JP4263940B2 - 被研磨物保持材用板状体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
シリコンウエハ,ハードディスクなどの製造工程には、これらの表面を研磨する工程がある。本発明は、前記研磨工程で、シリコンウエハ,ハードディスクなどの被研磨物を保持するための保持材に適用する成形板状体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記被研磨物保持材は、駆動用のギアを周囲に形成した円板に、被研磨物保持用の貫通穴を1個ないし複数個あけた構造である。前記貫通穴に被研磨物を嵌め込んで研磨装置に装着し、保持材を平面で駆動させることにより被研磨物の研磨を行なう。
【0003】
従来、このような被研磨物保持材は、熱硬化性樹脂積層板を加工した板状体で構成されている。前記熱硬化性樹脂積層板は、ガラス繊維織布基材エポキシ樹脂積層板、アラミド繊維不織布基材エポキシ樹脂積層板、綿布基材フェノール樹脂積層板などである。被研磨物保持材を構成するための積層板は、一般に、熱硬化性樹脂をガラス繊維織布やアラミド繊維不織布あるいは綿布等の基材に含浸乾燥してプリプレグとし、このプリプレグ1枚若しくは重ね合せた複数枚を離型フィルムで挟み、平らな型板の間で加熱加圧成形して製造する(例えば、特許文献1)。
これら積層板は、前記のように被研磨物保持材へ加工され、シリコンウエハ,ハードディスクなどの研磨に使用される。
【0004】
【特許文献1】
特許第2974007号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
研磨作業は、上記被研磨物保持材を研磨装置に装着し、被研磨物保持材の貫通穴に被研磨物を保持し、シリカ(SiO2),アルミナ(Al2O3),セリア(CeO2)などの微粒子を分散した水系研磨液を供給して行なわれる。
被研磨物保持材を新しいものと交換する場合など、被研磨物保持材を研磨装置に脱着する操作は、手作業若しくは自動機で行なわれるが、最近は、自動機で行なわれることが多くなってきた。また、研磨を終了した被研磨物の取出しと新たに研磨する被研磨物の供給も自動機で行なわれることが多くなってきた。
【0006】
上述のように、研磨作業には水系研磨液を使用するために、被研磨物保持材は研磨装置の上盤に密着しやすい状況にある。被研磨物保持材の脱着や被研磨物の取出しに際し、被研磨物保持材が上盤に密着して上盤と共に持ち上げられてしまい、さらには被研磨物も一緒に持ち上げられることがある。このような事態は、被研磨物保持材の着脱や被研磨物の取出し・供給を手作業で行なう場合には大きな問題とはならないが、自動機で行なわせる場合にはライントラブルの原因となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、研磨装置上盤と密着しにくい被研磨物保持材を構成するのに適した板状体を提供し、研磨作業のライントラブルによる被研磨物の不良低減に寄与することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る方法は、プレス熱盤間で加熱加圧成形する被研磨物保持材用板状体の製造法であって、以下のように被研磨物保持材用板状体を製造する。すなわち、熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材1枚若しくは重ね合せた複数枚を熱可塑性樹脂製離型フィルムに挟み、型板の間で加熱加圧成形するに当たり、前記熱可塑性樹脂製離型フィルムの厚さを0.04mm〜0.1mmとし、当該離型フィルムと型板の間に織布を配置して、当該離型フィルムを通して板状体の表面に織布の織目を転写することを特徴とする。
【0009】
上記のように加熱加圧成形することにより、成形中に軟化した熱可塑性樹脂製離型フィルムを通して板状体の表面に織布の織目を転写する。前記板状体の表面には、前記織目に対応した凹凸が付与される。
【0010】
上記板状体を所定形状に加工して被研磨物保持材とするわけであるが、表面層に上記の凹凸をもつ被研磨物保持材が、研磨装置の上盤に密着しにくい理由は、以下のように考えられる。
被研磨物保持材の表面に凹凸がある場合、表面が全くフラットで平滑な場合と比較して、被研磨物保持材が研磨パッドと接触して密着する面積が小さくなる。研磨パッドと被研磨物保持材との間には、極小の空隙が存在していると考えられる。また、密着する強度が凹凸の場所によって変化し、不均一になる。従って、密着力を比較した場合、凹凸をもつ被研磨物保持材は全体としての密着力が低くなり、また、密着力の低い箇所から剥がれやすいので、研磨装置上盤に密着しにくくなっているのである。
被研磨物保持材表面に艶消し模様を付与しただけでは、研磨パッドと被研磨物保持材の間に空隙が生じ難く、密着力の不均一化の作用がないので、密着を回避するには不十分である。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述のように、本発明に係る製造は、熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を加熱加圧成形して被研磨物保持材用板状体を製造するに当たり、熱可塑性樹脂製離型フィルムと型板の間に織布を配置して、当該離型フィルムを通して板状体の表面に織布の織目を転写することを特徴とする。
シート状繊維基材は、ガラス繊維やアラミド繊維の織布又は不織布あるいは綿布など、被研磨物保持材を構成可能なシート状繊維基材であれば特に限定するものではない。しかし、有機繊維シート状繊維基材を選択した被研磨物保持材に対しては、特に研磨装置上盤への密着防止の効果が顕著になる。なぜなら、被研磨物保持材を構成する樹脂が同じであるならシート状繊維基材の種類に拘わらず研磨装置上盤と被研磨物保持材との密着力は同程度であるが、有機繊維シート状基材を使用した被研磨物保持材は比較的軽量であるため、研磨装置上盤に密着すると一緒に持ち上げられやすいからである。
【0012】
シート状繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル,ポリイミドなどであり特に限定するものではない。しかし、フェノール樹脂やポリイミドなど、比較的耐熱性の高い熱硬化性樹脂(例えば、ベンゼン核など接着に直接関与しない部分を分子骨格に高密度で有している樹脂)は、樹脂自体は硬いものの、接着性が比較的低いため研磨時に基材と樹脂の界面剥離が発生しやすかったり、樹脂自体の破壊・摩耗が起こりやすい。このようなことから、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0013】
成形時に熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材を覆う熱可塑性樹脂製離型フィルムは、成形時の熱履歴に耐え、成形後離型可能な材料からなるものであれば特に限定しない。TPXフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムなどから、必要な耐熱性の度合いに応じて選定すればよい。
但し、離型フィルム厚さは、0.04mm〜0.1mmとし、さらに好ましくは、0.05mm〜0.06mmとする。離型フィルム厚さが薄くなると、加熱加圧成形中に離型フィルムがこれに当接している織布の凹凸に引っ張られ破損する心配があり、離型フィルム厚さが厚くなると、織布の凹凸が離型フィルムに吸収されてしまい、板状体に凹凸が付与されにくくなるからである。
【0014】
上記離型フィルムと型板の間に配置する織布は、ガラス繊維織布、カーボン繊維織布、ポリエステル繊維織布などであるが特に限定するものではない。積層板の材料として一般的に使用されているという点からいうと、ガラス繊維織布は好ましい材料である。
【0015】
上記板状体の加熱加圧成形は、プレス熱盤間で実施することができる。被研磨物の種類や厚さなど研磨条件により被研磨物の厚さは変わるが、これは、シート状繊維基材の厚さや重ね合せ枚数を変えることにより調整する。また、板状体表面に付与する凹凸の度合いは、離型フィルムの厚みによって制御する。すなわち、付与する凹凸を大きくしたいときは薄い離型フィルムを選定し、小さくしたいときは厚い離型フィルムを選定する。さらに、凹凸のピッチは、織布の織り密度によって制御する。すなわち、ピッチを狭くしたいときは織り密度の高い織布を選定し、広くしたいときは織り密度の低い織布を選定する。
【0016】
【実施例】
シート状繊維基材として、以下のものを準備した。
(アラミド繊維不織布基材)
パラ系アラミド繊維(ポリp−フェニレン3,4−ジフェニールエーテルテレフタラミド繊維)チョップ(繊維径:1.5デニール,繊維長:3mm,帝人製「テクノーラ」)を水中に分散して抄造し、これに水溶性エポキシ樹脂バインダ(ガラス転移温度110℃)をスプレーして加熱乾燥により単位質量60g/m2の不織布とした。パラ系アラミド繊維/樹脂バインダの配合質量比は、90/10である。
【0017】
プリプレグとして、以下のものを準備した。
先ず、硬化剤としてジシアンジアミドを、また、硬化促進剤として2−エチル−4メチルイミダゾールを配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂ワニスを準備する。
上記アラミド繊維不織布基材に、上記ワニスを含浸し加熱乾燥してプリプレグとした。プリプレグは、その1枚を加熱加圧成形したときの厚さが0.1mmになるように樹脂付着量を調整した。
【0018】
熱可塑性樹脂製離型フィルムとして、ポリプロピレン製で厚さの異なる以下のものを準備した。
離型フィルムA(厚さ:0.03mm)
離型フィルムB(厚さ:0.04mm)
離型フィルムC(厚さ:0.05mm)
離型フィルムD(厚さ:0.06mm)
離型フィルムE(厚さ:0.08mm)
離型フィルムF(厚さ:0.10mm)
離型フィルムG(厚さ:0.15mm)
離型フィルムと型板の間に配置する織布として、ガラス繊維織布(織り密度:44×33本/インチ,単位質量(210g/m2,厚さ:0.18mm,旭シュエーベル製「7628」)を用意した。
【0019】
実施例1
プリプレグ6枚を重ね合せた両側に離型フィルムD(0.06mm厚)を配置し、これを型板に挟む。離型フィルムと型板の間には織布を介在させる。この構成物をプレス熱盤間に投入し、熱盤との間にはクラフト紙層からなる厚さ10mmのクッション材を配置して加熱加圧成形し、厚さ0.5mmの積層板を得た。
この積層板を被研磨物保持材に加工した。この被研磨物保持材は、周囲にギアを形成した直径10インチの円板であり、被研磨物を嵌め込むための直径3.5インチの貫通穴を4個設けたものである。
【0020】
実施例2
離型フィルムDの代わりに離型フィルムB(0.04mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0021】
実施例3
離型フィルムDの代わりに離型フィルムF(0.10mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0022】
実施例4
離型フィルムDの代わりに離型フィルムC(0.05mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0023】
実施例5
離型フィルムDの代わりに離型フィルムE(0.08mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0024】
比較例1
離型フィルムDの代わりに離型フィルムA(0.03mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0025】
比較例2
離型フィルムDの代わりに離型フィルムG(0.11mm厚)を使用し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0026】
従来例1
実施例1において、離型フィルムと型板の間には織布を介在させずに加熱加圧成形を実施し、そのほかは実施例1と同様とした。
【0027】
以上の各実施例、比較例、ならびに従来例における被研磨物保持材を使用して研磨作業を行なった。被研磨物は3.5インチアルミニウム製ハードディスクである。被研磨物保持材の研磨装置上盤への密着頻度評価として、被研磨物保持材が研磨装置上盤に密着して一緒に持ち上げられる回数(トラブル回数)、被研磨物保持材の使用寿命を評価した結果を表1に示す。また、成形した積層板から離型フィルム剥がすときの剥離性と積層板表面に付与された凹凸を測定した結果も併せて示す。
トラブル回数は、1000バッチの研磨作業(1バッチは、研磨装置に5個の被研磨物保持材を装着し20個のハードディスクを研磨する)において、被研磨物保持材の持ち上げられ回数を調査する。
被研磨物保持材の使用寿命は、ギア部の磨耗レベルで判断し、繰り返し使用可能なバッチ数を調査し、従来例1の使用寿命を100とした指数(指数が大きいほど、使用寿命が長い)で示す。
剥離性は、離型フィルムの積層板からの剥がしやすさを評価する。評価基準は○(良好)、△(やや悪い)、×(フィルム破れ発生)
凹凸高さは、積層板の断面を観察し、凹凸の底部から頂部までの高さとする。3ヶ所で測定した値の平均値とする。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明に係る方法で製造した板状体を被研磨物保持材に適用することにより、被研磨物保持材が研磨装置上盤に密着して一緒に持ち上げられる回数が極めて少なくなり、ライントラブルの発生を減らすことに寄与する。
【0030】
また、本発明に係る方法で製造した板状体を被研磨物保持材に適用すると、被研磨物保持材の摩耗が抑えられ、使用寿命が延びるという付随効果がある。
前記使用寿命が伸びる理由は次のように考えられる。表面に凹凸を付与した被研磨物保持材は、凹凸なしの被研磨物保持材と比べて研磨パッドとの密着力が小さい故に両者間の摩擦力も小さく、研磨作業中に、被研磨物保持材の歯先にかかる負荷が低減する。これによって使用寿命が延びるのである。
【0031】
これらによって、被研磨物の生産歩留まり向上と大幅なコスト低減を図ることができる。
Claims (2)
- プレス熱盤間で加熱加圧成形する被研磨物保持材用板状体の製造法であって、
熱硬化性樹脂含浸シート状繊維基材1枚若しくは重ね合せた複数枚を熱可塑性樹脂製離型フィルムに挟み、型板の間で加熱加圧成形するに当たり、
前記熱可塑性樹脂製離型フィルムの厚さを0.04mm〜0.1mmとし、当該離型フィルムと型板の間に織布を配置して、当該離型フィルムを通して板状体の表面に織布の織目を転写することを特徴とする被研磨物保持材用板状体の製造法。 - 熱可塑性樹脂製離型フィルムの厚さを0.05mm〜0.06mmとすることを特徴とする請求項1記載の被研磨物保持材用板状体の製造法。
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