JP4003143B2 - 合成石英ガラス製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光リソグラフィ技術において400nm以下、好ましくは300nm以下の特定波長帯域でレンズやミラー等の光学系に使用される光リソグラフィー用石英ガラス光学部材を製造するための合成石英ガラス製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン等のウエハ上に集積回路の微細パターンを露光・転写する光リソグラフィ技術においては、ステッパと呼ばれる露光装置が用いられる。このステッパの光源は、近年のLSIの高集積化に伴ってg線(436nm)からi線(365nm)、さらにはKrF(248nm)やArF(193nm)エキシマレーザへと短波長化が進められている。
【0003】
LSIの一種であるVLSI(超LSI)のうちでDRAMを例に挙げれば、LSIからVLSIへと展開されていくにつれ、1K→256K→1M→4M→16M→64M→256M→1Gと容量が増大していく。このような容量の増大に伴い、パターンの加工線幅がそれぞれ10μm→2μm→1μm→0.8μm→0.5μm→0.35μm→0.25μm→0.18μmと微細な線幅の露光が可能なステッパが要求されるようになってきた。
【0004】
このため、ステッパの投影レンズには、高い解像度と深い焦点深度とが必要とされる。一般に、ステッパの照明あるいは投影光学系に用いられるレンズ素材は、i線では主に高透過率化した多成分の光学ガラスが用いられ、KrF及びArFエキシマレーザでは従来の光学ガラスに代えて合成石英ガラスやCaF2(蛍石)等のフッ化物単結晶が用いられている。
【0005】
特に16M以上の大容量のVRAMとして用いられるマクロプロセッサ等の量産ラインには、0.25μmの線幅の露光が可能なエキシマレーザを用いたステッパが導入されている。このような微細な線幅の露光が可能なステッパに用いられる紫外線リソグラフィー用光学素子(照明あるいは投影光学系に用いられるレンズ素材)としては、紫外域での高透過率を達成するために高純度な合成石英ガラスが用いられる。
【0006】
この合成石英ガラスの有用な製法の一つとして、火炎加水分解法が知られている。火炎加水分解法は、合成石英ガラスの原料となるケイ素化合物を燃焼用バーナからの火炎内へ酸水素炎と共に供給し、加水分解反応させシリカ微粒子を合成、堆積させると同時に溶融ガラス化する合成方法である。
【0007】
この合成方法を実現する合成石英ガラス製造装置は、いわゆるベルヌーイ炉に類似した構造であり、熱を逃さないように外壁を二重壁にして排気を通し、炉内温度を1000℃以上の高温に保ちながら合成を行うものである。この製造装置は、炉(炉枠)内部に耐火物(耐火部材)を組むことによって構成され、これらに設置されたインゴット形成用のターゲットと、このターゲットに先端を向けて設置された石英ガラス合成用のバーナとを有している。
【0008】
ターゲットは鉛直方向に昇降自在に形成されたステージに配設されており、石英ガラスの成長速度と同じ速度でステージを降下させることによりバーナと石英ガラスの合成面との距離を一定に保つようになっている。また、バーナからの火炎温度(供給熱量)を均質に石英ガラスの合成面に供給するため、石英ガラスの合成時にはターゲットを回転させるとともに揺動させるように構成されている。
【0009】
このように構成された合成石英ガラス製造装置を用いて合成される石英ガラスは、様々な原因による屈折率の不均質が生じる場合がある。これらの原因としては、石英ガラスの合成時に生じる数々の条件のゆらぎ(合成条件の変化)があるが、具体的には炉に対するターゲットの位置ずれや、石英ガラスの成長速度とステージの降下速度の不一致等がある。
【0010】
合成石英ガラス製造装置は、炉と昇降系とからなり、炉と昇降系とは分離可能に構成されて各々別個に床上に設置される。昇降系は、ステージを昇降自在に支持しており、ターゲットはこの昇降系におけるステージに回転自在に配設されている。このため、前記のような原因を引き起こさないように合成開始時には昇降系のアライメントを行い、合成の諸条件が一定の状態となるように設定している。
【0011】
ここで、合成石英ガラス製造装置においては、装置のメンテナンス時等に炉に対して昇降系を移動させる場合がある。このため、合成石英ガラス製造装置が設置される床には、昇降系を支持する脚が載置可能な受け皿を脚の数に応じて設けている。そして、メンテナンス終了後には昇降系の脚を受け皿に載置することにより炉に対する昇降系の位置を合わせるようにしていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、受け皿は表面が平らな円板状に形成されているため、受け皿に脚を載置しただけでは、合成開始時に一旦設定した条件(合成開始時のアライメント)を再度設定(再現)することが困難であり、再度合成を開始する時に同様の条件出しをするまでの時間がかかるという問題があった。
【0013】
また、昇降系においては、合成終了後のインゴットの荷重を考えると、ターゲットの回転軸が中心となるようにステージを配設することが好ましい。ここで、昇降機構としてジャッキ等の機構を用いることが考えられるが、このような機構では位置出し精度が低いとともにステージ下方のスペースが大きく必要となってステージの直下に配設することができず、ストロークを長く取ることもできないため、合成石英ガラス製造装置用として用いることができないという問題がある。
【0014】
さらに、ターゲット(ステージ)を精度良く鉛直に昇降させるためには、精度の高いアクチュエータが必要となるが、合成石英ガラスのインゴットは合成終了時には200Kgを越える重量となる。また、これを支えるターゲットや、回転、揺動の機構を持つユニットも同様に200Kgほどの重量になってしまう。これらのことを考慮すると、昇降系は400Kg程度以上の耐荷重を持つとともに昇降時における位置ずれを小さくするように構成しなければならない。
【0015】
本発明は、このような問題および状況に鑑みてなされたものであり、安定した品質の合成石英ガラスのインゴットを製造することができる合成石英ガラス製造装置を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明に係る合成石英ガラス製造装置は、炉と、合成石英ガラス製造用のターゲットと、このターゲットを水平回転自在に保持する回転軸と、石英ガラス合成用のバーナと、昇降機構とを有して構成されている。ターゲットは昇降ステージに保持されて炉の内側空間内に位置し、回転軸は鉛直方向に伸びて昇降ステージに回転自在に支持され、石英ガラス合成用のバーナは噴出口がターゲットに向けて設置されている。また、昇降機構は昇降ステージを昇降させることによってバーナに対してターゲットを鉛直方向に昇降させるようになっている。
【0017】
このように構成された合成石英ガラス製造装置によれば、回転軸の回転および揺動を行ってターゲットの回転と同時に揺動を行いながら、バーナと合成面との距離を一定に保つよう成長速度と同じ速度で昇降ステージを降下させることにより、バーナからの熱量を広範囲にわたり均質に合成面に供給してターゲット上に合成石英ガラスを堆積させることができる。
【0018】
ここで、昇降機構は、回転軸と平行に鉛直方向に伸びる1本の昇降軸と、昇降軸に沿って昇降自在に構成された昇降部材と、駆動機構を有し、昇降部材によって昇降ステージを支持するとともに、駆動機構によって昇降部材を昇降させるようになっている。
【0019】
このため、合成石英ガラスの堆積に伴って昇降ステージを降下させた場合でも、昇降ステージを支持している昇降機構は昇降ステージの直下ではなく、回転軸と平行に離れた位置に配設されているため、昇降機構と回転軸とが干渉することはない。
【0020】
ここで、昇降軸としてはレール状の直動スライドユニットを用いるとともに、駆動機構として、昇降部材に螺合された精密ボールネジ、この精密ボールネジを回転させるブレーキ付モータおよび、このブレーキ付モータの回転を減速して精密ボールネジへ伝達する減速機とを有することが好ましい。
【0021】
このような構成とすることにより、昇降ステージの昇降に際してX−Y方向に0.01mm程度の誤差で合成面のバーナに対する水平方向の位置を制御することができる。また、鉛直方向の位置に関しては、減速機の減速比を変えたりブレーキ付モータの回転数を直接変えたりすることにより制御することができる。
【0022】
また、上記の合成石英ガラス製造装置においては、昇降機構をベースに取り付けるように構成するとともに、ベースを支持する少なくとも3本の支持脚をベースの下方に突出して設けることが好ましい。そして、これらの支持脚が載置可能な受け皿をベースの設置面上に固着させ、この受け皿上に支持脚を載置することにより合成石英ガラス製造装置の設置位置の位置出しを行うようにする。
【0023】
ここで、少なくとも3個の受け皿のうち、第一受け皿には支持脚が受容可能な擂鉢状溝を形成し、第二受け皿には支持脚が受容可能なV溝を形成するとともに、他の受け皿においては支持脚が当接する上面を平面に形成する。
【0024】
このような構成とすることにより、各溝に支持脚を受容させるようにして受け皿上にベースを載置した状態においては、第一受け皿に対する支持脚のずれは生じないため、昇降機構の大まかな調整を行うことができる。また、合成時の温度上昇によって各支持脚のピッチに変動が生じた場合でも、第二受け皿のV溝内を支持脚が移動可能であるため、ベースをガタつかせることなく支持することができる。
【0025】
なお、上記の支持脚はベースに螺合させることにより、支持脚を回転させれば支持脚をベースに対して昇降させることができるように構成することが好ましい。このような構成とすることにより、支持脚の昇降を行うことでベースの傾斜角を調整することができるため、昇降機構の傾き角の微調整を行うことができる。
【0026】
さらに、上記の支持脚においては、受け皿との当接部を半球形状とすることが好ましく、このような構成とすることにより、各受け皿に対する接触面積が小さくなるため、載置時のガタを無くすことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成石英ガラス製造装置の好ましい実施形態について図1および図2を参照して説明する。この合成石英ガラス製造装置1は、炉枠3と、この炉枠3内に設けられた耐火物4と、炉枠3および耐火物4が載置される炉床板2とからなる炉を有して構成されている。耐火物4の内部には、詳細を後述するインゴットIG形成用のターゲット5に噴出口6を向けて設置された石英ガラス合成用のバーナ7を有しており、ターゲット5上に石英ガラスを合成して堆積させるようになっている。
【0028】
また、炉枠3には、石英ガラスの合成時に炉枠3の内周空間において発生する排ガスを外部に排出させるための排気口12が形成され、この排気口12には排気管13が接続されている。排気管13には、スクラバー等の除害装置、排気ファン(共に図示せず)が設けられており、排ガスを大気へ放出するように構成されている。
【0029】
さらに、この耐火物4および炉枠3には、外部から耐火物4の内周空間を観察するための炉内監視用窓41が形成されている。炉内監視用窓41の外方には炉内の温度を低下させないように維持することができる隙間を有して耐熱ガラス42が取り付けられている。さらに、この耐熱ガラス42の後方(外方)にはCCDカメラ等の炉内監視用カメラ14が設けられており内周空間の撮影、特にバーナ7と合成石英ガラスの合成面との距離を把握することができる撮影が可能な構成となっている。
【0030】
ターゲット5は、昇降系(昇降機構)8によって昇降作動(合成中は降下のみ)がなされるが、この昇降系8は、前記の炉とは別個に形成されて炉に対して分離可能に構成されている。昇降系8は、ベース25上に鉛直方向(上下方向)に伸びて配設された支柱23と、この支柱23に取り付けられた2本のレール部材からなるレール16と、このレール16によって昇降自在に配設された昇降部材33とを有して構成されている。なお、このレール16が請求の範囲に記載の昇降軸を構成する。
【0031】
昇降部材33は、レール16の中心軸(2本のレール部材の間)に設置された精密ボールネジ17を回転させることによって昇降可能に構成されており、この精密ボールネジ17の回転駆動は支柱23に取り付けられた昇降用モータ18によってなされる。この昇降用モータ18は、詳細を後述するステージ30を所望の位置で保持するためのブレーキを有するブレーキ付のモータであり、さらには減速機19が取付られている。
【0032】
また、昇降系8においては、傾斜角の調整が可能に構成されている。この調整は、ベース25に対して上下方向に伸縮自在に構成された調整ネジ(支持脚)21,21…を上下方向に移動させてベース25の傾斜角を調整することによってなされる。なお、調整ネジ21,21…は、下端部21aが半球状に形成されてベース25の前後左右に4箇所配設されており、受け皿20上に設置される。
【0033】
受け皿20は、図3にも示すように、調整ネジ21,21…の数に合わせて4個設けられており、合成石英ガラス製造装置1が設置される床(図示せず)の上に固着されている。受け皿20は、第一受け皿201、第二受け皿202および第三受け皿203の三種類の受け皿からなる。
【0034】
各受け皿201,202,203は、各々外形が円板状に形成されているが、第一受け皿201の上面には擂り鉢状に形成された擂鉢状溝201aが形成され、第二受け皿202の上面にはV溝が形成されている。なお、第三受け皿203,203の上面203aには溝は形成されておらず平面である。
【0035】
合成石英ガラス製造装置1が設置される床の上には、第一受け皿201の方に向かってV溝202aが伸びるように第二受け皿202が固着され、その他の二箇所には二個の第三受け皿203,203が固着される。このようにして床面に固着された受け皿20には、各調整ネジ21の下端部21aが各溝201a,202a内に位置するとともに、上面203a,203a上に位置するようにして昇降系8が載置される。
【0036】
昇降系8における昇降部材33にはステージ(昇降ステージ)30が配設される。ステージ30には回転軸22が回転、揺動およびX−Y方向の水平移動が自在に配設されており、回転軸22の回転は回転用モータ9によりなされるとともに、揺動は揺動用モータ10によってなされる。なお、回転軸22は、上下方向において2点以上で回転用ベアリング(図示せず)によって支持され、回転用モータ9により回転数が制御されて回転する。
【0037】
このように構成されたステージ30は鉛直に昇降させる必要があるため、昇降系8においては、回転軸22等の鉛直方向のアライメントを行う必要がある。回転軸22の鉛直方向のアライメントは、受け皿20上に載置された調整ネジ21,21…を上下させてベース25の傾斜角を変えることによりレール16の傾斜角を調整して行う。
【0038】
また、回転中心位置はステージ30上に設けられた調整ネジ35により回転軸22をX−Y方向に移動させてアライメントを行う。さらに、バーナ7の中心管である原料を噴射する直管も図示しない調整ネジを動かすことにより同様にしてアライメントを行う。このように、各アライメントを行うことで、合成石英ガラスの堆積に伴ってターゲット5を鉛直に降下させることが可能となる。
【0039】
このように構成された昇降系8においては、合成終了後にレール16、精密ボールネジ17、各モータ9,10,18等のメンテナンスを行う必要がある。また、炉においては耐火物4に付着したシリカ微粒子を除去するためのメンテナンスが必要となってくる。このとき、シリカ微粒子の精密ボールネジ17等への付着を避けるため、炉に対して昇降系8を分離させる。
【0040】
このように昇降系8を分離させるためには、一旦受け皿20から調整ネジ21を取り外さなけらばならない。従って、次回の合成開始時には前回の合成開始時に行ったアライメント調整をリセットして再調整する必要がある。
【0041】
そして、全てのメンテナンスを行った後、駆動系8を再度受け皿20上に載置した場合には、第一受け皿201に対応する調整ネジ21の下端部21aが円錐溝201a内に位置するとともに、第二受け皿202対応する調整ネジ21の下端部21aがV溝202a内に位置する。
【0042】
ここで、各調整ネジ21の下端部21aは半球形状に形成されているため、円錐溝201aやV溝202aの中心からずれることはない。このため、前回の合成石英ガラスの合成時に熱膨張によって各調整ネジ21,21…間のピッチが変化した場合でも、第一受け皿201とこの第一受け皿201に対応する調整ネジ21の位置関係は変わらない。
【0043】
また、第一受け皿201に対応する調整ネジ21と、第二受け皿202に対応する調整ネジ21とのピッチが変化していても、第二受け皿202に対応する調整ネジ21はV溝202a内で移動可能であるため、平面視における昇降系8の角度(旋回角)が変わることもない。
【0044】
このように、受け皿20と調整ネジ21との位置関係を維持することで、大まかな鉛直(前回の合成時におけるアライメント)を得ることができ、さらに各調整ネジ21…の昇降を行うことにより微調整が可能であるため、アライメント時間の短縮が可能となる。また、アライメント調整後はレール16、精密ボールネジ17、昇降用モータ18および減速機19によりステージ30の昇降がなされるため、精度良くターゲット5の位置決めを行うことが可能である。
【0045】
さらに、昇降系8におけるレール16を回転軸22と平行に一軸にしたため、ステージ30下方にスペースを必要とせず、ステージ30の昇降ストロークを稼ぐことが可能となり、より長いインゴットの生成が可能となる。また、合成石英ガラスの成長量は一般的に1.0〜4.0mm/hと非常に遅く、高分解能なモータが必要となるが、昇降用モータ18に減速機19を設置することで分解能を減速比分だけ下げることもできる。
【0046】
さらに、昇降用モータ18における耐荷重に関しても、減速機19の減速比分だけ増加することとなる。従って、昇降用モータ18におけるブレーキを解除したとしてもステージ30が落下しないほどの抵抗を持つ減速比を持つ減速機19を選択すれば、本装置1における安全性をより高めることができる。
【0047】
なお、上記の実施形態においては、昇降系8において昇降軸をレール状の直動スライドユニットであるレール16によって構成し、このレール16に取り付けられたステージ30(昇降部材33)の昇降を行わせるために、精密ボールネジ17、ブレーキ付の昇降用モータ18および、減速機19を用いた構成とした場合について説明したが、本発明は必ずしもこのような構成に限られるものではない。
【0048】
すなわち、昇降系は、回転軸22と平行な一本の昇降軸を有した構成であればよく、必ずしもスライドレールを用いる必要はない。また、ステージ30の昇降を行わせる駆動機構も精密ボールネジを用いることなく、ラックとピニオンギアとを用いて駆動させるように構成してもよい。さらに、昇降用モータ18もブレーキ付である必要はなく、減速機19も必ずしも設ける必要はない。
【0049】
また、昇降系8を支持するための支持脚の数は必ずしも4本である必要はなく、3本もしくは5本以上でもよい。そして、この支持脚が載置される受け皿20も、必ずしも円錐形の溝やV溝を設けた構成とする必要はない。さらに、受け皿20に円錐形の溝やV溝を設けた構成とした場合であっても、支持脚は必ずしもネジ機構とする必要はなく、ベース25に対して微量の昇降を行うことができればよく、支持脚の下端部の形状も必ずしも半球形状である必要はない。
【0050】
【実施例】
以下、本発明に係る合成石英ガラス製造装置1の好ましい実施例について再度図1、図2を用いて説明する。この合成石英ガラス製造装置1においては、原料となるSi化合物としてSiCl4を使用し、このSi化合物ガスを送り出すためのキャリアガスとしてはO2ガスおよびH2ガスが用いられている。これらをアルミナ99.9%以上の材質によって形成された耐火物4内で燃焼させて昇温し、耐火物4内に位置するターゲット5上に合成石英ガラスを堆積させる。
【0051】
なお、炉枠3および耐火物4共にターゲット5が昇降する下面の開口部は円形に形成されて開放している。また、ターゲット5は、合成石英ガラス内への不純物の混入を避けるため、耐火物4と同様にアルミナ99.9%以上の耐火材により直径が250mmの円板状に形成したものを複数積み上げることによって形成され、回転軸22の上端部に形成された円板部22a上に載置され、回転軸22においてその荷重を受けることができるようになっている。
【0052】
そして、調整ネジ21…の昇降を行って水平にアライメントされたステージ30に配設された回転用モータ9により、回転軸22を7.5rpmで回転させながら揺動用モータ10により一軸方向に80mmの幅で揺動を行う。また、ターゲット5の降下速度は2.4mm/hで設定する。その後、炉内監視窓41から合成面の位置を確認し、この状況によりバーナ7からのガス量を変化させて合成面位置を一定に制御することにより、安定した品質の合成石英ガラスの合成を行うことができた。
【0053】
また、減速機19には減速比1/25の仕様のものを使用し、昇降用モータ18にはブレーキ付きのものを使用しているため、電源をOFFにした時でもステージ30の落下を避ける仕様となっている。なお、この合成石英ガラス製造装置1においては、ステージ30に作用する重量が400Kgであるにも拘らずブレーキを解除する信号のみを入力した場合でもステージ30が落下することはなかった。
【0054】
さらに、合成石英ガラス製造装置1のメンテナンス終了後にアライメントを行う際には、従来1時間程度の時間が必要であったのに対し、上記のように構成された受け皿20と調整ネジ21とを使用した場合、アライメントに要する時間は15分程度であった。
【0055】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の合成石英ガラス製造装置は、ターゲットを回転させる回転軸の直下ではなく、この回転軸と平行に昇降軸を設けてステージの昇降を行うようにしている。このため、昇降機構を構成するスペースとしてステージ下部を使用する必要が無く、ジャッキ等を使用した場合に比較してより長くストロークを得られるため、省スペースであっても長尺で高品質な合成石英ガラスを短時間で製造することができる。
【0056】
また、昇降機構において精密ボールネジとレール状の直動スライドユニットを使用したことで、位置決め精度も0.01mm以下と高精度とすることができるとともに、アライメント後にズレを生じることもない。また、駆動機構にブレーキ付モータを使用したことで電源をOFFにした状態での昇降ステージの落下を防止していることに加え、減速機をブレーキ付モータと組み合わせることで、減速機の抵抗により昇降ステージの自然落下も防止することが可能な構造となっているため、安全性も向上している。
【0057】
さらに、受け皿と支持脚とを用いて昇降機構の位置出しを行うように構成した場合においては、擂鉢状溝やV溝を形成した受け皿および上面が平らな受け皿を用いることが好ましく、このような構成とすることにより、各溝に支持脚を受容させるようにして受け皿上にベースを載置した状態においては、擂鉢状溝を有する受け皿に対する支持脚のずれは生じないため、昇降機構の大まかな調整を行うことができる。また、合成時の温度上昇によって各支持脚のピッチに変動が生じた場合でも、支持脚が溝に受容されなくなることが無いため、ベースをガタつかせることなく支持することができる。
【0058】
なお、支持脚はベースに螺合させることにより、支持脚を回転させれば支持脚をベースに対して昇降させることができるように構成することが好ましく、このような構成とすることにより、支持脚の昇降を行うことでベースの傾斜角を調整することができるため、昇降機構の傾き角の微調整を容易に行うことができる。さらに、支持脚の受け皿と当接する部分は半球形状とすることが好ましく、このような構成とすることにより、各受け皿に対する接触面積が小さくなるため、受け皿への載置時のガタを無くすことができる。
【0059】
このように構成することで、合成石英ガラス製造装置におけるアライメント作業の時間短縮が可能となり、石英ガラス合成時間をメンテナンス時間に対して長くすることが可能となる。このため、光リソグラフィー用投影レンズに使用可能な、安定した高品質の合成石英ガラスを短期間に効率よくかつ安全に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合成石英ガラス製造装置の昇降系を示す模式図である。
【図2】上記合成石英ガラス製造装置の全体を示す模式図である。
【図3】上記合成石英ガラス製造装置における受け皿の平面図である。
【符号の説明】
1 合成石英ガラス製造装置
3 炉枠
4 耐火物
5 ターゲット
7 バーナ
8 昇降系
16 レール
17 精密ボールネジ
18 昇降用モータ
19 減速機
20 受け皿
21 調整ネジ
22 回転軸
33 昇降部材
Claims (3)
- 炉と、
この炉の内側空間内に位置する合成石英ガラス製造用のターゲットと、
鉛直方向に伸びて昇降ステージに回転自在に支持され、前記ターゲットを水平回転自在に保持する回転軸と、
噴出口が前記ターゲットに向けて設置された石英ガラス合成用のバーナと、
前記昇降ステージを昇降させてバーナに対して前記ターゲットを鉛直方向に昇降させる昇降機構とを有した合成石英ガラス製造装置において、
前記昇降機構が、
前記回転軸と平行に鉛直方向に伸びて設けられた1本の昇降軸と、
この昇降軸に沿って昇降自在に構成されて前記昇降ステージを支持する昇降部材と、
この昇降部材を昇降させる駆動機構とを有し、
前記昇降軸が、レール状の直動スライドユニットであり、
前記駆動機構が、前記昇降部材に螺合された精密ボールネジ、この精密ボールネジを回転させるブレーキ付モータおよび、このブレーキ付モータの回転を減速して前記精密ボールネジへ伝達する減速機を有し、
前記昇降機構が取り付けられたベースと、
このベースの下方に突出して設けられ、前記ベースを支持する少なくとも3本の支持脚と、
対応する前記支持脚が載置可能で、前記ベースの設置面上に固着される少なくとも3個の受け皿とを有し、
前記少なくとも3個の受け皿のうち、第一受け皿には前記支持脚が受容可能な擂り鉢状溝が形成され、第二受け皿には前記支持脚が受容可能なV溝が形成され、他の受け皿は前記支持脚の当接面が平面であることを特徴とする合成石英ガラス製造装置。 - 前記支持脚が前記ベースに螺合され、前記支持脚を回転させて前記支持脚を前記ベースに対して昇降させることを特徴とする請求項1に記載の合成石英ガラス製造装置。
- 前記支持脚における前記受け皿との当接部が半球形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成石英ガラス製造装置。
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---|---|---|---|
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