JP4007751B2 - 洗浄方法及び洗浄装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械・工具部品等の切削・研磨後の切削油・防錆油等の有機油脂類の除去並びに切子・研磨粉等の無機類の除去を同時に行う洗浄方法及び洗浄装置に係り、より具体的には、水系洗浄後に炭化水素洗浄剤で真空(減圧)にて洗浄乾燥する方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械・工具部品等の切削・研磨後の切削油・防錆油等の有機油脂類の除去と切子・研磨粉等の無機類の除去は、フロンや、トリクロロエタン、塩化メチレン・代替フロン等の溶剤を用いて行ってきたが、これらは、環境破壊物質及び発ガン性物質を含む為、その使用が禁止されつつある。この為、水系洗浄剤で洗浄し、イオン交換等を使用し純水にて水洗し、その後120℃〜180℃の熱風によりワーク(被洗浄物)を乾燥する方法があった。
【0003】
また、フロン等の代替となる溶剤として灯油等の炭化水素系溶剤(HC溶剤)を使用した洗浄方法が提案されている。この場合、まず、炭化水素系溶剤を貯留する洗浄槽の開閉蓋を開けてワークを浸漬し、次に、開閉蓋を閉じた後、洗浄槽の内部を減圧して真空状態にし、超音波振動発生装置を用いて超音波振動をワークに付与し、ワークに付着するマシーン油等の不純油を炭化水素系溶剤に溶出して真空洗浄を行なう。次に洗浄槽の開閉蓋を開けてワークを取り出し、熱風乾燥によってワークを乾燥させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなワークの洗浄・乾燥は、以下の問題を有する。
(1)熱風乾燥なので、ワークを完全に乾燥するためには、水の場合は100℃以上に又、炭化水素系溶剤のときはその蒸発温度である160℃以上に加熱する必要があり、いずれにしても乾燥のために莫大なエネルギーが必要となる。また、そのエネルギーは回収することができず、さらに、大気中に排出された場合は、公害や地球温暖化をもたらすことになる。
【0005】
(2)ワークが高炭素鋼であったり、特殊合金鋼の場合、120℃〜160℃にワークを加熱、乾燥すると、酸化し、変色し、ワークの品質向上を図る事ができない。
(3)乾燥工程でシミ発生があり、被洗浄物の深穴(切削ドリルの潤滑油通過穴)や、狭い隙間の脱脂洗浄が不可能であるし、また、板状の被洗浄物を重ねたまま洗浄することも不可能であった。
(4)さらに、洗浄後の水洗に供給する純水を造る為、純水機が必要であり、設備コスト、設備場所、ランニングコストがかかっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、従来、大気圧状態の水系洗浄では、油脂等の有機物洗浄が完全洗浄できなかったが、真空仕上げ洗浄を追加実施する事で、完全な洗浄ができる方法と装置を提供するものであり、より具体的には、ワークから無機、有機の汚れを短時間で確実に除去できるとともに乾燥でき、安全性も確保できる水系洗浄後に炭化水素洗浄剤で真空にて洗浄乾燥する方法と装置を提供する事を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の目的を達成するために、次の技術的手段を講じている。
すなわち、水系洗浄液により被洗浄物を脱脂処理する第1処理工程と、この第1処理工程を終了した被洗浄物を水によりリンス処理する第2処理工程と、この第2処理工程を終了した前記被洗浄物を炭化水素液に浸漬することによって前記被洗浄物に付着の水を切って当該炭化水素液に置換すると共に前記被洗浄物を洗浄する第3処理工程と、この第3処理工程を終了した被洗浄物に対して炭化水素系蒸気により蒸気洗浄した後当該被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する第4処理工程とを経由しており、前記第3処理工程の炭化水素液は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤を使用し、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素洗浄剤は共通のタンクを経由して再生利用していることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成を採用したことにより、オゾン層を破壊する蒸気(気体)が発生しない地球環境に優しい洗浄方法が提供できる。
また、炭化水素(洗浄液)は、(ガソリン、灯油等の基本燃料が、社会的に規制されない限り)今後とも使用規制がかかることはないことから、市場汎用性の高い、安価な洗浄媒体を使用することができる。
更に、炭化水素液のkg当り単価は、代替フロンに比べて安価であるため、初期充填コストを低減できる。
【0009】
本発明においては、前記第3処理工程および第4処理工程を、密閉可能な洗浄・乾燥槽に被洗浄物を装入して減圧雰囲気下で行うことが推奨される(請求項2)。
このような構成を採用したことにより、炭化水素液の消費量は、代替フロン等の溶剤を使用する場合に比べて、1%以下に抑えることができる。kg当り単価は、代替フロンに比べ、炭化水素が安いため、年間でのランニングコストの低減が計れる。
【0010】
また、第3処理の工程で、真空排気(減圧)することにより被洗浄物の深穴(切削ドリルの潤滑油通過穴)や、狭い隙間の脱脂洗浄も可能となり、したがって、板状の被洗浄物を重ねたまま洗浄することも可能である。
更に、本発明においては、前記第3処理工程を大気圧下で行い、前記第4処理工程を、密閉可能な洗浄・乾燥槽に被処理物を装入して真空雰囲気下で行うことも可能である(請求項3)。
また、前記第1処理工程における水系洗浄液中に、アルカリ性、中性、酸性等の洗剤を混入していることが推奨され、更に、前記第1処理工程における水系洗浄液が80℃以下に加熱されていることが推奨される(請求項4)。
【0011】
これによって、脱脂、洗浄効果が促進できるのである。
また、本発明においては、前記第1処理工程および/又は第2処理工程は被洗浄物を槽に装入して行うとともに、この槽内における被洗浄物に対して超音波振動又は振動のいずれか一方又は双方を付与することが推奨される(請求項5)。
前述の第1処理および/又は第2処理は、水系洗浄液を被洗浄物に対してジェットノズル等を介して介して噴出させることで脱脂処理したり、又は水を噴出させることによってリンス(すすぎ)処理することも可能であるが、前述したように、第1処理工程および/又は第2処理工程は被洗浄物を槽に装入して行うとともに、この槽内における被洗浄物に対して超音波振動又は振動のいずれか一方又は双方を付与することによって、脱脂、洗浄効果が向上できるし、リンス効果(溶剤の除去)を向上させ、被処理物表面の清浄度を向上できるのである。
【0012】
更に、本発明において、前記第1処理工程は水系洗浄液を貯留している複数の洗浄槽のそれぞれに被洗浄物を装入して当該液中に浸漬して行うことが、脱脂、洗浄効果を促進できることから推奨されるし、また、前記第2処理工程は水が多段向流方式で流下する複数の水リンス槽のそれぞれに被洗浄物を装入して当該水に浸漬して行うことが、リンス効果を向上させ、被処理物表面の清浄度を向上させ得ることから推奨される(請求項6)。
また、本発明においては、前述した請求項1〜3における第3処理工程又は第4処理工程に使用する炭化水素は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤を使用することが推奨される。
【0013】
すなわち、第3処理工程によって例えば水溶性切削油を除去できるが、一方、アルカリ性、中性の洗浄剤では、油性油は除去できるが水溶性の切削油等が除去できないことから、両親水性の炭化水素洗浄剤を使用することによって油性油、水溶性油のいずれの汚れも除去洗浄することができるのであり、この場合、炭化水素洗浄剤としては、イソプレン系グリコールエーテル又は界面活性剤・アルコール入りの炭化水素洗浄剤であることが望ましい(請求項7)。
更に、本発明においては、前述した請求項1〜7に係る洗浄方法を、実施(実行)する洗浄装置として、以下の技術的手段を講じている。
【0014】
すなわち、請求項8に係る洗浄装置は、水系洗浄液により被洗浄物を脱脂処理する第1処理部と、水により被処理物をリンス処理する第2処理部と、前記被処理物を炭化水素液に浸漬することによって前記被処理物に付着の水を切り当該炭化水素液に置換すると共に当該炭化水素液で前記被処理物を洗浄する第3処理部と、炭化水素洗浄系蒸気により蒸気洗浄した後、被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する第4処理部と、を備えてなり、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素液は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤であり、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素洗浄剤は共通のタンクを経由して再生利用していることを特徴とするものであり、ここにおいて、第1・処理部は、水系洗浄液又は水をジェットノズル等で噴出するものであっても構わないが、前記第1〜4処理部はいずれも槽によって構成することが推奨される。
【0015】
更に、本発明の洗浄装置は、前記第3処理部および第4処理部は密閉可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、この槽内を真空雰囲気下にする真空排気(減圧)手段が備えられていることが推奨されるし(請求項9)、また、前記第3処理部は大気開放可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、第4処理部は密閉可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、この槽内を真空雰囲気下にする真空排気手段が備えられていることが推奨される(請求項10)。
更に、前記第1処理部を構成する第1処理槽には、これに収容している水系洗浄液を加熱するヒーター手段が備えられていることが推奨され(請求項11)、また、前記第2処理部を構成する第2処理槽は複数の槽を並設してなり、各槽には水が多段向流方式で流下するように構成されることが望ましく(請求項12)、更に、前記第1処理部および第2処理部を構成する第1・2処理槽にはこれら槽内における被洗浄物に対して超音波振動又は振動のいずれか一方又は双方を付与する超音波振動付与手段および/又は振動付与手段が備えられていることが推奨される(請求項13)。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
全体構成を概略立面図で示す図1および概略平面図で示す図2において、本発明に係る洗浄装置1は、入側コンベア手段2と出側コンベア手段3との間に、水系洗浄液により被洗浄物(ワークともいう)を脱脂処理する第1処理部4と、この第1処理部4に隣接して配置されていて水により被洗浄物をリンス処理する第2処理部5と、この第2処理部5に隣接して配置されていて被処理物に付着の水を切り炭化水素液に置換する第3処理部6と、この第3処理部6に隣接されていて炭化水素系蒸気により蒸気洗浄した後、被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する第4処理部7とをその順序で直列状として同一平面(水平面)上に配置することで主構成されている。
【0017】
第1処理部4は、上部開口の洗浄槽4A,4Bの2槽を並列して構成されており、この槽内には、水系洗浄液4Cが収納されており、この液中に被洗浄物を浸漬することにより、該被洗浄物に付着の汚れを脱脂可能とされている。
勿論、この第1処理部4は、洗浄槽を1槽とすることができるし、2槽以上(3槽、4槽等)の多槽構成とすることにより、脱脂・洗浄効果を向上させることができる。
また、この第1処理部4においては、槽構成とすることなく、水系洗浄液を例えばジェットノズル、シャワー、スプレー等々によって被洗浄物の全面(全体)に亘って噴出することによって脱脂・洗浄するものであっても構わない。この噴出(吐出、噴射)によれば、新鮮(新規)な液で脱脂・洗浄できるし、潤滑油通過穴や狭いすきまの脱脂洗浄が液の噴出圧によって可能となる。
【0018】
ただし、図示のように槽構成としてこれに浸漬することによって、液の使用量の節減、回収等が有利となるし、液の飛散が防止できる。
前記水系洗浄液としては、この液(水)に、アルカリ性、中性、酸性等の洗剤を混入した混合液とすることによって、脱脂・洗浄効果を促進できて有利となる。ただし、その洗浄の種類、混入割合等は被洗浄物の種類、形状、大きさ等々によって決定(選択)される。
第1処理部4を槽構成としたときには、水系洗浄液を20℃〜80℃程度(80℃以下)に加熱するヒーター手段4Dを付帯させることができ(付帯させないときもある)、このヒーター手段4Dを付帯(備えて)させて液を80℃以下に加熱することにより、脱脂・洗浄効果を促進できる。
【0019】
勿論、ジェットノズル等で噴出(吐出)させるときは、その送液経路にヒーターを具備させて加熱することも可能である。
更に、第1処理部4を槽構成としたときには、例えば槽4A,4Bの底部に、超音波付与手段4Fを付帯させて、該槽内の被洗浄物に対して超音波を作用させ、脱脂・洗浄効果を促進できて有利となる。
また、第1処理部4においては被洗浄物に対して揺動させる揺動手段4Gを付帯させることによって脱脂・洗浄効果を向上させることもできる。
【0020】
この超音波付与手段、揺動手段はいずれか一方、又は双方を付帯させることができ、勿論、付帯させないときもある。
第2処理部5は、前記第1処理部4によって水系洗浄液により脱脂・洗浄された被洗浄物を、水によりリンス(すすぎ)処理するものであり、図示例では上部開口のリンス槽5A,5Bの2槽を並列して構成されており、この各槽5A,5B内には、水を多段向流方式によって流下させ、この流下(流動)する水に被洗浄物を浸漬することによってリンス(すすぎ)処理するようにされている。
【0021】
ここで多段向流方式とは、被洗浄物の処理方向(搬送方向)に対して水を逆方向(向流)に流下(流動)させることをいい、図では第2リンス槽5Bに給水し、この第2リンス槽5Bの水を第1リンス槽5Aに供給してこの第1リンス槽5Aから排水するものを示しており、この向流手段としては図6(1)で示すようにオーバーフロー方式、図6(2)で示す落差方式等を採用でき、落差方式でオーバーフロー方式よりも少しでも鮮度の高い水(新鮮水)でリンス処理できて有利となる。
【0022】
この第2処理部5におけるリンス手段として、水をジェットノズル、シャワー、スプレー等々によって被洗浄物の全面(全体)に亘って噴出(吐出)することによてってリンス処理するものであっても構わない。この噴出(吐出)によれば、新鮮(新規)な水で被洗浄物をリンス処理できるし、潤滑油通過穴や狭い隙間に付着の洗剤等が水の噴出圧によってリンス(除去)可能となる。
ただし、図示のように槽(タンク)構成としてこれに貯留した水に被洗浄物を浸漬することによるリンス処理によれば、水の使用両の節約、回収等の点で有利となるし、水の飛散も防止できる。
【0023】
第2処理部5による水によるリンス処理はこれを1回(1段)とすることもできるが、多段処理(3槽、4槽等)とすることにより、リンス効果(洗剤の除去効果)を向上させ、被処理物表面の洗浄度を向上でき、特に、多段向流方式とすることでより一層有利となる。
第2処理部5を槽構成としたときには、そのリンス槽5A,5Bの底部等に、超音波付与手段5Cを付帯させて、槽内の被洗浄物に対して超音波を作用させ、リンス効果を促進できて有利となる。
【0024】
また、第2処理部5において槽内の被洗浄物を揺動させる揺動手段5Dを付帯させることにより、リンス処理効果、表面洗浄度を向上させることもできる。
この超音波付与手段、揺動手段はいずれか一方又は双方を付帯させることができ、勿論付帯させないときもある。なお、第2処理部5においてリンス水を加熱するヒーター付帯させても良い。
第3処理部6は、前記被洗浄物に付着の水を切り炭化水素液に置換処理する部位であり、更に、第4処理部7は、被洗浄物に対して炭化水素系蒸気により蒸気洗浄した後当該被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する部位であり、この第3処理部6と第4処理部7とによって真空洗浄乾燥装置10を構成しており、前記第3処理部6は大気圧下で行うこともでき、これ故、大気開放可能であるが第4処理部7は真空雰囲気下で処理を行うため真空排気手段を備えている。
【0025】
ここで、炭化水素(液)は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤を使用(混入)することが望ましく、具体的には、イソプレン系グリコールエーテル又は界面活性剤・アルコール入りの炭化水素洗浄剤を挙げることができる。
次に、図7および図8に示すブロック図を参照して、本発明の一実施の形態に係る第3処理部6と第4処理部7とで構成される真空洗浄乾燥装置10の概念的構成を説明する。
図示するように、内部にワーク11を洗浄するための炭化水素系溶剤12を貯留する洗浄槽13は、その上部開口部を密閉可能な開閉蓋14を有すると共に、その下部に超音波振動手段の一例である超音波振動発生装置15を有する。また、後述するように、洗浄槽13はワーク11を揺動するための揺動手段68(図9参照)を具備する。
【0026】
洗浄槽13の一側方には仕上げ洗浄・乾燥槽16が並設されており、仕上げ洗浄・乾燥槽16は、その内部に炭化水素系溶剤の蒸気を発生させるものであり、上部開口部を密閉可能な開閉蓋18を有する。
洗浄槽13は、図7に示す例では中途に冷却器19を、図8ではヒーター19Aを具備する第1の真空吸引配管20を介して真空ポンプ21に連通連結されており、真空ポンプ21を駆動することによって洗浄槽13の内部を減圧して真空状態にすることができる。一方、仕上げ洗浄・乾燥槽16は、第2の真空吸引配管22を介して第1の真空吸引配管20に連通連結されており、同様に真空ポンプ21を駆動することによって仕上げ洗浄・乾燥槽16の内部を減圧して真空状態にすることができる。
【0027】
本実施の形態において、洗浄槽13への炭化水素系溶剤(以下溶剤と略称することもある)12への供給、及び、仕上げ洗浄・乾燥槽16への溶剤の蒸気の供給は、これらを再生してその有効利用を図るため、以下の構成を用いて行っている。
即ち、洗浄槽13は、開閉弁23aを具備するオーバーフローライン23を介して溶剤回収タンクの一例である溶剤回収タンク24の流入口に連通連結されている。また、真空ポンプ21の下流側に設けた溶剤回収ラインの一例である溶剤回収ライン25を介して溶剤回収タンク24のもう一つの流入口に連通連結されており、溶剤回収ライン25の中途にはガス冷却器26と逆止弁26aが取付けられている。なお、溶剤回収タンク24の上部空間には先部が大気に開放された排気ダクト24aの基部が連通連結されており、排気ダクト24aの中途部にはは排気ファン24bが取付けられている。
【0028】
また、溶剤回収タンク24の流出口にはフィルタ28と開閉弁29aを具備する第1の溶剤供給ライン27を介して蒸留器29の流入口が連通連結されている。
図7の例では、蒸留器29の流出口には第1の溶剤蒸気供給ライン30が連通連結されている。第1の溶剤蒸気供給ライン30の下流側部分は、三方弁からなる蒸気案内弁30aを介して第2及び第3の溶剤蒸気供給ライン31,32に分岐されている。さらに、蒸留器29の下部に接続された配管にはドレンバルブ29bが取付けられている。
【0029】
第2の溶剤蒸気供給ライン31は、洗浄剤として使用できる溶剤12を生成するための液化装置の一例であるコンデンサ33の流入口に連通連結されている。一方、コンデンサ33の流出口は、循環タンク34、逆止弁33b、エジェクター33c、開閉弁34aを取付けた第2の溶剤供給ライン35を介して洗浄槽13内に連通連結されている。なお、符号34bは循環ポンプを示す。
また、第3の溶剤蒸気ライン32の下流側端は仕上げ洗浄・乾燥槽16の内部に連通連結されている。
【0030】
上記した図7に示す構成によって、洗浄槽13からマシーン油等の洗浄対象物である不純油を溶かした溶剤12のうち、所定のレベルを超える分を取り出し、オーバーフローライン23を通して溶剤回収タンク24に回収することができる。また、真空ポンプ21によって洗浄槽13や仕上げ洗浄・乾燥槽16から吸引される空気中に含まれる溶剤蒸気を真空ポンプ21の上流側に設けた冷却器19を通して液化した後においても吸引空気中にわずかに含まれる溶剤12も真空ポンプ21の下流側に設けた溶剤回収ライン25を通して溶剤回収タンク24に不純油を含む溶剤12として回収することができる。その後、これらの回収された不純油を含む溶剤12から蒸留器29を用いて不純油を含まない溶剤蒸気を生成し、その一部を仕上げ・乾燥槽16内に溶剤蒸気として導入すると共に、残りをコンデンサ33を用いて液化して新液としての溶剤12を生成した後、循環タンク34を介して洗浄槽13内に導入することができる。
【0031】
また、図7に示すように、洗浄槽13には第1の真空度計36、第1の真空破壊弁37及び第1の排気弁38が取付けられている。なお、本実施の形態では、第1の排気弁38は、便宜上、第1の真空吸引配管20の洗浄槽13に近接した個所に取付けられている。一方、仕上げ洗浄・乾燥槽16には、第2の真空度計39、第2の真空破壊弁40及び第2の排気弁41が取付けられている。また、便宜上、第2の真空破壊弁40と第2の排気弁41は、第3の溶剤蒸気供給ライン32及び第2の真空吸引配管22の仕上げ洗浄・乾燥槽16の近傍をなす個所に取付けられている。
【0032】
そして、制御手段の一例である制御装置76(図2及び図3参照)を用いて、真空ポンプ21と第1の真空度計36、第1の真空破壊弁37及び第1の排気弁38を駆動制御して洗浄槽13内の真空度を、例えば3〜50Torrに調整することができると共に、真空ポンプ21と第2の真空度計39、第2の真空破壊弁40及び第2の排気弁41を駆動制御して、仕上げ洗浄・乾燥槽16内を交互に真空状態と大気開放状態にすると共に、真空度を、例えば3〜5Torrに調整することができる。
【0033】
また、図7および図8に示すように、本実施の形態では、溶剤12を用いることから、その安全性を確実なものとするために、蒸留器29内に供給される油や汚れを溶かした溶剤12を、熱媒油を用いて加熱するようにしている。即ち、ヒーター等によって加熱される難燃性の熱媒油を充填する油タンク42は、循環ポンプ45を取付けた熱媒油供給ライン43と熱媒油戻しライン44からなる循環流路によって蒸留器29に連通連結されている。なお、本実施の形態では、蒸留器29の蒸留側に設けた開閉弁29aを閉じて溶剤12の蒸留器29への流入を一時的に停止するようにしている。これは、溶剤12中に混入されている不純油の沸点(例えば、120℃)が溶剤12の沸点(例えば、80℃)より高いことに鑑み、蒸留器29内で溶剤12を煮詰め、溶剤12のみ蒸発させ、油濃度を十分に高めた後に、ドレインバルブ29bを開けて外部に取り出し廃棄することにより、破棄量を少なくすると共に、破棄回数を少なくして、真空洗浄乾燥装置10の運転停止時間を可及的に短くするためである。
【0034】
図示の実施の形態におけるその他の構成について説明すると、図7に示すように、仕上げ洗浄・乾燥槽16の底部と冷却器19の底部はそれぞれ第1又は第2の溶剤戻し配管46,47を介して溶剤戻しタンク48に連通連結されており、溶剤戻しタンク48は第3の溶剤戻し配管49を介して洗浄槽13の底部に連通連結されている。なお、第3の溶剤戻し配管49には戻しポンプ50が取付られている。また、第1の溶剤戻し配管46には、開閉弁46aが取付けられ、第2の溶剤戻し配管47にはガス逆流防止タンク19aが取付けられている。
【0035】
かかる構成によって、仕上げ洗浄・乾燥槽16の蒸気洗浄によって仕上げ洗浄・乾燥槽16の底部に滴下した溶剤12と、冷却器19による液化によって生じた溶剤12をいったん溶剤戻しタンク48を経由して、洗浄槽13内に戻し、再利用することができる。
また、図7に示すように、冷却器19、ガス冷却器26、真空ポンプ21、コンデンサ33等は、高価なチラーを用いずに、クーリングタワー51から冷却水を用いて作動するようにしている。即ち、冷却器19、ガス冷却器26、真空ポンプ21、コンデンサ33等は、冷却水供給配管52と冷却水戻し配管53を介してクーリングタワー51に連通連結されている。
【0036】
さらに、図7に示すように、洗浄槽13には、溶剤12中に含まれる無機質のごみを除去するためのフィルタユニット54が取付られている。フィルタユニット54は、実質的に循環ポンプ55とフィルタ56を取付けた溶剤循環流路57から形成されている。
なお、図8の実施の形態では冷却器19に代えてコイルヒーター19Aを真空ポンプ21に並設したものであり、これにより該ポンプ21の寿命を伸ばすことができライン19B,19Cを介して図示のように接続されている。
【0037】
次に、図1を参照して既述した第1処理工程(脱脂処理)を経て第2処工程(水によるリンス処理)を終了した被洗浄物(ワーク)について、第3・4処理を行う。上記した構成を有する真空洗浄乾燥装置10による真空洗浄乾燥方法について説明する。以下に説明するように、真空洗浄乾燥方法は、実質的にワーク洗浄工程と、ワーク蒸気洗浄工程と、ワーク乾燥工程とからなる。
(1)まず、洗浄槽13内に炭化水素系溶剤(以下溶剤と省略する)12を入れる。この溶剤12は、最初の状態では、洗浄槽13の開閉蓋14を開いて直接投入するのが好ましいが、循環タンク34内に再生された溶剤12が残っている場合には、開閉弁34aを開いて第2の溶剤供給ライン35より供給してもよい。洗浄槽13内に供給する溶剤12の量は第2のレベルセンサ72によって検知され、この第2のレベルセンサ72が作動していることを確認して、以下の処理が行われるようになっている。
【0038】
この洗浄槽13は油タンク42からの熱媒油によって加熱され、内部の溶剤12の温度が図示しない温度センサによって検知・制御されて約40℃になっている。これは、ワーク11に付着している不純油の溶解温度が約30℃程度であるので、ワーク11を入れた場合に、約40℃(不純油の融点以上で、溶剤12の沸点より十分に低い温度)に加熱されてワーク11に付着した不純油を溶剤12に溶かすためである。
(2)洗浄槽13の下部にその出口及び入口が設けられているフィルタユニット54を駆動する。これによって、溶剤12内に含まれる汚れはフィルタ56によって除去されることになるが、新しい溶剤12を洗浄槽13内に入れた直後では、汚れ(SS)等は無いので、この工程は、ワーク11を洗浄槽13内に入れた後に行ってもよい。
【0039】
(3)開閉蓋14を開けた状態で、洗浄槽13内の溶剤12中に洗浄籠67(図9参照)に入ったワーク11を浸漬して、開閉蓋14を閉じる。このとき、オーバーフローする溶剤12は、オーバーフローライン23を通じて溶剤回収タンク24に流れ込む。
(4)オーバーフローライン23に設けられている開閉弁23aを閉じた状態で、真空ポンプ21を作動して洗浄槽13内を減圧し、内部の空気を抜くと共に、溶剤12中に溶解している酸素を脱気し、第1の真空度計36で測定する洗浄槽13内の真空度が30Torrになった段階で第1の排気弁38を閉じ真空ポンプ21の作動を停止する。
【0040】
(5)洗浄槽13の底部に取付けられている超音波振動発生装置15を作動させると共に、振動機構68を作動させてワーク11の収納されている洗浄籠67を揺動させる。これによって、ワーク11に付着している不純油が強制的に溶剤12中に溶け出し、汚れもワーク11から除去される。この操作によって汚れた溶剤12はフィルタユニット54によって含まれる固形状の汚れ(SS)が除去される。超音波洗浄を行うと、溶剤12の温度が徐々に上昇するので、超音波洗浄中は常時溶剤12が約40℃を保持するように洗浄槽13を水冷しておく(ワーク洗浄工程終了)。
【0041】
(6)所定時間の洗浄作業が完了すると、超音波振動発生装置15と揺動機構68の作動を止め、第1の真空破壊弁37を作動して洗浄槽13の内部を大気開放する。次に、洗浄槽13の開閉蓋14を開けて、ワーク11を外部に取り出し、仕上げ洗浄とその後のワーク11の乾燥を行う仕上げ洗浄・乾燥槽16の直上まで移送する。
ここで、溶剤戻しタンク48から戻しポンプ50を介して洗浄槽13に溶剤12が供給され、そのオーバーフロー分が溶剤回収タンク24に供給されるようになっている。これによって洗浄槽13内の不足の溶剤12を補うと共に、溶剤戻しタンク48内の不純な油を少量含む溶剤12を、洗浄槽13内で再利用している。
【0042】
(7)開閉蓋18を開けて、洗浄槽13で洗浄剤である溶剤12による液洗浄(水切り・置換)が完了したワーク11を、図3又は図9に示すように、昇降機械65によって仕上げ洗浄・乾燥槽16内に入れる。この仕上げ洗浄・乾燥槽16内には、底部に簀の子が設けられて、洗浄籠67に入ったワーク11が仕上げ洗浄・乾燥槽16の中間位置に配置されるようになっている。ここで、ワーク11の温度は約40〜60℃であるが、仕上げ洗浄・乾燥槽16の側壁の温度は約80℃(蒸気洗浄を行う溶剤12の凝結温度近傍又は凝結温度以上)に内部に加熱ヒーターを備えた熱媒油によって予め加熱し、蒸気を発生させる構造としている。
【0043】
(8)開閉蓋18を閉じて、第2の排気弁41を開くと共にその他の弁を閉じて、真空ポンプ21を作動し、仕上げ洗浄・乾燥槽16の内部を減圧して内部の空気を除去する。これは仕上げ洗浄・乾燥槽16内に空気があると、仕上げ洗浄(濯ぎ洗浄)である蒸気洗浄が円滑に行われないためである。
(9)仕上げ洗浄・乾燥槽16の真空度が3〜5Torrになった時点で、第2の排気弁41を閉じると共に真空ポンプ21を止める。仕上げ洗浄・乾燥槽16内に入った溶剤は加熱され、約40〜60℃のワーク11に接して凝結し、これによってワーク11の蒸気洗浄が行われる。蒸気洗浄の過程において発生する不純油を含む溶剤12は、仕上げ洗浄・乾燥槽16の底部に溜まる。
【0044】
(10)80℃に加熱された溶剤蒸気が接することによってワーク11の温度は徐々に上昇し、80℃又は80℃近傍の温度になった時点で蒸気洗浄を終了する。これは、ワーク11が80℃近傍になると溶剤蒸気の付着が極端に悪くなって洗浄効率が著しく落ちるからである(ワーク蒸気洗浄工程)。
(11)ワーク11の蒸気洗浄が終了すると、蒸気案内弁30aを閉じて、第2の真空破壊弁40を開いて内部を大気圧にした後、仕上げ洗浄・乾燥槽16の下部に設けられている開閉弁46aを開いて、仕上げ洗浄・乾燥槽16の底部に溜まっている溶剤(不純油を含む)12を溶剤戻しタンク48内に移す。これによって、仕上げ洗浄・乾燥槽16の溶剤12が一応抜けることになる。
【0045】
(12)次に、第2の真空破壊弁40及び開閉弁46aを閉じた状態で、第2の排気弁41を開くと共に真空ポンプ21を作動させ、仕上げ洗浄・乾燥槽16内を減圧する。これによって、ワーク11に付着した溶剤12が蒸気となって蒸発する。この溶剤蒸発の過程において、溶剤12に溶融している不純油も蒸発し、ワーク11の表面は清浄となって乾燥する。この乾燥処理は、仕上げ洗浄・乾燥槽16を熱媒で加熱しながら、仕上げ洗浄・乾燥槽16の内部圧力が3〜5Torrになるまで継続する(ワーク乾燥工程終了)。
【0046】
なお、ワーク11に盲穴や油溜まりがある場合には上記処理では十分に付着した不純油の除去が困難であるので、仕上げ洗浄・乾燥槽16内に溶剤を入れてワーク11を蒸気洗浄する処理と、仕上げ洗浄・乾燥槽16内を減圧して、不純油が混入した凝結溶剤を気化させる減圧処理とを複数回繰り返す。ワーク11はワーク蒸気洗浄工程によって温度が上がり、減圧処理による気化によって温度が下がるので、効率的に次の処理を行うことができ、この繰り返し処理(フラッシングという)によって、局所に溜まった不純油も略完全に除去できる。
【0047】
(13)以上の処理が終了した後、第2の真空破壊弁40を開くとともに、他の弁は閉じて、仕上げ洗浄・乾燥槽16の開閉蓋18を開け、乾燥処理したワーク11を取り出す。
次に、この真空洗浄乾燥処理装置10によって使用される溶剤12の再生処理について説明する。
(1)図7の例では真空ポンプ21の上流側には、通過するガスを40℃以下に冷却する冷却部19が設けられ、ガスに含まれる溶剤分の大部分を液化し、下部のガス逆流防止タンク19aを介して液化した溶剤12を溶剤戻しタンク48に貯留している。これによって、真空ポンプ21に吸引される溶剤蒸気の進入を防いで真空ポンプ21の負荷を著しく軽減し、更には、吸引ガス中の溶剤12を回収している。
【0048】
一方、図8の例ではポンプ21の上流側には、通過する蒸気を80℃以下に加熱する加熱部19Aが設けられ、蒸気に含まれる溶剤の大部分を蒸気化し、これによって真空ポンプ21が溶剤液を吸い込んでロックスすることをを防いでポンプ21の寿命を著しく伸ばすことができる。
(2)真空ポンプ21から排出されたガス又は蒸気は、真空ポンプ21へのガス又は蒸気の逆流を防止してその負荷を軽減する逆止弁26a、及びガス冷却器26を介して溶剤回収タンク24に入り、更に含まれている溶剤12を回収した後、排気ファン24bを介して大気開放されている。
【0049】
(3)溶剤回収タンク24に貯留される溶剤12は、不純油を含むので、フィルタ28を介して蒸留器29に供給されている。この蒸留器29は熱媒油によって80〜90℃に加熱されて、溶剤12を気化して不純油の除去された溶剤蒸気を発生させている。図7の例ではこの溶剤蒸気は蒸気案内弁30aを介して、仕上げ洗浄・乾燥槽16又はコンデンサ33に供給されている。なお、蒸留器29の下部には不純油が溜まるので、ドレンバルブ29bを定期的に開いて除去している。
【0050】
(4)コンデンサ33の上流側にはガス又は蒸気冷却器33aが設けられていて、予め溶剤蒸気を冷却し、コンデンサ33の負荷を軽減している。コンデンサ33を液化された純水な再生溶剤は、逆止弁33b及びエジェクター33cを介して循環タンク34に供給されている。循環タンク34では、下部に循環ポンプ34bを備え、内部の再生溶剤を循環させて、エジェクター33cによるコンデンサ33からの再生溶剤の回収及び循環タンク34への再生溶剤の送り出しに寄与している。
【0051】
【実施例】
図1〜図3を参照して上記した真空洗浄乾燥装置10を含む洗浄装置1の全体の具体的構成を示す。
図示するように、矩形箱体からケーシング60の下部基台61上には、槽取付フレーム62が設置されており、槽取付フレーム62には、幅方向に間隔をあけて第1〜4処理部4〜7が取付けられている。
図1に示すように、第1〜4処理部4〜7の上方には走行レール63が架設されており、走行レール63上には、図では2基のワーク搬送台車64が走行自在に載置されていて、このワーク搬送台車64の下面から一対の昇降機構65が下方に向けて延びており、昇降機構65の下部には着脱自在に揺動台66が取付けられている。また、揺動台66の上面にはワーク11を収納した洗浄籠67が取付けられている。
【0052】
図9に示すように、洗浄槽13の周壁の一側には、揺動台66を片持ち状態で支持すると共に、揺動することのできる揺動機構68が取付けられている。洗浄槽13の底壁には、超音波振動発生装置取付板69が取付けられており、超音波振動発生装置取付板69には超音波振動発生装置15が取付られている。また、洗浄槽13の周壁の両側には、それぞれ、水圧検出型の通常の第1レベルセンサ71と、フロート式の第2のレベルセンサ72が取付られている。
さらに、図1及び図2に示すように、開閉蓋14,18は、それぞれ蓋開閉用シリンダ73、74によって開閉可能に構成されている。ケーシング60の下部基台61上において、洗浄槽13と仕上げ洗浄・乾燥槽16の後部をなす個所には、蒸留器29と、コンデンサ33と、循環タンク34と、油タンク42等から構成される蒸留再生ユニット75や、真空ポンプ21や、溶剤回収タンク24や、制御装置76が配設されている。
【0053】
上記した構成において、昇降機構65を具備するワーク搬送台車64を用いることによって、第1処理部4の洗浄槽4A,4B、第2処理部5のリンス槽5A,5Bおよび第3処理部6の洗浄槽13へのワーク11の出入り動作、洗浄槽13から第4処理部7の仕上げ洗浄・乾燥槽16への移動、仕上げ洗浄・乾燥槽16へワーク11の出入り動作を全て自動的に行うことができ、しかも台車64を2基(これ以上でも良い)備えることにより、サイクルタイムを短縮でき、さらに、昇降機構65は、これの上下動によって揺動手段を兼用できるし、ここにワーク11の脱脂洗浄、水リンス、水切り置換・乾燥までの全行程を効果的に行うことができる。
【0054】
また、揺動機構によってワーク11を揺動しながら、洗浄、水リンス、水切り等することができるので洗浄効果を促進できる。
図4は本発明の他の実施形態を示しており、被洗浄物をアルカリ液等で脱脂する第1工程における第1処理部4をひとつの洗浄槽4Aで行うとともに、第3および第4処理を行う第3・4処理部6,7を単一の処理槽にしたものであり、その他の構成は既述の構成、作用と共通するので、共通部分は共通符号を採用している。
【0055】
図5は本発明の他の実施形態を示し、前述した第3処理工程を大気圧(大気雰囲気)によって行うようにしたものであり、これ故、洗浄槽13には、真空ポンプ等の減圧関与部材を初め、開閉蓋等は具備されていない。
従って、図5で示した実施形態のように第3処理工程(水切りと炭化水素液への置換処理)において、洗浄槽13を必要とせず、炭化水素液を第2処理工程(水リンス処理)が終了した被洗浄物に対して、ジェットノズル、シャワー、スプレー等によって噴出させることもできる。勿論、この第3処理工程を複数段とすることも可能である。なお、図5においては第3処理工程を大気圧下で実施する以外は、図1に示した実施の形態と共通するので共通部分は共通符号を採用している。
【0056】
本発明の実施の形態は以上の通りであるが、次のような付加手段を備えることもできるし、以下に述べるような変形例を採用できる。
(1)安全性・外観・メンテナンス性を考え、装置には全体カバーを設けることができる。この場合、安全性を考え、装置内部が見えるように、前面に網入りガラスのサッシ窓を設け、メンテナンス性をよくする為、外装カバーは簡単に取り外し可とし、さらに1次側接続の必要のある、電気配線・エアー配管・排気ダクト・冷却水配管はすべて装置の上部からの取合いとすることが望ましい。
【0057】
(2)装置内部に滞留した、洗浄剤のミスト・ガス・臭いを連続的に装置外部に放出させる排気ファンを併設し、その排気温度も常に36℃以下の温度で排風するように、排風温度冷却機能を付帯(付加)することにより、地球環境の温暖化を防止できる。
(3)装置に使用している真空ポンプ等の機器が、オイル交換、グリースアップ等の点検及び交換時間に到達したら、自動的に警告、表示、ブザーが鳴る等の機能を付加できる。
【0058】
(4)装置内に設けてある各機器が故障した場合、その個所、対応方法がタッチパネル画面あるいはパソコン画面等に自動表示され、表示、ブザーが鳴る等の、シーケンスプログラム機能を付加できる。
(5)火災等の異常時には、自動消火器の作動とあわせ、置換槽・乾燥槽の蓋自走閉、1次側のエアー自動閉、排気自動閉、電源自走断となる様、自動消火システム回路を組み込んだ機能を付加できる。
(6)更に、前記の実施の形態においては第1〜4処理部に被洗浄物をチャック機能を有する自走台車で自動搬送可能としているが、クレーン、ホイスト等を利用して搬送するようにしても良い。
【0059】
(7)また、前述の実施の形態においては、第1〜4処理部における各槽を、ステンレス製とすることが望ましいが、これ以外の材料であっても良い。
(8)更に、前述の実施の形態におていは洗浄篭を利用して被洗浄物を各槽に出入させているが、篭を必ずしも用いる必要はない。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、溶剤を使用することによる、環境や人体への安全性の問題および溶剤コストの問題並びに、乾燥工程におけるシミの発生が洗浄不良につながる問題等々を一挙に解決でき、機械部品、切削工具等に残留している、切削油、防錆油等の有機油脂類の除去、ならびに切子、研磨粉等の無機類の除去を行う洗浄方法、および装置として実益大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態の基本例を示す全体構成の概略立面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】他の実施の形態を示す概略立面図である。
【図5】他の実施の形態を示す概略立面図である。
【図6】水リンス処理の2例を示す説明図である。
【図7】真空洗浄乾燥装置(第3・4処理部)の全体構成図である。
【図8】図7の他の好ましい例の全体構成図である。
【図9】図7の要部立面図である。
【符号の説明】
1 洗浄装置
4 第1処理部(槽)
5 第2処理部(槽)
6 第3処理部(槽)
7 第4処理部(槽)
Claims (13)
- 水系洗浄液により被洗浄物を脱脂処理する第1処理工程と、この第1処理工程を終了した被洗浄物を水によりリンス処理する第2処理工程と、この第2処理工程を終了した前記被洗浄物を炭化水素液に浸漬することによって前記被洗浄物に付着の水を切って当該炭化水素液に置換すると共に前記被洗浄物を洗浄する第3処理工程と、この第3処理工程を終了した被洗浄物に対して炭化水素系蒸気により蒸気洗浄した後当該被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する第4処理工程とを経由しており、前記第3処理工程の炭化水素液は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤を使用し、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素洗浄剤は共通のタンクを経由して再生利用していることを特徴とする洗浄方法。
- 前記第3処理工程および第4処理工程を、密閉可能な洗浄・乾燥槽に被洗浄物を装入して真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
- 前記第3処理工程を大気圧下で行い、前記第4処理工程を、密閉可能な洗浄・乾燥槽に被処理物を装入して真空雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
- 第1処理工程における水系洗浄液が80℃以下に加熱されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄方法。
- 第1処理工程および/又は第2処理工程は被洗浄物を槽に装入して行うとともに、この槽内における被洗浄物に対して超音波振動又は振動のいずれか一方又は双方を付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄方法。
- 第2処理工程は水が多段向流方式で流下する複数の水リンス槽のそれぞれに被洗浄物を装入して当該水に浸漬して行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄方法。
- 前記炭化水素洗浄剤が、イソプレン系グリコールエーテル又は界面活性剤・アルコール入りの炭化水素洗浄剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄方法。
- 水系洗浄液により被洗浄物を脱脂処理する第1処理部と、水により被処理物をリンス処理する第2処理部と、前記被処理物を炭化水素液に浸漬することによって前記被処理物に付着の水を切り当該炭化水素液に置換すると共に当該炭化水素液で前記被処理物を洗浄する第3処理部と、炭化水素洗浄系蒸気により蒸気洗浄した後、被洗浄物に付着している炭化水素溶剤を蒸発して乾燥処理する第4処理部と、を備えてなり、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素液は、水と油の両方に溶ける両親水性の炭化水素洗浄剤であり、前記第3処理工程及び第4処理工程の炭化水素洗浄剤は共通のタンクを経由して再生利用していることを特徴とする洗浄装置。
- 第3処理部および第4処理部は密閉可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、これら槽内を真空雰囲気下にする真空排気手段が備えられていることを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
- 第3処理部は大気開放可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、第4処理部は密閉可能な洗浄・乾燥槽によって構成されており、この槽内を真空雰囲気下にする真空排気手段が備えられていることを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
- 第1処理部を構成する第1処理槽には、これに収容している水系洗浄液を加熱するヒーター手段が備えられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の洗浄装置。
- 第2処理部を構成する第2処理槽は複数の槽を並設してなり、各槽には水が多段向流方式で流下するように構成されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の洗浄装置。
- 第1処理部および第2処理部を構成する第1・2処理槽にはこれら槽内における被洗浄物に対して超音波振動又は振動のいずれか一方又は双方を付与する超 音波振動付与手段および/又は振動付与手段が備えられていることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の洗浄装置。
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