JP4010595B2 - 記録材料の再利用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として試し刷り等に使用される再利用可能な記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータの普及により各種文書が電子化され、さらに電子メール等の普及に伴い、文書が電子化されCRT上のみでやり取りされることが多くなっているが、かかる電子化された文書であっても各種プリンターにより紙等の媒体に出力されることは依然として多い。またプリンターで出力する場合には試し刷り等の目的で最初から保存を目的とせずに出力される場合も多く、紙等の記録材料の無駄が大量に発生しているのが実情である。
【0003】
従って、記録材料を何度も使用するために化学処理により色が消失するインクを使用することも考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのような化学処理ではインク等の成分が記録材料上に残留し、記録性能が次第に劣化してしまい好ましくない。
【0005】
そこで、本発明では、最初から保存を目的とせずに出力される場合に、特にインクジェット記録により何度も繰り返して印字でき、多数回使用しても記録性能が劣化することのない記録材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明の、実質的に揮発可能な溶媒により有限膨潤しうる溶媒吸収性樹脂を主体として、又は当該溶媒吸収性樹脂と溶媒親和性が高い高結晶性微粒子とを主体として構成され、溶媒が存在しない場合は白濁していないが、溶媒を受容すると白濁する溶媒受容層を有する記録材料により達成される。
【0007】
実質的に揮発可能な溶媒をインクとしてインクジェット記録により印字すると溶媒受容層の印字部分が溶媒を吸収して膨潤し白濁して、当該印字部分が認識できるようになり、これは、白濁した印字部分と、非印字部分との間で屈折率の差が生じることによるものである。そして記録後に放置しておくと溶媒が蒸発し、印字部分は再び白濁していない状態となり、先の印字による残留物はなく、先と同様な条件でインクジェット記録が可能となる。
【0008】
さらに、別の本発明の記録材料の好ましい態様は、溶媒受容層の下部に着色層を有する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の記録材料につき詳細に説明する。
【0010】
本発明の記録材料は、実質的に揮発可能な溶媒により有限膨潤しうる溶媒吸収性樹脂又は溶媒親和性が高い高結晶性微粒子を主体として構成され、溶媒が存在しない場合は白濁していないが、溶媒を受容すると白濁する溶媒受容層を有する。
【0011】
かかる溶媒受容層は支持体上に設けられてもよく、また溶媒受容層自体がインクジェット記録に適するような厚さ、機械的強度等の性質を備えているならば、支持体を使用することなく溶媒受容層自体を本発明のインクジェット記録材料とすることもできる。
【0012】
記録材料に溶媒受容層保持のための支持体を使用する場合は、例えばポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、及びこれらのポリマーを構成するモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマー等の材料からなるプラスチックフィルム又はシート、紙、ガラス板、金属シート、紙を前記のような材料のシートに積層したもの等が使用可能である。中でも耐熱性、機械的強度、寸法安定性、コスト等の点からポリエステルからなるフィルムあるいはシートが好ましい。厚さは記録材料がインクジェット印刷に必要十分な機械的強度を有するものであればよく、また材料によって変化するが通常は20〜100μm、好ましくは20〜50μm程度である。
【0013】
ところで、一般に「膨潤」とは物質が溶媒を吸収して膨らむことをいうが、本発明での「膨潤」は溶媒を吸収し続け、やがては膨らみが溶媒全体に拡がる無限膨潤は含まず、一定の大きさまで膨らめば停止する有限膨潤のみを意味する。
【0014】
具体的に本発明の記録材料の溶媒受容層は、第一の態様として、実質的に揮発可能な溶媒、例えば水、エチルアルコール、メチルアルコール、グリセリン等のようなアルコール、エチレングリコールのようなグリコール等により有限膨潤しうる溶媒吸収性樹脂を主体として構成される。
【0015】
このような溶媒吸収性樹脂としては、インクに用いる溶媒に溶解しない物質、例えばポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジリウムハライド、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、ゼラチン、澱粉、セルロース、カゼイン、キチン、キトサン等の天然高分子、ポリエチレンオキサイドやその架橋物、共重合体等の高吸収性樹脂が使用可能である。
【0016】
また、本発明の記録材料の溶媒受容層は、第二の態様として、上述の溶媒吸収性樹脂と溶媒親和性が高い高結晶性微粒子とを主体として構成したものであってもよく、このような溶媒親和性が高い高結晶性微粒子としては、水酸化アルミナ、アルミナ水和物、スメクタイト、雲母、(高吸水性、高吸油性)高分子微粒子等が挙げられる。この場合の溶媒吸収性樹脂と微粒子の混合割合は100:10〜100:600の範囲が好適である。特にアルミナ水和物のような一次粒子径が200オングストローム以下のものを用いた場合は、膜として保持できるならば樹脂の等倍以上が好ましく、中心細孔半径を100オングストローム以下に制御することが溶媒吸収性と膨潤性において最も好ましい。
【0017】
このような樹脂を主体に溶媒受容層を構成することにより、各々に応じた水、アルコールなどの実質的に揮発可能な溶媒をインクとしてインクジェット記録により印字すると溶媒受容層の印字部分が溶媒を吸収・膨潤して白濁し、非印字部分に対して認識できるようになる。
【0018】
そして記録後は放置しておくことにより溶媒が蒸発し、印字部分は再び白濁していない状態になり、先の印字による残留物はなく、再度インクジェット記録が可能となる。
【0019】
溶媒受容層の厚さは特に限定されないが、支持体をも兼ねる場合には搬送性を考慮して25〜200μm程度であり、支持体上に塗膜として形成する場合は1〜30μm程度である。塗膜として形成するのに1〜30μmとしたのは30μmを超えると溶媒受容層が溶媒を受容しても白濁しにくく印字部分が視認しにくくなり、一方1μm未満であると印字部における溶媒受容が不十分となり、非印字部分との屈折率の差が生じにくくなるからである。
【0020】
なお、溶媒受容層には、塗膜形成後の溶媒吸収性を損なわない程度にレベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、その他の添加剤を添加したものであってもよい。また、ブロッキング防止剤としての多孔性の顔料を溶媒吸収性を損なわない程度に添加してもよいが、この場合の溶媒吸収性樹脂と顔料等との添加割合は最高で樹脂100重量部に対して5重量部までの範囲が好適である。種類にもよるがこれ以上添加すると溶媒の吸収性能を顔料が助けるようになる結果、膨潤した際に白濁しにくくなるか、顔料の添加により記録材料全体の白色度が上がり、白濁した印字部分と、そうでない印字部分との間の屈折率の差が少なくなりすぎるからである。
【0021】
上記のような溶媒受容層は、支持体上に塗膜として形成する場合には、上述の樹脂を単独あるいは混合したもの、必要に応じて添加された添加剤をプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチレングリコールモノメチルエーテル、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等の有機溶剤、水等の適当な溶剤に溶解又は分散させて塗工液を調整し、例えばロールコーティング法、バーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法など公知の方法により支持体上に塗布・乾燥して製造でき、また溶媒受容層自体で記録材料を構成させる場合は、製膜機等を用いて所定厚みの記録材料を製造することができる。
【0022】
さらに、上述の溶媒受容層の下部に着色層を設けてもよい。溶媒受容層を支持体上に設けた場合は溶媒受容層を設けたのとは反対面の支持体上に、あるいは溶媒受容層と支持体の間に着色層を設けることができ、支持体を使用していない場合は溶媒受容層の印刷面の反対側に着色層を設けることができる。着色層を設けることにより、溶媒受容層が溶媒を受容して白濁するとこの着色層が溶媒受容層及び支持体を通して視認できなくなり、白濁した印字部分の溶媒受容層と着色層の色彩のコントラストにより印字部がより明確に認識されるようになる。
【0023】
このような着色層は上記の支持体に適当なものとして挙げたような材料を使用し、それらに顔料・染料等を配合したもの、あるいはその上に顔料・染料等を含む塗料を塗布したもの等から構成することができ、接着剤を使用するか、あるいは熱圧着する等の公知の方法で支持体等に積層することができる。着色層の厚さも特に限定されるものではなく、上記のような厚さの支持体を使用した場合は、1〜30μm程度、より好ましくは5〜20μm程度とすることができる。
【0024】
上記のようにして得られた本発明の記録材料には、溶媒受容層を印字面として通常のインクジェットプリンターにより印刷することができる。但し記録材料を何度も使用できるように、実質的に揮発可能な溶媒のみからなるインクを用いて印刷を行う。このような揮発可能な溶媒としては、例えば水、エチルアルコール、メチルアルコール、グリセリン等のようなアルコール、エチレングリコールのようなグリコール等が挙げられるが、何ら限定されるものではない。またインクとして使用する溶媒には防腐剤等の添加剤を添加してもよいが、溶媒が蒸発しても溶媒受容層に残留するような添加剤は徐々に本発明の記録材料の記録性能を低下させるので、多量に添加することは好ましくない。
【0025】
このような溶媒をインクとしてインクジェット印刷することにより、本発明の記録材料の溶媒受容層の印字部は白濁して周囲の白濁していない非印字部分と区別でき、印字状態を確認することができる。そして印字後の本発明の記録材料は、使用した溶媒の種類や周囲温度等の条件に依存する速度で速やかに乾燥することにより印刷前と同じ白濁していない状態に戻り、再び同様のインクジェット印刷を行うことができる。
【0026】
尚、上記溶媒にセロソルブ、アノン等の揮発速度の遅い溶剤を少量加えることにより、印字部の保存期間を適宜調整することも可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、特記しない限り「部」「%」は重量基準である。
【0028】
[実施例1]
厚さ75μmの透明ポリエステルフィルム(ルミラーQ−81:東レ社)上に、水単独では溶解できないポリエチレンオキサイド共重合体(アクアコーク:住友精化社)をシクロヘキサノンで10%に調整し、メイヤーバーコーター法により塗布乾燥させ、厚さ5μmの溶媒受容層を形成し、記録材料を得た。
【0029】
この記録材料の溶媒受容層にインクジェットプリンター(BJC410J:キャノン社)で、通常のインクの代わりに水を使用し画像を記録したところ、印字部が印字後白濁してきてはっきり文字が識別できた。更に、1日放置しておくと、水が乾き、印字部が識別できなくなり再利用可能になった。
【0030】
[実施例2]
ポリエチレンオキサイド共重合体(アクアコーク:住友精化社)に対し、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂(ソアノール:日本合成化学工業社)を30%溶融添加し、製膜機により、厚さ100μmの溶媒受容層を兼ねたフィルムを製膜し、記録材料を得た。
【0031】
この記録材料の記録層に実施例1と同様に記録したところ、同様の結果が得られ、更に1日放置しておくと、水が乾き印字部が識別できなくなり再利用可能になった。
【0032】
[実施例3]
実施例1のフィルム上に、ポリビニルアルコール(ゴーセノールKH−17:日本合成化学工業社)に対しアルミナゾル(川研ファインケミカル社)を500%加え、10%溶液に調整し、メイヤーバーコーター法により塗布乾燥させ、厚さ5μmの溶媒受容層を形成し、記録材料を得た。
【0033】
この記録材料の記録層に実施例1と同様に記録したところ、同様の結果が得られ、更に1日放置しておくと、水が乾き印字部が識別できなくなり再利用可能になった。
【0034】
[比較例1]
実施例1のフィルム上に、ポリビニルアルコール(ゴーセノールKH−17:日本合成化学工業社)を10%に調整し、メイヤーバーコーター法により塗布乾燥させ、厚さ5μmの溶媒受容層を形成し、記録材料を得た。
【0035】
この記録材料の記録層に実施例1と同様に記録したところ、印字部は確認できなかった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の記録材料はインクジェット記録により繰り返して印字ができ、その印字状態を確認することができるので、紙等の使い捨ての記録材料の使用を大幅に節減することができる。
Claims (2)
- 水、アルコール、グリコールから選ばれる溶媒により有限膨潤しうる溶媒吸収性樹脂を主体として構成され、前記溶媒が存在しない場合は白濁していないが、前記溶媒を受容すると白濁する溶媒受容層を有してなる記録材料に、前記溶媒のみからなるインクでインクジェットプリンターにより記録し、前記溶媒が揮発した後に繰り返しインクジェットプリンターにより記録することを特徴とする記録材料の再利用方法。
- 水、アルコール、グリコールから選ばれる溶媒により有限膨潤しうる溶媒吸収性樹脂と溶媒親和性が高い高結晶性微粒子とを主体として構成され、前記溶媒が存在しない場合は白濁していないが、前記溶媒を受容すると白濁する溶媒受容層を有し、前記高結晶性微粒子として一次粒子径が200オングストローム以下である高結晶性微粒子を用いてなる記録材料に、前記溶媒のみからなるインクでインクジェットプリンターにより記録し、前記溶媒が揮発した後に繰り返しインクジェットプリンターにより記録することを特徴とする記録材料の再利用方法。
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1997
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