JP4009823B2 - 酸化セリウムゾル及び研磨剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本願発明は、ランタン化合物又はネオジム化合物を含み酸化セリウムが主成分である粒子を媒体に分散したゾルの製造方法に関するものである。ランタン又はネオジムを成分として含み酸化セリウムを主成分とする粒子は、研磨剤、紫外線吸収材料、触媒用材料及び燃料電池用材料等に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
特開昭56−131686号公報には、セリウム塩と塩基性溶液と陰イオンが不溶性希土類酸化物を形成できる塩の溶液を同時に混合し、得られた沈殿物を濾別し、100〜600℃で乾燥し、600〜1200℃で焼成し、粉砕したランタンを含有する酸化セリウム粉末が開示されている。
【0003】
特開平10−95614号公報には、不活性ガス雰囲気下に水性媒体中にセリウム(III)塩とアルカリ性物質を3〜30の(OH)/(Ce3+)のモル比で反応させて水酸化セリウム(III)の懸濁液を生成した後、直ちに該懸濁液を大気圧下、10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込み0.005〜5μmの粒子径を有する結晶性酸化セリウム粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
特公昭63−27389号公報には、酸化第二セリウム40〜99.5重量%とランタニド及びイットリウムから成る群より選ばれる他の希土類元素の無色の酸化物の少なくとも一種0.5〜60重量%とを含有する研磨組成物が開示されている。
【0005】
特公昭60−35393号公報には、Ln2−XCeSi(式中、Lnはランタニド類及びイットリウムより成る群より選ばれた1種以上の元素を表す。但しXは0以上2未満の数を示す。)相当するセリウム系研磨組成物が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
乾燥と焼成と粉砕を行いランタン又はネオジムを含有する酸化第二セリウム粉末を製造する方法では、粉砕により微粒子化しているため粒子径が不揃いであり、またサブミクロンまでしか微粒子化できない。
【0007】
そこで、水溶液中で核生成及び結晶成長を行い、ランタン又はネオジムを成分として含み酸化セリウムを主成分とする粒子の製造を行い、粒子径が均一でしかもサブミクロン以下の微粒子を製造する方法を試み本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明は第1観点として、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分が、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾル、
第2観点として、添加成分がランタン化合物である第1観点に記載のゾル、
第3観点として、添加成分がネオジム化合物である第1観点に記載のゾル、
第4観点として、下記第1工程及び第2工程:
第1工程:水性媒体中でセリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分とを、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で混合した水溶液と、アルカリ性物質を(OH)/(Ce3++X3+)のモル比として3〜30の割合で反応させて水酸化セリウム(III)と添加成分X(III)の水酸化物とが均一に混合された懸濁液を生成する工程、及び、第2工程:得られた懸濁液に10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込む工程を経由して得られ、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つX/(Ce+X)モル比に換算して0.005〜0.15の割合でランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルの製造方法、
第5観点として、第1工程が大気開放下で行われる第4観点に記載の製造方法、
第6観点として、第1工程が不活性ガス雰囲気下で行われる第4観点に記載の製造方法、
第7観点として、セリウム(III)塩が硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(III)アンモニウム、硫酸セリウム(III)、硫酸セリウム(III)アンモニウム、塩化セリウム(III)、炭酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、蓚酸セリウム(III)又はこれらの混合物である第4観点に記載の製造方法、
第8観点として、ランタン(III)塩が硝酸ランタン(III)、塩化ランタン(III)、酢酸ランタン(III)、蓚酸ランタン(III)又はこれらの混合物である第4観点に記載の製造方法、
第9観点として、ネオジム(III)塩が硝酸ネオジム(III)、塩化ネオジム(III)、酢酸ネオジム(III)、蓚酸ネオジム(III)又はこれらの混合物である第4観点に記載の製造方法、
第10観点として、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分が、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルを含有する研磨剤、
第11観点として、下記第1工程及び第2工程:
第1工程:水性媒体中でセリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分とを、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で混合した水溶液と、アルカリ性物質を(OH)/(Ce3++X3+)のモル比として3〜30の割合で反応させて水酸化セリウム(III)と添加成分X(III)の水酸化物とが均一に混合された懸濁液を生成する工程、及び、第2工程:得られた懸濁液に10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込む工程を経由して得られ、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つX/(Ce+X)モル比に換算して0.005〜0.15の割合でランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルを含有する研磨剤、
第12観点として、添加成分がランタン化合物である第10観点又は第11観点に記載の研磨剤、
第13観点として、添加成分がネオジム化合物である第10観点又は第11観点に記載の研磨剤、
第14観点として、シリカを主成分とする基板の研磨に使用する第10観点又は第11観点に記載の研磨剤、
第15観点として、水晶、フォトマスク用石英ガラス、半導体デバイス、又はガラス製ハードディスクの研磨に用いられる第10観点又は第11観点に記載の研磨剤、
第16観点として、半導体デバイスの研磨が、有機膜研磨の工程、層間絶縁膜研磨の工程又はトレンチ分離の工程で使用されるものである第10観点又は第11観点に記載の研磨剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本願発明で得られるゾルは酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散したものである。この酸化セリウムを主成分とする粒子は上記第1工程及び第2工程を経由して得られ、(i)0.005〜1μmの粒子径を有すること、及び(ii)ランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分Xが、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.001〜0.5、好ましくは0.005〜0.15の割合でランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせを成分に含有することを特徴に備えている。
【0010】
本願発明の酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散したゾルは、第1工程及び第2工程を経由して得られる。
【0011】
第1工程は、大気開放下で行われる方法と、不活性ガス雰囲気下で行われる方法がある。
【0012】
第1工程が大気開放下で行われる方法では、懸濁液中の水酸化セリウム(III)と、水酸化ランタン(III)、水酸化ネオジム(III)又はその組み合わせからなる水酸化物とが、第1工程中乃至それに続く第2工程で直ちに、酸素含有ガスにより酸化される為に、懸濁液中に多数の核が発生し得られる粒子の粒子径分布が広くなる。第1工程は0〜95℃の温度で、10分〜3時間で行われる。
【0013】
第2工程は10〜95℃の温度で、1〜20時間で行われる。また第1工程及び第2工程は共に常圧下で行われる。
【0014】
一方、第1工程が不活性ガス中で行われる方法では、懸濁液中の水酸化セリウム(III)と、水酸化ランタン(III)、水酸化ネオジム(III)又はその組み合わせから成る水酸化物とが、酸化されずに水酸化物の状態で第2工程が行われるために、得られる粒子の粒子分布は狭い。第1工程は0〜95℃の温度で、10分〜3時間で行われる。第1工程が終了後、直ちに第2工程が行われる。第2工程は10〜95℃の温度で、1〜20時間で行われる。また第1工程及び第2工程は共に常圧下で行われる。
【0015】
第1工程で使用されるセリウム(III)塩としては、硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(III)アンモニウム、硫酸セリウム(III)、硫酸セリウム(III)アンモニウム、塩化セリウム(III)、炭酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、蓚酸セリウム(III)またはこれらの混合物などの水溶性の3価のセリウム塩が挙げられる。
【0016】
またランタン(III)塩としては、硝酸ランタン(III)、塩化ランタン(III)、炭酸ランタン(III)、酢酸ランタン(III)、蓚酸ランタン(III)またはこれらの混合物などの水溶性の3価のランタン塩が挙げられる。
【0017】
またネオジム(III)塩としては、硝酸ネオジム(III)、塩化ネオジム(III)、炭酸ネオジム(III)、酢酸ネオジム(III)、蓚酸ネオジム(III)またはこれらの混合物などの水溶性の3価のネオジム塩が挙げられる。
【0018】
不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられるが、特に窒素ガスが好ましい。
【0019】
アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはアンモニア、アミン、水酸化四級アンモニウム等の有機塩基が挙げられ、特に、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、これらを単独または混合物として使用することができる。
【0020】
第2工程において、酸素を含有する気体は空気、酸素、酸素などの酸化性ガスと窒素などの不活性ガスとの混合ガスなどが挙げられるが、空気が経済性、取扱い面から好ましい。これらガスの吹き込みは、反応容器にガス導入管を取り付け、ガス導入管の先端のノズルを反応液中に浸けてガスが導入される。
【0021】
上記の製造方法によって得られた酸化セリウムを主成分とする粒子は、反応装置よりスラリーとして取り出し、限外濾過法またはフィルタープレス洗浄法などにより水溶性の不純物を除去することができる。
【0022】
本願発明によって得られるランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムが主成分である粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ粒子径が0.005〜1μmの範囲にある。またランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分が、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して、例えば0.001〜0.15の粒子を110℃で乾燥して、X線回折装置により回折パターンを測定したところ、回折角度2θ=28.6゜、47.5゜及び56.4゜に主ピークを有し、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性の高い酸化セリウム粒子であることが分かった。
【0023】
またこの酸化セリウムが主成分である粒子のガス吸着法(BET法)による比表面積値は、2〜200m/gである。
【0024】
本願発明のランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムでは、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、好ましい量はX/(Ce+X)のモル比で0.001〜0.5であり、より好ましくは0.005〜0.3、最も好ましくは0.005〜0.15である。
【0025】
このモル比が0.001より少ない場合は、ランタン化合物又はネオジム化合物を含有する効果がなく、また0.5より多くなると酸化セリウム粒子の結晶性が悪くなる。
【0026】
本願発明で得られる粒子中に含まれるその他の希土類元素としては、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム等があげられるが、ランタン化合物やネオジム化合物の含有の効果を阻害するものではない。
【0027】
本願発明で得られる粒子中に含まれる成分のランタン及びネオジムは、酸化ランタン、酸化ネオジム、水酸化ランタン、水酸化ネオジム等の形態で含有され、酸化セリウムと共に粒子を形成するが、一部は酸素原子を挟んでセリウム原子とランタン原子の化学結合、又は酸素原子を挟んでセリウム原子とネオジム原子の化学結合を生じていると考えられる。
【0028】
本願発明によって得られたランタン又はネオジムを成分として含み酸化セリウムが主成分である粒子は、水媒体、水溶性有機溶媒または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒に再分散させる事によりゾルとして研磨剤、紫外線吸収材料、触媒用材料及び燃料電池用材料等にすることができる。
【0029】
本願発明によって得られたランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムが主成分である粒子を媒体に分散したゾルは、長時間放置すると粒子の一部が沈降するが、撹拌により容易に再分散することができ元の状態に戻るため、常温に保存して1年以上安定である。
【0030】
上記のランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムが主成分である粒子は、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%の範囲で研磨液に含有することが出来る。上記の粒子は、水媒体、水溶性有機溶媒または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒に再分散させる事により研磨剤、紫外線吸収材料、触媒用材料及び燃料電池用材料等にすることができる。
【0031】
得られた研磨液は酸性物質の添加によりpH1〜6に調整する事が出来る。これらの酸性物質としては、硝酸、塩酸、酢酸等が挙げられる。
【0032】
また、研磨液は塩基性物質の添加によりpH8〜13に調整する事が出来る。これら塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムの他にエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、メチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、及びアンモニア等が挙げられる。
【0033】
本願発明の結晶性酸化第二セリウム粒子を含有するゾルは、水溶性高分子、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を添加することができる。例えば、ポリビニルアルコール、アクリル酸重合体及びそのアンモニウム塩、メタクリル酸重合体及びそのアンモニウム塩当の水溶性高分子類、オレイン酸アンモニウム、ラウリル酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタアンモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの添加量としては、酸化セリウム粒子100重量部に対して0.01〜100重量部の割合で添加することができる。
【0034】
本願発明で得られた研磨液は、シリカを主成分とする基板の研磨に適する。シリカを主成分とする基板とは、シリカを50重量%以上含有する基板のことであり、例えば、水晶、フォトマスク用石英ガラス、半導体デバイスの有機膜、半導体デバイスのSiO2酸化膜、層間絶縁膜及びトレンチ分離のCMP、及びガラス製ハードディスクの研磨剤に適する。ガラス製ハードディスクは、例えば結晶化ガラス製ハードディスク、アルミノ珪酸塩ガラス又はソーダライムガラス製ハードディスクが挙げられる。
【0035】
また、本発明の研磨剤はニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の光学結晶材料、窒化アルミニウム、アルミナ、フェライト、ジルコニア等のセラミックス材料、アルミニウム、銅、タングステンなどの金属の研磨にも適応できる。
【0036】
【実施例】
実施例1
2Lのガラス製反応槽にNH /(Ce3++La3+)=8(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液253gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にCeOに換算した濃度が11.5重量%で純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液693gと、Laに換算した濃度が14.0重量%の純度が99.99%以上の硝酸ランタン(III)水溶液28.5gを混合した。この混合水溶液は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.05の割合に含有していた。この混合水溶液を攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。7時間で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH7.9、電気伝導度148mS/cmの反応液が得られた。
【0037】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分24.5重量%、pH5.2、電気伝導度43μS/cmの白色スラリー310gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が50〜100nmの粒子であった。この粒子の収率は、ほぼ100%であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=28.6゜、47.5゜及び56.4゜に主ピークを有し、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。この粒子は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.05の割合で含有していた。また窒素吸着法による比表面積は、23.3m/gであった。
【0038】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO/CeO=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH4.6、電気伝導度145μS/cm、粘度1.3mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0039】
実施例2
2Lのガラス製反応槽にNH /(Ce3++La3+)=8(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液253gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にCeOに換算した濃度が11.5重量%で純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液693gと、Laに換算した濃度が14.0重量%の純度が99.99%以上の硝酸ランタン(III)水溶液28.5gを混合した。この混合水溶液は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.05の割合に含有していた。この混合水溶液を攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。7時間で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH7.9、電気伝導度148mS/cmの反応液が得られた。
【0040】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分24.5重量%、pH5.2、電気伝導度43μS/cmの白色スラリー310gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が50〜100nmの粒子であった。この粒子の収率は、ほぼ100%であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=28.6゜、47.5゜及び56.4゜に主ピークを有し、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。この粒子は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.05の割合に含有していた。また窒素吸着法による比表面積は、23.3m/gであった。
【0041】
2Lのガラス製反応槽に洗浄したスラリー310g、純水134g、炭酸水素アンモニウム33g及び25%アンモニア水29gを仕込み、90℃まで昇温させた後、6時間保持した。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH10.0、電気伝導度7.4mS/cmの反応液が得られた。反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分24.1重量%、pH5.3、電気伝導度15μS/cmの白色スラリー285gが得られた。このスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径に変化はなかった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。またこの粒子は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.05の割合に含有していた。
【0042】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO/CeO=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH4.5、電気伝導度139μS/cm、粘度1.3mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0043】
実施例3
2Lのガラス製反応槽にNH /(Ce3++La3+)=8(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液253gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にCeOに換算した濃度が11.5重量%で純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液693gと、Laに換算した濃度が14.0重量%の純度が99.99%以上の硝酸ランタン(III)水溶液56.8gを混合した。この混合水溶液は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.10の割合で含有していた。この混合水溶液を攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。7時間で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH8.4、電気伝導度150mS/cmの反応液が得られた。
【0044】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分26.0重量%、pH6.4、電気伝導度122μS/cmの白色スラリー290gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が50〜150nmの粒子であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。この粒子は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.10の割合に含有していた。また窒素吸着法による比表面積は、24.1m/gであった。
【0045】
この洗浄した粒子に硝酸をCeOに対する割合で0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH5.4、電気伝導度215μS/cm、粘度1.5mPa・Sのゾルが得られた。
【0046】
2Lのガラス製反応槽に洗浄したスラリー290g、純水148g、炭酸水素アンモニウム33g及び25%アンモニア水29gを仕込み、90℃まで昇温させた後、6時間保持した。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH10.0、電気伝導度7.4mS/cmの反応液が得られた。反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分24.1重量%、pH5.3、電気伝導度15μS/cmの白色スラリー285gが得られた。このスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径に変化はなかった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化第二セリウムの特性ピークと一致した。またこの粒子は、ランタンをLa/(Ce+La)に換算したモル比で0.10の割合に含有していた。
【0047】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO/CeO=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH5.2、電気伝導度192μS/cm、粘度1.5mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0048】
実施例4
2Lのガラス製反応槽にNH3 /(Ce3++Nd3+)=8(モル比)に相当する28%のアンモニア水溶液169gと純水69gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にCeO2に換算した濃度が11.5重量%で純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液684gと、Nd23に換算した濃度が10.5重量%の純度が99.99%以上の硝酸ネオジム(III)水溶液12.5gと純水65gを混合した。この混合水溶液は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算したモル比で0.02の割合で含有していた。この混合水溶液を攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。7時間50分で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH8.3、電気伝導度135mS/cmの反応液が得られた。
【0049】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分26.3重量%、pH5.3、電気伝導度24μS/cmの白色スラリー300gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が50〜150nmの粒子であった。この粒子の収率は、ほぼ100%であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、回折角度2θ=28.6゜、47.5゜及び56.4゜に主ピークを有し、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。この粒子は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算したモル比で0.02の割合で含有していた。またCAPA−700(堀場製作所(株)製)で測定した遠心沈降法による粒子径は0.42μmであり、N4(COULTER ELECTRONICS,INC製)で測定した動的光散乱法による粒子径は、300nmであった。また窒素吸着法による比表面積は、20.3m2/gであった。
【0050】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO3/CeO2=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH3.9、電気伝導度108μS/cm、粘度1.9mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0051】
実施例5
1Lのガラス製反応槽に実施例4で得られた固形分26.3重量%、pH5.3、電気伝導度24μS/cmの白色スラリー188gを仕込み、30%の炭酸アンモニウム水溶液67gを添加後、90℃まで昇温させた後、6時間保持した。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH10.1、電気伝導度6.3mS/cmの反応液が得られた。反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分26.1重量%、pH7.1、電気伝導度14μS/cmの白色スラリー150gが得られた。このスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ粒子径に変化はなかった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。またこの粒子は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算してモル比で0.02の割合に含有していた。
【0052】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO3/CeO2=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH3.9、電気伝導度108μS/cm、粘度1.3mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0053】
実施例6
2Lのガラス製反応槽にNH3 /(Ce3++Nd3+)=8(モル比)に相当する28%のアンモニア水溶液169gと純水19gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にCeO2に換算した濃度が11.5重量%で純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液668gと、Nd23に換算した濃度が10.5重量%の純度が99.99%以上の硝酸ネオジム(III)水溶液29.3gと純水64gを混合した。この混合水溶液は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算してモル比で0.05の割合で含有していた。この混合水溶液を攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。6時間40分で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH8.4、電気伝導度134mS/cmの反応液が得られた。
【0054】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分25.5重量%、pH5.2、電気伝導度28μS/cmの白色スラリー314gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が50〜150nmの粒子であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。この粒子は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算してモル比で0.05の割合に含有していた。またCAPA−700(堀場製作所(株)製)で測定した遠心沈降法粒子径は0.64μmであり、N4(COULTER ELECTRONICS,INC製)で測定した動的光散乱法による粒子径は、353nmであった。また窒素吸着法による比表面積は、23.6m2/gであった。
【0055】
1Lのガラス製反応槽に洗浄したスラリー314gを仕込み、30%炭酸アンモニウム水溶液133gを添加後、90℃まで昇温させた後、6時間保持した。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH10.0、電気伝導度7.0mS/cmの反応液が得られた。反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分26.6重量%、pH7.5、電気伝導度33μS/cmの白色スラリー300gが得られた。このスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径に変化はなかった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化第二セリウムの特性ピークと一致した。またこの粒子は、ネオジムをNd/(Ce+Nd)に換算してモル比で0.05の割合に含有していた。
【0056】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO3/CeO2=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH4.2、電気伝導度127μS/cm、粘度1.5mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0057】
比較例1
500Lのグラスライニング製反応槽に純水44.3kgとNH3 /Ce3+=6(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液94.8kgを仕込み、液温を30℃に保ちながらの樹脂製のノズルより3Nm3/時間の窒素ガスを吹き込み、CeO2に換算した濃度が7.84重量%の純度が99.9%の硝酸セリウム(III)508.0kgを攪拌しながら30分かけて徐々に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を75℃まで昇温させた後、樹脂製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから4Nm3/時間の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。5時間で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH9.4、電気伝導度119mS/cmの反応液が得られた。
【0058】
反応液をロータリーフィルタープレス(コトブキ技研製)で洗浄を行い、固形分19.3kg、pH9.1、電気伝導度81μS/cmの白色スラリー173kgが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が40〜100nmの粒子であった。この粒子の収率は、ほぼ100%であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。また窒素吸着法による比表面積は、28.0m2/gであった。
【0059】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO3/CeO2=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH4.4、電気伝導度125μS/cm、粘度1.4mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0060】
比較例2
500Lのグラスライニング製反応槽に純水44.3kgとNH3 /Ce3+=6(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液94.8kgを仕込み、液温を30℃に保ちながらの樹脂製のノズルより3Nm3/時間の窒素ガスを吹き込み、CeO2に換算した濃度が7.84重量%の純度が99.9%の硝酸セリウム(III)水溶液508.0kgを攪拌しながら30分かけて徐々に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を75℃まで昇温させた後、樹脂製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから4Nm3/時間の空気に切り替えセリウム(III)がセリウム(IV)にする酸化反応を開始した。5時間で酸化反応が終了した。反応が終了した液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH9.4、電気伝導度119mS/cmの反応液が得られた。
【0061】
反応液をロータリーフィルタープレス(コトブキ技研製)で洗浄を行い、固形分19.3kg、pH9.1、電気伝導度81μS/cmの白色スラリー173kgが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ1次粒子径が40〜100nmの粒子であった。この粒子の収率は、ほぼ100%であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。
【0062】
この洗浄スラリー173kgを再び500Lのグラスライニング製反応槽に仕込み、更に純水47.2kg、炭酸水素アンモニウム16.5kg及び25%アンモニア水14.2kgを仕込み、90℃まで昇温させた後、6時間保持した。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH10.5、電気伝導度16.1mS/cmの反応液が得られた。反応液をロータリーフィルタープレスで洗浄を行い、固形分23.2重量%、pH5.5、電気伝導度26μS/cmの白色スラリー150kgが得られた。このスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ粒子径に変化はなかった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード34−394に記載の立方晶系の結晶性酸化セリウムの特性ピークと一致した。またCAPA−700(堀場製作所(株)製)で測定した遠心沈降法粒子径は0.48μmであり、N4(COULTER ELECTRONICS,INC製)で測定した動的光散乱法による粒子径は、323nmであった。窒素吸着法による比表面積は、26.8m2/gであった。
【0063】
この洗浄した粒子に硝酸をHNO3/CeO2=0.12重量%添加し、更に純水で固形分10重量%に調整し、pH4.9、電気伝導度156μS/cm、粘度1.4mPa・Sのゾルが得られ研磨液とした。
【0064】
比較例3
2Lのガラス製反応槽にNH /La3+=8(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液253gを仕込み、液温を30℃に保ちながらのガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にLaに換算した濃度が14.0重量%の純度が99.99%以上の硝酸ランタン(III)水溶液568gを溶かし、攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替え、7時間で空気を吹き込んだ。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH8.4、電気伝導度150mS/cmの反応液が得られた。
【0065】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分20.0重量%、pH8.5、電気伝導度150μS/cmの白色スラリー380gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ数μmの針状粒子であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード36−1481に記載の水酸化ランタンの特性ピークと一致した。
【0066】
比較例4
2Lのガラス製反応槽にNH3/Nd3+=8(モル比)に相当する25%のアンモニア水溶液253gを仕込み、液温を30℃に保ちながらガラス製のノズルより0.5L/分の窒素ガスの吹き込みを開始した。1Lのガラス製容器にNd23に換算した濃度が14.0重量%、純度が99.99%以上の硝酸ネオジム(III)水溶液568gを溶かし、攪拌しながら30分かけて徐々に、2Lのガラス製反応槽に添加して水酸化物の懸濁液を得た。続いてこの懸濁液を80℃まで昇温させた後、ガラス製のノズルからの吹き込みを窒素ガスから0.5L/分の空気に切り替え、7時間で空気を吹き込んだ。反応液を室温に戻し、白色の微粒子を有するpH8.0、電気伝導度150mS/cmの反応液が得られた。
【0067】
反応液をヌッチェで洗浄を行い、固形分20.5重量%、pH7.8、電気伝導度150μS/cmの白色スラリー370gが得られた。洗浄したスラリーを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ数μmの針状粒子であった。また、微粒子を乾燥して粉末X線回折を測定したところ、ASTMカード6−601に記載の水酸化ネオジムの特性ピークと一致した。
【0068】
図1は得られた粒子において、La/(Ce+La)に換算したモル比が、0(比較例1で製造した酸化セリウムのみの粒子)、0.05(実施例1で製造された粒子)、1(比較例3で製造された水酸化ランタンのみの粒子)の場合の粒子の粉末X線回折のチャートを示す。モル比で0の場合と、0.05の場合はそれら粒子は結晶性が高く、両者のピーク位置に大きな変化がない。また水酸化ランタンにおいては結晶性が低い。
【0069】
図2は四角印、三角印、丸印、及び菱形印の順にLa/(Ce+La)に換算したモル比が、0、0.01、0.05、0.10と変化している粒子をそれぞれ水に分散して得られた4種類のゾルのゼーター電位を測定しプロットしたものである。モル比が0の場合に比べて、モル比が0.01、0.05及び0.10の場合は共に表面電位が変化している。即ち、モル比0の場合とモル比0.01の場合を境に表面電位が変化していると考えられる。
【0070】
図4は実施例1で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真である。図5は実施例3で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真である。図8は比較例1で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真である。図9は比較例3で得られた粒子の透過型電子顕微鏡写真である。実施例1と実施例3で得られた粒子は、比較例1で得られた酸化セリウムのみからなる粒子と形状が似ている。一方、比較例3で得られた水酸化ランタンは針状粒子である。
【0071】
実施例1〜実施例3で得られたランタン化合物を成分として含み酸化セリウムが主成分である粒子は、これらの結果からランタン成分は粒子の表面に存在することが推測される。
【0072】
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた研磨液による研磨試験を行った。
研磨機(商品名:ラップマスター18、ラップマスター社製)、
研磨布:ポリウレタン含浸の不織布ポリテックスDG(ロデール・ニッタ社製)、
被研磨物:石英ガラス(φ95.5mm)、
回転数:40rpm、
研磨圧力:80g/cm
研磨時間:10分間で行った。
【0073】
実施例1で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が2.0μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0074】
実施例2で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が4.1μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0075】
実施例3で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が3.7μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0076】
実施例4で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が1.4μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0077】
実施例5で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が2.1μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0078】
実施例6で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が2.4μm/時間であり、研磨面は良好であった。
【0079】
比較例1で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が0.7μm/時間であり、研磨面は実施例1〜6で使用したゾルの方が良好であった。
【0080】
比較例2で得られたゾルを用いた研磨試験では研磨速度が1.1μm/時間であり、研磨面は実施例1〜6で使用したゾルの方が良好であった。
【0081】
実施例1及び実施例4と、比較例1を比較すると、実施例1及び実施例4は、比較例1に比べ研磨速度が速く、しかも研磨面は良好であることがわかる。
【0082】
アンモニウム塩(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム)で表面改質した実施例2、3、5及び6と、比較例2の場合も、実施例2、3,5及び6の方が比較例2より研磨速度が速く、しかも研磨面は良好であることがわかる。
【0083】
【発明の効果】
本願発明は水性媒体中でセリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分とを、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.001〜0.5の割合で混合した水溶液と、アルカリ性物質を(OH)/(Ce3++X3+)のモル比として3〜30の割合で反応させて水酸化セリウム(III)と添加成分X(III)の水酸化物とが均一に混合された懸濁液を生成した後、直ちに該懸濁液を大気圧下、10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込むことを特徴とするものである。
【0084】
セリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分を混合し、アルカリを添加して得られる懸濁液が生じる第1工程を、大気開放下で行うか、不活性ガス雰囲気下で行うかによって、最終的に得られる酸化セリウムを主成分とする粒子の粒子径分布が異なる。大気開放下で行われる方法では粒子径分布が広くなり、不活性ガス雰囲気下で行われる方法では粒子径分布が狭くなる。
【0085】
本願発明により得られたランタン化合物又はネオジム化合物を成分として含み酸化セリウムが主成分である粒子は、シリカを主成分とする基板の研磨剤に適しており、研磨剤として高速研磨が可能で、しかも高品質面が得られる。
【0086】
そのため、CMP(ケミカルメカニカルポリシング:Chemical Mechanical Polishing)として好適である。特に、保護膜として用いられる窒化珪素膜にダメージを与えることなく精密に研磨することができるため、STI(トレンチ分離:Shallow Trench Isolation)と通常称されている半導体デバイスの素子分離工程に用いる研磨剤として好適である。また、シロキサン系、有機ポリマー系、多孔質材料系、CVDポリマー系等の半導体デバイスの層間絶縁膜用低誘電率材料の研磨に用いる研磨剤としても好適である。シロキサン系の材料としては、水素化メチルシルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサンが挙げられる。有機ポリマー系の材料の例としては、ポリアリーレンエーテル、熱重合性炭化水素、パーフロロ炭化水素、ポリキロリン、フッ素化ポリイミドが挙げられる。多孔質材料系の材料の例としては、キセロゲル、シリカコロイドが挙げられる。CVDポリマー系の材料の例としては、フロロカーボン、芳香族炭化水素ポリマー、シロキサン系ポリマーが挙げられる。
【0087】
本願発明の研磨剤は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の光学結晶材料、窒化アルミニウム、アルミナ、フェライト、ジルコニア等のセラミックス材料、アルミニウム、銅、タングステンなどの金属の研磨に適応できる。
【0088】
本願発明により得られるゾルは、研磨剤以外にも、紫外線吸収材料、触媒用材料及び燃料電池用材料等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1、比較例1及び比較例3で得られた粒子の粉末X線回折のチャートを示す。
【図2】図2は実施例5,実施例6、及び比較例1で得られた粒子の粉末X線回折のチャートを示す。
【図3】La/(Ce+La)に換算したモル比が、0、0.01、0.05、0.10と変化させた粒子をそれぞれ水に分散して得られた4種類のゾルについて、ゼーター電位を測定したチャートである。
【図4】実施例1で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す。倍率は20万倍である。
【図5】実施例3で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す。倍率は20万倍である。
【図6】実施例5で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す。倍率は20万倍である。
【図7】実施例6で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真を示す。倍率は20万倍である。
【図8】比較例1で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。倍率は20万倍である。
【図9】比較例3で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。倍率は2万倍である。
【図10】比較例4で得られた粒子の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡写真である。倍率は5万倍である。
【符号の説明】
(1)は比較例1で得られたLa/(Ce+La)に換算したモル比でランタン化合物の含有量が0となる粒子(即ち、酸化セリウム粒子)の粉末X線回折のパターンを示す。
(2)は実施例1で得られたLa/(Ce+La)に換算したモル比でランタン化合物の含有量が0.05である酸化セリウムを主成分とする粒子の粉末X線回折のパターンを示す。
(3)は比較例3で得られたLa/(Ce+La)に換算したモル比でランタン化合物の含有量が1である粒子(即ち、ここでは水酸化ランタン粒子)の粉末X線回折のパターンを示す。
(4)は実施例5で得られた粒子の粉末X線回折のパターンを示す。
(5)は実施例6で得られた粒子の粉末X線回折のパターンを示す。
(6)は比較例1で得られた粒子の粉末X線回折のパターンを示す。

Claims (16)

  1. 0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分が、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾル。
  2. 添加成分がランタン化合物である請求項1に記載のゾル。
  3. 添加成分がネオジム化合物である請求項1に記載のゾル。
  4. 下記第1工程及び第2工程:
    第1工程:水性媒体中でセリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分とを、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で混合した水溶液と、アルカリ性物質を(OH)/(Ce3++X3+)のモル比として3〜30の割合で反応させて水酸化セリウム(III)と添加成分X(III)の水酸化物とが均一に混合された懸濁液を生成する工程、及び、第2工程:得られた懸濁液に10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込む工程を経由して得られ、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つX/(Ce+X)モル比に換算して0.005〜0.15の割合でランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルの製造方法。
  5. 第1工程が大気開放下で行われる請求項4に記載の製造方法。
  6. 第1工程が不活性ガス雰囲気下で行われる請求項4に記載の製造方法。
  7. セリウム(III)塩が硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(III)アンモニウム、硫酸セリウム(III)、硫酸セリウム(III)アンモニウム、塩化セリウム(III)、炭酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、蓚酸セリウム(III)又はこれらの混合物である請求項4に記載の製造方法。
  8. ランタン(III)塩が硝酸ランタン(III)、塩化ランタン(III)、酢酸ランタン(III)、蓚酸ランタン(III)又はこれらの混合物である請求項4に記載の製造方法。
  9. ネオジム(III)塩が硝酸ネオジム(III)、塩化ネオジム(III)、酢酸ネオジム(III)、蓚酸ネオジム(III)又はこれらの混合物である請求項4に記載の製造方法。
  10. 0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分が、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルを含有する研磨剤。
  11. 下記第1工程及び第2工程:
    第1工程:水性媒体中でセリウム(III)塩と、ランタン(III)塩、ネオジム(III)塩又はその組み合わせからなる添加成分とを、ランタン原子、ネオジム原子又はその組み合わせをXとして、X/(Ce+X)のモル比に換算して0.005〜0.15の割合で混合した水溶液と、アルカリ性物質を(OH)/(Ce3++X3+)のモル比として3〜30の割合で反応させて水酸化セリウム(III)と添加成分X(III)の水酸化物とが均一に混合された懸濁液を生成する工程、及び、第2工程:得られた懸濁液に10〜95℃の温度で酸素又は酸素を含有するガスを吹き込む工程を経由して得られ、0.005〜1μmの粒子径と、2〜200m /gの比表面積値を有し、且つX/(Ce+X)モル比に換算して0.005〜0.15の割合でランタン化合物、ネオジム化合物又はその組み合わせからなる添加成分を含有した立方晶系の結晶性酸化セリウムを主成分とする粒子を媒体に分散し、そして1〜6又は8〜13のpHを有するゾルを含有する研磨剤。
  12. 添加成分がランタン化合物である請求項10又は請求項11に記載の研磨剤。
  13. 添加成分がネオジム化合物である請求項10又は請求項11に記載の研磨剤。
  14. シリカを主成分とする基板の研磨に使用する請求項10又は請求項11に記載の研磨剤。
  15. 水晶、フォトマスク用石英ガラス、半導体デバイス、又はガラス製ハードディスクの研磨に用いられる請求項10又は請求項11に記載の研磨剤。
  16. 半導体デバイスの研磨が、有機膜研磨の工程、層間絶縁膜研磨の工程又はトレンチ分離の工程で使用されるものである請求項10又は請求項11に記載の研磨剤。
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