JP4015569B2 - 空燃比検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用エンジン等の空燃比(燃料と吸入空気との混合比)を検出するのに好適に用いられる空燃比検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用エンジン等では、例えば排気管の途中に空燃比センサ(空燃比センサを含む)を設け、この空燃比センサを用いて排気ガス中に含まれる酸素濃度等を検出する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−100651号公報
【0004】
この種の従来技術による空燃比センサは、例えば細長いプレート状に形成されたヒータ部と、該ヒータ部に対して積層化するように形成され該ヒータ部からの熱によって活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層に設けられた合計3個の電極と、これらの電極を固体電解質層と共に外側から覆うガス拡散層等とにより構成されている。
【0005】
ここで、空燃比センサは、外部から電圧を印加したときに前記電極間に拡散限界電流としてのポンプ電流が流れ、このポンプ電流を計測することによりエンジンの空燃比を検出する。
【0006】
そして、エンジンの制御装置は、空燃比センサから出力される空燃比信号により、燃料と空気との混合比である空燃比A/Fを、例えば理論空燃比(A/F=14.7)またはリーン空燃比(A/F≧15)等に近付けるように燃料噴射量をフィードバック制御し、これによって、エンジンの燃焼効率や燃料消費量(燃費)等を向上させるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による空燃比センサは、固体電解質層に合計3個の電極を設け、これらの電極を多孔質材料からなるガス拡散層で覆っているに過ぎないので、検出素子の内部抵抗が大きく、酸素濃度の出力感度幅を必ずしも十分に向上することができないという問題がある。
【0008】
また、被測定ガスである排気ガス中の空燃比が理論空燃比近傍にあるときに、ガス拡散層を通って電極に達する反応ガス種が少ないと、空燃比の検出信号となるポンプ電流(拡散限界電流)がハンチングを起こすことがあり、空燃比の検出精度が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、検出素子の内部抵抗を下げて出力感度幅を向上できると共に、ポンプ電流の特性を安定させ、空燃比の検出精度を高めることができるようにした空燃比検出装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による空燃比検出装置は、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部に設けられ、被測定ガスが内部を拡散するガス拡散層と、該ガス拡散層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層と前記ガス拡散層との間に設けられて互いに導通する2つの電極部を有し、該各電極部に前記ガス拡散層を通じて被測定ガスが導かれる第1の電極と、該第1の電極の各電極部のうち一方の電極部との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、外部から電圧を印加したときにポンプ電流が前記一方の電極部との間に流れる第2の電極と、前記第1の電極の各電極部のうち他方の電極部との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が前記他方の電極部との間に発生する第3の電極と、前記固体電解質層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、少なくとも該第3の電極を外側から覆うことによって被測定ガスが内部に侵入するのを抑える緻密層とを備え、前記ガス拡散層を通じて前記第1の電極に導かれる被測定ガスの空燃比を、前記第1の電極のうちの一方の電極部と前記第2の電極との間に流れる前記ポンプ電流により検出する構成している。
【0011】
これにより、第1の電極を構成する2つの電極部のうち一方の電極部を第2の電極と対向配置でき、他方の電極部を第3の電極と対向配置することができるので、固体電解質層を挟んだ他方の電極部、第3の電極間の内部抵抗(例えば、ネルンストセルの内部抵抗)を小さく抑えることができ、酸素濃度の出力感度幅を向上できる。しかも、第1の電極の一方の電極部は、固体電解質層を挟んで第2の電極と対向配置されることにより、ガス拡散層を通じた電極反応点へのガス拡散が速くなり、被測定ガスの空燃比が理論空燃比近傍にあるときに、ガス拡散層を通って電極に達する反応ガス種が少ない場合でも、空燃比の検出信号となるポンプ電流(拡散限界電流)がハンチングを起こすのを抑えることができ、空燃比の検出精度を高めることができる。
【0012】
また、第3の電極を緻密層で覆っているため、固体電解質層を挟んだ第1の電極の他方の電極部と第3の電極との間に、被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が発生するときに、前記他方の電極部から第3の電極に向け固体電解質層を介して輸送される酸素を、前記緻密層で覆われた第3の電極の周囲に溜めることができ、当該第3の電極を擬似的に基準酸素濃度の電極(参照電極)として、酸素濃度の検出精度を向上することができる。
【0013】
また、請求項2の発明によると、ガス拡散層と固体電解質層との間には、前記ガス拡散層よりも大なる気孔率を有し第1の電極の各電極部を共に覆う多孔質空間層を設ける構成としている。
【0014】
この場合には、第1の電極の各電極部を共に多孔質空間層で覆っているため、各電極部間の酸素濃度を均等に保つことができ、酸素ポンピング(ポンプ電流)による一方の電極部側での酸素濃度変化を他方の電極部側に遅れなく伝え、酸素濃度の検出感度を高めることができる。また、一方の電極部における電極反応点へのガス拡散をより速くすることができ、ポンプ電流のハンチング抑制効果を高めることができる。しかも、第1の電極(各電極部)には外部の被測定ガスがガス拡散層から多孔質空間層を通じて導かれるため、リッチ,リーン雰囲気のいずれでもシャープな限界電流曲線(ポンプ電流の特性)を得ることができる。
【0015】
さらに、請求項3の発明によると、ガス拡散層は45体積%以上の気孔率をもって形成し、ヒータ部には、該ガス拡散層よりも小なる気孔率を有し固体電解質層と共にガス拡散層を外側から覆うガス拡散制御層を設ける構成としている。
【0016】
これにより、第1の電極(各電極部)にはガス拡散制御層を通過した被測定ガスのみがガス拡散層を通じて導かれるので、該ガス拡散層の気孔率を45体積%以上に大きくすることができ、請求項2の発明とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による空燃比検出装置を、自動車用エンジンの排気管側に取付けられる空燃比センサに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0018】
ここで、図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は空燃比センサのケーシングで、該ケーシング1は、軸方向一側(先端側)外周に取付部としてのおねじ部2Aが形成された段付筒状のホルダ2と、該ホルダ2の軸方向他側(基端側)に一体的に固着された有底筒状のキャップ3と、該キャップ3内に同軸に配設され、後述のシールキャップ10とホルダ2との間に位置決めされたガイド筒4とにより構成されている。
【0019】
また、ケーシング1の構成部品であるホルダ2、キャップ3およびガイド筒4は、例えばステンレス鋼等の金属材料を用いて形成されている。そして、ケーシング1は、後述の空燃比検出素子21を自動車用エンジンの排気管(図示せず)内に突出状態で取付けるために、ホルダ2のおねじ部2Aが排気管に螺着されるものである。
【0020】
5はケーシング1のホルダ2内に金属製のシールリング6を介して配設された絶縁支持体を示し、該絶縁支持体5は、例えば酸化アルミニウム(Al23 )等のセラミックス材料により筒状に形成され、その内周側には空燃比検出素子21が固定されている。そして、絶縁支持体5は、ケーシング1内に空燃比検出素子21を位置決めすると共に、空燃比検出素子21を電気的および熱的に絶縁状態で保持するものである。
【0021】
7,8はケーシング1のガイド筒4内に配設された絶縁筒体を示し、該絶縁筒体7,8は、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)等のセラミックス材料により筒状に形成され、後述の各コンタクトプレート13,14等をケーシング1に対して絶縁状態に保持するものである。
【0022】
9はケーシング1内に位置して絶縁支持体5と絶縁筒体7との間に配設された弾性部材としてのスプリングで、該スプリング9は、絶縁支持体5をホルダ2側に向けて常時付勢し、ケーシング1に外部から作用する振動や衝撃等が空燃比検出素子21に直接伝わるのを防止するものである。
【0023】
10はキャップ3の基端側を閉塞したシールキャップを示し、該シールキャップ10は、耐熱性を有する樹脂材料等によって段付き筒状に形成され、ケーシング1内に絶縁筒体7,8等をスプリング9を介して位置決めしている。
【0024】
また、シールキャップ10には、検出用のリード線11,11,…と、ヒータ用のリード線12,12(一方のみ図示)とが挿通されている。そして、これらの各リード線11,12は、絶縁筒体8内でそれぞれ検出用のコンタクトプレート13,13,…と、ヒータ用のコンタクトプレート14,14とにそれぞれ個別に接続されている。
【0025】
15はケーシング1のホルダ2に設けられたプロテクタで、該プロテクタ15は、例えば耐熱性の高い金属板等を用いて有蓋筒状に形成されている。そして、プロテクタ15は、後述する空燃比検出素子21の先端部分を外側から覆うように基端側がホルダ2に取付けられ、先端(蓋部)側がホルダ2から軸方向に突出して設けられている。
【0026】
また、プロテクタ15の筒部側には、被測定ガスとなる排気ガスの流通を許す複数の窓部15A,15A,…が形成されている。そして、これらの窓部15Aは、排気管内を流れる被測定ガス(以下、排気ガスという)を空燃比検出素子21の先端側周囲に導くものである。
【0027】
次に、21は空燃比検出装置としての空燃比検出素子で、該空燃比検出素子21は、ケーシング1のホルダ2内に絶縁支持体5を介して取付けられ、先端側は自由端となってホルダ2から軸方向に突出している。そして、空燃比検出素子21は、図2ないし図4に示す如く後述のヒータ部22、ガス拡散層26、固体電解質層27、緻密層32および保護層34等によって構成されている。
【0028】
22は細長いロッド状に形成された心棒部となるヒータ部で、該ヒータ部22は、図2ないし図4に示す如く、例えばアルミナ等のセラミックス材料により小径の中実ロッド状に形成されたヒータコア23と、ヒータパターン24および絶縁性のヒータ被覆層25とから構成されている。
【0029】
ここで、ヒータパターン24は、例えばアルミナを混合した白金等の発熱性導体材料からなり、ヒータコア23の外周面に曲面印刷等の手段を用いて形成されている。また、ヒータパターン24は、図4に示すようにヒータコア23の先端側から基端側に向けて延びる一対のリード部24A,24Aを有し、これらのリード部24Aは、ヒータコア23の基端側で図1に示すようにヒータ用の各コンタクトプレート14に接続される。
【0030】
そして、ヒータパターン24は、後述する外部のヒータ電源42からヒータ用の各リード線12、各コンタクトプレート14および各リード部24Aを介して給電されることにより、例えば約720〜800℃程度の温度にヒータ部22を発熱させるものである。
【0031】
また、ヒータ部22のヒータ被覆層25は、ヒータパターン24をリード部24Aと一緒に径方向外側から保護するために、例えばアルミナ等のセラミックス材料を曲面印刷等の手段でヒータコア23の外周側に厚膜印刷することにより形成されている。また、ヒータ被覆層25の外周側には、後述のガス拡散層26等が曲面印刷等の手段を用いて積層化するように形成されている。
【0032】
26はヒータ部22のヒータ被覆層25の外周側に設けられた多孔質構造のガス拡散層で、該ガス拡散層26は、例えばアルミナの粉体(所定重量%のジルコニアの粉体を混合してもよい)からなるペースト状物を、曲面印刷等の手段を用いて図2ないし図4に示すようにヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0033】
そして、ガス拡散層26は、連続気泡からなる空孔を有して多孔質構造(例えば、気孔率が10〜45体積%)に形成され、空燃比検出素子21の周囲を流れる排気ガスの一部を、図3に示す先端側の端面26Aから矢示A方向(軸方向)へとガス拡散層26の内部に拡散させつつ、この排気ガスを後述の内側電極28に向けて透過させる機能を有している。
【0034】
27はヒータ被覆層25の外周側に曲面印刷等の手段を用いて設けられた酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層27は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなるペースト状物を調整した後、このペースト状物を図2ないし図4に示す如くガス拡散層26の外側からヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0035】
そして、固体電解質層27は、後述の幅広電極部28Aと外側測定電極29との間、幅狭電極部28Bと基準電極30との間でそれぞれ酸素イオン等を輸送する機能を有するものである。また、固体電解質層27は、後述の緻密層32とほぼ同様に緻密な構造を有している。
【0036】
なお、固体電解質層27は、図2に示すようにヒータ被覆層25の外周側でガス拡散層26の上側に積層化するように形成され、その周方向長さは固体電解質層27の方がガス拡散層26よりも小さい寸法となっている。このため、ガス拡散層26は、固体電解質層27によって外側から完全に覆われることはなく、ガス拡散層26の周方向両側は、図2に示す如く固体電解質層27からヒータ被覆層25の周方向にはみ出し、後述の緻密層32で覆われている。
【0037】
28はガス拡散層26と固体電解質層27との間に位置して固体電解質層27の内周側に設けられた第1の電極としての内側電極で、該内側電極28は、白金等の導電性材料からなり、図2ないし図4に示すように固体電解質層27を曲面印刷する前に、ガス拡散層26の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成されるものである。
【0038】
そして、内側電極28は、図3、図4および図5に示す如く、後述する電極29,30間の離間寸法にほぼ等しい寸法t(例えば、0.3〜0.5mm程度)の間隔をもって離間し、ヒータ部22(ガス拡散層26)の周方向に互いに平行に延びた2つの電極部28A,28B(以下、幅広電極部28A,幅狭電極部28Bという)と、該幅広電極部28A,幅狭電極部28Bを互いに接続して導通させ、検出素子21の基端側に向けて細長く延びたリード部28Cとにより構成されている。
【0039】
ここで、幅広電極部28Aは、図5に示す如く寸法W1 の電極幅を有し、後述の外側測定電極29とほぼ等しい電極幅に形成されている。また、幅狭電極部28Bは、寸法W2 の電極幅を有し、後述の基準電極30とほぼ等しい電極幅に形成されている。そして、幅広電極部28Aの電極幅は、幅狭電極部28Bの電極幅に対して3倍以上となる寸法W1 (W1 ≧3×W2 )に形成されている。
【0040】
また、これらの電極部28A,28Bは、図3に示すようにガス拡散層26の軸方向で互いに離間して配置され、径方向では後述の電極29,30と固体電解質層27を挟んで対向している。しかし、これらの電極部28A,28Bは、リード部28Cを介して互いに接続され、図3に示す後述の仮想グランド35と同電位におかれるものである。
【0041】
この場合、内側電極28のリード部28Cは、図3および図4に示すようにヒータ部22の基端側に向けヒータ被覆層25の軸方向に伸長している。そして、固体電解質層27は、リード部28Cの伸長部分を除いて内側電極28の電極部28A,28Bを外側から完全に包込むようにヒータ被覆層25の外周面に曲面印刷されるものである。
【0042】
29はヒータ部22の先端側寄りに位置して固体電解質層27の外周面に設けられた第2の電極としての外側測定電極で、該外側測定電極29は、図2ないし図4に示す如く幅広電極部28Aとの間で固体電解質層27を挟むことにより、幅広電極部28Aと外側測定電極29は、所謂ポンピング電極を構成するものである。また、外側測定電極29は、後述の基準電極30よりも3倍以上に大きい電極幅を有している。
【0043】
そして、外側測定電極29は、後述する基準電極30のリード部30Aとほぼ平行に延びるリード部29Aを有し、このリード部29Aは、基準電極30のリード部30Aからヒータ被覆層25の周方向に離間した状態で、ヒータ被覆層25の外周に沿って基端側へと軸方向に延びて形成されるものである。
【0044】
30は外側測定電極29からヒータ部22の軸方向に離間して固体電解質層27の外周面に設けられた第3の電極としての基準電極で、該基準電極30は、図3、図4に示す如く幅狭電極部28Bとの間で固体電解質層27を挟むことにより所謂ネルンストセル31を構成し、このネルンストセル31には、後述の如く排気ガス中の酸素濃度に対応した起電力が、幅狭電極部28Bと基準電極30との間に発生するものである。
【0045】
そして、これらの外側測定電極29、基準電極30は、内側電極28(電極部28A,28B)と同様の導電性材料からなり、この導電性ペーストを固体電解質層27の外周面にそれぞれ曲面印刷することによって形成される。また、基準電極30は、ヒータ部22の基端側に向けて伸長するリード部30A(図4中に図示)を有している。
【0046】
また、内側電極28(電極部28A,28B)のリード部28C、外側測定電極29のリード部29Aおよび基準電極30のリード部30Aは、図1に示す空燃比検出素子21の基端側でそれぞれのコンタクトプレート13およびリード線11に接続され、図3に例示するような電気回路を構成するものである。
【0047】
32はガス拡散層26、固体電解質層27および電極29,30等を外側から覆うように設けられた緻密層で、この緻密層32は、例えばアルミナの粉体に酸化珪素(Si O)の粉体を添加して調整したペースト状物を、固体電解質層27等の外側からヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより形成され、図3、図4に示す如くヒータ被覆層25の先端側から基端側に向けて長く延びている。
【0048】
そして、緻密層32は、前記ペースト状物となる粉体の平均粒径が小さく(例えば、0.3〜0.5μm程度)に形成されることによって、ガス拡散層26、固体電解質層27よりも緻密な構造をなし、これにより排気ガスが内部に侵入するのを遮断して抑える機能を有している。このため、基準電極30は、固体電解質層27と緻密層32によって完全に周囲が取囲まれ、外部の排気ガスから隔離した状態に保たれるものである。
【0049】
また、固体電解質層27および外側測定電極29についても、後述の開口部33の位置を除いて図2ないし図4に示す如く緻密層32で覆われるため、この緻密層32で覆われた部分では、排気ガスの侵入、接触が遮断される。これにより、排気ガス中の水素(分子量の小さい成分)等が固体電解質層27内に侵入、拡散するのを、緻密層32によって抑えることができるものである。
【0050】
33は緻密層32に設けられた開口部で、該開口部33は、図2ないし図4に示す如くヒータ部22の先端側寄りに位置する緻密層32の一部を、略四角形状に切取ることにより形成されている。そして、開口部33は、外側測定電極29を緻密層32から部分的に露出させ、外部の排気ガスが図3中の矢示B方向で後述の保護層34側から外側測定電極29に侵入、接触するのを許すものである。
【0051】
34は開口部33を外側から覆うように緻密層32の外周側に設けられた保護層で、該保護層34は、例えば空孔率が比較的高いアルミナ等の多孔質材料を用いて形成され、これらの粉体からなるペースト状物を緻密層32の外周側に曲面印刷することにより構成されるものである。
【0052】
そして、保護層34は、緻密層32の開口部33を介して外部に露出される外側測定電極29を外側から覆い、外側測定電極29等を外部のダスト等から保護する機能を有している。また、保護層34の周囲を流れる排気ガスの一部は、空孔率の高い保護層34を透過し、開口部33の位置から外側測定電極29側に向けて図3中の矢示B方向に侵入するものである。
【0053】
35は内側電極28の電極部28A,28Bに接続された仮想グランドで、該仮想グランド35は、例えば1.5V(ボルト)程度の基準電位におかれるものである。
【0054】
36は直流電圧を印加する電圧印加手段としての直流電源で、該直流電源36は、図3に示す如く調整抵抗R0 を介して基準電極30に接続されている。そして、直流電源36は、例えば5〜7V程度の予め決められた直流電圧V0 (疑似参照極用のポンピング電圧V0 )を、調整抵抗R0 (例えば、500kΩ)を介して基準電極30に印加するものである。
【0055】
37は排気ガス中の酸素濃度に対応した信号を出力する出力端子で、該出力端子37は、後述の数1式による出力電圧Vs を酸素濃度の検出信号として、図6に示す特性線の如く出力するものである。
【0056】
【数1】
Vs =E+(Ri ×I0 )
【0057】
この場合、空燃比検出素子21の固体電解質層27は、ネルンストセル31側に図8に示す如く内部抵抗をRi を有し、固体電解質層27を挟んだ幅狭電極部28Bと基準電極30との間には、排気ガス中の酸素濃度に対応した起電力Eが発生する。
【0058】
そして、これらの電極部28B,基準電極30間に直流電源36から流込み電流としてのポンピング電流I0 が供給されるときには、出力端子37から酸素濃度の検出信号が出力電圧Vs として、図6に示す特性線の如く出力されるものである。
【0059】
38は比較用電圧VR を設定する比較電源部で、該比較電源部38は、理論空燃比(A/F=14.7、またはλ=1)に相当する比較用電圧VR を後述の差動増幅器39に出力するものである。
【0060】
39は検出端子40,41間で空燃比信号を出力させるための差動増幅器で、該差動増幅器39は、図3に示すように非反転入力端子が比較用電圧VR の比較電源部38に接続され、反転入力端子が出力電圧Vs の出力端子37(空燃比検出素子21の基準電極30)側に接続されている。
【0061】
また、差動増幅器39の出力端子は、外側測定電極29に検出抵抗Rp を介して接続され、この検出抵抗Rp の両端に接続された空燃比の検出端子40,41間には、空燃比信号としてのポンプ電流(拡散限界電流)を検出するための検出器(図示せず)等が設けられるものである。
【0062】
そして、差動増幅器39は、理論空燃比相当の比較用電圧VR と出力電圧Vs とを比較し、その比較結果に応じた信号をポンプ電圧Vp として検出端子40,41側に出力し、このときに内側電極28と外側測定電極29との間を空燃比信号となるポンプ電流Ip が流れる。そして、このポンプ電流Ip は、例えば図7に示す後述の特性線46のように空燃比λに応じて変化するものである。
【0063】
42はケーシング1の外部に設けられるヒータ電源で、該ヒータ電源42は、図3に示すようにリード線12等を介してヒータパターン24に接続されるものである。そして、ヒータ電源42は、ヒータ部22のヒータパターン24に電圧を印加することにより、例えば720〜800℃前,後の温度に空燃比検出素子21(ヒータ部22)を発熱させる。
【0064】
本実施の形態による空燃比センサは上述の如き構成を有するもので、次に空燃比検出素子21の製造方法について図2ないし図4を参照して説明する。
【0065】
まず、ヒータ部22を製造するときには、図4に示すようにアルミナ等のセラミックス材料からヒータコア23を円形ロッドとして成形し、この状態でヒータコア23を仮焼成する。
【0066】
次に、パターン印刷工程では、チャック等の支持軸をヒータコア23の両端側に係合させ、ヒータコア23を回転させつつ、例えば白金等の発熱性導体材料からなるヒータパターン24をヒータコア23の外周面に曲面印刷する。また、ヒータパターン24の各リード部24Aをヒータコア23の基端側に向けて伸長するように印刷することにより一体形成する。
【0067】
次に、ヒータ被覆層25の形成工程では、ヒータパターン24を径方向外側から覆うようにして、例えばアルミナ等からなるペースト状物を曲面印刷してヒータ被覆層25を形成する。これによって、ヒータコア23、ヒータパターン24およびヒータ被覆層25からなるヒータ部22を形成する。
【0068】
次に、ガス拡散層26の形成工程では、前述したアルミナの粉体等からなるペースト状物を、ヒータ被覆層25の外周面に塗布するように曲面印刷してガス拡散層26を形成する。
【0069】
そして、次なる内側電極28の形成工程では、前述した導電性ペーストをヒータ被覆層25の外周面にガス拡散層26の上側から重合わせるように曲面印刷して内側電極28の幅広電極部28A、幅狭電極部28Bおよびリード部28Cを形成する。また、内側電極28のリード部28Cは、ヒータ被覆層25の基端側まで伸長させるように印刷により形成する。
【0070】
また、次なる固体電解質層27の形成工程では、例えばジルコニアとイットリアからなるペースト状物を、ヒータ被覆層25の外周面に塗布するように曲面印刷して酸素イオン伝導性の固体電解質層27を形成し、この固体電解質層27によって内側電極28をガス拡散層26との間で覆うようにする。
【0071】
そして、次なる外側測定電極29、基準電極30の形成工程では、固体電解質層27の外周面に白金等からなる導電性ペーストを曲面印刷することにより、固体電解質層27の外側に外側測定電極29、基準電極30を形成する。また、これらの電極29,30のリード部29A,30Aを内側電極28のリード部28Cから離した状態でヒータ被覆層25の基端側まで伸長させるように印刷により形成する。
【0072】
次に、緻密層32の形成工程では、固体電解質層27の外周側およびヒータ被覆層25の外周側に、例えばアルミナと酸化珪素からなるペースト状物を曲面印刷することにより緻密層32を形成する。そして、緻密層32には、外側測定電極29と対応する位置に開口部33を形成しておくようにする。
【0073】
また、これに続く保護層34の形成工程では、図2ないし図4に示す外側測定電極29を外側から覆うように緻密層32の外周側に、例えばアルミナ等からなるペースト状物を曲面印刷することにより保護層34を形成する。
【0074】
そして、次なる焼成工程では、前述の如く形成したヒータコア23、ヒータパターン24、ヒータ被覆層25、ガス拡散層26、固体電解質層27、電極28,29,30、緻密層32および保護層34からなる空燃比検出素子21の成形品を、例えば1400〜1500℃程度の高温度下で約2時間にわたり同時焼成してこれらを一体的に焼結させる。
【0075】
かくして、前述した各工程により空燃比検出素子21を製造した後、該検出素子21を図1に示すようにケーシング1内に収納し、各リード部24A,28C,29A,30Aをそれぞれのコンタクトプレート13,14にばね性をもって当接させ、これらを電気的に接続することによって当該空燃比センサを完成させる。
【0076】
次に、当該空燃比センサによる酸素濃度、空燃比の検出動作について説明するに、まず、当該空燃比センサのケーシング1は、ホルダ2のおねじ部2Aを介して車両の排気管等に螺着され、空燃比検出素子21の先端側を排気管内へと突出させた状態で固定される。
【0077】
そして、エンジンの作動により排気管内を流れる排気ガスが空燃比検出素子21の周囲にプロテクタ15を介して導入されると、この排気ガスの一部が保護層34および緻密層32の開口部33を介して外側測定電極29の表面に達すると共に、ガス拡散層26を通じて内側電極28の電極部28A,28Bの表面にも導かれる。
【0078】
また、この状態でヒータ電源42からヒータパターン24に給電を行い、ヒータ部22により空燃比検出素子21を720〜800℃程度に加熱すると、固体電解質層27が活性化される。そして、固体電解質層27を挟んで対向する内側電極28の幅狭電極部28Bと基準電極30との間には、直流電源36から電圧が印加され、幅広電極部28Aと外側測定電極29との間には、差動増幅器39を介して電圧が印加される。
【0079】
これにより、幅狭電極部28B、基準電極30間と、幅広電極部28A、外側測定電極29間とには、後述の化1から化6の反応式により、排気ガス中の酸素濃度、可燃性ガス成分濃度に基づいた出力電圧Vs ,ポンプ電圧Vp がそれぞれの空燃比λに対応して発生し、このときのポンプ電流Ip (拡散限界電流)が検出端子40,41間の検出信号として出力されるものである。
【0080】
即ち、エンジンの空燃比が理論空燃比(λ=1)よりも大きくなるリーン空燃比のときには、エンジンの燃焼室内で希薄混合気が形成され、この希薄混合気により空燃比検出素子21(例えば、保護層34)の周囲を流れる排気ガス中に酸素が燃焼されることなく残っている。そして、この排気ガス中の酸素は、図3中の矢示A方向でガス拡散層26を通じて電極部28A,28Bへと供給される。
【0081】
このため、ネルンストセル31を構成する内側電極28の幅狭電極部28Bと基準電極30との間では、直流電源36からの電圧印加により、例えば幅狭電極部28Bにおいて下記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中に残留した酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0082】
【化1】
2 +4e → 2O2-
但し、O2 :酸素分子
e :電子
2-:酸素イオン
【0083】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して幅狭電極部28Bから基準電極30に向けて輸送される。このため、ネルンストセル31の基準電極30においては、下記の化2による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときに酸素イオンが酸素と電子とに分解される。
【0084】
【化2】
2O2- → O2 +4e
【0085】
これにより、基準電極30内には、例えば内部の空孔(図示せず)等に酸素が吸入され、基準電極30内には相対的に高い酸素分圧が生じる。しかし、リーン空燃比の状態では、ガス拡散層26を通じて内側電極28の幅狭電極部28Bに酸素が供給され続けるので、幅狭電極部28B側も高い酸素分圧状態におかれて幅狭電極部28Bと基準電極30との間の酸素分圧差は小さい状態となる。
【0086】
このため、両者の酸素分圧差等に基づいてネルンストセル31(固体電解質層27)に発生する前記数1式の起電力Eは小さく抑えられ、基準電極30の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、図6に示す特性線の如く排気ガス中の酸素濃度に対応して理論空燃比状態(λ=1)よりも低い電圧値をとることになる。
【0087】
一方、エンジンの空燃比が理論空燃比よりも小さくなるリッチ空燃比のときには、燃焼室内での過濃混合気により空燃比検出素子21の保護層34等の周囲を流れる排気ガス中に酸素は残らず、例えば一酸化炭素(CO)、水素(H2 )等の可燃性ガス成分が燃焼されることなく残っている。
【0088】
これにより、ガス拡散層26を通じて電極部28A,28Bに供給される排気ガス中には、酸素が存在しない状態となり、例えば幅狭電極部28B側の酸素分圧は急激に下がる。しかし、この状態でも基準電極30側には、下記の化3、化5の反応により前記空孔内に酸素が溜め込まれているので、幅狭電極部28Bと基準電極30との間の酸素分圧差は大きくなる。
【0089】
この結果、ネルンストセル31(固体電解質層27)に発生する前記数1式の起電力Eは、両者の酸素分圧差等に基づいて大きく増加し、基準電極30の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、排気ガス中の酸素濃度に対応して理論空燃比状態(λ=1)よりも高い電圧値をとることになる。
【0090】
かくして、出力端子37からの出力電圧Vs は、図6に示す特性線のように排気ガス中の酸素濃度に対応して大きく変化し、この出力電圧Vs に従って空燃比がリッチ状態であるか、リーン状態であるかを判別することができる。
【0091】
また、この場合の基準電極30は、図3に示す如く直流電源36に接続され、内側電極28から基準電極30に固体電解質層27を介して酸素イオンを輸送させるための直流電圧V0 (疑似参照極用のポンピング電圧V0 )が印加されている。
【0092】
そして、基準電極30は、固体電解質層27と緻密層32によって完全に周囲が取囲まれ、外部の排気ガスから隔離した状態に保たれるので、基準電極30の酸素分圧を空燃比変化に影響されることなく、高い酸素分圧状態に安定して保持することができ、基準電極30を擬似的に基準酸素濃度の電極(参照電極)として機能させることができる。
【0093】
これにより、出力端子37からの出力電圧Vs (基準電極30の電圧)を、図6に示す特性線のように、空燃比がリッチであるか、リーンであるかに従ってオン、オフ的に切換わる安定した出力特性とすることができ、排気ガス中の酸素濃度を高精度に検出することができる。
【0094】
また、基準電極30の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、図3に示す如く差動増幅器39に出力され、理論空燃比相当の比較用電圧VR と比較される。そして、空燃比がリッチ状態のときには出力電圧Vs が高い電圧値となり、理論空燃比相当の比較用電圧VR よりも高い電圧になる。
【0095】
このため、差動増幅器39の出力端子からは、リッチ空燃比のときに電極部28A,28B側の仮想グランド35(例えば,1.5V)よりも低い電圧値(例えば、1.0V)のポンプ電圧Vp が出力される。
【0096】
一方、空燃比がリーン状態のときには出力電圧Vs が、理論空燃比相当の比較用電圧VR よりも低い電圧になるため、差動増幅器39の出力端子からは、電極部28A,28B側の仮想グランド35(例えば,1.5V)よりも高い電圧値(例えば、2.0V)のポンプ電圧Vp が出力される。
【0097】
このように、差動増幅器39からは、空燃比がリッチであるか、リーンであるかによって、電圧値が大きく増,減するポンプ電圧Vp を出力でき、このポンプ電圧Vp は、電極部28A,28B側の仮想グランド35に対して低い電圧と高い電圧値とに切換わる特性となる。
【0098】
この結果、例えば内側電極28の幅広電極部28Aと外側測定電極29との間を固体電解質層27を介して流れるポンプ電流Ip の方向を、リッチ空燃比かリーン空燃比かによって切換えることができ、このときのポンプ電流Ip を空燃比信号として図3中の検出端子40,41等から取出すことができる。
【0099】
そして、リッチ空燃比の状態では、外側測定電極29が内側電極28よりも低い電位となるため、カソード側の外側測定電極29において下記の化3による電気化学的な接触分解反応が行われ、例えば排気ガス中に残留した二酸化炭素に電子が付与されて酸素イオンと一酸化炭素が発生する。
【0100】
【化3】
CO2 +2e → O2- +CO
但し、CO2 :二酸化炭素分子
e :電子
2-:酸素イオン
CO:一酸化炭素分子
【0101】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して外側測定電極29から内側電極28の幅広電極部28Aに向け輸送される。また、アノード側となる内側電極28の幅広電極部28Aにおいては、下記の化4による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層26を透過して内側電極28に導かれる排気ガス中の一酸化炭素(CO)が、このときの酸素イオンと結合して二酸化炭素と電子とに分解される。
【0102】
【化4】
CO+O2- → CO2 +2e
【0103】
なお、排気ガス中の可燃性ガス成分が水素(H2 )の場合には、外側測定電極29において、下記の化5による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中に残留した水分子に電子が付与されて酸素イオンと水素が発生する。
【0104】
【化5】
2 O+2e → O2- +H2
但し、H2 O:水分子
e :電子
2-:酸素イオン
2 :水素分子
【0105】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して外側測定電極29から内側電極28の幅広電極部28Aに向け輸送される。また、この幅広電極部28A側においては、下記の化6による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中の水素(H2 )がこのときの酸素イオンと結合して水分子と電子とに分解されるものである。
【0106】
【化6】
2 +O2- → H2 O+2e
【0107】
このように、リッチ空燃比の状態では外側測定電極29から幅広電極部28Aに向けて酸素イオンを輸送することにより、内側電極28(電極部28A,28B)と基準電極30との間の酸素分圧差を縮小させるように、換言すれば、基準電極30の電圧(出力電圧Vs )によるリッチ・リーン判定が、リッチからリーンに反転するように制御される。
【0108】
一方、リーン空燃比の状態では、外側測定電極29が内側電極28よりも高い電位となるため、カソード側となる内側電極28の幅広電極部28Aにおいて、上記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層26を透過して内側電極28の幅広電極部28Aに導かれる排気ガス中の酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0109】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して内側電極28の幅広電極部28Aから外側測定電極29に向け輸送される。このため、外側測定電極29においては、上記の化2による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときに酸素イオンが酸素と電子とに分解される。
【0110】
このようにリーン空燃比のときには、内側電極28の幅広電極部28Aから外側測定電極29に向けて酸素イオンを輸送することにより、内側電極28(電極部28A,28B)と基準電極30との間の酸素分圧差を増大させるように、換言すれば、基準電極30の電圧(出力電圧Vs )によるリッチ・リーン判定が、リーンからリッチに反転するように制御される。
【0111】
この結果、内側電極28と基準電極30との間を流れる拡散限界電流としてのポンプ電流Ip は、空燃比がリッチかリーンかによって流れ方向が切換わり、理論空燃比(λ=1)を基準としてリニアに変化するようになる。そして、このポンプ電流Ip を、図3中に示す検出抵抗Rp を挟んだ検出端子40,41間の電圧として検出し、これを図7に示す特性線の如く空燃比の検出信号として取出すことができる。
【0112】
ところで、このような空燃比センサにあっては、ガス拡散層26と固体電解質層27との間に設ける内側電極28を、図9に示す比較例のように単一の電極部43Aとリード部43Bとからなる内側電極43として構成した場合に、ネルンストセル31′(図3に示すネルンストセル31に相当)の内部抵抗Ri が下記の如く大きくなって、酸素濃度の出力感度幅が悪くなる傾向がある。
【0113】
また、排気ガス中の空燃比が、図7に示す特性線44の如く時間T1 〜T2 間で理論空燃比(λ=1)近傍にあるときには、ガス拡散層を通って電極に達する排気ガスの反応ガス種が少ないと、空燃比の検出信号となるポンプ電流(拡散限界電流)が、図7中に示す特性線45の如く振動してハンチングを起こすことがある。
【0114】
そこで、本実施の形態では、ガス拡散層26と固体電解質層27との間に設ける内側電極28を、図3ないし図5に示すように、その長さ方向で寸法tの間隔をもって互いに離間した幅広電極部28A,幅狭電極部28Bと、該幅広電極部28A,幅狭電極部28Bを互いに接続して導通させ、検出素子21の基端側に向けて細長く延びたリード部28Cとにより構成している。
【0115】
そして、幅広電極部28A,幅狭電極部28Bの電極幅(図5中の寸法W1 ,W2 )を、外側測定電極29,基準電極30の電極幅にほぼ等しく形成すると共に、固体電解質層27を挟んで幅広電極部28Aを外側測定電極29と対向配置し、幅狭電極部28Bを基準電極30と対向配置する構成としている。
【0116】
これにより、図3に示すネルンストセル31の内部抵抗Ri を下記の表1にも示す如く、例えば70Ω程度まで引下げ得ることが確認された。このため、出力端子37から図6に示す特性線の如く酸素濃度の検出信号として出力する出力電圧Vs の出力感度幅を向上できるものである。
【0117】
この場合、ネルンストセル31と直流電源36等との等価回路は、図8に示す電気回路で表され、直流電源36の電圧V0 (ポンピング電圧V0 )は、出力電圧Vs 、ポンピング電流I0 、調整抵抗R0 に対して下記の数2式による関係となっている。
【0118】
【数2】
V0 =Vs +(R0 ×I0 )
【0119】
そして、前述した数1式を数2式に代入すると、ポンピング電流I0 は、下記の数3式で表されるものである。
【0120】
【数3】
I0 =(V0 −E)/(R0 +Ri )
【0121】
また、この数3式によるポンピング電流I0 を前述した数1式に代入すると、出力電圧Vs は、下記の数4式で表されるものである。
【0122】
【数4】
Figure 0004015569
【0123】
そして、数4式の第1項で起電力Eにかかる分母の成分{1+(Ri /R0 )}は、ネルンストセル31の内部抵抗Ri が下がると、これに伴って小さくなるので、出力電圧Vs の感度幅が向上するものである。
【0124】
このように本実施の形態は、図3に示す如く幅広電極部28Aと幅狭電極部28Bとを有した内側電極28を採用することにより、ネルンストセル31の内部抵抗Ri を表1の如く、例えば70Ω(0.07kΩ)程度まで引下げることができ、出力端子37から酸素濃度の検出信号として出力する出力電圧Vs の出力感度幅を向上することができる。
【0125】
これに対し、図9に示す内側電極43を用いた比較例の場合には、例えば電極部43Aを基準電極30に近付けるように、固体電解質27の内周側で内側電極43の配置位置を矢印のD方向にずらし、そのずらし量dを下記の表1の如く、d=0.4mm,d=0.15mm,d=0mmと小さくしても、ネルンストセル31′の内部抵抗Ri は、それぞれ20kΩ,7kΩ,1kΩとなる。
【0126】
また、ずらし量dを、例えばd=−0.2mmとし、電極部43Aを基準電極30に対し0.2mm程度だけ径方向で対向(オーバラップ)させた場合でも、ネルンストセル31′の内部抵抗Ri は0.3kΩとなり、内側電極28を用いた本実施の形態のように、ネルンストセル31の内部抵抗Ri を70Ω(0.07kΩ)程度まで下げることは難しいものである。
【0127】
【表1】
Figure 0004015569
【0128】
また、本実施の形態にあっては、固体電解質層27を挟んで内側電極28の幅広電極部28Aを外側測定電極29と対向配置し、幅狭電極部28Bを基準電極30と対向配置する構成としているので、比較例の如く内側電極43をずらして配置する必要がなくなる上に、内側電極28の幅広電極部28Aを図3に示す如くガス拡散層26の端面26Aに近い位置に配置することができる。
【0129】
このため、図3中の矢示A方向でガス拡散層26内を拡散してくる排気ガスのガス拡散、即ち幅広電極部28Aの電極反応点(電極28を構成する白金、固体電解質層27を構成するYSZおよびガスの3相界面)へのガス拡散を速めることができ、空燃比の検出信号となるポンプ電流(拡散限界電流)を、図7中に示す特性線46の如く出力することがある。
【0130】
そして、この場合には、排気ガス中の空燃比が図7に示す時間T1 〜T2 間で理論空燃比(λ=1)近傍にあるときに、ガス拡散層26を通って電極に達する排気ガスの反応ガス種が少なくなったとしても、空燃比の検出信号となるポンプ電流(拡散限界電流)を図7中の特性線46の如く、ほぼ零の値に保つことができ、従来技術(比較例を含む)による特性線45の如くポンプ電流が振動してハンチングを起こすのを抑えることができる。
【0131】
また、固体電解質層27の外側に設けた基準電極30を緻密層32で覆っているため、内側電極28の幅狭電極部28Bと基準電極30との間で固体電解質層27を挟んだネルンストセル31に、排気ガス中の酸素濃度に対応した起電力Eが発生するときに、幅狭電極部28Bから基準電極30に向け固体電解質層27を介して輸送される酸素を、緻密層32で覆われた基準電極30の周囲に溜めることができ、当該基準電極30を擬似的に基準酸素濃度の電極(参照電極)として、酸素濃度の検出精度を向上することができる。
【0132】
そして、排気ガス中に可燃性ガス(水素ガス)等が多く存在するリッチ雰囲気でも、このときの水素が固体電解質層27内に侵入して拡散するのを、緻密層32によって抑えることができ、空燃比の検出信号となるポンプ電流を図7中の特性線46の如く、従来技術(特性線45)に比較してよりシャープな特性として検出することができる。
【0133】
また、固体電解質層27、外側測定電極29および基準電極30を外側から覆う緻密層32には、予め決められた開口面積を有する略四角形の開口部33を設け、該開口部33により外部の排気ガスが図3中の矢示B方向で外側測定電極29に接触、侵入するのを許す構成としている。
【0134】
そして、ガス拡散層26内には先端側の端面26A側から矢示A方向に排気ガスを導入し、これを内側電極28の幅広電極部28Aと幅狭電極部28Bとに向けてガス拡散させる構成としている。
【0135】
これにより、排気ガスが図3中の矢示A方向でガス拡散層26を通って内側電極28の電極部28A,28Bに達するまでのガス拡散距離をほぼ一定に保つことが可能となり、このときのガス拡散抵抗にバラツキが発生するのを良好に抑えることができる。
【0136】
この結果、内側電極28と外側測定電極29との間を流れるポンプ電流Ip を安定させることができ、図7中に特性線45で表される従来技術に比較して、図7中の特性線46の如くポンプ電流Ip を、排気ガスのリーン雰囲気(例えば、図7中の時間T1 まで)、リッチ雰囲気(時間T2 以降)のいずれでも、例えば±1mA(ミリアンペア)程度の大きな電流値として取り出すことができる。
【0137】
従って、本実施の形態によれば、空燃比検出素子21のネルンストセル31側で内部抵抗Ri を低減でき、酸素濃度の出力感度幅を向上することができる。また、図7に示す特性線46の如く理論空燃比(λ=1)の近傍でもポンプ電流の特性を安定させ、空燃比の検出精度を高めることができる。
【0138】
また、本実施の形態にあっては、小径のロッド状をなすヒータコア23の外周面にヒータパターン24を形成し、該ヒータパターン24を外側から覆うように前記ヒータコア23の外周側に絶縁性のヒータ被覆層25を設けることによってヒータ部22を細長いロッド状に形成する構成としている。
【0139】
そして、このようなヒータ部22の外周側には、ガス拡散層26、固体電解質層27、内側電極28の電極部28A,28B、外側測定電極29、基準電極30、緻密層32および保護層34等を曲面印刷等の手段を用いて形成する構成としている。
【0140】
このため、全体が円形のロッド状をなす空燃比検出素子21を製造することができ、プレート型の空燃比検出素子に比較して環状の電極28,29,30に十分な電極面積を確保でき、内部抵抗を低減できると共に、空燃比検出素子21の外径寸法、容積等を確実に小さくすることができる。
【0141】
また、外側にエッジ部が形成されるプレート型の素子に比較して、空燃比検出素子21の外形状をエッジ部がない、円形のロッド状に成形することができるので、空燃比検出素子21の熱応力等を低減することが可能となり、例えば固体電解質層27に割れ等が発生するのを抑えることができる。
【0142】
また、ヒータ部22の外周側をガス拡散層26、固体電解質層27および緻密層32等で覆うことにより、ヒータ部22が直接外気と接触するのを抑えて外気温による影響を低減することができ、ヒータ部22の伝熱面積を大きくして該ヒータ部22からの熱を固体電解質層27等に効率的に伝えることができる。
【0143】
これにより、ヒータ部22の昇温時間を確実に短くすることができ、固体電解質層27の活性時間を短くできると共に、エンジンの始動時でも排気ガス中の酸素濃度等を早期に検出して、燃料噴射量のフィードバック制御を即座に行うことが可能になる。また、当該空燃比センサの取付自由度を大きくすることができ、ヒータ部22の消費電力も低減できる。
【0144】
一方、空燃比検出素子21の内部に基準となる大気室等を特別に形成して大気を導入する必要がないので、当該空燃比検出素子21の構造を簡略化することができ、製造時の作業性を向上することができる。また、内側電極28の電極部28A,28Bと外側測定電極29,基準電極30との間で固体電解質層27を挟むことにより、一層の固体電解質層27を用いるだけで所謂ポンプセル,ネルンストセル31等を構成できるので、空燃比検出素子21全体の外径寸法を小さくすることが可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0145】
次に、図10および図11は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ガス拡散層と固体電解質層との間に、ガス拡散層よりも大なる気孔率を有し第1の電極の各電極部を共に覆う多孔質空間層を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0146】
図中、51は本実施の形態で採用した空燃比検出装置としての空燃比検出素子で、該空燃比検出素子51は、第1の実施の形態で述べた空燃比検出素子21とほぼ同様に構成され、ヒータ部22、ガス拡散層52、固体電解質層27、内側電極28の電極部28A,28B、外側測定電極29、基準電極30、緻密層32、開口部33および保護層34等を有している。
【0147】
しかし、この場合の空燃比検出素子51は、ガス拡散層52と固体電解質層27との間に後述の多孔質空間層53を設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。また、ガス拡散層52は、第1の実施の形態によるガス拡散層26とほぼ同様に形成され、排気ガスの一部が先端側の端面52Aから矢示A方向(軸方向)へと内部に拡散するものである。
【0148】
53はガス拡散層52と固体電解質層27との間に設けた多孔質空間層で、該多孔質空間層53は、ガス拡散層52(例えば、気孔率が10〜45体積%)よりも大なる気孔率をもった多孔質セラミックス材料を用いて形成され、固体電解質27との間で内側電極28の電極部28A,28Bを共に囲繞して覆う構成となっている。
【0149】
即ち、多孔質空間層53は、ガス拡散層52の外周側に前記多孔質セラミックス材料をからなるペースト状物を、曲面印刷等の手段を用いて厚膜印刷することにより環状に形成され、第1の実施の形態とほぼ同様に各層の印刷後に焼成することによって構成されるものである。そして、多孔質空間層53は、ガス拡散層52よりも膜厚が薄く、かつ短い長さ(軸方向寸法)に形成されている。
【0150】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に本実施の形態では、ガス拡散層52と固体電解質層27との間に多孔質空間層53を設け、内側電極28の電極部28A,28Bを多孔質空間層53で径方向内側から覆う構成としている。
【0151】
これにより、内側電極28の電極部28A,28Bを多孔質空間層53で共に覆って、該電極部28A,28B間の酸素濃度を均等に保つことができる。そして、酸素ポンピング(ポンプ電流)による一方の電極部28A側での酸素濃度変化を他方の電極部28B側に遅れなく伝えることができ、ネルンストセル31による酸素濃度の検出感度を高めることができる。
【0152】
また、一方の電極部28Aにおける電極反応点(電極28を構成する白金、固体電解質層27を構成するYSZおよびガスの3相界面)へのガス拡散をより速くすることができ、図7に例示したポンプ電流Ip のハンチング抑制効果を一層高めることができる。
【0153】
しかも、内側電極28の電極部28A,28Bには、外部の排気ガスが矢示A方向にガス拡散層52の端面52A側から多孔質空間層53を通じて導かれるため、リッチ,リーン雰囲気のいずれでもシャープな限界電流曲線(ポンプ電流の特性)を、図11中に実線で示す特性線54の如く得ることができる。
【0154】
この場合、図11中の特性線54は素子温度を750℃とした状態で検出したもので、λ=1.7のリーン雰囲気ではポンプ電流Ip を、例えば5mA(ミリアンペア)程度の電流値で出力でき、λ=0.8のリッチ雰囲気ではポンプ電流Ip を、例えば−6mA程度の電流値で出力できることが確認された。
【0155】
これに対し、従来技術の場合は同様の条件下でも、図11中に一点鎖線で示す特性線55のようにシャープな限界電流曲線を得らず、リッチ,リーン雰囲気のいずれでもポンプ電流Ip の電流値が低く値に留まっている。
【0156】
次に、図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ガス拡散層を大なる気孔率で形成し、ヒータ部には、該ガス拡散層よりも小なる気孔率を有し固体電解質層と共にガス拡散層を外側から覆うガス拡散制御層を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0157】
図中、61は本実施の形態で採用した空燃比検出装置としての空燃比検出素子で、該空燃比検出素子61は、第1の実施の形態で述べた空燃比検出素子21とほぼ同様に構成され、ヒータ部22、ガス拡散層62、固体電解質層27、内側電極28の電極部28A,28B、外側測定電極29、基準電極30、後述の緻密層65および保護層66等を有している。
【0158】
しかし、この場合の空燃比検出素子61は、ガス拡散層62を固体電解質層27と共に外側から覆う後述のガス拡散制御層63を設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0159】
また、ガス拡散層62は、第1の実施の形態によるガス拡散層26とほぼ同様に形成されている。しかし、この場合のガス拡散層62は、45体積%以上の気孔率をもって形成され、先端側の端面62Aは後述のガス拡散制御層63で完全に覆われている。
【0160】
このため、ガス拡散層62内には、ガス拡散制御層63を通過した排気ガスのみが端面62A側から矢示A方向(軸方向)に導かれ、ガス拡散層62内を内側電極28に向けて拡散する。そして、このときの拡散速度は、ガス拡散層62の気孔率分だけ速くなるものである。
【0161】
63は固体電解質層27の先端側に位置してヒータ部22の外周側に設けられたガス拡散制御層で、該ガス拡散制御層63は、ガス拡散層62よりも小さい気孔率(例えば、気孔率が10体積%程度)の多孔質セラミックス材料を用いて形成され、固体電解質27の先端側およびガス拡散層62の端面62A等を外側から覆う構成となっている。
【0162】
即ち、ガス拡散制御層63は、前記多孔質セラミックス材料をからなるペースト状物を、ヒータ部22(ヒータ被覆層25)、固体電解質層27およびガス拡散層62の外側に曲面印刷等の手段を用いて厚膜印刷することにより環状に形成され、その先端(一端)側はガス拡散層62の端面62Aを完全に覆う位置まで延びている。
【0163】
また、ガス拡散制御層63の他端側は、外側測定電極29を僅かに覆う位置まで延び、後述の緻密層65との間には、第1の実施の形態で述べた開口部33とほぼ対応する幅寸法で周方向に延びる間隙64が形成されている。そして、この間隙64は、外側測定電極29を後述の保護層66を介して外部の排気ガスに矢示B方向で接触させるものである。
【0164】
65は本実施の形態で採用した緻密層で、該緻密層65は、第1の実施の形態で述べた緻密層32とほぼ同様に形成され、外部の排気ガスが内部に侵入するのを防ぐものである。しかし、この緻密層65は、先端側が固体電解質層27の外周側で外側測定電極29を僅かに覆う位置までしか形成されておらず、固体電解質層27の外周側ではガス拡散制御層63と間隙64を介して軸方向で対向しているものである。
【0165】
66はガス拡散制御層63と緻密層65との間隙64を覆うように固体電解質層27の外周側に設けられた保護層で、該保護層66は、第1の実施の形態で述べた保護層34とほぼ同様に形成され、外部の排気ガスが間隙64を介して外側測定電極29に矢示B方向で接触、侵入するのを許すものである。
【0166】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に本実施の形態では、ガス拡散層62を45体積%以上の気孔率をもって形成し、ヒータ部22には、ガス拡散層62よりも小なる気孔率を有し、固体電解質層27と共にガス拡散層62を外側から覆うガス拡散制御層63を設ける構成としている。
【0167】
これにより、内側電極28の電極部28A,28Bには、ガス拡散制御層63を通過した排気ガスのみがガス拡散層62を通じて導かれるので、ガス拡散層62の気孔率を45体積%以上に大きくしてガス拡散速度を速くすることができ、請求項2の発明とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0168】
次に、上記各実施の形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0169】
(1).請求項1,2または3に記載の空燃比検出装置において、前記第1の一方の電極部と第2の電極とは、ガス拡散層内を拡散してくる被測定ガスの流れに対し前記他方の電極部と第3の電極よりも上流側となる位置に配置してなる空燃比検出装置。
【0170】
これにより、固体電解質層を挟む各電極間に電圧を印加しているときに、ガス拡散層内を拡散してくる被測定ガス中の水素、一酸化炭素等からなる可燃性ガスを、上流側に位置する一方の電極部側で支配的に酸化することができ、下流側となる他方の電極部側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【0171】
(2).請求項1,2または3に記載の空燃比検出装置において、前記第1の一方の電極部と第2の電極とは、前記他方の電極部と第3の電極よりも大なる電極面積をもって形成してなる空燃比検出装置。
【0172】
これによっても、固体電解質層を挟む各電極間に電圧を印加しているときに、ガス拡散層内を拡散してくる被測定ガス中の水素、一酸化炭素等からなる可燃性ガスを、電極面積の大きい一方の電極部と第2の電極側で支配的に酸化することができ、電極面積が小さい他方の電極部、第3の電極側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【0173】
(3).請求項1,2または3に記載の空燃比検出装置において、前記ヒータ部を細長いロッド状に形成し、該ヒータ部の外周側には、前記ガス拡散層、第1の電極、固体電解質層、第2,第3の電極および緻密層をそれぞれ曲面印刷して積層化する構成としてなる空燃比検出装置。
【0174】
このように構成することにより、空燃比検出装置全体を円形のロッド状をなす構造とすることができ、取付時の方向や被測定ガスの流れ方向等に影響されることなく、被測定ガス中の酸素濃度、空燃比を安定した精度で検出することができる。また、第1の電極の各電極部と第2,第3の電極とは、固体電解質層を径方向で挟むように配置でき、それぞれの電極面積を大きくできると共に、電極間距離を小さくして電気抵抗を低減することができる。
【0175】
また、空燃比検出素子の内部に基準となる大気を導入する必要がないので、空燃比検出装置の構造を簡略化でき、製造時の作業性を向上することができる。さらに、心棒部となるヒータ部の外周側には、ガス拡散層、固体電解質層、第1,第2,第3の電極および緻密層等を形成することにより、ヒータ部を小径に形成した場合でも、固体電解質層に対するヒータ部の伝熱面積を大きくすることができ、該ヒータ部からの熱を固体電解質層等に効率的に伝熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による空燃比検出素子が設けられた空燃比センサを示す縦断面図である。
【図2】空燃比検出素子を図1中の矢示II−II方向からみた拡大断面図である。
【図3】空燃比検出素子を図2中の矢示 III−III 方向からみた断面図である。
【図4】ヒータコアの外周にヒータパターン、ヒータ被覆層、ガス拡散層、内側電極、固体電解質層、外側測定電極、基準電極、緻密層および保護層等を形成する工程を示す斜視図である。
【図5】図4中の内側電極を拡大して示す展開図である。
【図6】空燃比検出素子による酸素濃度の出力特性を示す特性線図である。
【図7】空燃比検出素子によるポンプ電流の出力特性を空燃比との関係で示す特性線図である。
【図8】空燃比検出素子のネルンストセルを直流電源に接続した等価回路を示す電気回路である。
【図9】比較例による内側電極の位置を基準電極に対してずらす場合の説明図である。
【図10】第2の実施の形態による空燃比検出素子を示す図3と同様位置での断面図である。
【図11】空燃比検出用のポンプ電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図12】第3の実施の形態による空燃比検出素子を示す図3と同様位置での断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
21,51,61 空燃比検出素子(空燃比検出装置)
22 ヒータ部
23 ヒータコア
24 ヒータパターン
25 ヒータ被覆層
26,52,62 ガス拡散層
27 固体電解質層
28 内側電極(第1の電極)
28A 幅広電極部(一方の電極部)
28B 幅狭電極部(他方の電極部)
29 外側測定電極(第2の電極)
30 基準電極(第3の電極)
32,65 緻密層
33 開口部
34,66 保護層
36 直流電源
37 出力端子
40,41 空燃比の検出端子
53 多孔質空間層
63 ガス拡散制御層
64 間隙

Claims (3)

  1. 外部からの通電によって発熱するヒータ部と、
    該ヒータ部に設けられ、被測定ガスが内部を拡散するガス拡散層と、
    該ガス拡散層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、
    該固体電解質層と前記ガス拡散層との間に設けられて互いに導通する2つの電極部を有し、該各電極部に前記ガス拡散層を通じて被測定ガスが導かれる第1の電極と、
    該第1の電極の各電極部のうち一方の電極部との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、外部から電圧を印加したときにポンプ電流が前記一方の電極部との間に流れる第2の電極と、
    前記第1の電極の各電極部のうち他方の電極部との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が前記他方の電極部との間に発生する第3の電極と、
    前記固体電解質層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、少なくとも該第3の電極を外側から覆うことによって被測定ガスが内部に侵入するのを抑える緻密層とを備え、
    前記ガス拡散層を通じて前記第1の電極に導かれる被測定ガスの空燃比を、前記第1の電極のうちの一方の電極部と前記第2の電極との間に流れる前記ポンプ電流により検出する構成してなる空燃比検出装置。
  2. 前記ガス拡散層と固体電解質層との間には、前記ガス拡散層よりも大なる気孔率を有し前記第1の電極の各電極部を共に覆う多孔質空間層を設ける構成としてなる請求項1に記載の空燃比検出装置。
  3. 前記ガス拡散層は45体積%以上の気孔率をもって形成し、前記ヒータ部には、該ガス拡散層よりも小なる気孔率を有し前記固体電解質層と共にガス拡散層を外側から覆うガス拡散制御層を設ける構成としてなる請求項1に記載の空燃比検出装置。
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