JP4004640B2 - α−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルおよびα−アルキルまたはアルケニルアクリル酸エステル類、およびそれを用いたフエニドン類の合成法 - Google Patents

α−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルおよびα−アルキルまたはアルケニルアクリル酸エステル類、およびそれを用いたフエニドン類の合成法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価かつ容易に工業原料として有用なα−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルおよびα−アルキル又はアルケニルアクリル酸エステルを合成する方法に関する。また、α−アルキルまたはアルケニルアクリル酸エステルを用いた、安価かつ容易なフェニドン類を合成する方法に関する。特に、アルキル鎖が長鎖アルキル基であるα−アルキルアクリル酸エステル類の合成法に関する。尚、本願明細書では「α−アルキル又はアルケニル」を便宜上、以下「α−アルキル」と記載する。
【0002】
【従来の技術】
α−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルは、シュウ酸エステルと脂肪酸エステルを塩基の存在下縮合させて合成する。この合成法については、国際特許WO97/00068号、Tetrahedron, 51(37), 10241-52(1995) 、J.Fluorine Chem., 56(3), 295-303(1992)、特開平3−101637号等に記載されている。
本反応に用いる塩基は、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウムが用いられている。
これらの塩基には改良されるべき欠点があった。ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシドには、安価で取り扱い易いといった利点があるものの、収率が低い、反応時間が長い、反応温度が高い、あるいは塩基性条件下シュウ酸エステルが分解し、副生成物として有害な一酸化炭素ガスが多量に発生するといった欠点を有していた。
本発明者は、上記反応に用いる塩基に関して詳細に検討を行った結果、特定のt-アルコキシ金属を塩基として用いると、反応時間の短縮、収率の向上、反応温度の低下、副生成物として発生する一酸化炭素ガスの発生量の低減が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
α−アルキルアクリル酸エステルの合成法としては、α−ハロ脂肪酸エステルと亜鉛、ホルムアルデヒドから合成する方法が知られている(J.Chem.Soc., 5562(1965))。しかし、反応中間体が有機金属化合物であるため溶媒中の水分により収率が低下したり、反応コントロールが難しい等の欠点があった。
また、脂肪酸エステルとリチウムジイソプロピルアミド等の強塩基とホルムアルデヒドから合成する方法が知られている(J.Org.Chem., 37,1256(1972)) 。しかし、この方法は、−78℃といった極低温で反応を行わなければならず、工業的な合成法としては問題が多い。
また、Synthesis, 924(1982)には、リンイリドとホルムアルデヒドから合成する方法が記載されている。しかし、この方法は、収率が低い等の問題があった。一方、J.Chem.Soc., 3160(1961) にシュウ酸エステル、脂肪酸エステル、ベンズアルデヒドまたはヘプトアルデヒドから、α、β−ジ置換アクリル酸エステルを合成する方法が記載されている。しかし、上記文献にはアルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用した例は記載されていない。
また、Helv.Chim.Acta., 1349(1947).には本発明の反応と類似した、ホルムアルデヒドとα−アルキル−α−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルの反応について記載されている。しかし、上記文献によれば、反応生成物は本発明と異なり、α−ケト−β−アルコキシカルボニル−γ−ラクトンである。この場合、α−位のアルキル基は低級アルキル基であることが特徴である。
一方、フェニドン化合物は還元剤、劣化防止剤として有用であり、特にピラゾリジノン環上の4位に長鎖アルキル基を有するものは安価な合成が困難であった。一般的に、フェニドン化合物は、対応するアクリル酸エステルとヒドラジン類を縮合させて合成する。安価にフェニドン類を合成するために、安価なアクリル酸エステルの合成法が望まれていた。
工業的な合成法としては、合成したアクリル酸エステルを単離せずにヒドラジンとの反応に用いることが工程合理化によるコストダウンをもたらすため有利と考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シュウ酸エステルと脂肪酸エステルからα−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルを合成する際の、収率を向上し、反応時間を短縮し、反応温度を低下させることである。
本発明の他の目的は、副生成物として発生する有毒な一酸化炭素ガスの発生量を低減することである。
本発明の他の目的は、低コストでα−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルを合成する方法を提供することである。
本発明の目的は、安価な原料から短工程高収率でα−アルキルアクリル酸エステルを合成する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、中間体を取り出さず連続した一連の反応によってα−アルキルアクリル酸エステルを合成する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、安価な原料から短工程、高収率でフェニドン類を合成する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、中間体を単離せずに連続した一連の反応によってフェニドン類を合成する方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記の(1)〜(12)によって解決された。
(1)一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物をt−アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成する方法。
【0005】
【化4】
Figure 0004004640
【0006】
式中、R1、R3は各々独立に炭素数1から30の置換あるいは無置換アルキル基を表し、R2 は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換アルキル基、または炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。ただし、R2 はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
(2)下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物をt-アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成した後、下記一般式(IV)で表されるアルデヒドを反応させて、下記一般式(V)で表される化合物を合成する方法。
【0007】
【化5】
Figure 0004004640
【0008】
式中、R1、R3、R2は請求項1のR1、R3、R2と同義である。R4は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、または、炭素数6から20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。ただし、R2はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
(3)下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物をt-アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成した後、下記一般式(IV)で表されるアルデヒドを反応させて、下記一般式(V)で表される化合物を合成し、その後一般式(V)で表される化合物を単離せずに下記一般式(VI)で表される化合物と反応させ、下記一般式(VII)で表される化合物を合成する方法。
【0009】
【化6】
Figure 0004004640
【0010】
式中、R1、R3、R2、R4は請求項2のR1、R3、R2、R4と同義である。R5、R6、R7、R8、R9は、各々同じでも異なっても良く、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、無置換アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヘテロ環基、スルファモイル基、カルバモイル基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基ホスホリル基、またはアシル基を表す。ただし、R2 はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
(4)
前記t - アルコキシナトリウム化合物が、t - ブトキシナトリウムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の合成方法。
(5)
前記R 2 が、炭素数10〜30の置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の合成方法。
(6)
前記一般式(III)で表される化合物を合成する反応の溶媒が、芳香族系溶媒、アルカン系溶媒またはエーテル系溶媒であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の合成方法。
(7)
前記R 4 が水素原子であることを特徴とする(2)〜(6)のいずれか1項に記載の合成方法。
(8)
前記一般式(V)で表される化合物を合成する反応の溶媒が、アルコール系溶媒であることを特徴とする(2)〜(7)のいずれか1項に記載の合成方法。
(9)
前記一般式(V)で表される化合物を合成する反応を、塩基存在下で行うことを特徴とする(2)〜(8)のいずれか1項に記載の合成方法。
(10)
前記R 5 〜R 9 において、4個が水素原子でありかつ残りの一つが水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であることを特徴とする(3)〜(9)のいずれか1項に記載の合成方法。
(11)
前記一般式(VII)を合成する反応が、金属アルコキシドの存在下で反応させることを特徴とする(3)〜(10)のいずれか1項に記載の合成方法。
(12)
前記一般式(VII)を合成する反応の溶媒が、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒またはアルカン系溶媒であることを特徴とする(3)〜(11)のいずれか1項に記載の合成方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の合成法について詳しく説明する。
一般式(II)、(III) 、(V) 、(VII) 中、R2 は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。ただし、R2 はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
2 の表すアルキル基は、好ましくは炭素数10から30の置換もしくは無置換のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数14から26の置換もしくは無置換のアルキル基である。最も好ましくは炭素数16から22の置換もしくは無置換のアルキル基である。
無置換のアルキル基の例としては、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル、n−テトラエイコシル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソドデシル、イソテトラデシル、イソヘキサデシル、イソオクタデシル、イソエイコシル、イソテトラエイコシル、イソオクタエイコシルが挙げられる。
アルキル基に置換してもよい置換基としては、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アゾ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、イミド基、ホスホニル基、無置換アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ヒドロキシル基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルアミノ基、アリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
その例としては、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロフリル基、α−ピリジル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホ基、ジメチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、ジエチルカルバモイル基、アゾ基、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基、フタルイミド基、エチルホスホニル基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、ジメチルアミノカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、ヒドロキシ基、ベンゾイル基、ピバロイル基、アセチルオキシ基、メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基、アセチルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基、メタンスルホニルアミノ基が挙げられる。
アルキル基に置換してもよい置換基のうち、好ましいのはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基である。
2 がアルキル基であるとき、置換されているものより、無置換のアルキル基が好ましい。R2 は無置換の炭素数10から30のアルキル基が好ましく、無置換の炭素数14から26のアルキル基が更に好ましい。無置換の炭素数16から22のアルキル基が最も好ましい。
【0012】
2 がアルケニル基を表すときは、好ましくは炭素数10から30の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素数14から26の置換もしくは無置換のアルケニル基である。最も好ましくは炭素数16から22の置換もしくは無置換のアルケニル基である。
アルケニル基の例としては、3−ペンテニル、3−ヘキセニル、4−ヘプテニル、5−オクテニル、4−ノネニル、5−デセニル、6−ドデセニル、3−テトラデセニル、7−ヘキサデセニル、8−オクタデセニル、6−エイコセニル、10−テトラエイコセニル等が挙げられる。
アルケニル基に置換してもよい置換基は、R2 が置換アルキル基であるときの置換基が例として挙げられる。
2 は、無置換の炭素数10から30のアルケニル基が好ましく、無置換の炭素数14から26のアルケニル基が更に好ましく、無置換の炭素数16から22のアルケニル基が最も好ましい。
2 は、アルキル基である方がアルケニル基であるより好ましい。
一般式(II)、(III) 、(V) 中、R3 は好ましくは炭素数1から10の置換もしくは無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1または2の置換もしくは無置換のアルキル基である。R3 は無置換の方が、置換されているよりも好ましい。
3 の例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−オクチル、n−オクタデシルが挙げられる。R3 はメチル、エチルが好ましい。R3 は、最も好ましくはメチル基である。
【0013】
合成反応の原料である一般式(I)で表される化合物について説明する。式中R1 は炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基である。R1 は好ましくは炭素数1から10の置換もしくは無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1または2の置換もしくは無置換のアルキル基である。R1 は無置換の方が、置換されているよりも好ましい。
1 の例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−オクチル、n−オクタデシルが挙げられる。R1 はメチル、エチルが好ましい。R1 は、最も好ましくはエチル基である。
【0014】
一般式(IV)中、R4 は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6から20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。R4 は好ましくは、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のアリール基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルが例として挙げられる。アリール基としては、フェニル、ナフチルが挙げられる。
その中でも、R4 は水素原子が最も好ましい。
本発明の合成法で合成できる一般式(III) で表される化合物の例を以下に示す。
【0015】
【化7】
Figure 0004004640
【0016】
【化8】
Figure 0004004640
【0017】
【化9】
Figure 0004004640
【0018】
また、本発明の合成法で合成できる一般式(V)で表される化合物の例を以下に示す。
【0019】
【化10】
Figure 0004004640
【0020】
【化11】
Figure 0004004640
【0021】
【化12】
Figure 0004004640
【0022】
次に一般式(III) で表される化合物の合成法について述べる。
一般式(III) で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物を塩基性条件下縮合させて合成する。一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の使用モル比は、好ましくは2:1〜1:2であり、より好ましくは1.2:1〜1:1である。
【0023】
【化13】
Figure 0004004640
【0024】
本発明で用いる塩基は、t−アルコキシナトリウム化合物である。t−アルコキシは、t−ブトキシ、t−ペンチルオキシ、t−ヘキシルオキシ、t−ヘプチルオキシが好ましい。更にはt−ブトキシが好ましい。t−アルコキシナトリウム化合物としては、t−ブトキシナトリウムが最も好ましい。なお、t−ブトキシカリウムは高価であり、吸湿性があり扱いにくい欠点がある。塩基の当量は、一般式(II)の化合物に対して0.1から10当量が好ましく、更に好ましくは1から3当量であり、1から1.3当量が最も好ましい。
【0025】
本反応は、無溶媒でも溶媒を使用してもよい。使用する溶媒は、塩基と反応しないものが好ましく、例えば芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン)、アルカン系溶媒(オクタンなど)、エーテル系溶媒(ジブチルエーテル)などがよい。
本反応は反応の進行と共にアルコールが副生し、反応速度を低下させる。このため反応を完結させるために、アルコールを分離することが好ましい。アルコールの分離法としては、常圧、あるいは減圧下で留去する方法が好ましい。
反応温度は、50℃から200℃が好ましい。更に好ましくは60℃から100℃である。
一般式(II)の化合物の反応液の濃度は、ニート(無溶媒)から0.001mol/リットルが好ましい。更に好ましくはニートから0.1mol/リットルである。
反応時間は、10分から24時間が好ましく、更に好ましくは1時間から6時間である。
【0026】
一般式(III)で表される化合物は、酸を用いて反応液を中和した時は、一般式(III) の構造で単離される。一方、中和せずそのまま単離したときは、下記式で表されるいわゆるエノレートの構造で単離される。
【0027】
【化14】
Figure 0004004640
【0028】
式中、R1、R2、R3は請求項1のR1、R2、R3と同義である。Mは、ナトリウムイオンである
【0029】
一般式(III) で表される化合物と一般式(IV)で表されるアルデヒドを反応させて化合物(V)を合成する反応について説明する。一般式(III) の化合物1モルに対する一般式(IV)のアルデヒドの使用モル数は、一般に0.5〜10であり、好ましくは0.5〜3であり、より好ましくは1〜1.3である。
【0030】
反応に用いるアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒドが例として挙げられる。その中でも、ホルムアルデヒドの場合に、本合成法が好ましく適用される。
【0031】
【化15】
Figure 0004004640
【0032】
本合成の反応は、溶媒を用いても用いなくてもよいが、反応溶液の攪拌性の観点から溶媒を使用した方が好ましい。溶媒としては、一般式(III) で表される化合物と反応しない溶媒であればいずれでも使用することができる。例えば、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、グリコール、グリセリン、MFG、メチルセルソルブ)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル)、ハロゲン系溶媒(四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエタン、クロルベンゼン)、アミド系溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン)、アルカン系溶媒(ヘキサン、ペンタン、石油エーテル)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アセトニトリル、水などが例として挙げられる。
好ましくは、メタノール、エタノールである。
【0033】
反応に用いるホルムアルデヒドについて説明する。ホルムアルデヒドとして、気体状のホルムアルデヒドを使用してもよく、またパラホルムアルデヒド、ホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)、トリオキサンなどをホルムアルデヒド源として使用してもよい。好ましくは、ホルマリンである。
反応に用いる塩基は、一般式(III) の化合物の水素原子を引き抜き、エノレートを発生させることができる塩基ならいずれでも使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリドなどの金属ヒドリド、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート等の金属アルコラート、ナトリウムアミド、リチウムジイソブチルアミドなどの金属アミド、その他有機塩基などが使用できる。
また、あらかじめ水素原子を引き抜いた一般式(III) の化合物のエノレートを使用してもよい。特に一般式(III) の化合物の合成時にエノレートの形で一般式(III)の化合物が得られる場合は、そのまま使用することが好ましい。
塩基の当量は、一般式(III) の化合物に対して0.1から10当量が好ましく、更に好ましくは1から3当量であり、1から1.3当量が最も好ましい。
【0034】
反応温度は、−20℃から180℃の範囲を選択できる。好ましくは0℃から100℃であり、更に好ましくは20℃から60℃である。
反応時間は5分から50時間である。好ましくは20分から3時間である。更に好ましくは30分から2時間である。
一般式(III) の化合物の反応濃度は、ニート(無溶媒)から0.001mol/リットルまでの範囲を選択できる。好ましくはニートから0.01mol/リットルである。更に好ましくは5mol/リットルから0.1mol/リットルである。
【0035】
本発明のフェニドン類の合成法について述べる。フェニドン類は、以下の合成法で合成される。
【0036】
【化16】
Figure 0004004640
【0037】
本発明の一般式(VII) で表されるフェニドン類の合成法は、前記の一般式(III) の化合物の合成法によって合成した一般式(V)で表される化合物と一般式(VI)で表されるヒドラジン化合物とを塩基性条件下縮合する方法である。
この時、一般式(V)で表される化合物を単離しないで(VI)で表される化合物と反応させることが本発明の特徴である。一般式(V)の化合物と一般式(VI)の化合物との使用モル比は、好ましくは3:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:1である。
【0038】
本発明で用いる一般式(VI)で表される化合物のうち、本発明の合成法に好ましく用いることができるものは、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 が水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ニトロ基、スルホニル基、ハロゲン原子、スルホニルアミノ基から選択された基から成るものである。より好ましくはR5 、R6 、R7 、R8 、R9 が水素原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子であり、水素原子、アルコキシ基、アルキル基が更に好ましく、水素原子が最も好ましい。
5 、R6 、R7 、R8 、R9 のうち、4つが水素原子であることが好ましく、残りの一つは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子であるものが好ましい。5つとも水素原子であるものが最も好ましい。
本発明によって合成できるフェニドン化合物の例を以下に示す。
【0039】
【化17】
Figure 0004004640
【0040】
【化18】
Figure 0004004640
【0041】
本反応で用いる塩基としては、金属アルコキシド(t−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)、金属ヒドリド(カリウムヒドリド、ナトリウムヒドリド)、金属アミド(ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド)が好ましい。塩基の使用量は0.1から10当量が好ましい。より好ましくは1から1.5当量である。
本発明に使用するヒドラジン化合物がフリーの状態で入手できるときは、そのまま用いることができる。塩として入手できる場合には、一旦、フリー化してから用いるか、反応系内でフリー化して用いる。
ヒドラジン化合物としてヒドラジンの塩を使用する場合は、ヒドラジンを遊離させるため更に一当量の塩基を加えることが好ましい。
反応溶媒は、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン)、アルコール系溶媒(n−ブタノール、n−オクタノール)、アルカン系溶媒(オクタン、石油エーテル)が好ましい。
【0042】
反応温度は−20℃から180℃が好ましく、より好ましくは0℃から140℃であり、更に好ましくは40℃から100℃である。
一般式(VI)の化合物の反応濃度はニート(無溶媒)から0.001mol/リットルである。より好ましくは2mol/リットルから0.01mol/リットルである。
生成したフェニドン類は、塩基性条件下では空気中の酸素によって酸化分解される。これを避けるため、反応系を窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性なガスでパージ、もしくはフローすることが好ましい。
また、BHTのようなラジカル禁止剤を少量添加してもよい。ラジカル禁止剤の添加量は、フェニルヒドラジンの0.001mol/リットルから0.1mol/リットルが好ましい。より好ましくは0.01mol/リットルから0.05mol/リットルである。
【0043】
通常化学反応は、原料となる化合物に不純物が混入していると収率が低下するが、本発明の合成法によって合成した、一般式(V)で表される化合物は不純物の混入が少ないため、単離精製操作を省略しても高収率で一般式(VI)で表されるフェニドン化合物を合成することができる。
【0044】
【実施例】
実施例1
【0045】
【化19】
Figure 0004004640
【0046】
t−ブトキシナトリウム(95wt%)17.62g(174.2mmol)、トルエン60mlを70℃で攪拌しているところへ、ステアリン酸メチル40.0g(134.0mmol)、シュウ酸ジエチル23.5g(160.8mmol)、トルエン20mlの混合物を30分かけて滴下した。その後アスピレータを用い減圧で8mlのトルエンを留去した。
15℃まで冷却した後、酢酸エチル100mlと水100ml、濃塩酸11.3mlを加えて中和を行った後、分液を行った。有機層を2回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、エバポレーターを用いて溶媒を減圧留去した。
粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物 III−1の精製物を51.2g得た(収率96.1%)。
【0047】
実施例2
【0048】
【化20】
Figure 0004004640
【0049】
t−ブトキシナトリウム(95wt%)17.62g(174.2mmol)、トルエン60mlを70℃で攪拌しているところへ、ステアリン酸メチル40.0g(134.0mmol)、シュウ酸ジエチル23.5g(160.8mmol)、トルエン20mlの混合物を30分かけて滴下した。その後アスピレータを用い減圧で8mlのトルエンを留去した。
15℃まで冷却し、メタノールを30ml加え、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を7.62g(134mmol)加えた後、ホルマリン(37%)を13.05g(160.8mmol)20分間かけて滴下した。その後、酢酸エチル100mlと水100ml、濃塩酸20mlを加えて中和を行った後、反応溶液を60℃に加熱し、分液を行った。有機層を2回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、エバポレーターを用い溶媒を減圧留去した。
粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、化合物1の精製物を38.4g得た(収率92.3%)。
反応で発生する気体を全て採取し、その後窒素ガスを充填して全体を30リットルにした。一酸化炭素濃度を測定した結果1.6%であった。発生した一酸化炭素の総量に換算すると21.4mmolであった。
【0050】
比較例1
実施例2のt−ブトキシナトリウム(95wt%)17.62g(174mmol)をナトリウムメトキシド(95wt%)9.90g(174mmol)に変更した以外は全く実施例1と同様に合成を行った。
得られた化合物1は、12.2gであった(収率22%)。発生した一酸化炭素の量は、22mmolであった。
【0051】
比較例2
t−ブトキシナトリウム(95wt%)17.62g(174mmol)をナトリウムメトキシド(95wt%)27.43g(482mmol)に変更し、シュウ酸ジエチル23.5g(160.8mmol)を51.5g(335mmol)に変更した以外は、全く実施例2と同様に合成を行った。
得られた化合物1は、35.78gであった(収率86%)。発生した一酸化炭素の量は、142mmolであった。
塩基としてt-アルコキシ金属を用いた実施例2と比較して、塩基としてナトリウムメトキシドを用いた比較例1は、収率が著しく低いことがわかる。一方、比較例1の塩基とシュウ酸ジエチルの当量を増やした比較例2は、収率の高いものの、発生する有毒な一酸化炭素の量が著しく多かった。
以上のことから本発明の合成法は、収率が高く、有毒な一酸化炭素の発生量が低い等の効果を有していることがわかる。
【0052】
比較例3
実施例2のt−ブトキシナトリウムを等量のt−ブトキシカリウムに変更して、他は全く同様に合成を行った。その結果を以下に示す。
収率:86%
一酸化炭素発生量:22mmol
t−ブトキシカリウムは、吸湿性が高く扱いにくかった。
【0053】
実施例3
3工程を連続して反応させることによるフェニドン化合物の合成方法について実施例を用いて詳しく説明する。
【0054】
【化21】
Figure 0004004640
【0055】
t−ブトキシナトリウム(95wt%)17.62g(174.2mmol)、トルエン60mlを70℃で攪拌していることろへ、ステアリン酸メチル40.0g(134.0mmol)、シュウ酸ジエチル23.5g(160.8mmol)、トルエン20mlの混合物を30分かけて滴下した。その後アスピレータを用いて減圧で8mlのトルエンを留去した。15℃まで冷却し、メタノールを30ml加え、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液を7.62g(134mmol)加えた後、ホルマリン(37%)を13.05g(160.8mmol)20分間かけて滴下した。水60ml、酢酸エチル20ml、濃塩酸20mlを加え、中和後、60℃に加熱し分液を行った。有機層を温水(50℃)で2回洗浄した後、減圧で溶媒を70ml留去し、化合物1のトルエン溶液を得た。トルエン70ml、ナトリウムメトキシド13.4g(235.8mmol)を窒素ガス雰囲気下95℃で攪拌しているところに、フェニルヒドラジン16.0gを15分で滴下した。30分反応後、前述の化合物1のトルエン溶液全量を30分かけて滴下した。30分反応後、60℃まで冷却し、水70ml、濃塩酸34ml、酢酸エチル40mlを加え、分液を行った。有機層を2回分液後溶媒を減圧留去した。得られた粗精製物にメタノール50mlを加え、再結晶を行った。濾取後、結晶をメタノールで良く洗浄し、乾燥を行い、化合物Ph−(1) を32.62g得た(収率63%)。実施例3から、本合成法は、一般式(V)の化合物を特に精製を行わなくても安価な原料から高収率、短工程、短い時間で容易にフェニドン化合物を合成できることがわかる。
【0056】
実施例4
実施例3のステアリン酸メチルを当量の以下の原料に変更した以外は実施例3と全く同様に合成を行い下記のフェニドン化合物を合成した。
(1) (n)1531COOCH3Ph−(2) 収率 67%(2)(n)1327COOCH3Ph−(3)収率 68%(3) (n)1123COOC2 5Ph−(4) 収率 64%化合物の構造決定は、300MHzの 1HNMRおよびmassスペクトル測定によって行った。いずれも、容易に高収率でフェニドン化合物を合成することができた。
【0057】
【発明の効果】
本発明のα−(アルコキシオキサリル)脂肪酸エステルの合成法は、高収率、低い反応温度、短い反応時間、低い一酸化炭素発生量の低コストの合成法である。
また、安価な原料から、短工程、短時間でα−アルキルアクリル酸エステルを合成することが可能である。また、本発明の合成法で合成したα−アルキルアクリル酸エステルが高純度であるので、単離精製をしなくてもヒドラジンと反応し、高収率でフェニドン化合物を合成できる。

Claims (12)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物をt-アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成する方法。
    Figure 0004004640
    式中、R1、R3は各々独立に炭素数1から30の置換あるいは無置換アルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換アルキル基、または炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。ただし、R2はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
  2. 下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物をt-アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成した後、下記一般式(IV)で表されるアルデヒドを反応させて、下記一般式(V)で表される化合物を合成する方法。
    Figure 0004004640
    式中、R1、R3、R2は請求項1のR1、R3、R2と同義である。R4 は水素原子、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル基、または、炭素数6から20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。ただし、R2 はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
  3. 下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物をt-アルコキシナトリウム化合物の存在下縮合し、下記一般式(III)で表される化合物を合成した後、下記一般式(IV)で表されるアルデヒドを反応させて、下記一般式(V)で表される化合物を合成し、その後一般式(V)で表される化合物を単離せずに下記一般式(VI)で表される化合物と反応させ、下記一般式(VII)で表される化合物を合成する方法。
    Figure 0004004640
    式中、R1、R3、R2、R4は請求項2のR1、R3、R2、R4と同義である。R5、R6、R7、R8、R9は、各々同じでも異なっても良く、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、無置換アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、スルホニルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヘテロ環基、スルファモイル基、カルバモイル基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、ホスホリル基、またはアシル基を表す。ただし、R2はフッ素原子で置換されたアルキル基ではない。
  4. 前記t - アルコキシナトリウム化合物が、t - ブトキシナトリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成方法。
  5. 前記R 2 が、炭素数10〜30の置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成方法。
  6. 前記一般式(III)で表される化合物を合成する反応の溶媒が、芳香族系溶媒、アルカン系溶媒またはエーテル系溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成方法。
  7. 前記R 4 が水素原子であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の合成方法。
  8. 前記一般式(V)で表される化合物を合成する反応の溶媒が、アルコール系溶媒であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の合成方法。
  9. 前記一般式(V)で表される化合物を合成する反応を、塩基存在下で行うことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の合成方法。
  10. 前記R 5 〜R 9 において、4個が水素原子でありかつ残りの一つが水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の合成方法。
  11. 前記一般式(VII)を合成する反応が、金属アルコキシドの存在下で反応させることを特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載の合成方法。
  12. 前記一般式(VII)を合成する反応の溶媒が、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒またはアルカン系溶媒であることを特徴とする請求項3〜11のいずれか1項に記載の合成方法。
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