JP4002702B2 - 流体圧アクチュエータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体圧アクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エアシリンダ等のような流体圧アクチュエータが知られている。従来におけるエアシリンダ71の一例を図7に示す。
【0003】
図7に示すように、エアシリンダ71は、シリンダチューブ72、シリンダチューブ72内を摺動するピストン73等から構成されている。ピストン73の外周面には、一対のピストンウェアリング74がそれぞれ離間して配置されている。また、それぞれのピストンウェアリング74の間には、ピストンパッキン75が、互いに反対向きで凹溝に配置されている。ピストン73の外周面とシリンダチューブ72の内周面との隙間は、ピストンパッキン75によってシールされている。
【0004】
従って、シリンダチューブ72の内周面、ピストン73の外周面、ピストンウェアリング74及びピストンパッキン75によって、潤滑油を保持するための潤滑油保持空間76が形成されている。つまり、ピストンウェアリング74及びピストンパッキン75によって、大部分の潤滑油が潤滑油保持空間76に溜められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、最近のエアシリンダ71においてはシリンダチューブ72のような筒状部材を押出成形法や引抜成形法で製造することが多いため、どうしてもシリンダチューブ72の内周面には大きな寸法公差ができやすい。よって、折角ピストンウェアリング74を設置しているにもかかわらず、ピストンウェアリング74の摺動面(即ち外周面)をシリンダチューブ72の内周面に充分に追従させることが困難であった。ゆえに、シリンダチューブ72の内周面とピストンウェアリング74との間に隙間が生じ、潤滑油保持空間76の外に潤滑油が漏れ出しやすかった。従って、潤滑油が不足して摺動抵抗が増大することとなり、ピストンパッキン75の良好な潤滑状態を長期間維持させることは非常に困難であった。
【0006】
また、ピストン73が偏心する量が大きいことから、ピストンパッキン75に偏心ストレスが加わりやすく、摩耗量が大きかった。従って、ピストンパッキン75の寿命が短いという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑油保持空間に潤滑油を確実に保持できるとともに、パッキンの寿命を長くすることが可能な流体圧シリンダを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、2つのアクチュエータ構成部材がなす摺動界面に、スリットを一部に持つウェアリングを複数個設け、前記ウェアリングによって潤滑油保持空間を区画形成し、一方のアクチュエータ構成部材に装着された環状のパッキンを前記潤滑油保持空間内に配置した流体圧アクチュエータにおいて、一方のアクチュエータ構成部材側に装着された断面矩形状の前記ウェアリングの一端に偏って配置されることによりそのウェアリングの外周面における一端を他端に対し前記他方のアクチュエータ構成部材側に配置し、そのウェアリングの外周面における一端を他方のアクチュエータ構成部材に対して線接触させるとともに、前記ウェアリングを拡径させる押圧手段を設け、その押圧手段により、前記ウェアリングを他方のアクチュエータ構成部材に対し押し付けて追従させるようにしたことをその要旨としている。
【0009】
請求項2に記載の発明では、筒状をした第1のアクチュエータ構成部材の有する収容空間内に第2のアクチュエータ構成部材を移動可能に収容するとともに、前記第2のアクチュエータ構成部材の外周面に、スリットを一部に持つウェアリングを複数個設け、前記ウェアリングによって潤滑油保持空間を区画形成し、第2のアクチュエータ構成部材に装着された環状のパッキンを前記潤滑油保持空間内に配置した流体圧アクチュエータにおいて、断面矩形状の前記ウェアリングの一端に偏って配置されることによりそのウェアリングの外周面における一端を他端に対し前記第1のアクチュエータ構成部材側に配置し、そのウェアリングの外周面における一端を前記第1のアクチュエータ構成部材の内周面に対して線接触させるとともに、前記ウェアリングを拡径させる押圧手段を設け、その押圧手段により、前記ウェアリングを第1のアクチュエータ構成部材の内周面に対し押し付けて追従させるようにしたことをその要旨としている。
【0011】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、一方のアクチュエータ構成部材に押圧手段が設置されることにより、ウェアリングの摺動面が常に他方のアクチュエータ構成部材に圧接する。この場合、一方のアクチュエータ構成部材と他方のアクチュエータ構成部材との隙間は、ウェアリングによってシールされる。よって、パッキン部に滞留している潤滑油の漏れが、ウェアリングによって防止される。従って、潤滑油保持空間に潤滑油を確実に保持することができる。また、長期間にわたって良好な潤滑状態を維持することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、第2のアクチュエータ構成部材には、ウェアリングを拡径させる押圧手段によって、ウェアリングの摺動面が第1のアクチュエータ構成部材の内周面に圧接されている。従って、第2のアクチュエータ構成部材の偏心及び傾きを抑制することができる。また、第2のアクチュエータ構成部材の偏心によって第1のアクチュエータ構成部材とウェアリングの摺動面との間に隙間を生じることが防止される。この場合、潤滑油保持空間内は潤滑油で満たされ、摺動抵抗は減少する。よって、パッキンの摩耗量も減少する。従って、パッキンの寿命を長くすることができる。
【0013】
さらに、請求項1または請求項2に記載の発明によると、アクチュエータ構成部材はウェアリングによって高い圧力で押圧される。よって、ウェアリングとアクチュエータ構成部材とが強く圧接される。従って、潤滑油を前記潤滑油保持空間内により確実に保持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明の流体圧アクチュエータを具体化した一実施形態のエアシリンダ1を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0015】
この実施形態のエアシリンダ1は、ロッド付きタイプのエアシリンダ1である。図1に示されるように、第1のアクチュエータ構成部材であるシリンダチューブ2は、等断面形状を有するアルミニウム合金製の筒状押出成形品である。シリンダチューブ2の両端にある開口は、ピストンカバーとしてのヘッドメタル3とロッドメタル4とによって封止されている。シリンダチューブ2、ヘッドメタル3及びロッドメタル4がなす断面円形状のピストン収容空間には、第2のアクチュエータ構成部材としてのピストン5がチューブ軸線方向に沿って移動可能に収容されている。本実施形態のピストン5は、中心に孔を有する一対のピストン本体6を重ね合わせた構造となっていて、ピストン本体6間には環状マグネット7が挟持されている。この環状マグネット7は、磁気に反応してオンオフする図示しないスイッチに対応して設けられている。そして、このピストン5によって前記空間が2つの圧力作用室8,9に区画されている。
【0016】
シリンダチューブ2の外周面においてヘッド側端に近い位置には第1のエア給排ポート10が形成され、ロッド側端に近い位置には第2のエア給排ポート11が形成されている。第1のエア給排ポート10は、連通孔を介して第1の圧力作用室8に連通している。第2のエア給排ポート11は、連通孔を介して第2の圧力作用室9に連通している。
【0017】
ピストン5の中心を貫通するロッド取付孔12には、ピストンロッド13の基端部が螺着されている。従って、ピストンロッド13はピストン5と一体的に移動することができる。ピストンロッド13の先端部は、ロッドメタル4に形成されたロッド挿通孔14を介してシリンダチューブ2の外部に突出している。
【0018】
第1のエア給排ポート10を介して第1の圧力作用室8にエアを供給すると、エアの圧力によってピストン5が図1の左側方向(即ちロッド側)に押圧される。その結果、ピストン5及びピストンロッド13がロッド側に移動し、ピストンロッド13がシリンダチューブ2から突出する。
【0019】
第2のエア給排ポート11を介して第2の圧力作用室9にエアを供給すると、エアの圧力によってピストン5が図1の右側方向(即ちヘッド側)に押圧される。その結果、ピストン5及びピストンロッド13がヘッド側に移動し、ピストンロッド13がシリンダチューブ2に没入する。
【0020】
ピストン5の外周面には、環状のウェアリング装着溝21がピストン周方向の全体にわたって2箇所に離間して形成されている。ウェアリング装着溝21の底部には、段部21Aが設けられている。また、ウェアリング装着溝21には、ピストンウェアリング22及び押圧手段としてのゴムリング23が装着されている。
【0021】
図2に示されるように、ピストンウェアリング22はその一部にスリット24を持つ不完全環状の部材である。スリット24の両端は互い違いに形成され、同スリット24の中央は互いに接触し合うようになっている。スリット24があるのは、拡径を容易にさせるためである。断面矩形状であるこのピストンウェアリング22の外周面には摺動面S1が形成されている。摺動面S1の端縁はシリンダチューブ2の内周面と線接触している。また、ピストンウェアリング22の内周面には非摺動面S2が形成されている。前記ピストンウェアリング22は、「ジュラコン(商品名)」に代表されるポリアセタール樹脂等の高摺動性材料を用いて形成される。図3に示されるように、ピストンウェアリング22の厚さはウェアリング装着溝21より若干大きく、ピストンウェアリング22の幅はウェアリング装着溝21の幅より若干小さく形成されている。なお、ピストンウェアリング22の摺動面S1は、ピストン5の外周面よりも径方向に張り出していて、同面よりも優先的にシリンダチューブ2の内周面に摺接するようになっている。
【0022】
押圧手段としてのゴムリング23は環状かつ断面略円形状の弾性体であって、ピストンウェアリング22よりもひとまわり小径に形成されている。このゴムリング23は、ウェアリング装着溝21においてピストンウェアリング22よりも底部側に配置されていて、ピストンウェアリング22の非摺動面S2に接している。ゴムリング23は、その弾性復帰力によりピストンウェアリング22を径方向に沿って自身の中心軸線から遠ざかる方向に常時押圧して、ピストンウェアリング22を拡径させる役割を果たしている。このような拡径作用により、シリンダチューブ2の内周面に対してピストンウェアリング22の摺動面S1の端縁が押し付けられるようになっている。
【0023】
ピストン本体6において一対のウェアリング装着溝21の間には、環状のパッキン装着溝25がピストン周方向の全体にわたって形成されている。パッキン装着溝25には、断面略台形状をした環状パッキンとしての一対のピストンパッキン26が環状マグネット7を介して互いに反対向きで装着されている。かかるピストンパッキン26は、ピストン5の外周面とシリンダチューブ2の内周面とがなす摺動界面をシールし、両圧力作用室8,9の間でのエア漏れを回避する役割を担っている。
【0024】
従って、シリンダチューブ2の内周面、ピストン5の外周面、ピストンウェアリング22及びピストンパッキン26によって、グリス等の潤滑油を保持するための潤滑油保持空間27が形成されている。つまり、ピストンウェアリング22及びピストンパッキン26によって、大部分の潤滑油が潤滑油保持空間27に溜められる。
【0025】
以上のように構成されたエアシリンダ1では、往復動作を行うピストン5に対して、その中心軸線をシリンダチューブ2の中心軸線から偏心させるような偏荷重が加わることがある。この場合、ピストンウェアリング22における一部の領域がウェアリング装着溝21の底部側に押圧される。すると、ピストンウェアリング22よりも底部側にあるゴムリング23が潰されて変形する。この変形に伴って、ゴムリング23には自身を元の形状に復帰させようとするような弾性復帰力が生じる。この弾性復帰力はゴムリング23の変形量が大きくなるほど増大する。そして、かかる弾性変形力が前記偏荷重に対する抗力として働く結果、ピストンウェアリング22の前記摺動面S1の端縁がシリンダチューブ2の内周面に圧接する。
【0026】
さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(1)本実施形態のエアシリンダ1では、ピストン5の外周面に設けられたウェアリング装着溝21の一端にゴムリング23が設置される。そのため、ピストンウェアリング22の摺動面S1における端縁が常にシリンダチューブ2の内周面に圧接する。ゆえに、押出成形に由来する大きな寸法公差がシリンダチューブ2にあったとしても、シリンダチューブ2の内周面とピストン5の外周面との隙間は、ピストンウェアリング22によってシールされる。
【0027】
よって、ピストンパッキン26の周辺に滞留している潤滑油の漏れが、ピストンウェアリング22によって防止される。そして、潤滑油保持空間27は潤滑油で満たされ、ピストンウェアリング22の摺動抵抗は減少する。従って、ピストンパッキン26の良好な潤滑状態を長期間維持させることが容易となる。
【0028】
(2)本実施形態のエアシリンダ1では、ピストン5の外周面に設けられたウェアリング装着溝21には、ピストンウェアリング22を拡径させるためのゴムリング23が配置されている。よって、ピストンウェアリング22の摺動面S1の端縁はシリンダチューブ2の内周面に圧接される。従って、ピストン5の偏心及び傾きを抑制することができる。また、ピストン5の偏心によってシリンダチューブ2の内周面とピストンウェアリング22との摺動面S1における端縁との間に隙間を生じることが防止される。この場合、潤滑油保持空間27内は潤滑油で満たされ、ピストンウェアリング22の摺動抵抗は減少する。よって、ピストンパッキン26の摩耗量も減少する。従って、ピストンパッキン26の寿命を長くすることができる。
【0029】
(3)本実施形態のエアシリンダ1では、シリンダチューブ2の内周面はピストンウェアリング22の摺動面S1における端縁によって高い圧力で押圧される。よって、シリンダチューブ2の内周面とピストンウェアリング22の摺動面S1における端縁とが強く圧接される。従って、潤滑油を潤滑油保持空間27内により確実に保持することができる。
【0030】
(4)本実施形態のエアシリンダ1では、ウェアリング装着溝21において、ゴムリング23はピストンウェアリング22の非摺動面S2よりも底部側に確実に固定される。従って、ピストンウェアリング22の摺動面S1における端縁をシリンダチューブ2の内周面に対して常に全周にわたって均等に押圧させることができる。よって、シリンダチューブ2の内周面に対してピストンウェアリング22を充分に押し付けて追従させる作用がより確実なものとなっている。
【0031】
(5)本実施形態のエアシリンダ1では、ゴムリング23によって、ピストンウェアリング22の一端が、ウェアリング装着溝21の底部よりも拡径されて配置されている。よって、ピストンウェアリング22の摺動面S1における端縁はシリンダチューブ2の内周面に対して線接触される。従って、潤滑油を前記潤滑油保持空間27内により確実に保持することができる。
【0032】
(6)本実施形態のエアシリンダ1では、ピストンウェアリング22を拡径させる押圧手段としてゴムリング23を設けている。従って、ゴムリング23の弾性復帰力が押圧力としてピストンウェアリング22に作用する。ゆえに、押出成形に由来する大きな寸法公差がシリンダチューブ2にあったとしても、シリンダチューブ2の内周面に対してピストンウェアリング22を充分に押し付けて追従させることができる。
【0033】
従って、かかる場合でもピストンウェアリング22がセンタリング用軸受けとしての役割を充分に果たし、ピストン5のガタを確実に吸収することができる。言い換えると、偏荷重が加わった場合であってもピストン5が偏心しにくくなる。よって、シリンダチューブ2とピストン5との直接接触により金属同士が齧りつきを起こすことが回避され、これによりエアシリンダ1の作動性が向上する。また、ピストン5のガタが吸収されることにより、ピストンロッド13の突出時におけるピストンロッド13の垂れを防止することができる。
【0034】
また、金属同士の齧りつきが回避されることで、ピストン5やシリンダチューブ2の摩耗量も確実に少なくなる。ピストンパッキン26についても、ピストン5の確実なセンタリングが達成されることで、その摩耗量が低減しかつ寿命が延びる。以上の結果、エアシリンダ1の耐久性を向上させることができる。
【0035】
(7)本実施形態のエアシリンダ1では、ピストン5のガタが確実に吸収されるものであり、ゴムリング23の外周にウェアリング22があるため、シリンダチューブ2の内周面との間に隙間が生じにくくなり、ゆえにピストンパッキン26が自身の弾性力によって確実にシリンダチューブ2の内周面に対して追従するために、摺動界面におけるシール性が確実に向上する。よって、ピストン5が区画する圧力作用室8,9同士の間で起こりやすかったエア漏れが阻止される。このことは同時に作動性の向上にもつながる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の流体圧アクチュエータを具体化した実施形態2のエアシリンダ31を図4,図5に基づき詳細に説明する。なお、実施形態1と同様の機能を果たす部分については共通の部材番号を付した。
【0037】
図4に示される本実施形態のエアシリンダ31も、ロッド付きタイプのエアシリンダ31である。第1のアクチュエータ構成部材であるシリンダチューブ2は、等断面形状を有するアルミニウム合金製の筒状押出成形品である。
【0038】
第2のアクチュエータ構成部材としてのピストン5は、一対のピストン本体6を重ね合わせ、それらの間に環状マグネット7を挟持してなる。
本実施形態のエアシリンダ31も、パッキン装着溝25、ピストンパッキン26、ウェアリング装着溝32、ピストンウェアリング22及び押圧手段としてのゴムリング23を備えている。この点については実施形態1と共通している。ただし、実施形態1ではゴムリング23がピストンパッキン26側に偏って配置されていたのに対し、ここではゴムリング23がウェアリング装着溝32の中心に配置されている。
【0039】
図5に示されるように、本実施形態のウェアリング装着溝32は、その断面形状が実施形態1のウェアリング装着溝21と異なっている。つまり、実施形態1ではウェアリング装着溝21の底部には段部21Aが1箇所に設けられていたのに対し、本実施形態では底部に一対の段部32Aが設けられている。前記ピストンウェアリング22は、一対の段部32Aの上面によってその非摺動面S2が支持されうる状態でウェアリング装着溝32に装着されている。ゴムリング23は一対の段部32Aがなす幅狭の領域に収容され、断面略円形状に形成されている。もっとも、ピストン5に偏荷重が加わっていないときピストンウェアリング22の非摺動面S2は、段部32Aの上面に接することなく、ゴムリング23の外周部のみに接している必要がある。
【0040】
さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(1)本実施形態のエアシリンダ31も実施形態1のエアシリンダ1と基本構成を共通とするので、実施形態1において列挙した作用効果(1)、(2)及び(4)を奏する。
【0041】
(2)このエアシリンダ31では、偏荷重が加わることでピストンウェアリング22がウェアリング装着溝32の底部側に押圧された場合、段部32Aによって非摺動面S2の一部が支持される。従って、弾性体からなるゴムリング23のみならず、最終的にはゴムよりも剛性のある材料(例えばアルミニウム合金等)からなるピストン本体6によって、偏荷重が受けられることになる。このため、大きな偏荷重に耐えうるものとすることができ、ひいては作動性、耐久性及びシール性がよりいっそう向上する。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の流体圧アクチュエータを具体化した実施形態3のエアシリンダ41を図6に基づき詳細に説明する。
【0043】
図6(a)に示されるように、このエアシリンダ41は一対のカバー42を備えている。これらのカバー42はそれぞれ2つの貫通孔43を備えている。両カバー42において貫通孔43の内端側開口には、シリンダチューブ44の両端がそれぞれ嵌着されている。従って、シリンダチューブ44は一対のカバー42間に平行に架設された状態となっている。このシリンダチューブ44は、非磁性材料からなる円筒状かつ等断面形状の金属部材である。アクチュエータ構成部材であるシリンダチューブ44は、ここではステンレスを材料として引抜成形法により作製されている。
【0044】
前記貫通孔43内にはエンドキャップ45,46が嵌着されている。エンドキャップ45,46の一端側はシリンダチューブ44の端部開口に対して嵌合している。右側のエンドキャップ45の中心部には連通路47が貫通形成されている。この連通路47は、右側のカバー42の側面に設けられた第1のエア給排ポート10に連通している。左側のエンドキャップ46の中心部にも連通路47が貫通形成されている。この連通路47は、左側のカバー42の側面に設けられた第2のエア給排ポート11に連通している。
【0045】
シリンダチューブ44のピストン収容空間内には、ピストン5Aが摺動可能に収容されている。ピストン5Aはピストン収容空間内を2つの圧力作用室8,9に区画する。
【0046】
図6(a)に示されるように、ピストン5Aは、ピストン本体48、永久磁石49、ピストンヨーク50、ピストンパッキン51、ピストンウェアリング52、ピストンシャフト、クッションリング等を組み付けることにより構成されている。ピストンパッキン51及びピストンウェアリング52は、一対のピストン本体48の外周面に形成された溝部分にそれぞれ装着されている。
【0047】
アクチュエータ構成部材としてのスライダ53は、スライダ本体54、永久磁石55、スライダヨーク56、スペーサ57、スクレーパ61、スライダウェアリング64等を組み付けることにより構成されている。
【0048】
前記スライダ53の長手方向における中央側に収容された永久磁石55及びスライダヨーク56は、ピストン5A側の永久磁石49及びピストンヨーク50と互いに対応する位置関係にある。ただし、永久磁石49,55の極性は同一ではないため、両者49,55は磁気的に吸引関係にある。従って、スライダ53とピストン5Aとの間で磁気吸引力が作用する。そして、ピストン5Aの駆動時には、スライダ53がシリンダチューブ44の長手方向に沿って追従移動するようになっている。
【0049】
図6(b)に示されるように、スペーサ57の内周面には、一対の環状のウェアリング装着溝63が離間して形成されている。なお、ウェアリング装着溝63は4箇所にある。これらのウェアリング装着溝63には、スライダウェアリング64及び押圧手段としての断面楕円形状のゴムリング65が装着されている。
【0050】
スライダウェアリング64はその一部にスリット(図示略)を持つ不完全環状の部材である。本実施形態においてスリットがあるのは、縮径を容易にさせるためである。このスライダウェアリング64では、その内周面がシリンダチューブ44の外周面と摺接する摺動面S1として機能し、かつその外周面が非摺動面S2として機能する。図6(b)に示されるように、スライダウェアリング64の摺動面S1は、スペーサ57の内周面よりも張り出していて、同面よりも優先的にシリンダチューブ44の外周面に摺接するようになっている。
【0051】
図6(b)に示されるように、実施形態2のウェアリング装着溝32に相当する本実施形態のウェアリング装着溝63は、その底部に段部32Aを備えている。スライダウェアリング64は、一対の段部32Aの上面によってその非摺動面S2が支持されうる状態でウェアリング装着溝63に装着されている。スライダウェアリング64よりもひとまわり大径に形成されたゴムリング65は、一対の段部32Aがなす幅狭の領域に収容されている。ゴムリング65は、その弾性復帰力によりスライダウェアリング64を径方向に沿って自身の中心軸線に求心的に常時押圧して、スライダウェアリング64を縮径させる役割を果たしている。このような縮径作用により、シリンダチューブ44の外周面に対してスライダウェアリング64の摺動面S1が押し付けられるようになっている。
【0052】
スペーサ57において、それぞれのウェアリング装着溝63の間には、環状のスクレーパ装着溝62が2箇所に形成されている。従って、シリンダチューブ44の外周面、スペーサ57の内周面、スライダウェアリング64及びスクレーパ61によって、潤滑油を保持するための潤滑油保持空間66が形成されている。
【0053】
以上のように構成されたエアシリンダ41では、ピストン5Aに追従して往復動作を行うスライダ53に対し、その中心軸線をシリンダチューブ44の中心軸線から偏心させるような偏荷重が加わることがある。この場合、スライダウェアリング64における一部の領域がウェアリング装着溝63の底部側に押圧される。すると、スライダウェアリング64よりも底部側にあるゴムリング65が厚さ方向に潰されて変形する。この変形に伴って、ゴムリング65には自身を元の形状に復帰させようとするような弾性復帰力が生じる。この弾性復帰力はゴムリング65の変形量が大きくなるほど増大する。そして、かかる弾性変形力が前記偏荷重に対する抗力として働く結果、スライダウェアリング64の前記摺動面S1がシリンダチューブ44の外周面に圧接する。
【0054】
さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(1)本実施形態のエアシリンダ41では、スライダ53の内周面に設けられたウェアリング装着溝63に、スライダウェアリング64を縮径させる手段としてのゴムリング65が設置されている。従って、ゴムリング65の弾性復帰力が押圧力としてスライダウェアリング64に作用する。ゆえに、押出成形に由来する大きな寸法公差がシリンダチューブ44にあったとしても、スライダウェアリング64の摺動面S1が常にシリンダチューブ44の外周面に圧接する。
【0055】
従って、シリンダチューブ44の外周面とスライダ53の内周面との隙間は、スライダウェアリング64によってシールされる。よって、スクレーパ61の周辺に滞留している潤滑油の漏れが、スライダウェアリング64によって防止される。従って、潤滑油保持空間66に潤滑油を確実に保持することができる。また、スクレーパ61の良好な潤滑状態を長期間維持させることが容易となる。
【0056】
(2)本実施形態のエアシリンダ41では、ウェアリング装着溝63において、ゴムリング65はスライダウェアリング64の非摺動面S2よりも底部側に確実に固定される。従って、スライダウェアリング64の摺動面S1をシリンダチューブ44の外周面に対して常に全周にわたって均等に押圧させることができる。よって、シリンダチューブ44の外周面に対してスライダウェアリング64を充分に押し付けて追従させる作用がより確実なものとなっている。
【0057】
従って、スライダウェアリング64によって前記潤滑油保持空間66に滞留している潤滑油の漏れが防止される。また、スライダ53のガタが吸収される。
(3)本実施形態のエアシリンダ41では、スライダウェアリング64を縮径させる押圧手段としてゴムリング65を設けている。従って、ゴムリング65の弾性復帰力が押圧力としてスライダウェアリング64に作用する。ゆえに、押出成形に由来する大きな寸法公差がシリンダチューブ44にあったとしても、シリンダチューブ44の外周面に対してスライダウェアリング64を充分に押し付けて追従させることができる。従って、かかる場合でもスライダウェアリング64がセンタリング用軸受けとしての役割を充分に果たし、スライダ53のガタを確実に吸収することができる。よって、シリンダチューブ44とスライダ53との直接接触により金属同士が齧りつきを起こすことが回避され、これによりエアシリンダ41の作動性が向上する。
【0058】
また、金属同士の齧りつきが回避されることで、スライダ53やシリンダチューブ44の摩耗量も確実に少なくなり、部材の長寿命化が達成される。以上の結果、エアシリンダ41の耐久性を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、例えば次のような別の形態に変更することが可能である。
・本発明は前記実施形態3のようなシングルチューブタイプのエアシリンダ41に限定されることはなく、例えばシリンダチューブ44を平行に2本配置させたダブルチューブタイプとして具体化されてもよい。このような構成であると、実施形態3と同様の作用効果を奏することに加え、回り止め機能の精度も向上させることができる。
【0060】
・ピストンウェアリング22及びスライダウェアリング64に設けられるスリット24の形状は、ウェアリング22及びスライダウェアリング64の拡径、縮径を可能にするものであれば、互い違いに形成されていなくてもよい。
【0061】
・ゴムリング23,65の断面形状は円形状または楕円形状のみに限定されることはなく、例えば矩形状や台形状等であってもよい。
・実施形態1,2において、ウェアリング装着溝21,32、ピストンウェアリング22及びゴムリング23をピストン5における3箇所以上の複数箇所に設けてもよい。このようにすると、1箇所または2箇所のみに設けた場合に比べ、ピストン5のガタを吸収する作用がより確実なものとなる。
【0062】
・環状弾性体を押圧手段として用いた前記各実施形態に代え、環状でない弾性体、例えばその一部にスリットを持つようなゴムリングを採用してもよい。また、複数個のゴム片をウェアリング装着溝21,32,63内に配置することとしてもよい。さらに、このような弾性体に代えて、バネ等の付勢手段を採用することも許容される。
【0063】
・ウェアリング装着溝21,32,63は必須ではなく、例えばそれを省略した構成を採用することも可能である。この場合、例えば実施形態1であればピストン5の外周面に対してじかにゴムリング23等を接着し、そこにピストンウェアリング22等を同様に接着すればよい。ただし、ピストンウェアリング22等及びゴムリング23等を溝構造に装着する構成であると、それらが横ズレしにくくなるため、アクチュエータ構成部材のガタをより確実に吸収することができる。
【0064】
・実施形態3において、ピストン5A−シリンダチューブ44間にも実施形態1,2のようなガタ吸収構造を採用すれば、よりいっそう作動性や耐久性を向上させることができる。
【0065】
・本発明は、実施形態3のようなマグネット式のロッドレスシリンダに限定されることはなく、マグネット式以外のもの、例えばピストンとスライダとをヨークで機械的に連結したロッドレスシリンダ等に適用されてもよい。
【0066】
・本発明はエア以外の流体(例えばオイル等)を利用したシリンダに適用されてもよいほか、流体圧シリンダ以外のその他の流体圧アクチュエータにも適用されてもよい。
【0067】
・本実施形態では、ピストンウェアリング22及びスライダウェアリング64の断面形状は矩形状に形成されていた。それに対して、ピストンウェアリング22及びスライダウェアリング64の断面形状を台形等の多角形状、三角形状、及び円形状等にしてもよい。
【0068】
・本実施形態では、ピストンウェアリング22またはスライダウェアリング64が2箇所または4箇所に設けられていた。それに対して、ピストンウェアリング22またはスライダウェアリング64の数は少なくとも1つ以上あれば幾つでもよい。
【0069】
・本実施形態では、環状弾性体としてのゴムリング23,65の数は1つのピストンウェアリング22またはスライダウェアリング64に対して1つ設けられていた。それに対して、ゴムリング23,65の数を2つ以上にしてもよい。
【0070】
ここで、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1)前記押圧手段は前記アクチュエータ構成部材に設けられたウェアリング装着溝に装着される環状弾性体であり、その環状弾性体は前記ウェアリング装着溝において前記ウェアリングよりも底部側に配置されている。このような構成にすれば、環状弾性体はウェアリングよりも底部側に確実に固定される。従って、ウェアリングをアクチュエータ構成部材に対して常に全周にわたって均等に押圧させることができる。
【0071】
(2)技術的思想(1)において、前記ウェアリングは断面矩形状に形成され、前記環状弾性体はウェアリングの一端に偏って配置されていることを特徴とする流体圧アクチュエータ。このような構成にすれば、環状弾性体によって、ウェアリングの一端は、ウェアリング装着溝の底部よりも拡径または縮径されて配置される。よって、ウェアリングはアクチュエータ構成部材に対して線接触される。従って、潤滑油を前記潤滑油保持空間内により確実に保持することができる。
【0072】
(3)技術的思想(1)または技術的思想(2)において、前記環状弾性体の一部は前記ウェアリング装着溝の底面に形成された凹部に係入されていることを特徴とする流体圧アクチュエータ。このような構成にすれば、環状弾性体が位置ずれするのを防止することができる。
【0073】
(4)前記ウェアリングの形成材料は金属からなる。このように構成すれば、ウェアリングの摩耗量は確実に減少する。従って、流体圧アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0074】
(5)前記ウェアリングの形成材料は剛性を有する合成樹脂からなる。このように構成すれば、流体圧アクチュエータの作動時における振動は小さくなる。従って、流体圧アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、潤滑油保持空間に潤滑油を確実に保持することができる。また、長期間にわたって良好な潤滑状態を維持することができる。
【0076】
請求項2に記載の発明によれば、第2のアクチュエータ構成部材の偏心及び傾きを抑制することができる。また、パッキンの寿命を長くすることができる。
さらに、請求項1または請求項2に記載の発明によれば、潤滑油を前記潤滑油保持空間内により確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を具体化した実施形態1のエアシリンダの全体断面図。
【図2】 実施形態1において使用されるウェアリングの斜視図。
【図3】 実施形態1のエアシリンダにおける摺動界面の部分拡大断面図。
【図4】 実施形態2のエアシリンダの全体断面図。
【図5】 実施形態2のエアシリンダにおける摺動界面の部分拡大断面図。
【図6】 (a)は実施形態3のエアシリンダの一部破断全体断面図、(b)はそれにおける摺動界面の部分拡大断面図。
【図7】 従来例のエアシリンダにおける摺動界面の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1,31,41…流体圧アクチュエータとしてのエアシリンダ、2…第1のアクチュエータ構成部材としてのシリンダチューブ、5,5A…第2のアクチュエータ構成部材としてのピストン、21,32,63…ウェアリング装着溝、21A,32A…段部、22…ピストンウェアリング、23,65…押圧手段としてのゴムリング、24…スリット、26…環状パッキンとしてのピストンパッキン、27、66…潤滑油保持空間、44…アクチュエータ構成部材としてのシリンダチューブ、53…アクチュエータ構成部材としてのスライダ、61…環状パッキンとしてのスクレーパ、64…スライダウェアリング、S1…摺動面、S2…非摺動面。
Claims (2)
- 2つのアクチュエータ構成部材がなす摺動界面に、スリットを一部に持つウェアリングを複数個設け、前記ウェアリングによって潤滑油保持空間を区画形成し、一方のアクチュエータ構成部材に装着された環状のパッキンを前記潤滑油保持空間内に配置した流体圧アクチュエータにおいて、
一方のアクチュエータ構成部材側に装着された断面矩形状の前記ウェアリングの一端に偏って配置されることによりそのウェアリングの外周面における一端を他端に対し前記他方のアクチュエータ構成部材側に配置し、そのウェアリングの外周面における一端を他方のアクチュエータ構成部材に対して線接触させるとともに、前記ウェアリングを拡径させる押圧手段を設け、その押圧手段により、前記ウェアリングを他方のアクチュエータ構成部材に対し押し付けて追従させるようにしたことを特徴とする流体圧アクチュエータ。 - 筒状をした第1のアクチュエータ構成部材の有する収容空間内に第2のアクチュエータ構成部材を移動可能に収容するとともに、前記第2のアクチュエータ構成部材の外周面に、スリットを一部に持つウェアリングを複数個設け、前記ウェアリングによって潤滑油保持空間を区画形成し、第2のアクチュエータ構成部材に装着された環状のパッキンを前記潤滑油保持空間内に配置した流体圧アクチュエータにおいて、
断面矩形状の前記ウェアリングの一端に偏って配置されることによりそのウェアリングの外周面における一端を他端に対し前記第1のアクチュエータ構成部材側に配置し、そのウェアリングの外周面における一端を前記第1のアクチュエータ構成部材の内周面に対して線接触させるとともに、前記ウェアリングを拡径させる押圧手段を設け、その押圧手段により、前記ウェアリングを第1のアクチュエータ構成部材の内周面に対し押し付けて追従させるようにしたことを特徴とする流体圧アクチュエータ。
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