JP4009764B2 - 液化ガス用ポンプ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液化ガス用ポンプ装置に係わり、特に液化天然ガス等の液化ガスを貯蔵する液化ガス用ポンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液化天然ガス等の液化ガスを輸送する液化ガス用ポンプ装置には、例えば、液化ガスタンク内で用いられる、タンク内蔵式の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置があり、このような液化ガス用ポンプ装置では、従来、例えば特開平8−296586号公報に示されるように、静圧軸受および補助用の複列配置玉軸受が採用されている。
【0003】
ここで、かかる従来の液化ガス用ポンプ装置について、液化ガスタンク用潜没ポンプ装置を例として、図19を用いて説明する。
【0004】
1は液化ガスタンクであり、1Aはガスタンク1の天井板、そして、2は前記液化ガスタンク1内に垂下された揚液管である。この液化ガスタンク1内に垂下された揚液管2の下端には、吸込弁3が取り付けられ、この揚液管2の座面4には、前記の液化ガスタンク用潜没ポンプ本体5が設置されており、6は、前記潜没ポンプ本体5の外周に設けられた複数の吐出口である。また、揚液管2の頂部には、ポンプ吊上機構を備えたヘッドプレート7が設けられ、8は吊り上げ用ワイヤであり、9は給電ケーブルであり、10は巻き上げ機である。
【0005】
そして、前記液化ガスタンク用潜没ポンプ本体5は、前記液化ガスタンク1の天井板1Aから鉛直に垂下された揚液管2の内部に、前記ヘッドプレート7から、前記吊り上げ用ワイヤ8によって、例えば深さ50m程度にまで吊り下げられて、前記揚液管2の下部の前記座面4に着座して設置される。
【0006】
また、この液化ガスタンク用潜没ポンプ本体5には、給電ケーブル9によって電源が供給されており、ポンプの運転が開始されると、液化ガスは吸込弁3から吸い込まれて昇圧されてポンプ吐出口6から吐出され、図中に矢印で示すように、前記揚液管2内を上昇して吐出管11に送り出される。
【0007】
次に、従来の液化ガス用ポンプ本体の例として、図20に示す液化ガスタンク用潜没ポンプ本体図により説明する。
【0008】
液化ガスタンク用潜没ポンプ本体5の構造は、ポンプ回転軸5Aに、吸込性能向上のために取り付けられたインデューサ5B、複数の羽根車5C及びサブマージドモータロータ5Dが固定され、これらは一体型構造であり、一体となって回転するようになっている。また、このポンプ回転軸5A、インデューサ5B、複数の羽根車5C、サブマージドモータロータ5Dは、軸受寿命が長く、制振性に優れた自液潤滑される静圧軸受(上静圧軸受5E、中静圧軸受5F、下静圧軸受5G)によって、半径方向に支持されている。また、上静圧軸受5Eと中静圧軸受5Fには、ポンプ起動・停止時の補助用軸受として、玉軸受(上玉軸受5H、中玉軸受5I1)を設けている。
【0009】
ポンプが通常運転の状態(揚液管2がポンプ吐出液で満たされている状態)では、玉軸受5H、5I1の代わりに静圧軸受5E、5F、5Gが働くように、例えば特公昭61−5558号公報に示されるようなバランスディスク等からなる軸スラスト平衡装置5Mが構成されている。これにより、ポンプ通常運転状態では軸スラスト平衡装置5Mの機能により、ポンプ回転軸5Aが軸方向へ遊動し、中玉軸受5I1はハウジング5Lから離脱浮上し、中玉軸受5I1に負荷されるスラスト荷重はゼロとなる。しかし、ポンプ5を起動した場合、吐出液で揚液管2内が満たされるまでの数分間は、ポンプ5は、所定の吐出圧力よりかなり低い吐出圧力で運転される。この数分間は、液を押し上げるだけのわずかな吐出圧力だけで充分なためである。このため、軸スラスト平衡装置5Mは機能せず、ポンプ回転体の重量や、羽根車5Cの下向きの推力といった大きなスラスト荷重が中玉軸受5I1に負荷される。特に、ポンプの大容量化等によって、揚液管2の大口径化がなされた場合、ポンプ5を起動してから液が揚液管2を満たすまでに要する時間が更に延長し、それに伴い、スラスト荷重が中玉軸受5I1に加わる時間も長くなり中玉軸受5I1の寿命も短くなる。これに対処するため従来は、中玉軸受5I1に、特開平8−296586号公報に示されている単列玉軸受を複列配置した複列配置玉軸受5I1(以下複列玉軸受と云う)を用い、玉軸受1個当たりに負荷される荷重を低減させていた。また、前記複列玉軸受5I1は、特開平9−317677号公報に示されているように、複列玉軸受の間にリングスペーサ5Jを介し、リテーナ5Kにより玉軸受外輪あるいは内輪を固定し(図20は外輪固定の例)、一体化させ、複列玉軸受のそれぞれの玉軸受への荷重の等分配を確保していた。尚、リテーナ5Kにより外輪を固定する場合には内輪を回転軸5Aと、内輪を固定する場合には外輪をハウジング5Lと、それぞれ固定する方法を取っていた。図20は前者である。また、前記の起動時の数分間は、ポンプ5の吐出圧力が小さいために、静圧軸受5E、5F、5Gの軸受効果が小さく、回転軸5Aは静圧軸受と回転軸との隙間一杯に振れ廻る。これらの状態が組合わさると、複列玉軸受内輪を回転軸5Aに固定する場合を例にとれば、図21に示すように回転軸5Aは、複列玉軸受用リテーナ5Kの下面着座面を支点として振れ廻るような歳差運動を行う。この歳差運動の状態では、リテーナ5K下面着座面が全面で着座せず点接触の状態で着座し、多大なスラスト荷重を回転軸が傾いた状態で受けるため、前記複列玉軸受5Iに不安定な荷重がかかる状態となり、前記複列玉軸受5Iの摩耗を増加させ、軸受寿命が低下する。リテーナ5K下面着座面で、全面接触したとしても、複列玉軸受では角すきまが小さく、シャフトが歳差運動することにより、玉軸受の玉に不安定な挙動が生じ、摩耗を増加させる。これに対処するため、特開平11−62873号公報、特開平11−90289号公報に示されている緩衝材または緩衝構造をリテーナ5Kと回転軸5Aの間、リテーナ5Kとハウジング5Lの間等に介在させることで、前記歳差運動が起きた場合においても、傾きに緩衝材または緩衝構造が追従し、これによって、複列配置玉軸受の異常摩耗を防止している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置における軸受部は、スラスト荷重に対処していたが、ポンプがより大型化した場合等は、スラスト荷重、荷重負荷時間共にさらに増大することとなる。この事例に対し、より過酷な荷重負荷状態に対処でき、より信頼性の高い該ポンプ装置軸受部が要求される。
【0011】
本発明の目的は、該ポンプ装置軸受部の玉軸受の配列数を増すことで、軸受1個当りに負荷される荷重をより低減させたポンプ装置を提供するものである。
【0012】
また本発明の目的は、該ポンプ装置軸受部の部品数を低減し、構造が簡素化されたポンプ装置を提供することにある。
【0013】
さらに本発明の目的は、前記のように玉軸受の配列数を増した状態、構造を簡素化した状態においても、軸受部に緩衝材や緩衝構造を設けることで、ポンプ装置の歳差運動による異常摩耗等を防止できるポンプ装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、立軸に配置したポンプ軸と、このポンプ軸を支承しポンプ軸の上部と下部と中間部とに配置した静圧軸受と、中間部静圧軸受の近傍に設けた軸スラスト平衡装置と、上部静圧軸受と中間部静圧軸受間に配置されポンプ軸を回転駆動する駆動部と、中間部静圧軸受の下方に設けられ吸い込んだ液化ガスを昇圧する羽根車と、これら各部材を収納する揚液管とを備え、液化ガスタンクに潜没される液化ガス用ポンプ装置において、前記中間部静圧軸受の近傍であって上方に玉軸受を配置し、この玉軸受は、ポンプの通常運転時には前記軸スラスト平衡装置の作用によりスラスト荷重がゼロとなり、ポンプ起動時には下向きのスラスト荷重を支承するものであって、しかも軸方向に3列あり、この玉軸受の内輪および外輪の少なくともいずれかにより3列の軸受が一体化されており、3列に形成された前記玉軸受のスラスト荷重支承部にポンプ軸の歳差運動を緩衝させ、歳差運動に起因する不安定荷重を低減する緩衝材を設けたことによって達成される。
【0015】
液化ガス用ポンプ装置において、ポンプ起動時、液化ガスが揚液管を満たし所定の吐出圧力となり、スラスト平衡装置が作用するまでの数分間、軸受に負荷されるスラスト荷重に対して、玉軸受1個当たりに負荷する荷重を低減させ、軸受の長寿命化、信頼性の向上を図ることができる。
【0017】
本発明によれば、構造を簡素化したことで、軸受部の信頼性向上、及びコストの低減を図ることができる。
【0018】
また、本発明では、該ポンプ装置軸受部の玉軸受の配列数を増した状態、構造を簡素化した状態において、該ポンプ装置軸受部に緩衝材や緩衝構造を設置した。 本発明によれば、該ポンプ装置軸受部の玉軸受の配列数の増加や構造の簡素化を実施しても、ポンプ回転軸の振れ廻りによる歳差運動が起きた場合において、軸の傾きに、緩衝材が追従し、これによって、玉軸受の異常摩耗等を防止し、更に軸受長寿命に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施例として、図19、図20で説明した液化ガスタンク用潜没ポンプ装置に本発明を適用した場合のポンプ本体断面図である。図8ないし図18は本発明の各種の実施例として、図19、図20で説明した液化ガスタンク用潜没ポンプ装置に本発明を適用した場合のポンプの中軸受部分の断面図である。また、図2ないし図7は参考図であり、図19、図20で説明した液化ガスタンク用潜没ポンプ装置に他の形式の軸受を採用したときの中軸受部の断面図である。図中、図19及び図20と同一符号のものは、従来技術と同等部分であり、図1には示していないが、図19と同じように液化ガスタンク、吐出管等が存在することは云うまでもない。
【0021】
図1に示す本実施例の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置は、液化ガスタンク内に垂下された揚液管2と、揚液管2の底部座面4に設置されたポンプ本体5からなる。揚液管の底部には、吸込弁3が取り付けられ、ここより液化ガスを吸い込み、前記ポンプ本体5の外周に設けられた複数の吐出口6から溶液管2内部に吐出される。ポンプ本体5の構造は、ポンプ回転軸5Aに、インデューサ5B、複数の羽根車5C及びサブマージドモータロータ5Dが固定され、これらは一体型構造であり、一体となって回転するようになっている。また、このポンプ回転軸5Aは、自液潤滑される静圧軸受(上静圧軸受5E、中静圧軸受5F、下静圧軸受5G)によって、半径方向に支持されている。また、上静圧軸受5Eと中静圧軸受5Fには、ポンプ起動・停止時の補助用軸受として、玉軸受(上玉軸受5H、中玉軸受5I2)を設けている。
【0022】
図2に、中玉軸受の参考図を示す。中玉軸受5I2の内輪を、ポンプ回転軸5Aと固定する方法を取った場合、ポンプが通常運転の状態では、軸スラスト平衡装置5Mによるポンプ回転軸5Aの軸方向への遊動により、中玉軸受5I2はハウジング5Lから離脱(浮上)し、中玉軸受5I2に負荷されるスラスト荷重はゼロとなる。しかし、ポンプ5を起動した場合、吐出液で揚液管2内が満たされるまでの数分間は、ポンプ5は、所定の吐出圧力よりかなり低い吐出圧力で運転されるため、軸スラスト平衡装置5Mは機能せず、ポンプ回転体の重量や、羽根車5Cの下向きの推力といった大きなスラスト荷重が中玉軸受5I2に負荷される。また、このポンプ起動時の数分間、回転軸5Aは、図21に示すように中軸受部を支点として振れ廻るような歳差運動を行う。
【0024】
図2に複数列配置した玉軸受を示す。この軸受は、玉軸受を複数列配置することにより、玉軸受1個当りに加わるスラスト荷重を分配できる。
【0025】
従来の液化ガスタンク用潜没ポンプ装置ではポンプ起動後、揚液管が満液状態となるまでの数分間は、所定の吐出圧力よりかなり低い圧力となり、スラスト荷重をゼロにするスラストバランス平衡装置が正常に機能せず、玉軸受にスラスト荷重が負荷されていた。そのために、揚液管の口径が大型化した場合には、さらに揚液管の満液状態が長くなり、スラスト荷重が負荷される時間が延長され、軸受寿命を著しく短縮してしまう問題が生じた。これに対し、玉軸受を複列に配置し、スラスト荷重を分散させる方法がなされていたが、玉軸受配置列数をさらに増やすことで、より1個の玉軸受に加わるスラスト荷重を低減し、さらなる軸受寿命の低下防止、信頼性向上に寄与できる。この、図2は中玉軸受5I2内輪を回転軸5Aに固定し、外輪をリテーナ5Kにより固定している。外輪をハウジング5Lに固定し、内輪をリテーナ5Kにより固定する方法もある。中玉軸受5I2内輪を回転軸5Aと一体のものとして製作し、外輪をリテーナ5Kにより固定する場合もあり、中玉軸受5I2外輪をハウジング5Lと一体のものとして製作し、内輪をリテーナ5Kにより固定する場合もある。
【0026】
次に、図3に示すのは、複数の玉軸受外輪及び内輪を一体化することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、外輪または内輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図ったものである。この一体化された玉軸受は、外輪をハウジングに固定して使用する場合もあり、内輪を軸に固定して使用する場合もある。また、外輪をハウジングと一体のものとして製作する場合もあり、内輪を軸と一体のものとして製作する場合もある。
【0027】
次に、図4に示すのは、複数の玉軸受外輪を一体化し、玉軸受内輪自体を複数列配置することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、内輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図ったものである。この一体化された玉軸受外輪は、ハウジングに固定して使用する場合もあり、ハウジングと一体のものとして製作する場合もある。
【0028】
次に、図5に示すのは、複数の玉軸受内輪を一体化し、玉軸受外輪自体を複数列配置することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、外輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図ったものである。この一体化された玉軸受内輪は、軸に固定して使用する場合もあり、軸と一体のものとして製作する場合もある。
【0030】
本発明では、図8以下に示すように、玉軸受を一体化して、部品数を低減、簡素化された構造とし、コストの低減及び軸受部の信頼性向上に寄与できるものである。
【0031】
また、これら玉軸受を複数列配置した場合、構造を簡素化した場合においても、緩衝材や緩衝構造を効果的に用いたので、ポンプ起動時における回転軸5Aの歳差運動による、軸受の摩耗増加を防止することができる。
【0032】
図6は、玉軸受5I2内輪を回転軸5Aに固定して設置した場合に、複数列に配置した玉軸受のリーテナ5K着座面と、該リテーナが着座する相手側ハウジング着座面との間に、緩衝材として、皿ばね12Aを設けたことを示す参考図である。図7は、玉軸受5I2外輪をハウジング5Lに固定して設置した場合に、回転軸5A着座面と、回転軸が着座する複数列に配置した玉軸受のリーテナ5K着座面との間に、緩衝材として、皿ばね12Aを設けたことを示す参考図である。これによって、ポンプ回転軸の歳差運動が起きた状態においても、皿ばね12Aがたわむことでポンプ回転軸5Aの傾きに追従し、歳差運動を緩衝させ、歳差運動時に複数列玉軸受へ負荷される不安定な荷重を低減させ、複数列玉軸受の異常摩耗等を防止することができる。皿ばね12Aは、回転軸5Aやリテーナ5K、ハウジング5L等にネジ等により締結する場合もあるし、あるいは回転軸5Aやリテーナ5K、ハウジング5L等と一体構造とする場合もある。以下にこれら参考図に示したものとは異なる本発明の各実施例を示す。
【0034】
次に図8に示すのは、前記のように玉軸受外輪及び内輪を一体化することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、外輪または内輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図った状態に、緩衝材を適用した例である。このようにすることで、前記と同様の緩衝材による効果を得ることができる。また、この場合においても、複数列玉軸受5I2の内輪を回転軸5Aに固定した場合、複数列玉軸受5I2の外輪をハウジング5Lに固定した場合のどちらの方法にも適用可能である。図8は前者であり、玉軸受5I2着座面と該玉軸受5I2が着座するハウジング5L着座面の間に皿ばね12Aを設けている。後者においては、回転軸5A着座面と該回転軸5Aが着座する玉軸受5I2着座面の間に皿ばね12Aを設ければ良い。尚、この場合も、皿ばね12Aは、回転軸5A、玉軸受5I2、ハウジング5L等にネジ等により締結しても良いし、あるいは回転軸5A、玉軸受5I2、ハウジング5L等と一体構造としても良い。
【0035】
次に図9に示すのは、前記のように複数の玉軸受内輪を一体化し、玉軸受外輪自体を複数列配置することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、外輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図った状態に、緩衝材を適用した例である。このようにすることで、前記と同様の緩衝材による効果を得ることができる。尚、この場合も、皿ばね12Aは、玉軸受5I2、ハウジング5L等にネジ等により締結しても良いし、あるいは玉軸受5I2、ハウジング5L等と一体構造としても良い。
【0036】
次に図10に示すのは、前記のように複数の玉軸受外輪を一体化し、玉軸受内輪自体を複数列配置することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、内輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図った状態に、緩衝材を適用した例である。このようにすることで、前記と同様の緩衝材による効果を得ることができる。尚、この場合も、皿ばね12Aは、回転軸5A、玉軸受5I2等にネジ等により締結しても良いし、あるいは回転軸5A、玉軸受5I2等と一体構造としても良い。
【0037】
本発明の緩衝材としては、図8ないし図10に示した皿ばね12Aの他にも各種考えられる。図11は、緩衝材としてコイルばね12Bを用いた例であり、二枚のリングプレートの間に複数のコイルばねを介在させたものを示すが、コイルばねには、リングプレート全周を取り巻く1コイルのばねを用いても良い。また、皿ばね12Aの場合と同様、着座面間をコイルばね12Bで締結しても良いし、あるいは一体構造としても良い。
【0038】
次に、図12に示すのは緩衝材として板ばね12Cを用いた例であり、図12に示す板ばね12Cは、リング状の板の下面内側をテーパ形状としてばねを形成し、また、リテーナ5Kや玉軸受等との追従性を良くするために、板ばね12Cの周方向に複数の切り込みと凸部13を設けている。該突起部13に関しては、図13に示すように、玉軸受等に設けても良い。また、玉軸受5I2に
関して、図12、13に示すように板ばね12Cとの着座面の内側にL字型の突起部14を設けることにより、万一、板ばね12Cが破損した場合の破片や異物等が玉軸受5I2の内部に侵入することを防ぐことができる。この着座面の内側にL字型の突起部14を設ける方法は、前記皿ばね12Aや前記コイルばね12Bの場合にも当然適用できる。板ばねの形状に関しては、図12、図13に示した形状の他に、例えば、図14に示すような形状でも良い。図14に示す板ばね12Cでは、板ばねの下面に板をたわませるために板の厚さを薄くするような、複数の溝を設けており、さらにその板の薄い部分の上面にはリテーナ5Kや玉軸受等との追従性を良くするために、板ばね12Cの周方向に複数の突起部13を設けている。板ばね12Cの形状は他にもあり得るが、図12ないし図14に示したような板ばねの考え方であれば良い。また、板ばね12Cは、皿ばね12A及びコイルばね12Bと同様に着座面間を締結しても良いし、あるいは一体構造としても良い。例として、図15、図16に板ばね12Cの取付け方法の概念図を示す。図15は、板ばね12Cをハウジング5Lと一体構造とした場合の一例であり、ハウジング5Lに最初から板ばね12Cを形成させておけばよい。また、図16は板ばね12Cをハウジング5Lにボルト等で締結する場合の一例であり、図16に示す方法は、ハウジング5Lを分割し、その間に板ばね12Cを挟んで締結した場合である。図16のように板ばね12Cを締結する方法によれば、簡単に板ばね12Cを交換することもできる。以上述べたように、緩衝材として各種のばねを設ける方法があるが、例えば板ばね12Cの下面にコイルばね12Bを介在させるなど組合せて用いてもよい。
【0039】
緩衝材としてばねを用いる方法の他に、着座面間を緩衝構造とする方法もある。その例として、図17に、複数の玉軸受外輪及び内輪を一体化することで、従来、軸受間に介していたリングスペーサ5J、外輪または内輪を固定していたリテーナ5Kを排除し、構造の簡素化を図った状態に、緩衝構造を適用した例を示す。図17では、それぞれの着座面を適当な円弧断面により形成する球面座緩衝構造としている。ポンプ回転軸5Aが歳差運動をしてわずかに傾いた場合にも、図17のように、着座する部分が点接触とならず全面で着座するように適当な球面座構造とすることによって、歳差運動に対する追従性を確保することができ、歳差運動時に玉軸受へ負荷される不安定な荷重を低減させ、玉軸受の異常摩耗を防止することができる。図18に示すのは、球面座緩衝構造を交換できるように球面座を付けたリング状の部品15をハウジング5Lにネジ等で締結した場合である。このようにすれば、球面座緩衝構造を交換できることに加え、ハウジング5Lと材質を変えることもできる。球面座を付けたリング状の部品15の材質としては、特殊カーボン等の摺動性に優れた材質を用いることによって、耐摩耗性を向上させることができる。また、図示はしていないが、球面座を付けたリング状の部品15は玉軸受5Kに取り付けても良い。尚、この緩衝構造を適用する方法も、複数列玉軸受5I2の内輪を回転軸5Aに固定した場合、複数列玉軸受5I2の外輪をハウジング5Lに固定した場合のどちらの方法にも適用可能である。本実施例では前者を例に述べたが、後者においても回転軸、玉軸受の着座面を緩衝構造とするか、あるいは回転軸、玉軸受の着座面に緩衝構造を設置することで、同様の効果を得ることができる。また、この緩衝構造の適用は、前記の複数の玉軸受外輪を一体化し、玉軸受内輪自体を複数列配置する方法、複数の玉軸受内輪を一体化し、玉軸受外輪自体を複数列配置する方法、リテーナやリングスペーサを使用する方法等にも適用可能である。
【0040】
以上、本発明について詳しく述べたが、本発明は、他の種類の液化ガス用ポンプ装置の場合にも当然適用できる。また、液化ガスに限らず、低温液体等を取り扱うポンプにも有効な発明である。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、玉軸受を複数列配置することで、ポンプ起動・停止時に起こるスラスト荷重による軸受寿命低下を抑制し、信頼性向上を図ることができる。
【0042】
また、本発明によれば、軸受部部品数を低減することで、コストの低下、信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
これらによって、液化ガス用ポンプ装置の長期安定運転を図ることができる。
【0044】
また、本発明によれば、該ポンプ装置軸受部の玉軸受の配列数の増加や構造の簡素化を実施しても、ポンプ回転軸の振れ廻りによる歳差運動が起きた場合において、軸の傾きに、緩衝材や緩衝構造が追従し、これによって、複数列配置玉軸受の異常摩耗等を防止し、更に軸受長寿命に対する信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す液化ガス用ポンプ本体断面図。
【図2】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図3】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図4】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図5】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図6】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図7】液化ガス用ポンプに用いる中軸受部の拡大図であり、参考図。
【図8】本発明の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図9】本発明の他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図10】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図11】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図12】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図13】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図14】本発明の実施例を示す板ばねの図。
【図15】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図16】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図17】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図18】本発明のさらに他の実施例を示すポンプ中軸受部拡大図。
【図19】液化ガスタンク用潜没ポンプ装置全体図。
【図20】従来の液化ガスタンク用潜没ポンプ本体断面図。
【図21】ポンプ回転軸の歳差運動説明図。
【符号の説明】
1 液化ガスタンク
1A タンク天井板
2 揚液管
3 吸込弁
4 座面
5 液化ガス用ポンプ本体
5A 回転軸
5B インデューサ
5C 羽根車
5D サブマージドモータロータ
5E 上静圧軸受
5F 中静圧軸受
5G 下静圧軸受
5H 上補助玉軸受
5I1 中補助玉軸受(複列配置玉軸受)
5I2 中補助玉軸受(複数列配置玉軸受)
5J リングスペーサ
5K リテーナ
5L ハウジング
5M 軸スラスト平衡装置
6 ポンプ吐出口
7 ヘッドプレート
8 吊上ワイヤ
9 給電ケーブル
10 巻き上げ機
11 吐出管
12A 皿ばね
12B コイルばね
12C 板ばね
13 突起物あるいは凸部形状
14 L字型部
15 球面座部品
Claims (1)
- 立軸に配置したポンプ軸と、このポンプ軸を支承しポンプ軸の上部と下部と中間部とに配置した静圧軸受と、中間部静圧軸受の近傍に設けた軸スラスト平衡装置と、上部静圧軸受と中間部静圧軸受間に配置されポンプ軸を回転駆動する駆動部と、中間部静圧軸受の下方に設けられ吸い込んだ液化ガスを昇圧する羽根車と、これら各部材を収納する揚液管とを備え、液化ガスタンクに潜没される液化ガス用ポンプ装置において、前記中間部静圧軸受の近傍であって上方に玉軸受を配置し、この玉軸受は、ポンプの通常運転時には前記軸スラスト平衡装置の作用によりスラスト荷重がゼロとなり、ポンプ起動時には下向きのスラスト荷重を支承するものであって、しかも軸方向に3列あり、この玉軸受の内輪および外輪の少なくともいずれかにより3列の軸受が一体化されており、3列に形成された前記玉軸受のスラスト荷重支承部にポンプ軸の歳差運動を緩衝させ、歳差運動に起因する不安定荷重を低減する緩衝材を設けたことを特徴とする液化ガス用ポンプ装置。
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