JP4010281B2 - 膜厚測定方法及び膜厚測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光測定を利用して膜体の膜厚を測定するための膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関する。本発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置は、例えば、半導体製造工程などにおいてウエハ基板上に形成された各種薄膜の膜厚の検査等の各種分野で広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
紫外光、可視光又は赤外光を利用した分光光度計の応用分野の一つとして、薄膜状の試料に対する膜厚の測定がある(例えば特許文献1、2など参照)。分光測定を用いた膜厚測定の基本原理について図2により説明する。膜状の試料Sに対して波長λの測定光を入射すると、その入射光の一部は試料Sの表面S1で反射され、残りは試料S内部に入り込んで、その一部は光の入射面とは反対側の境界面S2で反射して試料S内部を再び戻り、試料Sの表面S1から外部へと出射する。前者の反射光と後者の透過反射光とでは光路差が生じるため、測定光の波長λと膜厚dとに応じた干渉が発生する。
【0003】
測定光の波長を所定範囲で走査したとき、波数(又は波長)を横軸に、干渉光の強度を縦軸にとってグラフを描くと、波状のスペクトル波形が得られる。このスペクトル波形は余弦関数で表すことができ、その余弦関数の周期は膜厚に対応したものとなる。そこで、このスペクトル波形を利用して、そのスペクトルに現れているピークの山又は谷に対応する波数を自動又は手動で読み取り、それらの波数間隔情報を最小二乗法などにより求め、試料Sに対する既知の屈折率nを利用して波数周期から膜厚を算出する。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−107034号公報
【特許文献2】
特開平5−231823号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、分光測定によって得られるスペクトル波形は、種々の要因のために理想的な余弦波形にならないことが多い。スペクトル波形を乱す要因としては、例えば、干渉効率の波数依存性、光源のエネルギ分布の波数依存性、装置の各種ノイズなどが考え得る。従来の膜厚の算出方法ではこうした要因が考慮されていないため、膜厚の算出精度を高めることが困難であった。
【0006】
また、上記従来の膜厚算出方法では、スペクトル中に含まれるピークの山及び谷の数(つまり干渉波の周期数)が多いほどノイズや各種の変動要因の影響が相対的に軽減され、膜厚の算出精度が向上する。逆に言えば、スペクトル中に含まれる干渉波の周期数が少ないとそれだけ膜厚の算出誤差が大きくなる。一般に用いられる可視紫外分光光度計を用いた分光測定では、測定光の可視光を利用した波長範囲が380〜800nm程度であり、SiO2等、屈折率が1.4近傍であるような試料で且つその膜厚が約400nmよりも薄いような場合には、スペクトル中に含まれる干渉波は1周期程度か又はそれに満たない。そのため、上記従来の膜厚算出方法では、こうした薄い膜体の膜厚を測定することは実質的に不可能である。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みて成されたものであり、その主な目的は、可視光を利用した分光測定の結果に基づいて、400nmを下回るような薄い膜体についても高い精度で膜厚を算出することができる膜厚測定方法及び膜厚測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段、及び効果】
膜状の試料の膜厚の算出精度を向上させるべく、本出願人は特願2002−147107号において新規な膜厚測定方法及び装置を提案している。この方法では、屈折率を考慮した上で膜厚を変数として含む基底スペクトルを作成し、この基底スペクトルの線形和で得られる近似スペクトルで測定スペクトルを近似する。そして、或る膜厚を想定したときの測定スペクトルに対する二乗誤差が最小になるような近似スペクトルを求め、その想定膜厚を順次変更して最小二乗誤差の曲線を得る。この最小二乗誤差が極小となるような膜厚が最もそれらしい膜厚であるから、これを最終的な膜厚として決定する。これによれば、スペクトルの波形の乱れの影響を軽減して、膜厚を算出することができる。
【0009】
上述した如く膜厚が薄い場合(例えば400nm以下)であっても、二乗誤差の誤差曲線を求めることが可能であるが、その曲線はかなりブロードになって極小値があまり明確でないという現象がみられる。本発明者の検討の結果、この現象の理由として次のような知見を得るに至った。すなわち、当然のことながら膜厚は正値であるから、これまでは膜厚が正である範囲についてのみ誤差曲線を計算している。ところが、計算上では、膜厚が負である範囲にも誤差曲線が存在し得る。膜厚が厚い場合には膜厚が負である範囲と正である範囲とにそれぞれ存在するピークは互いに干渉しないが(或いはピークの裾部は干渉するがピークトップには影響しない)、膜厚が薄い場合には両ピークが互いに近づいて干渉し、その結果、誤差曲線がブロードになるものと考えられる。
【0010】
そこで、本発明に係る膜厚測定方法及び装置では、上記のような知見に基づき、膜厚が負である範囲も考慮して誤差曲線を求め、その上で正の範囲及び負の範囲に存在するピークを分離して極小値を精度良く得られるようにしている。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するために成された第1発明は、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体内部を透過して反対側の境界面で反射して表面から出てくる透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて膜体の膜厚を求める膜厚測定方法において、
スペクトルの波形形状を近似する近似スペクトルの生成情報として、膜厚を変数として含み波数又は波長に応じて周期変化する項及びオフセットの項を含む、基底スペクトルの線形和による近似演算式を予め用意しておき、測定スペクトルに基づいて膜厚を算出するために、
a)未知である膜厚を想定し、その想定膜厚において前記生成情報を用いて生成される近似スペクトルと測定スペクトルとの誤差に基づいて最適近似を行い、その想定膜厚における最小二乗誤差を求める誤差算出処理と、
b)前記想定膜厚を所定範囲で順次変化させつつ前記誤差算出処理を実行することにより、各想定膜厚に対する最小二乗誤差を順次求め、想定膜厚と最小二乗誤差との関係を表す誤差曲線を求める第1誤差曲線取得処理と、
c)正の膜厚を想定した前記誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に対して線対称とした負領域における誤差曲線を求めるとともに、その正負領域における誤差曲線から膜厚ゼロ点における誤差情報を補間する第2誤差曲線取得処理と、
d)正負領域に跨る前記誤差曲線において正領域及び負領域にそれぞれピークが存在するものとしてピーク分離を行うピーク分離処理と、
e)分離された正領域のピーク曲線において極小点を与える膜厚を見い出す膜厚探索処理と、
を有することを特徴としている。
【0012】
また、上記課題を解決するために成された第2発明は第1発明を具現化する装置であって、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体内部を透過して反対側の境界面で反射して表面から出てくる透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて膜体の膜厚を求める膜厚測定装置において、
a)測定スペクトルの波形形状を近似する近似スペクトルの生成情報として、膜厚を変数として含み波数又は波長に応じて周期変化する項及びオフセットの項を含む、基底スペクトルの線形和による近似演算式を予め格納しておく記憶手段と、
b)未知である膜厚を想定し、その想定膜厚において前記生成情報を用いて生成される近似スペクトルと測定スペクトルとの誤差に基づいて最適近似を行い、その想定膜厚における最小二乗誤差を求める誤差算出手段と、
c)前記想定膜厚を所定範囲で順次変化させつつ前記誤差算出処理を実行することにより、各想定膜厚に対する最小二乗誤差を順次求め、想定膜厚と最小二乗誤差との関係を表す誤差曲線を求める第1誤差曲線取得手段と、
d)正の膜厚を想定した前記誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に対して線対称とした負領域における誤差曲線を求めるとともに、その正負領域における誤差曲線から膜厚ゼロ点における誤差情報を補間する第2誤差曲線取得手段と、
e)正負領域に跨る前記誤差曲線において正領域及び負領域にそれぞれピークが存在するものとしてピーク分離を行うピーク分離手段と、
f)分離された正領域のピーク曲線において極小点を与える膜厚を見い出す膜厚探索手段と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
この第1及び第2発明に係る膜厚測定方法及び装置によれば、計算上、膜厚が負である範囲と正である範囲とにそれぞれ存在するピークは分離されるので、両ピークの干渉の影響が除去され、そのピークトップである極小値の位置が正確に求まる。それによって、膜厚が薄いような試料に対しても高い精度で膜厚値を算出することができる。
【0014】
なお、一般的には誤差曲線のピークで極小値を与える膜厚が求める値であるが、ピーク分離処理などによってはピークが若干ずれる場合もあり得る。そうした場合には、適宜にピークのずれを補正するような処理を行っても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る膜厚測定方法の原理を説明する。
【0016】
いま、或る膜体を測定した結果として得られるスペクトルの一例を図4に示す。図4で横軸は波数(カイザー)、縦軸は相対強度である。このスペクトルの波形から、次のようなことが把握できる。
(i)一定周期の干渉波パターンが存在する。
(ii)オフセットが存在する。
(iii)右上がりにほぼ線形のドリフトが存在する。
(iv)干渉効率のため、波数が大きいほど干渉波の振幅が小さくなる。
こうした点を考慮すると、干渉波の周期ωが既知であれば、干渉スペクトル波形は次の(1)式で近似できると予測される。
f(x)=α0+α1x+α2(1/x)sin(ωx+δ) …(1)
上記(1)式において、右辺の第1項はオフセットを反映し、第2項はドリフトを反映し、第3項は波形状の周期性波形を反映している。更に詳しく言えば、第3項の中の(1/x)の部分は波数増加に伴う振幅の減少を反映し、δは特に膜厚が大きい場合に顕著になる位相ずれを反映している。
【0017】
ここで、
sin(ωx+δ)=sinωxcosδ+cosωxsinδ
であるから、(1)式は(2)式に変形することができる。
f(x)=α0+α1x+α2(1/x)sinωx+α3(1/x)cosωx …(2)
すなわち、4つの関数f0(x),f1(x),f2(x),f3(x)を、
f0(x)=1
f1(x)=x
f2(x)=(1/x)sinωx
f3(x)=(1/x)cosωx
と定義すれば、測定によって取得された測定スペクトルg(x)は、上記4つの関数の線形和である、式(3)のように表される関数f(x) で近似表現できる筈である。
f(x)=α0f0(x)+α1f1(x)+α2f2(x)+α3f3(x) …(3)
【0018】
上記説明では周期ωが既知であるとしたが、実際にはこのω自体が未知である(正確に把握できない)。上記のような近似による近似スペクトルf(x)が測定スペクトルg(x)に最適に近似された状態というのは、両者の二乗誤差が最小であることと同意である。そこで、周期ωを変数とし、周期ωを変化させる毎に二乗誤差が最小となるような近似スペクトルを見つけてそのときの最小二乗誤差を取得し、周期ωを変化させたときの最小二乗誤差の変化において、最小二乗誤差が最も小さくなったときの周期ωが求めようとする周期である可能性が極めて高い。
【0019】
さて、ここで、試料膜の膜厚と干渉波形の周期との関係を考えてみる。周知のように、屈折率nである試料膜に入射角θで測定光が入射したとき(図2参照)に得られる反射光に基づいて膜厚dを算出する際の基本式は、次の(4)式である。
d=Δm /{2・(n2−sin2θ)1/2(1/λ2−1/λ1)} …(4)
ここで、Δmは、波長λ1のピークを基点として短波長側へピークを順次数えていったときに、波長λ2のピークが何番目に現われるかを示す数であり、通常はΔm=1とすればよい。
【0020】
周期T〔cm-1〕=1/λ2−1/λ1
を用いると(4)式は、
d=1/2・(n2−sin2θ)1/2T
であり、これを変形すると、
T=1/{2・(n2−sin2θ)1/2d}=1×107/{2・(n2−sin2θ)1/2d'}
となる。但し、d’は単位がcmであるdを単位nmで表現したものである。いまθ=0とすれば、sinθの項は無視できるから、次の(5)式の関係が成り立つ。
T=1×107/(2・n・d') …(5)
【0021】
(5)式で表したように、周期Tは膜厚d'の関数である。したがって、上述したように未知の周期ωを変数とすることは、未知の膜厚を変数とすることに置き換えられる。一方、上述したように、周期が既知であれば、測定スペクトルg(x)は近似スペクトルf(x)で良好に近似することができる。そこで、近似スペクトルの表現として基底スペクトルを導入し、測定スペクトルg(x)と近似スペクトルf(x)との誤差を表す誤差関数を、膜厚d'を変数として求めることを考える。
【0022】
いま、測定スペクトルと近似スペクトルとの測定点をそれぞれ、
【数1】
とする。このX、Yを用い、誤差関数ε(d')を次の(6)式で定義する。
【数2】
【0023】
上記(6-2)式において、T(d')は上記(5)式によるd'を変数としたときの周期Tである。すなわち、膜厚d'が決まれば(6-2)式で表現される基底スペクトルが定まるから、(6)式による二乗誤差が最小になるように測定点を見い出すことができる。したがって、膜厚として或る値を仮定すれば、測定スペクトル(原波形)に対する二乗誤差が最小となるような近似スペクトルを見つけることができ、その膜厚に対する最小二乗誤差が求まる。
【0024】
このようにして所定の膜厚範囲で所定膜厚間隔毎に、それぞれの膜厚に対して基底を定義し、その基底による最小二乗誤差を求め、各膜厚に対して最小二乗誤差を順次プロットしてゆくと図5に示すような誤差曲線が得られる。この誤差曲線によれば、約1750nmの膜厚において極小点(ピークトップ)が存在する。これは、膜厚が1750nmであるときに近似スペクトルf(x)が測定スペクトルg(x)に最も類似した形状になることを意味するから、求めるべき膜厚は1750nmであると結論付けることができる。
【0025】
上記のような膜厚算出方法が確かであることを検証するために、1750nmの膜厚を与える周期を式(5)より求めると、T=1950cm-1である。このときの近似スペクトルを測定スペクトルに重ねて描くと、図6に示すようになる。測定スペクトルの原波形はほぼ2000cm-1毎にピークを持っており、オフセットやドリフト、波形の振幅の減衰状態まで含めて、かなり高い精度で近似できていることがわかる。したがって、上記方法により算出される膜厚の精度は高いことがわかる。
【0026】
さて、膜厚が或る程度厚い場合には 図4に示したようにスペクトル中に複数の干渉波が存在するが、膜厚が400nmを下回るような場合には、図7に示すようにスペクトル中に1周期分の干渉波も含まれない。こうしたスペクトルデータに基づいて上記方法(膜厚範囲1〜700nmを想定)で図5に相当する誤差曲線を求めると図8に示すようになり、誤差曲線のピークはかなりブロードになって、ピークトップの位置があまり明確でなくなる。
【0027】
上記計算は膜厚範囲を正に限定しているが、膜厚範囲を負の範囲まで、つまり-700〜700nmに広げて同様の計算を行うと、その誤差曲線は図9に示すようになる。この図から判るように、負の範囲の-200nm近辺にピークトップが存在するピークの裾部は正の範囲の200nm近辺にピークトップが存在するピークの裾部と完全に重なる。この正負のピークの重なりが、ピークトップの位置を不明確にするとともにピークトップのずれを生じさせている原因であると考えられる。
【0028】
そこで、特に薄い膜厚を測定する場合には、膜厚が負である範囲も計算上、考慮する。理論的には、図9に示すように、膜厚が負である範囲の誤差曲線は膜厚が負である範囲の誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に関して折り返した(つまり線対称)ものに相当する。したがって、実際には膜厚を負の範囲まで広げて上記計算を実行する必要はなく、膜厚が正の範囲である誤差曲線を求め、これを折り返す処理を行うことによって所望の正負に跨る誤差曲線を得ることができる。但し、上記計算方法では、膜厚がゼロである点は逆行列が求まらないような一種の特異点であるため、計算によっては最小二乗誤差を得ることができない。したがって、正負範囲の誤差曲線を構成する値から適当な補間処理によって、膜厚ゼロ点に対する誤差の値を求めるようにするとよい。
【0029】
こうして、図9に示すような誤差曲線が求まったならば、従来知られているようなピーク分離手法(例えばローレンツフィッティング法、ガウスフィッティング法など)を用いて、図10に示すように、膜厚が正である範囲と負である範囲とにそれぞれ存在するピークを求める。このピーク波形では極小点が明確になるから、膜厚が正である範囲のピークの極小点から膜厚を求めればよい。図10の例では、ピーク分離によって得られたピークの極小点から、膜厚が204nmであると求まる。
【0030】
このようにして、本発明に係る膜厚算出方法によれば、従来の膜厚算出方法によっては算出が不可能であったような薄い膜厚についても、高い精度で膜厚を算出することができる。
【0031】
次に、上記膜厚算出方法を採用した膜厚測定装置の一実施例について説明する。図1は本実施例による膜厚測定装置の概略構成図である。
【0032】
この膜厚測定装置は、分光測定部として、光源1、分光部2、測定光学系3、光検出器4を含み、光検出器4による検出信号はスペクトル作成部5に与えられ、該スペクトル作成部5により作成された干渉スペクトルが演算処理部6に与えられて、後述するような所定の演算処理が実行されることにより膜厚が算出される。なお、スペクトル作成部5及び演算処理部6の実体は、CPUを中心に構成されるパーソナルコンピュータであって、該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより演算処理が達成される。
【0033】
この装置の動作を概略的に説明すると、まず光源1から発した白色光の中から、分光部2により特定の波長を有する単色光が取り出され、測定光学系3を介して膜状の試料Sに測定光として照射される。試料Sの表面や裏面などで反射した光は測定光学系3を介して光検出器4に導入され、これら反射光の強度に応じた電気信号がスペクトル作成部5に送られる。後述するように試料Sからの反射光は干渉光となるから、スペクトル作成部5は、測定光の波長走査に対応して光検出器4で得られる信号に基づいて、横軸が波数、縦軸が相対強度であるスペクトルを作成する。
【0034】
演算処理部6はこのスペクトルを受け取り、上記膜厚算出方法に基づく演算処理を実行する。図3はこの演算処理の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
まず、演算条件として、外部より膜厚範囲da〜dbと膜厚間隔Δdを指示する(ステップS1)。予めおおよその膜厚が既知である場合には、その膜厚を含むように適宜の膜厚範囲da〜dbを設定することにより、演算時間を短縮することが可能である。また、算出精度の点からは膜厚間隔Δdを小さくすることが好ましいが、膜厚間隔Δdを小さくするほど演算時間が長くなるから、必要な精度との兼ね合いで適宜に決めるとよい。例えば、図7に示した例の場合、膜厚範囲を1〜700nm、膜厚間隔を1nmとする。
【0036】
実際に演算処理が開始されると、まず計算上の想定膜厚dをdaに設定し(ステップS2)、上述したような最小二乗法により、測定スペクトルg(x)に対する二乗誤差εが最小となるような近似スペクトルf(x)を探索する。そして、その近似スペクトルが与える最小二乗誤差を取得する(ステップS3)。
【0037】
次に、そのときの想定膜厚dがdb以上であるか否かを判定し(ステップS4)、db未満であれば、d+Δdを新たな想定膜厚dとし(ステップS5)、ステップS3へと戻る。そして、ステップS4で想定膜厚dがdb以上であると判定されるまで、ステップS3、S4、S5なる処理を繰り返す。これにより、膜厚範囲da〜db内でΔd間隔毎に二乗誤差が最小になるような近似スペクトルが探索され、それに対応する最小二乗誤差が順次取得される。
【0038】
その結果、図8に示したような、膜厚と最小二乗誤差との関係を示す誤差曲線が得られる(ステップS6)。次に、この誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に対して負側へ折り返す処理を行う(ステップS7)。これにより、膜厚範囲1〜700nm、-1〜-700nmにおける誤差曲線が描かれる。その後に、その誤差曲線を利用したスプライン処理などの補間処理を実行し、膜厚ゼロ点に対する誤差の値を求める(ステップS8)。これにより、図9に示すように-700〜700nmに亘る全範囲の誤差曲線が求まる。
【0039】
この誤差曲線に対し、所定の方法によりピークの分離処理を実行する(ステップS9)。これにより、図10に示すように、正の範囲と負の範囲との2つのピークが分離される。そして、その正の範囲のピークにおいて極小点を探し、極小点を与える膜厚を取得する(ステップS10)。このようにして、高い精度で膜厚を算出することができる。
【0040】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。例えば、上記説明において近似スペクトルを表現するための基底のとり方は任意であって、上記記載のものに限らない。また、基底としてsin項や1/x項を除外してもよい。さらにまた、(3)式に示した関数f0(x),f1(x),f2(x),f3(x),f4(x),f5(x)の各項を適宜に変形又は加減することにより、近似精度を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である膜厚測定装置の概略構成図。
【図2】 分光測定を利用した膜厚測定の原理を説明するための図。
【図3】 本実施例の膜厚測定装置における膜厚算出の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図4】 干渉スペクトル波形の一例を示す図(膜厚が厚い場合)。
【図5】 本発明の膜厚測定方法により得られる、膜厚とスペクトル近似の最小二乗誤差との関係の一例を示すグラフ(膜厚が厚い場合)。
【図6】 測定スペクトルと本発明の膜厚測定方法で求められる近似スペクトルとを重ねて示した図。
【図7】 干渉スペクトル波形の一例を示す図(膜厚が薄い場合)。
【図8】 本発明の膜厚測定方法により得られる、膜厚とスペクトル近似の最小二乗誤差との関係の一例を示すグラフ(膜厚が薄い場合)。
【図9】 図8の誤差曲線を負方向に折り返した状態を示すグラフ。
【図10】 図9の誤差曲線から正負のピークを分離した状態を示すグラフ。
【符号の説明】
1…光源
2…分光部
3…測定光学系
4…光検出器
5…スペクトル作成部
6…演算処理部
S…試料
Claims (2)
- 測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体内部を透過して反対側の境界面で反射して表面から出てくる透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて膜体の膜厚を求める膜厚測定方法において、
スペクトルの波形形状を近似する近似スペクトルの生成情報として、膜厚を変数として含み波数又は波長に応じて周期変化する項及びオフセットの項を含む、基底スペクトルの線形和による近似演算式を予め用意しておき、測定スペクトルに基づいて膜厚を算出するために、
a)未知である膜厚を想定し、その想定膜厚において前記生成情報を用いて生成される近似スペクトルと測定スペクトルとの誤差に基づいて最適近似を行い、その想定膜厚における最小二乗誤差を求める誤差算出処理と、
b)前記想定膜厚を所定範囲で順次変化させつつ前記誤差算出処理を実行することにより、各想定膜厚に対する最小二乗誤差を順次求め、想定膜厚と最小二乗誤差との関係を表す誤差曲線を求める第1誤差曲線取得処理と、
c)正の膜厚を想定した前記誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に対して線対称とした負領域における誤差曲線を求めるとともに、その正負領域における誤差曲線から膜厚ゼロ点における誤差情報を補間する第2誤差曲線取得処理と、
d)正負領域に跨る前記誤差曲線において正領域及び負領域にそれぞれピークが存在するものとしてピーク分離を行うピーク分離処理と、
e)分離された正領域のピーク曲線において極小点を与える膜厚を見い出す膜厚探索処理と、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。 - 測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体内部を透過して反対側の境界面で反射して表面から出てくる透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて膜体の膜厚を求める膜厚測定装置において、
a)測定スペクトルの波形形状を近似する近似スペクトルの生成情報として、膜厚を変数として含み波数又は波長に応じて周期変化する項及びオフセットの項を含む、基底スペクトルの線形和による近似演算式を予め格納しておく記憶手段と、
b)未知である膜厚を想定し、その想定膜厚において前記生成情報を用いて生成される近似スペクトルと測定スペクトルとの誤差に基づいて最適近似を行い、その想定膜厚における最小二乗誤差を求める誤差算出手段と、
c)前記想定膜厚を所定範囲で順次変化させつつ前記誤差算出処理を実行することにより、各想定膜厚に対する最小二乗誤差を順次求め、想定膜厚と最小二乗誤差との関係を表す誤差曲線を求める第1誤差曲線取得手段と、
d)正の膜厚を想定した前記誤差曲線を膜厚ゼロ点を通る直線に対して線対称とした負領域における誤差曲線を求めるとともに、その正負領域における誤差曲線から膜厚ゼロ点における誤差情報を補間する第2誤差曲線取得手段と、
e)正負領域に跨る前記誤差曲線において正領域及び負領域にそれぞれピークが存在するものとしてピーク分離を行うピーク分離手段と、
f)分離された正領域のピーク曲線において極小点を与える膜厚を見い出す膜厚探索手段と、
を備えることを特徴とする膜厚測定装置。
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