JP4017910B2 - 被研磨物保持材及びその製造方法 - Google Patents

被研磨物保持材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被研磨物保持材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記被研磨物を研磨機内で保持するために、従来から布基材フェノール樹脂積層板やガラス基材エポキシ樹脂積層板の円周に駆動用ギアーを加工し、板内に被研磨物を保持するための貫通穴を設けたものが多用されていた。
しかし、ガラス基材積層板を保持材として使用した場合、保持材自体の摩減によってガラス粉が発生し、これが被研磨物の表面に発生するスクラッチ傷の原因となり、研磨歩留まりの低下を招いていること判明した。
【0003】
そこで、ガラス繊維基材に代えて、有機繊維基材を用いた被研磨物保持材が多く提案されている。
しかし、これらの被研磨物保持材は一般的に表面が平滑であり、研磨パッドとの離型性が悪く、研磨パッドから剥がす際の作業性が悪いといった問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、研磨歩留まりの低下を招くことなく、被研磨物保持材と研磨パッドとの離型性を向上することができる被研磨物保持材およびその製造方法を提供することである。
【0005】
このような目的は、下記(1)〜()に記載の本発明により達成される。
(1)被研磨物保持材を製造する方法であって、基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られた中間製造物を得る工程と、前記中間製造物の少なくとも片面にガラス繊維基材またはガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグを、離型フィルムを介して設置して加圧成形する工程を有することを特徴とする被研磨物保持材の製造方法。
上記(1)に記載の被研磨物保持材の製造方法により得られる、被研磨物を保持するための貫通穴を有する被研磨物保持材であって、前記被研磨物保持材の少なくとも片面がエンボス加工されているものであることを特徴とする被研磨物保持材。
) 前記被研磨物保持材のエンボス加工面の表面粗さは、10μm以上100μm未満である上記()に記載の被研磨物保持材。
) 前記被研磨物保持材は、有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られるものである上記()または()に記載の被研磨物保持材
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の被研磨物保持材およびその製造方法について詳細に説明する。本発明の被研磨物保持材の製造方法は、基材に樹脂を含浸して得られた中間製造物を得る工程と、前記中間製造物の少なくとも片面にガラス繊維基材またはガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグを設置して加圧成形する工程を有することを特徴とするものである。また、本発明の被研磨物保持材は、前記の被研磨物保持材の製造方法によって得られるものであり、被研磨物を保持するための貫通穴を有する被研磨物保持材であって、前記被研磨物保持材の少なくとも片面がエンボス加工されているものであることを特徴とするものである
【0007】
まず、被研磨物保持材について説明する。本発明の被研磨物保持材は、前記及び後記の被研磨物保持材の製造方法によって得られるものであり、少なくとも片面がエンボス加工されているものである。これにより、被研磨物保持材と、研磨パッドとの離型性を向上することができる。ここで、エンボス加工とは、凹凸模様を施す加工のことをいう。前述したように、従来の被研磨物保持材は、研磨物保持材と研磨パッドとの離型性に劣り、作業性に劣っていた。これに対して、本発明で得られる被研磨物保持材は、エンボス加工されているため、研磨パッドとの離型性に優れ、作業性を著しく向上することができるものである。
【0008】
また、被研磨物保持材は、片面がエンボス加工されていれば良いが、両面エンボス加工されていることが好ましい。これにより、両面を研磨する場合にも離型性を向上し、作業性を向上することができる。更に、両面にエンボス加工が施されていれば、どちらの面が研磨パット側に来ても対応することができる。
【0009】
前記エンボス加工面の表面粗さは、特に限定されないが、10μm以上が好ましく、特に30μm以上が好ましい。表面粗さが前記下限値より小さいとパッドとの離型性が低下する場合がある。なお、前記エンボス加工面の表面粗さが、100μm以上になると研磨時の耐摩耗性が低下する場合がある。
前記エンボス加工面の表面粗さは、例えばJIS B 0601の方法で測定することができる。
【0010】
前記被研磨物保持材は、特に限定されないが、有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られるものであることが好ましい。これにより、研磨時に金属イオンが発生する事を防ぎ、ガラス等の無機物の脱落による被研磨物へのキズの発生を防止することができる。
前記有機繊維基材としては、例えばアラミド繊維基材、ポリエステル繊維基材、ポリベンゾオキサゾール繊維基材、ポリビニルアルコール繊維機材等が挙げられる。これらの中でもアラミド繊維基材が好ましい。これにより、被研磨物保持材の強度を特に向上することができる。
【0011】
前記熱硬化性樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でもビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、保持材の加工性をより向上することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型およびビスフェノ−ルF型のエポキシ樹脂が被研磨保持材の剛性の点で好ましい。
【0012】
前記熱硬化性樹脂の含浸量は、特に限定されないが、基材に対して30〜60重量%が好ましく、特に40〜50重量%が好ましい。含浸量が前記下限値未満であると密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えると厚さのばらつきが大きくなる場合がある。
【0013】
前記有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸する方法としては、例えばディップ法、スプレー法、ホットメルト法等の方法が挙げられる。これらの中でもディップ法が好ましい。これにより、有機繊維基材への含浸性を向上することができる。
【0014】
次に、本発明の被研磨物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法では、基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られる中間製造物を得る工程を有する。これにより、被研磨物保持材の加工を容易にすることができる。また、エンボス加工を容易にすることができる。
前記中間製造物とは、例えば基材に熱硬化性樹脂を含浸して熱硬化性樹脂をBステージの状態としているものであり、いわゆるプリプレグと言われるものである。
【0015】
本発明の製造方法では、前記中間製造物の少なくとも片面にガラス繊維基材またはガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグを設置して加圧成形する工程を有する。これにより、被研磨物保持材に容易にエンボス加工をすることができる。前記ガラス繊維基材としては、例えばガラス織布、ガラス不織布等が挙げられる。
【0017】
前記加圧成形する場合、その圧力は特に限定されないが、20〜50kgf/cm2が好ましく、特に30〜40kgf/cm2が好ましい。
また、成形時の温度も特に限定されないが、150〜200℃が好ましく、特に160〜170℃が好ましい。
【0018】
本発明の被研磨物保持材は、例えば半導体ウエハ、ハードディスク用アルミディスク、ガラスディスク、アルミディスク、ガラスディスクや液晶表示用ガラス基板等の表面平滑性を向上させるために研磨する際に、本発明の被研磨物保持材が好適に用いられる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
(実施例1)
▲1▼中間製造物の製造
基材としてアラミド繊維基材(ポリパラフェニレンテレフタルアミドペーパー東レデュポン製タイプN−734 1.5デニール、3m/mカット、単糸引張弾性率85Gpa、目付72g/m2)を用いた。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:旭チバ製 AER−8004N75 エポキシ当量500)と、硬化剤としてジシアンジアミド,硬化促進剤として2P4MZ(四国化成製)とをDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して、樹脂ワニスを得た。
上述のアラミド繊維基材に、樹脂ワニスを基材に対して45重量部含浸して、150℃で乾燥することにより、中間製造物を得た。
【0020】
▲2▼エンボス加工および被研磨物保持材の製造
ガラス繊維基材に0.18mm厚のガラス織布(日東紡製 WEA−7628)を使用し、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:旭チバ製 AER−8004N75 エポキシ当量500)と、硬化剤としてジシアンジアミド,硬化促進剤として2P4MZ(四国化成製)とをDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して得られたワニスを含浸してエンボス加工をするためプリプレグ(表面粗さ40μm)を得た。
上述の中間製造物の両面に離型フィルム(サンアルミ工業社製 セパニウム25μm厚)を貼り合わせ、エンボス加工するためのプリプレグを両面に設置し、160℃、30kg/cm2で120分間、加熱・加圧成形をして、被研磨物保持材を得た。なお、エンボス加工面の表面粗さは、40μmであった。
【0021】
(実施例2)
エンボス加工するためのプリプレグに使用するガラス繊維基材に0.10mm厚のガラス織布(日東紡製 WEA−116E)を使用し、実施例1と同様にしてエンボス加工をするためプリプレグ(表面粗さ20μm)を得た。以下、実施例1と同様にして被研磨物保持材を作製した。エンボス加工面の表面粗さは、20μmであった。
【0022】
(実施例3)
エンボス加工するためのプリプレグに使用するガラス繊維基材に0.05mm厚のガラス織布(日東紡製 WEA−05E)を使用し、実施例1と同様にしてエンボス加工をするためプリプレグ(表面粗さ8μm)を得た。以下、実施例1と同様にして被研磨物保持材を作製した。エンボス加工面の表面粗さは、8μmであった。
【0023】
(実施例4)
中間製造物の製造を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
基材としてアラミド繊維基材(ポリパラフェニレンテレフタルアミドペーパー東レデュポン製タイプN−734 1.5デニール、3m/mカット、単糸引張弾性率85Gpa、目付72g/m2)およびポリエステル繊維基材(帝人製単糸織布 T−11263、1.5デニール、単糸引張弾性率15Gpa、目付85g/m2)を用いた。
各々の基材に実施例1と同様に樹脂ワニスを含浸して得られたものを150℃で乾燥し、コアにポリエステル繊維基材層を、その両側にアラミド繊維基材層となるように重ねて、中間製造物を得た。上述の中間製造物の両面に離型フィルム(サンアルミ工業社製 セパニウム25μm厚)を貼り合わせ、エンボス加工するためのプリプレグを両面に設置し、160℃、30kg/cm2で120分間、加熱・加圧成形をして、被研磨物保持材を得た。なお、エンボス加工面の表面粗さは、40μmであった。
【0024】
参考例1)エンボス加工を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。金属鏡面板に機械加工によって表面粗さ40μmのエンボス加工したものを用いた。そして、実施例1と同様に中間製造物の両面に離型フィルム(サンアルミ工業社製 セパニウム25μm厚)を貼り合わせ、上記エンボス加工された金属板を両面に設置し、160℃、30kg/cm2で120分間、加熱・加圧成形をして、被研磨物保持材を得た。なお、エンボス加工面の表面粗さは、40μmであった。
【0025】
参考例2)紙基材フェノール樹脂積層板に機械加工によって表面粗さ40μmのエンボス加工したものを作成した。そして、実施例1と同様に中間製造物の両面に離型フィルム(サンアルミ工業社製 セパニウム25μm厚)を貼り合わせ、上記エンボス加工された紙基材フェノール樹脂積層板を両面に設置し、160℃、30kg/cm2で120分間、加熱・加圧成形をして、被研磨物保持材を得た。なお、エンボス加工面の表面粗さは、40μmであった。
【0026】
(比較例1)
実施例1の中間製造物の両面に離型フィルム(サンアルミ工業社製 セパニウム25μm厚)を貼り合わせたのみで、160℃、30kg/cm2で120分間、加熱・加圧成形をして、エンボス加工されていない被研磨物保持材を得た。
【0027】
実施例および比較例により得られた被研磨物保持材について、以下の評価を行った。評価項目を、方法とともに示す。得られた結果を表1に示す。
▲1▼離型性
離型性は、研磨機での実機試験で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:非常に良い
○:良い
△:悪い
×:非常に悪い
【0028】
▲2▼作業性
比較例1の作業工数を基準の10として、実施例の作業工数を評価した。
【0029】
▲3▼被研磨物保持材の強度
被研磨物保持材の強度は、JIS K 6911に準じて評価した。
【0030】
【表1】
Figure 0004017910
【0031】
表から明らかなように、実施例1〜は、離型性に優れ、作業工数が低減されていた。また、実施例1〜3は、被研磨物保持材の強度にも優れていた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、離型性に優れ、かつ作業工数の低減が可能な被研磨物保持材を得ることができる。
また、アラミド繊維を基材に用いた場合、特に強度に優れた被研磨物保持材を得ることができる。

Claims (4)

  1. 被研磨物保持材を製造する方法であって、基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られた中間製造物を得る工程と、前記中間製造物の少なくとも片面にガラス繊維基材またはガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグを、離型フィルムを介して設置して加圧成形する工程を有することを特徴とする被研磨物保持材の製造方法。
  2. 請求項1記載の被研磨物保持材の製造方法により得られる、被研磨物を保持するための貫通穴を有する被研磨物保持材であって、前記被研磨物保持材の少なくとも片面がエンボス加工されているものであることを特徴とする被研磨物保持材。
  3. 前記被研磨物保持材のエンボス加工面の表面粗さは、10μm以上100μm未満である請求項に記載の被研磨物保持材。
  4. 前記被研磨物保持材は、有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸して得られるものである請求項またはに記載の被研磨物保持材
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