JP4005494B2 - 引き剥がしの方向性を有するスナップファスナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は引き剥がしの方向性を有するスナップファスナに関する。このようなファスナの雌雄部材をそれぞれ生地に取り付けると、生地同士をある方向からは容易に引き剥がすことができないが、別の方向からは簡単に引き剥がすことができる。このような方向性を有するスナップファスナは衣料、袋物、履き物などさまざまな分野で使用可能である。
【0002】
【従来の技術】
本出願人自身の先願、特開平10−33210(特許文献1)の発明は、樹脂成形手段によって、合成樹脂製の雄スナップ部材を任意の間隔で生地テープに成形固定した雄側テープと、合成樹脂製の雌スナップ部材を任意の間隔で生地テープに成形固定した雌側テープとからなるテープ付きスナップファスナである。
【0003】
生地テープに固定されている雄スナップ部材の係合用突起については、該係合用突起部分を構成する頸部と頭部の内、頸部は雄基体に対して同一中心とするが、頭部は頸部の軸中心から偏心させて係合用縁を形成した構成としている。
【0004】
一方、生地テープに固定されている雄基体の中心から係合用突起が突設された雌基体に前記係合用突起を挿入する頭部挿入用ガイドと頭部が弾性変形して通過する係合用穴及び通過した頭部が納まる頭部収容室を形成した雌スナップ部材を、頭部挿入ガイドについては、頭部挿入用ガイドと係合用穴とを同一中心で形成し、頭部収容室については、前記雄スナップ部材の頭部の偏心に対応して挿入側中心から偏心した位置に形成し、その底部周囲の少なくとも偏心側に係止段を形成した構成としている。
【0005】
このスナップファスナは引き剥がし方向により係合強度が異なる。
【0006】
特許文献1の発明よりもさらに引き剥がしの方向性の強度を高めるため、本出願人自身の別の先願、特開平2001−8711(特許文献2)の発明では、特許文献1の構成に加えて、雌雄スナップ部材嵌合時の隙間を少なくするための手段を設けている。この手段は、例えば、係合用縁の反対側の頸部に設けた小突起又は、雌スナップ部材側に設けた突起である。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−33210号
【特許文献2】
特開2001−8711
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記特許文献1発明の改良に係るもので、雌雄スナップ部材が係合するのはより容易であるが、引き剥がしの強度はより強度であるようなスナップファスナを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の引き剥がしの方向性を有するスナップファスナは、合成樹脂製の雄スナップ部材と合成樹脂製の雌スナップ部材とからなるスナップファスナにおいて、前記雄スナップ部材は、雄基体から突設された係合用突起を有し、前記係合用突起は頸部と頭部から構成され、これらの頸部と頭部を貫いて少なくとも1本の溝が設けられており、前記頭部は前記頸部の軸中心から一方向に偏心させて係合用縁を形成しており、前記係合用縁と反対側の前記係合用突起の根元部分周囲にはくぼみが形成されており、前記雌スナップ部材は、前記係合用突起を挿入する頭部挿入用ガイドと頭部が弾性変形して通過する係合用穴及び通過した頭部が納まる頭部収容室を形成した雌基体を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の態様】
前記溝は、雄側テープの長手方向に垂直な方向に伸びており、通常は1本でよいが、細いものなら2本又はそれ以上設けることも可能である。
【0011】
好ましくは、前記係合用縁側の前記係合用突起の根元部分周囲に貫通空間を形成する。雌雄スナップ部材の嵌合時、前記頭部挿入用ガイドは、貫通空間とくぼみに収容される。
【0012】
【実施例】
以下、添付の図面に基づき本発明の実施例を説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例に係る一対のテープ付きスナップ部材の係合面側から見た部分図で、(a)は雄側テープ、(b)は雌側テープである。図2は図1のA−A線における雄スナップ部材の拡大断面図である。図3は雄スナップ部材の係合面と反対側から見た拡大図、図4は雄スナップ部材の係合面側から見た拡大図である。図5は図1のB−B線における雌スナップ部材の拡大断面図、図6は雌スナップ部材の係合面と反対側から見た拡大図である。図7は雌スナップ部材の係合面側から見た拡大図である。
【0014】
図1に示すように、本発明のテープは雄側テープ3と雌側テープ6との一対のテープ付きスナップ部材から構成されている。雄側テープ3は、溶融樹脂射出成形手段によって、ポリアセタール樹脂製の雄スナップ部材1の複数個を所定間隔でナイロン製又は綿製の生地テープ2に成形固定している。雌側テープ6は、前記雄スナップ部材1と同材質の雌スナップ部材4の複数個を前記雄スナップ部材1と同一間隔又は異なる間隔で生地テープ5に成形固定している。なお、一対のテープ付きスナップファスナは長尺物として製作されたものであるが、図1では図示の都合上一部のみを示している。
【0015】
図2に示すように、雄スナップ部材1は、雄基体11の中心から係合用突起12が突設されたものである。雄基体11の係合側表面は中心から外部に向かって緩い傾斜面11aとなっている。係合用突起12は頸部13と頭部14から構成されている。頸部13は円柱であり、雄基体11と同一中心である。頭部14は頸部の軸中心から一方向に偏心して係合用縁16を形成している。頸部13と頭部14を貫いて、雄側テープの長手方向に垂直な方向に深い溝17が形成されている。 係合用突起12の裏面側には、リング状の浅い溝19があるが、これは射出成型時の樹脂注入口の跡である。
【0016】
係合用縁16側の頸部13の根元部分に、引っ掛かりの大きい係合用縁16を簡単な割金型で形成するための型抜きを許容すると共に、頸部13の弾性変形を許容する貫通空間15が半円形に形成されている。この貫通空間15は係合方向を示す位置決めの目印ともなる。
【0017】
係合用縁16と反対側の頸部13の根元部分には、頸部13の弾性変形を許容するくぼみ18が設けられている。
【0018】
一方、雌スナップ部材4には、図5に示すように、雌基体41に、前記雄スナップ部材1の係合用突起12の頭部14が挿入するのを助ける頭部挿入用ガイド42と、弾性変形して通過する係合用穴43と、通過した頭部14が納まる頭部収容室44とが形成されている。頭部挿入用ガイド42は、図7に示すように、直線状に2本平行して設けられ、図5に示すように、断面は半円状である。頭部収容室44は、係止段45を有し、雌雄スナップ部材の嵌合時、ここに雄スナップ部材の係合用縁16が着座する。
【0019】
なお、係合用突起12の周辺及び係合用穴43の周辺に大小の円形7が8個ずつ描かれているが、これらは雌雄スナップ部材の射出成形段階において生地テープ2、5を挟み付けるために成形金型のピンによって形成されたピン孔である。
【0020】
上記のように構成された雄スナップ部材1と雌スナップ部材4との係合状態及び分離状態は図8、図9に示す通りである。係合状態を、図8に基づき説明すると、雄スナップ部材1の係合用突起12を、雌スナップ部材4の頭部挿入用ガイド42から係合用穴43に押し込み、係合用穴43と頭部14に弾性変形を与えながら頭部14を頭部収容室44に納める。このことによって、頭部14の係合用縁16が係止段45に係止され、雄スナップ部材1と雌スナップ部材4とは係合される。このとき、2本の頭部挿入用ガイド42は、それぞれ貫通空間15とくぼみ18に収容されて、両者の間の隙間を少なくする(図8参照)。
【0021】
係合用突起12の頭部14が係合用穴43を通過するとき、頭部の溝17が狭まる方向に頭部は弾性変形するので、頭部の挿入は容易となる。頭部14が係合用穴43を通過し終わった後では、溝17の幅は元通りに復元するので係合が確実となる。
【0022】
一方、雄スナップ部材1と雌スナップ部材4との係合を解除する場合について図9に基づいて説明すると、分離方向(矢印方向)の力を生地テープ5に作用させると、係合用突起12の溝17の幅が縮まり、係合用穴43の幅広側の係止段45と頭部14の係合用縁16との係合状態が緩くなると共に、係合用突起12の根元部分に形成した貫通空間15によって、係合用突起12の貫通空間方向への弾性変形スパンが長くなる。したがって、分離方向に作用する力によって係合用突起12が弾性変形(想像線の状態)し易くなることから、僅かの力を加える分離操作によって簡単に雄スナップ部材1と雌スナップ部材4との係合を外すことができる。
【0023】
以上説明した本発明の実施例に係るテープ付きスナップファスナの製作するには、雄スナップ部材成形部又は雌スナップ部材成形部を多数形成した上下金型間に、成形部に応じた間隔で成形位置穴を穿設した生地テープを挟み込み、成形部へ溶融樹脂を射出する。
【0024】
【発明の効果】
本発明のテープ付きスナップファスナによれば、雄スナップ部材1の係合用突起12を、雌スナップ部材4の頭部挿入用ガイド42から係合用穴43に押し込み、該係合用穴43と頭部14に弾性変形を与えながら頭部14を頭部収容室44に納めることによって、頭部14の係合用縁16が係止段45に係止される。
【0025】
雌雄スナップ部材を嵌合又は解除するとき、係合用突起12の頭部14が係合用穴43を通過する瞬間、頭部の溝17が狭まるように頭部は弾性変形するので、頭部の挿入・抜取りが容易となる。頭部14が係合用穴43を通過し終わった後では、溝の幅は元通りに復元するので係合が確実となる。また、溝幅の分だけ係合用縁を延長することもできるので、雌雄スナップ部材の嵌合時の嵌合力がさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る一対のテープ付きスナップ部材の係合面側から見た部分図で、(a)は雄側テープ、(b)は雌側テープである。
【図2】図1のA−A線における雄スナップ部材の拡大断面図である。
【図3】雄スナップ部材の係合面と反対側から見た拡大図である。
【図4】雄スナップ部材の係合面側から見た拡大図である。
【図5】図1のB−B線における雌スナップ部材の拡大断面図である。
【図6】雌スナップ部材の係合面の反対面側から見た拡大平面図である。
【図7】雌スナップ部材の係合面側から見た拡大底面図である。
【図8】雄スナップ部材と雌スナップ部材との係合状態を示す断面図である。
【図9】雄スナップ部材と雌スナップ部材との分離状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 雄スナップ部材
2 生地テープ
3 雄側テープ
4 雌スナップ部材
5 生地テープ
6 雌側テープ
7 ピン穴
11 雄基体
12 係合用突起
13 頸部
14 頭部
15 貫通空間
16 係合用縁
17 (深い)溝
18 くぼみ
41 雌基体
42 頭部挿入用ガイド
43 係合用穴
44 頭部収容室
45 係止段
Claims (3)
- 合成樹脂製の雄スナップ部材(1)と合成樹脂製の雌スナップ部材(4)とからなるスナップファスナにおいて、
前記雄スナップ部材(1)は、雄基体(11)から突設された係合用突起(12)を有し、
前記係合用突起(12)は頸部(13)と頭部(14)から構成され、これらの頸部(13)と頭部(14)を貫いて少なくとも1本の溝(17)が設けられており、
前記頭部(14)は前記頸部(13)の軸中心から一方向に偏心させて係合用縁(16)を形成しており、
前記係合用縁(16)と反対側の前記係合用突起(12)の根元部分周囲にはくぼみ(18)が形成されており、
前記雌スナップ部材(4)は、前記係合用突起(12)を挿入する頭部挿入用ガイド(42)と頭部(14)が弾性変形して通過する係合用穴(43)及び通過した頭部(14)が納まる頭部収容室(44)を形成した雌基体(41)を有する
ことを特徴とする、引き剥がしの方向性を有するスナップファスナ。 - 前記係合用縁(16)側の前記係合用突起(12)の根元部分周囲に貫通空間(15)が形成されている請求項1記載のスナップファスナ。
- 雌雄スナップ部材(1,4)の嵌合時、前記頭部挿入用ガイド(42)が、前記貫通空間(15)と前記くぼみ(18)に収容される請求項2記載のスナップファスナ。
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