JP4016414B2 - 新規デンドリマー及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【従来の技術】
デンドリマーまたはデンドロンは、その構造の特異性から、様々な分野の材料としての応用が開発されてきた。
【0002】
例えば、J.Am.Chem.Soc.,2000,122,1258には、デンドリマーの表面に、薬剤放出の時空間的な制御が可能なケージド化合物を多数縮合させてデンドリマー型ケージド化合物が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記デンドリマー型ケージド化合物は、機能発現後生体内に分解されずに残留するという問題があった。
【0004】
本発明は、機能発現後にも生体内に残留することなく、速やかに分解・代謝される新規で、容易に製造できるデンドリマーを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリエステル骨格を有するデンドリマーを用いることで、上記課題を解決することがでることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
【0007】
【化4】
Figure 0004016414
【0008】
(式中、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。但し、式(I)は、炭素骨格のみを表記しており、各炭素原子上には、結合手が4となるように、水素原子、ハロゲン原子、または有機基及び金属結合を介した有機基からなる群から選ばれるすくなくとも1つの官能基が結合しているものとする。)で表される骨格を分岐鎖に有することを特徴とするデンドリマーに関し、
(2)式(I)で表される骨格中、m及びnが、1または2であることを特徴とする(1)に記載のデンドリマー、
(3)式(II)
【0009】
【化5】
Figure 0004016414
【0010】
(式中、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。但し、式(II)は、炭素骨格のみを表記しており、各炭素原子上には、結合手が4となるように、水素原子、ハロゲン原子または有機基及び金属結合を介した有機基からなる群から選ばれるすくなくとも1つの官能基が結合しているものとする。)で表される骨格を分岐鎖中の繰り返し単位として有することを特徴とするデンドリマー、
(4)式(II)中のm及びnが、1または2であることを特徴とする(3)に記載のデンドリマー、
(5)式(IV)
【0011】
【化6】
Figure 0004016414
【0012】
(式中、R1は、アルキル基、アリール基を表し、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、R11及びR12は、それぞれ独立に、カルボキシル基の保護基を表す。)で表されることを特徴とする化合物、
(6)式(III)中のm及びnが1または2であることを特徴とする(5)に記載の化合物に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のデンドリマーは、式(I)で表される骨格を分枝鎖に有することを特徴とする。
【0014】
式(I)は、炭素骨格のみを表記しており、各炭素原子上には、結合手が4となるように、水素原子、ハロゲン原子または有機基及び金属結合を介した有機基からなる群から選ばれるすくなくとも1つの官能基が結合しているものとする。
【0015】
この場合、有機基とは、炭素原子を含む官能基を表し、直接炭素原子と結合する官能基のみならず、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を介して結合する官能基をも含み、さらには、炭素原子含まない、窒素原子、燐原子、硫黄原子等のヘテロ原子と水素原子からなる官能基をも含むものとする。また、骨格上の炭素原子に結合する様式は、炭素結合手が4となるものであれば特に制限されず、単結合、2重結合等いずれの結合であっても構わない。
【0016】
式(I)中、n及びmは、それぞれ独立に、1以上の整数を表すが、特に、1または2の場合が好ましい。
【0017】
式(I)で表される骨格として具体的には、下記式で表される骨格を例示することができる。
【0018】
【化7】
Figure 0004016414
【0019】
また、本発明の式(I)で表される骨格を有するデンドリマーの好ましい一つの態様として、式(II)で表される骨格を分枝鎖中の繰り返し単位として有するデンドリマーを例示することができる。式(II)で表される繰り返し単位中、m、及びnは、式(I)における意味と同様の意味を表し、式(II)で表される繰り返し単位として具体的には、式(I)で表される骨格から類推される骨格を例示することができる。
【0020】
式(II)で表される繰り返し単位を有するデンドリマーの製造方法として、具体的には、式(III)で表される化合物を核となる化合物に対して順次反応させていく方法を例示することができる。(下記式を参照)
【0021】
【化8】
Figure 0004016414
【0022】
上記図は、第2世代までのデンドリマーを記載したが、さらに同様に反応を行い第3世代以上のデンドリマーを製造することができる。また、式(IV)で表される化合物中、m及びnが2の場合を代表して表記したが、それ以外の場合にも同様に行うことができる。
【0023】
コアに用いられる化合物としては、式(III)で表される化合物の水酸基と反応して結合を形成できる官能基(上記式中、Xで表す。)を分子内に2以上有する化合物であれば、特に制限されないが、具体的には、下記に示す化合物を例示することができる。
【0024】
【化9】
Figure 0004016414
【0025】
式(III)で表される化合物中、n、及びmは、式(I)における意味と同様の意味を表し、R11及びR12は、それぞれ独立にカルボキシル基の保護基を表す。R11及びR12として、さらに、他の結合部位に影響を及ぼすことなく除去が行える保護基が好ましい。また、R1は、アルキル基、アリール基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、2−ピリジル基等のアリール基を例示することができる。
また、適当な炭素上に置換基を有していてもよい。
【0026】
式(III)で表される化合物の製造方法として、具体的には下記式(IV)に示す方法を例示することができる。
【0027】
【化10】
Figure 0004016414
【0028】
式(IV)中のR23は、カルボキシル基の保護基であり、好ましくは、R11またはR12が脱保護されない条件下で除去され得る保護基が好ましい。
【0029】
式(IV)中のR22は、アルキル基、アリール基等の有機基を表す。
【0030】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0031】
【実施例】
本実施例において、1HNMR、及び13CNMRは、日本電子(株)社製JNM−GSX270及びECP−400で、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用い、MASSスペクトルは、島津製作所(株)社製LCMS−2010で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィは日本分析工業(株)社製LC−908(カラム:GS310、溶出溶媒;MeOH)でそれぞれ測定した。
実施例1
(1)4-acetyl-4-benzylcarbonylheptanedioic acid di-t-butyl ester 1
塩化カルシウム管を取り付けた300ml ナスフラスコ中、アセト酢酸ベンジル9.61g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)80m1に溶かし、カリウムt−ブトキシド(t−BuOK)1.12g(10mmol)を加え、0℃で15分撹拌した後、アクリル酸t−ブチル17.22ml(110mmol)を加え、室温で1日撹拌した。反応溶液に酢酸エチルを加え、0.1N塩酸で3回、蒸留水で2回、飽和食塩水で1回洗った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧留去した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=7/1)によって分離し、無色粘性抽状液体1(13.15g、(13−159、収率60.5%)を得た。
1H NMR (270 MHz; CDC13; TMS) δ 1.42 (18H, s, But), 2.20-2.19 (8H, m, CH2CH2), 5.18 (3H, s, CH3), 7.34 (5H, s, Benzyl)
13C NMR (67.8 MHz; CDCL2; TMS) δ 26.53, 27.95, 30.00, 61.89, 66.32, 67.14, 80.46, 128.46, 134.99, 171.38, 204.04
(2)4-Acetyl-l,7-heptanedioic acid t-butyl ester 2
300ml三口フラスコ中に10%Pd/C0.658g(1に対して5重量%)に1(13.152g、30.27mmol)のエタノール(100ml)溶液に溶かし、水素ガス雰囲気下、室温で1日撹拌した後、セライトで濾過した。溶媒を減圧留去した後、80 ℃で1時間加熱し、無色粘性油状液体の2(9.430g、収率99.1%)を得た。
1H NMR (270 MHz; CDC13; TMS): δ 1.44 (18H, s, But), 1.68-1.93 (4H, m, CH2CH2), 2.08-2.23 (7H, m, CH3&CH2CH2COO), 2.57-2.62 (1H, m, CH3COCH)
13CNMR (67.8 MHz; CDC13; TMS): δ 25.76, 27.71, 28.85, 32.47, 50.34, 79.96, 171.80, 210.63
(3)4-(1-Hydroxyethyl heptanedioic acid t-butyl ester 3
塩化カルシウム管を付けた300mlナスフラスコ中、2(5.961g、18.89mmol)のエタノール(100ml)溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.646g(17.08mmol)を加え、室温で90分撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルを加え、蒸留水で2回、飽和食塩水で1回洗った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧留去して無色粘性油状液体3(5.960g、収率99.6%)を得た。
1H NMR (270 MHz; CDC13; TMS): δ 1.16-1.18 (3H, d, J=6Hz, CH3), 1.44 (18H, s, But), 1.53-1.84 (4H, m, CH2CH2COO), 2.13-2.33 (5H, m, CH2CH2COO&CHCH2CH2), 3.70-3.83 (1H, m, CH3CHOH)
13CNMR (67.8 MHz; CDC13; TMS): δ 19.53, 24.33: 27.81, 30.74, 32.93, 43.56, 68.25, 79.60, 173.15
(4)デンドリマー1
【0032】
【化11】
Figure 0004016414
【0033】
塩化カルシウム管を付けた50mlナスフラスコ中に、テトラキス(2−カルボキシメチル)メタン(215mg、0.050mmol)、3(842mg、0.220mmo1)のDMF(3ml)溶液に4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)305mg(0.25mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)76.7mg(0.40mmol)、1−ヒドロキシベンツトリアゾール(HOBt)33.8mg(0.25mmol)、を加え、室温で1日撹拌した。その後、反応溶液にエーテルを加え、15%クエン酸で1回、蒸留水で1回、飽和食塩水で1回洗った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、溶媒を減圧留去した後、GPCで分離精製することにより無色粘性油状液体デンドリマー1(4.4mg、2.74×10-3mmol、収率5.5%)を得た。
1H NMR (270 MHz; CDC13; TMS): δ 1.18-1.20 (12H, d, J=6Hz, CH3), 1.44 (72H, s, But), 1.94 (20H, m, CHCH2CH2COO), 2.23-2.29 (16H, m, CH 2 CHCOO), 2.50-2.55 (8H, t, J=6Hz, CH2OCH2CH 2 ) 3.38 (8H, s, CH 2 OCH2CH2), 3.59-3.64 (8H, m, CH2OCH 2 CH2), 4.94-4.97 (4H, m, COOCHCH3)
MS(ESI) m/z 1625 (M+Li+, C85H148O28Li requires 1624.93)
(5)デンドリマー2
【0034】
【化12】
Figure 0004016414
【0035】
20ml二口フラスコ中アルゴンガス雰囲気下、3(316.4mg,1mmol)の無水ジクロロメタン(3ml)溶液にDMAP(207.7mg,1.7mmol)の無水ジクロロメタン(1ml)溶液を加え、0℃で5分撹拌し、1,3,5−ペンゼントリカルボニルトリクロライド(823mg、0.31mmol)の無水ジクロロメタン(3ml)溶液を加え、室温で1時間撹拌した。反応溶液にエーテルを加え、1N塩酸で1回、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗った後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=30/1)によって分離した後さらにGPCにより分離精製により無色粘性油状液体デンドリマー2(234.0mg、収率21.2%)を得た。
1H NMR (270 MHz; CDCl3; TMS): δ 1.36-1.47 (63H, m, But&CH3), 1.61-1.71 (12H, m, CH 2 CH2COO), 2.30-2.33 (12H, m, CH2CH 2 COO), 5.25-5.27 (3H, m, COOCH), 8.80 (3H, s)
13CNMR (67.8 MHz; CDCl3; TMS): δ 16.47, 24.73, 28.01, 33.04. 41.30, 73.23, 80.25, 131.58, 134.38, 164.39, 172.59
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のデンドリマーは、安価な原料を出発物質として容易に製造できるデンドリマー構築ブロック(Building Block)を用い、このブロックを繰り返し反応させることで得られる新規なポリエステル型骨格のデンドリマーである。これらデンドリマーは、分岐鎖外郭にケージド化合物を導入することで生体内において容易に分解可能で新たな機能を有するケージド化合物として、また、分岐鎖にポリエチレングリコール鎖を導入することで電気デバイスの固体電解質として応用ができ、産業上の利用価値は高いといえる。

Claims (5)

  1. 式(I)
    Figure 0004016414
    (式中、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。但し、式(I)は、炭素骨格のみを表記しており、各炭素原子上には、結合手が4となるように、水素原子、ハロゲン原子、または有機基及び金属結合を介した有機基からなる群から選ばれるすくなくとも1つの官能基が結合しているものとする。)で表される骨格を分岐鎖に有することを特徴とするデンドリマー。
  2. 式(I)で表される骨格中、m及びnが、1または2であることを特徴とする請求項1に記載のデンドリマー。
  3. 式(II)
    Figure 0004016414
    (式中、m、及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。但し、式(II)は、炭素骨格のみを表記しており、各炭素原子上には、結合手が4となるように、水素原子、ハロゲン原子または有機基及び金属結合を介した有機基からなる群から選ばれるすくなくとも1つの官能基が結合しているものとする。)で表される骨格を分岐鎖中の繰り返し単位として有することを特徴とするデンドリマー。
  4. 式(II)中のm及びnが、1または2であることを特徴とする請求項3に記載のデンドリマー。
  5. 式(IV)
    Figure 0004016414
    (式中、R1は、アルキル基、アリール基を表し、m、及びnは、整数2を表し、R11及びR12は、それぞれ独立に、カルボキシル基の保護基を表す。)で表されることを特徴とする化合物。
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