JP4015409B2 - 廃棄物燃焼炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止壁構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみなど廃棄物を焼却し減容化すると同時に、エネルギや有用資源を回収する廃棄物焼却炉では、近年プラスチックなど燃焼温度を高める成分が処理対象に増えている。また燃焼で発生するダイオキシン類など有害物質の生成抑制のため、燃焼温度を高く制御して運転する必要がある。これらの要因で、焼却炉の内部の構造において、従来使用してきた耐熱酸化性の炉壁材質では、種々の問題が発生している。
【0003】
図6に廃棄物焼却炉の例として、ストーカ式焼却炉41を示した。廃棄物45は投入ホッパーから供給され、ストーカ43上で一次空気46に接して燃焼、かつ熱分解する。さらに、気化した燃焼成分は二次燃焼部44で二次空気47に接して、さらに燃焼し、高温の燃焼排ガスは熱回収部49で放熱して外部に排出される。燃焼残渣(灰)は受槽48に落下し取り出される。ここで、42は炉壁であって、耐火・断熱材とそれを支持する構造材で構成されている。
【0004】
図5はそのストーカ式燃焼炉の炉壁を現した全体図である。31はホッパの一部、ここより廃棄物燃料が供給され、この部分の下部に備えられた、プッシャー32で内部へと送りこまれる。33はストーカ上で燃える、燃焼部である。44は前記した二次燃焼部で、34は未だ高温の灰が落下する灰取り出し部である。5は炉壁を構成する耐火材であって、図示していないが、実際は構造材で支持されて内側(火側)に貼られている。炉内側の温度によって、この耐火断熱材は変化するが、最も耐火性の高い材質はシリコンカーバイドのセラミックスレンガである。
【0005】
燃焼温度が1000度を超えると、燃焼で生成したクリンカ(灰分)が溶融して、この炉壁の表面に反応固着して、堆積する。この現象はクリンカの融点付近で最も顕著で、それ以上になると、むしろ、炉材自体の酸化減耗が激しくなる。これらの現象は堆積物の生長によって運転不能となる場合があり、耐火材の消耗が速まるなどの障害が生じた。さらに、運転停止して修繕するなど、稼動率の低下やメンテナンスコストが嵩むなどの不具合をもたらした。
【0006】
これらを改善するためクリンカが付着、生長しない鋳鋼製プレートを内張りした炉壁構造が採用され始めているが、これにおいても、炉の高温化など使用条件によって、プレートの変形、材質劣化、焼損あるいは支持構造破壊などが発生し、利用可能な温度条件を限定せざるを得ない状況にある。
【0007】
例えば、特開2000−199621などには、図7に示す如く、耐熱鋳鋼材で作製したリブ53付きプレート51を、中央部のボス52一点から延在するボルト55とナット56で外側支持構造材に固定する炉壁構造を開示している。内側プレート51と外側支持構造材57間には耐熱レンガ等耐熱・断熱材が入るので、スペーサ(パイプ)54が介在している。
【0008】
しかし、このような構造は、内側で強熱され、外側では放熱され、その温度勾配の激しい状況のなかで、ボス部若しくはリブ部からの放熱は平板部より大きいため板面内で著しい温度勾配が発生する。そのため、板面内で熱応力が発生し、内側で圧縮、外側で引っ張り応力が加わる。加えて高温による強度変化も加わり、プレートは、内側に激しく彎曲する。この現象は、発明者等の熱応力解析の結果によっても、裏づけられた。このような状態になった保護プレートはもはや保護の役目を果たすことができない状態であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、クリンカの付着、生長による運転障害の防止とメンテナンス低減を目的とする廃棄物燃焼炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造の提供を課題とする。さらに詳しくは、耐火断熱材に複数の耐食性耐熱鋳鋼板を内張りした炉壁であって、耐火断熱材に当接固定した状態における単位耐食性耐熱鋳鋼板の内張り面が加熱されたときの裏面側の熱分布がほぼ均一になるような構造にすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造は、耐火断熱材に、方形の単純な平板状にした複数の耐食性単位鋳鋼板を内張りした廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造であって、
前記複数の隣接する単位鋳鋼板同士を熱により発生する応力が周辺部に開放されるように隙間を持って内張りし、耐火断熱材に当接固定した状態における該単位鋳鋼板の周囲の対称位置に、隣接する単位鋳鋼板を前記耐火断熱材に当接固定し、炉内側に露出する部分が単位鋳鋼板と同一材質である複数の固定手段を有し、前記方形の単位鋳鋼板の方形辺上の複数の対称点においてテーパ状のザグリを形成し、該ザグリに挿設された複数の固定手段を介して前記耐火断熱材に当接固定したことを特徴とする。
【0011】
更に本発明の廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造は、前記単位鋳鋼板が方形であって、方形辺上の複数の対称点においてテーパ状のザグリを形成し、該ザグリに挿設された複数の固定手段を介して前記耐火断熱材に当接固定したことを特徴とする。
【0012】
更に本発明の廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造は、前記単位鋳鋼板が耐食性耐熱鋳鋼板及び前記固定手段の炉内側に露出する部分が単位鋳鋼板と同一材質の耐食性耐熱鋳鋼であり、前記耐火断熱材が無機質からなることを特徴とする。
【0013】
そもそも応力発生原因である熱分布をもたらす形状上の特徴を排除し、ボス・リブなどの突起放熱部を取り去り、単純な平板状とし、固定は複数の固定手段で耐食性耐熱鋳鋼板を通常耐火レンガ等である耐火断熱材に当接し、その周囲を支持固定する。これにより、板面内での温度分布はなくなり、固定手段から逃げる熱は周辺部の温度勾配をもたらすが、その発生応力は周辺部が開放されているので、周辺から逃げるため、面内への応力波及に至らない。
【0014】
該単位耐食性耐熱鋳鋼板の厚さの範囲はおよそ10mm〜50mm、好ましくは10mm〜30mmがよい。下限においては、固定手段を配設するザグリを板の隅に設ける関係上、さらにその部分がうすくなるので、強度維持上の問題からの制約であり、上限は単位耐食性耐熱鋳鋼板の重量が大きくなるので、施工上の問題からの制約である。なお、特に制限されるものではないが、単位耐食性耐熱鋳鋼板の重量は20kg程度が人力で施工する場合の限度である。
【0015】
なお、固定手段に用いるピン、ボルト、ネジなどの炉内側に露出する部分すなわち、ピン、ボルト、ネジの頭はライナ即ち該耐食性耐熱鋳鋼板と同一材質である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を例示的に説明する。但し、本実施の形態に記載される製品の寸法、形状、材質、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の廃棄物燃焼炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造の一例の断面図である。左側が炉内側、右側が外側で、本発明の単位耐食性耐熱鋳鋼板1が複数枚、耐火材5に内張り(当接・固定)された状態を示した。支持点は図示のように周辺部が固定手段であるピン2によって支持されている。ピン2は支持構造7に支持された断熱材6と耐火材5を貫通したパイプ(スペーサ)4を通って、支持構造7より左側に突出して延在し、ナット3と螺合して締められている。
【0019】
(実施例2)
図2は固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の辺上複数の点に設けた例を示した。板の大きさ、固定場所の状況に応じて、これらの手段を選択することができる。▲1▼が4角を固定した例、▲2▼が4辺を固定した例、▲3▼が2辺を固定した例である。
【0020】
(実施例3)
図3は固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の四隅とし、複数の板を固定手段に六角ボルト・ナットを用いて固定した例である。上部が概略の平面図、下部が概略の断面図である。ボルトの頭が収まるザグリを4隅に設けた耐食性耐熱鋳鋼板1を耐火材5+断熱材6に当接し、六角ボルト62とナット3により、パイプ4をスペーサとして支持構造7に固定した。
【0021】
(実施例4)
図4は固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の四隅とし、複数の板を固定手段に皿ボルト・ナットを用いて固定した例である。上部が概略の平面図、下部が概略の断面図である。ボルトの頭が収まるザグリを4隅に設けた耐食性耐熱鋳鋼板1を耐火材5+断熱材6に当接し、皿ボルト72とナット3により、パイプ4をスペーサとして支持構造7に固定した。
【0022】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明のこのような炉壁構造とすることにより、単位耐食性耐熱鋳鋼板は変形せずに、安定に耐火材を保護しているのでその材質としての、耐食耐熱性を発揮し、クリンカの付着を防止し、裏面の耐火材の酸化減耗を押さえることができる。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の廃棄物燃焼炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造の一例の断面図
【図2】 本発明の固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の辺上複数の点に設けた例の平面概略図
【図3】 本発明の固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の四隅とし、複数の板を固定手段に六角ボルト・ナットを用いて固定した例の平面概略図(上部)と断面概略図(下部)
【図4】 本発明の固定点を方形の単位耐食性耐熱鋳鋼板の四隅とし、複数の板を固定手段に皿ボルト・ナットを用いて固定した例の平面概略図(上部)と断面概略図(下部)
【図5】 ストーカ式燃焼炉の炉壁を現した概略図
【図6】 ストーカ式燃焼炉の該念図
【図7】 従来技術に開示されている耐熱鋳鋼材で作製したリブ及びボス付きプレートと支持構造を示す平面と断面の該略図
【符号の説明】
1 耐食性耐熱鋳鋼板
2 ピン
3 ナット
4 パイプ(スペーサ)
5 耐火材
6 断熱材
7 支持構造
31 ホッパ
32 プッシャー
33 ストーカ上燃焼部
34 灰取り出し部
41 ストーカ式焼却炉
42 炉壁
43 ストーカ
44 二次燃焼部
45 廃棄物
46 一次空気
47 二次空気
48 受槽
49 熱回収部
51 プレート
52 ボス
53 リブ
54 スペーサ(パイプ)
55 ボルト
56 ナット
57 支持構造材
62 六角ボルト
72 皿ボルト
Claims (2)
- 耐火断熱材に、方形の単純な平板状にした複数の耐食性単位鋳鋼板を内張りした廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造であって、
前記複数の隣接する単位鋳鋼板同士を熱により発生する応力が周辺部に開放されるように隙間を持って内張りし、耐火断熱材に当接固定した状態における該単位鋳鋼板の周囲の対称位置に、隣接する単位鋳鋼板を前記耐火断熱材に当接固定し、炉内側に露出する部分が単位鋳鋼板と同一材質である複数の固定手段を有し、前記方形の単位鋳鋼板の方形辺上の複数の対称点においてテーパ状のザグリを形成し、該ザグリに挿設された複数の固定手段を介して前記耐火断熱材に当接固定したことを特徴とする廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造。 - 前記単位鋳鋼板が耐食性耐熱鋳鋼板及び前記固定手段の炉内側に露出する部分が単位鋳鋼板と同一材質の耐食性耐熱鋳鋼であり、前記耐火断熱材が無機質からなることを特徴とする請求項1記載の廃棄物焼却炉におけるクリンカ付着防止炉壁構造。
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