JP4012439B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐溶剤性、流動性、耐熱性、リサイクル特性、耐衝撃性のいずれにも優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを成形してなるOA機器ハウジング、電気・電子機器ハウジング等の成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、機械物性(特に、耐衝撃特性)、電気的特性、透明性などに優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、OA機器や電気・電子機器分野、建築分野などの様々な分野において幅広く利用されている。
【0003】
ところで、ポリカーボネート樹脂は、各種熱可塑性樹脂の中では酸素指数が高く、一般的に自己消火性を有する樹脂ではあるものの、特にOA機器分野や電気・電子機器分野、具体的にはノートブック型パソコン等のOA機器や電気・電子機器のハウジング、及びバッテリーパックの用途においては、その安全上の要求を満たすため、より高いレベルの難燃性が要求されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の難燃性を向上させる方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかし、近年、安全性、廃棄・焼却時の環境への影響から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められてきている。非ハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物(特開平11−21441号公報)は優れた難燃性を示すとともに、可塑剤としての作用もあり、多くの組成物が提案されている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂を有機リン酸エステル化合物で難燃化するためには、有機リン酸エステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。また、ポリカーボネート樹脂は成形温度が高く、溶融粘度も高いために、成形品の薄肉化、大型化に対応するために、ますます成形温度が高くなる傾向にある。このため、有機リン酸エステル化合物は一般的に難燃性には寄与するものの、耐熱性を低下させてしまう場合があった。また、成形品が加熱下に置かれたり、高温高湿度下に置かれた場合の、衝撃強度の低下、変色の発生などの問題点が指摘されている。さらに、近年の省資源化におけるリサイクル適性が熱安定性が不十分であることから困難であるなどの問題点を残している。
【0006】
また、特開平4−1257号公報、特開平7−278403号公報、特開平9−151311号公報及び特開平9−217000号公報には、ポリカーボネート樹脂と、ABS樹脂、スチレン系樹脂等の他の樹脂からなるアロイに、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物又はエチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物を添加した難燃性の樹脂組成物に関する発明が開示されている。これらの公報記載の難燃性樹脂組成物では、難燃性を付与するために、ハロゲン系やリン系難燃剤を使用しているが、リサイクル特性や耐熱性、耐光性が十分とは言えない。なお、これらの公報には、難燃剤として有機アルカリ金属塩を添加することは開示されていない。
【0007】
特開2001−294741号公報には、ポリカーボネート樹脂、珪素含有無機充填剤からなる樹脂組成物100質量部に対し、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物を0.01〜5質量部配合してなるポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。この公報記載の発明でも、難燃剤としては、有機リン系化合物やハロゲン非含有リン系化合物、シリコーン系化合物が用いられており、有機アルカリ金属塩は開示されていない。また、この公報記載の発明では、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物は、珪素含有無機充填剤を安定化させる目的で添加されているため、その添加量が少なく、それ故、耐衝撃性や流動性、耐溶剤性が向上したとの記載は無い。
【0008】
特開2001−40202号公報には、ポリカーボネート樹脂とコア・シェルタイプグラフトゴム状弾性体に、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩を添加したポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。この公報記載のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性が不十分であり、大型の製品や薄肉の製品を成形することは困難である。このポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性を改善することは可能であるが、耐溶剤性の改善は、ほとんど期待できない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状に鑑み、本発明は、耐溶剤性、高流動性、耐熱性、リサイクル特性、衝撃強度のいずれにおいても優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の割合で配合されたポリカーボネート及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物からなる樹脂組成物成分100重量部に対して、有機アルカリ金属塩を添加することにより、耐溶剤性が改良され、高流動性、高耐衝撃性、耐熱性の優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
1.(A)ポリカーボネート85〜97質量%、及び(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物3〜15質量%からなる樹脂組成物成分100質量部に対して;(C)有機アルカリ金属塩0.01〜10質量部を添加することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.(A)ポリカーボネートが、芳香族ポリカーボネート、分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するフェノキシ基で封止されたポリカーボネート及びポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(PC−PDMS共重合体)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物、並びにエチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.前記樹脂組成物成分100質量部に対して、(D)フッ素系樹脂0〜2質量部をさらに添加することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5.(D)フッ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする上記4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6.(D)フッ素系樹脂が、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする上記5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7.前記樹脂組成物成分100質量部に対して、(E)無機充填材0〜20質量部をさらに添加することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8.(E)無機充填材が、板状のフィラー及びガラス繊維(GF)からなる群から選択されることを特徴とする上記7に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
9.板状のフィラーが、タルク、マイカ及びワラストナイトからなる群から選択されることを特徴とする上記8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
10.上記1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジング又は部品。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、成分(A)として用いられるポリカーボネート樹脂としては、慣用された製造方法、すなわち、通常、二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物等のポリカーボネート前駆体とを反応させることにより製造したものを挙げることができる。具体的には、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、更に、必要により分岐剤を添加し、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造されたものである。
【0013】
用いられる二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類などが挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。分子量調整剤としては通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,o−n−ブチルフェノール,m−n−ブチルフェノール,p−n−ブチルフェノール,o−イソブチルフェノール,m−イソブチルフェノール,p−イソブチルフェノール,o−t−ブチルフェノール,m−t−ブチルフェノール,p−t−ブチルフェノール,o−n−ペンチルフェノール,m−n−ペンチルフェノール,p−n−ペンチルフェノール,o−n−ヘキシルフェノール,m−n−ヘキシルフェノール,p−n−ヘキシルフェノール,p−t−オクチルフェノール,o−シクロヘキシルフェノール,m−シクロヘキシルフェノール,p−シクロヘキシルフェノール,o−フェニルフェノール,m−フェニルフェノール,p−フェニルフェノール,o−n−ノニルフェノール,m−ノニルフェノール,p−n−ノニルフェノール,o−クミルフェノール,m−クミルフェノール,p−クミルフェノール,o−ナフチルフェノール,m−ナフチルフェノール,p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾールなどが挙げられる。これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−フェニルフェノールなどが好ましく用いられる。
【0015】
その他、分岐剤として、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;フロログリシン,トリメリト酸,イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
【0016】
また、成分(A)としてのポリカーボネート系樹脂として、分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するフエノキシ基で封止された(以下、「末端アルキルフェノキシ変成」と略称することがある。)ポリカーボネート樹脂を用いることもできる。
ここで末端アルキルフェノキシ変性ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の製造において、末端停止剤として、炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキルフェノールを用いることにより得ることができる。
これらの炭素数10〜35のアルキルフェノールとしては、特に制限はなく、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール及びエイコシルフェノール等が挙げられる。
【0017】
これらの炭素数10〜35のアルキルフェノールのアルキル基は、水酸基に対して、o−、m−、p−のいずれの位置であってもよいが、p−の位置が好ましい。又アルキル基は、直鎖状、分岐状又はこれらの混合物であってもよい。
この置換基としては、少なくとも1個が前記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
【0018】
これらの特定の末端変性ポリカーボネート系樹脂は、例えば、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物との反応において、分子量を調節するために、上記の炭素数10〜35のアルキルフェノールを末端封止剤として使用することにより得ることができる。
具体的には、塩化メチレン溶媒中において、トリエチルアミン触媒、前記炭素数が10〜35のアルキル基を有するアルキルフェノールの存在下、二価フェノールとホスゲン、又はポリカーボネートオリゴマーとの反応により得られる。
ここで、炭素数が10〜35のアルキル基を有するアルキルフェノールが、ポリカーボネート樹脂の片末端又は両末端を封止することにより、ポリカーボネート樹脂の末端が変性される。
【0019】
この場合の末端変性は、全末端に対して20%以上、好ましくは50%以上とされる。即ち、他の末端は、水酸基末端、又は、下記の他の末端封止剤を用いて封止されている。
他の末端封止剤としては、ポリカーボネート樹脂の製造で常用されているフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等のフェノール類が好ましく用いられる。
分子末端が炭素数10以上のアルキル基を有するフェノキシ基で封止されたポリカーボネート樹脂は、ポリオレフィンとの相溶性に優れている。
【0020】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部(PDMS)を有する共重合体(以下、PC−PDMS共重合体ということがある)、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート系共重合体の混合物を用いることもできる。PC−PDMS共重合体は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性をさらに高めることができる点で好ましい。
なお、PC−PDMS共重合体のポリカーボネート部は、前記の末端アルキルフェノキシ変性ポリカーボネート系樹脂であってもよい。
PC−PDMS共重合体は、例えば、ポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサン(ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等)とを、塩化メチレン等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミン等の触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
【0021】
本発明で用いることができるPC−PDMS共重合体は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報、特開平10−7897号公報に開示されている。
PC(末端アルキルフェノキシ変性ポリカーボネート系樹脂を含む)−PDMS共重合体のポリカーボネート部の重合度は、3〜100、ポリジメチルシロキサン部の重合度は2〜500程度のものが好ましく用いられる。
また、PC−PDMS共重合体中(副生するビスフェノールAポリカーボネートを含む)のポリジメチルシロキサンの含有量は、通常0.2〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%の範囲である。
【0022】
本発明において用いられる成分(A)のポリカーボネート樹脂は、上記から選択される1種のみであってもよいし、2種以上を混合したものでもよい。また、成分(A)のポリカーボネート樹脂としては、その構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、機械的強度及び成形性の点から、通常10,000〜100,000、好ましくは11,000〜40,000、特に好ましくは12,000〜30,000である。
ここで、これらの粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式にて算出するものである。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
【0023】
(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物
本発明において、ポリカーボネート樹脂組成物の成分(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物は、エチレンと(メタ)アクリル酸(エステル)からなる二元共重合体であるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物並びに、第3のモノマーとして一酸化炭素を含む三元共重合体であるエチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物を含み、これらの中から成分(B)として、1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0024】
成分(B)のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物を製造するには、例えば、各モノマーをt−ブチルパーオキシイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤と共に、所定の割合で高速撹拌反応器中に供給し、高温(例えば、160〜250℃)、高圧下(例えば、160〜300MPa)において高速撹拌下に混合して共重合すればよい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、通常、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜8程度の直鎖状若しくは分岐状のアルキルエステルが好ましい。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチルなどのエステルを例示することができる。
【0025】
モノマーの(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミノアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミノメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルを挙げることができる。
【0026】
エチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物においては、エチレン30〜90質量%、好ましくは40〜80質量%;一酸化炭素1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、(メタ)アクリル酸(エステル)5〜60質量%、好ましくは15〜50質量%の量で含まれていることが望ましく、必要に応じてさらに他のモノマーを共重合させることも可能である。
成分(B)のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物は、耐衝撃性、流動性、耐溶剤性を、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に付与する機能を有する。
【0027】
ここで、(A)ポリカーボネート:(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物の割合は、85〜97質量%:3〜15質量%、好ましくは90〜97質量%:3〜10質量%である。成分(B)が3質量%未満であると、耐溶剤性や流動性が不十分であり、15質量%を超えると、表層ハクリ等の成形品外観不良等が生じ、好ましくない。
【0028】
(C)有機アルカリ金属塩
本発明のポリカーボネート樹脂組成物にける成分(C)の有機アルカリ金属塩は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に難燃性を付与する機能を有する。有機アルカリ金属塩としては、各種のものがあるが、少なくとも一つの炭素原子を有する有機酸又は有機酸エステルのアルカリ金属塩である。ここで、有機酸又は有機酸エステルは、有機スルホン酸,有機カルボン酸などである。一方、アルカリ金属は、ナトリウム,カリウム,リチウム,セシウムなどである。中でも、ナトリウム、カリウム、セシウムの塩が好ましく用いられる。また、その有機酸の塩は、フッ素、塩素,臭素のようなハロゲンが置換されていてもよい。
【0029】
上記各種の有機アルカリ金属塩の中では、例えば、有機スルホン酸の場合、下記一般式(I)
(CnF2n+1SO3)mM・・・(I)
(式中、nは1〜10の整数を示し、Mはリチウム,ナトリウム,カリウム,セシウムなどのアリカリ金属を示し、mはMの原子価を示す。)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩が好ましく用いられる。これらの化合物としては、例えば、特公昭47−40445号公報に記載されているものがこれに該当する。
【0030】
上記一般式(I)において、パーフルオロアルカンスルホン酸としては、例えば、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロメチルブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸などを挙げることができる。特に、これらのカリウム塩が好ましく用いられる。その他、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸;2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸;ジフェニルスルホン−3−スルホン酸;ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸;ナフタレントリスルホン酸などの有機スルホン酸のアルカリ金属塩などを挙げることができる。
【0031】
また、有機カルボン酸としては、例えば、パーフルオロギ酸、パーフルオロメタンカルボン酸、パーフルオロエタンカルボン酸、パーフルオロプロパンカルボン酸、パーフルオロブタンカルボン酸、パーフルオロメチルブタンカルボン酸、パーフルオロヘキサンカルボン酸、パーフルオロヘプタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸などを挙げることができ、これら有機カルボン酸のアルカリ金属塩が用いられる。
【0032】
また、本発明で用いる成分(C)の有機アルカリ金属塩は、酸のアルカリ金属塩基を有する酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂であってもよい。本発明で用いる酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂とは、ビニル系熱可塑性樹脂の芳香環に酸のアルカリ金属塩基が置換された熱可塑性樹脂である。芳香族ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレン−アクロニトリル共重合体、ABS樹脂などの少なくともスチレン構造を有する熱現像感光材料可塑性樹脂を例示することができる、これらの中でもポリスチレン樹脂が好ましく用いられる。
【0033】
ここで、芳香環に置換された酸基としては、スルホン酸基、ホウ酸基、リン酸基などが挙げられ、アルカリ金属塩基を形成するアルカリ金属としては、上述のものが挙げられる。このような酸のアルカリ金属塩基の置換比率は特に制限はなく、置換された芳香環と非置換芳香環とが共存していてもよい。
酸のアルカリ金属塩基含有芳香族ビニル系樹脂の好ましい例として、下記式(1)で示される酸のアルカリ金属塩基含有ポリスチレン樹脂が挙げられる。
【0034】
【化1】
(式中、Xは酸のアルカリ金属塩基であり、mは1〜5を表し、Yは水素又は炭素数1〜10の炭化水素である。また、nはモル分率を表し、0<n≦1である。)ここでXで示される酸のアルカリ金属塩基としては、スルホン酸、ホウ酸、リン酸などのアルカリ金属塩基である。
【0035】
なお、Yは水素又は炭素数10の炭化水素であり、好ましくは水素又はメチル基である、また、mは1〜5であり、nは0<n≦1の関係である。すなわち、酸のアルカリ金属塩基(X)は、芳香環に対して、全置換したものであっても、部分置換したもの、あるいは無置換のものを含んだものであってもよい。本発明の難燃性の効果を得るためには、酸のアルカリ金属塩基の置換比率は、酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の含有量などを考慮して決定され、特に制限はなく、一般的には10〜100%置換のものが用いられる。
【0036】
なお、酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂は、上記式(1)で示されるポリスチレン樹脂に限定されるものではなく、前記したように、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。ここで、酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の製造方法としては、▲1▼前記のスルホン酸基などを有する芳香族ビニル系単量体、又はこれらと共重合可能な他の単量体とを重合又は共重合する方法;▲2▼芳香族ビニル系重合体、又は芳香族ビニル系単量体と他の共重合可能な単量体との共重合体、あるいはこれらの混合重合体をスルホン化し、アルカリ金属の水位酸化物で中和する方法がある。
【0037】
例えば、▲2▼の方法としては、ポリスチレン樹脂の1,2−ジクロロエタン溶液に濃硫酸と無水酢酸の混合液を加えて加熱し、数時間反応させることにより、ポリスチレンスルホン酸化物を製造する。次いで、スルホン酸基と当モル量の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムで中和することによりポリスチレンスルホン酸カリウム塩又はナトリウム塩を得ることができる。
【0038】
本発明で用いる、成分(C)である酸塩基含有芳香族ビニル系樹脂の重合平均分子量としては、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜200,000程度である、なお、重合平均分子量は、GPC法で測定することができる。
【0039】
上記の成分(C)は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は、成分(A)ポリカーボネート及び成分(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物からなる樹脂組成物成分100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。その含有量が少なすぎると、目標とする難燃性を達成するのが困難であり、多すぎると、量に見合った難燃性の向上効果が認められず、むしろ経済的に不利となる。
(A)ポリカーボネート及び(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物からなる樹脂組成物成分に対して、(C)有機アルカリ金属塩を添加することによって、耐溶剤性、高流動性、耐熱性、リサイクル特性、衝撃強度の優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
(D)フッ素系樹脂
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的として、フッ素系樹脂を添加することが好ましい。ここで、フッ素系樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくはは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。
【0041】
なお、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができるので好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)としては特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0043】
ここで、フッ素系樹脂の含有量は、前記(A)及び(B)からなる樹脂組成物成分100重量部に対して、0〜2重量部、好ましくは、0.1〜1重量部である。ここで、0.1重量部未満であると、目的とする難燃性における溶融滴下防止性が十分でない場合があり、逆に2重量部を超えても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、たとえば、UL94のV−0、V−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
【0044】
(E)無機充填材
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、剛性を付与したり、難燃性向上を目的として無機充填材を添加することが好ましい。無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムなどが用いられる。これら無機質充填材の中でも、その形態が板状であるタルク、マイカ、ワラストナイトなど、及びガラス繊維(GF)が特に好ましい。そして、このタルクは、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。さらに、ここで用いるタルクとしては、その平均粒径が0.1〜50μmであるものが用いられるが、平均粒径0.2〜20μmであるものが特に好適に用いられる。
無機充填材は、成分(A)及び(B)からなる樹脂組成物成分100質量部に対して、0〜20質量部、好ましくは0〜15質量部、さらに好ましくは1〜15質量部添加する。
【0045】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、上記の各成分の他に、成形品に要求される特性に応じて、一般の熱可塑性樹脂やその組成物に用いられている添加剤の適宜量を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(耐候剤)、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)などが挙げられる。
【0046】
次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法については、前記の各成分(A)〜(C)さらには(D)及び(E)、並びに必要に応じて用いられる各種添加剤成分を、成形品の要求特性に見合う配合割合において配合し、混練すればよい。ここで用いる混合機や混練機としては、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダなどによることができる。混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。この溶融混練成形としては、押出成形機、特にベント式の押出成形機の使用が好ましい。なお、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂あるいは他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
【0047】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、発泡成形法などにより、各種の成形品を製造することができる。この場合、前記各成分を溶融混練してペレット状の成形原料を製造し、ついで、このペレットを用いて射出成形や、射出圧縮成形による射出成形品を製造する方法が、特に好適である。また、この射出成形法として、ガス注入成形法を採用すると、引けがなく外観に優れるとともに、軽量化された成形品を得ることができる。
【0048】
このようにして得られるポリカーボネート樹脂組成物からの成形品としては、複写機、ファクシミリ、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどの電気・電子機器のハウジウングまたはその部品、さらには、自動車部品など電気・電子以外の分野の機器類にも用いることができる。
【0049】
【実施例】
次に、実施例、参考例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
<実施例1及び2、参考例、並びに比較例1〜5>
(1)ポリカーボネート樹脂組成物の製造
第1表に示す組成(成分(A)及び(B)については質量%、その他の成分については成分(A)及び(B)の合計100質量部に対する質量部で示す)で各成分を配合し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械株式会社製)に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべての実施例、参考例および比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1076(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重量部およびアデカスタブC(旭電化工業株式会社社製)0.1重量部をそれぞれ配合した。得られたペレットを、120℃で、12時間乾燥した後、成形温度270℃、金型温度80℃で射出成形して試験片、成形品を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1に示した。
【0050】
(2)成形材料及び添加剤
(A)ポリカーボネート樹脂
・PC−1:ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、タフロン A1700(出光石油化学社製)、MI=27g/10分(300℃、1.2kg荷重)、粘度平均分子量:17,500
(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物
・B−1:エチレン−一酸化炭素−エチルアクリル酸エステル共重合体(三井デュポンケミカル社製、エルバロイHP771)
・B−2:エチレン−エチルアクリル酸エステル共重合体(三井デュポンケミカル社製、エバフレックスA709)
【0051】
(C)有機アルキル金属塩
・C−1:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ライオン社製)
・C−2:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(大日本インキ化学社製、メガファックF114)
(D)フッ素系樹脂
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子社製、CD076)
(E)無機充填材
・タルク:タルク(富士タルク社製、TP−25)
【0052】
(その他)
・MBS系グラフト共重合体(三菱レイヨン社製、メタブレンC223)、特開2001−40202号公報に記載のコア・シェルタイプグラフトゴム状弾性体・リン酸エステル:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(旭電化社製、アデカスタブPFR)、リン系難燃剤
・TBAオリゴマー:TBAオリゴマー(帝人化成社製、FG7500)、
・ブロム系難燃剤
【0053】
(3)性能評価方法
・溶融流動性:MI(メルトインデックス):JIS K7210に準拠。300℃、1.2kg荷重
・IZOD(アイゾット)衝撃強度:ASTM D−256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:kJ/m2
・熱歪み温度(HDT):JIS K 7207(A法)に準拠。曲げ応力:18.5kg/cm2
・耐溶剤性:性耐薬品性評価法(1/4楕円による限界歪み)に準拠した。図1(斜視図)に示す、1/4楕円の面に試料片(厚み=3mm)を固定し、試料片にアルバニアグリース(昭和シェル石油株式会社製)を塗布し、48時間保持した。クラックが発生する最小長さ(X)を読み取り、下記の式(1)より限界歪(%)を求めた。
【0054】
【数1】
【0055】
・滞留熱安定性:射出成形機東芝製IS−45Pにより、成形温度を300℃に設定して、シリンダー内に10分間滞留後成形して厚さ3mm(80mm×40mm×3mm)の試験片を作製した。その作製した試験片を目視観察した。
・耐光性(キセノン、63℃、500時間)ΔE:試験前後のΔEをJIS K7103に準じて測定した。
・耐湿熱性:温度70℃、湿度90%の雰囲気に500時間保持した後、IZOD衝撃強度を測定した。
【0056】
・リサイクル性:各組成物ペレットを用いて、成形温度300℃、金型温度80℃の条件で射出成形によりノートパソコンハウジング(A4タイプ)を成形した。この成形品を粉砕して、100%リサイクル1回の原料として再度、同条件で試験片を成形した。
(i)リサイクル後IZOT:リサイクル成形試験片のIZOD衝撃強度を測定した。
(ii)リサイクル後色調変化ΔE:リサイクル成形試験片の色調変化を測定した。JIS H7103(黄変度試験方法)に準拠して、色差計でリサイクル前後の試験片の色相(L,a,b)を測定し、色相変化を(ΔE)として算出した。
・難燃性:UL94燃焼試験に準拠
(i)1.5mmUL94:試験片厚み:1.5mm
(ii)2.5mmUL94:試験片厚み:2.5mm
なお、表1中の比較例3における「NG」は、各々の厚みでUL94規格V−0、V−1、V−2、5VA、5VBに合格しないことを意味し、実施例2における「V−0,5VB」は、各々の厚みでUL94規格V−0、5VBを合格することを意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の結果から、実施例1及び2は、高流動性、衝撃強度、耐熱性、耐溶剤性、リサイクル特性、難燃性のいずれにおいても優れていることがわかる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成分(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物を添加していない比較例1では、耐溶剤性が0.4と低く、また、耐湿後の衝撃強度の低下が大きいことがわかる。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成分(B)の代わりに、コア・シェルタイプエラストマーを用いた比較例2では、耐溶剤性は0.4と低く、成分(B)を添加していない比較例1と同等であり、また、リサイクル後の色調変化も1.2と大きいことがわかる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成分(C)有機アルカリ金属塩を添加していない比較例3では、難燃性がNGとなり、要求される難燃性を有しないことがわかる。
【0060】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成分(C)の代わりに、難燃剤としてリン酸エステルを添加した比較例4では、難燃性には問題はないが、熱歪み温度が102℃と耐熱性が低下し、耐湿後の衝撃強度も大きく低下することがわかる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成分(C)の代わりに、難燃剤としてTBAオリゴマーを添加した比較例5では、滞留熱安定性試験においてシルバー黄変が見られ、滞留熱安定性が低下することがわかる。さらに、耐光性及び耐衝撃性も低下し、リサイクル後の耐衝撃性も大きく低下することがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、耐溶剤性、高流動性、耐熱性、リサイクル特性、衝撃強度のいずれにおいても優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性が高いので、大型の製品や薄肉の製品を形成するのに適している。
従って、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、より高度な難燃性が要求されるOA機器、情報機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車部品などの材料として有用である。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物はリサイクル性に優れており、今後益々必要とされる、リサイクル可能な材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂組成物の耐溶剤性評価試験において、試験片を固定するために用いた治具の斜視図である。
Claims (10)
- (A)ポリカーボネート85〜95質量%、及び
(B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物5〜15質量%からなる樹脂組成物成分100質量部に対して;
(C)下記一般式(I)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩及び/又は酸のアルカリ金属塩基を有するポリスチレン樹脂0.01〜10質量部を添加することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
(C n F 2n+1 SO 3 ) m M・・・(I)
(式中、nは1〜10の整数を示し、Mはアルカリ金属を示し、mはMの原子価を示す。) - (A)ポリカーボネートが、芳香族ポリカーボネート、分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するフェノキシ基で封止されたポリカーボネート及びポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及び/又はそのエステル化物が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物、並びにエチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸共重合体及びそのエステル化物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物成分100質量部に対して、
(D)フッ素系樹脂0〜2質量部をさらに添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。 - (D)フッ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- (D)フッ素系樹脂が、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物成分100質量部に対して、
(E)無機充填材0〜20質量部をさらに添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。 - (E)無機充填材が、板状のフィラー及びガラス繊維(GF)からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 板状のフィラーが、タルク、マイカ及びワラストナイトからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる電気・電子機器のハウジング又は部品。
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