JP4008207B2 - ロボット制御方法および制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットの動作制御に係る教示装置およびその制御方法等に適用されるロボット制御方法および制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来のロボット制御装置の1軸分の制御構成を示すブロック図である。図において、2慣性系16はロボット制御装置の制御対象で、モータ10とアーム15(以下、負荷という)を減速機で結合したものからなる。ここで、モータ10のJmは慣性を示し、Dmは粘性係数を示す。同様に、アーム15のJLは慣性、DLは粘性係数を示す。減速機は他の要素(モータ、アーム)に比べて弾性的であり、係数14はその弾性定数である。また係数11、12は減速機の減速比である。図中でωMはモータ速度、ωLは負荷速度、τLは負荷トルクを示す。制御部における、位置制御部21は位置指令とモータ位置θMとを入力として位置制御を行い、速度指令値を出力する部分である。速度制御部22は上記速度指令値とモータ速度とを入力として速度制御を行い、電流指令値を出力する。電流制御部23は上記電流指令値にもとづきモータ10に指令通りの電流を流すように制御を行う部分である。なお、係数24はモータ10のトルク定数である。13は積分要素、20は積分器、43〜45は減算部である。
【0003】
ロボットは複数軸からなるので、他軸からの干渉力、すなわち、他軸の慣性に対して速度を与えるための加速トルク、遠心力、コリオリカ、重力が働く。上記での負荷トルクτLはこの他軸からの干渉力を示し、これは減速機を通じてモータ10に外乱トルクとして作用する。外乱トルク算出部30はこれを補償するためのもので、モータ電流とモータ速度とからモータ10の外乱トルクを推定算出して、それを補償量として電流指令値の形で出力する部分である。外乱トルク算出部3dからの補償量は加算部42で速度制御部22からの出力に加算されて電流制御部23の入力となる。
【0004】
このような構成によって、他軸からの干渉力を排して各軸独立した制御が行える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ロボットのマニピュレータ先端の軌跡を精度よく制御するためには、各軸の位置指令に対する応答性を同じにする必要がある。他軸からの干渉力が十分に補償されていれば、位置制御部21、速度制御部22、電流制御部23の応答性を全軸同じになるように設計することによって、これが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、位置指令に対する結果であるところのモータ速度から外乱トルクを算出しているので、真の外乱トルク値が得られるまでの算出遅れが生じる。また、他軸の動き方、位置によってその干渉力は様々に変化するので、外乱トルクの算出遅れの程度は一定していない。したがって、各軸の位置指令に対する応答性を同じにすることはできない。また、この外乱トルク算出の軸間でのばらつきは、2慣性系16に対する振動抑制のための制御系を設計する際にもその設計見通しを立てにくくする。これらのことから、ロボットのマニピュレータ先端の軌跡精度を高めるのが困難である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、他軸の動きによらず、各軸の応答性を同じにして、マニピュレータ先端の軌跡誤差を少なくし、また、制御パラメータを他軸の動きに関係なく独立に設計できるようにして、制御系の設計を容易にすることができるロボット制御方法および制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のロボット制御方法は、ロボットのマニピュレータを駆動するモータの動作を指示する指令値を入力し、指令値に基づいて位置を制御する信号を出力する第1ステップと、第1ステップで出力された信号に基づいてモータの回転速度を制御する信号を出力する第2ステップと、第2ステップで出力された信号に基づいてモータを駆動する電流を制御する第3ステップと、第3ステップで出力された電流に基づいてモータを駆動する第4ステップと、第4ステップで駆動されたモータの速度を検出し、その検出値を位置信号に変換して第1ステップにフィードバック入力し、前記検出値を前記第2ステップにフィードバック入力し、モータを駆動する電流を検出し第3ステップに入力するフィードバックステップと、前記指令値を入力し、前記マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、設定値に対するマニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルクを算出する補償ステップとを含み、前記補償ステップで算出される補償トルクに応じた出力信号を前記第3ステップに入力するロボット制御方法であって、前記補償ステップは、指令値を入力して位置指令値と、前記第1ステップと前記第2ステップと前記第3ステップと前記第4ステップと前記モータと前記フィードバックステップからなるフィードバック制御ループと前記モータで駆動される減速機と前記減速機に接続される負荷からなる1軸分の関節軸とで構成するシステムにおける前記位置指令値から負荷速度までの伝達関数を基に前記負荷の位置、速度および加速度を算出し、前記負荷の位置、速度および加速度を入力して他軸からの干渉力を算出し、前記干渉力をこれに見合った電流指令値に変換し前記電流制御部に入力することを特徴とするものである。
【0009】
請求項1記載のロボット制御方法によれば、マニピュレータの動きによらず、各関節軸の応答性を同じにして、マニピュレータ先端の軌跡誤差を少なくし、また、制御パラメタをマニピュレータの動きに関係なく設定できるようにして、制御系の設計を容易にすることができる。
【0010】
請求項2記載のロボット制御装置は、ロボットのマニピュレータを駆動するモータと、モータの動作を指示する指令値を入力する位置制御部と、前記位置制御部からの信号を入力し、前記モータの速度を制御する速度制御部と、前記速度制御部からの信号を入力し、前記モータへ供給する電流を制御する電流制御部と、前記モータの速度と位置と前記モータへ供給する電流を検出し、前記モータ速度を前記速度制御部に、前記モータ位置を前記位置制御部に、前記モータへ供給する電流を前記電流制御部にフィードバックするフィードバック部と、前記指令値を入力し、前記マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、前記設定値に対する前記マニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルク算出部とを備え、前記補償トルク算出部の出力信号を前記電流制御部に入力するロボット制御装置であって、前記補償トルク算出部は、指令値を入力して位置指令値と、前記位置制御部と前記速度制御部と前記電流制御部と前記モータと前記フィードバック部からなるフィードバック制御ループと前記モータで駆動される減速機と前記減速機に接続する負荷からなる1軸分の関節軸とで構成するシステムにおける前記位置指令値から負荷速度までの伝達関数を基に負荷の位置、速度および加速度を算出する負荷状態量算出部と、前記負荷の位置、速度および加速度を入力して他軸からの干渉力を算出する逆動力学計算部と、前記干渉力をこれに見合った電流指令値に変換し前記電流制御部に入力する変換部を有するものである。
【0011】
請求項2記載のロボット制御装置によれば、請求項1と同様な効果がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の一実施の形態を説明する。図1は、本発明の構成を示すブロック図である。従来技術の構成で説明したのと同じ要素については、同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0015】
従来技術の構成と異なるのは、指令値を入力し、マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、設定値に対するマニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルク算出部1を付加した点である。
【0016】
補償トルク算出部1は、負荷状態量算出部2、逆動力学計算部3、変換部4からなる。
【0017】
負荷状態量算出部2は、位置指令を入力として、位置指令から負荷速度ωLまでの伝達関数をもとに、負荷の位置、速度、加速度を算出する部分である。逆動力学計算部3は、負荷状態量算出部2からの、負荷の位置、速度、加速度を入力として、他軸からの干渉力τLを算出する部分である。変換部4は、負荷状態量算出部2が算出した他軸からの干渉力τLを、これに見合った電流指令値に変換する部分である。変換部4からの電流指令値は加算部5で速度制御部22からの電流指令値に加算されて、電流制御部23の入力となる。
【0018】
以下、逆動力学計算部3について説明する。
【0019】
ロボットマニピュレータの動力学方程式は、〔数1〕の式(1)のように表記される。式(1)の右辺第1項は角加速度によるトルクを表し、右辺第2項目は動摩擦によるトルクを表している。また、右辺第3項は、重力項・コリオリ項をまとめた項目である。これらの慣性モーメント及び重力・コリオリ項は、関節角度と関節角速度によって代数式で一意に決定できる。動摩擦に関しては、一定値であると見ることが出来る。
【0020】
【数1】
Figure 0004008207
【0021】
これらの行列の計算を行って、動力学トルクを計算する。
【0022】
ここで、各軸の制御系を考えると、ノミナルの慣性モーメントに対して自軸の角加速度の影響だけを考えて制御系を設計できるようにするため、他の軸の影響はすべて負荷トルク入力と見るようにする。
【0023】
そのために、第1軸目(RT軸)で代表して示せば、負荷側の駆動トルクは〔数2〕の式(3)、(4)のように書くことが出来る。
【0024】
【数2】
Figure 0004008207
【0025】
式(3)の右辺第3項、すなわち式(4)が第1軸目に入力される負荷トルクになる。この計算を各軸ごとに行って、各軸に入力される動力学トルクを、自軸の回転に必要なトルクとそれ以外の負荷トルクに分解する事が出来る。その結果、負荷トルクに相当する部分をまとめると、〔数3〕の式(5)、(6)のようになる。
【0026】
【数3】
Figure 0004008207
【0027】
Hの対角項(慣性モーメント)から、各軸のノミナルの慣性モーメント値(当該軸の負荷の慣性モーメント値)を差し引いて、動力学によって変化した慣性モーメント(他軸の慣性モーメント)の成分も補償トルクとしてフィードバックする。これによって、ノミナル慣性分の負荷トルクを除外した負荷トルクを計算できるようにする。
【0028】
なお、上記の式(5)で示した動力学計算には、負荷側の位置・速度・加速度が必要となるが、これは先に述べたように、負荷状態量算出部2で、関節位置の位置指令と位置指令から負荷速度までの伝達関数を用いて算出する。
【0029】
上記式(5)にもとづいて逆動力学計算部3で算出された動力学トルクは、電流指令値の形で電流補償入力として与えて、負荷トルクを補償する。もちろん、電流でなくとも直接的にトルクとして与えることができるのであれば、それでも構わない。
【0030】
電流指令値として補償する場合は、以下のようになる。
【0031】
負荷トルクに対する〔数4〕の負荷速度の応答(式(7))と電流指令に対する負荷速度の応答(式(8))を求める。
【0032】
【数4】
Figure 0004008207
【0033】
ここで、ωLt、ωLiは負荷速度であり、τLは負荷トルク、Icmpは電流指令値である。
【0034】
式(7)、(8)について〔数5〕の式(9)のようにおくと、式(11)が導かれる。
【0035】
【数5】
Figure 0004008207
【0036】
式(11)の右辺が負荷トルクを電流指令に変換する伝達関数である。なお、表1に上記式中の記号の意味を示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004008207
【0038】
つぎに、この発明のロボット制御方法は、上記ロボット制御装置を用いて、第1ステップは、ロボットのマニピュレータ(15)を駆動するモータ10の動作を指示する指令値を入力し、指令値に基づいて位置を制御する信号を出力する。第2ステップは、第1ステップで出力された信号に基づいてモータの回転速度を制御する信号を出力する。第3ステップは、第2ステップで出力された信号に基づいてモータ10を駆動する電流を制御する。第4ステップは、第3ステップで出力された電流に基づいてモータ10を駆動する。フィードバックステップは、第4ステップで駆動されたモータ10の速度を検出し、その検出値を位置信号に変換して第1ステップにフィードバック入力し、上記検出値を第2ステップおよび第3ステップにフィードバック入力する。補償ステップは、指令値を入力し、マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、設定値に対するマニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルクを算出し、補償ステップで算出される補償トルクに応じた出力信号を第3ステップに入力するものである。
【0039】
【発明の効果】
請求項1記載のロボット制御方法によれば、マニピュレータの動きによらず、各関節軸の応答性を同じにして、マニピュレータ先端の軌跡誤差を少なくし、また、制御パラメタをマニピュレータの動きに関係なく設定できるようにして、制御系の設計を容易にすることができる。
【0040】
請求項2および請求項3記載のロボット制御装置によれば、請求項1と同様な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるロボット制御装置のブロック図である。
【図2】従来のロボット制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
1 補償トルク算出部
2 負荷状態量算出部
3 逆動力学計算部
4 変換部
5 加算部
10 モータ
11、12 係数(減速比)
13 積分要素
14 係数(弾性係数)
15 負荷(アーム)
16 2慣性系
20 積分器
21 位置制御部
22 速度制御部
23 電流制御部
24 係数(トルク定数)
30 外乱トルク算出部
42 加算部
43〜45 減算部

Claims (2)

  1. ロボットのマニピュレータを駆動するモータの動作を指示する指令値を入力し、指令値に基づいて位置を制御する信号を出力する第1ステップと、第1ステップで出力された信号に基づいてモータの回転速度を制御する信号を出力する第2ステップと、第2ステップで出力された信号に基づいてモータを駆動する電流を制御する第3ステップと、第3ステップで出力された電流に基づいてモータを駆動する第4ステップと、第4ステップで駆動されたモータの速度を検出し、その検出値を位置信号に変換して第1ステップにフィードバック入力し、前記検出値を前記第2ステップにフィードバック入力し、モータを駆動する電流を検出し第3ステップに入力するフィードバックステップと、前記指令値を入力し、前記マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、設定値に対するマニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルクを算出する補償ステップとを含み、前記補償ステップで算出される補償トルクに応じた出力信号を前記第3ステップに入力するロボット制御方法であって、前記補償ステップは、指令値を入力して位置指令値と、前記第1ステップと前記第2ステップと前記第3ステップと前記第4ステップと前記モータと前記フィードバックステップからなるフィードバック制御ループと前記モータで駆動される減速機と前記減速機に接続される負荷からなる1軸分の関節軸とで構成するシステムにおける前記位置指令値から負荷速度までの伝達関数を基に前記負荷の位置、速度および加速度を算出し、前記負荷の位置、速度および加速度を入力して他軸からの干渉力を算出し、前記干渉力をこれに見合った電流指令値に変換し前記電流制御部に入力することを特徴とするロボット制御方法。
  2. ロボットのマニピュレータを駆動するモータと、モータの動作を指示する指令値を入力する位置制御部と、前記位置制御部からの信号を入力し、前記モータの速度を制御する速度制御部と、前記速度制御部からの信号を入力し、前記モータへ供給する電流を制御する電流制御部と、前記モータの速度と位置と前記モータへ供給する電流を検出し、前記モータ速度を前記速度制御部に、前記モータ位置を前記位置制御部に、前記モータへ供給する電流を前記電流制御部にフィードバックするフィードバック部と、前記指令値を入力し、前記マニピュレータの駆動に必要なトルクを設定値として、前記設定値に対する前記マニピュレータの姿勢変化に伴い、自軸のノミナルな慣性モーメントのトルクを除いた、動力学のトルク成分をトルク変動値とし、これを補償する補償トルク算出部とを備え、前記補償トルク算出部の出力信号を前記電流制御部に入力するロボット制御装置であって、前記補償トルク算出部は、指令値を入力して位置指令値と、前記位置制御部と前記速度制御部と前記電流制御部と前記モータと前記フィードバック部からなるフィードバック制御ループと前記モータで駆動される減速機と前記減速機に接続する負荷からなる1軸分の関節軸とで構成するシステムにおける前記位置指令値から負荷速度までの伝達関数を基に負荷の位置、速度および加速度を算出する負荷状態量算出部と、前記負荷の位置、速度および加速度を入力して他軸からの干渉力を算出する逆動力学計算部と、前記干渉力をこれに見合った電流指令値に変換し前記電流制御部に入力する変換部を有するロボット制御装置。
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