JP4005381B2 - 工業用多層織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は抄紙用織物、搬送ベルト、ろ布等の工業用織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から工業用織物としては経糸、緯糸で製織した織物が広く使用されており、例えば抄紙用ワイヤーや搬送用ベルト、ろ布等その他の多くの分野で使用されており、用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。特に織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用ワイヤーでの要求は厳しく、紙に織物のワイヤーマークを転写することのない表面性に優れた織物、また過酷な環境下においても好適に使用できる程度の剛性を持ち合わせたもの、そして良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、耐摩耗性、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用ワイヤーへの要求も一段と厳しいものとなっている。
このように工業用織物の中でも要求が厳しい抄紙用織物について説明すればほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できるので、以下抄紙用織物を代表して本発明を説明する。
例えば、抄紙スピードが高速になると必然的に脱水スピードが高速になり、脱水力を強力にする必要がある。それによって当然繊維や填料等の抜け、ワイヤーマークの発生は顕著になるため、さらなる繊維支持性、表面性の改良が必要となる。また、抄紙用織物に湿紙のくい込みが大きくなったり、繊維のささり込みが発生すると湿紙をフェルトへ移送する場合の湿紙剥離性が悪くなるという問題も発生する。織物上に残って形成された湿紙は脱水力によって、織物表面に押し付けられるため、糸が存在している部分では糸が湿紙にくい込み、逆に糸が存在しない網目間では湿紙が網目にくい込んで湿紙表面上に糸と網目のマークを発生させるためである。ワイヤーマークを完全になくすことは不可能であるが、これを極力小さく目立たなくするためには織物の上層表面を細かくし、表面平滑性、及び繊維支持性の向上を図らなくてはならない。しかし、表面性や繊維支持性を重視した目の細かい織物は、基本的に線径の小さい糸で製織されているため耐摩耗性には劣っていた。
また、抄紙用織物は高速で走行するためマシンと接触する側の走行面側ではロール等との摩擦によって織物が次第に摩耗していく現象がみられ、摩耗によって寿命が尽きてしまうこともある。耐摩耗性を向上させるには織物組織を緯糸摩耗型の組織にしたり、糸の材質を変更したりと様々な対策が必要とされ、特に線径の大きい糸を用いて耐摩耗構造とする方法等が一般的に用いられている。しかし、線径の大きい糸は耐摩耗性は向上するものの優れた表面性を得ることは困難であった。
【0003】
表面性と耐摩耗性の両方の問題を解決するために、上面側層と走行面側層にそれぞれ別の経糸、緯糸を用いて構成した2枚の織物を使用し、両層の織物を接結糸によって一体化させた2層織物が用いられてきた。この方法はそれぞれに要求される性能に応じた織物を採用できるという効果があった。上面側層に線径の小さい経糸、緯糸を用いて緻密な上層面を形成し、走行面側層に線径の大きい経糸、緯糸を使用して耐摩耗性の大きい走行面を形成した。接結糸には表面性を低下させないために一般的に上面側経糸、上面側緯糸より小径の糸が使用された。上面側層組織は緻密な表面を形成するために平織りが使用されることも多いが、実際には2つの層を織り合わせるために接結糸が用いられるので、実質平織り表面に接結糸が所々に配置された表面が形成されることとなる。接結糸はこのように表面に現れる部分も存在するため、表面平滑性の問題から線径のあまり大きい糸を使用することは好ましくはなかった。
また、通常製紙用織物としては使用時には経方向に張力が掛けられることが多く、経方向の糸は常に張力が掛けられている状態であるので織物の走行によって経糸がゆるみ移動することはほとんどないが、製織性や繊維支持性等の問題から緯糸間に配置されることの多い接結糸では、張力が掛かると伸びたり上面側層と走行面側層の間で接結糸が揉まれて内部摩耗が発生し、織物間に隙間が発生したり分離してしまうという問題が生じることがあった。これは無端状ベルトがいくつかのロールに掛けられて走行しているためであり、ロールに織物が接触する部分ではロールの弧に沿って2層織物が湾曲し織物の各層で周長差が生じる。それによって各層を織り合わせている接結糸が揉まれ、内部摩耗が発生するのである。内部摩耗は表面性向上のために使用されている線径が小さく強度の低い接結糸でよく見受けられる。線径の小さい接結糸のみでの上面側層、走行面側層の接結は接結力が不十分であった。また接結糸は2枚の織物を連結するために上面側層の糸に絡み、接結力によって糸を引き込むために上面側表面に凹みを与えて織物の表面性を悪化させてしまうという問題もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みて、上面側表面の一部を形成しつつ上面側層と走行面側層を連結する経糸地糸接結糸と、緯糸間で繊維支持性を向上させるための補助緯糸、および補助緯糸と共に繊維支持性を向上させつつも上面側層と走行面側層を接結する補助緯糸接結糸を配置し、接結力、繊維支持性、表面平滑性に優れた工業用多層織物を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は
「1. 少なくとも上面側層と走行面側層を備え、上面側層および走行面側層を織りなす経糸地糸接結糸と補助緯糸接結糸により上面側層と走行面側層とを連結してなる工業用多層織物において、上面側経糸の一部または全部を2本1組の経糸地糸接結糸とし、該2本1組の経糸地糸接結糸が交互に上面側に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表面に実質的に上面側経糸1本分の組織を形成し、且つ上面側緯糸間に連続する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する補助緯糸接結糸を配置し、該補助緯糸接結糸の隣に補助緯糸を配置し、該補助緯糸を隣接する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する補助緯糸としたことを特徴とする工業用多層織物
2. 補助緯糸接結糸を補助緯糸の両隣に配置し、かつ該両隣に配置した補助緯糸接結糸のうち一方の補助緯糸接結糸が上面側に位置している部分では他方の補助緯糸接結糸が走行面側に位置し、一方の補助緯糸接結糸が走行面側に位置している部分では他方の補助緯糸接結糸が上面側に位置する糸である、1項に記載された工業用多層織物。
3. 上面側経糸の全部を経糸地糸接結糸とした、1項または2項に記載された工業用多層織物。
4. 上面側経糸と2本1組の経糸地糸接結糸とを交互に配置した、1項ないし3項のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
5. 上面側表面を平織組織とした、1項ないし4項のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
6. 組を形成する2本の経糸地糸接結糸が同組織であり、それらが交互に上面側に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表面に実質的に上面側経糸1本分の組織を形成する、1項ないし5項のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
7. 経糸地糸接結糸が、走行面側経糸が走行面側緯糸の下側を通る位置で走行面側緯糸の下側を通る、1項ないし6項のいずれか1項に記載された工業用多層織物。」
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の工業用織物は抄紙用ワイヤー、搬送用ベルト、ろ布等の工業用織物として使用するものであり、特にはユーザーからの要求の厳しい抄紙用ワイヤーとしても好適に使用することができる。
本発明は少なくとも上面側層と走行面側層を備え、上面側経糸の一部又は全部を経糸地糸接結糸とし、上面側表面を形成しつつ、上面側層と走行面側層を織り合せた経糸地糸接結糸を用い、また上面側緯糸間に、隣接する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成する補助緯糸を配置し、該補助緯糸の隣に、隣接する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成し、次いで走行面側緯糸の下側を通って上面側層と走行面側層を織り合わせた補助緯糸接結糸を配置した構造とした。この多層織物は接結力、繊維支持性、表面平滑性に優れた効果がある。
従来の多層織物では2つの織物を連結する接結糸に、上面側経糸、緯糸よりもはるかに線径が小さい上面側表面に突出等の影響を与えない程度の径の接結糸を緯糸間に配置することが多かった。しかし、周知の方法によって端部を織り継がれた無端状ベルトはいくつかのロールに掛けられて走行しているため、張力をかけられた織物がロールに接触する部分ではロールの弧に沿って2層織物が湾曲することで織物の各層で周長差が生じ、それによって各層を織り合わせている接結糸が揉まれ、織物間張力を受けると伸びてゆるみが生じ、内部摩耗が発生し、織物がずれてろ水性を低下させてしまうこともあった。
また、たとえ小径で接結力の小さい接結糸であっても2つの織物を接結しているため、上面側層の糸の上側を通ってから下側に潜るとき、接結糸が表面に現れる部分で織物表面に凹みが発生し紙にワイヤーマークを与えてしまうことがあった。
【0007】
そこで本発明の多層織物は上面側表面の一部を形成しつつも上面側層と走行面側層を連結する経糸地糸接結糸を織物走行方向に配置し、さらに緯糸間で上面側表面の一部を形成しつつ上面側層と走行面側層を連結する補助緯糸接結糸と、補助緯糸接結糸の隣に補助緯糸接結糸と共に繊維支持を行う補助緯糸を配置した。緯糸間に補助緯糸、補助緯糸接結糸を配置したことで繊維支持性が向上し、局所的な凹みの発生もないため表面平滑性にも優れ、また本発明の織物は経糸地糸接結糸と補助緯糸接結糸によって2つの層を接結するため接結力が非常に優れたものとなった。
経糸地糸接結糸によって織物を接結することによる一番の効果は、従来の接結するだけで表面組織形成に関与しない接結糸とは異なり、該経糸地糸接結糸が織物表面の一部として機能するため局所的な凹みの発生がないということである。経糸地糸接結糸は経方向、つまり一般的にいう走行方向に伸びて常に張力がかけられた状態で使用されているため糸のたるみの発生がなく、織物構造から見ても接結力が強い傾向にある。それに加えて緯糸間に配置した補助緯糸接結糸が上面側層、走行面側層を接結しているため接結力に非常に優れた多層織物となった。また、緯糸間では補助緯糸と補助緯糸接結糸によって上面側表面に現れて繊維支持を行っており、これらを組み合わせて補助緯糸ロングクリンプ構造とすることもできる。補助緯糸接結糸を2本組にして配置してもよく、1本の補助緯糸接結糸が上面側表面を形成しているところの下側で、もう一方の補助緯糸接結糸が走行面側経糸の下側を通って2つの層を織り合わせる組織が考えられる。
【0008】
本発明で使用される上面側表面を形成する経糸は上面側経糸と経糸地糸接結糸の両方を用いてもよく、また上面側経糸の全てを経糸地糸接結糸としてもよい。走行面側には走行面側経糸を配置すればよい。実施例の一つとして、経糸地糸接結糸を2本1組とし、それに加えて上面側経糸を配置し、組になった経糸地糸接結糸と上面側経糸を交互に配置して上面側表面を形成してもよく、また上面側表面を形成する経糸を2本1組の経糸地糸接結糸のみとしてもよい。走行面側経糸は上面側経糸の下側に配置してもよく、また走行面側の経糸地糸接結糸の隣に配置してもよい。
補助緯糸接結糸は上面側層で2本以上の上面側経糸の上側を通過してクリンプを形成し、走行面側層で走行面側経糸の下側を通過して上面側層と走行面側層を接結した組織であればよく特に限定されない。ここでいう上面側経糸とは、上面側経糸はもちろんのこと1組の経糸地糸接結糸を1本の上面側経糸としてカウントしたものも含み、1組の経糸地糸接結糸と上面側経糸を1本交互に配置した構造の場合には、隣接する上面側経糸2本以上とは、少なくとも1本の上面側経糸とその隣に配置された1組の経糸地糸接結糸の上側を通る組織のことである。本発明において補助緯糸、及び補助緯糸接結糸が隣接する上面側経糸2本以上の上側を通る組織としたのは、緯糸の繊維支持性を向上させるためである。
【0009】
補助緯糸接結糸と補助緯糸の組織についてはこれらを組み合わせて上層面側表面の平滑性を崩すことがなく、繊維支持性を向上させる組織とすることが望ましい。例えば、2本の補助緯糸接結糸とその間に1本の補助緯糸を配置して、これら3本によってロングクリンプを形成し、繊維支持性に優れた表面とすることもできる。1本の補助緯糸の両側に補助緯糸接結糸を配置した構造とすると、安定性、接結強度に優れた織物とすることができるため好ましい。
経糸地糸接結糸、補助緯糸接結糸等2本以上を組にして配置した場合は、その組になった組織は同一でも、異なっても構わない。それらは上面側表面構成糸であるため2本1組の経糸地糸接結糸、補助緯糸接結糸が織物表面で実質経糸1本分、補助緯糸1本分の組織を形成する組織とするのが好ましい。
本発明の多層織物の例として、例えば上面側経糸の全てを経糸地糸接結糸とし、2本1組の経糸地糸接結糸と上面側緯糸によって上面側表面に平織り組織を形成し、且つ2本1組の補助緯糸接結糸が緯糸間で組になって一方の補助緯糸接結糸が経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成しているところの下側でもう一方の補助緯糸接結糸が走行面側経糸の下側を通って上面側層と走行面側層を織り合わせる組織とした。2本の補助緯糸接結糸を組み合わせて、複数本の経糸地糸接結糸の上側を通ってクリンプを形成した後、複数本の連続した経糸地糸接結糸の下側を通る補助緯糸1本分の組織を上面側表面に形成した。そして2本1組の補助緯糸接結糸の間に補助緯糸を配置して、1組の補助緯糸接結糸が上面側表面にクリンプを形成していない位置で補助緯糸が上面側経糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、補助緯糸接結糸が経糸地糸接結糸の上側でクリンプを形成している位置で補助緯糸が経糸地糸接結糸の下側を通る構造とした。
上記に述べた実施例は本発明の一つの実施例であってこれに限定されない。しかし、この実施例のように上面側経糸と上面側緯糸からなる織物表面を平織構造とすると繊維支持点数が増加するため繊維支持性が向上し、また織り目が細かくなるため表面平滑性にも優れるという効果があり、補助緯糸接結糸、及び補助緯糸を組み合わせてロングクリンプを形成する構造とすると更に繊維支持性を向上させる効果がある。
【0010】
織物組織の具体的な例として、まず1組の経糸地糸接結糸の組織が同じである場合と異なる場合が考えられ、1組の経糸地糸接結糸が同一組織となる例の1つとしては、経糸地糸接結糸が1本の上面側緯糸の上側を通過し上面側にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナックルを形成し、次いで2本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、1本の走行面側緯糸の下側を通過し、次いで2本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過する組織であり、経糸地糸接結糸を2本組み合わせて上層面側表面に経糸1本分の平織りを形成した16シャフトの2層織物がある。
また2本1組の経糸地糸接結糸が異なる組織を形成する例の1つとしては、1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次いで3本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで1本の走行面側緯糸の下側を通過し、3本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過する経糸地糸接結糸と、対するもう一方が1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、1本の上面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次いで2本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、そして1本の走行面側緯糸の下側を通過し、次いで2本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過する組織であり、経糸地糸接結糸を2本組み合わせて上面側表面に経糸1本分の平織りを形成する20シャフトの2層織物としてもよい。
この他にも上面側表面の一部を形成し、且つ上面側層と走行面側層を連結する組織であればよく上記組織に限定されない。例えば、2本の経糸地糸接結糸が同一組織である組と異なる組織である組を交互に配置してもよく、また異なる組織の組み合わせからなる1組の経糸地糸接結糸の配置順を交互に配置した構造としもよい。1組の経糸地糸接結糸の配置順を交互に配置することで、2つの経糸地糸接結糸の交差部の影響による織物の斜めラインを崩すことができるため、表面性を重視する製紙用織物においては効果的な方法である。
【0011】
上面側経糸を配置する場合には、1組の経糸地糸接結糸と上面側経糸が織物表面に現れて均一な表面を得ることのできる組織とすることが好ましく、例えば1組の経糸地糸接結糸が織物表面で平織を形成している場合には上面側経糸も同様の平織組織とすると表面性を害することがなく好適である。しかしこれに限ったものでなく、経糸地糸接結糸と上面側経糸を用いて織物表面を形成すればよい。また、走行面側経糸においては、上面側経糸の下側に配置しても、また経糸地糸接結糸数本おきに配置しても構わない。走行面側層は織物の走行における摩耗に耐え得る構造とすることが好ましく、緯糸摩耗型の組織とするとよい。
補助緯糸接結糸の組織については、上面側緯糸間で1本の補助緯糸接結糸が連続する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成し、そして走行面側経糸の下側を通って上面側層、走行面側層を織り合わせる組織とすればよい。例えば補助緯糸接結糸を2本1組で緯糸間に配置し、該2本1組の補助緯糸接結糸のうち一方が上面側層を形成しているところの下側で、もう一方の補助緯糸接結糸が走行面側層を織りなす組織とすればよく、2本の補助緯糸接結糸が交互に上面側に現れて上面側経糸と織りなし上面側表面に実質補助緯糸1本分の組織を形成する構造とするとよい。
【0012】
補助緯糸接結糸の組織としては例えば、補助緯糸接結糸2本1組で、連続する2本の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成し、次いで3本の上面側経糸の下側を通過する実質上補助緯糸1本分の2/3組織を形成したものがある。
他には補助緯糸接結糸が連続する2本の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成し、次いで連続する2本の上面側経糸の下側を通過する実質上補助緯糸1本分の2/2組織を形成したもの。
補助緯糸接結糸が隣接する3本の上面側経糸の上側を通過して上面側にクリンプを形成し、次いで2本の上面側経糸の下側を通過する実質上補助緯糸接結糸1本分の3/2組織を形成したもの。その他にも適宜4/2、2/4、3/3等の組織としてもよい。
【0013】
また、補助緯糸の組織については、補助緯糸接結糸に隣接して1本の補助緯糸が連続する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する組織とすればよい。例えば補助緯糸接結糸を2本1組で緯糸間に配置し、その間に補助緯糸を配置し、補助緯糸接結糸が上面側表面に現れてクリンプを形成していないところで補助緯糸が上面側表面を形成する組織とすれば表面平滑性、繊維支持性に優れた織物となる。
例えば、補助緯糸接結糸が2本1組で上面側表面に連続する2本の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成した後、3本の上面側経糸の下側を通過する実質上補助緯糸1本分のように機能した2/3組織を形成する組織と組み合わせて繊維支持性を向上させるための補助緯糸の組織は、補助緯糸接結糸が3本の上面側経糸の下側を通過するところで、補助緯糸が3本の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する組織とし、また補助緯糸接結糸が2本の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成するところで、補助緯糸が2本の上面側経糸の下側を通る組織とする。そのような組織とすることで、緯糸間では2本1組の補助緯糸接結糸と補助緯糸によって全ての上面側経糸の上側を通る組織とすることができるため繊維支持性が非常によくなる。
その他にも補助緯糸接結糸が2本1組で連続する2本の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成した後、2本の上面側経糸の下側を通過する実質上補助緯糸1本分の2/2組織を形成した組織においては、補助緯糸接結糸が2本の上面側経糸の下側を通過するところで、補助緯糸が2本の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する組織とし、また補助緯糸接結糸が2本の上面側経糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成するところで、補助緯糸が2本の上面側経糸の下側を通る組織とする。
しかし、このように補助緯糸と補助緯糸接結糸が全ての上経糸の上側を通る組織とする必要もなく、補助緯糸と補助緯糸接結糸の組織の組み合わせを適宜変更することができる。補助緯糸、補助緯糸接結糸が多くの上面側経糸の上側を通る組織とすると繊維支持性が向上する傾向があるため好ましい。特には上面側表面に上面側経糸2本分以上のクリンプを形成した組織とするのが好ましい。
1本の補助緯糸、及び補助緯糸接結糸があまり長いロングクリンプを形成する構造であると、補助緯糸、補助緯糸接結糸が織り込まれる回数が減少するため、安定性がなくなり糸のずれが生じてしまうことがあるため、本発明のように補助緯糸、及び補助緯糸接結糸を組み合わせてロングクリンプを形成する方法は上記のような問題もなく効果的である。
上面側緯糸、走行面側緯糸は上下に配置されており、上面側緯糸組織は経糸地糸接結糸の組織に合わせて上面側表面を形成する組織とすればよく、走行面側緯糸は緯糸摩耗組織とすると使用寿命を長くすることができるため好ましい。
【0014】
また、本発明に使用される糸は用途、あるいは織物上での各糸の機能によって選択すればよく、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用してもよい。
抄紙用ワイヤーとしては一般的には、上面側経糸、走行面側経糸、上面側緯糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、経糸地糸接結糸としては上面側経糸同様ポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。上面側経糸と経糸地糸接結糸の糸の種類や線径等は同じであっても、異なるものであってもよく、織物の性質や製織性等から随時選択できる。しかし、上面側経糸と経糸地糸接結糸では役割が異なり、また経糸地糸接結は2本1組で経糸間に配置されることが多いことから、異なる糸を用いた方が好ましい。補助緯糸接結糸、及び補助緯糸は組織やその他の条件等によってポリエステル、またはポリアミドモノフィラメントを用いるのが好ましい。
また、耐摩耗性が要求される走行面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとナイロンモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できるため好ましい。
【0015】
【実施例】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1、2、3は本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸、および経糸地糸接結糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、そのうち奇数番号1,3,5・・・は2本1組で配置した経糸地糸接結糸のペアであって、偶数番号2,4,6・・・は走行面側経糸である。緯糸、補助緯糸、補助緯糸接結糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1´、2´、3´で示し、そのうち偶数番号2´、4´、6´・・・は補助緯糸接結糸であり、奇数番号1´、3´、5´・・・は緯糸と補助緯糸であり、交互に配置されている。緯糸は上面側緯糸と走行面側緯糸が上下に配置されている。×印は上面側経糸、または経糸地糸接結糸が上面側緯糸の上側を通ってナックルを形成していることを示し、○印は走行面側経糸が走行面側緯糸の下側に位置していることを示し、△印は経糸地糸接結糸が走行面側緯糸の下側に位置していることを示し、●印は補助緯糸が上面側経糸、または経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成していることを示し、■印は補助緯糸接結糸が上面側経糸、経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成していることを示し、□印は補助緯糸接結糸が走行面側経糸の下側に位置していることを示す。
本実施例では上面側緯糸と走行面側緯糸が意匠図上において、便宜上上下に重なって配置されているが、実際の織物ではずれて配置されることがある。
【0016】
実施例1
図1の意匠図において、上面側経糸の全てを経糸地糸接結糸とし、経糸地糸接結糸を2本1組で経糸1本分の組織になるように配置しており、そして上面側緯糸間に1本の補助緯糸と、補助緯糸の両側に補助緯糸接結糸を配置した2層織物であり、2本1組で配置された経糸地糸接結糸を挟んで走行面側に走行面側経糸を配置した。本実施例では1,3,5,7,9,11,13,15,17,19が2本1組で配置された経糸地糸接結糸であり、組になった経糸地糸接結糸の間に走行面側経糸2,4,6,8,10,12,14,16,18,20を配置した。そして、1´,5´,9´,13´,17´,21´,25´,29´,33´,37´は緯糸であり、上面側緯糸、走行面側緯糸が上下に配置されている。2´,4´,6´,8´,10´,12´,14´,16´,18´,20´は補助緯糸接結糸であり、緯糸間に2本1組で配置されている。補助緯糸接結糸の間に存在する3´,7´,11´,15´,19´,23´,27´,31´,35´,39´は補助緯糸である。
上面側表面では2本1組の経糸地糸接結糸が組になって上面側緯糸と織り合わされて経糸1本分の平織組織を形成しており、緯糸間には2本の補助緯糸接結糸が2本の上面側経糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、補助緯糸接結糸が上面側表面に現れていないところで補助緯糸が上面側表面に上面側経糸3本分のクリンプを形成している。このような構造とすることで上面側表面に部分的な凹みの発生がなく、繊維支持性を向上させることもできる。
また、経糸地糸接結糸、及び補助緯糸接結糸は上面側層では織物表面を形成しているが、走行面側層では走行面側緯糸の下側を通って2つの層を織り合わせている。2本1組で配置されている経糸地糸接結糸、補助緯糸接結糸は、一方が上面側層を形成しているところの下側で、もう一方が走行面側層を接結している。このような構造としたことで表面性に悪影響を及ぼすことなく、接結力を向上できるため内部摩耗の問題もなくなった。
【0017】
図1は本発明の実施例の一つであり、異なる組織の経糸地糸接結糸を2本1組で配置しており、上面側緯糸間に2本の補助緯糸接結糸と、その間に1本の補助緯糸を配置したものである。
組織の異なる組になった2本の経糸地糸接結糸1の一方は、1本の上面側緯糸1´と走行面側緯糸1´の間を通過し、上面側緯糸5´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、1本の上面側緯糸9´と走行面側緯糸9´の間を通り、次いで1本の上面側緯糸13´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、1本の上面側緯糸17´と走行面側緯糸17´の間を通り、次いで1本の上面側緯糸21´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、2本の上面側緯糸25´,29´と走行面側緯糸25´,29´の間を通り、そして1本の走行面側緯糸33´の下側を通り、1本の上面側緯糸37´と走行面側緯糸37´の間を通る組織である。それと対になる経糸地糸接結糸は3本の上面側緯糸1´,5´,9´と走行面側緯糸1´,5´,9´の間を通り、次いで1本の走行面側緯糸13´の下側を通り、3本の上面側緯糸17´,21´,25´と走行面側緯糸17´,21´,25´の間を通り、次いで1本の上面側緯糸29´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸33´と走行面側緯糸33´の間を通り、再び1本の上面側緯糸37´の上側を通って上面側表面にナックルを形成する組織である。このように、経糸地糸接結糸は所定の位置で織物表面に現れて上面側緯糸と織り合わされて2本1組で平織組織を形成している。
1本の経糸地糸接結糸が上面側層を形成しているところの下側では、もう一方の経糸地糸接結糸が走行面側層を接結している。この2本の経糸地糸接結糸は組織は異なるものの上面側表面に現れてクリンプを形成し、上面側緯糸と織り合わされて2本1組で上面側経糸1本分の平織組織を形成している。その他の経糸地糸接結糸3,5,7,9,11,13,15,17,19も同様で、異なる組織の経糸地糸接結糸を組み合わせて織物表面に平織を形成しつつ、上面側層と走行面側層を織り合わせる組織とした。
また、緯方向には上面側緯糸、走行面側緯糸が上下に配置されており、上面側緯糸間には1本の補助緯糸を挟んで2本の補助緯糸接結糸が配置されている。 2本1組の補助緯糸接結糸は組になって2組の経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成した後、3組の経糸地糸接結糸の下側を通る2/3組織が織物表面に形成される。
【0018】
具体的には1本の補助緯糸接結糸2´は、1組の経糸地糸接結糸1の下側を通り、次いで1本の走行面側経糸2の下側を通り、次いで4組の経糸地糸接結糸3,5,7,9の下側を通り、次いで2組の経糸地糸接結糸11,13の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで3組の経糸地糸接結糸15,17,19の下側を通る組織であり、それと対になった補助緯糸接結糸4´は、2組の経糸地糸接結糸1,3の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、4組の経糸地糸接結糸5,7,9,11の下側を通り、次いで1本の走行面側経糸12の下側を通り、次いで4組の経糸地糸接結糸13,15,17,19の下側を通る組織である。これら2本の補助緯糸接結糸を組み合わせて、2組の経糸地糸接結糸の上側を通って上面側にクリンプを形成した後、3組の経糸地糸接結糸の下側を通る2/3組織とした。
また、補助緯糸接結糸の間に配置されている1本の補助緯糸は、1組の補助緯糸接結糸が経糸地糸接結糸の下側を通るところで、経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する組織である。具体的には補助緯糸接結糸2´,4´の間に配置された補助緯糸3´は、1組の補助緯糸接結糸2´,4´が3組の経糸地糸接結糸5,7,9の下側を通っているところで、補助緯糸3´が3組の経糸地糸接結糸5,7,9の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する。一方で補助緯糸接結糸2´が2組の経糸地糸接結糸11,13の上側を通って上面側表面にクリンプを形成するところで、補助緯糸3´は2組の経糸地糸接結糸11,13の下側を通る。そのようにして補助緯糸3´は2組の経糸地糸接結糸1,3の下側を通り、次いで3組の経糸地糸接結糸5,7,9の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで2組の経糸地糸接結糸11,13の下側を通り、次いで3組の経糸地糸接結糸15,17,19の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する組織とした。
本実施例では1組の補助緯糸接結糸とその間に配置された1本の補助緯糸の組み合わせによって補助緯糸接結糸または補助緯糸が全ての経糸地糸接結糸の上側を通る組織とした。このように緯方向に伸びる補助緯糸、補助緯糸接結糸を組み合わせてロングクリンプとすることで繊維支持性を向上させることができるが、これを1本の補助緯糸接結糸が多くの経糸地糸接結糸の上側を通るロングクリンプとすると、織り込む力が弱くなり補助緯糸及び補助緯糸接結糸は移動しやすく、安定した織物を供給することが困難となる。しかし、本実施例のように補助緯糸接結糸と、補助緯糸を組み合わせてロングクリンプを形成することによって安定した織物を形成することができ、その上繊維支持性、接結力に優れた2層織物とすることができる。
【0019】
また、走行面側層は織物の走行によって生じる摩耗に耐え得る緯糸摩耗型組織とした。走行面側緯糸1´では4本の走行面側経糸の下側を通った後、1本の走行面側経糸の上側を通る走行面側緯糸がロングクリンプを形成する構造である。また、本実施例のように経糸地糸接結糸の走行面側ナックルを走行面側経糸の走行面側ナックルの隣に配置した構造とすると、走行面側経糸地糸よりも線径の小さい経糸地糸接結糸の摩耗を軽減することができて好ましい。例えば走行面側緯糸1´では走行面側経糸20、そしてこれに隣接する経糸地糸接結糸19の一方の走行面側経糸ナックルのことであり、また走行面側経糸10と経糸地糸接結9の一方の走行面側ナックルでも同様である。経糸地糸接結糸9では経糸地糸接結10の走行面側クリンプは走行面側経糸10のすぐ隣ではなく、1本の経糸地糸接結糸を挟んで走行面側ナックルを形成しているが、この場合でも経糸地糸接結糸9の走行面側ナックルが組になった経糸地糸接結糸の下側に入り込もうと力が働き、走行面側経糸10に接近するので同様に摩耗を軽減させる効果がある。その他の経糸地糸接結糸の走行面側ナックルでも同様の配置としているため小径の糸であっても摩耗を低減させる効果がある。
【0020】
実施例2
図2は本発明の他の実施例であり、同じ組織の経糸地糸接結糸を2本1組で配置しており、上面側緯糸間に2本の補助緯糸接結糸と、その間に1本の補助緯糸を配置したものである。意匠図に示した経糸、緯糸の番号については図1と同様であり、図1と異なる点はシャフト数が異なり、それによって補助緯糸接結糸と補助緯糸の組織が異なる。そして1組の経糸地糸接結糸の組織が同じであることである。
本実施例の経糸地糸接結糸1の一方は2本の上面側緯糸1´,5´と走行面側緯糸1´,5´の間を通過し、上面側緯糸9´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、1本の上面側緯糸13´と走行面側緯糸13´の間を通過し、次いで1本の上面側緯糸17´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、2本の上面側緯糸21´,25´と走行面側緯糸21´,25´の間を通過し、次いで1本の走行面側緯糸29´の下側を通る組織である。それと対になる経糸地糸接結糸は1本の上面側緯糸1´の上を通って上面側表面にナックルを形成し、2本の上面側緯糸5´,9´と下面側緯糸5´,9´の間を通り、次いで1本の走行面側緯糸13´の下側を通り、2本の上面側緯糸17´,21´と走行面側緯糸17´,21の間を通り、次いで1本の上面側緯糸25´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、次いで1本の上面側緯糸29´と走行面側緯糸29´の間を通る組織である。このように、組になった経糸地糸接結糸が適宜織物表面に現れて2本1組で平織組織を形成した。
1本の経糸地糸接結糸が上面側層を形成しているところの下側で、もう一方の経糸地糸接結糸が走行面側層を接結している。2本の経糸地糸接結糸を適宜組み合わせて上面側表面に平織組織を形成する。その他の経糸地糸接結糸3,5,7,9,11,13,15,も同様で、同じ組織の経糸地糸接結糸を組み合わせて織物表面に平織を形成しつつ、上面側層、走行面側層を織り合わせる組織とした。
【0021】
2本1組の補助緯糸接結糸の組織は組になって2組の経糸地糸接結糸の上側を通った後、2組の経糸地糸接結糸の下側を通る2/2の組織が織物表面に形成されることになる。
補助緯糸接結糸2´では、2組の経糸地糸接結糸1,3の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで3組の経糸地糸接結糸5,7,9の下側を通り、次いで1本の走行面側経糸10の下側を通り、次いで3組の経糸地糸接結糸11,13,15の下側を通る組織であり、それと対になった補助緯糸接結糸4´は、1組の経糸地糸接結糸1の下側を通り、次いで1本の走行面側経糸2の下側を通り、3組の経糸地糸接結糸3,5,7の下側を通り、次いで2組の経糸地糸接結糸9,11の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで2組の経糸地糸接結糸13,15の下側を通る組織である。そして、2本の補助緯糸接結糸を組み合わせて、2組の経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成した後、2組の経糸地糸接結糸の下側を通る2/2組織とした。
また、補助緯糸接結糸の間に配置されている1本の補助緯糸は、1組の補助緯糸接結糸が経糸地糸接結糸の下側を通るところで、経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する組織である。補助緯糸接結糸2´,4´の間に配置された補助緯糸3´は、1組の補助緯糸接結糸2´,4´が2組の経糸地糸接結糸5,7の下側を通っているところで、補助緯糸3´が2組の経糸地糸接結糸5,7の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する。また、補助緯糸接結糸2´,4´のうち補助緯糸接結糸2´が2組の経糸地糸接結糸1,3の上側を通って上面側表面にクリンプを形成しているところで、補助緯糸3´は2組の経糸地糸接結糸1,3の下側を通る。このようにして補助緯糸3´は2組の経糸地糸接結糸1,3の下側を通り、次いで2組の経糸地糸接結糸5,7の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで2組の経糸地糸接結糸9,11の下側を通り、次いで2組の経糸地糸接結糸13,15の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する組織となる。
本実施例では1組の補助緯糸接結糸とその間に配置された1本の補助緯糸の組み合わせによって補助緯糸接結糸または補助緯糸が全ての経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成する組織とした。このように緯方向に伸びる補助緯糸、及び補助緯糸接結糸を組み合わせてロングクリンプとすることで安定した織物を形成することができ、その上繊維支持性、接結力に優れた2層織物となる。
走行面側組織については織物の走行によって生じる摩耗に耐え得る緯糸摩耗型組織とした。また、経糸地糸接結糸の走行面側クリンプを走行面側経糸の走行面側クリンプの隣に配置した構造とすると、経糸地糸接結糸よりも線径の小さい経糸地糸接結糸の摩耗を軽減することができて好ましい。
【0022】
実施例3
図3の実施例は実施例1と同様に組になった経糸地糸接結糸が異なる組織であり、組になった経糸地糸接結糸と上面側緯糸によって織物表面に平織を形成し、上面側緯糸間に2本の補助緯糸接結糸と、その間に1本の補助緯糸を配置したものである。
本実施例の経糸地糸接結糸の組織は実施例1と同じであり、上面側表面の一部を形成しつつも上面側層、走行面側層を織り合わせてなるものである。
2本1組の補助緯糸接結糸の組織は組になって3組の経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成した後、2組の経糸地糸接結糸の下側を通るので3/2の組織が織物表面に形成されることになる。また実施例1,2と異なる点は1本の補助緯糸接結糸が連続した2本の走行面側経糸を織り込んでいるところである。
1本の補助緯糸接結糸2´では、2組の経糸地糸接結糸1,3の下側を通り、次いで連続した2本の走行面側経糸4,6の下側を通り、3組の経糸地糸接結糸7,9,11の下側を通り、次いで3組の経糸地糸接結糸13,15,17の上側を通って上面側表面にクリンプを形成し、次いで1組の経糸地糸接結糸19の下側を通る組織であり、それと対になった補助緯糸接結糸4´と組み合わせて、3組の経糸地糸接結糸の上側を通って上面側表面にクリンプを形成した後、2組の経糸地糸接結糸の下側を通る3/2組織とした。補助緯糸接結糸2´に隣接する走行面側緯糸1´の走行面側経糸ナックル18、8の間に連続した2本の走行面側経糸クリンプ4,6を配置した構造としたことで織物の安定性が向上し、越境対策としても有効となった。
また、補助緯糸接結糸の間に配置されている1本の補助緯糸は、1組の補助緯糸接結糸が経糸地糸接結糸の下側を通るところで、経糸地糸接結糸の上側を通る2/3組織とした。
また、他の実施例同様に経糸地糸接結糸の走行面側ナックルを走行面側経糸の走行面側ナックルの隣に配置した構造とすると、走行面側経糸よりも線径の小さい経糸地糸接結糸の摩耗を軽減することができて好ましい。
本実施例では1組の補助緯糸接結糸とその間に配置された1本の補助緯糸の組み合わせによって補助緯糸接結糸または補助緯糸が全ての経糸地糸接結糸の上側を通る組織とした。このように緯方向に伸びる補助緯糸、及び補助緯糸接結糸を組み合わせて上面側表面にロングクリンプを形成することによって安定した織物を形成することができ、その上繊維支持性、接結力に優れた2層織物とすることができる。
以上に示したような組織の補助緯糸と補助緯糸接結糸の組み合わせ以外にもその他の組織や組み合わせが考えられ、織物表面に現れて繊維支持性を向上させつつ上面側層、走行面側層を織り合わせてなるものであればどのような組織としても構わない。また、補助緯糸と補助緯糸接結糸の配置本数も適宜変更できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の工業用多層織物は上面側表面の一部を形成し且つ上面側層と走行面側層を織り合わせる経糸地糸接結糸と、緯糸間に繊維支持性を向上させつつ上面側層と走行面側層を織り合わせる補助緯糸接結と、補助緯糸接結の隣に繊維支持性を向上させる補助緯糸を配置した織物であり、このように経糸地糸接結糸と補助緯糸接結の両方によって接結した2層織物であるため接結力が非常に強く、織物表面にも部分的な凹みを発生させることもないため表面平滑性に優れ、また緯糸間に補助緯糸接結糸と補助緯糸を配置したため繊維支持性に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
【図2】本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
【図3】本発明の実施例3の完全組織を示す意匠図である。
【符号の説明】
1 2本1組の経糸地糸接結糸
2 走行面側経糸
3 2本1組の経糸地糸接結糸
4 走行面側経糸
5 2本1組の経糸地糸接結糸
6 走行面側経糸
7 2本1組の経糸地糸接結糸
8 走行面側経糸
9 2本1組の経糸地糸接結糸
10 走行面側経糸
11 2本1組の経糸地糸接結糸
12 走行面側経糸
13 2本1組の経糸地糸接結糸
14 走行面側経糸
15 2本1組の経糸地糸接結糸
16 走行面側経糸
17 2本1組の経糸地糸接結糸
18 走行面側経糸
19 2本1組の経糸地糸接結糸
20 走行面側経糸
1´ 緯糸
2´ 補助緯糸接結糸
3´ 補助緯糸
4´ 補助緯糸接結糸
5´ 緯糸
6´ 補助緯糸接結糸
7´ 補助緯糸
8´ 補助緯糸接結糸
9´ 緯糸
10´ 補助緯糸接結糸
11´ 補助緯糸
12´ 補助緯糸接結糸
13´ 緯糸
14´ 補助緯糸接結糸
15´ 補助緯糸
16´ 補助緯糸接結糸
17´ 緯糸
18´ 補助緯糸接結糸
19´ 補助緯糸
20´ 補助緯糸接結糸
21´ 緯糸
22´ 補助緯糸接結糸
23´ 補助緯糸
24´ 補助緯糸接結糸
25´ 緯糸
26´ 補助緯糸接結糸
27´ 補助緯糸
28´ 補助緯糸接結糸
29´ 緯糸
30´ 補助緯糸接結糸
31´ 補助緯糸
32´ 補助緯糸接結糸
33´ 緯糸
34´ 補助緯糸接結糸
35´ 補助緯糸
36´ 補助緯糸接結糸
37´ 緯糸
38´ 補助緯糸接結糸
39´ 補助緯糸
40´ 補助緯糸接結糸
Claims (7)
- 少なくとも上面側層と走行面側層を備え、上面側層および走行面側層を織りなす経糸地糸接結糸と補助緯糸接結糸により上面側層と走行面側層とを連結してなる工業用多層織物において、上面側経糸の一部または全部を2本1組の経糸地糸接結糸とし、該2本1組の経糸地糸接結糸が交互に上面側に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表面に実質的に上面側経糸1本分の組織を形成し、且つ上面側緯糸間に連続する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する補助緯糸接結糸を配置し、該補助緯糸接結糸の隣に補助緯糸を配置し、該補助緯糸を隣接する2本以上の上面側経糸の上側を通過して上面側表面にクリンプを形成する補助緯糸としたことを特徴とする工業用多層織物
- 補助緯糸接結糸を補助緯糸の両隣に配置し、かつ該両隣に配置した補助緯糸接結糸のうち一方の補助緯糸接結糸が上面側に位置している部分では他方の補助緯糸接結糸が走行面側に位置し、一方の補助緯糸接結糸が走行面側に位置している部分では他方の補助緯糸接結糸が上面側に位置する糸である、請求項1に記載された工業用多層織物。
- 上面側経糸の全部を経糸地糸接結糸とした、請求項1または2に記載された工業用多層織物。
- 上面側経糸と2本1組の経糸地糸接結糸とを交互に配置した、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
- 上面側表面を平織組織とした、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
- 組を形成する2本の経糸地糸接結糸が同組織であり、それらが交互に上面側に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表面に実質的に上面側経糸1本分の組織を形成する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
- 経糸地糸接結糸が、走行面側経糸が走行面側緯糸の下側を通る位置で走行面側緯糸の下側を通る、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された工業用多層織物。
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