JP2005003400A - 膜厚測定方法及び膜厚測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来方法では測定が不可能であるような薄い膜厚の試料に対する膜厚測定を高精度で行う。
【解決手段】干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似するために、余弦関数の位相シフト、ドリフト及びオフセットを考慮した近似式f(x)を作成し、その近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式を記憶部7に格納しておく。測定によってスペクトルデータが取得されたならば、2次微分計算部61は各データの2次微分値を算出し、係数計算部62は、各波数、測定データ、微分値を基本式に適用して統計的手法により近似式に含まれる係数を算出する。膜厚計算部63は係数の1つである周期Tから膜厚dを算出する。これにより、スペクトルに含まれる干渉波が1周期に満たなくても、膜厚を求めることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似するために、余弦関数の位相シフト、ドリフト及びオフセットを考慮した近似式f(x)を作成し、その近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式を記憶部7に格納しておく。測定によってスペクトルデータが取得されたならば、2次微分計算部61は各データの2次微分値を算出し、係数計算部62は、各波数、測定データ、微分値を基本式に適用して統計的手法により近似式に含まれる係数を算出する。膜厚計算部63は係数の1つである周期Tから膜厚dを算出する。これにより、スペクトルに含まれる干渉波が1周期に満たなくても、膜厚を求めることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光測定を利用して試料膜の膜厚を測定するための膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関する。本発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置は、例えば、半導体製造工程などにおいてウエハ基板上に形成された各種薄膜の膜厚の検査等の各種分野で広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
紫外光、可視光又は赤外光を利用した分光光度計の応用分野の一つとして、膜状試料に対する膜厚の測定がある(例えば特許文献1、2など参照)。分光測定を用いた膜厚測定の基本原理を図2により説明する。単一膜である試料Sに対して波長λの測定光を入射すると、入射光の一部は試料Sの表面S1で反射され、残りは試料S内部に入り込み、その一部は光の入射面とは反対側の境界面S2で反射して試料S内部を再び戻り、試料Sの表面S1から外部へと出射する。前者の反射光と後者の透過反射光とでは光路差が生じるため、測定光の波長λと膜厚dとに応じた干渉が発生する。
【0003】
測定光の波長λを所定範囲で走査したとき、波数(又は波長)を横軸に、干渉光の強度を縦軸にとってグラフを描くと、例えば図3に示すような波状のスペクトルが得られる。このスペクトルの波形は余弦関数で表すことができ、その余弦関数の周期Tは膜厚dに対応したものとなる。そこで、このスペクトル波形を利用し、スペクトルに現れているピークの山又は谷に対応する波数を自動的に又は手動で読み取り、それらの波数間隔情報を最小二乗法などにより求め、試料Sを構成する物質の既知の屈折率nを利用して、波数周期Tから膜厚dを算出する。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−107034号公報
【特許文献2】
特開平5−231823号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の膜厚算出方法では、スペクトル中に含まれるピークの山及び谷の数(つまり干渉波の周期数)が多いほどノイズや各種の変動要因の影響が相対的に軽減され、膜厚の算出精度が向上する。逆に言えば、スペクトル中に含まれる干渉波の周期数が少ないと膜厚の算出誤差が大きくなる。一般に用いられる可視紫外光分光光度計を用いた分光測定では、測定光の可視光を利用した波長範囲が380〜800nm程度であり、SiO2等、屈折率が1.4近傍であるような試料で且つその膜厚が約400nmよりも薄いような場合には、測定スペクトル中に含まれる干渉波は1周期に満たなくなる。
【0006】
例えばこうした場合のスペクトルの一例を図4に示す。こうしたスペクトルではピークの山及び谷を検出することができないため、上述したような従来の方法によっては膜厚を算出することができなかった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、例えば400nmを下回るような特に薄い膜体に対して、高い精度で膜厚を算出することができる膜厚測定方法及び膜厚測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段、及び効果】
上記課題を解決するために成された第1発明は、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定方法において、
干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式を利用して、前記測定スペクトルを構成する多数のデータから前記近似式又は基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出し、その周期Tから膜厚dを算出することを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明に係る膜厚測定方法を具現化した装置であって、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定装置において、
a)干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式又はそれに相当する情報を予め格納しておく記憶手段と、
b)前記測定スペクトルを構成するデータの2次微分値をそれぞれ算出する2次微分値算出手段と、
c)前記測定スペクトルを構成する多数のデータ及びそれぞれの2次微分値を前記記憶手段に格納されている基本式に適用し、該基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出する波形情報算出手段と、
d)前記周期Tから膜厚dを算出する膜厚算出手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
なお、第1及び第2発明において、前記近似式は、干渉光の一般的なスペクトルの基本が余弦状波形であって、その位相シフト、オフセット、及び波数情報に対するドリフトを考慮した式であることを特徴としている。
【0011】
第1発明に係る膜厚測定方法及び第2発明に係る膜厚測定装置では、予めスペクトルの形状を理論的に表す近似式を想定し、該近似式とその2次微分との関係を表す基本式を利用して、測定スペクトルに対応する近似を行うための係数を算出している。そのため、測定スペクトルにピークの山や谷が存在しなくとも、換言すれば、測定スペクトルに1周期分以上の干渉波形が含まれていない場合であっても、その干渉波形の周期Tを係数の1つとして求めることができ、これから膜厚を算出することができる。
【0012】
特に様々な要因によって測定スペクトルに現れるオフセット、ドリフト、位相シフトなどの各種要素を近似式に含むようにしておけば、これら要素を考慮して膜厚を精度良く算出することができる。具体的に言えば、紫外可視光分光光度計による分光測定を利用した場合に、従来、膜厚の測定が実質的に不可能であるような400nm以下の膜厚を有する試料、特に100nm以下であるようなごく薄い膜厚を有する試料に対して膜厚の測定が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る膜厚測定方法において、分光測定の結果として得られた干渉スペクトル波形に基づいて膜厚を算出する膜厚算出方法の原理を説明する。
【0014】
例えば図3に示したようなスペクトルの波形から、次のようなことが把握できる。
(a)一定周期の干渉波パターンが存在し、理想的には干渉波パターンは余弦状である。
(b)波数に対し一定のオフセットが存在する
(c)波数に対しほぼ線形のドリフトが存在する
【0015】
上記3つの点を考慮すると、単層膜に対する干渉波のスペクトルの波形は次の(1)式で近似できるものと想定できる。
f(x)=a0+a1x+bcos{(2π/T)x+δ} …(1)
上記(1)式において、右辺の第1項はオフセットを反映し、第2項はドリフトを反映し、第3項は周期性波形を反映しており、第3項中のδは位相シフトを反映している。
【0016】
(1)式の1次微分式f’(x)、2次微分式f”(x)は次のようになる。
f’(x)=a1−b(2π/T)sin{(2π/T)x+δ} …(2)
f”(x)=−b(2π/T)2 cos{(2π/T)x+δ} …(3)
したがって、(1)式及び(3)式から、元の近似式f(x)と2次微分式f”(x)との関係を表す基本式として(4)式を得ることができる。
f(x)=a0+a1x−(T/2π)2f”(x) …(4)
スペクトルを構成する測定データによりxとf(x)がわかり、更に或るxにおけるf(x)の2次微分値は計算により求めることが可能である。したがって、(4)式中で未知であるのは、a0、a1、Tである。
【0017】
そこで、統計的手法により、a0、a1、T(実際に必要であるのはTのみ)を求める。すなわち、(4)式から次の行列式が導かれる。
【数1】
ここでAを、
【数2】
とおくと、上の(5)式は次の(6)式に書き換えることができる。
【数3】
次に、(6) 式の両辺の左方からtAを乗じることにより変形する。
【数4】
さらに、(7)式の両辺の左方から(tAA)−1を乗じることにより変形する。
【数5】
【0018】
上記(8)式より、周期Tを算出することができる。周期Tと膜厚dとの関係は、膜体の屈折率をnとすると、
d=(1/2nT)×107
であるから、これにより周期Tから膜厚dを計算することができる。なお、測定データ点であるf(x)の微分は、既知のアルゴリズムである例えばサビツキ・ゴーレイ(Savitzky−Golay)法などを用いて求めることができる。
【0019】
上述した膜厚算出方法では、(1)式が成立するような波形条件の下で、膜厚を精度良く求めることができる。そのため、波形に大きなノイズが重畳している等、波形の乱れが大きい場合には、膜厚の算出精度が低下する。そのため、好ましくは、できるだけスペクトル波形の乱れが小さいような条件の下で、具体的には測定対象である膜体が静止している状態で、干渉測定を行うとよい。もちろん、或る程度、波形に乱れがあった場合でも、信号処理を行う際にその影響を軽減するようなことは可能である。その点については後で詳しく述べる。
【0020】
次に、上記膜厚算出方法を採用した膜厚測定装置の一実施例について、図1により説明する。図1は本実施例による膜厚測定装置の概略構成図である。
【0021】
この膜厚測定装置は、分光測定部として、光源1、分光部2、測定光学系3、光検出器4を含み、光検出器4による検出信号はスペクトル作成部5に与えられ、該スペクトル作成部5により作成されたスペクトルを構成するデータが演算処理部6に与えられる。演算処理部6は機能として2次微分計算部61、係数計算部62、膜厚計算部63を含み、基本式データ記憶部7に格納されている基本式データを利用しつつ、後述するような所定の演算処理を実行されることで膜厚値を算出する。なお、スペクトル作成部5及び演算処理部6の実体は、CPUを中心に構成されるパーソナルコンピュータであって、該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより演算処理が達成される。
【0022】
上記構成の動作を概略的に説明すると、まず光源1から発した白色光の中から、分光部2により特定の波長を有する単色光が取り出され、測定光学系3を介して膜状の試料Sに測定光として照射される。試料Sの表面や裏面などで反射した光は測定光学系3を介して光検出器4に導入され、これら反射光の強度に応じた電気信号がスペクトル作成部5に送られる。後述するように試料Sからの反射光は干渉光となるから、スペクトル作成部5は、測定光の波長走査に対応して光検出器4で得られる信号に基づいて、横軸が波数(又は波長)、縦軸が相対強度であるスペクトルを作成する。
【0023】
演算処理部6はスペクトルを構成するデータとして、波数と相対強度値とを組とするデータ(x1,f(x1))、(x2,f(x2))、…、(xn,f(xn))を受け取り、上記膜厚算出方法に基づく演算処理を実行する。
【0024】
すなわち、2次微分計算部61は、それぞれの波数x1、x2、…、xnにおいてf(x1)、f(x2)、…、f(xn)の2次微分f”(x1)、f”(x2)、…、f”(xn)を計算する。具体的には、目的とするデータ点に対し、波数が前後する複数のデータ点を利用して微分演算を実行する。基本式データ記憶部7には(8)式を表すデータが格納されているから、係数計算部62はこの式にx1、x2、…、xn、f(x1)、f(x2)、…、f(xn)、及びf”(x1)、f”(x2)、…、f”(xn)を代入し、a0、a1、Tをそれぞれ算出する。そして、膜厚計算部63は算出された周期Tから膜厚dを求める。
【0025】
このようにして、本膜厚測定装置では、スペクトル中に含まれる干渉波形が1周期以下であっても、問題なく膜厚dを算出することができる。
【0026】
上述したように、本発明に係る膜厚測定方法では、スペクトルの波形の乱れが大きくなって理論的な近似式から外れるほど、誤差が大きくなる。波形に重畳されたノイズの影響を最も受け易いのは2次微分値である。一般的な微分計算方法は、上述したように目的とするデータ点の前後の所定個数の測定データから目的点の微分値を算出するが、その際、前後の点数を増やすほど、ノイズやその他の妨害要因の影響を小さくすることができる。但し、前後の点数を増やすほど演算が複雑になり演算時間が掛かるため、演算上でのデータ点数を増やすのではなく、例えば前後のデータ点を離散的に(つまり1個おき、2個おきなど)採ることによって、つまり離れた波数のデータ点を演算に組み入れることによって、相関性の高いノイズの影響を軽減するようにしてもよい。或いは、スペクトル波形の段階でノイズ低減処理を行うようにしてもよい。
【0027】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である膜厚測定装置の概略構成図。
【図2】分光測定を利用した膜厚測定の原理を説明するための図。
【図3】干渉光のスペクトルの一例を示す図。
【図4】干渉光のスペクトルの一例を示す図。
【符号の説明】
1…光源
2…分光部
3…測定光学系
4…光検出器
5…スペクトル作成部
6…演算処理部
61…2次微分計算部
62…係数計算部
63…膜厚計算部
7…基本式データ記憶部
S…試料
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光測定を利用して試料膜の膜厚を測定するための膜厚測定方法及び膜厚測定装置に関する。本発明に係る膜厚測定方法及び膜厚測定装置は、例えば、半導体製造工程などにおいてウエハ基板上に形成された各種薄膜の膜厚の検査等の各種分野で広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
紫外光、可視光又は赤外光を利用した分光光度計の応用分野の一つとして、膜状試料に対する膜厚の測定がある(例えば特許文献1、2など参照)。分光測定を用いた膜厚測定の基本原理を図2により説明する。単一膜である試料Sに対して波長λの測定光を入射すると、入射光の一部は試料Sの表面S1で反射され、残りは試料S内部に入り込み、その一部は光の入射面とは反対側の境界面S2で反射して試料S内部を再び戻り、試料Sの表面S1から外部へと出射する。前者の反射光と後者の透過反射光とでは光路差が生じるため、測定光の波長λと膜厚dとに応じた干渉が発生する。
【0003】
測定光の波長λを所定範囲で走査したとき、波数(又は波長)を横軸に、干渉光の強度を縦軸にとってグラフを描くと、例えば図3に示すような波状のスペクトルが得られる。このスペクトルの波形は余弦関数で表すことができ、その余弦関数の周期Tは膜厚dに対応したものとなる。そこで、このスペクトル波形を利用し、スペクトルに現れているピークの山又は谷に対応する波数を自動的に又は手動で読み取り、それらの波数間隔情報を最小二乗法などにより求め、試料Sを構成する物質の既知の屈折率nを利用して、波数周期Tから膜厚dを算出する。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−107034号公報
【特許文献2】
特開平5−231823号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の膜厚算出方法では、スペクトル中に含まれるピークの山及び谷の数(つまり干渉波の周期数)が多いほどノイズや各種の変動要因の影響が相対的に軽減され、膜厚の算出精度が向上する。逆に言えば、スペクトル中に含まれる干渉波の周期数が少ないと膜厚の算出誤差が大きくなる。一般に用いられる可視紫外光分光光度計を用いた分光測定では、測定光の可視光を利用した波長範囲が380〜800nm程度であり、SiO2等、屈折率が1.4近傍であるような試料で且つその膜厚が約400nmよりも薄いような場合には、測定スペクトル中に含まれる干渉波は1周期に満たなくなる。
【0006】
例えばこうした場合のスペクトルの一例を図4に示す。こうしたスペクトルではピークの山及び谷を検出することができないため、上述したような従来の方法によっては膜厚を算出することができなかった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、例えば400nmを下回るような特に薄い膜体に対して、高い精度で膜厚を算出することができる膜厚測定方法及び膜厚測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段、及び効果】
上記課題を解決するために成された第1発明は、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定方法において、
干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式を利用して、前記測定スペクトルを構成する多数のデータから前記近似式又は基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出し、その周期Tから膜厚dを算出することを特徴としている。
【0009】
また、上記課題を解決するために成された第2発明は、上記第1発明に係る膜厚測定方法を具現化した装置であって、測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定装置において、
a)干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式又はそれに相当する情報を予め格納しておく記憶手段と、
b)前記測定スペクトルを構成するデータの2次微分値をそれぞれ算出する2次微分値算出手段と、
c)前記測定スペクトルを構成する多数のデータ及びそれぞれの2次微分値を前記記憶手段に格納されている基本式に適用し、該基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出する波形情報算出手段と、
d)前記周期Tから膜厚dを算出する膜厚算出手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
なお、第1及び第2発明において、前記近似式は、干渉光の一般的なスペクトルの基本が余弦状波形であって、その位相シフト、オフセット、及び波数情報に対するドリフトを考慮した式であることを特徴としている。
【0011】
第1発明に係る膜厚測定方法及び第2発明に係る膜厚測定装置では、予めスペクトルの形状を理論的に表す近似式を想定し、該近似式とその2次微分との関係を表す基本式を利用して、測定スペクトルに対応する近似を行うための係数を算出している。そのため、測定スペクトルにピークの山や谷が存在しなくとも、換言すれば、測定スペクトルに1周期分以上の干渉波形が含まれていない場合であっても、その干渉波形の周期Tを係数の1つとして求めることができ、これから膜厚を算出することができる。
【0012】
特に様々な要因によって測定スペクトルに現れるオフセット、ドリフト、位相シフトなどの各種要素を近似式に含むようにしておけば、これら要素を考慮して膜厚を精度良く算出することができる。具体的に言えば、紫外可視光分光光度計による分光測定を利用した場合に、従来、膜厚の測定が実質的に不可能であるような400nm以下の膜厚を有する試料、特に100nm以下であるようなごく薄い膜厚を有する試料に対して膜厚の測定が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る膜厚測定方法において、分光測定の結果として得られた干渉スペクトル波形に基づいて膜厚を算出する膜厚算出方法の原理を説明する。
【0014】
例えば図3に示したようなスペクトルの波形から、次のようなことが把握できる。
(a)一定周期の干渉波パターンが存在し、理想的には干渉波パターンは余弦状である。
(b)波数に対し一定のオフセットが存在する
(c)波数に対しほぼ線形のドリフトが存在する
【0015】
上記3つの点を考慮すると、単層膜に対する干渉波のスペクトルの波形は次の(1)式で近似できるものと想定できる。
f(x)=a0+a1x+bcos{(2π/T)x+δ} …(1)
上記(1)式において、右辺の第1項はオフセットを反映し、第2項はドリフトを反映し、第3項は周期性波形を反映しており、第3項中のδは位相シフトを反映している。
【0016】
(1)式の1次微分式f’(x)、2次微分式f”(x)は次のようになる。
f’(x)=a1−b(2π/T)sin{(2π/T)x+δ} …(2)
f”(x)=−b(2π/T)2 cos{(2π/T)x+δ} …(3)
したがって、(1)式及び(3)式から、元の近似式f(x)と2次微分式f”(x)との関係を表す基本式として(4)式を得ることができる。
f(x)=a0+a1x−(T/2π)2f”(x) …(4)
スペクトルを構成する測定データによりxとf(x)がわかり、更に或るxにおけるf(x)の2次微分値は計算により求めることが可能である。したがって、(4)式中で未知であるのは、a0、a1、Tである。
【0017】
そこで、統計的手法により、a0、a1、T(実際に必要であるのはTのみ)を求める。すなわち、(4)式から次の行列式が導かれる。
【数1】
ここでAを、
【数2】
とおくと、上の(5)式は次の(6)式に書き換えることができる。
【数3】
次に、(6) 式の両辺の左方からtAを乗じることにより変形する。
【数4】
さらに、(7)式の両辺の左方から(tAA)−1を乗じることにより変形する。
【数5】
【0018】
上記(8)式より、周期Tを算出することができる。周期Tと膜厚dとの関係は、膜体の屈折率をnとすると、
d=(1/2nT)×107
であるから、これにより周期Tから膜厚dを計算することができる。なお、測定データ点であるf(x)の微分は、既知のアルゴリズムである例えばサビツキ・ゴーレイ(Savitzky−Golay)法などを用いて求めることができる。
【0019】
上述した膜厚算出方法では、(1)式が成立するような波形条件の下で、膜厚を精度良く求めることができる。そのため、波形に大きなノイズが重畳している等、波形の乱れが大きい場合には、膜厚の算出精度が低下する。そのため、好ましくは、できるだけスペクトル波形の乱れが小さいような条件の下で、具体的には測定対象である膜体が静止している状態で、干渉測定を行うとよい。もちろん、或る程度、波形に乱れがあった場合でも、信号処理を行う際にその影響を軽減するようなことは可能である。その点については後で詳しく述べる。
【0020】
次に、上記膜厚算出方法を採用した膜厚測定装置の一実施例について、図1により説明する。図1は本実施例による膜厚測定装置の概略構成図である。
【0021】
この膜厚測定装置は、分光測定部として、光源1、分光部2、測定光学系3、光検出器4を含み、光検出器4による検出信号はスペクトル作成部5に与えられ、該スペクトル作成部5により作成されたスペクトルを構成するデータが演算処理部6に与えられる。演算処理部6は機能として2次微分計算部61、係数計算部62、膜厚計算部63を含み、基本式データ記憶部7に格納されている基本式データを利用しつつ、後述するような所定の演算処理を実行されることで膜厚値を算出する。なお、スペクトル作成部5及び演算処理部6の実体は、CPUを中心に構成されるパーソナルコンピュータであって、該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより演算処理が達成される。
【0022】
上記構成の動作を概略的に説明すると、まず光源1から発した白色光の中から、分光部2により特定の波長を有する単色光が取り出され、測定光学系3を介して膜状の試料Sに測定光として照射される。試料Sの表面や裏面などで反射した光は測定光学系3を介して光検出器4に導入され、これら反射光の強度に応じた電気信号がスペクトル作成部5に送られる。後述するように試料Sからの反射光は干渉光となるから、スペクトル作成部5は、測定光の波長走査に対応して光検出器4で得られる信号に基づいて、横軸が波数(又は波長)、縦軸が相対強度であるスペクトルを作成する。
【0023】
演算処理部6はスペクトルを構成するデータとして、波数と相対強度値とを組とするデータ(x1,f(x1))、(x2,f(x2))、…、(xn,f(xn))を受け取り、上記膜厚算出方法に基づく演算処理を実行する。
【0024】
すなわち、2次微分計算部61は、それぞれの波数x1、x2、…、xnにおいてf(x1)、f(x2)、…、f(xn)の2次微分f”(x1)、f”(x2)、…、f”(xn)を計算する。具体的には、目的とするデータ点に対し、波数が前後する複数のデータ点を利用して微分演算を実行する。基本式データ記憶部7には(8)式を表すデータが格納されているから、係数計算部62はこの式にx1、x2、…、xn、f(x1)、f(x2)、…、f(xn)、及びf”(x1)、f”(x2)、…、f”(xn)を代入し、a0、a1、Tをそれぞれ算出する。そして、膜厚計算部63は算出された周期Tから膜厚dを求める。
【0025】
このようにして、本膜厚測定装置では、スペクトル中に含まれる干渉波形が1周期以下であっても、問題なく膜厚dを算出することができる。
【0026】
上述したように、本発明に係る膜厚測定方法では、スペクトルの波形の乱れが大きくなって理論的な近似式から外れるほど、誤差が大きくなる。波形に重畳されたノイズの影響を最も受け易いのは2次微分値である。一般的な微分計算方法は、上述したように目的とするデータ点の前後の所定個数の測定データから目的点の微分値を算出するが、その際、前後の点数を増やすほど、ノイズやその他の妨害要因の影響を小さくすることができる。但し、前後の点数を増やすほど演算が複雑になり演算時間が掛かるため、演算上でのデータ点数を増やすのではなく、例えば前後のデータ点を離散的に(つまり1個おき、2個おきなど)採ることによって、つまり離れた波数のデータ点を演算に組み入れることによって、相関性の高いノイズの影響を軽減するようにしてもよい。或いは、スペクトル波形の段階でノイズ低減処理を行うようにしてもよい。
【0027】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である膜厚測定装置の概略構成図。
【図2】分光測定を利用した膜厚測定の原理を説明するための図。
【図3】干渉光のスペクトルの一例を示す図。
【図4】干渉光のスペクトルの一例を示す図。
【符号の説明】
1…光源
2…分光部
3…測定光学系
4…光検出器
5…スペクトル作成部
6…演算処理部
61…2次微分計算部
62…係数計算部
63…膜厚計算部
7…基本式データ記憶部
S…試料
Claims (3)
- 測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定方法において、
干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式を利用して、前記測定スペクトルを構成する多数のデータから前記近似式又は基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出し、その周期Tから膜厚dを算出することを特徴とする膜厚測定方法。 - 測定対象である膜体に対して測定光を照射し、その膜体表面で反射する反射光と、膜体中を透過して反対側の境界面で反射する透過反射光とによる干渉光のスペクトルを取得し、その測定スペクトルに基づいて前記膜体の膜厚を求める膜厚測定装置において、
a)干渉波の一般的なスペクトルの波形形状を理論的に近似する近似式f(x)とその近似式の2次微分f”(x)との関係を表す基本式又はそれに相当する情報を予め格納しておく記憶手段と、
b)前記測定スペクトルを構成するデータの2次微分値をそれぞれ算出する2次微分値算出手段と、
c)前記測定スペクトルを構成する多数のデータ及びそれぞれの2次微分値を前記記憶手段に格納されている基本式に適用し、該基本式に含まれる未知の係数の1つである周期Tを統計的手法により算出する波形情報算出手段と、
d)前記周期Tから膜厚dを算出する膜厚算出手段と、
を備えることを特徴とする膜厚測定装置。 - 前記近似式は、干渉光の一般的なスペクトルの基本が余弦状波形であって、その位相シフト、オフセット、及び波数情報に対するドリフトを考慮した式であることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法又は請求項2に記載の膜厚測定装置。
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---|---|---|---|
JP2003164491A JP2005003400A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 膜厚測定方法及び膜厚測定装置 |
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-
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- 2003-06-10 JP JP2003164491A patent/JP2005003400A/ja active Pending
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