JP4004650B2 - 口栓用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器の口栓(ポート、スパウトともいう)に用いる成形材料に関する。詳しくは、本発明は、剛性が高く、特に例えば最内層に密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを用いたような多層容器等との接着強度及びシール性に優れる口栓用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体等の内容物を収容する容器には、その内容物を容器へ導入したり容器から導出したりするための口栓部が設けられている。例えば、内容物が液体の場合は、その口栓から液体が注がれる。また、容器に内容物を導入する工程を含む製品の製造工程においては、通常はこの口栓から内容物を詰めた後、キャップ等を装着して栓をすることにより密閉する。
【0003】
このような口栓のなかには、周囲にネジが切ってあって、キャップをそのネジに沿って回しながら装着することによって栓がなされる形態のものがある。しかし、キャップには比較的硬い材料が使われることが多い。そのため、容器に液体等の内容物を詰めた後、機械がキャップを回して口栓部に栓をする一連の製造工程では、口栓の剛性が低いと、キャップによって口栓のネジ山が壊れたり、キャップを回しすぎて口栓とキャップとの密閉性が損なわれ、液体が漏れだしたりするトラブルが発生する場合がある。また、前述の一連の製造工程では、通常、搬送ライン上で容器を搬送する場合、該容器は後続の容器と口栓部において接触し該後続の容器に押し出されて搬送されるが、そのとき口栓の剛性が低いと、ラインがつまり停止するトラブルも多い。
【0004】
そこで、口栓の剛性を高くするために、該口栓を構成する材料として、密度の比較的高いポリエチレン系樹脂(いわゆる高密度ポリエチレン)が使用されている。
【0005】
しかし、高密度ポリエチレンを材料とする口栓を、密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを最内層に用いた多層容器に用いた場合、該多層容器と口栓とを熱を加えて溶融接着させると、前記最内層の材料である線状低密度ポリエチレンと口栓用材料である高密度ポリエチレンとの密度差により、充分な接着強度が出ないため、液体等の内容物が多層容器と口栓との境界から漏出する場合があり、問題となっている。
【0006】
このような線状低密度ポリエチレンを最内層に用いた多層容器は、低温ヒートシール性、高強度等の特性を活かすため近年開発されたものであり、最近ではシーラント層にメタロセン系触媒により製造されたポリエチレンを用いた多層フィルムもある。したがって、このような優れた多層容器への使用に耐えうる口栓の開発が必要となっている。
【0007】
そこで、剛性が高くある程度の硬さがあり、且つ密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを最内層に用いた多層容器の該最内層との接着性に優れた口栓用材料の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、剛性が高く、特に最内層に線状低密度ポリエチレンを用いた多層容器等との接着強度及びシール性に優れた容器の口栓用材料を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定のMFR、示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解挙動、及び引張弾性率を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、上記発明の目的が達成され得るとの知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す成分(A)を98〜50重量%含有し、成分(B)を2〜50重量%含有する樹脂混合物からなり、以下に示す物性(a)〜(c)を備えた口栓用材料を提供する。
成分(A):示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが126〜140℃の範囲に1つ存在する、α−オレフィン含量が0.1〜10モル%のエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体。
成分(B):重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて重合された、示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが120℃以下の範囲に1つ存在する、α−オレフィン含量が0.1〜10モル%のエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体。
(a)メルトフローレートが0.01〜200g/10分であること。
(b)示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが、120℃以下の範囲に1つ以上、及び126〜140℃の範囲に1つ以上存在すること。
(c)引張弾性率が2500kg/cm2以上であること。
【0011】
また、本発明は、最内層が密度0.92g/cm 3 以下の線状低密度ポリエチレンからなり且つ口栓部を有する多層容器における、該口栓部に用いる材料である、前記口栓用材料を提供する。
【0012】
また、本発明は、最内層が密度0.92g/cm 3 以下の線状低密度ポリエチレンからなり且つ口栓部を有する多層容器であって、前記口栓部が請求項1又は2記載の口栓用材料からなる多層容器を提供する。
【0013】
本発明の口栓用材料は、剛性が高く且つ線状低密度ポリエチレンとの接着性に優れているため、容器に内容物を収容した製品の製造工程において、比較的硬い材料からなるキャップにより機械を用いて口栓をする場合でも、キャップと口栓との密閉性が高く、液体が漏れだしたりするトラブルが生じない。また、製造工程でのラインのトラブルも生じにくい。
【0014】
さらに、密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを最内層に用いた多層容器に口栓を溶融接着させた場合においても、該最内層との間に充分な接着強度が得られるため、液体等の内容物が多層容器と口栓との境界から漏出する等のトラブルも生じない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の口栓用材料は、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン共重合体」とする)を主体とし、上記物性(a)〜(c)を備えている。
【0016】
(1)物性(a):メルトフローレート
本発明の口栓用材料は、そのメルトフローレート(溶融流量:以下、「MFR」と略す)が0.01〜200g/10分、好ましくは0.03〜180g/10分、より好ましくは0.05〜150g/10分である。ここでいうMFRは、JIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
【0017】
前記MFR値が上記範囲より大きいと、材料の耐熱性及び強度が低下するので好ましくない。一方、前記MFRが上記範囲より小さいと樹脂圧力が高くなり、押出性が低下したり、射出成形の場合は流れ性が悪化するので好ましくない。
【0018】
(2)物性(b):示差走査熱量測定法による融解ピーク
本発明の口栓用材料は、示差走査熱量測定法(以下、「DSC」と略す)によって測定した場合に得られる融解ピークが2以上、好ましくは2つ存在する。そして、その融解ピークは、少なくとも低温側のピークとして120℃以下の範囲に1つ以上、好ましくは1つ存在し、高温側のピークとして126〜140℃の範囲に1つ以上、好ましくは1つ存在する。この条件を満たすものであれば、例えばさらに120〜126℃の範囲にも融解ピークが存在するものであってもよい。
【0019】
融解ピークが120℃以下の範囲に存在しない場合、すなわち例えば低温側のピークが120℃より高い場合などでは、密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレン層との接着強度が低下するので好ましくない。
【0020】
一方、融解ピークが126℃〜140℃の範囲に存在しない場合は、次のような点で好ましくない。すなわち、例えば高温側のピークが126℃より低いと剛性が低下する。一方、高温側のピークが140℃より高いと密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレン層との接着強度が低下する。
【0021】
(3)物性(c):引張弾性率
本発明の口栓用材料は、その引張弾性率が2500kg/cm2以上、好ましくは3000kg/cm2以上である。ここでいう引張弾性率は、ISO−R1184に準拠して測定した値であって、インフレーション成形によるシートの引取方向(タテ方向)の値である。
【0022】
該引張弾性率が2500kg/cm2より小さいと、口栓用材料として剛性が不足するので好ましくない。
【0023】
(4)エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明の口栓用材料は、エチレン・α−オレフィン共重合体を主体とするが、2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を混合して上記物性(a)〜(c)を満たすようにする。
【0024】
上記物性(a)〜(c)を単独で満たすエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合、該共重合体は、好ましくはエチレン99.9〜90モル%とコモノマーであるα−オレフィン0.1〜10モル%とからなるものである。
【0025】
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜18の1−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。
【0026】
コモノマーとして上記のαーオレフィンは1種類に限られず、ターポリマーのように2種類以上用いた多元系共重合体も好ましいものとして含まれる。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・1−ブテン2元共重合体、エチレン・1−ヘキセン2元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン3元共重合体等が挙げられる。
【0027】
2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を混合して上記物性(a)〜(c)を満たす口栓用材料を得ようとする場合は、DSCによって得られる融解ピークが126〜140℃の範囲に1つ以上、好ましくは1つ存在するエチレン・α−オレフィン共重合体(高温側に融解ピークをもつ成分:成分(A))と、DSCによって得られる融解ピークが120℃以下の範囲に1つ以上、好ましくは1つ存在するエチレン・α−オレフィン共重合体(低温側に融解ピークをもつ成分:成分(B))との樹脂混合物を用いるのが好ましい。
【0028】
この樹脂混合物中の成分(A)及び成分(B)として用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレンとコモノマーの比率及びコモノマーの種類については、各々上述した物性(a)〜(c)を単独で満たすエチレン・α−オレフィン共重合体の場合と同様である。また、成分(A)のMFRは、好ましくは0.03〜180g/10分であり、成分(B)のMFRは、好ましくは0.03〜180g/10分である。
【0029】
また、前記樹脂混合物中の成分(A)と成分(B)との配合比率については、該樹脂混合物全量に対し、成分(A)を98〜40重量%、好ましくは95〜50重量%、成分(B)を2〜60重量%、好ましくは5〜50重量%含有するのが好ましい。
【0030】
成分(A)の配合比率が98重量%より大きい(成分(B)の配合比率が2重量%より小さい)場合は、密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレン層との接着強度が低下するので好ましくない。また成分(A)の配合比率が40重量%より小さい(成分(B)の配合比率が60重量%より大きい)場合は、口栓用材料として剛性が不足するので好ましくない。
【0031】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体(単独で使用する場合の共重合体、及び樹脂混合物とする場合における成分(A)並びに成分(B)等の各成分を含む)の製造方法については、上記物性を満たすものを製造し得る限り、その重合方法や触媒について特に制限はない。
【0032】
例えば、触媒については、チーグラー型触媒(担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組合せに基づくもの)、フィリップス型触媒(担持酸化クロム(Cr6+)に基づくもの)、カミンスキー型触媒(担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。
【0033】
重合法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法(例えば、特開昭59−23011号公報に記載の方法)や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。
【0034】
このうち、高温側に融解ピークをもつエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(A))は、触媒や重合法によらず、コモノマー量を調節することにより所望の融解ピークをもつものを得ることができる。よって、どの触媒で重合されたものでも本発明の効果を発揮し得る。
【0035】
一方、低温側に融解ピークをもつエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))は、高結晶成分を含まない、比較的狭い組成分布のものが好ましいので、特に四価の遷移金属を含むメタロセン化合物(カミンスキー型触媒)を用いることが望ましい。
【0036】
カミンスキー型触媒を用いたエチレン・α−オレフィン共重合体の具体的な製造方法としては、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭60−35005号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報WO91/04257号明細書等に記載されている方法、すなわちメタロセン触媒、メタロセン/アルモキサン触媒、又は、例えば国際公開公報WO92/07123号明細書等に開示されているようなメタロセン化合物とメタロセン触媒と反応して安定なイオンとなる化合物からなる触媒を使用して、エチレンとコモノマーのα−オレフィンとを共重合させる方法等を挙げることができる。
【0037】
前記成分(B)の製造に好ましく用いられる重合触媒である四価の遷移金属を含むメタロセン化合物としては、具体的には、モノ−、ジ−、及びトリ−シクロペンタジエニルもしくは置換シクロペンタジエニル金属化合物等を挙げることができる。
【0038】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の具体的な製法については特に制約はなく、例えば上記物性(a)〜(c)を単独で満たすエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合は、通常は該共重合体を1つの反応槽で製造する方法が採用される。また、前記エチレン・α−オレフィン共重合体として、上記成分(A)、成分(B)等の2以上の成分の樹脂混合物を用いる場合は、各成分を1つの反応槽で製造する方法、2つ以上の反応槽をつなげて各槽で各成分を各々重合し、連続的に上記物性(a)〜(c)を満たす樹脂混合物を製造する方法、各成分を各々別個に重合したのち、通常の樹脂組成物の製造方法と同様の方法に従って各成分を配合することによって上記物性(a)〜(c)を満たす樹脂混合物を製造する方法等の種々の方法を採用することができる。
【0039】
より具体的には、各々別個に重合して得られた低温側に融解ピークをもつ成分(B)と高温側に融解ピークをもつ成分(A)とを、予めドライブレンドし、そのブレンド物をそのまま成形機のホッパーに投入してもよい。また、そのブレンド物を押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融・混練し、通常用いられている方法でペレット状として口栓の成形に供することもできる。
【0040】
本発明の口栓用材料には、上記主成分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(低温側に融解ピークをもつ成分(A)と高温側に融解ピークをもつ成分(B)とからなる樹脂混合物を含む)のみからなるものであってもよいが、それに加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、一般に樹脂組成物用として用いられている補助添加成分を必要に応じて配合することもできる。
【0041】
そのような補助添加成分としては、例えば、酸化防止剤(中でも、フェノール系およびリン系酸化防止剤が好ましい)、アンチブロッキング剤、スリップ剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、着色剤及び/又は接着剤等を挙げることができる。
【0042】
これらの補助添加成分の配合量は特に限定されず、通常用いられる範囲で配合することができるが、一般的には、口栓用材料に対し0.005〜8重量%程度である。また、これらの補助添加成分の配合は、通常の樹脂添加剤の配合方法に従って混合、溶融、混練等を行えばよい。
【0043】
主成分として低温側に融解ピークをもつ成分(A)と高温側に融解ピークをもつ成分(B)との樹脂混合物を用いる場合は、両成分の混合前、混合途中、あるいは混合後に、両成分のいずれか一方、あるいは両方に上記補助添加成分を配合することができる。
【0044】
また、本発明の効果が損なわれない程度で、他の共重合可能なモノマーからなる高分子、例えば高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等を、本発明の口栓用材料の総重量に対して5〜30重量%配合することもできる。
【0045】
(5)口栓
本発明の口栓用材料は、樹脂の成形に一般的に用いられる射出成形法、押出成形法(主にブロー成形法)等により任意の形状の口栓に成形、加工することができる。
【0046】
このようにして得られる口栓は、特に最内層に密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンが用いられている多層バッグのような多層容器の、該最内層との接着性に優れている。
【0047】
このような多層容器は、最内層に密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンを用いたものであれば、どんな形態のものでも、またどんな製法で得られたものでもよい。
【0048】
例えば、線状低密度ポリエチレンの層と基材層とを積層する場合、該基材層と線状低密度ポリエチレン層との間に接着層、ガスバリヤー層等の各種の機能を備えた任意の層を積層させることができる。
【0049】
また、各層の形成ないし積層は合目的的な任意のものであり得る。すなわち、例えば、従来の多層フィルムの成形方法に従って、各層をあらかじめ別々にフィルム状に形成してその後それらを接着させて積層する方法、および押出法によって各層の形成および積層を同一工程で行う方法等が挙げられる。前者の場合において、フィルムの製造は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション法、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション成形等を採用することができる。また、後者の押出方法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出し法(接着層を設けない共押出、接着層を設ける共押出、接着樹脂を配合する共押出等を含む)等の方法があり、これらの方法によって得られた各種の多層フィルムの角をヒートシールすることにより多層バッグを得ることができる。
【0050】
また、ブロー成形のように同時に各層を円筒状に押出し、金型内で膨張させることによって、多層バッグを成形することもできる。
本発明の材料で成形された口栓は、このようにして得られる多層バッグ等の容器と密着させ、熱を加えて溶融接着させることにより、該容器と一体化し、該容器の内容物を導入出する口栓部として機能させることができる。
【0051】
本発明の材料で成形された口栓を有する容器としては、主として液体を収容する容器が好ましく、例えば、コーヒー、ミネラルウォーター、炭酸ジュース等の飲料包装用バッグ、バッグインボックス(BIB)等の各種飲料食品分野や、輸液バック等の各種医療用分野などにおいて活用される。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における各物性の測定及び評価は以下に示す方法によって実施した。
【0053】
1.物性の測定法
(1)MFR
JIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0054】
(2)示差走査熱量測定法(DSC)による融解ピーク温度:
熱プレスによって成形した100μmのフィルムから約5mgの試料を秤量し、それをセイコー電子工業(株)製RDC・220・DSC装置にセットし、170℃に昇温して、その温度で5分間保持した後、降温速度10℃/分で−10℃まで冷却し、1分間保持した。その後、昇温速度10℃/分で170℃まで昇温して測定を行い、−10℃から170℃に昇温してDSC融解曲線を得た。その融解曲線より、緩やかなピークおよび鋭いピークを融解ピークとし、そのときの温度を融解ピーク温度とした。
【0055】
(3)引張弾性率(タテ方向)
後述する条件で成形された0.3mmの試料シートを用い、ISO−R1184に準拠して、インストロン型オートグラフにてシートの引取方向(タテ方向)の引張弾性率を測定した。この値が高いほど剛性があり、本発明の口栓用材料に適していることを意味する。
【0056】
2.試料シートの成形
成分(A)および成分(B)を所定の配合比率で配合し、空冷インフレーション成形機を用いて、以下の条件で成形を行い、厚さ0.3mmの試料シートを得た。
【0057】
[成形条件]
機種:トミー社製、空冷インフレーション成形機
スクリュー径;40mmφ
L/D;24
温度;240℃
ダイ径;75mmφ
ダイリップ;3mm
ダイス温度;240℃
ブロー比;1.5
引取速度;4m/分
シート厚み;0.3mm
【0058】
3.多層フィルムの成形
内層には日本ポリケム(株)製「カーネルKF270」(線状低密度ポリエチレン、密度:0.907g/cm3、MFR:2.0g/10分、「カーネル」は登録商標)を、中間層には接着樹脂(三菱化学(株)製「“MODIC AP”110L(A)」)を、外層にはナイロン6(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「“NOVAMID NYLON”1022CK6」)を用い、以下の条件で水冷3層インフレーション成形を行った。
【0059】
[成形条件]
機種:プラコー社製水冷インフレーション成形機
ダイ径;100mmφ
ダイスリップ;3mm
ダイス温度;240℃
ブロー比;1.4
フィルム総厚み;60μm
内層:
スクリュー径;50mmφ
L/D;28
温度;200℃
中間層:
スクリュー径;40mmφ
L/D;24
温度;200℃
外層:
スクリュー径;40mmφ
L/D;24
温度;240℃
層構成比:内層/中間層/外層=45μm/6μm/9μm=7.5/1/1.5(厚み比)
【0060】
4.シートと多層フィルムとの接着性評価
(1)シール強度
上記条件で成形したシートと多層フィルムを15mm幅に裁断し、多層フィルムの内層とシートの外面が密着するように重ね、東洋精機製熱盤式ヒートシーラーにて、シールバーを多層フィルムの外面に当て、130℃から10℃間隔でシール圧力;4kg/cm2、シール時間;1.5秒でヒートシールし、引張試験機にて引張速度;500mm/分の速度で引っ張り、ヒートシール部の強度を測定した。シール温度が170℃から220℃までの間の平均強度をシール強度とした。
【0061】
(2)シール性
上記のシール強度測定において、シール温度;190℃でヒートシールし、引張試験を行ったあとの状態で、
・多層フィルムの内面とシートの外面との接着強度が強く、多層フィルムの方が破断した場合を、シール性「○」とした。
・多層フィルムの内面とシートの外面との接着強度が弱く、両者の界面で剥離した場合を、シール性「×」とした。
【0062】
【実施例1】
成分(A)として日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」(エチレンと1−ブテンとの共重合体、MFR:1.0g/10分、「ノバテック」は登録商標)を60重量%、成分(B)として日本ポリケム(株)製「カーネル・KE360」(エチレンと1−ヘキセンとの共重合体、MFR:3.5g/10分)を40重量%配合し、ドライブレンドした後、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入して上記条件によりシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0063】
評価結果は表1に示す通りである。尚、成分(A)と成分(B)とを配合した樹脂混合物のMFRは1.6g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは2つ存在し、低温側の融解ピークは86℃、高温側の融解ピークは132℃であった。また、引張弾性率(タテ方向)は4300kg/cm2であった。
【0064】
【実施例2】
成分(A)として日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」を80重量%、成分(B)として日本ポリケム(株)製「カーネル・KE360」を20重量%配合し、ドライブレンドした後、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0065】
評価結果は表1に示す通りである。尚、成分(A)と成分(B)との樹脂混合物のMFRは1.3g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは2つ存在し、低温側の融解ピークは86℃、高温側の融解ピークは134℃であった。また、張弾性率(タテ方向)は7100kg/cm2であった。
【0066】
【実施例3】
成分(A)として日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」を95重量%、成分(B)として日本ポリケム(株)製「カーネル・KE360」を5重量%配合し、ドライブレンドした後、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0067】
評価結果は表1に示す通りである。尚、成分(A)と成分(B)との樹脂混合物のMFRは1.1g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは2つ存在し、低温側の融解ピークは86℃、高温側の融解ピークは135℃であった。また、引張弾性率(タテ方向)は11000kg/cm2であった。
【0068】
【比較例1】
日本ポリケム(株)製「ノバテックLL・UF230」(線状低密度ポリエチレン)を、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0069】
評価結果は表2に示す通りである。尚、シートのMFRは1.1g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは2つ存在し、低温側の融解ピークは112℃、高温側の融解ピークは123℃であった。また、引張弾性率(タテ方向)は1900kg/cm2であった。このものは、接着性については問題ないが、剛性が低く、口栓用材料としては好ましくない。
【0070】
【比較例2】
日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」を、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。評価結果は表2に示す通りである。尚、シートのMFRは1.0g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは136℃に1つ存在し、引張弾性率(タテ方向)は12300kg/cm2であった。このものは、剛性については問題ないが、接着界面で剥離し、シール強度が低いので好ましくない。
【0071】
【比較例3】
成分(A)として日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」を99重量%、成分(B)として日本ポリケム(株)製「カーネル・KE360」を1重量%配合し、ドライブレンドした後、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0072】
評価結果は表2に示す通りである。尚、成分(A)と成分(B)との樹脂混合物のMFRは1.0g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは1つ存在し、その融解ピーク温度は135℃であった。また、引張弾性率(タテ方向)は12000kg/cm2であった。このものは、剛性については問題ないが、接着界面で剥離し、シール強度が低いので好ましくない。
【0073】
【比較例4】
成分(A)として日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HY540」を30重量%、成分(B)として日本ポリケム(株)製「カーネル・KE360」を70重量%配合し、ドライブレンドした後、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0074】
評価結果は表2に示す通りである。尚、成分(A)と成分(B)との樹脂混合物のMFRは2.4g/10分であった。また、DSCによって得られる融解ピークは2つ存在し、低温側の融解ピークは86℃、高温側の融解ピークは130℃であった。また、引張弾性率(タテ方向)は1500kg/cm2であった。このものは、接着性については問題ないが、剛性がかなり低く、口栓用材料としては好ましくない。
【0075】
【比較例5】
日本ポリケム(株)製「ノバテックHD・HB130R」(高密度ポリエチレン)を、そのまま空冷インフレーション成形機のホッパーに投入してシートを成形し、そのシートと前記多層フィルムとの接着性の評価を行った。
【0076】
評価結果は表2に示す通りである。尚、シートのMFRは0.3g/10分、DSCによって得られる融解ピークは131℃に1つ存在し、引張弾性率(タテ方向)は6900kg/cm2であった。このものは、剛性については問題ないが、接着界面で剥離し、シール強度が低いので好ましくない。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明の口栓用材料を用いることにより、剛性が高くある程度の硬さがあり、特に最内層に密度が0.92g/cm3以下の線状低密度ポリエチレンが用いられている多層容器との接着強度およびシール性に優れた口栓が得られる。
Claims (3)
- <請求項1>
以下に示す成分(A)を98〜50重量%含有し、成分(B)を2〜50重量%含有する樹脂混合物からなり、以下に示す物性(a)〜(c)を備えた口栓用材料。
成分(A):示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが126〜140℃の範囲に1つ存在する、α−オレフィン含量が0.1〜10モル%のエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体。
成分(B):重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて重合された、示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが120℃以下の範囲に1つ存在する、α−オレフィン含量が0.1〜10モル%のエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体。
(a)メルトフローレートが0.01〜200g/10分であること。
(b)示差走査熱量測定法(DSC)によって得られる融解ピークが、120℃以下の範囲に1つ以上、及び126〜140℃の範囲に1つ以上存在すること。
(c)引張弾性率が2500kg/cm2以上であること。 - 最内層が密度0.92g/cm 3 以下の線状低密度ポリエチレンからなり且つ口栓部を有する多層容器における、該口栓部に用いる材料である、請求項1記載の口栓用材料。
- 最内層が密度0.92g/cm 3 以下の線状低密度ポリエチレンからなり且つ口栓部を有する多層容器であって、前記口栓部が請求項1又は2記載の口栓用材料からなる多層容器。
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