JP2004226340A - フィルムの厚み測定方法およびフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるフィルムであっても高精度で厚みを測定できるフィルムの厚み測定方法と、そのような厚み測定方法を用いたフイルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ロール状に巻き取る前のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正する予め求めたフィルムの幅方向の位置と配向角との関係およびフィルムの配向角と測定厚さとの関係とに基づいてフィルムの幅方向の各位置に応じた補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正する。
【選択図】 図4
【解決手段】ロール状に巻き取る前のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正する予め求めたフィルムの幅方向の位置と配向角との関係およびフィルムの配向角と測定厚さとの関係とに基づいてフィルムの幅方向の各位置に応じた補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム、特に、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるような合成樹脂フィルムの厚みを測定する場合に好適な、フィルムの厚み測定方法に関する。また、本発明は、そのような厚み測定方法を用いたフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムのような合成樹脂フィルムの厚みを測定する方法としては、β線や赤外線の吸収を利用するものが多いが、より高精度の測定を行いたい場合には、光の干渉を利用する方法が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。この方法によるものは、フィルムに一定の角度で平行な白色光を指向すると、フィルムの表裏面でそれぞれ反射した光は互いに干渉して強度が特定の波長で極大となり、それとは異なる特定の波長では極小となる強度分布を生ずるが、この強度分布は、白色光の入射角が一定であればフィルムの厚みと屈折率とに依存することを利用したものである。
【0003】
すなわち、図1に示すように、厚みがd、屈折率がnのフィルム1に入射角θで平行な白色光を指向すると、表面で反射した光と裏面で反射した光とは、式、
【0004】
【数1】
【0005】
で表される光学光路差Δを生じて干渉を起こす。すなわち、干渉光が得られる。そのため、反射光を分光すると、図2に示すような、暗部(谷)と明部(山)のある強度分布が得られ、その極値を与える波長は、干渉の次数と呼ばれる整数mを用いて、式、
【0006】
【数2】
【0007】
【数3】
【0008】
で表される。表面で反射した光は位相が反転しているから、光学光路差Δが波長のm倍になる波長では表面で反射した光と裏面で反射した光とは逆位相となって強度は極小となり、光学光路差Δが波長の(m+1/2)倍になる波長では両光が同位相となって強度は極大となる。そこで、隣り合う谷の波長λm、λm+1と(λm>λm+1)とを検出すれば、式、
【0009】
【数4】
【0010】
【数5】
【0011】
からmを消去して、式、
【0012】
【数6】
【0013】
からフィルムの厚みdを求めることができるわけである。
【0014】
このような方法において、フィルムが、たとえば2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、幅方向(TD方向)において部位により屈折率が異なるフィルムであるような場合、各部位における屈折率をあらかじめ求めておくことで、より高精度な厚み測定を行う方法も提案されている(たとえば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0015】
すなわち、この方法は、フィルムの幅方向における屈折率の分布をあらかじめ測定しておき、得られた屈折率の分布からフィルムの幅方向に走査する光干渉式厚み計の位置に対応して屈折率を決定し、その屈折率を式(6)の屈折率nとして用いることで厚みdを求めるものである。しかしながら、この方法は、フィルムが、2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、複屈折を呈し、しかも、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムである場合には、測定精度が悪くなることがある。
【0016】
すなわち、複屈折を呈するフィルムによって反射された光は、結晶の配向方向の振動成分が、配向方向の屈折率n1によって、式、
【0017】
【数7】
【0018】
で表される光学的光路差Δ1による干渉に基づく強度分布を示すのに対し、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分は、結晶の配向方向と直交する方向の屈折率n2によって、式、
【0019】
【数8】
【0020】
で表される光学的光路差Δ2による干渉に基づく強度分布を示し、全体としては、これらの分布が結晶の配向方向によって定まる割合で重なり合ったものとなる。そのため、図3に示すように、強度分布が極大または極小となる波長λSは、結晶の配向方向の振動成分による干渉波形におけるλOと、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分による干渉波形におけるλEとのいずれとも異なり、しかも、その波長は結晶の配向方向によって異なるため、求められる厚みも結晶の配向方向によって異なったものとなる。すなわち、測定誤差を生むことになる。このように、複屈折と結晶の配向方向を考慮しないであらかじめ求めた屈折率に基づいて測定厚みを補正するだけでは、測定精度が向上しないことがある。
【0021】
以上においては、フィルムによる反射光を利用する場合について説明したが、透過光を利用することもでき、その場合でも全く同様のことがいえる。
【0022】
【特許文献1】
特開昭63−163105号公報
【0023】
【特許文献2】
特開2001−227918号公報
【0024】
【特許文献3】
特開2002−277217号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムであっても高精度で厚みを測定することができるフィルムの厚み測定方法を提供するにある。
【0026】
また、本発明の他の目的は、そのような厚み測定方法を用いたフイルムの製造方法を提供するにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的に走行する帯状のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正することを特徴とするフィルムの厚み測定方法を提供する。
【0028】
上記において、屈折率の値としては、あらかじめ定めた、フィルムの幅方向各部位における屈折率の値を用いるのが好ましい。
【0029】
また、フィルムとしては、複屈折を呈するフィルムや、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるフィルムを用いるのが好ましい。そのようなフィルムの典型的なものとしては、2軸延伸された合成樹脂フィルムがある。
【0030】
本発明の厚み測定方法は、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムに好適に適用できるが、結晶の配向方向が幅方向において部位により異ならないフィルムにも適用することができる。
【0031】
また、本発明は、上記目的を達成するために、溶融樹脂をダイからフィルム状に吐出し、冷却してフィルムとなし、ロール状に巻き取るに際し、巻き取る前のフィルムの厚みを上述の方法を用いて測定し、得られた測定値とあらかじめ定めた厚みの基準値とを比較し、これらの値の差に基づいて溶融樹脂の吐出量を制御することを特徴とするフィルムの製造方法を提供する。フィルムの厚みは、フィルムを2軸延伸した後、ロール状に巻き取る前に測定するのが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下においては、光干渉式厚み計として、フイルムによる反射光を利用する反射型光干渉式厚み計を用いる場合について説明するが、透過光を利用する透過型光干渉式厚み計を用いる場合についても全く同様である。その場合、反射光は透過光と読み替えるものとする。
【0033】
図4は、本発明に係るフィルムの厚み測定方法の一形態を示すブロック図である。この図4に示す形態においては、厚みの測定に、光干渉式厚み計を連続的に走行する帯状フィルムの幅方向に走査することによって平行な白色光を一定の角度でフィルムに指向したときに得られる反射光の強度分布と、フィルムの屈折率nと、フィルムの幅方向の部位xにおける補正値αを利用する。補正値αは、あらかじめ求めた、フィルムの幅方向の部位xとその部位xにおけるフィルムの結晶の配向角φとの関係およびフィルムの結晶の配向角φとその配向角φにおける測定厚みd/d0との関係から導く。
【0034】
図5は、本発明に係るフィルムの厚み測定方法の他の形態を示すブロック図である。この図5に示す形態のものは、図4に示した形態のものにおけるフイルムの屈折率nとして、フィルムの幅方向における部位xからあらかじめ求めた、部位xと屈折率nとの関係から導かれる屈折率n’を利用する。
【0035】
図6は、本発明で用いる光干渉式厚み計の一形態を示すブロック図である。この光干渉式厚み計は、白色光源2、投光部3、光路変換部4、分光部5、データ処理部6から構成されている。投光部3は、レンズ3a、ピンホール3b、レンズ3cから構成されている。また、光路変換部4は、イメージインテンシファイヤ4a、レンズ4b、ピンホール4c、レンズ4dから構成されている。さらに、分光部5は、回折格子5a、レンズ5b、イメージセンサ5cから構成されている。また、データ処理装置6には、フィルムの幅方向の部位xを示す信号を入力できるようになっている。
【0036】
再び図4を参照するに、本発明においては、測定に先立ち、フィルムの幅方向における部位xとその部位xにおける結晶の配向角φとの関係をあらかじめ求めておく。配向角φとは、フィルムの走行方向(MD方向)に対して結晶軸の方向(屈折率が最大となる方向)がなす角度である。これには、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムから試験片を採取し、複屈折率計を用い、幅方向における部位xごとに適当な間隔で配向角を測定し、両者の関係として、
φ=f(x)・・・・(9)
を求める。
【0037】
また、測定に先立ち、配向角φと測定厚みd/d0との関係も求めておく。配向角によって測定誤差を生ずるのは、図3に示したように、測定する強度分布は、結晶の配向方向の振動成分による干渉波形と、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分による干渉波形とが重なり合ったものであり、その極大または極小となる波長が結晶の配向角に応じて変化するため、求める厚みも結晶の配向方向によって異なるものとなることによる。したがって、結晶の配向方向における屈折率n1とその配向方向と直交する方向における屈折率n2とが配向角と測定厚みとの関係を定めることになるが、これもフィルムの製造条件によって定まるものであるため、配向角φの測定と同様、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムから試験片を採取し、試験片から配向角が0度または0度に十分に近い幅方向の部位を測定点として選び、図6に示したような光干渉式厚み計でその厚みd0を測定した後、試験片を角度φだけ回転させて再び厚みdを測定し、これをd0で正規化することによって配向角φと測定厚みd/d0との関係、すなわち、
d/d0=g(φ)・・・・(10)
を求めておく。
【0038】
次に、フィルムの幅方向における部位xと補正値αとの関係は、上述の幅方向における部位xと配向角φとの関係および配向角φと測定厚みd/d0との関係を用いて求める。すなわち、部位xと補正値αとの関係は、式、
α=d0/d・・・・(11)
から、式(9)および式(10)を用いて、式、
α=1/g(f(x))・・・・(12)
で表すことができる。
【0039】
なお、幅方向における部位xと配向角φとの関係、配向角φと測定厚みd/d0との関係および部位xと補正値αとの関係は、測定を行なう前にあらかじめ求めておくが、部位xと補正値αとの関係については、測定時に式(12)から求めてもよい。
【0040】
次に、フィルムによる反射光の分光波形は、図6に示した光干渉式厚み計を用いて測定する。すなわち、光源2から発し、投光部3で平行にされた白色光は、一定の入射角θでフィルム1に入射せしめられる。入射せしめられた光は、フィルム1で反射されるが、そのとき干渉によって各波長成分の強度が変化する。この反射光は、光路変換部4を経て分光部5に入射せしめられ、電気信号に変換されてデータ処理部6に入力され、図2に示したような分光波形が得られる。
【0041】
さて、従来の厚み測定においては、上述したように、この分光波形から隣り合う谷の波長λm、λm+1(λm>λm+1)を求め、あらかじめ定めたフィルムの屈折率nを用い、式(6)によって厚みdを求めていた。しかしながら、このようにして求めた厚みdは、フィルムの複屈折と配向方向とが干渉による強度分布に与える影響を考慮していないため、フィルムの幅方向における部位での結晶の配向角に応じた測定誤差を生じていた。本発明においては、かかる誤差を生じないよう、上述の補正値αを用いて、式、
【0042】
【数9】
【0043】
によって厚みd’として求める。
【0044】
すなわち、この方法は、フィルムの複屈折と配向方向とが干渉による強度分布に与える影響を考慮して、幅方向における部位ごとにこれらの影響による測定誤差を補正するため、高精度で厚みを求めることができる。そのため、フィルムが、2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、複屈折を呈し、しかも、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるようなものであっても、全幅方向に高精度で厚みを測定することができるようになる。
【0045】
図5に示した他の形態においては、フィルムの屈折率として、幅方向における部位xからあらかじめ求めた部位xと屈折率nとの関係を用いて導かれる屈折率n’を用いる。
【0046】
すなわち、幅方向における部位xと屈折率nとの関係は、部位xと配向角φとの関係を求めたのと同様に、測定するフィルムと同一の製造条件で製造されたフィルムから試験片を採取し、複屈折率計または屈折率計を用いて、部位xごとに適当な間隔で屈折率nを測定することによって、両者の関係、すなわち、
n’=h(x)・・・・(14)
を求める。そして、この屈折率n’を用い、式、
【0047】
【数10】
【0048】
によって厚みd”として求める。
【0049】
これにより、一般にフィルムの幅方向における屈折率は、両端域が中央域よりも大きく、または小さくなっているため、屈折率を一定にして厚みを求めると幅方向に測定誤差を生ずるが、上述したように幅方向における各部位に対応した屈折率n’を用いれば、さらに高精度の厚み測定を行うことができるようになる。
【0050】
図7は、本発明の厚み測定方法を用いて合成樹脂フィルムを製造している様子を示すもので、ダイ7からキャスティングドラム8上にフィルム状に吐出された溶融樹脂は、キャスティングドラム8上で冷却されてフィルム1となる。フィルム1は、延伸機9で縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)に延伸され、すなわち2軸延伸された後、巻取機10にロール状に巻き取られる。
【0051】
延伸機9と巻取機10との間には、フィルム1の走行方向を横切るように走査装置11が配置されている。この走査装置11には、本発明の厚み測定方法による、図6に示したような光干渉式厚み計12が取り付けられている。走査装置11は、光干渉式厚み計12をフィルム1の幅方向に走査するとともに、フィルムの幅方向における測定部位を示す信号を光干渉式厚み計12に送り、光干渉式厚み計12はフィルムの幅方向における厚み分布を測定する。この幅方向における厚み分布が所望の範囲内になるように、制御装置13を介してダイ7からの溶融樹脂の吐出量を制御する。
【0052】
【実施例】
厚みが6.3μm、屈折率が1.65である2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みを、図6に示した光干渉式厚み計を用いて測定した。
【0053】
まず、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムについて、幅方向における部位とその部位における配向角との関係を市販の複屈折率計を用いて測定した。測定結果を図8に示す。また、このフィルムから幅方向における1,050mmの部位を試験片として採取し、図6に示した光干渉式厚み計を利用して試験片を回転させながら厚みを測定し、回転角と測定厚みとの関係を求めた。回転角0度における測定厚みで各回転角における測定厚みを正規化した結果を図9に示す。図10は、かかる測定結果から導いたフィルムの幅方向における部位と補正値との関係を示している。また、上記フィルムの幅方向における部位とその部位における屈折率との関係を市販の屈折率計を用いて測定した結果を図11に示す。
【0054】
次に、図7に示したフローにてフィルムの厚みを測定した。まず、 式で表される従来の方法により、厚みを測定した。厚み計を10回走査して得られた、フィルムの幅方向における部位とその部位における厚みとの関係を、平均値として図12に示す。この図12によれば、幅方向における端部が厚く測定されているが、走行中のフィルムを採取して別の接触式厚み計で測定した結果から、厚みは幅方向においてほぼ均一であり、端部において約0.4μmの測定誤差のあることがわかった。同一のフィルムについて、式(13)によって求めた、フィルムの幅方向における部位とその部位における厚みとの関係を図13に示す。従来の方法による場合に比較して高精度で測定できていることがわかる。
【0055】
また、式(15)によって求めた結果を図14に示す。図13に示したものよりもさらに高精度で測定できていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係るフィルムの厚み測定方法は、連続的に走行する帯状のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正するので、実施例からも明らかなように、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムであっても、高精度で厚みを測定することができるようになる。
【0057】
また、そのような厚み測定方法を用いる本発明のフィルムの製造方法によれば、厳格な品質管理が可能になり、不良品が出荷されるのを防止することができるようになるばかりでなく、厚み斑の原因となっている工程を直ちに修正することができるようになり、フィルムの製造コストを下げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光干渉式厚み計の測定原理図である。
【図2】光干渉式厚み計によって得られるフィルムからの反射光の強度分布を示すグラフである。
【図3】光干渉式厚み計によって得られる、複屈折を呈するフィルムからの反射光の強度分布を示すグラフである。
【図4】本発明に係るフィルムの厚み測定方法の一形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るフィルムの厚み測定方法の他の形態を示すブロック図である。
【図6】本発明に係るフィルムの厚み測定方法において用いる光干渉式厚み計の一例を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るフイルムの製造方法の一形態を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位における結晶の配向角との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例における、フィルムの結晶の配向角と正規化した測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位における補正値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの屈折率との関係を示すグラフである。
【図12】従来の方法における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:フィルム
2:白色光源
3:投光部
3a:レンズ
3b:ピンホール
3c:レンズ
4:光路変換部
4a:イメージインテンシファイヤ
4b:レンズ
4c:ピンホール
4d:レンズ
5:分光部
5a:回折格子
5b:レンズ
5c:イメージセンサ
6:データ処理部
7:ダイ
8:キャスティングドラム
9:延伸機
10:巻取機
11:走査装置
12:光干渉式厚み計
13:制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム、特に、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるような合成樹脂フィルムの厚みを測定する場合に好適な、フィルムの厚み測定方法に関する。また、本発明は、そのような厚み測定方法を用いたフィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムのような合成樹脂フィルムの厚みを測定する方法としては、β線や赤外線の吸収を利用するものが多いが、より高精度の測定を行いたい場合には、光の干渉を利用する方法が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。この方法によるものは、フィルムに一定の角度で平行な白色光を指向すると、フィルムの表裏面でそれぞれ反射した光は互いに干渉して強度が特定の波長で極大となり、それとは異なる特定の波長では極小となる強度分布を生ずるが、この強度分布は、白色光の入射角が一定であればフィルムの厚みと屈折率とに依存することを利用したものである。
【0003】
すなわち、図1に示すように、厚みがd、屈折率がnのフィルム1に入射角θで平行な白色光を指向すると、表面で反射した光と裏面で反射した光とは、式、
【0004】
【数1】
【0005】
で表される光学光路差Δを生じて干渉を起こす。すなわち、干渉光が得られる。そのため、反射光を分光すると、図2に示すような、暗部(谷)と明部(山)のある強度分布が得られ、その極値を与える波長は、干渉の次数と呼ばれる整数mを用いて、式、
【0006】
【数2】
【0007】
【数3】
【0008】
で表される。表面で反射した光は位相が反転しているから、光学光路差Δが波長のm倍になる波長では表面で反射した光と裏面で反射した光とは逆位相となって強度は極小となり、光学光路差Δが波長の(m+1/2)倍になる波長では両光が同位相となって強度は極大となる。そこで、隣り合う谷の波長λm、λm+1と(λm>λm+1)とを検出すれば、式、
【0009】
【数4】
【0010】
【数5】
【0011】
からmを消去して、式、
【0012】
【数6】
【0013】
からフィルムの厚みdを求めることができるわけである。
【0014】
このような方法において、フィルムが、たとえば2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、幅方向(TD方向)において部位により屈折率が異なるフィルムであるような場合、各部位における屈折率をあらかじめ求めておくことで、より高精度な厚み測定を行う方法も提案されている(たとえば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0015】
すなわち、この方法は、フィルムの幅方向における屈折率の分布をあらかじめ測定しておき、得られた屈折率の分布からフィルムの幅方向に走査する光干渉式厚み計の位置に対応して屈折率を決定し、その屈折率を式(6)の屈折率nとして用いることで厚みdを求めるものである。しかしながら、この方法は、フィルムが、2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、複屈折を呈し、しかも、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムである場合には、測定精度が悪くなることがある。
【0016】
すなわち、複屈折を呈するフィルムによって反射された光は、結晶の配向方向の振動成分が、配向方向の屈折率n1によって、式、
【0017】
【数7】
【0018】
で表される光学的光路差Δ1による干渉に基づく強度分布を示すのに対し、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分は、結晶の配向方向と直交する方向の屈折率n2によって、式、
【0019】
【数8】
【0020】
で表される光学的光路差Δ2による干渉に基づく強度分布を示し、全体としては、これらの分布が結晶の配向方向によって定まる割合で重なり合ったものとなる。そのため、図3に示すように、強度分布が極大または極小となる波長λSは、結晶の配向方向の振動成分による干渉波形におけるλOと、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分による干渉波形におけるλEとのいずれとも異なり、しかも、その波長は結晶の配向方向によって異なるため、求められる厚みも結晶の配向方向によって異なったものとなる。すなわち、測定誤差を生むことになる。このように、複屈折と結晶の配向方向を考慮しないであらかじめ求めた屈折率に基づいて測定厚みを補正するだけでは、測定精度が向上しないことがある。
【0021】
以上においては、フィルムによる反射光を利用する場合について説明したが、透過光を利用することもでき、その場合でも全く同様のことがいえる。
【0022】
【特許文献1】
特開昭63−163105号公報
【0023】
【特許文献2】
特開2001−227918号公報
【0024】
【特許文献3】
特開2002−277217号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムであっても高精度で厚みを測定することができるフィルムの厚み測定方法を提供するにある。
【0026】
また、本発明の他の目的は、そのような厚み測定方法を用いたフイルムの製造方法を提供するにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的に走行する帯状のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正することを特徴とするフィルムの厚み測定方法を提供する。
【0028】
上記において、屈折率の値としては、あらかじめ定めた、フィルムの幅方向各部位における屈折率の値を用いるのが好ましい。
【0029】
また、フィルムとしては、複屈折を呈するフィルムや、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるフィルムを用いるのが好ましい。そのようなフィルムの典型的なものとしては、2軸延伸された合成樹脂フィルムがある。
【0030】
本発明の厚み測定方法は、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムに好適に適用できるが、結晶の配向方向が幅方向において部位により異ならないフィルムにも適用することができる。
【0031】
また、本発明は、上記目的を達成するために、溶融樹脂をダイからフィルム状に吐出し、冷却してフィルムとなし、ロール状に巻き取るに際し、巻き取る前のフィルムの厚みを上述の方法を用いて測定し、得られた測定値とあらかじめ定めた厚みの基準値とを比較し、これらの値の差に基づいて溶融樹脂の吐出量を制御することを特徴とするフィルムの製造方法を提供する。フィルムの厚みは、フィルムを2軸延伸した後、ロール状に巻き取る前に測定するのが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下においては、光干渉式厚み計として、フイルムによる反射光を利用する反射型光干渉式厚み計を用いる場合について説明するが、透過光を利用する透過型光干渉式厚み計を用いる場合についても全く同様である。その場合、反射光は透過光と読み替えるものとする。
【0033】
図4は、本発明に係るフィルムの厚み測定方法の一形態を示すブロック図である。この図4に示す形態においては、厚みの測定に、光干渉式厚み計を連続的に走行する帯状フィルムの幅方向に走査することによって平行な白色光を一定の角度でフィルムに指向したときに得られる反射光の強度分布と、フィルムの屈折率nと、フィルムの幅方向の部位xにおける補正値αを利用する。補正値αは、あらかじめ求めた、フィルムの幅方向の部位xとその部位xにおけるフィルムの結晶の配向角φとの関係およびフィルムの結晶の配向角φとその配向角φにおける測定厚みd/d0との関係から導く。
【0034】
図5は、本発明に係るフィルムの厚み測定方法の他の形態を示すブロック図である。この図5に示す形態のものは、図4に示した形態のものにおけるフイルムの屈折率nとして、フィルムの幅方向における部位xからあらかじめ求めた、部位xと屈折率nとの関係から導かれる屈折率n’を利用する。
【0035】
図6は、本発明で用いる光干渉式厚み計の一形態を示すブロック図である。この光干渉式厚み計は、白色光源2、投光部3、光路変換部4、分光部5、データ処理部6から構成されている。投光部3は、レンズ3a、ピンホール3b、レンズ3cから構成されている。また、光路変換部4は、イメージインテンシファイヤ4a、レンズ4b、ピンホール4c、レンズ4dから構成されている。さらに、分光部5は、回折格子5a、レンズ5b、イメージセンサ5cから構成されている。また、データ処理装置6には、フィルムの幅方向の部位xを示す信号を入力できるようになっている。
【0036】
再び図4を参照するに、本発明においては、測定に先立ち、フィルムの幅方向における部位xとその部位xにおける結晶の配向角φとの関係をあらかじめ求めておく。配向角φとは、フィルムの走行方向(MD方向)に対して結晶軸の方向(屈折率が最大となる方向)がなす角度である。これには、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムから試験片を採取し、複屈折率計を用い、幅方向における部位xごとに適当な間隔で配向角を測定し、両者の関係として、
φ=f(x)・・・・(9)
を求める。
【0037】
また、測定に先立ち、配向角φと測定厚みd/d0との関係も求めておく。配向角によって測定誤差を生ずるのは、図3に示したように、測定する強度分布は、結晶の配向方向の振動成分による干渉波形と、結晶の配向方向と直交する方向の振動成分による干渉波形とが重なり合ったものであり、その極大または極小となる波長が結晶の配向角に応じて変化するため、求める厚みも結晶の配向方向によって異なるものとなることによる。したがって、結晶の配向方向における屈折率n1とその配向方向と直交する方向における屈折率n2とが配向角と測定厚みとの関係を定めることになるが、これもフィルムの製造条件によって定まるものであるため、配向角φの測定と同様、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムから試験片を採取し、試験片から配向角が0度または0度に十分に近い幅方向の部位を測定点として選び、図6に示したような光干渉式厚み計でその厚みd0を測定した後、試験片を角度φだけ回転させて再び厚みdを測定し、これをd0で正規化することによって配向角φと測定厚みd/d0との関係、すなわち、
d/d0=g(φ)・・・・(10)
を求めておく。
【0038】
次に、フィルムの幅方向における部位xと補正値αとの関係は、上述の幅方向における部位xと配向角φとの関係および配向角φと測定厚みd/d0との関係を用いて求める。すなわち、部位xと補正値αとの関係は、式、
α=d0/d・・・・(11)
から、式(9)および式(10)を用いて、式、
α=1/g(f(x))・・・・(12)
で表すことができる。
【0039】
なお、幅方向における部位xと配向角φとの関係、配向角φと測定厚みd/d0との関係および部位xと補正値αとの関係は、測定を行なう前にあらかじめ求めておくが、部位xと補正値αとの関係については、測定時に式(12)から求めてもよい。
【0040】
次に、フィルムによる反射光の分光波形は、図6に示した光干渉式厚み計を用いて測定する。すなわち、光源2から発し、投光部3で平行にされた白色光は、一定の入射角θでフィルム1に入射せしめられる。入射せしめられた光は、フィルム1で反射されるが、そのとき干渉によって各波長成分の強度が変化する。この反射光は、光路変換部4を経て分光部5に入射せしめられ、電気信号に変換されてデータ処理部6に入力され、図2に示したような分光波形が得られる。
【0041】
さて、従来の厚み測定においては、上述したように、この分光波形から隣り合う谷の波長λm、λm+1(λm>λm+1)を求め、あらかじめ定めたフィルムの屈折率nを用い、式(6)によって厚みdを求めていた。しかしながら、このようにして求めた厚みdは、フィルムの複屈折と配向方向とが干渉による強度分布に与える影響を考慮していないため、フィルムの幅方向における部位での結晶の配向角に応じた測定誤差を生じていた。本発明においては、かかる誤差を生じないよう、上述の補正値αを用いて、式、
【0042】
【数9】
【0043】
によって厚みd’として求める。
【0044】
すなわち、この方法は、フィルムの複屈折と配向方向とが干渉による強度分布に与える影響を考慮して、幅方向における部位ごとにこれらの影響による測定誤差を補正するため、高精度で厚みを求めることができる。そのため、フィルムが、2軸延伸された合成樹脂フィルムのように、複屈折を呈し、しかも、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるようなものであっても、全幅方向に高精度で厚みを測定することができるようになる。
【0045】
図5に示した他の形態においては、フィルムの屈折率として、幅方向における部位xからあらかじめ求めた部位xと屈折率nとの関係を用いて導かれる屈折率n’を用いる。
【0046】
すなわち、幅方向における部位xと屈折率nとの関係は、部位xと配向角φとの関係を求めたのと同様に、測定するフィルムと同一の製造条件で製造されたフィルムから試験片を採取し、複屈折率計または屈折率計を用いて、部位xごとに適当な間隔で屈折率nを測定することによって、両者の関係、すなわち、
n’=h(x)・・・・(14)
を求める。そして、この屈折率n’を用い、式、
【0047】
【数10】
【0048】
によって厚みd”として求める。
【0049】
これにより、一般にフィルムの幅方向における屈折率は、両端域が中央域よりも大きく、または小さくなっているため、屈折率を一定にして厚みを求めると幅方向に測定誤差を生ずるが、上述したように幅方向における各部位に対応した屈折率n’を用いれば、さらに高精度の厚み測定を行うことができるようになる。
【0050】
図7は、本発明の厚み測定方法を用いて合成樹脂フィルムを製造している様子を示すもので、ダイ7からキャスティングドラム8上にフィルム状に吐出された溶融樹脂は、キャスティングドラム8上で冷却されてフィルム1となる。フィルム1は、延伸機9で縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)に延伸され、すなわち2軸延伸された後、巻取機10にロール状に巻き取られる。
【0051】
延伸機9と巻取機10との間には、フィルム1の走行方向を横切るように走査装置11が配置されている。この走査装置11には、本発明の厚み測定方法による、図6に示したような光干渉式厚み計12が取り付けられている。走査装置11は、光干渉式厚み計12をフィルム1の幅方向に走査するとともに、フィルムの幅方向における測定部位を示す信号を光干渉式厚み計12に送り、光干渉式厚み計12はフィルムの幅方向における厚み分布を測定する。この幅方向における厚み分布が所望の範囲内になるように、制御装置13を介してダイ7からの溶融樹脂の吐出量を制御する。
【0052】
【実施例】
厚みが6.3μm、屈折率が1.65である2軸延伸ポリエステルフィルムの厚みを、図6に示した光干渉式厚み計を用いて測定した。
【0053】
まず、測定するフィルムと同一の製造条件で製造したフィルムについて、幅方向における部位とその部位における配向角との関係を市販の複屈折率計を用いて測定した。測定結果を図8に示す。また、このフィルムから幅方向における1,050mmの部位を試験片として採取し、図6に示した光干渉式厚み計を利用して試験片を回転させながら厚みを測定し、回転角と測定厚みとの関係を求めた。回転角0度における測定厚みで各回転角における測定厚みを正規化した結果を図9に示す。図10は、かかる測定結果から導いたフィルムの幅方向における部位と補正値との関係を示している。また、上記フィルムの幅方向における部位とその部位における屈折率との関係を市販の屈折率計を用いて測定した結果を図11に示す。
【0054】
次に、図7に示したフローにてフィルムの厚みを測定した。まず、 式で表される従来の方法により、厚みを測定した。厚み計を10回走査して得られた、フィルムの幅方向における部位とその部位における厚みとの関係を、平均値として図12に示す。この図12によれば、幅方向における端部が厚く測定されているが、走行中のフィルムを採取して別の接触式厚み計で測定した結果から、厚みは幅方向においてほぼ均一であり、端部において約0.4μmの測定誤差のあることがわかった。同一のフィルムについて、式(13)によって求めた、フィルムの幅方向における部位とその部位における厚みとの関係を図13に示す。従来の方法による場合に比較して高精度で測定できていることがわかる。
【0055】
また、式(15)によって求めた結果を図14に示す。図13に示したものよりもさらに高精度で測定できていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係るフィルムの厚み測定方法は、連続的に走行する帯状のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正するので、実施例からも明らかなように、複屈折を呈し、かつ、結晶の配向方向が幅方向において部位により異なるようなフィルムであっても、高精度で厚みを測定することができるようになる。
【0057】
また、そのような厚み測定方法を用いる本発明のフィルムの製造方法によれば、厳格な品質管理が可能になり、不良品が出荷されるのを防止することができるようになるばかりでなく、厚み斑の原因となっている工程を直ちに修正することができるようになり、フィルムの製造コストを下げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光干渉式厚み計の測定原理図である。
【図2】光干渉式厚み計によって得られるフィルムからの反射光の強度分布を示すグラフである。
【図3】光干渉式厚み計によって得られる、複屈折を呈するフィルムからの反射光の強度分布を示すグラフである。
【図4】本発明に係るフィルムの厚み測定方法の一形態を示すブロック図である。
【図5】本発明に係るフィルムの厚み測定方法の他の形態を示すブロック図である。
【図6】本発明に係るフィルムの厚み測定方法において用いる光干渉式厚み計の一例を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るフイルムの製造方法の一形態を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位における結晶の配向角との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例における、フィルムの結晶の配向角と正規化した測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位における補正値との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの屈折率との関係を示すグラフである。
【図12】従来の方法における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例における、フィルムの幅方向における部位とその部位におけるフィルムの測定厚みとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:フィルム
2:白色光源
3:投光部
3a:レンズ
3b:ピンホール
3c:レンズ
4:光路変換部
4a:イメージインテンシファイヤ
4b:レンズ
4c:ピンホール
4d:レンズ
5:分光部
5a:回折格子
5b:レンズ
5c:イメージセンサ
6:データ処理部
7:ダイ
8:キャスティングドラム
9:延伸機
10:巻取機
11:走査装置
12:光干渉式厚み計
13:制御装置
Claims (8)
- 連続的に走行する帯状のフィルムの厚みを、そのフィルムの幅方向に光干渉式厚み計を走査して得られる反射光または透過光の強度とフィルムの屈折率の値とに基づいて測定するに際し、フィルムの幅方向各部位とその各部位における結晶の配向角との関係およびフィルムの結晶の配向角とその配向角における測定厚みとの関係をあらかじめ求め、これらの関係に基づいてフィルムの幅方向各部位における補正値を決定し、この補正値に基づいてフィルムの幅方向各部位における測定厚みを補正することを特徴とするフィルムの厚み測定方法。
- 屈折率の値として、あらかじめ定めた、フィルムの幅方向各部位における屈折率の値を用いる、請求項1に記載のフィルムの厚み測定方法。
- フィルムとして、複屈折を呈するフィルムを用いる、請求項1または2に記載のフィルムの厚み測定方法。
- フイルムとして、結晶の配向角が幅方向において部位により異なるフィルムを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの厚み測定方法。
- フィルムとして、2軸延伸された合成樹脂フィルムを用いる、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムの厚み測定方法。
- 溶融樹脂をダイからフィルム状に吐出し、冷却してフィルムとなし、ロール状に巻き取るに際し、巻き取る前のフィルムの厚みを請求項1〜5のいずれかに記載の方法を用いて測定し、得られた測定値とあらかじめ定めた厚みの基準値とを比較し、これらの値の差に基づいて溶融樹脂の吐出量を制御することを特徴とするフィルムの製造方法。
- フィルムを2軸延伸した後、ロール状に巻き取る、請求項6に記載のフィルムの製造方法。
- 2軸延伸した後のフィルムの厚みを測定する、請求項7に記載のフィルムの製造方法。
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JP2008304284A (ja) * | 2007-06-07 | 2008-12-18 | Yokogawa Electric Corp | 赤外線厚さ計 |
JP2020188130A (ja) * | 2019-05-14 | 2020-11-19 | 信越半導体株式会社 | 被覆物の厚さ測定方法及び研削方法 |
-
2003
- 2003-01-27 JP JP2003017081A patent/JP2004226340A/ja active Pending
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