JP4005795B2 - 振動計測装置及び記憶媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種機器の機械振動や配管を流れる流体振動などの振動を非接触で測定できる振動計測装置及び記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、物体の振動を計測する技術としては、測定対象物に接触するように振動センサを設置し、振動センサからの検出信号に基づき振動を表示したり記録したりしている。振動センサとしては、例えば圧電素子を用いた圧電型振動センサがある。
【0003】
図14は、圧電型振動センサの構成図である。圧電型振動センサは薄い円盤状の圧電素子11をバネとして使用し、質量12と組み合わせてサイズモ系を構成した振動センサであり、質量12に加わる慣性力によって生ずる相対変位に比例して、圧電素子11は電気量を発生する。この圧電型振動センサは、質量12の固有振動数は非常に高いので、それより低い振動数範囲で振動加速度センサとして測定対象物に密着させて使用することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような圧電型振動センサは測定対象物に接触させて、測定対象物の振動を検出するものであるから、非接触で測定対象物の振動を測定することはできない。このことから、例えば原子力関連施設などのプラントのように、高い位置にある測定対象物に対して振動の計測を行う際には、足場などを設置してから振動センサを取り付ける必要があり、振動検出のための作業量が増えてしまう。
【0005】
そこで、振動センサを予め測定対象物に取り付け、振動センサを常設化してしまうことが多い。また、振動センサを常設化しておいたとしても、同一の測定対象物に対して複数点の測定を行う際には、別の振動センサ取り付けや取り外しといった作業が必要となる。
【0006】
本発明は、測定対象物に非接触で振動測定結果を得ることができ、複数点の測定が可能な振動計測装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る振動計測装置は、振動測定対象物の測定対象部の画像を拡大または縮小する光学部と、前記光学部を介して時系列的に測定対象部の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部で撮影した測定対象部の時系列画像を入力する画像入力部と、前記測定対象部を広範囲で撮影する広角撮像部と、前記広角撮像部で撮影した画像を入力する画像入力部と、前記広角撮像部で撮影された広角画像に基づいて前記測定対象部の位置を特定し特定した測定対象部の位置の画像を前記撮像部で撮影してその測定対象部の時系列画像に基づいて前記測定対象部の振動分析を行うデータ処理部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明に係る振動計測装置においては、広角撮像部は振動測定対象物の測定対象部を広範囲で撮影して画像入力部を介してデータ処理部に入力し、データ処理部は広角撮像部で撮影された広角画像に基づいて測定対象部の位置を特定する。そして、データ処理部は、広角撮像部で振動測定対象物の測定対象部の時系列画像を光学部を介して撮像部で撮影し、入力した測定対象部の時系列画像に基づいて測定対象部の振動分析を行う。つまり、広範囲画像を取得して測定対象部の位置の粗調整をすることができ、測定対象部の位置を特定して、時系列画像もしくはその一部を切り出して振動の有無を検出しかつ数値化をし、必要に応じて表示出力する。
【0011】
請求項2の発明に係る振動計測装置は、請求項1の発明において、前記測定対象部までの距離を測定する距離測定部を備え、前記データ処理部は前記距離測定部で測定された距離に基づいて分解能を算出し振動分析を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係る振動計測装置においては、請求項1の発明の作用に加え、距離測定部で測定対象部までの距離を測定し、データ処理部は取得した画像の分解能を絶対値で提供する。
【0013】
請求項3の発明に係る振動計測装置は、請求項1または請求項2の発明において、前記撮像部または前記広角撮像部の光軸や前記光学部の焦点を調整する光軸制御機構部を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る振動計測装置においては、請求項1または請求項2の発明の作用に加え、光軸制御機構部により撮像部または広角撮像部の姿勢(光軸)と焦点を制御することができる。従って、遠隔で距離と方向とが異なる位置の測定対象部の振動測定が可能となる。
【0015】
請求項4の発明に係る振動計測装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項の発明において、前記撮像部の光軸を変化させる光軸変換部を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明に係る振動計測装置においては、請求項1乃至請求項3のいずれか1項の発明の作用に加え、光軸変換部で撮像部の光軸を変化させ、一度に多点の計測をすることができる。
【0017】
請求項5の発明に係る振動計測装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の発明において、前記光学部、前記撮像部または前記広角撮像部自体の振動を検出する自己振動検出部を備え、前記データ処理部は前記自己振動検出部で検出された振動を加味して振動分析を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明に係る振動計測装置においては、請求項1乃至請求項4のいずれか1項の発明の作用に加え、光学部、撮像部または広角撮像部自体の振動を検出し、振動分析に補正を加えるので、より正確な振動データが得られる。
【0019】
請求項6の発明に係る振動計測装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項の発明において、前記データ処理部は、前記測定対象部の特定する際にベクトル画像を用いたパターンマッチングを使用することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明に係る振動計測装置においては、請求項1乃至請求項5のいずれか1項の発明の作用に加え、ベクトル画像を用いたパターンマッチングで測定対象部を特定するので、パターンファイルの情報が多く測定対象部を高確率で検出することができる。
【0021】
請求項7の発明に係る記憶媒体は、コンピュータを、広角で画像を撮影する手段と、広角画像の中から複数の測定対象部を抽出する手段と、抽出した測定対象部に対して画角を調整する手段と、抽出した測定対象部までの距離を測定する手段と、測定対象部の時系列画像を入手し画像処理及びFFT処理を行う手段と、得られたデータを一次保存する手段と、次の測定対象部位がある場合には測定対象部に画角を調整する手段からデータを保存するまでの手段を繰り返し行う手段と、すべての測定対象部位の振動測定が終了したときには測定結果を表示する手段と、予め作成したフォーマットで測定結果を報告書として作成する手段として機能させるためのプログラムを記憶している。
【0022】
請求項7の発明に係わる記憶媒体に記憶された内容をコンピュータに入力し、コンピュータを作動させる。これにより、広角で画像を撮影し、広角画像の中から複数の測定対象部を抽出し、抽出した測定対象部に対して画角を調整し、抽出した測定対象部までの距離を測定し、測定対象部の時系列画像を入手し画像処理及びFFT処理を行い、得られたデータを一次保存し、次の測定対象部位がある場合には測定対象部に画角を調整する手段からデータを保存するまでの手段を繰り返し行い、すべての測定対象部位の振動測定が終了したときには測定結果を表示し、予め作成したフォーマットで測定結果を報告書として作成する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の振動計測装置の基本構成の説明図であり、図1(a)は振動計測装置の基本構成図、図1(b)は振動計測装置の動作を示すフローチャートである。
【0024】
図1(a)において、振動測定対象物の画像は光学部13を介して撮像部14で撮影される。光学部13は測定対象部の画像を拡大または縮小して撮像部14に取り込む。撮像部14では、光学部13を介して時系列的に測定対象部の画像を撮影し、画像入力部15を介してデータ処理部16に時系列画像を出力する。データ処理部16は、画像入力部15からの測定対象部の時系列画像に基づいて測定対象部の振動分析を行う。
【0025】
ここで、撮像部14としては電荷収集素子(CCD)、特に測定対象が高速で振動している際には、ラインカメラ、高速度カメラなどの1次元以上で画像を撮影可能な撮像素子を用いることができる。
【0026】
また、光学部13としては、焦点微調整が可能な一眼レフカメラ用のレンズやフィールドスコープ(ビクセン製、ニコン製など)を用いることが可能である。特に測定対象が固定であるならば微調整機構は必要ない。
【0027】
さらに、画像入力部15としては、映像信号をデータ処理部16に伝送できるものであり、例えば、高速カメラやラインカメラ用としては長瀬産業製のAdvancedGrab−2、高速度カメラとしてはフォトロン社製のFASTCAM-NETシリーズなどを用いることができる。
【0028】
次に、動作を説明する。図1(b)に示すように、振動測定対象物の最初の測定対象部に対して撮像部14の画角を調整し(S1)、測定対象部の画像が読み込める状態にする。そして、その測定対象物の画像を時系列で取り込む(S2)。取り込まれた時系列画像は画像入力部15を介してデータ処理部16に入力され、振動分析が行われる(S3)。すなわち、ステップS3では、画像処理及びFFT処理により測定対象部に振動が発生しているか否かの判定が行われる。
【0029】
ステップS3での振動分析結果は取得データとして一次保存される(S4)。そして、次の測定対象部があるか否かを判定し(S5)、次の測定対象部がある場合には、その次の測定対象部に画角を調整して(S6)、ステップS2〜ステップS5の処理を繰り返し行う。ステップS5の判定で、次の測定対象部がないと判定された場合には、測定が全て完了したと判断し、ステップS4で一次保存された取得データをまとめて最終結果表示する(S7)。そして、これらを最終結果を元に報告書を作成する(S8)。
【0030】
図2は、振動計測装置17で、プラントの配管18の振動を検出する場合の説明図である。いま、画角上下θ、左右φの撮像部14によって、距離Lの場所にある振動測定対象物を撮影する場合を考える。振動測定対象物は配管18であるとし、この配管18は上下方向(y方向)に配置されており、左右方向に周波数fで撮像部14の軸線と直交する方向に振動しているものとする。画面上のある走査線番号に相当する位置では、振幅A、周波数fで振動しているとする。つまり、(1)式に示されるように振動しているとする。実際には複合的な振動が発生していることを想定し、より一般的には、(2)式で示されるような振動をしているとする。
【0031】
X=Asin(2πf+δ) …(1)
X=ΣAsin(2πf+δ) …(2)
図3は、振動測定対象物の測定対象部の時系列画像の説明図である。撮像部14では、同一の測定対象部に対して時系列に複数枚の画像を取得する。図3では5枚の画像を取得した場合を示している。そして、取得した画像の中から一本の走査線に着目し、その走査線の情報が更新されることにデータ処理部16に時系列画像のデータとして保存していく。そして、データ処理部16は保存された時系列画像の境界座標をFFT処理して周波数解析や振幅などを求める。
【0032】
すなわち、ある基準時刻t=t0に撮影したスチルデジタル画像(一本の走査線の画像)において、振動測定対象物のエッジ位置がE(i,j)t=t0に検出されたとする。同様に時刻t=t1、t=t2…t=tnに撮影された画像が時系列的に得られる。y方向には振動していないものと仮定すると、E(i,j)の軌跡が(3)式に示すように時系列信号として得られる。この時系列信号を周波数分析することにより各周波数成分の振動振幅などを分析可能である。
【0033】
E(i,j)=Xi(t)(t=t1,…,tn) …(3)
以上の説明では、1次元軸上での振動を想定したが、同様なことは面内での振動にも拡張可能である。この場合には平面上の2次元軌跡として振動を表現可能であるが、基本的にはX軸、Y軸に分離し、相互に相関を持つ1次元振動として表現できる。その場合、画面上のX軸、Y軸をそのまま利用することも可能であるが、より詳細な分析を行うためには、振動の分離がある程度可能な軸の選定を軸の回転変換により行うことが有効である。
【0034】
【数1】
Figure 0004005795
ここで、実際の振動測定対象物の測定対象部を特定するには、振動測定対象物の測定対象部に何らかのマーカを設置し、そのマーカ上のポイントの座標検出で測定対象部の検出を行うことになる。一方、マーカの付与が困難の場合には、パターンマッチングなどの前処理が必要となる。
【0035】
また、振動を計測する際には、振動計測装置17自体の振動を考慮に入れなければならない。そこで、測定対象部として振動していない個所、例えば建屋の壁や壁にある傷などのマークに対して測定を行い、得られた振動測定結果を建屋の固有振動(バックグラウンド振動)として予め取得しておき、オフラインで振動測定結果を補正することになる。
【0036】
以上述べたように、振動測定対象物の測定対象部の時系列画像が取得できるので、その画像もしくはその一部を切り出して振動の有無を検出し数値化をすることができる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施の形態を説明する。図4は本発明の第1の実施の形態に係る振動測定装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した基本構成に対し、測定対象部を広範囲で撮影する広角撮像部19と、広角撮像部19で撮影した画像を入力する画像入力部20とを追加して設け、データ処理部16は広角撮像部19で撮影された広角画像に基づいて測定対象部の位置を特定するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0038】
広角撮像部19は撮像部14の光軸と平行になるように光軸が調整される。従って、撮像部14の光軸と広角撮像部19の光軸との間の距離は、どんなに離れても等しくなる。これにより、広角撮像部19での画像は、撮像部14で振動測定対象物を測定している個所の広角画像を出力することになるので、測定点の目安に用いることが可能である。
【0039】
ここで、広角撮像部19としては、撮像部19と同様に、電荷収集素子(CCD)、特に測定対象が高速で振動している際には、ラインカメラ、高速度カメラなどの1次元以上で画像を撮影可能な撮像素子を用いることができる。また、広角画像入力部20としては、映像信号をデータ処理部16に伝送できるものであり、高速カメラやラインカメラ用としては長瀬産業製のAdvancedGrab−2、高速度カメラとしてはフォトロン社製のFASTCAM-NETシリーズなどを用いることができる。
【0040】
次に、動作を説明する。図5は、第1の実施の形態に係る振動測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、広角撮像部19で広角画像を撮影し(S1)、その広角画像の中から測定対象部を抽出する(S2)。この測定対象部の抽出は、振動測定対象物の測定対象部に何らかのマーカを設置している場合には、そのマーカ上のポイントの座標検出で測定対象部の検出を行うことになる。また、マーカの設置がない場合にはパターンマッチングで測定対象部の抽出を行う。
【0041】
ステップS2で抽出された最初の測定対象部に対して撮像部14の画角を調整し(S3)、測定対象部の画像が読み込める状態にする。そして、その測定対象物の画像を時系列で取り込む(S4)。取り込まれた時系列画像は画像入力部15を介してデータ処理部16に入力され、振動分析が行われる(S5)。すなわち、ステップS5では、画像処理及びFFT処理により測定対象部に振動が発生しているか否かの判定が行われる。
【0042】
ステップS5での振動分析結果は取得データとして一次保存される(S6)。そして、次の測定対象部があるか否かを判定し(S7)、次の測定対象部がある場合には、その次の測定対象部に画角を調整して(S8)、ステップS4〜ステップS7の処理を繰り返し行う。ステップS7の判定で、次の測定対象部がないと判定された場合には、測定が全て完了したと判断し、ステップS6で一次保存された取得データをまとめて最終結果表示する(S9)。そして、これらを最終結果を元に報告書を作成する(S10)。
【0043】
この第1の実施の形態によれば、広角撮像部19で広範囲画像が取得できるので、撮像部14からの画像での微少区域と広角撮像部19からの広角画像とを同時に見ることができ、撮像部14での測定対象部の位置の粗調整をすることができる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図6は本発明の第2の実施の形態に係る振動測定装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図4に示した第1の実施の形態に対し、測定対象部までの距離を測定する距離測定部21a、21bを追加して設け、データ処理部16は距離測定部21a、21bで測定された距離に基づいて分解能を算出し振動分析を行うようにしたものである。
【0045】
図6において、距離測定部21a、距離測定部21bは、レーザーマーカーなどの可視光線を発射するものであり、光学部13に搭載された広角撮像部19の上部に距離測定部21aを配置する共に光学部13の下部に距離測定部21bを配置する。そして、図7(a)に示すように、距離測定部21aの光軸と距離測定部21bの光軸とを平行に合わせ、また、撮像部14や広角撮像部19の光軸と平行に合わせる。
【0046】
平行に合わせたレーザーマーカーは、いくら離れてもお互いの間隔は一定であり、これを撮像部14または広角撮像部5で撮像する。距離が離れるにつれて撮像された画像における二点のレーザーマーカーの画素間隔は、測定対象との距離と反比例の関係にあるので、予め関係式を作っておくことで距離を算出することが可能となる。これにより、遠隔の測定対象部までの距離を非接触で測定する。
【0047】
ここで、原子力発電所や一般のプラントに多く存在する小口径配管を測定する際には、配管の配置方向に距離測定部21a、21bを配置する。これは、配管の配置方向と直角方向に距離測定部21a、21bを配置した場合には、配管の経が小さい場合には、レーザーマーカーが測定対象部と違うところに照射されてしまうことがあるためである。
【0048】
なお、レーザーマーカーを用いた距離測定部21では、距離が遠くなればなるほど誤差が大きくなり易いため、精度向上をするために複数回の測定を行い、その平均を取るようにする。
【0049】
また、距離測定部21として、レーザーマーカーなどの複数の可視光線を用いなくても、レーザ距離計や超音波距離計などを用いて、図7(b)に示すようにに配置することで距離の測定を行うようにしても良い。
【0050】
データ処理部16では、距離測定部21で得られた測定対象までの距離に基づいて、撮像部14や広角撮像部2の二つの光軸を適正に合わせることが可能となり、取得した画像における実寸換算をすることも可能となる。
【0051】
また、振動分析の分解能は、下式に示すように、撮像部14の画像素子の密度(Px・Py)と画角および距離の関数として示されることから分解能の算出も可能となる。
【0052】
【数2】
Figure 0004005795
このように、測定対象部までの距離は分解能に直接影響する因子として作用することから、距離による分解能の絶対値化が図れる。
【0053】
次に、動作を説明する。図8は、第2の実施の形態に係る振動測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、広角撮像部19で広角画像を撮影し(S1)、その広角画像の中から測定対象部を抽出する(S2)。この測定対象部の抽出は、振動測定対象物の測定対象部に何らかのマーカを設置している場合には、そのマーカ上のポイントの座標検出で測定対象部の検出を行うことになる。また、マーカの設置がない場合にはパターンマッチングで測定対象部の抽出を行う。
【0054】
ステップS2で抽出された最初の測定対象部に対して撮像部14の画角を調整し(S3)、測定対象部の画像が読み込める状態にする。そして、距離測定部21で測定対象部までの距離を測定し(S4)、データ処理部16に記憶する。
【0055】
次に、測定対象物の画像を時系列で取り込む(S5)。取り込まれた時系列画像は画像入力部15を介してデータ処理部16に入力され、振動分析が行われる(S6)。ステップS6では、画像処理及びFFT処理により測定対象部に振動が発生しているか否かの判定が行われる。この際に、ステップS4で求めた距離に基づいて分解能の算出を行い振動分析を行う。
【0056】
ステップS6での振動分析結果は取得データとして一次保存される(S7)。そして、次の測定対象部があるか否かを判定し(S8)、次の測定対象部がある場合には、その次の測定対象部に画角を調整して(S8)、ステップS4〜ステップS8の処理を繰り返し行う。ステップS8の判定で、次の測定対象部がないと判定された場合には、測定が全て完了したと判断し、ステップS7で一次保存された取得データをまとめて最終結果表示する(S10)。そして、これらを最終結果を元に報告書を作成する(S11)。
【0057】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、振動測定対象物の測定対象部までの距離が測定できるので、取得した画像の分解能を絶対値で提供することができる。
【0058】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図9は本発明の第3の実施の形態に係る振動測定装置の外観構成図である。この第3の実施の形態は、図6に示した第2の実施の形態に対し、撮像部14及び広角撮像部19の光軸や光学部13の焦点を調整する光軸制御機構部22a、22b、22cを追加して設けたものである。図9では、画像入力部15、広角画像入力部20、データ処理部16の図示を省略している。
【0059】
図9において、光軸を平行に合わせた撮像部14と広角撮像部19、距離測定部21a、21bのすべてが光軸制御機構部22aの上に搭載されている。光軸制御機構部22aの上には、光軸制御機構部22aと垂直方向に光軸制御機構部22bが設けられ、さらに、光学部13の焦点合わせ用つまみに接するように光軸制御機構部22cが搭載されている。
【0060】
左右方向の位置合わせには光軸制御機構部22a、上下方向の位置合わせには光軸制御機構部22b、焦点合わせをするには光軸制御機構部22cを調整してして行う。また、これらすべての光軸制御機構部22a、22b、22cを
これら光軸制御機構部22a、光軸制御機構部22b、光軸制御機構部22cは、モーター駆動の自動回転ステージなどを用いて構成し、モーターの制御をデータ処理承知16からの指令で行うようにすると、遠隔操作が可能となる。これにより、人が長い間入っていることができないない高温、高圧、高線量場においても遠隔操作により測定が可能となる。
【0061】
次に、光軸制御機構部22cによって焦点を調整する仕方について説明する。まず、光軸制御機構部22cを一定間隔で複数枚の画像を取得する。焦点があっていない画像はコントラストがないため、隣接画素間における輝度差がほとんどないため、複数の画像の中から一番コントラストが得られている画像、すなわち隣接画素間の輝度差が一番ある画像をもって焦点があったと判断し、その画像を取得した位置に光軸制御機構部22cを再度合わせることで行う。また、予め測定対象部までの距離と光軸制御機構部22cの回転数の関係式を出しておくことで、おおよその焦点を合わせ、その周囲で先ほどよりも小さい間隔で複数枚の画像を取得することによって高速化することが可能である。
【0062】
この第3の実施の形態によれば、光軸制御機構部22a、22b、22cにより、振動計測装置の姿勢(光軸)や焦点を制御することが可能となるので、光軸や焦点あわせが容易に行える。すなわち、光軸や焦点を容易に変更できるので、遠隔で距離と方向の異なる位置の測定対象部の振動測定を容易に行うことができる。また、光軸制御機構部22a、22b、22cをモーター駆動にしデータ処理装置16からの指令で駆動できるようにした場合には、高温、高圧、高線量場での振動の測定も可能となる。
【0063】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図10は本発明の第4の実施の形態に係る振動測定装置の外観構成図である。この第4の実施の形態は、図9に示した第3の実施の形態に対し、振動測定装置17自体、すなわち、光学部13、撮像部14または広角撮像部19自体の振動を検出する自己振動検出部23を追加して設け、データ処理部16は自己振動検出部23で検出された振動を加味して振動分析を行うようにしたものである。
【0064】
図10において、自己振動検出部23として水平方向の振動を計測することが可能な振動計を用いた場合を示している。建屋の固有振動を予め測定して得られたデータから補正する手法は、オフラインでしか補正することができないため、汎用の振動計を用いてリアルタイムで補正する。
【0065】
振動計測対象物の測定対象部の測定個所での測定データは波形として保存されており、自己振動検出部23で得られた測定データも波形として保存する。この二つの波形の差分をとることで、補正処理済の波形を得ることができる。
【0066】
この第4の実施の形態によれば、振動計測装置自体の振動を測定し、測定対象部の測定データを補正することができるので、より精度の高い振動測定対象物の振動を検出することができる。
【0067】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図11は本発明の第5の実施の形態に係る振動測定装置の構成図である。この第5の実施の形態は、図1に示した基本構成に対し、撮像部14の光軸を変化させる光軸変換部24を追加して設け、この光軸変換部24を回転させることにより、複数点の計測対象部における振動を計測できるようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0068】
図11において、光軸変換部24として両面ミラーを1次元方向で回転する場合を示している。このように配置した光軸変換部24を一定の速度で回転軸の周りを廻すと、光軸の下方向から上方向までの複数個所のデータを取得することが可能であり、光軸変換部24の回転角ごとにデータを分割することで各測定個所ごとの時系列データを作成することができる。複数箇所の低周波の振動を計測する際、サンプリング速度が速い高速度カメラやラインカメラなどを用いると、必要以上のデータを得ることになる。そのため複数箇所の測定をまとめて同じ時間ですることで、測定時間の短縮をすることができる。光軸変換部24としては、ミラーのほかにプリズムなどの光軸を変換できる材料を用いても良い。
【0069】
この第5の実施の形態によれば、同一の測定対象物に対して複数点の測定を行うことができる。また、駆動部は光軸変換部24を回転させる駆動部だけであるので駆動部を小さくできる。
【0070】
次に、測定対象部を特定するパターンマッチング処理で使用するテンプレートについて説明する。本発明では、ベクトル画像を用いたパターンマッチングが行えるテンプレートを予め作成しておく。
【0071】
図12は、振動測定対象物としての配管のテンプレートを作成する際の区画25を画像中から選択したところである。この区画25の領域に関して輝度差を用いて線の抽出手法でテンプレートを作成しようとすると、縦方向に二本の直線が得られるが、テンプレートの情報量が少ないため誤検出する確率が非常に高い。そのため、領域内の着目した画素とその周囲の画素成分とを比較し、その結果を図13に示すように回転ベクトルとして表示する。これにより、図13に示すようなテンプレートを得ることができる。このテンプレートを用いると、壁のペンキの色が変わっているところなど、平面で構成されている直線部は選択せず、配管など曲面特有の輝度変化にグラデーションが発生している様子を含んだテンプレートを作成することが可能であり、これを用いると高確率で求めている測定ポイントを検出することが可能となる。
【0072】
なお、上述した各実施の形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、記憶媒体に記憶し各装置に応用したり、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。
【0073】
本発明における記憶媒体としては、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVDなど)、光磁気ディスク(MOなど)、半導体メモリなど、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式はいずれの形態であっても良い。また、ここで記憶媒体とは、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネットなどにより伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、時系列画像を取得し、その画像もしくはその一部を切り出して振動の有無を検出し数値化するので、振動測定対象物に対して非接触で振動測定結果を得ることができる。また、広角撮像部を設けた場合には広範囲画像が取得できるので、測定対象部の位置の粗調整をすることができる。
【0075】
また、距離測定部を設けた場合には測定対象部までの距離が測定できるので、距離の関数である画像の分解能を絶対値で提供できる。光軸制御機構部を設けた場合には、振動計測装置自体の姿勢や焦点を制御することが可能となり、遠隔で距離と方向の異なる複数箇所のの測定対象部の振動測定を提供することができる。さらに、光軸制御機構部を遠隔で操作できるようにした場合には、測定環境の悪い施設、例えば、高温、高所、高線量区域においても測定可能となる。
【0076】
また、自己振動検出器を設けた場合には、振動計測装置自体の振動が測定できるので、測定対象部の測定データを補正することができる。光軸変換部を設けた場合には、一度に複数点の測定対象部を計測をすることができる。また、ベクトル画像のテンプレートを使用するので、求めている測定対象部を高確率で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の振動計測装置の基本構成の説明図。
【図2】 本発明の振動計測装置の基本構成でプラントの配管の振動を検出する場合の説明図。
【図3】 本発明の振動計測装置の基本構成での測定対象部の時系列画像の説明図。
【図4】 本発明の第1の実施の形態に係る振動測定装置の構成図。
【図5】 本発明の第1の実施の形態に係る振動測定装置の動作を示すフローチャート。
【図6】 本発明の第2の実施の形態に係る振動測定装置の構成図。
【図7】 本発明の第2の実施の形態に係る振動測定装置の距離測定部の配置の説明図。
【図8】 本発明の第2の実施の形態に係る振動測定装置の動作を示すフローチャート。
【図9】 本発明の第3の実施の形態に係る振動測定装置の外観構成図。
【図10】 本発明の第4の実施の形態に係る振動測定装置の外観構成図。
【図11】 本発明の第5の実施の形態に係る振動測定装置の構成図。
【図12】 本発明のテンプレートを作成する際の画像中の区画の説明図。
【図13】 本発明のベクトル画像による測定対象部のテンプレートの説明図。
【図14】 従来の圧電型振動センサの構成図。
【符号の説明】
11…圧電素子、12…質量、13…光学部、14…撮像部、15…画像入力部、16…データ処理部、17…振動測定装置、18…配管、19…広角映像部、20…広角画像入力部、21…距離測定部、22…光軸変換部、23…自己振動検出部、24…光軸変換部、25…区画

Claims (7)

  1. 振動測定対象物の測定対象部の画像を拡大または縮小する光学部と、前記光学部を介して時系列的に測定対象部の画像を撮影する撮像部と、前記撮像部で撮影した測定対象部の時系列画像を入力する画像入力部と、前記測定対象部を広範囲で撮影する広角撮像部と、前記広角撮像部で撮影した画像を入力する画像入力部と、前記広角撮像部で撮影された広角画像に基づいて前記測定対象部の位置を特定し特定した測定対象部の位置の画像を前記撮像部で撮影してその測定対象部の時系列画像に基づいて前記測定対象部の振動分析を行うデータ処理部とを備えたことを特徴とする振動計測装置。
  2. 前記測定対象部までの距離を測定する距離測定部を備え、前記データ処理部は前記距離測定部で測定された距離に基づいて分解能を算出し振動分析を行うことを特徴とする請求項1に記載の振動計測装置。
  3. 前記撮像部または前記広角撮像部の光軸や前記光学部の焦点を調整する光軸制御機構部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動計測装置。
  4. 前記撮像部の光軸を変化させる光軸変換部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の振動計測装置。
  5. 前記光学部、前記撮像部または前記広角撮像部自体の振動を検出する自己振動検出部を備え、前記データ処理部は前記自己振動検出部で検出された振動を加味して振動分析を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の振動計測装置。
  6. 前記データ処理部は、前記測定対象部を特定する際にベクトル画像を用いたパターンマッチングを使用することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の振動計測装置。
  7. コンピュータを、広角で画像を撮影する手段と、広角画像の中から複数の測定対象部を抽出する手段と、抽出した測定対象部に対して画角を調整する手段と、抽出した測定対象部までの距離を測定する手段と、測定対象部の時系列画像を入手し画像処理及びFFT処理を行う手段と、得られたデータを一次保存する手段と、次の測定対象部位がある場合には測定対象部に画角を調整する手段からデータを保存するまでの手段を繰り返し行う手段と、すべての測定対象部位の振動測定が終了したときには測定結果を表示する手段と、予め作成したフォーマットで測定結果を報告書として作成する手段として機能させるためのプログラムを記憶した記憶媒体。
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