JP4014846B2 - 三塩化アルミニウムガスの移送方法 - Google Patents

三塩化アルミニウムガスの移送方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光増幅用などの希土類元素添加光ファイバを製造する場合において、アルミナを共添加する際に有用なガスの移送方法に関し、移送用の配管等に三塩化アルミニウム(本発明では、AlCl3と略記する。)ガスが析出しないように、安定に、AlCl3ガスを移送できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光増幅用光ファイバとして、酸化エルビウムを添加したエルビウムドープ光ファイバが知られている。このようなエルビウムドープ光ファイバにおいては、通常コアにアルミナが共添加されており、これによりこの光増幅用光ファイバの増幅利得波長依存性を平坦化するようにしている。
【0003】
このようなアルミナ共添加エルビウムドープ光ファイバは、ファイバ母材を気相合成法により製造すると同時に、このファイバ母材のコア部にアルミナをドープし、このファイバ母材を溶融紡糸することによって製造されている。
気相合成法によりファイバ母材を製造する際に、アルミナをドープする方法には、アルミニウムに塩素ガスを接触させて加熱、反応させてガス状のAlCl3を得て、これをガラス合成装置に供給し、他のSiCl4,GeCl4などのガラス原料ガスに混合し、これを気相合成法によりファイバ母材とする方法がとられている。
【0004】
この製造法では、ガラス合成装置にまでAlCl3ガスを移送するために、配管系全体をAlCl3ガスの昇華温度である180℃以上に保温し、配管内での固体状のAlCl3の析出を防止する必要がある。また、AlCl3ガスには未反応の塩素ガスが随伴されるため、配管等の腐食が懸念され、配管等には耐食性の優れたフッ素樹脂からなるものが使用されている。
【0005】
しかしながら、フッ素樹脂の連続使用耐熱温度は、ほぼ180℃以下であり、AlCl3の昇華温度以上に保温するには、その耐熱温度を超えることになる。また、AlCl3の析出は、温度に対して極めて敏感であり、180℃をわずかにでも下回ると、急激にその析出が開始する。
【0006】
このため、配管内でのAlCl3ガスの析出を防止し、配管詰まりが生じないように、配管系をAlCl3ガスの昇華温度以上に保温することは、現実に極めて困難となる。
したがって、従来の移送方法では、配管系の内部の各所において、AlCl3が析出し、アルミナ共添加ファイバ母材を作製する際に、アルミナを安定してドープすることができない問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、AlCl3ガスをガラス合成装置などに移送する際に、その配管系内でAlCl3が析出することがなく、しかも配管等にフッ素樹脂からなるものを使用できるようにし、さらにはファイバ母材に安定してアルミナをドープすることができるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、固体アルミニウムに塩素ガスを加熱下接触させて生成させたAlClガス1容に対して不活性ガス4.5〜10容を混合した混合ガスを、100〜180℃に保温しながらフッ素樹脂からなる配管を介して移送することを特徴とするAlClガスの移送方法である。
【0009】
請求項2にかかる発明は、固体アルミニウムに塩素ガスを加熱下接触させて生成させたAlClガス1容に対してアルゴンまたは窒素の少なくとも1種とヘリウムとの混合不活性ガス6〜9容を混合した混合ガスを、100〜180℃に保温しながらフッ素樹脂からなる配管を介して移送することを特徴とするAlClガスの移送方法である
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の移送方法に用いられる装置の一例を示すもので、図中符号1は、AlCl3ガス発生装置を示す。
このAlCl3ガス発生装置1は、固体アルミニウム、例えばアルミニウムインゴットやアルミニウムビュレットに塩素ガスを加熱下接触させて、180℃以上に加熱してAlCl3ガスを生成するものである。
【0011】
このAlCl3ガス発生装置1で発生したAlCl3ガスは、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂からなる管2によってガラス合成装置3に送られるようになっている。
ガラス合成装置3は、MCVD法、PCVD法、VAD法などの気相合成法によりファイバ母材を製造するもので、図示略の供給源からのSiCl4、GeCl4などのガラス原料ガスが供給されており、このガラス原料ガスに管2からのAlCl3ガスが混合されて、アルミナがドープされたファイバ母材が形成されるようになっている。
【0012】
また、管2の途中の接続点4には、管5の一端が接続され、この管5の他端は不活性ガスの供給源である不活性ガスボンベ6の調整弁6aの出口に接続されており、不活性ガスボンベ6からの不活性ガスが管5から接続点4を経て管2に流れるようになっている。
ここでの不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素などの1種または2種以上の混合不活性ガスが用いられる。
【0013】
また、管2の接続点4とAlCl3ガス発生装置3との間には、AlCl3ガス発生装置1からのAlCl3ガスの流量を調整する弁7が設けられている。
さらに、管2は、図中破線で示す領域8、すなわちAlCl3ガス発生装置1の出口からガラス合成装置3の入口までの領域8において、保温されるようになっており、管2、弁7内が180℃以下、好ましくは100〜180℃に保たれるようになっている。
【0014】
ここでの温度が100℃未満であるとAlCl3の析出により移送不能となり、180℃を超えると管2をなすフッ素樹脂の耐熱温度を超えてその耐久性が低下する。
管2の保温は、管2の外周にテープ状の電熱ヒータを巻き付け、これに通電し、その通電量を調整して温度を100〜180℃に保つ方法や上記領域8全体を取り囲む保温容器を設け、この保温容器内に加熱空気を導入する方法などによって行われる。
【0015】
次に、この装置を用いたAlCl3ガスの移送方法の一例を説明する。
まず、AlCl3ガス発生装置1からのAlCl3ガスを管2に流し、これと同時に不活性ガスボンベ6から不活性ガスを管5に流し、接続点4においてこれらを混合して、管2を経て混合ガスをガラス合成装置3に送り込む。この時、管2は先のようにして100〜180℃の範囲に保温されている。
【0016】
ついで、AlCl3ガス発生装置1から管2に流すAlCl3ガスの流量を弁7で調整し、不活性ガスボンベ6から管5に流す不活性ガスの流量を不活性ガスボンベ6の調整弁6aで調整し、両者の混合比を、ガス標準体積で、AlCl3ガス1容に対して不活性ガス4.5〜10容、好ましくは6〜8容とする。この比が4.5容未満であると不活性ガスによるAlCl3ガスの希釈が不十分で、180℃以下での移送時にAlCl3ガスが析出する恐れがある。また、10容を超えてももはやAlCl3ガスの析出防止効果の増大が望めない。
【0017】
このようなAlCl3ガスと不活性ガスとの混合ガスは、管2を流れ、ガラス合成装置3に供給され、ファイバ母材の製造に用いられ、アルミナがドープされたファイバ母材が製造される。
【0018】
また、不活性ガスとして、アルゴンまたは窒素のいずれか1種以上とヘリウムとの混合不活性ガスを用いた場合には、AlCl3ガスとこの混合不活性ガスとの混合比は、ガス標準体積で、AlCl3ガス1容に対して混合不活性ガス6〜9容とされる。この混合比が6容未満では不活性ガスによるAlCl3ガスの希釈が不十分で、180℃以下での移送時にAlCl3ガスが析出する恐れがある。また、9容を超えてももはやAlCl3ガスの析出防止効果の増大が望めない。
【0019】
この混合不活性ガスを用いる場合には、各不活性ガスの混合割合は、特に限定されることはないが、全体の25vol%以下をヘリウムが占めるようにすることがコスト的に好ましい。
また、混合不活性ガスを用いる場合には、それぞれの不活性ガスのガスボンベを用意して、これらからの不活性ガスを予め混合して混合不活性ガスとし、これを管5から接続点4を介して管2に流すようにすればよい。
【0020】
このようなAlCl3ガスの移送方法によれば、AlCl3ガスが不活性ガスで希釈されて管2を流れる。AlCl3ガスを不活性ガスで希釈すると、AlCl3ガスの蒸気圧が低下し、管2内の温度が180℃以下となっても、AlCl3ガスが固体となって析出し、管2内で目詰まりが生ずることがない。AlCl3ガスの蒸気圧の低下は、不活性ガスによる希釈に比例するので、不活性ガスの混合量が高いほど析出の危険性が低下する。
【0021】
したがって、AlCl3ガスをAlCl3ガス発生装置1から安定してガラス合成装置3に供給することができ、アルミナのファイバ母材へのドープを均一に、安定して行うことができる。
また、管2の温度を180℃以下にすることができるので、管2をなすフッ素樹脂が熱劣化することがなく、耐久性が低下することがない。
【0022】
以下、具体例を示す。
(比較例1)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図2に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。これら全体を180℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0023】
流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であったが、開始後10分経過後圧力計の表示は1.0kgf/cm2まで上昇し、入力ガス圧に一致した。
実施後、配管内部を調査したところ、配管内に固体のAlCl3が析出し、完全に目詰まりを起こしており、AlCl3ガスの移送は不可能であった。
【0024】
(比較例2)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図3に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。また、AlCl3ガス入部に枝管を設け、ヘリウムをAlCl3ガスに混合した。ヘリウムのガス圧は1.0kgf/cm2とし、流量を0.416SLMとした。これら全体を180℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0025】
AlCl3ガスの流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であったが、開始後10分経過後圧力計の表示は1.0kgf/cm2まで上昇し、入力ガス圧に一致した。
実施後、配管内部を調査したところ、配管内に固体のAlCl3が析出し、完全に目詰まりを起こしており、AlCl3ガスの移送は不可能であった。
【0026】
(比較例3)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図3に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。また、AlCl3ガス入部に枝管を設け、アルゴンをAlCl3ガスに混合した。アルゴンのガス圧は1.0kgf/cm2とし、流量を0.6SLMとした。これら全体を180℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0027】
AlCl3ガスの流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であったが、開始後10分経過後圧力計の表示は1.0kgf/cm2まで上昇し、入力ガス圧に一致した。
実施後、配管内部を調査したところ、配管内に固体のAlCl3が析出し、完全に目詰まりを起こしており、AlCl3ガスの移送は不可能であった。
【0028】
(比較例4)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図3に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。また、AlCl3ガス入部に枝管を設け、アルゴンをAlCl3ガスに混合した。アルゴンのガス圧は1.0kgf/cm2とし、流量を1.0SLMとした。これら全体を240℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0029】
AlCl3ガスの流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であった。開始後30分経過後の移送終了直前の圧力計の表示は、開始直後と変わらず0.0kgf/cm2であった。
実施後、配管を調査したところ、配管継手部分が熱で変形し、AlCl3ガスが漏れた形跡が認められた。また、配管中の多数箇所で配管部品の熱変形が見つかった。
【0030】
(実施例1)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図3に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。また、AlCl3ガス入部に枝管を設け、アルゴンをAlCl3ガスに混合した。アルゴンのガス圧は1.0kgf/cm2とし、流量を1SLMとした。これら全体を180℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0031】
AlCl3ガスの流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であった。開始後30分経過後の移送終了直前の圧力計の表示は0.0kgf/cm2で開始直後と同じであり、配管詰まりから起こる配管内圧力の上昇は見られなかった。
実施後、配管内部を調査したところ、配管内に固体のAlCl3の析出は認められなかった。
【0032】
(実施例2)
内径4mm、外径6mmのPTFE製チューブを長さ3mにわたり配管した。配管構成図を図4に示す。途中、1箇所に接液部がPTFE製のダイヤフラム式バルブを設けた。また、AlCl3ガス入部とバルブとの間に圧力計を設置した。また、AlCl3ガス入部に枝管を設け、アルゴンとヘリウムとをAlCl3ガスに混合した。アルゴンのガス圧は1.0kgf/cm2とし、流量を0.5SLMとした。ヘリウムのガス圧は、1.0kgf/cm2とし、流量は0.416SLMとした。これら全体を180℃に保温し、AlCl3ガスを30分間移送した。
【0033】
AlCl3ガスの流量は160SCCMとした。入力ガス圧(移送ガス圧)は、1.0kgf/cm2とし、移送管出口は大気圧開放とした。移送開始直後の圧力計の表示は0.0kgf/cm2であった。開始後30分経過後の移送終了直前の圧力計の表示は0.0kgf/cm2で開始直後と同じであり、配管詰まりから起こる配管内圧力の上昇は見られなかった。
実施後、配管内部を調査したところ、配管内に固体のAlCl3の析出は認められなかった。
【0034】
(比較例5)
比較例2の条件でAlCl3ガスを移送し、MCVD法によるガラス合成装置に導入し、Ge,Er,Al共添加の希土類元素添加石英ガラスを得た。これを延伸してコア材とし、このコア材の上にシリカ層を形成してファイバ母材とし、これを溶融紡糸して、光増幅用光ファイバとした。
この光増幅用光ファイバの増幅利得波長特性を図5に破線で示すが、平坦度は悪いものであった。
【0035】
(実施例3)
実施例2の条件でAlCl3ガスを移送し、MCVD法によるガラス合成装置に導入し、Ge,Er,Al共添加の希土類元素添加石英ガラスを得た。これを延伸してコア材とし、このコア材の上にシリカ層を形成してファイバ母材とし、これを溶融紡糸して、光増幅用光ファイバとした。
この光増幅用光ファイバの増幅利得波長特性を図5に実線で示すが、平坦度は1525〜1565nmの範囲で向上していた。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のAlCl3ガスの移送方法によれば、AlCl3ガスをアルゴンなどの不活性ガスで希釈して移送するものであるので、AlCl3の昇華温度の180℃以下においても、AlCl3の配管目詰まり、配管内壁への析出を抑制して、安定にAlCl3ガスを移送することができる。このため、希土類元素添加石英ガラスを作製する際に、アルミナを安定して、均一にドープすることができる。
【0037】
また、移送温度を180℃以下にすることができるので、配管材料にフッ素樹脂を使用することができ、且つその熱劣化がなく、長期にわたって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の移送方法に好適に使用される装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】比較例に用いられた移送配管構成図である。
【図3】実施例、比較例に用いられた移送配管構成図である。
【図4】実施例に用いられた移送配管構成図である。
【図5】実施例、比較例で得られた光増幅用光ファイバの増幅利得波長特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・AlCl3ガス発生装置、2・・・管、3・・・ガラス合成装置、4・・・接続点、5・・・管、6・・・不活性ガスボンベ、7・・・弁、8・・・領域。

Claims (2)

  1. 固体アルミニウムに塩素ガスを加熱下接触させて生成させたAlClガス1容に対して不活性ガス4.5〜10容を混合した混合ガスを、100〜180℃に保温しながらフッ素樹脂からなる配管を介して移送することを特徴とする三塩化アルミニウムガスの移送方法。
  2. 固体アルミニウムに塩素ガスを加熱下接触させて生成させたAlClガス1容に対してアルゴンまたは窒素の少なくとも1種とヘリウムとの混合不活性ガス6〜9容を混合した混合ガスを、100〜180℃に保温しながらフッ素樹脂からなる配管を介して移送することを特徴とする三塩化アルミニウムガスの移送方法。
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