JP4015286B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行時の安全性を向上させた空気入りタイヤ、とりわけ低内圧で不整地を走行するATV用タイヤとして好適なものに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
一般に、空気入りタイヤは、充填された内圧により、ビード部がリムに押圧され、これによりリムに固定される。したがって、タイヤは、内圧が低下するとリムとの嵌合力が低下し、例えばパンク時などでは、タイヤがリムから外れやすくなるという問題がある。
【0003】
また、主として非舗装路面、特に砂地や泥濘地を走行するATV用タイヤでは、路面とのグリップを上げるため、当初から通常のタイヤに比べてかなり低い内圧(例えば0.5kgf /cm2 以下)で使用される。そのため、急なハンドル操作を行ったときなど、図6に誇張して示すように、タイヤtに大きな横力が加わり、タイヤのビード部bがリムjのビード座cから外れるという問題もある。
【0004】
このようにしてビード部bがリムのビード座cから外れた場合、ビード部bとリムjとの間に隙間が生じ、タイヤtとリムjとで囲まれたタイヤ内腔eに充填されていた空気が一挙に外部へと洩れ出すために、走行不能の状態となったり、特に高速走行時には、操縦性を失うなどきわめて危険な状態となる。
【0005】
また、低内圧のATV用タイヤで砂地等を走行している際にコーナリングを行うと、タイヤに加わる横力により、ビード部bとリムフランジfとの間に隙間が生じ、その隙間に砂や石が噛み込むことがある。これらの砂や石は、走行中にリムフランジfやビード部bの表面を傷付ける他、ビード部bをリムから外れやすくさせる。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば特開昭62−128807号公報のように、ATV用タイヤのリムのビード座の形状を変えて、パンク等による内圧低下時にあっても、ビード部bを保持させる技術が提案されている。しかしながら、これらの技術はいずれも、特殊なリム形状を必要とするため、製造が困難なうえコストが増加するという不具合がある。
【0007】
また、例えば乗用車用タイヤについては、リムフランジのタイヤ半径方向外方にタイヤ軸方向に突出する突起を設け、タイヤに横力が加わったときに、この突起をリムフランジに接触させてタイヤの横剛性を増加させたり、リムフランジを保護する技術が提案されてもいるが、ビード部とリムフランジとの隙間から砂等の異物が入り込むことを十分に防ぐものではなかった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、タイヤの他の性能の低下や、タイヤ重量の著しい増加を伴うことなく、パンク時の急激な内圧低下や、ATV用タイヤといった低内圧走行時においてもビード部のリム外れや、異物の介在によるビード部若しくはリムフランジの損傷を有効に防止し、走行中の安全性を高めうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ビード部のタイヤ軸方向外側面を保持するフランジ主部の外端に円弧状でタイヤ軸方向外側にのびるフランジ円弧部を連設したリムフランジを有するリムに装着される空気入りタイヤであって、
前記ビード部に、リム組みにより前記フランジ円弧部のタイヤ半径方向の外側面に沿って少なくとも該フランジ円弧部の先端までのびる可撓性の突出部を設けるとともに、
この突出部は、タイヤ周方向に連続して設けられ、かつ前記フランジ円弧部の先端までのびる基部と、その基部に設けられタイヤ半径方向内側に湾曲する折返し部を有する小厚さのひだ状をなすことを特徴としている。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記突出部が、フランジ円弧部の外側面に密着被覆してのび、かつ前記折返し部はフランジ円弧部の先端で折れ曲がりフランジ円弧部の内側面まで延在することを特徴としている。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記突出部が、小厚さのひだ状に形成され、さらにその先端部には、前記基部に比して厚さが増大しリムフランジの前記フランジ円弧部の先端に係止しうる係止部を具えることを特徴とする。
【0012】
また請求項4記載の発明は、低内圧が充填されかつ不整地走行用である空気入りタイヤであることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤがリム組みされたタイヤとリムとの組立体を示しており、本例では例えば0.5kgf /cm2 以下の低内圧が充填されかつ不整地走行用のATV用タイヤ1とリムJとの組立体を例示している。
【0014】
ATV用タイヤ1は、本例ではトレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の周りで折り返されて係止される有機繊維コードからなるラジアル構造のカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6のタイヤ半径方向外側に配されたベルト層7とを具えたものを例示している。なおベルト層7を省略することもできる。
【0015】
またATV用タイヤ1が装着される前記リムJは、ウェル部11と、その軸方向両側に形成されかつタイヤのビード底が着座するビード座12、12と、このビード座12、12の軸方向外側に、タイヤ半径方向外向きにのびるリムフランジ13、13とを具えている。また前記リムフランジ13は、ほぼ直線状にのびビード部4のタイヤ軸方向外側面4aを保持するフランジ主部14と、このフランジ主部14の外端に連接され、円弧状でタイヤ軸方向外側にのびるフランジ円弧部15とを含む。
【0016】
そして、前記ビード部4に、リム組みにより前記フランジ円弧部15のタイヤ半径方向の外側面15aを覆うように該外側面15aに沿って少なくとも該フランジ円弧部の先端Tまでのびる可撓性の突出部9を設けたことを特徴の一つとしている。
【0017】
このような突出部9は、タイヤをリム組みした際、前記フランジ円弧部15の外側面15aと接触し、その摩擦力によって、ビード部4がリムフランジから離間するのを抑制できる。したがって、例えば低内圧が充填されるATV用タイヤのコーナリング中や、乗用車用タイヤのパンク時など、ビード部4とリムJとの嵌合力が低下したときでもリム外れを好適に防止し、走行時の安全性を向上しうる。なお、突出部9が、フランジ円弧部15の先端Tまでのびていない場合には、十分な摩擦力が得られず、リム外れ防止効果が低下する。ここで、フランジ円弧部15の先端Tとは、例えばフランジ円弧部15の先に形成された丸め部20(図2に示す)とし、好ましくはこの丸め部20の頂点とする。
【0018】
また突出部9は、リム組みにより前記フランジ円弧部15のタイヤ半径方向の外側面15aに沿って少なくとも該フランジ円弧部の先端Tまでのびるため、これらの間に隙間が形成される機会を減じることができる。従って、リムフランジ13とビード部4との間に異物が入り込むのも防止でき、ビード部4ないしリムフランジ13の傷付き等を抑制しうる。
【0019】
本実施形態において、前記突出部9は、リムJのビード座12ないしフランジ主部14と接するクリンチゴム17と同じゴム材から形成されており、例えばJISA硬度が65〜90度の耐摩耗性に優れたゴムを用いるのが好ましい。なお、突出部9をクリンチゴム17と異なるゴム材から形成することも勿論可能である。
【0020】
また図3にタイヤのリム組前の状態を示すように、突出部9のタイヤ軸方向最外側となる外端点A、A間のタイヤ軸方向の距離Waは、突出部9の先端9t、9t間のタイヤ軸方向の距離Wtよりも大に形成される。またタイヤ中心軸から突出部9の前記外端点Aまでの半径Raは、突出部9の先端9tの半径Rtよりも大に形成される。
【0021】
なお前記タイヤ軸方向の距離Wa、Wtや半径Ra、Rtなどは装着するリムに応じて適宜設定しうるが、好ましくはタイヤをリム組みして規格等で定まる標準的な使用内圧を充填したときに、突出部9がフランジ円弧部15の外側面15aに密着して被覆するように設定するのが好ましい。
【0022】
上述のような形状ないし可撓性を具える突出部9は、本例ではタイヤのリム組み時には、図2に一点鎖線で示すように、タイヤ半径方向外側に折り曲げたときに、該突出部9を折り曲げた状態のままで保持させうるものを例示している。この場合には、タイヤのリム組み性を何ら損なうことがない。そして、このような状態で、リム組みし、所定の内圧を充填した後、図1、2に示すように、前記突出部9をタイヤ半径方向内方に向けて折り戻し、例えばフランジ円弧部15に沿いながら該フランジ円弧部の外側面15aを密着して覆うことが可能になる。
【0023】
前記突出部9は、図2に拡大して示すように前記フランジ円弧部15の先端Tまでのびる基部9Aと、その基部9Aに設けられタイヤ半径方向内側に湾曲する折返し部9Bとを有する例えば10mm以下の小厚さのひだ状をなす。突出部9が、このような小厚さのひだ状をなすことによって、タイヤ重量の大幅な増加や製造上の不具合を招くことなく前記リム外れと異物の噛み混みをより効果的に防止しうる点で好ましい。
【0024】
また突出部9は、タイヤ周方向に連続して設ける。これにより、前記リム外れや異物の噛み込みなどをより一層防止しうる他、突出部9の曲げ剛性が適度に高められることによってフランジ円弧部15をより強固に被覆ないし押圧しうる。
【0025】
図4には、本発明の他の実施形態を例示している。
この例では、前記突出部9は、フランジ円弧部15の外側面15aに密着被覆してのび、かつ前記折返し部9Bはフランジ円弧部15の先端Tで折れ曲がり、フランジ円弧部15の内側面15bまで延在するものを例示している。このような突出部9は、フランジ円弧部15のタイヤ半径方向の外側面15a全部を覆い、かつその内側面15bの一部にまで密着することにより、さらにフランジ円弧部15との摩擦力を高め、前記リム外れと異物の噛み込みをより効果的に防止しうる。
【0026】
図5には本発明のさらに別の実施形態を示している。
本例では、突出部9は、小厚さのひだ状に形成され、さらにその先端部には、リムフランジ13の前記フランジ円弧部15の先端Tに係止しうる係止部19を具えたものを例示している。この係止部19は、本例では、前記基部9Aに比して厚さが増大しており、かつ断面がほぼ円形で構成されたものを示すが、矩形状や多角形状さらには鍵爪状など種々の形状を採用することができる。
【0027】
このような係止部19を有する突出部9は、例えばタイヤ周方向に連続して形成されることによって、突出部7の先端の曲げ剛性がより一層高まり、フランジ円弧部15にさらに強固に係合しうる点で好ましいものとなる。
【0028】
以上詳述したが、本発明に係る突出部9は、例えばタイヤの加硫成形にて形成できる他、加硫済のタイヤに接着ないし加硫により取り付けることもできる。また本発明のタイヤをリム組した後、接着剤等を用いて突出部9をフランジ円弧部15に貼り付けることも好ましく実施しうる。
【0029】
【実施例】
タイヤサイズがAT25×10−12の本発明に係るATV用タイヤを図1、2の仕様にて試作するとともに、内圧を0.25kgf /cm2 でリム組みして不整地走行車に装着し、1周1.5kmのオフロードコースを5周高速走行したところ、リム外れは全く生じず、ビード部とリムフランジとの間への異物の噛み込みも非常に少なかった。また比較の為に、本発明の突出部を具えていない従来タイヤについても同じテストを行ったところ、リム外れは発生しなかったが、異物の噛み込みによるリムフランジの傷付きが目立った。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明では、タイヤの他の性能の低下や、タイヤ重量の著しい増加を伴うことなく、パンク時や、ATV用タイヤなどの低内圧走行時においてビード部のリム外れを防止し走行時の安全性を向上する。またビード部とリムフランジとの間に、石、砂などの異物が噛み込むのを防止でき、タイヤやリムの損傷を効果的に防止しうる。又突出部が、タイヤ周方向に連続して設けられるため、例えばリム組時にタイヤ半径方向外向けに折り返してその状態を保持させることが可能となり、リム組性を全く損なうことがない。また突出部は、フランジ円弧部の先端までのびる基部と、その基部に設けられタイヤ半径方向内側に湾曲する折返し部を有する小厚さのひだ状をなすことによって、さらにフランジ円弧部との係合が強固となり、前記リム外れや異物の噛み込みをさらに抑制しうる。
【0031】
また請求項2記載の発明は、突出部が、フランジ円弧部の外側面に密着被覆してのび、かつ前記折返し部はフランジ円弧部の先端で折れ曲がりフランジ円弧部の内側面まで延在することにより、突出部とフランジ円弧部との摩擦力をより大きなものにでき、さらにフランジ円弧部との係合が強固となり、前記リム外れや異物の噛み込みをさらに抑制しうる。
【0032】
また請求項3記載の発明では、係止部を有する突出部は、タイヤ周方向に連続して形成されることによって、突出部7の先端の曲げ剛性がより一層高まり、フランジ円弧部にさらに強固に係合しうる点で好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図2】ビード部の拡大断面図である。
【図3】リム組前のビード部の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】タイヤに横力が作用した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ATV用タイヤ(空気入りタイヤ)
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
9 突出部
9a 基部
9b 折り返し部
13 リムフランジ
14 フランジ主部
15 フランジ円弧部
15a フランジ円弧部の外側面
17 クリンチゴム
19 係止部
J リム
Claims (4)
- ビード部のタイヤ軸方向外側面を保持するフランジ主部の外端に円弧状でタイヤ軸方向外側にのびるフランジ円弧部を連設したリムフランジを有するリムに装着される空気入りタイヤであって、
前記ビード部に、リム組みにより前記フランジ円弧部のタイヤ半径方向の外側面に沿って少なくとも該フランジ円弧部の先端までのびる可撓性の突出部を設けるとともに、
この突出部は、タイヤ周方向に連続して設けられ、かつ前記フランジ円弧部の先端までのびる基部と、その基部に設けられタイヤ半径方向内側に湾曲する折返し部を有する小厚さのひだ状をなすことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記突出部は、フランジ円弧部の外側面に密着被覆してのび、かつ前記折返し部はフランジ円弧部の先端で折れ曲がりフランジ円弧部の内側面まで延在することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記突出部は、小厚さのひだ状に形成され、さらにその先端部には、前記基部に比して厚さが増大しリムフランジの前記フランジ円弧部の先端に係止しうる係止部を具えることを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
- 低内圧が充填されかつ不整地走行用である請求項1ないし3のいずれか1に記載の空気入りタイヤ。
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