JP4008111B2 - 共押出複合プラスチックフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、共押出複合プラスチックフィルムに関し、より詳しくは自己粘着性および防曇性を有し包装用素材として適性のある共押出複合プラスチックフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系の共押出複合プラスチックフィルムは、ポリプロピレン単層フィルムにおける低温での強度(低温衝撃性)を改善し、またポリエチレン単層フィルムのカール性、凹凸変形性、低光沢性を改善する積層構成をとりえることから、食品などの包装用フィルムとして優れた特性を有している。
【0003】
例えば、特許掲載公報第2680079号に記載されたものは、直鎖状低密度ポリエチレンと結晶性プロピレン系ランダム共重合体との混合層を中心層として、その一方の面に結晶性プロピレン系重合体または共重合体を積層し、他方の面に結晶性ランダム共重合体を積層したものであり、優れた低温衝撃性、耐引裂強度、溶断シール性などの所要特性を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の共押出複合プラスチックフィルムは、所要の防曇性を獲得するために、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性作用のある防曇剤を配合したものであり、これを有効に作用させるために、フィルムを30〜40℃で湿度80〜85%程度の雰囲気内で24時間以上の養生(熟成)処理が必要であるという、煩雑な処理工程の必要なものであった。
【0005】
また、自動包装装置で確実に包装できる包装適性の要求は、包装装置の精密化と動作速度の高速化の要求に伴ってより厳しい条件が求められている。すなわち、適当な自己粘着性を有するという条件がより一層高まってきている。
【0006】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、共押出複合プラスチックフィルムにおける所要の防曇性が迅速な処理で得られるようにし、更に自動包装機にかけたときの包装適性が優れたものである自己粘着性の共押出複合プラスチックフィルムを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、共押出法によって、(B)層の両面に(A)、(C)層を積層した複合プラスチックフィルムにおいて、
(B)層は直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる一種または二種以上の合成樹脂組成物からなる層であり、
(A)、(C)層は結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に非晶性スチレンーブタジエン共重合体を5〜50重量%配合した合成樹脂組成物からなる層であり、
(A)層もしくは(C)層、または(A)(C)層の両層の表面を、濡れ指数が310〜450μN/cmになるように表面処理した共押出複合プラスチックフィルムとしたのである。
【0008】
また、上記構成の共押出複合プラスチックフィルムにおいて、(A)層および(C)層に用いる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が、プロピレンを繰り返し単位とするホモポリマー成分及びエチレン−プロピレンを繰り返し単位とするコポリマー成分からなり、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体中の前記コポリマー成分量が5〜55重量%である共押出複合プラスチックフィルムとしたのである。
【0009】
上記したように構成されるこの発明の共押出複合プラスチックフィルムは、中心層のB層の組成により包装に所要の伸びのある物性がある。そして、プラスチックフィルム表面のA、C層を結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に非晶性スチレンーブタジエン共重合体を5〜50重量%配合した合成樹脂組成物としたことにより、周知の濡れ性改善のための表面処理を施すことにより、すなわち養生させる必要もなく、好ましくはコロナ放電処理を施すことにより、優れた防曇性を処理後直ちに発揮するものになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明に用いるB層を構成する合成樹脂組成物は、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる一種または二種以上の樹脂である。
【0011】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレン97〜80重量%、炭素数4以上のα−オレフィン3〜20重量%からなる重合体であり、密度0.910〜0.940g/cm3 であって、周知の低密度ポリエチレン(LDPE)と同様の密度であるが、長鎖の分岐がなく、短い側鎖がみられる程度の直鎖状の構造である点や溶融特性、結晶化特性、その他の固体物性はLDPEとは全く異なるものである。
【0012】
そして、この発明では(B)層に用いる直鎖状低密度ポリエチレンが、密度0.910〜0.940g/cm3 、メルトインデックス(MI/190℃)1〜10g/10分のものであり、低密度ポリエチレンが、密度0.910〜0.940g/cm3 、メルトインデックス1〜10g/10分のものであり、エチレン−酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル含有量10〜20重量%、メルトインデックス1〜10g/10分のものであることが好ましい。
【0013】
(A)層および(C)層に用いる非晶性スチレン−ブタジエン共重合体は、比重0.88〜0.90、スチレン含有率5〜35重量%、メルトフローレイト(MFR/230℃)1〜10g/10分の非晶性スチレンーブタジエン共重合体のものを採用することが好ましい。
【0014】
また、(A)層および(C)層に用いる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体は、エチレン−プロピレンを繰り返し単位とするコポリマー成分量が5〜55重量%である共押出複合プラスチックフィルムとする。
【0015】
なぜなら、コポリマー成分量が上記所定範囲未満の少量では、粘着力が弱くなって好ましくなく、上記所定範囲を越える多量では、包装適性が悪くなって好ましくないからである。
【0016】
また、(A)、(B)、(C)層のいずれか1層または2層以上の各層を構成する組成物が、前記各層の組成物94〜99重量%に対して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはポリグリセリン脂肪酸エステルまたは両者併用した防曇剤を1〜3重量%配合した組成物であってもよい。
【0017】
前記防曇剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの周知の界面活性剤等を採用することができる。
【0018】
この発明に適用される表面処理は、従来の印刷性およびラミネート適性を改善するための濡れ性改善のための処理を利用することができ、所要の濡れ指数は、JIS K 6768にしたがって測定され、フィルムを濡らすと判定される混合液の表面張力(μN/cm)または(dyn/cm)であらわされる数値である。因みに、1dyn=10μNである。
【0019】
具体的な表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理のいずれであってもよいが、最も簡便で好ましい処理としてはコロナ放電処理である。このようなコロナ放電処理は、絶縁ドラムを一方の電極とし、フィルムを沿わせたドラム面に対向配置された他の電極と前記電極との間で放電を行なわせる周知の印刷性、接着性改善のための放電処理を採用できる。
【0020】
このような共押出複合プラスチックフィルムは、その製造方法を限定したものではないが、一般的にはTダイ・チルロール冷却法で製造することができる。
【0021】
以上述べた材料からなる複合プラスチックフィルムの厚みは、8〜30μmであり、かつ(B)層の厚みが複合プラスチックフィルムの厚みの10〜80%であることが、自動包装機の包装適性にとって好ましい。
【0022】
【実施例】
表1に示した原料の組み合わせで、巾1000mmのTダイを装着した多層共押出機(口径65mmφ1台と口径40mmφ2台)を用い200℃で溶融押出し、エアチャンバーおよび表面温度40℃のチルロールで冷却し、通常工業的に採用されているコロナ放電処理装置を用い、表−1に示したフィルムの濡れ張力をうる厚み20μのプラスチックフィルムを得て、幅350mm、長さ500mで紙管にロール状に巻き取りサンプルとし、雰囲気温度35℃で相対湿度60%に24時間放置後評価した。
【0023】
(1)粘着力
試験片の縦(押出方向)について行った。すなわち、数枚重ねのサンプルを、カッターと定規を用い、幅120mm長さ250mmに切り取り、切り取ったサンプルを2枚重ねで剥離させ、その切り取った2枚重ねのサンプルを一度1枚づつに剥離後再度重ね合わせ幅100mm長さ120mmに切り取り、一部を剥離してプラスチック板にテープで貼り付け、支持棒を用い剥離角度を180°に保ち剥離させた。
測定条件は、引張速度200mm/分とし、評価は1g/100mm以上を○印、1g/100mm以下を×印として表中に示した。
【0024】
(2)防曇性
ガラスコップの中に熱湯を注ぎ、積層フィルムのコロナ処理面を内側にしてガラスコップ上部に被覆し、1分後のフィルム表面に付着した水滴による曇りの状況を目視観察した。評価は、水滴が付着せず曇りが発生しないものを○印とし、細かな水滴が付着して中がほとんど見えないものを×印として表中に示した。
【0025】
(3)包装適性
縦190mm、横120mm、深さ30mmのポリプロピレン製トレイにポリプロピレン原料を約300g入れ、フジキカイ製オートマチック18XYにて実包し、包装時のフィルムの状態及びできばえを目視確認した。評価は、フィルムのカット性、包装後のはり具合と弾力性及び外観が良好であるものを○印とし、上記のいずれかが不具合であるものを×として表中に示した。
【0026】
(4)濡れ指数
JIS K6768に準拠して測定した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1の結果からも明らかなように、実施例1〜9では粘着力、防曇性及び包装適性に優れていた。
【0029】
比較例3では非晶性スチレンーブタジエン共重合体の添加量が少ないために、又比較例1では非晶性スチレンーブタジエン共重合体のスチレンの含有率が少ないために粘着性が劣った。
【0030】
比較例4では非晶性スチレンーブタジエン共重合体の添加量が多いために、又比較例2では非晶性スチレンーブタジエン共重合体のスチレンの含有率が多いために粘着性が強くなりすぎ、包装後の外観にシワが入った。
【0031】
比較例5ではフィルム濡れ張力が小さいために防曇性が劣り、又比較例6ではフィルム濡れ張力が大きいために粘着性が強く、包装後の外観にシワが入った。
【0032】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、中心層の両面に、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に非晶性スチレンーブタジエン共重合体を5〜50重量%配合した合成樹脂組成物からなる層で積層し、両層の表面を、所定の濡れ指数になるように表面処理した共押出複合プラスチックフィルムとしたので、所要の防曇性が迅速な処理で得られ、更に自動包装機にかけたときの包装適性が優れた自己粘着性の共押出複合プラスチックフィルムとなる利点がある。
Claims (7)
- 共押出法によって、(B)層の両面に(A)、(C)層を積層した複合プラスチックフィルムにおいて、
(B)層は直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる一種または二種以上の合成樹脂組成物からなる層であり、
(A)、(C)層は結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体に、スチレン含有率5〜35重量%の非晶性スチレンーブタジエン共重合体を添加し、その添加量が組成中に5〜50重量%である合成樹脂組成物からなる層であり、
(A)層もしくは(C)層、または(A)(C)層の両層の表面を、濡れ指数が310〜450μN/cmになるように表面処理したことを特徴とする共押出複合プラスチックフィルム。 - (A)層および(C)層に用いる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が、プロピレンを繰り返し単位とするホモポリマー成分及びエチレン−プロピレンを繰り返し単位とするコポリマー成分からなり、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体中の前記コポリマー成分量が5〜55重量%である請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルム。
- (A)層および(C)層に用いる非晶性スチレン−ブタジエン共重合体が、比重0.88〜0.90、メルトフローレイト(MFR/230℃)1〜10g/10分の非晶性スチレンーブタジエン共重合体である請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルム。
- (B)層に用いる直鎖状低密度ポリエチレンが、密度0.910〜0.940g/cm3、メルトインデックス(MI/190℃)1〜10g/10分のものであり、低密度ポリエチレンが、密度0.910〜0.940g/cm3 、メルトインデックス1〜10g/10分のものであり、エチレン−酢酸ビニル共重合体が、酢酸ビニル含有量10〜20重量%、メルトインデックス1〜10g/10分のものである請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルム。
- 請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルムにおいて、(A)、(B)、(C)層のいずれか1層または2層以上の各層を構成する組成物が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはポリグリセリン脂肪酸エステルまたは両者併用した防曇剤を1〜3重量%配合した組成物であることを特徴とする共押出複合プラスチックフィルム。
- 複合プラスチックフィルムの厚みが8〜30μmであり、かつ(B)層の厚みが複合プラスチックフィルムの厚みの10〜80%である請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルム。
- 共押出複合プラスチックフィルムが、Tダイ・チルロール冷却法で製造したものである請求項1記載の共押出複合プラスチックフィルム。
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