JP4011158B2 - 誘導加熱装置およびそれを含む連続熱処理設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護気体中において連続的に移動する金属製品を誘導加熱する装置に関する。さらに、本発明は、前記の誘導加熱装置を含む、移動製品の連続熱処理設備に関する。さらに具体的には、本発明は、亜鉛メッキやアルミニウム被覆などの加熱被覆工程および連続熱処理工程(たとえば、鋼板の連続焼なまし工程、または鋼線のパテンティング工程)で行われるような、保護気体中における熱処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
誘導加熱装置は、移動する金属製品を加熱するために長年にわたって使用されてきた。使用される誘導子は、一般的に高周波電流が流れ、移動製品を完全に取り巻く1または複数の巻き部材を含んでいる。この誘導子は長手方向の磁束(すなわち、製品の移動方向の磁束)を発生し、それによって磁性物質を発熱させる。
さらに周知の他の誘導加熱装置は、移動製品の表面と平行の面に電流が流れる巻き部材が配置され、横断磁束が製品表面と垂直になるように構成されている。
【0003】
しかしながら、移動製品が被覆されておらず酸化が起こるような温度で処理されるときには、保護気体(たとえば、窒素と水素の混合物)中で誘導加熱を行わねばならず、誘導加熱装置のエンクロージャ(囲い)を完全に気密にして製品の酸化を防止しなければならない。
【0004】
先行技術のこの種の誘導加熱装置を使用する場合、フランス特許第2,688,802号で説明されているように、誘導加熱装置は気密性エンクロージャ内に直接に置かれる。誘導加熱手段の周囲は全面的に気密状態に密封されているから、誘導子への電源接続および誘導加熱手段を冷却する水冷回路への通路も気密にする必要がある。
気密性エンクロージャの中にある水冷回路は、保護気体の品質に重大な影響を与える。なぜなら、少しでも水が漏れるとガスが汚染され、製品が酸化されるかもしれないからである。さらに、誘導子を気密性エンクロージャの中に配置すると、メンテナンスが非常に複雑になり、エンクロージャから誘導素子の全体を取り出すのに十分な開口部と補助手段が必要となる。
【0005】
さらに、移動製品を取り巻いている誘導手段に開口部が無い限り、誘導手段を取り出すとき、処理中の移動製品を切断しなければならない。また、誘導手段を炉の中に配置すると、導電性が無く高温に耐える支持手段が必要となる。
最後に、誘導手段に対して作業を行う場合、設備の全体を停止する必要がある。なぜなら、空気とガスの気密性はもはや保証されないからである。
【0006】
米国特許第1,749,700号および英国特許第2,155,740号で説明されるような先行技術の誘導加熱装置では、移動する金属製品の周りの保護気体を維持するような気密性エンクロージャの外側に誘導手段が配置される。しかしながら、これらの実施例では、電気的絶縁性のエンクロージャが誘導手段を越えて延長されてはいない。
【0007】
したがって、誘導手段へと戻る誘導磁束によって誘起された電流がエンクロージャの導電性部品に流れる可能性がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の欠点を除き、移動する金属製品の周りに最良の空気およびガス気密性を保証すると共に、誘導手段上の作業を容易にし、装置の過熱を防止するような、保護気体中を移動する金属製品のための誘導加熱装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、保護気体中において連続的に移動する金属製品を誘導加熱する装置であって、誘導手段と、前記金属製品と前記誘導手段との間に前記金属製品を取り囲むように配置された、熱と電気に関して絶縁性を有する気密性エンクロージャとを具備し、前記誘導手段は、前記金属製品の移動方向に垂直な平面で前記金属製品を取り囲むと共に、高周波電流発電器または発電機に接続された少なくとも一巻きの導電性部材を含み、前記気密性エンクロージャは、前記誘導手段の導電性部材の内部で、前記移動方向に該誘導手段を貫通するように配置されると共に、前記移動方向において、前記誘導手段の上流および下流に延在し、かつ復帰誘導磁束との交差区域を形成するのに十分な距離にわたって延在している。
【0010】
この気密性エンクロージャは、金属部分を発熱させることなく、誘導磁束を誘導手段へ戻すための区域を形成する。したがって、本発明によれば、シール部分は誘導手段の周りになく、誘導手段と金属製品との間に存在するにすぎない。もはや、電流と水を誘導手段へ供給するための気密性通路を設ける必要はない。
【0011】
さらに、誘導手段に対する作業(特に、誘導手段を取り外す作業)によって、移動する金属製品を取り巻く保護気体が乱されることはない。誘導手段は金属製品を完全に取り巻いているが、誘導手段に対して作業を行いそれを取り外す場合でも、移動する金属製品は気密性エンクロージャの中で保護され続ける。
【0012】
本発明の他の側面によれば、保護気体中において移動する製品(たとえば、鋼鉄のストリップまたはワイヤ)を連続的に熱処理する設備に、複数の連続した熱処理室を設けることができる。
【0013】
本発明によれば、前記の設備は、本発明による加熱装置を含む誘導加熱セクションと、移動する製品が一度だけ通る、誘導加熱装置を前記処理室に接続する移動トンネルとから構成される。誘導加熱装置は、鋼鉄のストリップまたはワイヤが移動トンネルを一度だけ通って炉セクションに入ったときそれらを加熱し、誘導加熱装置のすべての周辺部は外気の中でアクセス可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明から明らかになる。添付図面を参照して説明するが、これらの図面は、本発明を限定するものではない。
【0015】
以下の説明では、誘導加熱装置を使用して、保護気体中において移動する製品(たとえば、ストリップ1)を連続的に熱処理する場合を説明する。この種の熱処理は、移動する鋼鉄ワイヤに対しても適用することができる。
【0016】
保護気体は一般的に窒素と水素の混合物で、熱処理の間に製品が酸化されるのを防ぐ。周知のように、前記の設備はストリップ1を600℃から900℃の温度へ加熱する処理室、温度維持室、徐冷室、急冷室、誘導加熱セクション、中間温度維持室、および最終冷却室を、この順序で含んでいる。
【0017】
図1で、ストリップ1は左側にある急冷室を出て、移動トンネル3と誘導加熱セクションを通り、中間温度維持室2に入る。熱処理室の各々は、窒素と水素の混合物を含んでなる還元性ガスの保護気体を各室の内部に維持する密封手段によって取り囲まれている。この窒素水素混合物は、露点が低く、残存酸素が非常に低レベルのものである。ストリップ1は、中間温度維持室2の中で、張りローラ(jockey roller)によって区分された1または複数の垂直走行経路を通過する。
【0018】
図3(A)に示されるように、本発明の誘導加熱装置は、誘導手段4と、移動するストリップ1と誘導手段4の間にあって、ストリップ1を取り囲むように配置された非金属の気密性エンクロージャ7とを含んでいる。気密性エンクロージャ7は熱的および電気的絶縁性を有し、移動する製品はこの非伝導性エンクロージャで取り巻かれていることとなる。
【0019】
本実施例では、図2に示されるように、誘導手段4は高周波電流発電機45に接続された少なくとも1巻きの導電性巻き部材を含み、この巻き部材はストリップ1の移動方向Fに垂直な平面においてストリップ1を包囲している。したがって、気密性エンクロージャは、誘導手段4の巻き部材の内部に位置している。
【0020】
気密性エンクロージャ7は移動方向Fに平行して誘導手段4の上流および下流に延在しており、その延びる距離は、復帰誘導磁束が交差する区域を形成するのに十分な距離である。この距離は少なくとも200mmであり、好ましくは300mmにすることが望ましい。気密性エンクロージャは非導電性であり、復帰誘導磁束によって誘起された電流が流れることはない。
【0021】
もちろん、図3(A)は一巻きの巻き部材から成る単一の誘導子を示している。複数の誘導手段4を移動方向Fに連続して配置することができるが、その場合、誘導子は少なくとも100mmの距離を置いて離され、単一の気密性エンクロージャ7が誘導加熱セクションを通してストリップ1を保護するようにすることができる。
【0022】
気密性エンクロージャ7は、気密性を保った状態で処理室へ接続される。なぜなら、誘導加熱装置は、保護気体中で移動製品を処理するためにこれら処理室の上流またはこれら処理室の間に配置するように設計されるからである。このような気密性の接続は、従来型のフランジ8およびガスケットを使用することによって、または他の既知の方法によって達成することができる。
【0023】
この実施例における気密性エンクロージャ7には、柔軟性スリーブを使用できる。この柔軟性スリーブは1つまたは複数の層7aで構成される。層7aは熱および電気に関して非伝導性の布または織布からなり、その外面は少なくとも100℃の温度に耐えることができる気密性物質より成るフィルム7bで被覆されている。この例では、誘導加熱セクション内の環境温度が400℃を超えることはなく、柔軟性スリーブはガラス繊維素材の7つの層7aにより構成され、その外面はポリテトラフルオルエチレンの気密性フィルム7bで被覆されている。絶縁性の層7aはセラミック繊維から作ることもできる。柔軟性スリーブは上下にある固定フランジ8の間で伸張され、炉内の圧力によって誘導手段4の内壁へ押しつけられている。この圧力は100Paから200Paのオーダである。
【0024】
誘導加熱装置が設備内の高温領域(たとえば、本来の加熱炉の中)に配置される場合、スリーブの外側に非気密性の耐熱性材料で構成されたマッフル11を配置することができる。気密性エンクロージャとしては、気密性のセラミック被覆管も使用することができる。
【0025】
図2および図3(B)に明確に示されるように、誘導手段4はストリップ1の周りを取り巻く単一の長方形の巻き部材を含む。この巻き部材は3つの金属板42、43、44から構成されている。誘導手段4には、それを冷却するための水冷コイル41が取り付けられている。金属板42、43、44の構造は、相互に(さらに、発電機45からも)取り外すことができるようになっている。
【0026】
この実施例では、誘導手段4は5つの金属板(銅板)から構成されている。2つの金属板43が発電機45へ接続され、2つの金属板42が相互に向き合ってストリップ1と平行した側面部分を形成し、1つの金属板44が発電機45の反対側にあって巻き部材を閉止している。これらの金属板は、完全な電気接触が生じるように、取り外し可能な固定手段46(たとえば、ボルト46)によって堅く締め付けられている。
【0027】
誘導手段4がこのような構造になっているので、金属板の固定手段を取り外した後では、ストリップ1を切断しなくても、また気密性エンクロージャ7を切開しなくても、誘導手段4に対して作業を遂行することが可能である。
【0028】
この実施例では、使用される電流の周波数は15kHzより大きく、好ましくは30kHzよりも大きいことが望ましい。
誘導手段4と気密性エンクロージャ7から構成される空間は、気密性でない保護ケース9によって全面的に取り囲み、誘導子の周りに連続的な電気回路が生じるのを防止することが望ましい。もし必要であれば、誘導加熱セクションの上下に安定化ローラ10を配置して、ストリップ1のキャンバを減少させるためにそれを少し偏向させたり、ストリップ1が誘導手段4の中央に来るように調節することができる。
【0029】
金属板42、43、44および水冷コイル41は、通常、すべて銅で作られる。移動するストリップ1が一度だけ通る移動トンネル3により、誘導加熱装置が急冷室へ接続され(図示していない)、中間温度維持室2へと接続される。
誘導加熱装置は、ストリップが一度だけ通る炉の中で、外気中で誘導加熱装置のすべての周辺部をアクセスできるようなセクションに配置することが必須である。
【0030】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、ここで説明した実施例に多くの変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】誘導加熱セクションと、それに続いた中間温度維持室を含む熱処理設備の略図である。
【図2】本発明に従う誘導加熱装置の略図である。
【図3】図3(A)は、本発明に従う誘導加熱装置の立面図である。図3(B)は、図3(A)のAの部分を拡大して詳細に示した図である。
【符号の説明】
1 ストリップ
2 徐冷室
3 移送トンネル
4 誘導手段
7 気密性エンクロージャー
10 安定化ローラ
45 発電機
42、43、44 金属板

Claims (12)

  1. 保護気体中において連続的に移動する金属製品を誘導加熱する装置であって、誘導手段と、前記金属製品と前記誘導手段との間に前記金属製品を取り囲むように配置された、熱と電気に関して絶縁性を有する気密性エンクロージャとを具備し、
    前記誘導手段は、前記金属製品の移動方向に垂直な平面で前記金属製品を取り囲むと共に、高周波電流発電器または発電機に接続された少なくとも一巻きの導電性部材を含み、
    前記気密性エンクロージャは、前記誘導手段の導電性部材の内部で、前記移動方向に該誘導手段を貫通するように配置されると共に、前記移動方向において、前記誘導手段の上流および下流に延在し、かつ復帰誘導磁束との交差区域を形成するのに十分な距離にわたって延在することを特徴とする金属製品の誘導加熱装置。
  2. 前記距離が少なくとも200mm、さらに望ましくは300mmであることを特徴とする請求項1に記載の金属製品の誘導加熱装置。
  3. 前記誘導加熱装置が、前記保護気体中で前記金属製品を処理するための複数の処理室の間または処理室の上流側に配置され、前記気密性エンクロージャが、気密性を保持して前記処理室へ接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属製品の誘導加熱装置。
  4. 前記気密性エンクロージャが、熱および電気に対して絶縁性の布の一以上の層を含む柔軟性スリーブを含み、該布の外面が少なくとも100℃の温度に耐える気密性物質のフィルムで被覆されていることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の金属製品の誘導加熱装置。
  5. 前記柔軟性スリーブの前記絶縁性布がガラス繊維布またはセラミック繊維布であることを特徴とする請求項4に記載の金属製品の誘導加熱装置。
  6. 前記フィルムがポリテトラフルオルエチレンを含んでなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の金属製品の誘導加熱装置。
  7. 前記気密性エンクロージャが、前記柔軟性スリーブの外側にある耐熱性材料から構成されたマッフルを含むことを特徴とする請求項4ないし請求項のいずれかに記載の金属製品の誘導加熱装置。
  8. 気密性エンクロージャが気密性セラミック被覆管であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の金属製品の誘導加熱装置。
  9. 前記誘導手段が少なくとも1つの誘導子を含み、該誘導子は、前記金属製品を取り囲む長方形断面の巻き部材から構成され、前記発電器または発電機に対して取り外し可能に一緒に組み立てられる少なくとも3つの金属板を含んでいることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の金属製品の誘導加熱装置。
  10. 移動する鋼鉄ストリップまたは鋼鉄ワイヤといった製品を保護気体中で連続的に熱処理する設備であって、
    複数の連続した熱処理室と、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された誘導加熱装置を含む誘導加熱セクションと、前記移動する製品が一度だけ通る、前記誘導加熱装置を前記処理室へ接続している移送トンネルとを具備する熱処理設備。
  11. 前記誘導手段および前記気密性エンクロージャを含む空間のすべてが、前記誘導手段の周りの連続電気回路の形成を防ぐ非気密性保護ケースによって取り囲まれていることを特徴とする請求項10に記載の熱処理設備。
  12. 前記ストリップのキャンバを減少させる小さな偏向を前記ストリップへ印加し、前記ストリップを前記誘導手段の中央に位置づけるように、前記誘導加熱セクションの両側に設けた安定化ローラを有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の熱処理設備。
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