JP4012787B2 - 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置(画像形成装置)として用いるインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通するインク流路(吐出室、圧力室、加圧液室、液室、インク室等とも称される。)と、このインク流路内のインクを加圧する駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを搭載したものである。なお、液滴吐出ヘッドとしては例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどもあるが、以下ではインクジェットヘッドを中心に説明する。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において多色化、高画質化、高速化を達成するためには、ノズル数を増加することが有効であるが、単純にノズル数を増加させると、ヘッドが大型化し、このことがコストアップの原因となる。そこで、ヘッド自体の集積度を上げることによってノズル数を増加させつつヘッドの大型化を防ぐ必要がある。
【0004】
ところで、インクジェットヘッドとしては、液室内で気化熱によって気泡を発生させるサーマル型のもの、圧電体などの電気機械変換素子を用いて液室の壁面を構成する振動板を変形させて液室内に圧力を発生させるピエゾ型のものが良く知られている。
【0005】
このうち、後者のピエゾ型ヘッドは、インク選択の自由度が大きく、さらに内部圧力を精密にコントロールすることによって、吐出滴の大きさを自由にコントロールすることができるので、高画質化にとって有利である。しかし、サーマル型ヘッドに比べて、構造が複雑であるため、集積化に限界があり、その集積化を阻む要因の一つとして振動板の高密度化が挙げられる。
【0006】
すなわち、積層圧電体を用いた一般的なインクジェットヘッドは、図9に示すように、液室隔壁201を形成する流路板と、ノズル202を形成したノズル板203と、振動板204を積層接合して、ノズル202が連通する液室(圧力室)205を形成し、振動板205には厚肉部206とその周囲の薄肉部207とを形成して、厚肉部206に積層型圧電素子210を当接して接合し、圧電素子201を駆動することによって液室205内の圧力を変化させてノズル202からインク的を吐出させる。
【0007】
ここで、このような振動板の作製方法としては、例えば特開平6−143573号公報に記載されているように電鋳を用いる方法が知られている。この電鋳による振動板の作製工程について、図10を参照して説明する。
【0008】
同図(a)に示すように電鋳支持基板211に薄肉部208を形成する第一層212を形成し、同図(b)に示すように厚肉部207間に相当する部分が窓213となるレジストパターン214を形成して例えばニッケル電鋳を行うことで、同図(c)に示すように、第一層212上にニッケルが析出され堆積してニッケル層215が形成され、更に電鋳を継続することで、同図(d)に示すように、窓213から突出するまでニッケル層215が成長すると、エッジ効果によりパターン214,214の表面方向にも肥大してオーバハング部215aが生じる。このプロセスを継続していくと、同図(e)に示すようにニッケル層215は厚み方向と平面方向にさらに伸長し、所定の成長の段階で電鋳を終了した後、パターン214を除去することで、同図(f)に示すように、凹部216により囲まれた断面鋲型のアイランド状厚肉部206を備えた振動板が得られる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような振動板の作製方法を用いることで、振動板の薄肉部と厚肉部を同一の工程で作製できる。また、厚肉部のパターン形成にフォトリソグラフィーを用いることができ、高いパターン精度が期待できる。
【0010】
しかしながら、部品としてのハンドリング等を考慮した場合、厚肉部は或る一定以上の厚みが必要であり、このためオーバーハング215aが発生するのは避けられない。このためパターン214間の間隔を狭くした場合、このオーバーハング形状が重なってしまうため、微細化には限界が生じる。
【0011】
また、微細化するためオーバーハング間の距離を小さくすると、レジストパターンを剥離するときにレジストが剥離しきれずにオーバーハング部に残ってしまう不都合が生じる。
【0012】
さらに、オーバーハング間の距離に対して相対的にオーバーハング長さが長くなるため、オーバーハング下の薄肉部にもしピンホール等が発生していた場合、発見する事ができなくなり、部品の信頼性が低くなる。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドの高集積化を可能とする信頼性の高い振動板を備えた液滴吐出ヘッド及びこの液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、厚肉部はパターンエッジ部分が薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、薄肉部と厚肉部とを合わせた総厚が10μm以上である構成としたものである。
【0016】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、厚肉部はパターンエッジ部分が薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、隣接する厚肉部の1段目のオーバーハング部間の距離が15μm以上である構成としたものである。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載したものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドの実施形態について図1を参照して説明する。なお、同図は同ヘッドの振動板短辺方向に沿う要部断面説明図である。
【0020】
このインクジェットヘッドは、液室間隔壁1aを有する流路板1と、振動板2と、ノズル4を形成したノズル板3とを接合することによって、ノズル4が連通する液室6を形成し、また、図示しないが、液室6に流体抵抗部を介してインクを供給するための共通液室を形成している。
【0021】
そして、振動板2の外面側には振動板2を変形させて液室6内のインクを加圧するための駆動手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての積層型圧電素子7と支柱部8とを設けている。これらの圧電素子7及び支柱部8の他端部は基板9に接合している。
【0022】
ここで、流路板1は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、液室6などの流路パターンを形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0023】
振動板2は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製している。この振動板2は液室16に対応する部分に変形を容易にするための薄肉部11及び圧電素子7と当接して接合するための厚肉部12を形成するとともに、隔壁1aに対応する部分にも厚肉部12を形成し、平坦面側を流路板1に接着剤接合し、厚肉部12を圧電素子7に接着剤接合し、更に他の厚肉部12を支柱部8に接着剤で接合している。なお、支柱部8は圧電素子7と同じに形成したものであるが、駆動電圧を印加しないため単なる支柱として機能する。この振動板2の構造の詳細については後述する。
【0024】
ノズル板3は各液室6に対応して直径10〜30μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。このノズル板3としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、金属とポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂との組み合せ、、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。また、ノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、インクとの撥水性を確保するため、メッキ被膜、あるいは撥水剤コーティングなどの周知の方法で撥水膜を形成している。
【0025】
圧電素子7は、圧電材料9aと内部電極9bとを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この実施形態では、圧電素子7の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室6内インクを加圧する構成としている。
【0026】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、圧電素子7に対して選択的に20〜50Vの駆動パルス電圧を印加することによって、パルス電圧が印加された圧電素子7が積層方向に伸長して振動板2をノズル4方向に変形させ、液室6の容積/体積変化によって液室6内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出(噴射)される。
【0027】
そして、インク滴の吐出に伴って液室6内の液圧力が低下し、このときのインク流れの慣性によって液室6内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、圧電素子7への電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板2が元の位置に戻って液室6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室から液室16内にインクが充填される。そこで、ノズル4のインクメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次のインク滴吐出のために圧電素子7にパルス電圧を印加しインク滴を吐出させる。
【0028】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや引き−押し打ちを行うこともできる。
【0029】
そこで、振動板2の構造の詳細について図2以降をも参照して説明する。
振動板2の厚肉部12のパターンエッジ部分は2段のオーバーハング部12a、12bを有するオーバハング形状をしている。ここで、振動板2の厚肉部12を拡大して図2に、更にこの図2のA部を拡大して図3に示している。
【0030】
厚肉部12はパターンエッジ部分が薄肉部11に対して2段のオーバーハング形状であり、薄肉部11と厚肉部12とを合わせた総厚Tを10μm以上、この例では27μmとしている。
【0031】
このように、厚肉部12の厚みを10μm以上とすることによって部品単体でのハンドリング性を確保することができ、また、2段のオーバーハング形状とすることによってオーバーハング長さdを小さくすることができるので、厚肉パターン間の距離を微細化することも可能になり、ヘッドの高集積化を図ることができる。
【0032】
なお、この例におけるその他の各部の寸法は、オーバーハング長さd=9、オーバーハング高さe=3、厚肉部幅g=40、薄肉部幅f=40(単位はすべてμm)としている。
【0033】
また、薄肉部11から1段目のオーバーハング部12aで薄肉部11との接する点cからオーバーハング面の接点cとこれに対向する点aとの接線21が振動板2の薄肉部11の上面となす角度θ1は5°以上、この例では約18°としている。
【0034】
このように薄肉部から一段目のオーバーハング部で薄肉部と接する点から該オーバーハング面の該接点に対向する点までの角度は、薄肉部上面から見て5°以上とする(θ1=5°以上とする)ことによって、部品製作時におけるレジスト剥離性を確保でき、更にオーバーハング部分と薄肉部の間を間接的に照明することが可能となり、たとえば部分22にピンホールがあるような場合でも、振動板2に対して厚肉部12の側から45°程度の斜め照明をすることによって、反対側(平坦側)から観測することができ、オーバーハング部12aの陰となる薄肉部11のピンホールを逃さず検査することができるようになり、信頼性が向上する。
【0035】
さらに、隣接する厚肉部12、12間の1段目のオーバーハング部12a間の距離hは15μm以上、この例では22μmとしている。
【0036】
このように隣接する厚肉部12、12間の1段目のオーバーハング部12a間の距離hは15μm以上の間隔を保つことによって、振動板製作時のレジスト剥離性を確保することが可能となり、信頼性が向上する。
【0037】
さらにまた、薄肉部11から1段目のオーバーハング部12aから対向する厚肉部12の上部bへ引いた接線23が振動板2の薄肉部11上面となす角度θ2は45°以下、この例では34°としている。
【0038】
前述したように薄肉部11のピンホール検査は斜め45°程度からの照明をすることが好ましいが、この角度θ2が45°よりも大きくなった場合、薄肉部11は、厚肉部12の完全に陰となってしまい、ピンホール検査が不充分になる。そこで、多段オーバーハング形状とした場合でも、薄肉部から1段目のオーバーハング部から対向する厚肉部上部へ引いた接線の角度は、薄肉部上面から見て45°以下(θ2=45°以下にする。)ことによって、ピンホール検査が可能となり、信頼性の高い振動板の製造が可能となる。
【0039】
次に、上記振動板の製作工程の一例を図4及び図5を参照して説明する。
先ず、図4(a)に示すように、シリコン基板41の主平面側には導電層としてTi42をスパッタリングを用いて100nm成膜し、次いで電解メッキによってTi42上にNi43を3μm成膜する。
【0040】
その後、同図(b)に示すように、フォトリソグラフィーによってNi膜43上の薄肉部となる部分にレジストパターン44を形成する。レジストは通常用いられるノボラック系のポジ型レジストを用い、厚さは3μmとした。
【0041】
次いで、同図(c)に示すように、電解メッキを用いてNi膜45を12μm成膜する。このときレジスト厚さが3μmであるため、厚肉部となるNi膜45のオーバーハング量は堆積厚さからレジスト厚さを引いた9μmとなる。
【0042】
さらに、同図(d)に示すように、フォトリソグラフィを用いてレジストパターン46を形成する。レジストパターン44に対してレジストパターン46は外側に3μmオーバーラップさせて設計する。これにより、マスク間のアライメントずれやパターンの仕上がりばらつきを考慮しても、確実にパターン46をパターン44に対してオーバーラップした位置関係に保つことができる。レジストは通常用いられるノボラック系のポジ型レジストを用い、厚さは3μmとした。
【0043】
次に、図5(a)に示すように、電解メッキを用いてNi膜47を12μm成膜する。このときレジスト厚さが3μmであるため、厚肉部となるNi膜47のオーバーハング量は堆積厚さからレジスト厚さを引いた9μmとなる。このとき、レジストパターン46はレジストパターン44に対してオーバーラップした位置関係となっているため、厚肉部となるNi膜47のパターンの側面部分は確実に2段のオーバーハング形状とすることができる。
【0044】
その後、同図(b)に示すように、レジストパターン46、44を剥離する。隣接するオーバーハング間距離(図3の距離h)が15μm以上に保たれており、また図3の角度θ1が15°以上になっているため、オーバーハング下のレジストに対して剥離液が充分に拡散することができ、レジスト剥離が可能となる。
【0045】
そして、同図(c)に示すように、Ni膜をTi42との界面から引き剥がすことにより、2段のオーバハング形状を有する厚肉部12を備えた振動板部材が得られる。このようにして、電鋳を用いて高密度化が可能な振動板を作製できる。
【0046】
次に、この振動板2の薄肉部11のピンホール検査方法の概略について図6を参照して説明する。振動板2の凸部面側(厚肉部12を形成した面側)には少なくても2方向から主面に対して45°の角度を持って検査光51を照明する。一方、振動板の凸部裏面側(平坦面側)には光検出器52を配置する。
【0047】
これにより、もし薄肉部11にピンホールが存在する場合にはピンホールを介して検査光51が裏面側に漏れるため、それによってピンホールの有無を検出でき、確実な検査が可能となる。これにより、高い信頼性を有する振動板が得られる。
【0048】
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は同記録装置の斜視説明図、図8は同記録装置の機構部の側面説明図である。
【0049】
このインクジェット記録装置は、記録装置本体111の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明に係るインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部112等を収納し、装置本体111の下方部には前方側から多数枚の用紙113を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)114を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙113を手差しで給紙するための手差しトレイ115を開倒することができ、給紙カセット114或いは手差しトレイ115から給送される用紙113を取り込み、印字機構部112によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ116に排紙する。
【0050】
印字機構部112は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド121と従ガイドロッド122とでキャリッジ123を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ123にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなるヘッド124を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ123にはヘッド124に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ125を交換可能に装着している。なお、ヘッド一体型インクカートリッジを用いることもできる。
【0051】
インクカートリッジ125は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0052】
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド124を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0053】
ここで、キャリッジ123は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド121に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド122に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ123を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ127で回転駆動される駆動プーリ128と従動プーリ129との間にタイミングベルト130を張装し、このタイミングベルト130をキャリッジ123に固定しており、主走査モーター127の正逆回転によりキャリッジ123が往復駆動される。
【0054】
一方、給紙カセット114にセットした用紙113をヘッド124の下方側に搬送するために、給紙カセット114から用紙113を分離給装する給紙ローラ131及びフリクションパッド132と、用紙113を案内するガイド部材133と、給紙された用紙113を反転させて搬送する搬送ローラ134と、この搬送ローラ134の周面に押し付けられる搬送コロ135及び搬送ローラ134からの用紙113の送り出し角度を規定する先端コロ136とを設けている。搬送ローラ134は副走査モータ137によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0055】
そして、キャリッジ123の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ134から送り出された用紙113を記録ヘッド124の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材139を設けている。この印写受け部材139の用紙搬送方向下流側には、用紙113を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ141、拍車142を設け、さらに用紙113を排紙トレイ116に送り出す排紙ローラ143及び拍車144と、排紙経路を形成するガイド部材145,146とを配設している。
【0056】
記録時には、キャリッジ123を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド124を駆動することにより、停止している用紙113にインクを吐出して1行分を記録し、用紙113を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙113の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙113を排紙する。この場合、ヘッド124を構成する本発明に係るインクジェットヘッドはインク滴噴射の制御性が向上し、特性変動が抑制されているので、安定して高い画像品質の画像を記録することができる。
【0057】
また、キャリッジ123の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド124の吐出不良を回復するための回復装置147を配置している。回復装置147はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ123は印字待機中にはこの回復装置147側に移動されてキャッピング手段でヘッド124をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0058】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド124の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0059】
このように、このインクジェット記録装置においては本発明に係る高集積化を図った信頼性の高い振動板を備えたインクジェットヘッドを搭載しているので、高画質記録が可能になる。
【0060】
なお、上記実施形態においては、本発明に係る液滴吐出ヘッドをインクジェットヘッドに適用したが、インク以外の液体の滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッドなどにも適用することできる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、厚肉部はパターンエッジ部分が薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、薄肉部と厚肉部とを合わせた総厚が10μm以上である構成としたので、高集積化を図ることができる。
【0063】
本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、厚肉部はパターンエッジ部分が薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、隣接する厚肉部の1段目のオーバーハング部間の距離が15μm以上である構成としたので、高集積化及び信頼性の向上を図ることができる。
【0065】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えたので、高画質記録化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドの実施形態を示す振動板短手方向に沿う断面説明図
【図2】同ヘッドの振動板の要部拡大説明図
【図3】図2のA部の拡大説明図
【図4】同振動板の製作工程の一例を説明する断面説明図
【図5】図4に続く工程を説明する断面説明図
【図6】同振動板のピンホール検査の説明に供する説明図
【図7】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図
【図8】同記録装置の機構部の側面説明図
【図9】従来のインクジェットヘッドの要部を説明する断面説明図
【図10】従来の振動板の製作工程を説明する断面説明図
【符号の説明】
1…流路板、1a…隔壁、2…振動板、3…ノズル板、4…ノズル、6…液室、7…圧電素子、8…支柱部、11…薄肉部、12…厚肉部、12a…オーバーハング部。
Claims (3)
- 液滴を吐出するノズルが連通する液室の少なくとも1つの壁面を形成する変形可能な振動板と、この振動板を変形させて前記液室内の圧力を変化させる駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、前記厚肉部はパターンエッジ部分が前記薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、前記薄肉部と厚肉部とを合わせた総厚が10μm以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 液滴を吐出するノズルが連通する液室の少なくとも1つの壁面を形成する変形可能な振動板と、この振動板を変形させて前記液室内の圧力を変化させる駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記振動板は駆動手段が当接する厚肉部と、この厚肉部の周囲の薄肉部とを有し、前記厚肉部はパターンエッジ部分が前記薄肉部に対して少なくとも二段以上のオーバーハング形状であり、かつ、隣接する厚肉部の1段目のオーバーハング部間の距離が15μm以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- インク滴を吐出するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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