JP4016418B2 - 位置決め装置 - Google Patents

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  • Sealing Using Fluids, Sealing Without Contact, And Removal Of Oil (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば外部環境から隔離された室内でワークを移動可能な位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造装置などにおいては、真空や特殊ガス雰囲気に維持したプロセス室内で、ワークをステージに載置して移動させて加工処理することが行われている。ここで、プロセス室内に駆動源を含む位置決め装置を設けると、プロセス室外部との密閉性が維持されるため、真空や特殊ガス雰囲気を比較的容易に維持することが可能となる。
【0003】
ところが、プロセス室内に駆動源を含む位置決め装置を設けるとなると、プロセス室自体が大きくなり、その内部を所定の気圧にするための時間が長くかかったり、プロセス室内部を満たす特殊ガスを大量に必要としたり、或いは位置決め装置のメンテナンスが困難であったりするなどの問題がある。
【0004】
これに対して、プロセス室の容積を最小限にすると、上述した問題は解消されるものの、プロセス室内部に設けられたワークを載置するテーブルを、プロセス室外部から駆動する構成が必要となる。かかる構成の例としては、プロセス室と連通する筐体の壁に形成された開口を介して、プロセス室内部と外部との間を延在する移動軸を設け、かかる移動軸を筐体に対して相対移動させることで、プロセス室内部のテーブルをプロセス室外部より駆動するものがある。他の構成としては、筐体の開口を表面で遮蔽した平板を設け、かかる平板を筐体に対して相対移動させることで、プロセス室内部にあって且つ平板上に設けられたテーブルをプロセス室外部より駆動するものがある。いずれの構成においても、筐体と移動軸又は平板との隙間は、差動排気シールによって密閉し、プロセス室内部の環境を維持できるようになっている(たとえば米国特許第4191385号参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のような移動部材としての移動軸あるいは平板としては、例えば真空雰囲気を考えた場合、ステンレス、アルミ合金などの真空特性に優れた(ガス放出速度を低くするための洗浄などの表面処理が施された)金属素材が用いられる場合がある。また、例えばプロセス室内が負圧である場合、移動軸や平板は、プロセス室内外の気圧差により大きな力を受けるが、たわみなどの変形が生じると、位置決め精度が低下する恐れがある。そこで、移動軸や平板の素材として、軽量(低比重)で剛性の高いセラミック素材を利用しようとする試みがある。更に、セラミック素材は、非磁性の素材であるため、特に真空環境・低磁場変動を必要とするイオン注入装置や電子ビーム装置を、プロセス室内のワークの加工に用いる場合には、移動軸や平板に適した材料といえる。
【0006】
しかるに、前記のような真空特性に優れた金属素材を用いる場合であっても、移動部材の大気中に露出する部位では表面への気体分子の吸着は避けられない。通常、真空装置では、▲1▼真空装置内の大気の放出、▲2▼真空装置内壁に吸着しているガスの放出、▲3▼真空装置構成材料からの水素ガスの拡散、▲4▼大気側からの透過、と排気過程が推移して良好な真空を得ている。
【0007】
ところが、従来、差動排気シールを応用した装置では、真空中で吸着ガス分子が放出した部材表面が、プロセス室からシール部を通って、大気圧雰囲気へ移動することを許容するものである。従って、真空中でその表面の吸着分子が減った表面も、大気圧雰囲気へその表面を暴露することで、吸着ガス分子を初期状態に戻すことになる。この部位がプロセス室に戻れば、また徐々にその吸着分子を放出することになる。この繰返しが、プロセス室内の真空度を悪化させることになる。
【0008】
しかるに、この点において、セラミック素材は、金属と比べると気体分子を吸着する性質は弱いものの、微小粒子(粉末)の焼結体であるため、気体分子の吸蔵(毛細管内での気体分子の吸着)により金属材料にくらべ、負圧環境下などでは放出ガスが多くなるという問題がある。さらに、セラミック素材は、金属と比較して表面粗さを良くすることが難しく、見かけの面積が等しい金属に比べ実際の表面積(吸着面積)が大きいため、表面の吸着に加え、上述のような吸蔵分も加わるので、放出ガスが更に多くなるという問題点がある。
【0009】
以上、プロセス室が真空の場合を前提に説明をしたが、この現象は、高濃度の特殊雰囲気ガスプロセス室に対して、差動排気シールを使用した装置においてもいえることである。つまり、プロセス室外の気体分子が、移動軸や平板の移動と共にプロセス室内部に侵入し、それによりプロセス室内部のガスの濃度を変化させる恐れがある。
【0010】
そこで本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、プロセス室外の気体分子がプロセス室内に侵入することを効果的に抑制できる位置決め装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の位置決め装置は、プロセス室を内部に形成し、それと外部とを連通する開口を備えた筐体と、前記開口の少なくとも一部を遮蔽し、前記筐体の開口に対して移動する移動部材と、前記筐体及び前記移動部材の間のすきまを密封する差動排気シールと、を有し、前記差動排気シールの前記筐体側のシール面は、前記開口を囲んで形成される複数の溝部を備え、該複数の溝部にはそれぞれ排気通路が連通されており、前記移動部材が移動することによって、前記移動部材における前記筐体の外部に露出した部分が、前記プロセス室内部に移送されないように、前記複数の溝部のうち、最も前記プロセス室から離れたもののプロセス室寄りの端部からプロセス室までの、前記移動部材の移動方向に沿った幅を前記移動部材の移動量以上の大きさに設定してなることを特徴とする。
【0012】
【作用】
本発明の位置決め装置は、プロセス室を内部に形成し、それと外部とを連通する開口を備えた筐体と、前記開口の少なくとも一部を遮蔽し、前記筐体の開口に対して移動する移動部材と、前記筐体及び前記移動部材の間のすきまを密封する差動排気シールと、を有し、前記移動部材が移動することによって、前記移動部材における前記筐体の外部に露出した部分が、前記プロセス室内部に移送されないように、前記筐体の前記移動部材と対向する部位の、前記移動部材の移動方向についての幅の大きさが前記移動部材の移動量以上の大きさに設定されているので、前記プロセス室の外部に露出した前記移動部材の表面に気体分子が吸着されたとしても、その表面は前記プロセス室に移送されることがないため、前記プロセス室内の環境を保護することができる。
【0013】
更に、前記差動排気シールの前記筐体側のシール面は、前記開口を囲んで形成される複数の溝部を備え、該複数の溝部にはそれぞれ排気通路が連通されていると、シール性を更に向上できる。
【0014】
又、前記複数の溝部のうち、最も前記プロセス室から離れたもののプロセス室寄りの端部からプロセス室までの、前記移動部材の移動方向に沿った幅を移動量以上の大きさに設定してなると、より高いシール性能を要求される場合に対しても、より確実に高いシール性能が得られる。
【0015】
更に、前記差動排気シールの外部よりの側に隣接して、不活性ガスを媒体とする静圧軸受を併設してなると、かかる静圧軸受と差動排気シールとをユニット化しつつ、比較的大ストロークでも高いシール性能が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる位置決め装置の正面断面図であり、差動排気シールについては簡略化して示している。図1に示すように、本実施の形態の位置決め装置10は、プロセス室P並びにプロセス室Pとその外部とを連通する開口20aを有する第1の筐体20と、第1の筐体20の開口20aを遮蔽するように配置された移動ブロック30と、移動ブロック30を挟んで第1の筐体20に対向して配置された第2の筐体40とから構成されている。プロセス室Pは、簡略化して示す配管を介してポンプP1により吸引され負圧となっており、第2の筐体40内に形成された減圧室Rは、簡略化して示す配管を介してポンプP3により吸引されており、同様に負圧となっている。減圧室Rは、開口40aにより囲われている。尚、開口20aと開口40aとは、同じ形状を有し、対向する位置に形成されている。
【0017】
移動ブロック30は、その両端を不図示の軸受で支持され、大気圧下に設けられる不図示の駆動部(例えばモータ+ボールねじ、又はリニアモータ等)により、図において左右方向に移動可能となっており、また中央にワーク(不図示)を支持するテーブル31を載置している。第1の筐体20の開口20aの周囲であって、移動ブロック30に対向する面には、所定の隙間を介して第1の差動排気シール50が設けられている。一方、第2の筐体40の、移動ブロック30に対向する面には、所定の隙間を介して第2の差動排気シール60が設けられている。第1の差動排気シール50と、第2の差動排気シール60は、それぞれ簡略化して示す配管を介してポンプP2により吸引されており、プロセス室P及び減圧室Rと外部とを密閉している。尚、本実施の形態では、移動ブロック30の上面に対向する不図示の軸受面が第1の案内面を構成し、移動ブロック30の下面に対向する不図示の軸受面が第2の案内面を構成する。
【0018】
図2は、差動排気シール50の周辺を拡大して示す断面図であり、気体分子の吸着と脱離を模式的に示した図である。差動排気シール50は、開口20aを囲むように形成されている。具体的には、移動ブロック30の表面に対向する筐体20の側壁21の下面が、それぞれ開口20aを周回するように設けられてなる溝部51、52を備えたシール面50aを形成し、さらに前記溝部51,52から外部のポンプP2へと連通する排気通路53,54を有している。ここで、以下のような問題が生ずる恐れがある。
【0019】
移動ブロック30が図で左方に移動した場合、その上面に吸着された気体分子Amは、移動ブロック30の移動により溝部52に対向したときに、その多くがポンプP2に吸引され、更に溝部51に対向したときに残りの殆どが吸引されるが、吸引されなかった残りの気体分子Amがプロセス室P内で脱離することにより、その負圧(或いは特殊ガス)環境を損なう恐れがある。多孔質体のセラミックの場合は、さらに吸蔵された気体分子Amもプロセス室内で脱離することになる。
【0020】
これに対し、本実施の形態においては、図1に示すように移動ブロック30の必要とされる最大ストローク量Sよりも、第1の筐体20の側壁21,(すなわち第1の差動排気シール50のシール面50aの図で左右方向長)の幅b及び第2の筐体40の側壁41,(すなわち第2の差動排気シール60のシール面60aの図で左右方向長)の幅bが小さくならないように(S≦b)幅bを設定しているので、プロセス室P及び減圧室Rの外部(大気圧下)に露出した移動ブロック30の部分は、移動ブロック30が最大量移動しても側壁21或いは側壁41内にとどまるため、気体分子Amのプロセス室P及び減圧室Rへの脱離を抑制できる。尚、移動部材である本実施の形態の移動ブロック30は、金属素材から形成されているが、これに代え、素材をセラミック素材から形成されたものにすれば、軽量で高剛性であるという利点も得られる。
【0021】
なお、前記幅bが筐体20の側壁21として必要とされる厚さより大きい場合、差動排気シール50,60の図で左右方向の幅(シール面50a、60aの幅)さえbとなっていればよい。すなわち、側壁21の下部(41の上部)に、図で左右方向についてプロセスP室内方、大気圧側方向、あるいは双方に突出する縁部が形成されたような形にしてもよい。
【0022】
更に移動ブロック30の変形を抑制する工夫について説明する。まず、第2の筐体40が設けられていない場合を想定する。かかる場合には、移動ブロック30の下面には大気圧(約10Pa)が常に作用しているので、プロセス室Pの真空度が高まるに連れ、移動ブロック30は、その上面中央が図において上方に引っ張られるように変形する。このような変形が微小であっても、テーブル31の高さ位置が変化することで、ワークの高精度な加工が困難となる。
【0023】
これに対し、本実施の形態においては、第1の筐体20に対向して第2の筐体40を設け、しかもその内部の減圧室Rを負圧としているため、それにより移動ブロック30の下面が図において下方に引っ張られ、プロセス室Pの負圧による変形を抑制し、移動ブロック30を略無変形の状態に維持することができる。従って、テーブル31の高さ位置が変化しないため、高精度な位置決めが達成できる。又、開口20aと開口40aとを、同じ形状とし、対向する位置に形成することで、移動ブロック30の変形モードを均衡させ、より高精度な位置決めを達成できる。
【0024】
尚、減圧室Rの真空度は、プロセス室Pの真空度に一致させる必要はなく、たとえばプロセス室Pの気圧を10−5Paとしたときに、減圧室Rの気圧を10Pa程度(大気圧の1/10程度)としても、移動ブロック30の変形を、減圧室Rを設けない場合に比べて1/10程度に抑えることができる。それにより、減圧室RのポンプP3を、より低容量で安価なポンプとすることができ、装置の低コスト化を図れる。但し、移動ブロック30に減圧室Rとプロセス室Pとを連通する通路を設ければ、減圧室用のポンプP3は不要となる。
【0025】
図3は、第2の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。図3の実施の形態では、移動部材は丸軸130となっており、単体の筐体120の側壁121に形成された円形の開口120aを貫通している。側壁121のうち、開口120aを囲む部分のみ突出部122を形成し、該突出部122には、開口120aに開放するようにして2本の周溝151,152が形成され、更に周溝151、152から外方に向かって延在する排気通路153,154が形成されている。排気通路153,154は、ポンプP2(図1)に接続されている。なお、差動排気シール150は、周溝151,152と排気通路153,154とからなり、開口120aが差動排気シール150の筐体120側のシール面となる。側壁121の突出部122を除く部分についての壁の厚さは、筐体として必要な厚さに抑えられている。丸軸130は大気側において不図示の軸受により支持され、やはり大気圧下に設けられる不図示の適宜の駆動部により、図において左右方向に移動可能となっている。また丸軸なので必要に応じて軸心まわりには回転駆動も行うようにすることもできる。
【0026】
本実施の形態においても、図3に示すように丸軸130の最大ストローク量Sよりも、筐体120の突出部122に対応する部分の側壁の幅bが小さくならないように(S≦b)幅bの大きさを設定しているので、筐体120外部(大気圧下)に露出した丸軸130の部分は、丸軸130が最大量S移動しても突出部122内にとどまるため、気体分子Amが筐体120内部のプロセス室Pへ脱離することを抑制できる。
【0027】
図4は、第3の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。図4の実施の形態では、構成的には図3に示す実施の形態と同一であるが、丸軸130の最大ストローク量Sに対し、突出部122′の幅b′をより大きく設定している。具体的には、プロセス室Pの内壁120bから周溝151の内壁151aまでの距離をcとしたときに、S≦cなる関係が成立するように距離cを設定している。従って、幅b′はこれに対応して大きく設定される。その理由を以下に説明する。
【0028】
図2から類推されるように、筐体120の外部から近い方の周溝(ここでは151)に対向する位置では、それより内方の周溝(ここでは152)に対向する位置に比べて、丸軸130の表面における真空度が比較的低い。従って、周溝151に露出した丸軸130の表面は、少ないながらもある程度の気体分子が吸着すると考えられる。よって、かかる表面が、プロセス室P内に侵入すると、特にプロセス室P内を高真空にする必要のある場合や、丸軸130の移動速度が大きい場合等、特に高いシール性能を要求される場合では、その気体分子が脱離する恐れがある。しかしながら、本実施の形態のごとく、S≦cなるようにc及びb′を設定すれば、少なくとも周溝151に露出した丸軸130の表面は、プロセス室Pへと移動することがないので、高いシール性能を要求される場合でも、プロセス室P内への気体分子の脱離をより効果的に抑制することができるのである。
【0029】
さらに図4に示すように、プロセス室Pの内壁120bから周溝152の内壁152aまでの距離をdとしたときに、S≦dとなるようにすると、当然のことながら、さらにプロセス室P内への気体分子等の侵入抑制という点では、より効果的である。但し、dを大きくすると、それだけシール面120aの幅が大きくなり、丸軸130と筐体120とが接触する可能性が大きくなる点、S≦cとすることで十分気体分子等の侵入防止が図れる点を考慮すれば、S≦cとする方が、より好ましい。
【0030】
図5は、第4の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。図5の実施の形態では、構成的には図3に示す筐体120に対して、軸受を設けるべく、その端部を延長している。具体的には、筐体220の細長円筒状の突出部221に形成された円形の開口220a内を、丸軸230が貫通している。開口220aに開放した2本の周溝251,252と、周溝251、252から外方に向かって延在する排気通路253,254とからなる差動排気シール250に対して図における左方において、突出部221内に開口220aと概略面一(完全面一含む)となるように軸受270が配置されている。軸受270は、静圧軸受であって、突出部221を半径方向に貫通する通路271を介してポンプP3に接続されており、その正圧により丸軸230を移動自在に支持するものである。尚、軸受270に隣接して、差動排気シール250側の突出部221内には、不図示の通路を介して大気に開放された空間255(周溝)が形成されている。図5で開口220aのうち図に示す幅bの部分が、差動排気シール250の筐体側シール面となる。
【0031】
本実施の形態においては、図5に示すように丸軸230の最大ストローク量Sよりも、プロセス室Pと空間255との間の距離(すなわちシール面の幅)bが小さくならないように(S≦b)幅bを設定しているので、空間255(大気圧下)に露出した丸軸230の部分は、丸軸230が最大量S移動しても突出部221内にとどまるため、気体分子が筐体220内部のプロセス室Pへ脱離することを抑制できる。さらに、図で示すcがS≦cとなるように、あるいはdがS≦dとなるようにすれば、プロセス室P内への気体分子侵入抑制の観点からは、より好ましいのは前記の場合と同様である。
【0032】
更に、大気圧下での気体分子等の吸着を最小限にとどめるように、そして脱離を促進させるために、前記静圧軸受270にポンプP3により供給する気体として、自身は相手部材に吸着しにくい性質を有する不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス等)を採用することが望ましい。この場合、図5でa(突出部221の端面から空間255を規定する側壁までの距離)とbの大きさは、S≦a+bとなるように設定すれば、その効果が認められる。大気雰囲気でも水分が最も嫌われるため乾燥した(除湿された)空気雰囲気にすることが望ましい。又、シール領域のすぐそばのみにNなどの不活性ガス領域を設けることで、真空領域から大気圧雰囲気へ移動する可動部の表面にまず、不活性ガスを吸着させ、吸着分子の離脱性を促進させることも考えられる。その具体的な構成としては、ポンプP3からNなどの不活性ガスを圧送することで、軸受270の周囲を不活性ガスで満たすことが例としてあげられる。
【0033】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、移動ブロック30は、図1で左右方向のみならず、紙面に垂直方向にも、すなわち2次元的に移動しても良い。この場合、紙面に垂直方向の不図示の側壁21のシール面の幅bも、S≦bとなるように設定する(紙面に垂直方向のストローク量もSの場合)。但し、丸軸130,230を軸線方向に移動させず回転のみさせる構成には、本発明を適用してもあまり意味がない。また、図1のような平面状の移動ブロックの場合も、第3の実施の形態の図4のc、あるいはdに相当する幅をS以上にとするようにしてもよい。さらにまた、図1のような平面上の移動ブロックの場合も、差動排気シールより大気側寄りに隣接し、静圧軸受を併設してもよい。その静圧軸受へ供給する気体として不活性ガスを用いてもよい。この場合の筐体の移動ブロックとの対向面の幅は、第4の実施の形態に準じて決めることができる。
【0034】
更に、移動ブロック30や丸軸130,230の母材を多孔質セラミック素材の緻密体から形成し、必要箇所に緻密体を配置し或いはコーティングを施すことも考えられる。移動ブロック30や丸軸130、230の素材として、軽量(低比重)で剛性の高いセラミック素材を利用することで、その変形量を抑えることによって位置決め精度を高め、更にセラミック素材が非磁性の素材であることから、特に真空環境・低磁場変動を必要とするイオン注入装置や電子ビーム装置を、プロセス室内のワークの加工に用いる場合に、より好適な位置決め装置を提供できる。加えて、移動ブロック30や丸軸130,230における、少なくともプロセス室Pの内部と外部の間を移動する部分の表面には、緻密体を配置したり、コーティングを施すことで、気体分子の吸着を抑えて、プロセス室P内の環境を保護することができる。
【0035】
好適なセラミック素材の緻密体の例としては、細孔を少量に抑えた高密度セラミックがあげられる。高密度セラミックの中には、表面粗さRaが100nm以下の良好な面が得られるものもある。特に、セラテック社製「ポアフリー」(株式会社日本セラテック社登録商標)は、99.5%アルミナに対して、水分脱離特性にも優れるというデータが示されている。「ポアフリー」材は、表面粗さがRa=10nm以下の高精度面を形成することができる。当然ではあるが、上記のセラミック素材が加工された後には、十分に洗浄される必要がある。十分に洗浄されていない場合は、気孔に研磨カスなどが残留しており、プロセス室を汚染する原因となる。
【0036】
ところで、現在の技術では緻密体において、特に大型の部材では表面粗さRa=100nm以下の高精度面を得ることが比較的困難を伴うという状況がある。これに対し、セラミックの必要箇所にコーティングを施すことで、大型の部材の場合では比較的低コストで、気体分子が吸着されやすい細孔を塞ぎ、実質的な表面積を削減することができる。
【0037】
コーティングとしては、セラミック素材の表面にCVD膜、あるいはPVD膜を形成するものがあげられる。具体的には、SiC(多孔質体)を母材とし、その表面にSiCをCVDコーティングすることが一例としてあげられる。その他、母材としては、アルミナ、窒化珪素、ジルコニア等の各種セラミックがあげられる。一方、コーティング材としては、その他TiNやTiC等のPVD膜、あるいはサファイア膜のコーティングなども有効であると判断される。さらにコーティングとしては、気体分子との吸着力が小さくなるように、非金属系のコーティングも望ましいといえる。これらCVD膜あるいはPVD膜は、緻密質であるため、多孔質体のセラミックに対してもその効果を発揮し、実際の表面積を縮小させ、吸蔵現象を抑制することが可能となる。DLC(硬質カーボン膜)なども、その1つとして考えられる。DLC膜はCVD、PVDいずれでも得られる。また、移動ブロック30や丸軸130,230の母材として金属素材を用いる場合にも、少なくともプロセス室Pの内部と外部の間を移動する部分の表面に非金属系のコーティングを施すようにしてもよい。金属素材としては例えばステンレス鋼やアルミ合金等を用いることができるので、安価な移動部材とすることができ、必要部分の表面に上述のような各種非金属系のコーティングを施すことにより、気体分子が移動ブロック30や丸軸130,230表面からプロセス室P内へ侵入するのが防止される。
【0038】
このように、上記各実施の形態において、移動ブロック30や丸軸130,230(移動部材)に対して緻密体の配置或いはコーティングなどを適宜行えば、気体分子の吸着・吸蔵が起こりにくくなることにより、これらのプロセス室P内への侵入をより確実に防止可能となる。真空度などの条件によっては、例えば、丸軸130の最大ストローク量Sよりも、プロセス室Pの内壁120bから周溝151の内壁151aまでの距離c(又は周溝152の内壁152aまでの距離d)を小さく(S>c、d)しても、移動部材を上記のような気体分子等の吸着・吸蔵の起こりにくい材質とすることにより、気体分子が筐体120内部のプロセス室Pへ脱離することを十分抑制できるので、かかる場合には、少なくとも第2の実施の形態と同等のS≦bの条件を満たせば、第3の実施の形態と同等の、より高真空の条件に対応可能となる場合がある。
【0039】
【発明の効果】
本発明の位置決め装置は、プロセス室を内部に形成し、それと外部とを連通する開口を備えた筐体と、前記開口の少なくとも一部を遮蔽し、前記筐体の開口に対して移動する移動部材と、前記筐体及び前記移動部材の間のすきまを密封する差動排気シールと、を有し、前記移動部材が移動することによって、前記移動部材における前記筐体の外部に露出した部分が、前記プロセス室内部に移送されないように、前記筐体の前記移動部材と対向する部位の、前記移動部材の移動方向についての幅の大きさが前記移動部材の移動量以上の大きさに設定されているので、前記プロセス室の外部に露出した前記移動部材の表面に気体分子が吸着されたとしても、その表面は前記プロセス室に移送されることがないため、前記プロセス室内の環境を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる位置決め装置10の正面断面図である。
【図2】差動排気シール50の周辺を拡大して示す断面図であり、気体分子の吸蔵と脱離を模式的に示した図である。
【図3】第2の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。
【図4】第3の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。
【図5】第4の実施の形態にかかる位置決め装置の差動排気シール周辺の断面図である。
【符号の説明】
10 位置決め装置
20 第1の筐体
30、130,230 移動ブロック
40 第2の筐体
120,220 筐体
50,150,250 差動排気シール
270 軸受
P プロセス室
R 減圧室

Claims (2)

  1. プロセス室を内部に形成し、それと外部とを連通する開口を備えた筐体と、
    前記開口の少なくとも一部を遮蔽し、前記筐体の開口に対して移動する移動部材と、
    前記筐体及び前記移動部材の間のすきまを密封する差動排気シールと、を有し、
    前記差動排気シールの前記筐体側のシール面は、前記開口を囲んで形成される複数の溝部を備え、該複数の溝部にはそれぞれ排気通路が連通されており、
    前記移動部材が移動することによって、前記移動部材における前記筐体の外部に露出した部分が、前記プロセス室内部に移送されないように、前記複数の溝部のうち、最も前記プロセス室から離れたもののプロセス室寄りの端部からプロセス室までの、前記移動部材の移動方向に沿った幅を前記移動部材の移動量以上の大きさに設定してなることを特徴とする位置決め装置。
  2. 前記差動排気シールの外部よりの側に隣接して、不活性ガスを媒体とする静圧軸受を併設してなる請求項に記載の位置決め装置。
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