JP4005751B2 - 冷菓 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、−20〜−30℃の冷凍庫から取り出した直後でも、ソフトスクープ性を有し、後味の良好なアイスクリーム類に関する。
【0002】
【従来の技術】
アイスクリーム類は、その清涼感、独特の風味と口のなかに入れたときの口溶けの良さや適度な固さを有する食感等から、多くの人に好まれている。しかしながら、アイスクリーム類は、−20℃以下で硬化させ、その温度で保存されるため、冷凍庫から取り出して直ちにアイスクリームスクープ等ですくったり、スプーンで食す場合には、硬すぎてすくうことができず、しばらく室温に放置しておかなくてはならない。また、このように、室温にアイスクリーム類を放置した場合、中心付近がすくいとれるほどの硬さになったときには、外周部のアイスクリームが柔らかすぎて、クリーム状となりアイスクリーム類の冷たく、適度な硬さのある食感が失われてしまう。そこで、冷凍庫から取り出した状態でもスプーンの通りのよい、いわゆる「ソフトスクープ性」を有するアイスクリーム類が従来から検討されている。例えば、原料ミックスの甘味料としてブドウ糖のみを使用し、これを水分量に対し、30重量%以上添加して冷凍するアイス食品の製造方法、ブドウ糖29重量%以下とグリセリン1〜12重量%を添加するアイス食品の製造方法(特開昭56−23850号公報、特開昭56−23851号公報)、水分量に対しブドウ糖10〜45重量%とその他の蔗糖、異性化糖、転化糖、果糖、水飴、麦芽糖、乳糖、又はソルビット、マルビット、キシリトール、還元澱粉分解物の1種以上が3〜20重量%からなる氷結晶調整組成物(特開昭59−102359号公報)、冷菓の原料ミックスにキシリトールを2〜30重量%含有するように配合した冷菓(特開平11−103782号公報)等が開示されている。これらの方法によれば、分子量の小さい糖類、糖アルコール類、アルコール類等を添加することで、−20〜−30℃の冷凍庫から取り出した直後でもスプーン通りの良い、ソフトスクープ性を有する冷菓を提供することはできるものの、これら糖類、糖アルコール類、アルコール類は後味として、水を飲みたくなるような、喉がひりひりとするいわゆる「喉やけ」感が感じられ、好ましくないとの指摘もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような現状において、−20〜−30℃の冷凍庫から取り出した直後でもソフトスクープ性を有するように、分子量の小さい糖類、糖アルコール類を添加しているにも係わらず、後味の良好なアイスクリーム類が求められているが、そのようなアイスクリーム類は未だ提供されていない。そこで、本発明は、糖類、糖アルコール類を含有するソフトスクープ性を有するアイスクリーム類であって、食べた後に「喉やけ」感のない、後味の良好なアイスクリーム類を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、糖類、糖アルコール類を添加してソフトスクープ性を付与した冷菓の後味を改善するべく鋭意研究を重ねた結果、卵黄を2〜20重量%含有させることにより、糖類、糖アルコール類に特有の「喉やけ」感を改善し、後味が良好になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明では、好ましくは製品中に卵黄を2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%含有するように冷菓を製造する。製品中の卵黄の含有率が2重量%未満では、糖類や糖アルコール類に特有の「喉やけ」感を改善することができないことがあるため、また20重量%を超えると、卵黄臭が強くなりすぎるため好ましくない。
また、従来、冷菓の製造において乳化性や呈味性を付与する目的で、冷菓ミックスに卵黄を0.25〜4重量%の割合で添加することはあったが、いずれも糖類、糖アルコール類を含有させてソフトスクープ性を付与した冷菓に関するものではなく、ましてこれらに特有の「喉やけ」感を改善するものではない。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において冷菓とは、例えば、シャーベット、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類を例示することができる。本発明のアイスクリーム類の製造方法を以下に述べる。生乳、生クリーム、バター、脱脂粉乳、砂糖、異性化糖、粉末水飴、ブドウ糖、乳化剤、安定剤、香料、水等からなるアイスクリーム類の原料ミックスに、糖類及び/又は糖アルコール類、卵黄及び/又は卵黄由来の原料を添加し、粉体原料を液体原料に分散溶解させることにより原料ミックスを調製し、プレート式加熱殺菌機を用いて85〜90℃で15〜30秒間殺菌する。この原料ミックスを均質機に投入し、均質圧力100〜200kg/cm2 で均質処理を行い、再度プレート式熱交換機に通して、5℃以下に冷却し、ストレージタンクで1晩エージング後、フリージングを行う。フリージングは、通常アイスクリーム類の製造に用いられる公知の装置を使用して行えばよく、オーバーランは目的とする最終製品に合わせて適宜調整すればよい。次いで、フリージング工程を経た原料ミックスを適当な容器に充填し、−20℃以下で硬化させ、−20〜−30℃の冷凍庫で貯蔵する。
【0006】
本発明において、冷菓にソフトスクープ性を付与するために添加する糖類又は糖アルコール類としては、ブドウ糖、蔗糖、異性化糖、転化糖、果糖、水飴、麦芽糖、乳糖、トレハロース等の糖類、キシリトール、ソルビトール、マルチートール、還元澱粉分解物等の糖アルコール類を例示することができ、これらの糖類及び/又は糖アルコール類を2〜30重量%含有するように配合して、−20℃において硬度6kgf以下のソフトスクープ性を有する冷菓を得る。また、グリセリン、アルコール等のアルコール類を添加してもよい。なお、−20℃において硬度が6kgfを超えると冷菓が硬くなり過ぎソフトスクープ性を示さなくなるため好ましくない。
また、糖類、糖アルコール類、アルコール類を添加することによる「喉やけ」感を改善するために添加する卵黄、卵黄由来の原料としては、卵由来の卵黄の他に、卵黄レシチン、卵黄粉末、酵素処理卵黄、加糖卵黄、加糖酵素処理卵黄、加糖濃縮卵黄等の卵黄由来の原料を例示することができる。
【0007】
【実施例】
実施例1
(1)原料ミックスの調製
表1に示す配合に従って冷菓の原料ミックスを調製した。
バター、脱脂粉乳、粉末水飴、糖アルコールとしてキシリトール、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、安定剤としてアルギン酸ナトリウム及び水を混合した。この混合溶液を65℃に予備加熱した後、卵黄由来原料として加糖卵黄(卵黄含量:80重量%)を加え混合し、150kg/cm2 で均質処理を行い、次いでプレート式加熱殺菌機を用いて85℃で殺菌後、プレート式熱交換機で5℃まで冷却を行い、一晩エージングをして冷菓の原料ミックスを調製した。
【0008】
【表1】
【0009】
(2)冷菓の製造 (1)で調製した冷菓の原料ミックスをフリーザーに投入し、オーバーランを50%に設定し、回転速度100rpmで、15分間回転させた。これを高さ2cm、直径7cmの円柱型紙容器に充填し、−25℃にて一晩硬化させ、冷菓を製造した。
【0010】
試験例1
実施例1で得られたA〜Eの試料について、(1)硬さの測定、(2)ソフトスクープ性の評価、(3)官能評価を行った。以下に、測定方法と評価方法を示す。
(1)硬さの測定;−25℃で硬化させたアイスクリームを−20℃の冷凍庫で半日保持した後、冷凍庫から取り出し、直ちにレオナー(山電社製)を用いて、−20℃の各試料に5mm円柱型のアダプターを1mm/秒の速度でアイスクリーム中に貫入させ、1cm貫入時の応力を測定し、その値(kgf)を硬さとした。
【0011】
(2)ソフトスクープ性の評価;−20℃に調温した試料を3人の熟練パネラーにより、アイスクリーム用スクープを用いてテストを行い、3人の総合評価として、○;すくいやすい、△;どちらでもない、×;すくいずらい、のいずれかで示した。
【0012】
(3)官能評価;15人の熟練パネラーに、−10℃に調温した試料10gと、室温にて10分間放置した試料10gを食してもらった。評価は、「喉やけ」感及び後味について次の5段階で行い、その平均点を小数点第2位で四捨五入して示した。
「喉やけ」感については、5点;「喉やけ」感が全く感じられない、4点:「喉やけ」感がほとんど感じられない、3点;どちらともいえない、2点「喉やけ」感をやや感じる、1点;「喉やけ」感を強く感じるとした。また、後味については、5点;大変好ましい、4点;好ましい、3点;どちらでもない、2点;好ましくない、1点;全く好ましくない、とした。
結果を表2に示す。
【0013】
【表2】
【0014】
冷菓B〜Dは、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性を示し、風味・後味についても好ましいとの評価を得た。
また、卵黄を1重量%含有する冷菓Aは、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性を示したが、キシリトールによる「喉やけ」感が感じられ、風味・後味が好ましくないとの評価であった。また、卵黄を25.0重量%含有する冷菓Eについては、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性は示したものの、加糖卵黄由来の卵黄臭が強く感じられ、風味・後味の点で好ましくないとの評価であった。
【0015】
実施例2
(1)原料ミックスの調製
表3に示す配合に従って冷菓の原料ミックスを調製した。
バター、脱脂粉乳、粉末水飴、糖類としてブドウ糖、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、安定剤としてアルギン酸ナトリウム及び水を混合した。この混合溶液を65℃に予備加熱した後、卵黄由来原料として加糖卵黄(卵黄含量:80重量%)を加え混合し、150kg/cm2 で均質処理を行い、次いでプレート式加熱殺菌機を用いて85℃で殺菌後、プレート式熱交換機で5℃まで冷却を行い、一晩エージングをして冷菓の原料ミックスを調製した。
【0016】
【表3】
【0017】
(2)冷菓の製造
(1)で調製した冷菓の原料ミックスをフリーザーに投入し、オーバーランを50%に設定し、回転速度100rpmで、15分間回転させた。これを高さ2cm、直径7cmの円柱型紙容器に充填し、−25℃にて一晩硬化させ、冷菓を製造した。
【0018】
試験例2
実施例2で得られたF〜Jの試料について、(1)硬さの測定、(2)ソフトスクープ性の評価、(3)官能評価を試験例1と同様の方法で行った。
結果を表4に示す。
【0019】
【表4】
【0020】
冷菓G〜Iは、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性を示し、風味・後味についても好ましいとの評価を得た。
また、卵黄を1重量%含有する冷菓Fは、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性を示したが、ブドウ糖による「喉やけ」感が感じられ、風味・後味が好ましくないとの評価であった。また、卵黄を25.0重量%含有する冷菓Jについては、−20℃においても軟らかく良好なソフトスクープ性は示したものの、加糖卵黄由来の卵黄臭が強く感じられ、風味・後味の点で好ましくないとの評価であった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、−20℃以下の冷凍庫から取り出した直後でも、軟らかく良好なソフトスクープ性を有し、かつ風味・後味の良好な冷菓を提供することができる。
Claims (2)
- 糖類及び/又は糖アルコール類と卵黄を含有し、フリージングして得られる、−20℃における硬度が6kgf以下であり、ソフトスクープ性を有し、「喉やけ」感のないアイスクリーム類。
- 卵黄を2〜20重量%含有することを特徴とする請求項1記載のアイスクリーム類。
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