JP4006192B2 - 虹彩認識システム及び方法 - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、虹彩同定システム、及び虹彩イメージを用いることによって生体の同一性を確認する方法に関する。より詳しくは、本発明は、虹彩繊維構造、自律神経環(ANW)及び瞳孔の形状並びに光に対するその自発反応、並びに虹彩イメージからのくぼみの存在、形状及び位置に関する1以上の同定パラメータを測定することによる虹彩同定法に関する。
【0002】
背景技術
特定の人間を同定するための公知の虹彩同定システムは、比較の結果にしたがって特定の人間を許容又は拒絶するために、人間の眼からとった虹彩部分のイメージ信号からの虹彩コードを、データベースから検索した対応する虹彩情報と比較する。この従来の虹彩同定システムは、しかしながら、許容し得る高レベルの同定の正確性には達していない。
【0003】
更に、種々の虹彩同定システムは、生存する人間の真の虹彩を観察しているかどうかを識別する点で制限を有しているので、捏造された虹彩イメージを誤って同定する高いリスクのために、バンキングシステム、電子決算システムなどのようなシステムと共に安全に用いることはできない。
【0004】
発明の概要
本発明の目的は、高レベルの正確性を有する虹彩認識システムを用いて個人の同一性を確認することである。
他の目的は、虹彩に関連する多数の特性の分析によって、高いレベルの同定の正確性を達成することである。
【0005】
したがつて、本発明の一つの目的は、虹彩イメージ、光によって生起する瞳孔及び自律神経環の反応、自律神経環及び瞳孔の形状、並びにくぼみの存在、位置及び形状から得ることのできる虹彩繊維構造にしたがった複数の虹彩同定パラメータを測定することによって、生体の虹彩を迅速且つ明確に同定することである。
【0006】
本発明にしたがって虹彩走査により生存動物の同一性を確認するためのシステムは、生存動物を同定する同定情報を受容するための制御ユニット、及び、同定情報と比較するための同定可能な生体に関係する予め定められた個人情報を包含するための、制御ユニットによってアクセスされるデータベースを含むデータ蓄積ユニットを含む。カメラを含む虹彩イメージピックアップユニットは、同定情報が予め定められた情報に対応する場合に、まず虹彩イメージを取り込んで入力イメージ信号を生成させるために制御ユニットによって操作される。データ処理ユニットは、入力イメージ信号を処理データに予備処理する。蓄積ユニットは、それぞれの同定可能な生体に関して、(1)周波数変換法を用いた虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態、(2)瞳孔反応、(3)瞳孔の形状、(4)自律神経環反応、(5)自律神経環の形状、(6)くぼみの存在、(7)くぼみの位置、及び(8)くぼみの形状、からなる群から選択される、予め蓄積された虹彩同定のための複数のパラメータのうちの少なくとも一つを含む。制御ユニットは、処理されたデータとパラメータとを比較して、同一性が確認されたことを示す一致性があるかどうかを測定するように操作することができる。
【0007】
本発明の好ましい態様によれば、カメラは、生存動物の両方の眼を撮影するように形成されている。データ処理ユニットは、イメージ入力信号を、それぞれの眼を表す処理データに別々に処理する。この方法においては、虹彩走査によって生存動物の同一性を確認するためのより高いレベルの同定正確性が得られる。
【0008】
同定システムにアクセスするためには、まず同定される生体が同定情報をシステム中入力する。ある態様においては、同定情報データは、PIN(個人同定番号)又は幾つかの他の独特の同定情報を用いてシステムにアクセスする、カード読み取りユニット、キー入力ユニットなどを用いて入力することができる。また、音声始動システムを用いることもできる。
【0009】
虹彩イメージピックアップユニットは、好ましくは、カメラと連動して制御ユニットによって操作され、連続して複数の虹彩イメージを取り込んで入力イメージ信号を生成させるための光源を含む。眼を照射することによって、虹彩が収縮することが認められ、したがって、連続イメージによって、システムが虹彩の収縮、及び所望の場合には引き続く虹彩の膨張を取り込むことが可能になる。光源は、好ましくは赤外光源である。
【0010】
本発明の他の独特の特徴によれば、システムは、位置決めデータに翻訳されたユーザーの体格の特性を含むデータベース中の予め定められた個人情報にアクセスすることに基づいて、カメラをユーザーの眼と自動的に整列させることを可能にするための、虹彩イメージピックアップユニットと制御ユニットとのインターフェースを有することを特徴とする。
【0011】
上記に記載したように、システムは、好ましくは、虹彩特性に帰することのできる異なるパラメータを分析する能力を有する。しかしながら、本発明は、上記記載のプロセスパラメータ又は全パラメータセット以下のプロセスパラメータのサブセットの一つのみをスクリーニング及び分析することによって、ユーザーの同一性を確認するように操作することができる。
【0012】
虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態を分析するために用いられる独特の方法は、好ましくは、Haar変換を用いる周波数変換法を含む。現在のところ好ましい態様によれば、本発明は、Haar変換関数を用いてスペクトル変換の可変マルチセクターシステムを与える。この独特の方法によれば、虹彩イメージの選択された一つを、複数のセクターに分割し、それぞれのセクターに関して多数のHaar関数係数を算出する。このスペクトル分析のマルチセクターシステムによって、有利に、例えば、瞼、睫などによる欠陥又は干渉の存在によって引き起こされる干渉によって歪曲される虹彩のあるセクターを排除することが可能になる。これらの欠陥は、高い周波数係数の生成及び隣接するセクターの係数との間の予め定められた鋭利な変動によって明確にされる。したがって、隣接するセクターごとの分析によって、Haar変換を虹彩認識技術に適用することが可能になる。
【0013】
Haar変換を用いると、選択された低周波数ゾーンを表すHaar係数を選択することと好ましく組み合わせて、先例のない高いレベルの認識正確性を有する虹彩参照記録を生成することが可能である。
【0014】
本発明は、一態様においては、連続した一連の虹彩イメージを用いて、時間当たりの虹彩の収縮及び膨張を示す瞳孔ヒストグラムを生成し、これを曲線によって表すピュピログラム(pupillogram)を生成する。本発明は、同定正確性を向上させるための更なる手段としてその勾配変化を分析することにより、ピュピログラムを分析するための新規な技術を提供する。本発明は、また、同定正確性を向上させるための更なる手段として瞳孔の境界、形状及び位置を分析することを特徴とする。
【0015】
本発明は、また、自律神経環の形状及び反応、並びに存在する場合には、同定正確性を向上させるための更なる手段として、くぼみの存在、位置及び形状に関する情報を処理する。
【0016】
本発明は、また、システムのための上述の虹彩同定パラメータを分析することを意図し且つそれを可能にし、これを虹彩同定以外に用いる。例えば、ドラッグ又はアルコールの存在又は使用に関して個人を試験するためのシステムを形成することも本発明の範囲内である。すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
1.人間内のドラッグ又はアルコールの存在に関して試験するためのシステムであって、以下の要素:
(a)生存動物を同定する同定情報を受容するための制御ユニット;
(b)虹彩イメージを取り込んで入力イメージ信号を生成させるための、制御ユニットによって操作されるカメラを含む虹彩イメージピックアップユニット;
(c)入力イメージ信号を処理データに予備処理するためのデータ処理ユニット;を含み、
前記制御ユニットが、前記入力イメージ信号の処理の結果として得られた処理データを、時間当たりの光刺激に応答する虹彩瞳孔の平均収縮及び膨張を表すように計算して、それによって、人間がアルコール又はドラッグに中毒している場合と人間がアルコール又はドラッグを含んでいない場合とを比較して、ピュピログラムの曲線の形状が異なっているために、処理データが現在又は過去の中毒の指標となるかどうかを決定するように操作し得る前記システム。
2.人間の体内におけるドラッグ又はアルコールの少なくとも一つの存在に関して試験するための方法であって、
(a)人間の虹彩及び瞳孔の実質的に同じ部分の複数のイメージを異なる時間において得て;
(b)前記複数のイメージを瞳孔ヒストグラムに処理し;
(c)ステップ(b)において処理された前記瞳孔ヒストグラムの特性を算出し;そして
(d)前記比較ステップ(c)に基づいて、ドラッグ又はアルコールの少なくとも一つの存在を確認する;
ステップを含むことを特徴とする前記方法。
3.前記瞳孔ヒストグラムに関連する曲線の平坦度特性が、ドラッグ及びアルコールの少なくとも一つの存在を表す上記第2項に記載の方法。
このタイプのシステムにおいては、生存動物を同定する同定情報を受容するための制御ユニット、及び同定情報と比較するために同定可能な生体に関連する予め定められた個人情報を包含するための、制御ユニットによってアクセスされるデータベースを含むデータ蓄積ユニットが与えられる。虹彩イメージピックアップユニットは、虹彩イメージを取り込み、入力イメージ信号を生成させるための、制御ユニットによって走査されるカメラを含む。データ処理ユニットは、入力イメージ信号を処理データに予備処理する。制御ユニットは、時間当たりの光刺激に応答する虹彩瞳孔の平均収縮及び膨張を表す入力イメージ信号の処理の結果として得られるデータを処理して、処理データが現在又は過去の中毒を示すかどうかを測定する。このシステムは、ピュピログラムの曲線の形状が、人間がアルコール又はドラッグに中毒している場合に、人間がアルコール又はドラッグを含んでいない場合の曲線の形状と比較して異なるという発見に基づいている。
【0017】
生存動物の同一性を確認するか、又は人間の体内のドラッグ及びアルコールの少なくとも一つの存在を試験するための方法もまた、上記に記載したような虹彩同定パラメータを特別に選択することに基づいて、本発明により提供される。
本発明の更に他の目的及び有利性は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなるであろう。以下の説明においては、本発明の好ましい態様のみが、発明の実施が意図されるベストモードを単に示すものとして示され記載されている。認識されるように、本発明は、他の異なる態様が可能であり、その幾つかの詳細は、発明から逸脱することなく、種々の明らかな特徴において修正を加えることが可能である。したがって、図面及び説明は、例示のものとしてみなされるべきであり、制限するものではない。
【0018】
図面の詳細な説明図1Aは、本発明による生体の虹彩を同定するためのシステム14のブロックダイヤグラムである。生体は、人間及び動物をはじめとする、同定のための虹彩を有する生存動物を包含する。システム14は、好ましくは、カードの情報記録メディアにアクセスすることによって、個人カード番号を蓄積しているカード上に記録された情報を読み取り且つ同定するカード読み取りユニット40を含む。PINを入力するための複数のキーを有するキー入力ユニット50は、それぞれのキー入力に対応した電気信号を生成する。虹彩イメージピックアップユニット20は、特定の制御信号の予め定められた順番に従って自動的に連続して点滅して、オートフォーカス機能を有するカメラが、数秒の間、(例えば、1秒間に25フレーム以上を生成する速度で)虹彩の動的イメージを取り込むことを可能にする複数の光源を有する。駆動ユニット30は、モニタを用いて特定の制御信号を供給することによって虹彩イメージピックアップユニット20を駆動し、カメラ位置の照明及び調節動作を行なわせる。
【0019】
データ処理ユニット60は、虹彩イメージピックアップユニット20によって取り込まれた入力イメージ信号を予備処理する。データ蓄積ユニット80は、それぞれの人間の個人カード番号又はPINにそれぞれ関連した、(1)個々の虹彩のイメージ信号から抽出し得る虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態;(2)光に応答する自律神経環(ANW)の動き;(3)光に応答する瞳孔の動き;(4)ANWの形状;(5)瞳孔の形状;(6)くぼみの存在、位置及び形状;を含む、複数の同定パラメータを蓄積するためのデータベースを形成する。制御ユニット70は、カード読み取りユニット又はキー入力ユニットによって入力されたか又は読み取られたカード番号又はPINに関してデータベースを検索し、動的虹彩イメージを獲得し、カメラの位置を個人情報に基づいて自動的に調節し、イメージ信号からユーザーの同一性を確認するために複数の虹彩同定パラメータを測定することによって、ユーザーの同一性を確認することにより、特定の人間に関する虹彩を識別する。この場合においては、特定の人間に関する虹彩情報だけでなく、それぞれの人間に関する更なる情報(例えば、虹彩イメージを取り込む際のカメラ高さ、或いはそれぞれの人間に対する最も適切なカメラ高さに直接関係する個人の身長の情報)をデータ蓄積ユニット80に蓄積しておく。そして、ユニット80から上記更なる情報を読み取ることによって、カメラ高さを自動的に調節することを可能にすることができる。
【0020】
図1Bは、図1Aの虹彩イメージピックアップユニット20の例示を示す双眼カメラ及び照明システムの一部の側面斜視図である。虹彩イメージピックアップユニット20は、カメラ16、及び、虹彩のイメージを取り込むために要求される位置の複数の第1及び第2のレンズ11及び12を有する。オートフォーカスのための可変取り込みゾーン(フレックスゾーン)を有するカメラ16を用いることが好ましい。更に、ユーザーの瞼、睫の動き及び瞬きの結果としてオートフォーカス機能の低下を防ぐために、5mmよりも大きな焦点深さを有する第2のレンズ12を用いることが好ましい。第1及び第2のレンズ11,12は、好ましくは、それぞれの眼に関して与えられる。
【0021】
虹彩イメージピックアップユニット20は、更に、図1Bの虹彩イメージピックアップユニット20と関連してユーザーの眼をカメラの中心部分に固定することによって、虹彩が一つの側に偏るのを防ぐための視野誘導ユニット18(図2〜図4を参照)を有する。更に、ある態様においては、初期オートフォーカス及び輝度の調節のための側部光源を用いることができる。図2は、視野ポインターを示すための図1Bからの参照図であり、図3は、図2の視野ポインターを詳細に示すものである。図4は、視野誘導光源L4からの光をユーザーの眼に反射するという図2における視野ポインターの操作を説明するための参照図である。
【0022】
図2〜4において示されるように、視野誘導ユニットは、ユーザーの視野を誘導するための淡い青色又は赤色の光を発光する誘導光源L4(参照番号17でも示される)から構成することができる。反射ユニット18bは、光源17からの光をカメラ16の中心部分から反射し、支持ユニット18aは、反射ユニットをレンズの中心に整列させて支持する。この場合、支持ユニット18aは、好ましくは、レンズの中心に配置された場合であっても虹彩イメージに影響を与えることを防ぐように、透明なガラス様の材料で構成される。反射ユニット18bは、視野誘導光源L4からの光をユーザーの眼に反射するように、一定の傾斜を有する反射面を有する。
【0023】
図5は、図1Bの第2のレンズ12の正面図である。第2のレンズの正面12のある配置においては、瞳孔及びANWの動き(即ち収縮及び膨張)を刺激するフラッシュ光源L3(12b)が与えられる。複数の赤外光源L2(12a)が、レンズ12の周縁にそって環状又は輪状の配列で配置されており、ソフトウェアによって、カメラ16が虹彩イメージ及び明澄な瞳孔イメージを取り込むことができるように制御されている。フラッシュ光源12bは、好ましくは、ソフトウェアによって短いサイクルで自動的に発光するように制御された青色のダイオードである。
【0024】
図6は、コンピュータ制御によって行なわれる虹彩イメージピックアップユニット20によるイメージ信号の取り込みの例のフローチャートである。調節ステップS61においては、カード番号又はPINに基づいてデータベースから検索される個人情報を用いることによってカメラ位置(高さ)が調節され、複数の光源(12a及び17)が、オートフォーカスのために同時にONに切り替えられて、ユーザーの眼を対物レンズに引き付ける。ステップS62においては、発光する光源17を用いることによって、ユーザーの眼が対物レンズに誘導される。カメラのオートフォーカスがステップS63において行なわれる。ステップS67においては、動いているANW及び瞳孔の動的イメージが、虹彩の瞳孔及びANWの動きを誘導する短いサイクルでの光源12bの発光(S66)によって数秒間獲得される。ステップS68においては、上述のステップS61〜S68の後に、全ての発光している光源が消される。
【0025】
図7は、図6のステップS61におけるカメラ高さの調節の詳細のフローチャートである。フローチャートは、以下のステップを包含する:カード番号又はPINを入力する(S71);入力されたカード番号又はPINについてデータベースを検索することによって、対応する個人のカメラ高さに関する情報を獲得する(S72);カメラ高さの獲得された情報をカメラの現在の高さの情報と比較した後に、モータを前進又は逆進方向に回転させる(S73)ことによって対応する個人に好適なカメラ高さを調節する。
【0026】
図8は、本発明の一態様に従って虹彩分析を行なうために必要な入力虹彩信号の選択ゾーン(x)を説明するための虹彩イメージの例示である。虹彩を分析するために選択されるべきゾーンは、ANW10bの少なくとも一部及び全瞳孔10aを含んでいなければならない。更に、選択ゾーン(x)は、好ましくは、明確に視認され、瞼、睫等によって影響されない部分であり、虹彩直径の1/3よりも大きく1/2よりも小さい範囲内に設定される。
【0027】
図16は、以下により詳細に説明するような、本発明の好ましい態様におけるスペクトル分析の可変マルチセクターシステムを用いた虹彩イメージ分析の例示である。スペクトル分析の可変マルチセクターシステムによって、虹彩の視認部分の選択を、分析のために、干渉によって歪曲されないようにして、同定プロセスの信頼性を向上させることが可能になる。眼の口径(すなわち、眼の開いている部分)の解剖学的特徴を同定する一方、瞼の膨らみを排除することが可能である。前もって近似させることが殆ど不可能である端縁による欠陥又は干渉、即ちグレアを、排除することが可能である。
【0028】
図9は、本発明の全虹彩同定法を説明するための高レベルフローチャートであり、図10A〜10Cは、図9の高レベルフローチャートのステップの詳細な一連のフローチャートである。
【0029】
図10A〜10Cにおいて示されるように、本発明による虹彩同定法においては、以下のプロセスの一つ以上を包含させることによって種々の態様を認識することができる。第1に、カード番号又はPIN確認プロセスS101〜S103によって、データベースから対応する番号に従う個人情報を検索し取得することによって、ユーザーの同一性が確かめられる。カード番号又はPINを入力した後、イメージ獲得プロセスS104〜S105により、確認プロセス中に得られたユーザーの個人情報に従ってカメラ位置を調節し、複数の光源を制御することによって、動的虹彩イメージが獲得される。
【0030】
本発明によって取得し且つ分析することができる異なる同定パラメータについて、以下に説明する。
【0031】
虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態
虹彩繊維構造確認プロセスS106〜S110を用いて、上述のプロセス中に獲得された選択された静止虹彩イメージのWavelet変換によって虹彩分析に適したゾーンのイメージ信号を変換することによって同定パラメータを測定した後に、対応する同定パラメータによってユーザーの同一性が確かめられる。スペクトル分析の可変マルチセクターシステムに関して以下に説明するように、変換は、図8のゾーン又は図16の個々のセクターに適用することができる。
【0032】
本発明の一態様においては、虹彩構造確認プロセスは、ステップS106、S107(図10A)において、虹彩イメージの動的信号を予備処理することによって、虹彩イメージ分析に適したゾーン(選択ゾーンx;実質的にANWの一部及び全瞳孔を含み、虹彩直径の1/3よりも大きく1/2よりも小さい範囲内)を選択し;ステップS108において、二次元Wavelet変換(例えば、Haar変換のようなWavelet変換)によって選択されたゾーンの選択された静止イメージ信号を変換した後に虹彩繊維構造密度及びテキスチャー形態に関する特殊化された情報を表すWavelet変換係数同定パラメータを測定し;ステップS109、S110によって、データベースから対応するパラメータを検索することによってユーザーの同一性を確認する;工程から構成することができる。
【0033】
Wavelet変換
概して、虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態は人間毎に異なる。主として低周波数ゾーンにおける密度に関する情報を含むWavelet変換(特に、Haar変換のようなWavelet変換)を行なうと、特に、二次元Haar変換係数の低周波数成分は、虹彩繊維密度及びテキスチャー形態の殆どの情報を有する。
【0034】
低周波数成分は、上記したように選択された虹彩イメージ信号に関してWavelet変換を行ない、周波数特性を測定し、周波数特性を示す二次元Haar変換の選択された低周波数係数を同定パラメータとして決定することによって、虹彩繊維密度及びテキスチャー形態の殆どの情報を有するように選択される。
本発明においてこのように適用されるHaar変換は、対称で、分離可能で、単一であり、寸法(スケール)及び位置によって変動する以下のHaar関数を用いる。
【0035】
Haar関数は、以下のように定義される。
【数1】
【0036】
スペクトル分析アルゴリズムを簡単にするために、好ましい態様は、標準化ファクター2−m/2を無視する。したがって、上記関数の定義は次のようになる。
【数2】
【0037】
この関数は、また、シグナムHaar関数と呼ばれる。シグナムHaar関数では、後述するように、関数の二進数がリスティングにおける関数の次数を決定する。本発明において、実際のHaar変換を測定する場合には、大きなサイズのイメージのために膨大な計算となる。しかしながら、コンピュータ計算時間は、変換フローグラフのバタフライ構造によって大きく向上する。
【0038】
シグナムHaar関数による迅速なスペクトル変換アルゴリズムをグラフで示したものを図15に示す(ここではn=8である)。
シグナムHaar関数のスペクトル変換アルゴリズムを演算実行すると、その変換フローグラフは図15に示すようなリスト化されたバタフライ構造で表される。この図中で、H(001),H(010),・・・のように「H(二進数)」と表記されるのがリスティングであり、また、括弧内の二進数、001,010,・・・が関数の次数を決定している要素である。例えば、H(001)は変換フローグラフの一次のリスティングであり、H(010)は変換フローグラフの二次のリスティングを表す。グラフの縦軸に沿って記述されているP0〜P7は、上記n=8に対応して変換されるピクセル値を示す。
【0039】
このフローグラフにおいて、右に向かって進行するそれぞれの連続レベルに関する値は、以下の式に基づく先の値による。
【数3】
式中、m=n+1であり、X[n]はピクセルnの明度、x[n]はピクセルnの明度を求めるための入力である。
【0040】
変換フローグラフのバタフライ構造を用いる結果として、Haar関数によるスペクトル変換プログラムは、従来の方法よりも200倍早く操作される。
【0041】
可変マルチセクター分析
Haar関数を用いたスペクトル分析の可変マルチセクターシステムを以下に説明する。可変マルチセクターシステムは、好ましくは図8に関して上記したゾーン選択法の全体に亙って行なわれる。時折、グレアの形成、瞼及び睫における干渉が虹彩のセクション内で起こるか、或いは虹彩の大きな可視部分が分析のために利用できない場合がある。虹彩の部分が干渉を受けたり利用できないことにより、比較のために利用できるセクターの数が減少し、それによって人間同定の信頼性が低下する。
【0042】
イメージ分析は、虹彩イメージを、図16に示すように、外側環100及び瞳孔120を含む内側環状ゾーンも分割することによって開始される。環状ゾーンから外側内部及び外部環100を分割する境界は、虹彩の基点から50ピクセルの距離に設定される。50ピクセルよりも大きいか又は小さい値は、更なる態様において用いることができる。外側環の外側境界は、ほぼ鞏膜と虹彩の境界において始まる。外側環の直径は、個人間で異なる虹彩寸法、虹彩イメージを得る異なる範囲などのような多くのファクターのために変化する可能性がある。外側環100に対応する虹彩の部分と、瞳孔120と外側環100との間の領域110とは、異なる速度で収縮及び膨張するので、内側及び外側環に関して異なる標準化ファクターが用いられる。
【0043】
現在好ましい態様においては、それぞれの領域100、110を、次に、好ましくは等しい寸法の16のセクターに、即ち、合計で参照記号I0〜I31によって示される全部で32のセクターに更に分割する。32セクターI0〜I31のそれぞれに関して、上記記載のようにWavelet変換を用いて1,024Haar関数係数を算出して、32×32のマトリクスを形成する。しかしながら、すべてのゾーンにおけるセクターの全数(n+p)、それぞれの個々のゾーンにおけるセクターの数(n,p)、セクターの寸法及びHaar関数係数の数を変化させてもよいことは、本発明の範囲内である。即ち、それぞれのゾーンは、異なる数のセクター(n,p)を有していてよく、即ち、領域110は、放射状に10のセクターに分割することができ(p=10)、一方外側環100は、放射状に16のセクターに分割される(n=16)。
【0044】
次に、概して、それぞれ下瞼及び上瞼に関して参照記号13A及び13Bによって示される瞼又は睫によって邪魔されるか又は干渉されるセクターは、隣接セクター係数比較によって拒絶される。隣接するセクター係数を比較することによって、高周波数係数の鋭利な変動が観察された場合には、そのセクターは欠陥として拒絶される。図16を参照すると、セクター比較は、セクター0を15から、及びセクター7を8から分割する水平線において始まる四つのセクターの群について行なわれ、時計方向又は時計の逆方向に、隣接するセクターについて進行する。この方法においては、セクターI0〜I3,I7〜I4,I8〜I11及びI15〜I12が比較される。
【0045】
例えば、セクターI0及びI1における高周波数係数が比較され、差が、予め定められたセクター高周波数係数しきい値を超えない場合には、セクターI1は良好として認識される。セクターI0は、良好として認識されるか、或いは、瞼によって閉じられた場合には瞳孔の分析中に拒絶される。次に、セクターI1及びI2の係数が比較され、図16において示されるように、瞼の境界はセクターI2に位置している。セクターI2における境界は、セクター高周波数係数しきい値を超える差を引き起こし、セクターI2は拒絶される。セクターI2を拒絶した後、セクターI3も同様に拒絶される。同様のプロセスを、残りの四分円のセクターに関して繰り返す。
【0046】
分析から拒絶されたセクターを除去した後、完全な1,024Haar係数のサブセットを選択する。選択される係数の数は、種々のファクターによって決定される。係数が不必要に多すぎると、データベースのサイズが増大し、係数が少なすぎると、認識の質が低下する。更に、幾つかの係数は、イメージの輝度の変化と共に変化しており、また幾つかの高周波数係数は多すぎるノイズを含んでいるので、選択しない。実験の結果、好ましい態様は、1,024Haar係数の32×32マトリクスから選択された31の係数を用いる。選択された係数の特定のマトリクス位置は、次のものである:(0,1),(1,0),(1,1),(0,2),(0,3),(2,0),(3,0),(1,2),(1,3),(2,1),(3,1),(0,4),(0,5),(0,6),(0,7),(4,0),(5,0),(6,0),(7,0),(1,4),(1,5),(1,6),(1,7),(4,1),(5,1),(6,1),(7,1),(2,2),(3,2),(2,3)及び(3,3)。異なる態様においてはより多いか又はより少ない数の係数を用いることができる。
【0047】
32のセクターI0〜I31のそれぞれから31の係数を選択することによって、大きさが約1キロバイトの虹彩参照記録を生成することができる。記録の最初の32ビットは、セクター拒絶分析結果を含む。
【0048】
同定される新しい虹彩イメージを、上記の参照イメージと同様の方法で処理する。得られる特性記録を、データベース中に記録されているすべての虹彩参照記録と比較する。入力と参照虹彩係数との間の差の合計を、セクター毎に算出する。合計の値は、係数標準化がしてあるために、0〜2の範囲内に入る。1の合計値は絶対的にグレーなイメージを表し、0はセクタースペクトルの完全な一致を示し、2は同等のモジュールであるが反対の符号のスペクトルを表す。
【0049】
直接的な実験の結果、幾つかのセクターは、虹彩の蠕動(虹彩の幾つかの領域の迅速な無意識の動き)のために参照セクターと異なることが分かった。したがって、合計値が1未満のセクターのみが虹彩イメージ分析において好ましく用いられる。この方法においては、蠕動によって害されたセクターは、拒絶されたセクターに加えられ、認識作業からは排除される。虹彩イメージ分析において用いられるセクターの最小数は、それぞれの眼に関して10である。認識の質を対応して低下させれば、これよりも少ないセクターを用いることができる。差を強調するために、セクター係数の比較の結果を掛け合わせる。したがって、同定するイメージが参照イメージと一致する場合には、得られる値は0に近くなる。これに対して、異なるイメージが導く値は数百〜数千の範囲内である。
【0050】
低周波数スペクトル係数は、虹彩繊維構造の密度及びテキスチャー形態に関する多くの情報を含んでいるので、Haar変換の結果から実験的に選択された低周波数ゾーンの係数を同定のために利用する。
【0051】
自律神経環及び瞳孔反応
図10Bの瞳孔及びANW反応確認プロセスS111〜S116により、獲得された虹彩の動的イメージから瞳孔及びANWを検出することによって、対応する同定パラメータによってユーザーの同一性が確かめられる。次に、検出された動的イメージ信号からの瞳孔及びANWの動的反応(収縮及び膨張)を用いて同定パラメータを測定する。
【0052】
更に、本発明の一態様においては、瞳孔及びANW反応確認プロセスは、以下の工程から構成することができる:虹彩の獲得された動的イメージの中心部分をコンピュータ処理することによって瞳孔ゾーンを検出し(図10BのS111、S112);ANWのゾーンをコンピュータ処理し(S113);検出されたゾーンにおける動く瞳孔及びANWの反応(膨張又は収縮)時間をコンピュータ算出した後に、生存瞳孔及びANWをそれぞれ認識するための同定パラメータを測定し(S114);データベースから対応するパラメータを検索することによってユーザーの同一性を確かめる。
【0053】
図11は、一定の角度θにおける瞳孔10a及びANW10bの動きを説明するための虹彩10cの例示イメージであり、図12は、時間変動に伴う一次元データにおいて変換された、平均瞳孔半径R1、一定の角度θにおける瞳孔半径R2、及び一定の角度θにおけるANWの半径R3を示すグラフである。グラフにおいて、第1の時間「t1」はフラッシュ光源の操作時間を表し、第2の時間「t2」はR1の収縮の開始時間を表し、第3の時間「t3」は平均瞳孔半径が最小の時間を表し、第4の時間「t4」は瞳孔半径が一定の角度θにおいて最小の時間を表し、第5の時間「t5」はANWの半径が一定の角度θにおいて最小の時間を表す。したがって、これらの動的イメージを比較した結果として、光に対して無意識に反応する瞳孔及びANWの反応を通して、それぞれの同定パラメータを得ることができる。
【0054】
上記の目的のために、本発明は、瞳孔が収縮する際に瞳孔半径の動きが一定の割合(例えば5%以上)を超えた場合には生体を表すと考えられる予め定められた参照値を用いる。瞳孔端もまた、瞳孔の動きを観察するために、取り込まれた虹彩動的イメージから検出されなければならない。現在のところ、対称中心検索アルゴリズムを用いることによって、虹彩のほぼ中心を決定した後に瞳孔端を検出することが可能である。
【0055】
この方法によれば、虹彩イメージをその中心で取り込むことができずに、ある程度右又は左に偏っている場合であっても、エラーを起こすことなく虹彩を同定することが可能である。
【0056】
虹彩イメージが同定するためには偏り過ぎている場合には、再度取り込むことができる。また、虹彩イメージではなく他のイメージを取り込んだ場合には、多くの場合において、真のイメージと偽のイメージとを識別することができる。
【0057】
上記記載の対称中心検索アルゴリズムにおいては、以下の関数F(i)を、イメージの水平線及び垂直線に関して得る。
【数4】
ここで、
【数5】
およびNはイメージ線の長さであり、x(i)は水平線又は垂直線のi番目のピクセルの輝度であり、i≦0の場合にはx(i)=x(0)であり、i≧0の場合にはx(i)=x(N)である。
【0058】
かかる場合においては、関数F(i)の絶対値を最小にする定義のドメイン(i)は、対称の中心に存在する。これらの方法を水平線及び垂直線に提供すると、関数F(i)の絶対値を最小にする定義のドメイン(i)が横切る点が対称の中心として設定される。水平線及び垂直線の定義のドメイン(i)が横切らずに散乱する場合、特にこれらが予め定められた範囲から偏向する場合には、これは、取り込まれたイメージが虹彩イメージではないか又は虹彩イメージが右又は左に過度に偏っていることを示し、したがって、この虹彩イメージは、更なる同定を行なう前に再び取り込まなければならない。
【0059】
動的イメージが上記の虹彩について取り込まれた場合には、瞳孔及びANWが、フラッシュ光源12bによって収縮及び膨張せしめられる。瞳孔及びANWの動きは同時には起こらず、それぞれの人間によって異なるタイプを示す。このような同時に起こらない動きから得られる瞳孔及びANW反応(図11及び12)からのパラメータが同定のために用いられる。
【0060】
図17を参照すると、ピュピログラムによって、時間T0における光のフラッシュに応答する瞳孔の平均収縮及び膨張が示される。縦軸は瞳孔の大きさ又は半径を示し、横軸はT0又は光のフラッシュの時間によって始まる時間を示す。TLは、瞳孔が光のフラッシュに応答して収縮し始める時間であり;TL−T0は瞳孔の応答の潜在時間である。ALは光のフラッシュの前の瞳孔の平均半径である。Tmは瞳孔が最小半径Amに収縮した時間である。瞳孔が収縮するための時間から潜在時間を引いた値がTm−TL又はTPである。T1及びT2は、それぞれ、動的虹彩イメージの40番目及び70番目の時間であり、A1及びA2は、時間T1及びT2における瞳孔の対応する半径である。SPは、TLとTmとの間の瞳孔収縮の速度である。DABは、TLとTmとの間の瞳孔収縮曲線にそった直線距離である。%A1は、T1における瞳孔膨張距離又はA1−Amと、平均瞳孔収縮距離又はAL−Amとの比である。%A2は、T2における瞳孔膨張距離又はA2−Amと、平均瞳孔収縮距離又はAL−Amとの比である。
【0061】
ドラッグ又はアルコールを用いている人間のピュピログラムは、ドラッグ又はアルコールを使用していない人間のピュピログラムとは異なっているので、ピュピログラムは、個人によるドラッグ及び/又はアルコールの使用を検出するのに用いることができる。ドラッグを用いている人間のピュピログラムは、瞳孔が最小半径に収縮する時間Tmが、標準時間よりもゆっくりになる。アルコールを用いている人間のピュピログラムは、アルコールを用いていない人間と比較して、より平坦になる、即ちDABがアルコールユーザーに関してはより小さくなる。また、%A1及び%A2は、アルコールユーザーに関してはより小さくなる。
【0062】
自律神経環及び瞳孔の形状
次に、ANW及び瞳孔形状確認プロセスS117〜S119により、選択された虹彩イメージからANW及び瞳孔を検出し、ANW及び瞳孔の検出された形状に従って同定パラメータを測定することによって、ユーザーの同一性を確かめる。ANW形状は、本発明において、中央軸変換を選択された虹彩イメージ信号に適用して用いることによって、独特に測定される。瞳孔形状は、本発明において、当該技術において公知のように、端検出及び曲線合致アルゴリズムを用いることによって、独特に測定される。
【0063】
自律神経環
更に、本発明のそれぞれの態様においては、ANW及び瞳孔確認プロセスは、以下の工程から構成することができる:ステップA117(図10B及び10C)により、選択された虹彩イメージ信号からANW及び瞳孔を検出し;ステップS118により、検出されたANWの二次元イメージ信号を中央軸変換によって変換し、瞳孔の形状を上記記載のように端検出及び曲線合致アルゴリズムによって変換することによってANWの形状に基づいて同定パラメータをコンピュータ算出し;ステップS119及びS120により、データベースから対応する同定パラメータを検索することによってユーザーの同一性を確かめる。
【0064】
図13は、虹彩イメージから検出された端を表すANW10b及びくぼみ10dの例示図であり、図14は、中央軸変換によって変換された一次元データでの、図13において示されるANW10b及びくぼみ10dの例示図である。特定の形状を有する対象の中央軸変換は、例えば、二点以上において対象の境界に接する円の中心の軌跡を求めることにより実行される。言い換えれば、これは、対象の境界から最も近接する点の集まりである。したがって、二次元対象を中央軸変換によって一次元データに変換することが可能であるので、これを、ANW形状及び瞳孔の形状及び位置を同定するために適用することができる。
【0065】
図18は、形状、位置及び同定パラメータを示す瞳孔及び虹彩の例示図である。瞳孔の形状は、本発明において、当該技術において公知の端検出アルゴリズムを用いて、独特に測定される。瞳孔端は、概して、図18において参照記号10aによって示される。更に、図18において参照記号10i及び10hによってそれぞれ示される虹彩及び瞳孔の中心は、幾何学的形状から測定され、同定パラメータとして用いられる。概して参照記号10jによって示される虹彩中心と瞳孔中心との間の分離方向及び距離は、同定パラメータとして用いられる。
【0066】
更に、多くの瞳孔は完全には円形の形状ではなく、多くは、楕円長軸の方向に偏差する楕円である。好ましい態様においては、瞳孔の楕円度の配向及び大きさは、本発明において、当該技術において公知の曲線及び形状合致アルゴリズムを用いて、独特に測定される。図18を参照すると、瞳孔楕円の長軸及び短軸は、それぞれ、参照記号10m及び10nによって示される。瞳孔の楕円度は、短軸10nと長軸10mとの比として表される。図18において概して参照記号10fによって示される瞳孔の周縁に沿った平坦部分、並びにそれぞれ10g及び10eによって示される瞳孔が凹んだり膨らんだりしている領域を認識及び特徴付けて、更なる同定パラメータとして認識の質を向上させることができる。
【0067】
くぼみの検出
また、くぼみ確認プロセスS121〜S127を用いて、くぼみが存在しているか否かを判断し、くぼみが存在している場合にはそのゾーンを検出し、次に、検出されたくぼみの位置及び形状に基づいて同定パラメータを測定することによって、ユーザーの同一性を確かめる。
【0068】
更に、本発明による虹彩同定法においては、図10Cに示される以下の複数の工程の少なくとも一つを含ませることによって、くぼみ確認プロセスを上記の態様に適用することができる。即ち、第1のくぼみ確認プロセスS121を行ない、次に、ステップS125〜S129により、獲得された虹彩の選択された静止イメージに基づいてくぼみが存在しているかどうかを判断することによってユーザーの同一性を確かめ、次に、くぼみが存在している場合にはくぼみのイメージ信号を中央軸変換によって変換し、変換結果からのくぼみの位置及び形状に基づいて同定パラメータを測定する。第2のくぼみ確認プロセスS122〜S124は、第1のくぼみ確認プロセスの結果としてくぼみが存在していない場合に行なわれ、参照虹彩中にくぼみが存在しているかどうかを再び判断した後に参照虹彩中にくぼみがない場合にはユーザーは許可され、逆に参照虹彩中にくぼみが存在する場合にはユーザーは拒絶される。
【0069】
更に、本発明のそれぞれの態様においては、第1のくぼみ確認プロセスは、以下の工程から構成することができる:ステップS121(図10C)により、獲得された虹彩の静止イメージ信号から虹彩イメージの端を検出することによってくぼみが存在しているか否かを判断し;判断ステップの結果としてくぼみが存在している場合には、ステップS125によりくぼみゾーンを検出し;ステップS126により、検出されたくぼみゾーンの二次元イメージ信号を中央軸変換によって変換した後にくぼみの形状及び位置に基づいて同定パラメータをコンピュータ算出し;ステップS127〜S129により、データベースから対応するパラメータを検索することによってユーザーの同一性を確かめる。
【0070】
更に、本発明のそれぞれの態様においては、第2のくぼみ確認プロセスは、以下の工程から構成することができる:ステップS121により、入力イメージ中にくぼみが存在しているかどうかを判断し;ステップS122により、入力イメージ中にくぼみが存在していない場合には参照虹彩中にくぼみが存在しているかどうかを再び判断し;ステップS123により、くぼみが参照虹彩中に存在していない場合には許可し、ステップS124により、参照虹彩中にくぼみが存在している場合には拒絶する。
【0071】
上記のように構成された本発明の操作及び本発明によって達成される効果について、実施例を用いることによって以下に説明する。
【0072】
まず、カード読み取りユニット40又はキー入力ユニット50により、カード番号を読み取るか、或いはユーザーのPINをキー打ちによって入力する。カード番号及びPIN確認プロセスを行なって、制御ユニット70中のデータ蓄積ユニット80においてカード番号及びPINを検索することによって対応する番号が存在するかどうかを測定する。
【0073】
対応する番号がない場合には、ユーザーは同定できないユーザーとして拒絶される。対応する番号が見出された場合には、次に制御ユニット70によリユーザーが同定できるユーザーとして許可され、次に、カード番号又はPINに対応する更なる個人情報を読み取った後に、制御信号をモータ駆動ユニット30に送って、カメラ高さをユーザーに適するように調節する。この時点において、制御信号は、現在のカメラ位置とユーザーに適したカメラ位置との間の高さの差を比較して、次にモータを前進又は逆進方向に駆動することによってカメラ高さを自動的に調節する。更に、二つの目の間の幅もまた、それぞれのユーザーに関して調節することができる。
【0074】
次に、制御ユニット70により、虹彩イメージピックアップユニット20を制御することによって赤外光源12aを点灯することにより、最初のオートフォーカスの調節が行なわれる。ユーザーは、視野誘導光源17を点灯することによって視野ポインター18に導かれて、虹彩イメージが位置方向に偏ることが防止される。したがって、虹彩イメージを取り込む際には、取り込まれる人間の虹彩イメージの視野が、誘導光源17(即ち淡青色の光源)によってレンズの中心部分に固定される。
【0075】
虹彩動的イメージは、短いサイクルでフラッシュ光源12bを操作しながら数秒間とられる。次に全ての光源が消される。
虹彩イメージは、所定のソフトウェアによって短時間に制御されたフラッシュ光源12bによって瞳孔及びANWの変化する形状を示すようにとられなければならない。この目的のために、本発明においては1秒当たり25フレームを超える虹彩イメージがとられる。
【0076】
上記記載のように取り込まれた虹彩の連続イメージは、データ処理ユニット60において予備処理される。次に、虹彩分析に適したゾーンが選択された後に、対応するゾーンのイメージ信号が選択される。好ましい態様においては、分析は、上記に詳細に説明したスペクトル変換の可変マルチセクターシステムにしたがって、セクター毎に行なわれる。他の態様においては、虹彩を分析するために用いられるゾーンは、図8において示される全瞳孔を含む水平方向のストリップ状の領域、即ち明確に視認される部分である。なぜならば、これは、同定される人間の睫、瞼などによって影響されないからである。
【0077】
制御ユニット70は、虹彩繊維構造確認プロセスを行なって、上記に詳細に説明したように、選択された低周波数成分のみを用いることによって、ユーザーの同一性を確かめる。
【0078】
次に、制御ユニット70において、瞳孔及びANW反応確認プロセスが行なわれ、瞳孔動的イメージから瞳孔及びANWの反応を分析した後に、瞳孔及びANWの収縮及び膨張がフラッシュ光源12bによって引き起こされた場合には生体を表すものとして取り込まれたイメージが許可され、動きがない場合には生体を表さないものとして取り込まれたイメージが拒絶される。
【0079】
続いて、ANW及び瞳孔形状確認プロセスが制御ユニット70により行なわれ、選択された静止虹彩イメージからのそれぞれの人間において異なる特性を有するANWゾーンの二次元イメージ信号を上記記載の中央軸変換(又はガラスファイヤ法)によって一次元データに変換することによって、ANW及び瞳孔形状に基づいて個人の同一性を確かめる。上記記載のような瞳孔の特定の特徴もまた、同定され比較される。
【0080】
次に、第1及び第2のくぼみ確認プロセスが制御ユニット70により行なわれ、くぼみが存在するか否か、並びにくぼみが存在する場合にはその位置及び形状を同定する同定法によってユーザーの同一性が最終的に確かめられる。ANWの中央軸変換の結果において示されるように、くぼみは、イメージ処理プロセスにより図13及び図14の選択された虹彩静止イメージから抽出され、くぼみ形状が端検出により明確に認められた場合には中央軸変換により一次元データの形状及び位置を表すことによって、くぼみの形状及び位置が同定パラメータとして用いられる。
【0081】
したがって、本発明は、虹彩繊維構造及びテキスチャー形態、光に応答する瞳孔及びANW反応、ANW及び瞳孔の形状、虹彩動的イメージから獲得されたくぼみの存在、形状及び位置を用いて多数の虹彩同定のためのパラメータを測定することによって、生存人間の虹彩を、偽造を防ぎ迅速に且つ正確に同定することにより、特定の人間を識別する方法を提供するので、バンキングシステム及び電子処理/決算システムに適用した場合には金銭的な事故を防ぎ、アクセス制御システムに適用した場合にはセキュリティーに関連する事故を排除することができるという、数多くの有利性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、本発明によって、生体の虹彩を同定するための例示システムのブロックダイヤグラムである。図1Bは、図1Aの態様及びその照明システムにおける虹彩イメージピックアップユニットの一態様を示すカメラの側面斜視図である。
【図2】図2は、図1Bの虹彩イメージピックアップユニットのために用いられる視野ポインターを説明するために図1Bから部分的にとられた参照図である。
【図3】図3は、図2の視野ポインターの詳細図である。
【図4】図4は、視野誘導光源をユーザーの目に反射する図2の視野ポインターを説明するための参照図である。
【図5】図5は、図1Bのシステムにおける第2のレンズの正面図である。
【図6】図6は、コンピュータ制御によって行なわれる虹彩イメージピックアップユニットにおいてイメージ信号を取り込む例のフローチャートである。
【図7】図7は、図6におけるカメラの高さ調節の例のフローチャートである。
【図8】図8は、虹彩分析のために必要な入力イメージ信号の選択された領域(x)を説明するための虹彩イメージの例示図である。
【図9】図9は、本発明の虹彩同定法の全操作を説明する高レベルフローチャートである。
【図10】図10A〜10Cは、図9のフローチャートの詳細な連続フローチャートである。
【図11】図11は、一定角度における虹彩及び自律神経環の動的な動きを説明するための虹彩イメージの例示図である。
【図12】図12は、図11の瞳孔の半径を瞳孔ヒストグラム又はピュピログラムの形態で表し、時間変動による一次元データに変換された自律神経環を表す対応するグラフである。
【図13】図13は、虹彩イメージの端が抽出される自律神経環及びくぼみの例示図である。
【図14】図14は、中央軸変換によって一次元データに変換された図13の自律神経環及びくぼみの例示図である。
【図15】図15は、Haar変換フローグラフのバタフライ構造のダイヤグラムである。
【図16】図16は、スペクトル分析の可変マルチセクターシステムを説明するための虹彩イメージの例示図である。
【図17】図17は、時間当たりの瞳孔の平均半径の他のピュピログラムのグラフである。
【図18】図18は、抽出される瞳孔特性情報を含む瞳孔の例示図である。
Claims (2)
- ドラッグ又はアルコールの存在を認識する虹彩認識システムであって、当該虹彩認識システムは、以下の要素:
(a)生存動物を同定する同定情報を受容する制御ユニット、及び同定情報と比較するために同定可能な生体に関連する予め定められた個人情報を包含する、前記制御ユニットによってアクセスされるデータベースを含むデータ蓄積ユニット;
(b)フラッシュ操作する光源部;
(c)前記光源部を用いて1回のフラッシュ操作をし、その後、所定時間にわたって取得された虹彩の動的イメージを取り込んで入力イメージ信号を生成する、制御ユニットによって操作される動画カメラを含む虹彩イメージピックアップユニット;
(d)入力イメージ信号を処理データに予備処理するデータ処理ユニットを含み、
(e)前記制御ユニットは、前記イメージ信号の処理の結果として得られた処理データを用いて、虹彩の中心から一定の角度で経時的に連続して取得するフラッシュ時及びフラッシュ後の虹彩瞳孔の大きさ又は半径を用いて、光のフラッシュに応答する瞳孔の平均収縮及び膨張を経時的に連続して表すピュピログラムを生成し、前記ピュピログラムで示される曲線の勾配変化を基に、瞳孔が最小半径に収縮する時間が標準時間よりも遅い場合にはドラッグの使用を検出し、また、瞳孔が光のフラッシュに応答して収縮し始める時間と瞳孔が最小半径に収縮した時間との間の瞳孔収縮曲線に沿った直線距離が標準距離よりも小さい場合あるいは瞳孔膨張距離と平均瞳孔収縮距離との比が標準よりも小さい場合にはアルコールの使用を検出することを特徴とする虹彩認識システム。 - 虹彩認識システムが、ドラッグ又はアルコールの存在を認識する方法であって、当該虹彩認識システムは、以下の要素:
(a)1回のフラッシュ操作をし、その後、所定時間にわたって取得された虹彩の動的イメージを取り込んでイメージ信号を生成し、
(b)イメージ信号の処理の結果として得られた処理データを用いて、虹彩の中心から一定の角度で経時的に連続して取得するフラッシュ時及びフラッシュ後の虹彩瞳孔の大きさ又は半径を用いて、光のフラッシュに応答する瞳孔の平均収縮及び膨張を経時的に連続して表すピュピログラムを生成し、
(c)前記ピュピログラムで示される曲線の勾配変化を基に、瞳孔が最小半径に収縮する時間が標準よりも遅い場合にはドラッグの使用を検出し、また、瞳孔収縮曲線が標準よりも小さい場合あるいは瞳孔膨張距離と平均瞳孔収縮距離との比が標準よりも小さい場合にはアルコールの使用を検出することを特徴とする虹彩認識方法。
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---|---|---|---|
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