JP4017340B2 - 光起電力装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光起電力装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光起電力装置が、例えば、特開平8−5752号に開示されている。この公報の図3に開示されるように、この光起電力装置は、腕時計の電源に利用されるものであり、光起電力モジュール(4)が形成された円形基板(6)を、時計ケース(9)に、リング状の中枠(8)、スペーサ(5)等を利用して、固定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
光起電力装置を腕時計に利用するため、時計ケース内に安定して固定できるよう、上記の従来の光起電力装置とは異なる以下の構造を検討した。
【0004】
図8に示すように、金属基板52上の絶縁膜53上に光起電力モジュール54(詳細なパターンは省略する)を形成した光起電力装置51において、前記絶縁膜53が形成された状態で前記金属基板52が延長した固定片52aを備えている(図8(a)参照)。また、光起電力モジュール54の形成に際して、アモルファス半導体層56等の機能膜が、固定片52a上にも形成されている。
【0005】
次に、図9に示すように、光起電力モジュール54が形成された後、光起電力モジュール54が形成された金属基板52の面に対して固定片52aが折曲される。そして、この状態で、腕時計の針を駆動するムーブメント60の係止穴62に、固定片52aが挿入、係止され、固定される。
【0006】
しかしながら、この構造においては、以下の剥離問題が発生する。図9(b)に示されるように、固定片が折曲された部分において、各層が密着することができず、絶縁膜、絶縁膜/半導体層、半導体層の剥離層が発生する。このような剥離層は、ムーブメント内のギア、軸等の駆動部分に入り込むと、動作不良を引き起こす可能性がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために成されたものであり、取り付けを容易にするため、金属基板を延長、折曲した固定片を有する光起電力装置において、絶縁膜等が折曲された場所で、剥離することがない構造、製造方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の光起電力装置の製造方法は、金属基板の主面に絶縁膜、裏面電極層、半導体層および表面電極層が形成された光起電力装置の製造方法であり、大型金属基板を被覆する前記絶縁膜の上面に、前記各層を積層させた積層体が形成される積層体領域と、前記積層体領域から周囲に延長されて固定片と成る固定領域とから成る全体領域を形成する工程と、前記積層体領域と前記固定領域とが連続する箇所にて前記絶縁膜を除去する工程と、前記全体領域を前記大型金属基板から切り離す工程と、前記積層体領域と前記固定片とが連続する箇所で、平坦な前記積層体領域に対して前記固定片を略直角に曲折させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明である光起電力装置の構造及び製造方法の一実施例を、説明する。
【0011】
図1に、本実施例の完成図を示し、図2〜7に、本実施例の製造方法を、順次説明する。
【0012】
図1は完成した光起電力装置1と、これを固定するムーブメント30との取り付け関係を説明する分解斜視図である。
【0013】
光起電力装置1は、金属基板2を備え、外周において、この金属基板2を延長し、折曲した4つの固定片2aを有している。また、中心には、後述する時計の針の軸が通過するための、開口2bが設けられている。
【0014】
ムーブメント30は、図1においては、簡略した円板状の形状で表されているが、実際のものは、上側表面側には、時計の針の軸31、日付カレンダーを表示した円板(図示せず)を、駆動するとめに、複雑にギア、軸等が設置されている。また、ムーブメント30の外周上側には、光起電力装置1の固定片2bを、挿入して、固定するための、固定穴32を有している。
【0015】
次に、図2〜9を用いて、本実施例の製造方法を説明する。本実施例の光起電力装置1は、大型の金属基板2より、複数の光起電力装置1を製造するものであり、図2においては、この大型金属基板2のコーナー部に位置する光起電力装置1の製造方法を開示し、他の光起電力装置の製造方法はこれと同一なため、説明を省略する。
【0016】
図2において、ステンレス等の大型の金属基板2(厚さ約0.15mm)上全面に、ポリイミド等の耐熱性絶縁膜3(厚さ5〜30μm)が配置されている。そして、大型金属基板2より打ち抜かれる光起電力装置1の全体領域1xの外周が、点線で示されている。この全体領域1xは、略円形で後述する光起電力モジュールが形成されるモジュール領域1yと、この外周より延長して4つの固定片2aとなる固定片領域1zとを有している。なお、絶縁膜3としては、ポリイミド膜以外に、酸化シリコン膜、酸化アルミ膜等を利用することができる。
【0017】
そして、図2に示す工程において、全体領域1x内の絶縁膜3上に、光起電力モジュール4を形成する。この光起電力モジュール4は、絶縁膜3側より、金属からなる裏面電極層5、アモルファスシリコンからなるアモルファス半導体層6、透明導電膜からなる表面電極層7の積層体からなるセルA、B、C、Dを直列接続した構造であり、各セルの形状は、中心角が略90度の扇型である。各セルは、隣接するセルと、外周部にて電気接続する構造であり、詳細な電気接続構造は、本出願人が出願した特願2000−266332号に開示している。ここで、裏面電極層5、表面電極層7は、セル形状にパターンニングされ、セル領域以外では、除去されている。アモルファス半導体層6は、絶縁膜3の全面に形成されるので、固定片領域1z(=固定片2a)上にも、形成されている。
【0018】
次に、この工程で形成される正極端子8a、負極端子8dの構造を説明する。まず、正極端子8aの領域においては、図3に示すように、セルAより延在する表面電極層7上より、YAGレーザ等を照射することで、アモルファス半導体層6及び絶縁膜3を貫通して、裏面電極層7が溶融し、金属基板3と表面電極層7が電気接続される。その後、端子8a、8dを除いて、全セル上を被って、略円形に透明樹脂からなる保護層9を形成する。
【0019】
そして、その後、正極端子8aにおいては、レーザ照射部分の電気接続部10a上に、略円形の銀ペースト膜11aを配置して、電気接続部分10aでの電気接続を良好にしている。その後、銀ペースト膜11a上を被う円形の樹脂保護膜12aを形成する。この保護膜12aは、黒色(又は赤紫〜青色)であって、封止して信頼性向上のために機能すると共に、受光面側より見て、銀ペースト膜11aにて入射光が反射され明るく見えることを防止している。また、正極端子8aの裏面側においては、金属基板2裏面上に、略長円形の銀ペースト膜13a、これを被うカーボンペースト膜14aを形成する。
【0020】
一方、図4に示す負極端子8dにおいては、まず、セルDの形成に先立って、金属基板2及び絶縁膜3に、開口2yが設けられている。負極端子8dの領域においては、セルDより延在する裏面電極層5aと、全面形成されたアモルファス半導体層6を挟んで対向する位置に、表面電極層7と同一工程、同一材料からなる島状の端子電極層7dとを備えている。そして、保護層9の形成に先立ち、正極端子8aでのレーザ照射と同一工程にて、端子電極層7d上より、レーザを照射して、端子電極層7dと、裏面電極層5aとを電気接続する(電気接続部は10dで示す)。次に、開口2yの内壁、表面側外周、裏面側外周に、UV硬化樹脂等の絶縁層15が形成される。次に、表面側において、端子電極層7d上から、開口2yに至る銀ペースト膜11dが配置される。続いて、裏面側において、絶縁膜15上に銀ペースト膜13dが配置されることで、開口2y内で銀ペースト膜13a、13dがつながり、裏面側に、出力を取り出すことができる。そして、裏面側において、銀ペースト膜13d上には、カーボンペースト膜14dが配置される。また、表面側においては、銀ペースト膜11d上には、黒色の樹脂保護膜12dを配置する。
【0021】
以上の工程で、正極端子8a、負極端子8dが形成され、光起電力装置1の完成後、裏面側のカーボンペースト膜14a、14d上に、金属ピン(図示せず)を押圧した状態で設置し、出力を取り出すことができる。なお、上記の説明において、端子毎に説明したが、銀ペースト膜11a、11d、保護膜12a、12d、銀ペースト膜13a、13d、カーボンペースト膜14a、14dは、各々、同一の工程で形成される。また、裏面上のカーボンペースト膜14a、14dは、その下に位置する銀ペースト13a、13dよりも腐食に強いので、端子8a、8dの信頼性を向上するために配置されている。また、本実施例においては、正極の出力が金属基板3に導通しているが、負極の出力を金属基板3に導通することもできる。
【0022】
その後、モジュール領域1yと固定片領域1xとの境界、即ち、各固定片2aが金属基板2より延長する場所(後述する折曲する場所に相当する)に、YAGレーザ等のエネルギービームを照射して、金属基板2上に形成された絶縁膜3及びアモルファス半導体6を、除去、切断して、溝2x(幅約40〜70μm)を形成する(図5参照)。
【0023】
次に、図6に示す工程において、プレス打ち抜きにて、大型金属基板より、光起電力装置1を打ち抜く。同時に、金属基板2の中央に開口2bを設ける。また、この開口2bは、前述の開口2yと同時に、光起電力モジュール4の形成前に、設けることもできる。
【0024】
そして、最後に、光起電力モジュール4が形成されたモジュール領域1yと、固定片2aが延出する固定片領域1zの境界上において、固定片2aを、略90度折曲する。以上の工程にて、本実施例が完成し、図1に示すように、ムーブメント30の固定穴32に、光起電力装置1の折曲された固定片2aを挿入して、固定する。
【0025】
以上の本実施例においては、図7に示すように、固定辺2aが折曲された場所に、絶縁膜3、アモルファス半導体層6が除去された溝2xを形成していることより、折曲した場所で、折曲により金属基板2表面が引き伸ばされても、この場所に、溝2xが存在するので、絶縁膜3、アモルファス半導体層6に各種の力が加わることが少なく、剥離することがない。よって、本実施例の光起電力装置1を、腕時計等に組み込んだ場合、折曲された固定片により、容易にムーブメント等に係止、固定できると共に、折曲された場所で、絶縁層等の剥離が発生しないので、剥離層でムーブメント等の駆動不良が発生することがない。一方、このような、溝2xを設けないのであれば、上述の発明が解決しようとする課題で説明したように、絶縁膜、絶縁膜/半導体層、半導体層の剥離層が発生してしまう。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明においては、固定辺が折曲された場所において、絶縁膜が除去されているので、折曲により金属基板表面が引き伸ばされても、この場所に、絶縁膜又はアモルファス半導体層に各種の力が加わることが少なく、剥離することがない。よって、本実施例の光起電力装置を、腕時計等に組み込んだ場合、折曲された固定片により、容易にムーブメント等に係止、固定できると共に、折曲された場所で、絶縁層等の剥離が発生しないので、剥離層によりムーブメント等の駆動不良が発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の光起電力装置と、これを固定するムーブメントとを示す分解斜視図である。
【図2】 本発明の一実施例の第1工程を示す平面図である。
【図3】 図2におけるA−A断面図である。
【図4】 図2におけるB−B断面図である。
【図5】 図2におけるC−C断面図である。
【図6】 本発明の一実施例の第2工程を示す平面図である。
【図7】 図1におけるA−A断面図である。
【図8】 関連技術の光起電力装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図9】 関連技術の光起電力装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【符号の説明】
1 光起電力装置
1x 全体領域
1y モジュール領域
1z 固定片領域
2 金属基板
2a 固定片
3 絶縁膜
4 光起電力モジュール
5 裏面電極層
6 アモルファス半導体層
7 表面電極層

Claims (2)

  1. 金属基板の主面に絶縁膜、裏面電極層、半導体層および表面電極層が形成された光起電力装置の製造方法であり、
    大型金属基板を被覆する前記絶縁膜の上面に、前記各層を積層させた積層体が形成される積層体領域と、前記積層体領域から周囲に延長されて固定片と成る固定領域とから成る全体領域を形成する工程と、
    前記積層体領域と前記固定領域とが連続する箇所にて前記絶縁膜を除去する工程と、
    前記全体領域を前記大型金属基板から切り離す工程と、
    前記積層体領域と前記固定片とが連続する箇所で、平坦な前記積層体領域に対して前記固定片を略直角に曲折させる工程と、
    を具備することを特徴とする光起電力装置の製造方法。
  2. 前記裏面電極層、前記半導体層および前記表面電極層は、前記積層体領域および前記固定領域の両方に形成され、
    前記積層体領域と前記固定領域とが連続する箇所では、前記絶縁膜と共に、前記裏面電極層、前記半導体層および前記表面電極層が除去されることを特徴とする請求項1記載の光起電力装置の製造方法。
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