端部に形成された傾斜したメニスカスの直下の部位に、前記金属回路板と前記活性金属ろう材との接合端と対向する位置から前記接合端よりも内側に存在する前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との接合端にわたる開口を有する溝状の前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との非接合領域が、前記セラミック基板と前記活性金属ろう材との接合端に沿って設けられていることを特徴とするセラミック回路基板。
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