JP4007132B2 - 重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法および成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合わせた金属板を、ハイドロフォーム成形法により金型の凹部形状に合致した成形品に成形する重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板を重ね合わせてなる重ね合わせ板材を、ハイドロフォーム成形法により、金型の成形用凹部の形状に合致した成形品に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置は、成形用凹部を備える金型内に重ね合わせた金属板を入れ、これら金属板の間に内圧をかけて、成形用凹部の内面形状に合致した外面形状を有する成形品を成形するものである。ハイドロフォーム成形装置の金型には、重ね合わせた金属板の間に内圧を付加するための媒体(例えば、水などの液体)を供給するノズルが設けられている。このノズルは、成形品となる部分よりも外側つまり成形用凹部の外側に位置している。このため、重ね合わせた金属板には、ノズルから成形用凹部に位置する2枚の金属板の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部が必要となる。ノズルは、一方の金属板を貫通してゲート部に連通する。このゲート部は、内圧を付加する工程に先立って、予備成形によって金属板に形成されている。また、重ね合わせた金属板は、一般的に、金型に入れる前に予め、その縁部を全周にわたってまたは適宜個所溶接され、相互に接合されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−85944号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ゲート部を予備成形した重ね合わせ板材を型締めする場合、ゲート部という中空部分が存在することから、金属板のうちゲート部を構成する部位を十分な圧接力で拘束することができない。
【0006】
このため、型締めしたときに、ノズルが貫通する一方の金属板(例えば、下板)の材料が成形用凹部に向かう内側に引っ張られ、当該金属板が型内面から離れる方向に反り返ることがある。この反り返りにより、ノズルと当該ノズルが貫通する一方の金属板との間に隙間が生じ、ノズルから供給された媒体が前記隙間から漏れてしまう。この結果、成形用凹部に位置する2枚の金属板の間に十分な強さの内圧をかけることができなくなる。
【0007】
内圧を上昇できないので(例えば、150bar以下)、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることができず、成形品の形状に制限を受けるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、ノズルから供給された媒体の漏れを防止して、金属板の間にかける内圧を上昇でき、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせ得る、重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記する手段により達成される。
【0010】
成形用凹部を備える型内に重ね合わせた金属板を入れ、前記金属板の間に内圧をかけて、前記成形用凹部の形状に合致した成形品を成形する重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法において、
前記内圧を付加するための媒体を供給するノズルを、前記成形用凹部の外側に位置する前記金属板の間に形成される媒体供給空間に一方の金属板を貫通して臨ませ、
前記媒体供給空間の周辺に位置する重なり合った前記金属板のうち、一部に前記媒体供給空間に連通する非拘束部を残しつつ他の部位を拘束するように型締めし、
前記非拘束部から前記成形用凹部に位置する前記金属板の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部を、前記ノズルから供給された媒体の圧力によって形成するようにしたことを特徴とする重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法である。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、ノズルから供給された媒体の漏れを防止して、金属板の間にかける内圧を上昇でき、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1(A)(B)は、本発明の実施形態に係る重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置10の要部を示す断面図であり、図1(A)は、重ね合わせ板材を型締めしたハイドロフォーム成形開始時の状態を示し、図1(B)は、ハイドロフォーム成形終了時の状態を示している。また、図2(A)は、図1に示される上型21の分割面の要部を示す平面図、図2(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う上下型21、22の断面図、図3(A)は、図1に示される下型22の分割面の要部を示す平面図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う上下型21、22の断面図である。
【0014】
図1(A)(B)に示すように、本実施形態のハイドロフォーム成形装置10は、概説すれば、成形用凹部23、24を備え重ね合わせた上側金属板11および下側金属板12が入れられる上下型21、22と、成形用凹部23、24の外側に位置する金属板11、12の間に形成される媒体供給空間14に下側金属板12(一方の金属板に相当する)を貫通して臨み、内圧を付加するための媒体を供給するノズル30と、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板11、12のうち、一部に媒体供給空間14に連通する非拘束部41を残しつつ他の部位を拘束する拘束手段40と、型内面に形成され非拘束部41から成形用凹部23、24に至るゲート部用凹部50と、を有している。そして、ノズル30から供給された媒体の圧力によって金属板11をゲート部用凹部50に膨出ないし拡開させ、非拘束部41から成形用凹部23、24に位置する金属板11、12の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部51を形成するようにしてある。以下、詳述する。
【0015】
重ね合わせた上下の金属板11、12は、好ましくは、その縁部の全周あるいは適宜箇所に溶接を施し、相互に接合しておくことが望ましい。金属板11、12の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ合金やステンレス鋼などである。下側金属板12には、ノズル30が挿通される円形の貫通孔13が形成されている(図2(B)および図3(B)をも参照)。貫通孔13は、ノズル30の外径寸法に等しい若しくはやや小径の内径寸法を有する。
【0016】
上下型21、22のそれぞれの内面には、カップ形状の成形用凹部23、24が形成されている。上型21は、下型22に対して相対的に接近離反移動する。上型21および下型22により、重ね合わせた金属板11、12の外周縁部が押さえ付けられる。各成形用凹部23、24は、板押さえ部から底部にかけて、なだらかな断面形状に設定されている。このような断面形状により、板押さえ部から成形品の内方部位に向けて材料が流入し易くしなる。上下型21、22の図示しない型締め機構に供給される油圧を調整することにより、上下型21、22間のクリアランスが調整され、上下型21、22による板押え圧が制御される。
【0017】
ノズル30は、成形用凹部23、24の外側に位置して下型22に取り付けられ、下側金属板12の貫通孔13に挿通される円筒形状を有している。ノズル30の上方は、下型22の分割面を超え、上型21に向けて突出している。ノズル30の上方先端は、断面半円弧形状を有する。ノズル30は、下型22内の通路25を介して、圧力供給装置31に接続されている。所定の圧力に高められた媒体が圧力供給装置31からノズル30に導入される。
【0018】
図2(B)に示すように、ノズル30内には、媒体を供給する供給通路32が形成されている。供給通路32の一端は、ノズル30の上方先端において開口し、他端は、前記通路25に連通する。ノズル30の上方先端における外周面の一部を削落し、供給通路32に連通する傾斜した溝部33を形成してある。かかる構成により、供給通路32を通って上方先端まで供給されてきた媒体は、溝部33を通り、当該溝部33が伸びる方向(図2(B)では左方向)に向けて流れる。
【0019】
上型21は、ノズル30の位置に対応して、ノズル30の上方先端形状に合致した断面半円弧形状の凹所52が形成されている。
【0020】
図2(B)および図3(B)に示すように、上下の金属板11、12はともに平板であり、この状態では、金属板11、12の間に媒体供給空間14は形成されていない。本実施形態では、ノズル30の上方は上型21に向けて下型22の分割面から突出していることから、図1(A)に示すように、型締めすると、ノズル30は、重なり合った金属板11、12の間に下側金属板12の貫通孔13を貫通して進出することになる。このノズル30の進出に伴って上側金属板11が凹所52に押圧され、上下の金属板11、12の間に媒体供給空間14が形成される(図1参照)。これにより、ノズル30は、金属板11、12の間に形成される媒体供給空間14に下側金属板12を貫通して臨み、内圧を付加するための媒体を供給し得る状態となる。
【0021】
前記拘束手段40は、図2(A)(B)に示すように、一部に切り欠き部42を備えたリング形状をなす上型強圧プレート43から構成されている。この上型強圧プレート43は、下型22との間のクリアランスを他の部位に比べて小さくするために、上型21の分割面を超え、下型22に向けてわずかに突出している。上型強圧プレート43は、媒体供給空間14を形成するための凹所52の周囲を囲むように配置されている。上型強圧プレート43の切り欠き部42は、成形用凹部23、24に向かう側に配置されている。切り欠き部42が成形用凹部23、24に向かう方向と、ノズル30の溝部33が成形用凹部23、24に向かう方向とは一致する。図2(A)に点線で囲んで示すように、上型強圧プレート43の切り欠き部42が位置する部位である非拘束部41は、他の部位における拘束力に対して相対的に小さな拘束力しか作用せず、媒体供給空間14に連通し易くなる。これにより、上型強圧プレート43は、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板11、12のうち、一部に媒体供給空間14に連通する非拘束部41を残しつつ他の部位を拘束することになる。
【0022】
なお、本明細書において「非拘束部41」との用語は、拘束力がゼロである部位だけを指称するものではなく、前記他の部位つまり拘束部における拘束力に対して相対的に小さな拘束力しか作用せず、媒体による内圧がかかることによって拘束部よりも膨出ないし拡開し易い部位である、と解釈されるべきである。
【0023】
前記ゲート部用凹部50は、上型21の内面に、非拘束部41つまり上型強圧プレート43の切り欠き部42から成形用凹部23に至るまで形成されている。ゲート部用凹部50は、例えば、断面半円弧形状を有している。媒体供給空間14に臨んだノズル30から媒体を供給すると、媒体は、拘束力が比較的小さい非拘束部41を通り、媒体供給空間14からゲート部用凹部50に沿う金属板11、12の間に注入される。これにより、上側金属板11は、媒体の内圧がかかり、ゲート部用凹部50に沿って成形用凹部23、24に向けて順次膨出して行く。一方、下側金属板12も、媒体の内圧がかかり、ゲート部用凹部50に沿って成形用凹部23、24に向けて順次下型22に圧接して行く。上側金属板11のゲート部用凹部50に沿う膨出が成形用凹部23、24に位置する金属板11、12の間にまで達すると、媒体注入通路をなすゲート部51が形成される(図1(B)参照)。
【0024】
図2(A)(B)および図3(A)(B)に示すように、本実施形態のハイドロフォーム成形装置10ではさらに、上下型21、22の内面に、重なり合った金属板11、12のうちの前記他の部位を拘束する位置に対応して、上型強圧プレート43、ノズル30の周囲からゲート部用凹部50に沿うように、凹凸部44、45を形成してある。図示例では、上型21に係合用凸部44を、下型22に係合用凹部45を形成してある。これら係合用の凸部44および凹部45は、断面波形状を有し、ノズル30と同心状に二重に形成されている。ゲート部用凹部50には、上型21の係合用凸部44は形成されていない。凹凸部44、45を形成する位置は、貫通孔13の内周端面13aが成形にともなって移動する寸法を考慮して定められる。
【0025】
型締めすると、ノズル30周辺に位置する重なり合った金属板11、12は、上下型21、22の係合用凹凸部44、45により凹凸嵌合する。このため、内圧を付加しても、ノズル30が貫通する下側金属板12の材料が成形用凹部23、24に向かう内側に引っ張られ難くなる。したがって、ノズル30と下側金属板12との間に隙間が生じることがなく、ノズル30から金属板11、12の間に注入された媒体の漏れが防止される。この結果、成形用凹部23、24に位置する2枚の金属板11、12の間に十分な強さの内圧をかけることが可能となる。
【0026】
次に、図4〜図8を参照しつつ、ハイドロフォーム法による成形品の成形手順を説明する。
【0027】
図4(A)(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う上下型21、22の断面図に相当し、図4(A)は、開いた上下型21、22内に重ね合わせた金属板11、12を入れた状態を示す断面図、図4(B)は、型締めした状態を示す断面図である。図5(A)(B)および図6は、図2(A)の2B−2B線に沿う上下型21、22の断面図に相当し、図5(A)は、型締めした状態を示す断面図、図5(B)は、ノズル30から媒体を供給し始め、上側金属板11が膨出を開始した状態を示す断面図、図6は、ノズル30から媒体を供給し続けて、上側金属板11がさらに膨出するとともに下側金属板12が下型22に圧接した状態を示す断面図である。また、図7(A)(B)および図8(A)(B)は、重ね合わせた金属板11、12の工程ごとの変化の状態を概念的に示す図であり、図7(A)は、ハイドロフォーム成形を開始する前、図7(B)は、型締めしたとき、図8(A)は、ゲート部51が形成されたとき、図8(B)は、成形用凹部23、24に位置する金属板11、12が膨出したときの状態をそれぞれ示している。
【0028】
まず、図4(A)に示すように、ハイドロフォーム成形装置10の上下型21、22の間に、上下の金属板11、12を重ね合わせて入れる。ハイドロフォーム成形を開始する前における重ね合わせた金属板11、12は、図7(A)に示すように平板状をなしている。
【0029】
次いで、図4(B)および図5(A)に示すように、上下型21、22を相対的に接近させ、所定の型締め力で型締めする。上下の金属板11、12の外周縁部は、上下型21、22により拘束される。型締めすると、ノズル30は、重なり合った金属板11、12の間に下側金属板12の貫通孔13を貫通して進出する。このノズル30の進出に伴って上側金属板11が凹所52に押圧され、上下の金属板11、12の間に媒体供給空間14が形成される。ノズル30の進出により媒体供給空間14が形成された金属板11、12は、図7(B)に示される。
【0030】
また、図4(B)に示すように、上型強圧プレート43は、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板11、12を下型22との間で拘束する。さらに、ノズル30周辺に位置する重なり合った金属板11、12は、上下型21、22の凹凸部44、45により凹凸嵌合し、拘束力が高められる。一方、図5(A)に示すように、非拘束部41つまり上型強圧プレート43の切り欠き部42から成形用凹部23に至るまで形成されたゲート部用凹部50に沿っては、金属板11、12は、上下型21、22により拘束されていない。したがって、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板11、12は、一部に媒体供給空間14に連通する非拘束部41を残しつつ他の部位が拘束されている。
【0031】
次いで、図5(B)に示すように、上下の金属板11、12およびノズル30により囲繞された媒体供給空間14内に、所定の圧力に高められた成形用媒体となる液体(例えば、水)をノズル30から注入し、内圧Pを付加する。
【0032】
上側金属板11および下側金属板12の変形が開始されるときの内圧PをP0とする。媒体供給空間14に臨んだノズル30から媒体を供給して内圧PがP0まで上昇すると、媒体は、拘束力が比較的小さい非拘束部41を通り、媒体供給空間14からゲート部用凹部50に沿う金属板11、12の間に注入される。これにより、上側金属板11のゲート部用凹部50に沿う部分は、媒体の内圧がかかり、成形用凹部23、24に向けて順次膨出して行く。一方、下側金属板12のゲート部用凹部50に沿う部分も、媒体の内圧がかかり、成形用凹部23、24に向けて順次下型22に圧接して行く。ノズル30から供給された媒体は、溝部33を通って、非拘束部41つまり上型強圧プレート43の切り欠き部42に向けて流れ易い。このため、上側金属板11はゲート部用凹部50に沿って円滑に膨出し、下側金属板12はゲート部用凹部50に沿って円滑に圧接して行く。
【0033】
次いで、図6に示すように、媒体の供給を継続すると、上側金属板11のゲート部用凹部50に沿う膨出は、成形用凹部23、24に位置する金属板11、12の間にまで達する。一方、下側金属板12も、媒体の内圧によって、下型22の係合用凹部45に合致するように膨出する。これにより、媒体注入通路をなすゲート部51の形成が完成する。ゲート部51が形成された金属板11、12は、図8(A)に示される。
【0034】
ゲート部51が完成すると、成形用凹部23、24に位置する金属板11、12の間に内圧がかかり始める。上下の金属板11、12は、外周縁部以外の部位において、膨出成形が開始される。膨出成形が始まると、外周縁部から内方に向けて材料の流入が始まる。膨出成形が始まっても、ノズル30の周辺の金属板11、12は、上型強圧プレート43の圧接、媒体から作用される内圧P、型内面に対する凹凸嵌合および型内面との間の摩擦により、ノズル30の中心軸に向かう方向の拘束力が発生する。これにより下側金属板12における貫通孔13周辺の変形が抑制され、貫通孔13の内周端面13aがノズル30の外周面に圧接し、内周端面13aとノズル30との間からの媒体の漏れが防止される(端面液漏れの防止)。また、金属板11、12の型内面に対する凹凸嵌合により、ノズル30周辺からの材料の供給が抑制され、さらに、内圧Pによって金属板11、12と型内面との間に発生する板押さえ力によって、媒体の漏れが防止される(面圧液漏れ防止)。
【0035】
ハイドロフォーム成形終了時には、図1(B)に示すように、上側金属板11は成形用凹部23の内面形状に合致した形状に成形され、下側金属板12は成形用凹部24の内面形状に合致した形状に成形される。そして、媒体の注入を終了し、上下型21、22を開いて成形品Wを取り出すと、一連のハイドロフォーム成形が完了する。ハイドロフォーム成形が完了した金属板11、12は、図8(B)に示される。その後、トリミングなどを施し、最終的な製品を得る。
【0036】
上述したように、本実施形態は、内圧を付加するための媒体を供給するノズル30を成形用凹部23、24の外側に位置する金属板11、12の間に形成される媒体供給空間14に一方の金属板12を貫通して臨ませ、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板11、12のうち一部に媒体供給空間14に連通する非拘束部41を残しつつ他の部位を拘束するように型締めし、非拘束部41から成形用凹部23、24に位置する金属板11、12の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部51をノズル30から供給された媒体の圧力によって形成するようにしたハイドロフォーム成形方法およびこれを具現化した形成装置であるので、ノズル30から供給された媒体の漏れを防止して、金属板11、12の間にかける内圧を上昇でき、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることが可能となる。
【0037】
ゲート部を予備成形した従来工法および装置では内圧を150bar以下にまでしか上昇できないが、本実施形態の工法および装置によれば、媒体の漏れを防止できるので、内圧を1000barにまで上昇できる。このように内圧を高めて重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることができるので、比較的大物の自動車部品、例えば、サスペンション、メンバ部材、車両骨格部品などをハイドロフォーム成形することができ、軽量化と高剛性化とを両立させた自動車部品を製造することが可能となる。
【0038】
また、ゲート部を予備成形した場合には、予備成形時のばらつきに起因して、金属板の型内面への密着性にばらつきが発生し、媒体の漏れが生じる虞がある。これに対して、ゲート部の予備成形を廃止し、供給された媒体の圧力によってゲート部51を成形する手法による本実施形態によれば、金属板11、12の型内面への密着性にばらつきが発生しない。この観点からも、媒体の漏れを一層防止でき、金属板11、12の間にかける内圧を一層上昇でき、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることが可能となる。ゲート部の予備成形を廃止したので、予備成形に伴なう工数を削減でき、製造コストの低減に寄与することが可能となる。
【0039】
さらに、媒体供給空間14は、重なり合った金属板11、12の間に一方の金属板12を貫通してノズル30を進出させるのに伴って形成されるので、媒体供給空間14をなす膨出部を金属板11に予備成形する必要がなく、予備成形に伴なう工数を削減でき、製造コストの低減に寄与することが可能となる。
【0040】
さらに、重なり合った金属板11、12のうちの前記他の部位は、型内面に形成した係合用の凹凸部44、45により拘束されるので、拘束力をさらに高めて媒体の漏れをより一層防止でき、金属板11、12の間にかける内圧をより一層上昇でき、重ね合わせ板材に大きな変形を生じさせることが可能となる。
【0041】
なお、重ね合わせ板材は、図示例のように同じ大きさの2枚の金属板11、12を重ね合わせる場合に限定されず、3枚以上の金属板を重ね合わせたもの、成形品の一部分の剛性を高めるために小さい金属板が接合されたものなども含まれる。
【0042】
また、重なり合った金属板11、12の間に下側金属板12を貫通してノズル30を進出させるのに伴って媒体供給空間14を形成する形態を示したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。例えば、貫通孔13に臨む位置において上側金属板11を予め凸形状にプレフォームし、媒体供給空間14を予め形成しておく形態でもよい。この形態でも、ゲート部51は予め存在しないので、媒体供給空間14の周辺を十分な力で拘束でき、媒体の漏れを防止できる。
【0043】
また、ノズル30を、下型22の分割面から突出する位置と分割面から退避する位置との間で進退移動自在に設け、型締めした後にノズル30を移動させ、媒体供給空間14を形成する形態でもよい。
【0044】
また、拘束手段40として上型21とは別体の上型強圧プレート43を例示したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。例えば、上型21の分割面を、上型強圧プレート43を取り付けたときと同様の形状に形成し、媒体供給空間14の周辺に位置する重なり合った金属板のうち、一部に媒体供給空間14に連通する非拘束部41を残しつつ他の部位を拘束してもよい。
【0045】
また、係合用の凸部44および凹部45は、図示した断面波形状に限られず、断面矩形形状や断面台形形状などの適宜の形状を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)(B)は、本発明の実施形態に係る重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置の要部を示す断面図であり、図1(A)は、重ね合わせ板材を型締めしたハイドロフォーム成形開始時の状態を示し、図1(B)は、ハイドロフォーム成形終了時の状態を示している。
【図2】 図2(A)は、図1に示される上型の分割面の要部を示す平面図、図2(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う上下型の断面図である。
【図3】 図3(A)は、図1に示される下型の分割面の要部を示す平面図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う上下型の断面図である。
【図4】 図4(A)(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う上下型21、22の断面図に相当し、図4(A)は、開いた上下型21、22内に重ね合わせた金属板11、12を入れた状態を示す断面図、図4(B)は、型締めした状態を示す断面図である。
【図5】 図5(A)(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う上下型の断面図に相当し、図5(A)は、型締めした状態を示す断面図、図5(B)は、ノズルから媒体を供給し始め、上側金属板が膨出を開始した状態を示す断面図である。
【図6】 図6は、図2(A)の2B−2B線に沿う上下型の断面図に相当し、ノズルから媒体を供給し続けて、上側金属板がさらに膨出するとともに下側金属板が下型に圧接した状態を示す断面図である。
【図7】 図7(A)(B)は、重ね合わせた金属板の工程ごとの変化の状態を概念的に示す図であり、図7(A)は、ハイドロフォーム成形を開始する前、図7(B)は、型締めしたときの状態をそれぞれ示している。
【図8】 図8(A)(B)は、重ね合わせた金属板の工程ごとの変化の状態を概念的に示す図であり、図8(A)は、ゲート部が形成されたとき、図8(B)は、成形用凹部に位置する金属板が膨出したときの状態をそれぞれ示している。
【符号の説明】
10…ハイドロフォーム成形装置
11、12…重ね合わせた金属板
11…上側金属板
12…下側金属板(一方の金属板)
13…貫通孔
14…媒体供給空間
21…上型(型)
22…下型(型)
23、24…成形用凹部
30…ノズル
31…圧力供給装置
40…拘束手段
41…非拘束部
42…切り欠き部
43…上型強圧プレート(拘束手段)
44、45…係合用凹凸部(凹凸部)
50…ゲート部用凹部
51…ゲート部
P…内圧
W…成形品
Claims (6)
- 成形用凹部を備える型内に重ね合わせた金属板を入れ、前記金属板の間に内圧をかけて、前記成形用凹部の形状に合致した成形品を成形する重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法において、
前記内圧を付加するための媒体を供給するノズルを、前記成形用凹部の外側に位置する前記金属板の間に形成される媒体供給空間に一方の金属板を貫通して臨ませ、
前記媒体供給空間の周辺に位置する重なり合った前記金属板のうち、一部に前記媒体供給空間に連通する非拘束部を残しつつ他の部位を拘束するように型締めし、
前記非拘束部から前記成形用凹部に位置する前記金属板の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部を、前記ノズルから供給された媒体の圧力によって形成するようにしたことを特徴とする重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法。 - 前記媒体供給空間は、重なり合った前記金属板の間に前記一方の金属板を貫通して前記ノズルを進出させるのに伴って形成されることを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法。
- 重なり合った前記金属板のうちの前記他の部位は、前記型の内面に形成した凹凸部により拘束されることを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形方法。
- 成形用凹部を備える型内に重ね合わせた金属板を入れ、前記金属板の間に内圧をかけて、前記成形用凹部の形状に合致した成形品を成形する重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置において、
前記成形用凹部の外側に位置する前記金属板の間に形成される媒体供給空間に一方の金属板を貫通して臨み、前記内圧を付加するための媒体を供給するノズルと、
前記媒体供給空間の周辺に位置する重なり合った前記金属板のうち、一部に前記媒体供給空間に連通する非拘束部を残しつつ他の部位を拘束する拘束手段と、
前記型の内面に形成され、前記非拘束部から前記成形用凹部に至るゲート部用凹部と、を有してなり、
前記ノズルから供給された媒体の圧力によって前記金属板を前記ゲート部用凹部に膨出させ、前記非拘束部から前記成形用凹部に位置する前記金属板の間にまで至る媒体注入通路をなすゲート部を形成するようにしたことを特徴とする重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置。 - 前記ノズルは、重なり合った前記金属板の間に前記一方の金属板を貫通して進出し、当該ノズルの進出に伴って前記媒体供給空間が形成されることを特徴とする請求項4に記載の重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置。
- 前記型の内面は、重なり合った前記金属板のうちの前記他の部位を拘束する位置に対応して、凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の重ね合わせ板材のハイドロフォーム成形装置。
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