JP4002398B2 - 元素状触媒を含む低圧縮、反発弾性ゴルフボール及びその製造方法 - Google Patents

元素状触媒を含む低圧縮、反発弾性ゴルフボール及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリブタジエン反応生成物を製造するのに十分な反応温度において、一定量のポリブタジエン、遊離基源及び少なくとも一つの硫黄成分、セレン成分又はテルル成分を含むシスからトランスへの転換触媒の転換反応から製造する、圧縮が低く反発弾性のあるゴルフボール及びその部分に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のゴルフボールをいくつかの一般的な群に分けることができる:(a)一又は複数の層を有する中実ゴルフボール及び(b)糸巻きゴルフボールである。中実ゴルフボールはワンピースボールを含み、これは構成するのが容易でかつ相対的に安価であるが、プレー特性が良好ではなく、従って一般的に練習場用のボールとして用途が限られている。ツーピースボールは一般に固形のコアとカバーで構成されており、非常に耐久性がありかつ最大飛距離を出すことから一般に遊びのゴルファーに最も人気がある。ツーピース構成のボールはポリマーのコアをカバーで包んで製造されるのが通常である。典型的には、ジアクリル酸亜鉛及び/又は他の類似の架橋剤で化学的に架橋したポリブタジエンからコアを製造する。一般的にはこれらのボールを製造することは容易であるが、これらはプレー特性に限界があるとされている。中実ゴルフボールは多層ゴルフボールも含んでおり、これは一層又は複数層の中実コア及び/又は一層又は複数層のカバーを含んでいる。これらのボールは幅広いプレー特性を有しているとされている。
【0003】
糸巻きゴルフボールは、高い回転と柔らかい“感覚”の特性を有していることから一般に多くの競技者に好まれている。典型的には糸巻きゴルフボールは、張力をかけたエラストマー材料で包んだ中実の、中空の又は流体を充填したセンター及びカバーを含む。糸巻きゴールは一般に、中実のツーピースゴルフボールより製造するのが困難でより高価である。
広範囲のプレー特性、すなわち圧縮、速度“感覚”及び回転は種々のプレー能力に応じて最適化することができ、これらの特性を提供するために設計された種々のゴルフボールが先行技術で公知である。現代のゴルフボールの構造に存在する最も一般的なポリマーの一つは、アイオノマーに加えてポリブタジエンであり、より詳細にはcis−アイソマーの濃度が高いポリブタジエンである。cis−濃度が高いポリブタジエンを使用すると、反発弾性が非常に高くかつ硬いボールとなり、硬いカバー材料と組み合わせると特にそうなる。これらの高度に反発弾性のあるゴルフボールは、クラブで打った場合に相対的に硬い“感覚”を有する。高cis−ポリブタジエンで構成した柔らかい“感覚”のゴルフボールは反発弾性が低い。改良したゴルフボールを提供しようとする努力において、以下に示すように様々な他のポリブタジエン配合物が製造されてきた。
【0004】
米国特許第3,239,228号は、硫黄含量が高いポリブタジエンゴムを成形したコアとカバーを有する中実ゴルフボールを開示している。コアのポリブタジエン含量は立体的に制御されて、25〜100%のcis−及び0〜65%のtrans−1,4−ポリブタジエンとポリブタジエンのビニル構成体を有する残余物との構成体となる。ポリブタジエンゴルフボールコアの好ましい態様は、35%のcis−、52%のtrans−及び13%のビニル−ポリブタジエンを含む。trans−とビニル−の含量のレベルは、ポリマーブレンドの全体としてのプレー特性にとって重要ではないと開示されている。
英国特許第1,168,609号は、改良されたゴルフボールコアを成形することができる成形組成物を開示しており、それは基本となるポリマー成分としてcis−ポリブタジエンを含んでいる。コアポリマー成分は典型的には、少なくとも60%のcis−ポリブタジエンと、ポリブタジエンのtrans−又はビニル−型のいずれかである残余物とを含んでいる。好ましい態様において、コアポリブタジエン成分は、90%のcis−構造体と、1,4−ポリブタジエンのtrans−又はビニル−構造体のいずれかである10%の残余物を含んでいる。
【0005】
米国特許第3,572,721号及び3,572,722号は、中実の、ワンピース又はツーピースゴルフボールを開示しており、ツーピースボールはコア及びカバーを有している。カバー材料は、当業者に公知の多数の材料又はそのブレンドのいずれか一つを含むことができ、少なくとも90%からの量で存在してもよいtrans−ポリブタジエンを含み、残余物はcis−及び/又はビニル構造体である。
英国特許第1,209,032号は、コアとカバーを有するツーピース又はスリーピースゴルフボールを開示している。コア又はカバー材料は架橋可能であればいかなる材料でもよい。特に、ポリマーはブタジエン又はイソプレンのポリマー又はコポリマーであることができる。好ましくは、ポリマー成分はcis含量が50質量%より高いポリブタジエンである。
米国特許第3,992,041号は、ワンピース、中実ゴルフボールを開示している。ゴルフボール材料は典型的にはポリブタジエンであり、これは少なくとも60%のcis−ポリブタジエン、及びtrans−ポリブタジエン及び/又は1,2−ポリブタジエン(ビニル)アイソマーである40%の残余物であるように選択した立体配置を有する。
【0006】
米国特許第4,692,497号は、少なくとも二つの遊離基開始剤を使用して、ポリブタジエンを含むジエンポリマーとα、βエチレン系不飽和酸を硬化させることによって、製造したゴルフボール及びそのための材料を開示している。
米国特許第4,931,376号は、ゴルフボールカバー材料を含む種々の適用に使用するブタジエンポリマーの製造方法を開示している。この発明のある態様は、ツーピースボールに使用するゴルフボールカバーとして少なくとも30質量%のtrans−ポリブタジエンポリマーを含む、ブレンドしたポリマー樹脂材料を使用している。
米国特許第4,971,329号は、cis−1,4−ポリブタジエンと1,2−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、無機充填材及び遊離基開始剤のポリブタジエン混合物から製造した中実のゴルフボールを開示している。この混合物は、約99.5質量%〜約95質量%のcis−1,4−ポリブタジエンと約0.5質量%〜約5質量%の1,2−ポリブタジエンを有する。
米国特許第5,252,652号は、ベースゴム、好ましくはcis−含量が少なくとも40mol%である1,4−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸金属塩、有機ペルオキシド、及び有機硫黄化合物及び/又はその金属塩を含むゴム組成物から製造した、飛びの作動性が改良されたワンピース又は多層ゴルフボールコアを開示している。有機硫黄化合物及び/又は金属塩は、典型的には100質量部当たり約0.05〜2質量部の量で存在し、かつ有機ペルオキシドは典型的には全ポリマー成分の100質量部当たり約0.5〜3質量部の量で存在する。
【0007】
欧州特許第0 577 058号は、二つの分離した層として形成されているコアとカバーを含むゴルフボールを開示している。カバーの内部層をコアの上に成形しておりアイオノマー樹脂から製造されている。カバーの外部層を内部層の上に成形しており、天然又は合成バラタとポリブタジエンのような架橋可能なエラストマーのブレンドから製造されている。カバーの外部層の一つの態様において、エラストマーはcis−構造を少なくとも40%有し、残部の60%がtrans−アイソマーである1,4−ポリブタジエンである。好ましい態様は、cis−構造を少なくとも90%より多く、より好ましくは少なくとも95%のcis−構造を含む。
米国特許第5,421,580号は、センターバッグに含まれた液体のセンター、液体センター上に形成したゴム糸、及び糸巻き層と液体センターを覆うカバーを有する糸巻きゴルフボールを開示している。カバー材料は当業者に知られている多数の材料又はそのブレンドのいずれか一つを含むことができ、それにはtrans−ポリブタジエン及び/又は1,2−ポリブタジエン(ビニル)を含んでおりそれによってカバーは70〜85のJIS−C硬度を有している;好ましいtrans−の百分率は開示されていない。
【0008】
米国特許第5,697,856号はコアとカバーを有する中実のゴルフボールを開示しており、コアは加硫前に90%より低くないcis−ポリブタジエン構造の含量を有するブタジエンゴムを含むベースゴム組成物を加硫することによって製造されている。加硫後に存在するtrans−ポリブタジエン構造の量は10〜30%であり、量が30%を越えると反発弾性性能が劣化した柔らかすぎるコアになるという有害な結果になり、かつゴルフボールの性能が低下することになると言われている。コアは加硫剤、充填材、有機ペルオキシド及び有機硫黄化合物を含んでいる。
英国特許第2,321,021号は、コア及びコアの上に形成したカバーを有し、かつ内部カバー層と外部カバー層を有する二層のカバー構成を有する、中実のゴルフボールを開示している。外部カバー層は0.05〜5質量部の有機スルフィド化合物を含むゴム複合体を含んでいる。コアゴム組成物は、ベースゴム、好ましくは少なくとも40質量%のcis−含量を有する1,4−ポリブタジエン、架橋剤、共−架橋剤、有機スルフィド及び充填材を含んでいる。架橋剤は典型的には0.3〜5.0質量部の量で存在する有機ペルオキシドであり、共−架橋剤は典型的には10〜40質量部の量で存在する不飽和脂肪酸の金属塩である。有機スルフィド化合物は典型的には0.05〜5質量部で存在する。
【0009】
米国特許第5,816,944号は、コアとカバーを有する中実のゴルフボールを開示しており、コアは50〜80のJIS−C硬度を有し、カバーは50〜60のショアD硬度を有している。コア材料は加硫したゴム、例えばcis−ポリブタジエン、架橋剤、有機ペルオキシド、有機硫黄化合物及び/又は金属含有有機硫黄化合物及び充填材を含む。
さらに、trans−ポリブタジエンコンホメーションの割合が高い常用のポリマー、例えばFirestone Corp.からのDIENE 35NF(これは40%のcis−アイソマーと50%のtrans−ポリブタジエンアイソマーを含む)、及び高−cis−及び高−trans−ポリブタジエンアイソマーの混合物、例えばそれぞれShell Corporation からのCARIFLEX BR1220、及びAsahi Chemical Co.からのFUREN 88は、典型的には高い反発弾性値を生じることはなく、従って好ましくない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、低圧縮を有するゴルフボール、すなわち柔らかいボールである一方、従来のボールと同等かそれより高い反発弾性を有するゴルフボールを製造することが望ましい。そうでない場合は、圧縮が同等又は低いが大きな反発弾性を達成することが望ましい。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下の本発明に従う全ての態様をあらゆるゴルフボールで使用することができる。特に、以下の三つの態様の一つにおいて各態様を使用することができる。第1の態様において、ゴルフボールはワンピースゴルフボールである。第2の態様において、ゴルフボールはコア及びコアの周りに同心状に配置されたカバーを含み、かつ反応生成物は少なくともコアの一部に配置されている。第3の態様では、ゴルフボールはセンター及び少なくとも一つの中間層を有するコア;及びコアの周りに同心状に配置されたカバーを含み、反応生成物はコアの部分に配置されている。
【0012】
本発明は、一定量のポリブタジエン、遊離基源及び少なくとも一つのVIA族元素を含むcis−trans触媒を、ポリブタジエン反応生成物を製造するのに十分な反応温度で転換反応させて製造したゴルフボールに関し、該反応生成物は転換反応以前に存在したtrans−ポリブタジエンの量より多くのtrans−ポリブタジエンを含んでいる。一つの態様では、少なくとも一つの元素成分を含むcis−trans触媒の一部を含む。一つの態様では、ゴルフボールは、約60より大きいディンプルカバレッジ、約35〜80のショアD硬度、又は約3.45MPa(500psi)より大きい曲げ弾性率の少なくとも一つを有するカバーを含み、かつこの場合ゴルフボールは約50〜120の圧縮又は約0.7より大きい反発係数の少なくとも一つを有する。他の態様では、反応生成物は、−50℃で測定した1次動的こわさが0℃で測定した2次動的こわさの約130%より小さい1次動的こわさを有している。
【0013】
一つの好ましい態様では、VIA族金属は元素状硫黄の硫黄成分、ポリマー状硫黄、又はそれらの組み合わせを含む。他の態様では、VIA族元素はセレン、テルル又はそれらの組み合わせを含む。VIA族元素を含むcis−trans触媒は典型的にはポリブタジエン100部当たり約0.01〜25部の量で存在する。好ましい態様では、cis−trans触媒はポリブタジエン100部当たり約0.01〜1部の量で存在する。さらに好ましい態様では、cis−trans触媒はポリブタジエン100部当たり約0.05〜0.5部の量で存在する。他の態様では、cis−trans触媒は、少なくとも約32%のtrans−ポリブタジエンアイソマーを含むポリブタジエン反応生成物を製造するのに十分な量で存在する。他の態様では、cis−trans触媒はさらに、少なくとも一つの無機スルフィド化合物、有機硫黄化合物、芳香族有機金属化合物、金属−有機硫黄化合物、又は芳香族有機化合物を含む。
一つの態様では、ポリブタジエン反応生成物は、全ポリブタジエンに基づいて約7%より少ないビニルアイソマー含量を含む。好ましい態様では、ポリブタジエン反応生成物は約4%より少ないビニルアイソマーを含む。より好ましい態様では、ポリブタジエン反応生成物は約2%より少ないビニルアイソマーを含む。
【0014】
他の態様では、反応生成物はさらに加硫促進剤を、好ましくはcis−trans転換反応を促進するのに十分な量で含む。好ましい態様では、加硫促進剤は少なくとも一つのするフェンアミド、チアゾール、ジチオカルバメート、チウラム、キサンテート、チアジアジン、チオ尿素、グアナジン、又はアルデヒド−アミンを含む。促進剤は典型的には約0.05〜2phrの量で存在する。好ましい態様では、促進剤は約0.1〜1phrの量で存在する。
一つの態様では、反応生成物を有するコアの部分はセンターである。他の態様では、センターは流体を含む。さらに他の態様では、中間層は張力をかけたエラストマー材料の糸巻き層を含むことができる。好ましい態様では、張力をかけたエラストマー材料は反応生成物を含む。他の態様では、ゴルフボールはさらに密度調整用充填材を含む。
【0015】
本発明はゴルフボールの製造方法にも関し、該方法は以下の工程を含む:(a)少なくとも一つのVIA族元素を含む少なくとも一つのcis−trans触媒、(b)遊離基源(c)全ポリマー成分の約70%より多い量で存在するcis−ポリブタジエン成分を有する第1の反発弾性ポリマー成分、及び任意に(d)架橋剤を結合させる工程、第1の反発弾性ポリマー成分の一部を第2の反発弾性ポリマー成分に転換する工程、この工程においてcis−ポリブタジエン成分の少なくとも一部がtrans−ポリブタジエン成分に転換しかつ第2の反発弾性ポリマー成分中のポリブタジエンの少なくとも約10%がtrans−ポリブタジエンでありかつビニルポリブタジエンが約7%より少なくなっている、及び第2の反発弾性ポリマー成分をゴルフボールの少なくとも一部分に形成する工程。
一つの態様では、第2の反発弾性ポリマー成分の部分を中実の球体に形成する。他の態様では、中実の球体の回りに配置した少なくとも一つの層に該部分を形成することができ、この態様は球体の形成の代わりであってもそれに加えてでもよい。代わりの態様では、球体を形成するが該層を球体の回りに配置した少なくとも一つの層に配置する。追加的な態様では、第2の反発弾性ポリマー成分の追加的な部分を球体の回りに同心円状に配置したカバーに形成する。
【0016】
一つの態様では、ポリブタジエン成分は第1の反発弾性ポリマー成分の全体に対して少なくとも80%の量で存在するcis−ポリブタジエンを含む。他の態様では、密度調整用充填材も結合工程に含める。さらに他の態様では、第1の反発弾性ポリマー成分とcis−trans触媒を結合させる工程及び部分を形成する工程は、第1の量のtrans−ポリブタジエンを有する中心と第2の量のtrans−ポリブタジエンを有する表面を有する球体を形成することを含み、この場合第1の量が第2の量より少なくとも約6%少ない。
一つの態様では、球体の部分は流体を含む。他の態様では張力をかけたエラストマー材料を球体の回りに巻く。好ましい態様では、張力をかけたエラストマー材料は、ポリブタジエン又はポリイソプレンとVIA族元素成分を含むcis−trans触媒を含む反応生成物を含む。
さらに他の態様では、形成工程は、第1の反発弾性ポリマー成分を第2の反発弾性ポリマー成分に転換するために第1の反発弾性ポリマーを一段又は多段で圧縮成形し、かつ第2の反発弾性ポリマー成分を中実の球体に形成することを含む。好ましい態様では、圧縮成形には8〜15分を要する。好ましい態様では、転換と形成は実質的に同時に起こる。
【0017】
本発明は、以下の工程を含む方法によって製造したゴルフボールにも関する:(a)少なくとも一つのVIA族元素を含む少なくとも一つのcis−trans触媒、(b)遊離基源、及び(c)反発弾性ポリマー成分の約70%より多い量で存在するcis−ポリブタジエンを含む第1の反発弾性ポリマー成分を結合させる工程、第1の反発弾性ポリマー成分の一部分を第2の反発弾性ポリマー成分に約5〜18分で変換する工程、この工程においてcis−アイソマー成分の少なくとも一部分がtrans−アイソマー成分に変換され、かつ第2の反発弾性ポリマー成分中のポリブタジエンの少なくとも約10%はtrans−ポリブタジエンでありかつビニル−ポリブタジエンは約7%より少ない、及び第2の反発弾性ポリマー成分をゴルフボールの少なくとも一部分に形成する工程。
本発明はさらに、十分量のポリブタジエン、遊離基源及び少なくとも一つのVIA族元素を含むcis−trans触媒の転換反応から製造した材料を含むゴルフボールに関し、転換反応の前に存在するtrans−ポリブタジエンの量より多いtrans−ポリブタジエンの量を含むポリブタジエン反応生成物を製造するのに十分な温度で該反応が生じ、該反応生成物は第1の硬度を有する中心点と第2の硬度を有する表面を有する球体含み、第2の硬度は第1の硬度の10%より大きく第1の硬度と相違している。一つの態様では、反応生成物は依然としてcis−trans触媒の一部を含む。
【0018】
ゴルフボールを以下の工程によって製造することができる:(a)少なくとも一つのVIA族元素を含むcis−trans触媒、(b)遊離基源及び(c)全ポリマーの約70%より多い量で存在するcis−ポリブタジエン成分を含む第1の反発弾性ポリマー成分を結合させる工程、少なくとも一部分のcis−ポリブタジエン成分をtrans−ポリブタジエン成分に転換するのに十分な温度で、約5〜18分、第1の反発弾性ポリマー成分の一部分を第2の反発弾性ポリマー成分に転換する工程、この工程において、第2の反発弾性ポリマー成分におけるポリブタジエンの少なくとも約10%はtrans−ポリブタジエンでありビニル−ポリブタジエンは約7%より少ない、及び第2の反発弾性ポリマー成分をゴルフボールの少なくとも一部へ形成する工程、この工程で第2の反発弾性成分は、第1の硬度を有する中心と第2の硬度を有する表面を有する球体を含み、第2の硬度は第1の硬度の10%より大きく第1の硬度と相違している。
【0019】
ゴルフボールを以下の工程により製造することもできる:(a)少なくとも一つのVIA族元素を含むcis−trans触媒、(b)遊離基源及び(c)全ポリマー成分の約70%より多い量で存在するcis−ポリブタジエン成分を含む第1の反発弾性ポリマー成分を結合させる工程、少なくとも一部分のcis−ポリブタジエン成分をtrans−ポリブタジエン成分に転換するのに十分な温度で、約5〜18分、第1の反発弾性ポリマー成分の一部分を第2の反発弾性ポリマー成分に転換する工程、この工程において、第2の反発弾性ポリマー成分におけるポリブタジエンの少なくとも約10%はtrans−ポリブタジエンでありビニル−ポリブタジエンは約7%より少ない、及び第2の反発弾性ポリマー成分をゴルフボールの少なくとも一部へ形成する工程、この工程において、第2の反発弾性成分は0℃で測定した第2の動的こわさの約130%より小さい−50℃で測定した第1の動的こわさを有する。
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に記載される図面と合わせて示される以下の詳細な説明から確認することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
定義
一又は複数の数値又は数値範囲について本明細書で使用する“約”という用語を、範囲内の全ての数値を含む全てのその数値を意味すると解すべきである。
本明細書で使用する“活性成分”という用語を、化学反応に必須の混合物又はブレンドの特定の成分として定義する。
本明細書で使用する、置換及び未置換の“アリール”基は、共役二重結合の系を有する炭化水素環を意味し、典型的には4n+2π(nは整数)環電子を有する。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アニシル、トリル、キシレニル及び類似物であるが、これらに限定されない。本発明に従うと、アリールは複素芳香基、例えばピリミジン又はチオフェンを含む。これらのアリール基は多数の種々の官能基で置換されていてもよい。炭素環式基に関して本明細書で記載した官能基に加えて、アリール基への官能基はニトロ基を含む。
【0021】
本明細書で使用する“Atti圧縮”という用語を、Atti Compression Gauge(Union市, NJ.のAtti Engineering Corp.から市場で入手可能である)で測定した較正済みのバネのずれに対する対象又は材料のずれと定義する。Atti圧縮はゴルフボールの圧縮を測定するに典型的に使用される。圧縮値は測定する製品の直径に依存する。Atti Gaugeを使用して4.2672cm(1.680インチ)より小さい直径のコアを測定する場合、金属又は他の適切なシムを使用して測定対象の直径を4.2672cm(1.680インチ)とすることを理解すべきである。しかしながら、コアの圧縮について述べる場合、圧縮負荷測定を使用することが好ましい。“圧縮負荷”という用語を、直径が1.58インチの球状試験片が10.8%直径方向にずれるときの規格化した負荷をポンドで表したものと定義する。
本明細書で使用する置換及び未置換の“炭素環式”は、環状の炭素含有化合物を意味し、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及び類似物を含むがこれに限定されない。このような環状基は、一又は複数の水素原子を官能基で置換した種々の置換体も含むことができる。このような官能基は上記したものを含み、1〜28の炭素原子を有する低級アルキル基を含む。本発明の環状基はさらに複素原子を含むことができる。
【0022】
本明細書で使用するゴルフボールの“反発係数”を、ボールを堅い板に向けたときの向ける速度に対する跳ね返る速度の比と定義する。向ける速度は38.1m/s(125ft/s)と理解されている。
本明細書で使用する“動的こわさ”を、振幅100μm、1Hzで振動する半径1.4mmの球状侵入プローブに対するずれで負荷を割ったものと定義する。プローブは試験材料の表面に動的に侵入する。球状のコアの試験材料をコアの赤道に沿って6mm−厚さの層に切断することによって調製して、厚さ6mmでコアのセンターを含む表面を有するディスクを作る。ディスク上の選択した半径方向のいずれかの位置にプローブを置くことによって動的こわさの測定を行うことができる。正確な動的な測定は、試験資料を実質的に均一な温度に保つことによって行うことができる。動的こわさを、TA Instruments Corporation, New Castle,デラウエアから入手可能な動的機械分析機、Model DMA 2980を使用して得ることができる。DMA 2980の機械の設定は、周波数1Hz、振幅100μm、静的負荷0.3N、及び自動ストレイン105%である。半径1.4mmの球状プローブは、DMA 2980の侵入キットアクセサリーとしてTA Instrumentsから入手可能である。DMA 2980には温度制御室が付設されており、これによって広範囲の環境温度での試験が可能となる。
【0023】
本明細書で使用する“VIA族成分”又は“VIA族元素”という用語は、硫黄成分、セレン成分又はテルル成分又はこれらの組合せを含む成分を意味する。
本明細書で使用する“流体”という用語は、液体、ペースト、ゲル、ガス(例えば空気)又はこれらの組合せを含む。
本明細書で使用する“誘電正接”又は“tanδ”という用語を、回復できないエネルギーを回復可能なエネルギーで割ったものとして定義し、ずれのエネルギーを本明細書で動的こわさについて特定した操作標準で測定する。誘電正接を、上記の同一の動的機械分析機及び設定を使用して得た。
本明細書で使用する“分子量”という用語を、絶対質量平均分子量と定義する。
本明細書で使用する“多層”という用語は、少なくとも二つの層を意味し、液体センターボール、糸巻きボール、中空センターボール及び少なくとも二つの中間層及び/又は内部層又は外部層を有するボールを含む。
【0024】
本明細書で使用する“100部当たりの部”という用語は“phr”としても知られており、全ポリマー成分の100質量部に対する混合物中に存在する特定成分の質量部の数として定義する。数学的には、ある成分の質量をポリマーの全質量で割り100をかけて表すことができる。
本明細書で使用する“実質的に含まない”という用語は、約5質量%より少ないこと、好ましくは約3質量%より少ないこと、より好ましくは約1質量%より少ないこと、最も好ましくは約0.01質量%より少ないことを意味する。
本明細書で使用する“硫黄化合物”という用語は、元素状硫黄、ポリマー硫黄又はこれらの組合せである成分を意味する。“元素状硫黄”はSの環状硫黄を意味し、“ポリマー硫黄”は元素状硫黄に関して少なくとも一つの硫黄を含む構造であることをさらに理解すべきである。
【0025】
本発明の詳細な説明
本発明は、ワンピースゴルフボール、コアとカバーを有するツーピースゴルフボール及び中実の、中空の又は流体を充填したセンター、センターに隣接する同心円状に配置した少なくとも一つの中間層及びカバーを有する多層ゴルフボールに関する。センター、カバー又は中間層の少なくとも一つは、cis−trans触媒、ポリブタジエンを有する反発弾性ポリマー成分、遊離基源及び任意に架橋剤、充填剤又はその両者を含む反応生成物を含む。好ましくは、反応生成物は、0℃で測定した第2の動的こわさの約130%より小さい−50℃で測定した第1の動的こわさを有する。より好ましくは、第1の動的こわさは第2の動的こわさの約125%より小さい。
【0026】
本発明は、ポリブタジエンのcis−アイソマーをtrans−アイソマーに成形サイクルにおいて転換し、ゴルフボールを製造する方法を含む。ポリマー、cis−trans触媒、充填材、架橋剤及び遊離基源の種々の組合せを使用することができる。高い反発弾性と低い圧縮を得るために、成形サイクルにおいて、cis−アイソマーの含量が好ましくは約70%より大きい高分子量ポリブタジエンを転換して、ゴルフボールの点又はその部分のいずれかにおいてtrans−アイソマー含量を増加させ、好ましくはゴルフボールの実質的に全て又はその部分にわたって割合を増加させる。より好ましくは、cis−ポリブタジエンアイソマーは全ポリブタジエン含量の約80%より多い量で存在する。最も好ましくは、cis−ポリブタジエンアイソマーは全ポリブタジエン含量の約96%より多い量で存在する。特定の理論にとらわれる考えはないが、1,2−ポリブタジエンアイソマー(“ビニル−ポリブタジエン)の量が少ないことが初期ポリブタジエン及び反応生成物では好ましいと考えらえる。典型的には、ビニルポリブタジエンアイソマーの含量は約7%より少ない。好ましくは、ビニルポリブタジエンアイソマーの含量は約4%より少ない。より好ましくは、ビニルポリブタジエンアイソマーの含量は約2%より少ない。特定の理論にとらわれる考えはないが、組み合わせたcis−及びtrans−ポリブタジエン主鎖の得られた易動度は、同一物を含む反応生成物及びゴルフボールの低い弾性率及び高い反発弾性に対応すると考えられる。
【0027】
高い反発弾性と低い弾性率(低い圧縮)特性(これらはゴルフボールのプレー特性にとって望ましくかつ有益である)を示すポリマー反応生成物を得るために、高分子量cis−1,4−ポリブタジエンを、成形サイクルにおいて好ましくはtrans−アイソマーに転換することができる。ポリブタジエン材料は典型的には約200,000を超える分子量を有する。好ましくは、ポリブタジエンの分子量は約250,000より大きく、より好ましくは約300,000〜500,000である。特定の理論にとらわれる考えはないが、cis−trans触媒成分は、遊離基源と共役した場合、ある割合のポリブタジエンポリマー成分をcis−からtrans−構造に変換するように作用すると考えられている。cis−trans変換ではcis−trans触媒、例えばVIA族元素の存在が必要であり、この触媒は有機硫黄又は金属含有有機硫黄化合物、置換又は未置換芳香族有機化合物、無機スルフィド化合物又はこれらの混合物をさらに任意に含むことができる。本明細書で使用する“cis−trans触媒”は、所与の温度で少なくとも一部のcis−ポリブタジエンアイソマーをtrans−ポリブタジエンアイソマーに転換する全ての成分又はその組み合わせを意味する。cis−trans触媒成分は、本明細書で記載した一又は複数の他のcis−trans触媒を含むことができるが、少なくとも一つのVIA族成分を含んでいなければならない。VIA族成分は好ましくは硫黄又はポリマー硫黄を含む。
【0028】
cis−trans触媒に任意に含ませることが可能な置換又は未置換の適切な芳香族有機成分は以下を含むがこれに限定されない:式(R)−R−M−R−(R)を有する成分、式中R及びRはそれぞれ水素又は置換若しくは未置換のC1−20の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、アルコキシ又はアルキルチオ基又は単環式、多環式若しくは縮合環式C〜C24の芳香族基であり;x及びyはそれぞれ0〜5の整数であり;R及びRをそれぞれ単環式、多環式若しくは縮合環式C〜C24の芳香族基から選択し;かつMはアゾ基又は金属成分を含む。R及びRをそれぞれ好ましくはC〜C10の芳香族基から選択し、より好ましくはフェニル、ベンジル、ナフチル、ベンズアミド及びベンゾチアジルから選択する。R及びRをそれぞれ好ましくは置換又は未置換のC1−10の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、アルコキシ又はアルキルチオ基又はC〜C10の芳香族基から選択する。R、R、R又はRが置換されている場合、置換物は一又は複数の以下の置換基を含むことができる:ヒドロキシ及びその金属塩;メルカプト及びその金属塩;ハロゲン;アミノ、ニトロ、シアノ及びアミド;エステル、酸及び金属塩を含むカルボキシル;シリル;アクリレート及びその金属塩;スルホニル又はスルホンアミド;及びホスフェート及びホスファイト。Mが金属成分である場合、それは当業者が利用可能ないずれの適切な元素状金属であってもよい。典型的には、金属は遷移金属であることができるが、好ましくはテルル又はセレンである。cis−trans触媒で使用するいくつかの好ましい芳香族成分は以下の式を有している:
【化1】
Figure 0004002398
又は
【化2】
Figure 0004002398
最初の構造式において、所望場合はテルルの代わりにセレンを使用することができる。従って、最も好ましい態様において、R及びRはそれぞれCのアリール基であり、かつMはアゾ基、テルル又はセレンを含む。
【0029】
cis−trans触媒に任意に含めることが可能な付加的な適切な有機硫黄成分は以下を含むがこれに限定されない:4,4'−ジフェニルジスルフィド;4,4'−ジトリルジスルフィド;4,4'−ジフェニルアセチレン;2,2'−ベンズアミドジフェニルジスルフィド;ビス(2−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)ジスルフィド;2,2'−ビス(2−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(2−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,2'−ジアミノ−1,2'−ジチオジナフタレン;2,3'−ジアミノ−1,2'−ジチオジナフタレン;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,3,4,5、6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(2−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ニトロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド;2,2'−ジチオ安息香酸エチル; 2,2'−ジチオ安息香酸メチル;2,2'−ジチオ安息香酸;4,4'−ジチオ安息香酸エチル;ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(2−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ホルミルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド;1,1'−ジナフチルジスルフィド;2,2'−ジナフチルジスルフィド;1,2'−ジナフチルジスルフィド;2,2'−ビス(1−クロロジナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(1−ブロモナフチル)ジスルフィド;1,1'−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド;2,2'−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド;及び類似物;又はこれらの混合物。好ましい有機硫黄成分は、4,4'−ジフェニルジスルフィド、4,4'−ジトリルジスルフィド又は2,2'−ベンズアミドジフェニルジスルフィド又はこれらの混合物である。cis−trans触媒に含まれる場合有機硫黄成分は、反発弾性ポリマーの全成分に基づいて少なくとも約12%、典型的には約32%のtrans−ポリブタジエンアイソマーを含む反応生成物を製造するのに十分な量で好ましくは存在する。適切な金属含有有機硫黄成分は、ジエチルジチオカルバメート、ジアミルジチオカルバメート及びジメチルジチオカルバメートのカドミウム、銅、鉛及びテルル類似体又はこれらの混合物を含むがこれに限定されない。
【0030】
適切な任意の無機スルフィド成分は、チタンスルフィド、マンガンスルフィド、並びに鉄、カルシウム、コバルト、モリブデン、タングステン、銅、セレン、イットリウム、亜鉛、スズ及びビスマスのスルフィド類似体を含むがこれに限定されない。従って、cis−trans触媒にVIA族元素を本明細書で述べた他のcis−trans触媒、例えば芳香族有機化合物、有機硫黄化合物、無機スルフィド化合物又はこれらの組み合わせのいずれかと共に混合することができる。
元素状硫黄及びポリマー硫黄は例えばChardon, OHのElastochem, Inc.から市場を通じて入手可能である。硫黄触媒化合物の例はPB(RMS)-80元素状硫黄及びPB(CRST)-65ポリマー硫黄を含み、これらはいずれもElastochem, Inc.から入手可能である。例示である商品名TELLOYのテルル触媒及び例示である商品名VANDEXのセレン触媒はそれぞれRT Vanderbiltから市場を通して入手可能である。元素状硫黄又はポリマー硫黄成分をcis−trans触媒として選択する場合、cis−trans触媒の作動性を改良しかつ硫黄触媒の所定量に対してtrans−転換を増加させるために促進剤を添加し得ることを理解すべきである。適切な促進剤は以下を含むがこれに限定されない:スルフェンアミド、例えばN−オキシジエチレン2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、チアゾール、例えばベンゾチアジルジスルフィド、ジチオカルバメート、例えばビスマスジメチルジチオカルバメート、チウラム、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド、キサンテート、例えば亜鉛イソプロピルキサンテート、チアジアジン、チオ尿素、例えばトリメチルチオ尿素、グアニジン、例えばN、N'−ジ−オルト−トリルグアニジン又はアルデヒド−アミン、例えばブチルアルデヒド−アニリン縮合生成物、又はこれらの混合物。
【0031】
cis−trans触媒は好ましくは、全反発弾性ポリマー成分の100部に対して約0.01〜25部の量で存在する。より好ましくは、cis−trans触媒は、全反発弾性ポリマー成分の100部に対して約0.01〜1部の量で存在する。最も好ましくは、cis−trans触媒は、全反発弾性ポリマー成分の100部に対して約0.05〜0.5部の量で存在する。cis−trans触媒は典型的には、trans−ポリブタジエンアイソマーの含量を増加させて全反発弾性ポリマー成分に基づいて約5%〜70%のtrans−ポリブタジエンを含むように反応生成物を製造するのに十分な量で存在する。
本明細書で述べるポリブタジエンのtrans−アイソマー含量の測定を、以下のように行うことができかつ行った。キャリブレーション用の標準を、trans−含量が分かっている少なくとも二つのポリブタジエンゴム試料、例えばtrans−ポリブタジエンの割合が高いものと低いものを使用して作成する。これらの試料を単独で使用しかつ、少なくとも約1.5%〜50%のtrans−ポリブタジエン含量の段階ができるような方法で、又は未知の量を含み得られたキャリブレーション曲線が少なくとも13個の等間隔の点を含むような方法で両者を共に混合して使用する。
【0032】
市場から入手可能な光音響(PAS)セルを付したフーリエ変換赤外(Fourier Transform-Infrared(FT-IR))分光計を使用し、以下の機器パラメーターを使用して各標準のPASスペクトルを得た:2.5KHz(0.16cm/秒光学速度)の速度でスキャンし、1.2KHzの電子フィルターを使用し、アンダーサンプリング比(undersampling ratio)を2(資料を集める前のレーザー信号のゼロ交叉の数)とし、感度設定1で375〜4000cm−1の範囲にわたる分解能が1cm−1における最小の128スキャンをコアド(co-add)する。
600〜1100cm−1の間に見られるcis−、trans−、及びビニル−ポリブタジエンのPASスペクトルからのピークを積算することができる。次いで、3個のアイソマーのピークの下の全領域のフラクションとしてのtrans−ポリブタジエンのピークを、現実のtrans−ポリブタジエン含量に対するtrans−ポリブタジエン領域フラクションのキャリブレーション曲線を作成するために決定することができる。得られたキャリブレーション曲線の相関係数(R)は最小値0.95でなければならない。
【0033】
新たに切り出し、離型物等の外来物を含まずかつ汚染されていない表面を含む試料をPASセルに充填することによって、未知のコア材料の対象とする点におけるPASスペクトルが上記のパラメーターを使用して得られる。未知物のtrans−ポリブタジエン領域のフラクションを分析して、キャリブレーション曲線から現実のtrans−アイソマー含量を決定する。製造し試験した製品のいずれの部分においてもtrans−含量が増加している場合に、本明細書では製品全点におけるtrans−ということを理解すべきである。
硫酸バリウムが含まれている環境ではtrans−含量を試験する上記の方法がより正確でないことは知られている。従って、追加的な又は代わりのポリブタジエンのtrans−含量の試験は以下のとおりである。キャリブレーション用の標準を、trans−含量が分かっている少なくとも二つのポリブタジエン(例えばtrans−ポリブタジエンの割合が高いものと低いもの)を使用して作成する。これらの試料を単独で使用しかつ、少なくとも約1.5%〜50%のtrans−ポリブタジエン含量の段階ができるような方法で、又は未知の量を含み得られたキャリブレーション曲線が少なくとも13個の等間隔の点を含むような方法で両者を共に混合して使用する。
【0034】
近赤外レーザーを備えたフーリエ変換ラマン(FT−Raman)分光計を使用して、以下の機器パラメーターを用いて各標準からストークス−ラマンスペクトルを得る:過剰な加熱又は蛍光を発することなく良好な信号対雑音比を得るのに十分なレーザー出力(典型的には約400〜800mWが適切である);2cm−1の分解能;約400〜4000cm−1のラマンシフトスペクトル範囲;少なくとも300スキャンのコアド。
キャリブレーション曲線を上記で生じたデータから、計量化学的アプローチ及びソフトウエア、例えばGalactic Industries Corp., Salem, NHからのPLSplus/IQを使用して構成することができる。SNV(detrend)経路長修正、平均センターデータ作成、及び1600〜1700cm−1のスペクトル範囲わたる5点SG2次デリバティブを使用して得られたPLS−1曲線を使用してこのソフトウェアで受容可能なキャリブレーションを得た。得られたキャリブレーション曲線の相関係数(R)は最小値0.95でなければならない。
未知試料における対象とする点において(例えばゴルフボールの表面又はセンター)、この機器を使用して未知のコア材料のラマンスペクトルを得る。未知物は外来物、例えば離型物等を含んではならない。PLSキャリブレーション曲線を使用して未知物のスペクトルを分析して、未知試料のtrans−ポリブタジエンアイソマー含量を決定する。
【0035】
遊離基源、又は遊離基開始剤ということがある、は本組成物及び方法において必要である。遊離基源は典型的にはペルオキシド、好ましくは有機ペルオキシドである。適切な遊離基源は以下を含む:ジ−t−アミルペルオキシド、ジ(2−t−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド及び類似物及びこれらのいずれかの混合物。ペルオキシドは典型的には、全反発弾性ポリマー成分の100部当たり約0.1部より多い量で、好ましくは反発弾性ポリマー成分の100部当たり約0.1〜15部の量で、より好ましくは反発弾性ポリマー成分の100部当たり約0.2〜5部の量で存在する。当業者には、本発明に従うあるcis−trans触媒は従来の架橋反応に比較して遊離基源の量より多量に、例えば本明細書で記載した量で存在する必要があることを理解するであろう。遊離基源は、この代わりとして又は付加的に一又は複数の電子線、UV又はガンマ放射線、X−線又は遊離基を生じることが可能な他の高エネルギー放射線のいずれかであることができる。遊離基開始剤としてペルオキシドが使用される場合は、熱が遊離基の発生の開始を容易にすることがよくあることもさらに理解されるべきである。
【0036】
反応生成物の硬度を増加させるために架橋剤を含有させる。適切な架橋剤は不飽和脂肪酸又はモノカルボン酸の金属塩、例えばアクリル酸の亜鉛、カルシウム又はマグネシウム塩及び類似物及びこれらの混合物の一又は複数を含む。好ましいアクリレートはアクリル酸亜鉛、ジアクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、及びジメタクリル酸亜鉛及びこれらの混合物を含む。架橋剤は、反発弾性ポリマー成分のポリマー鎖の一部分が架橋するのに十分な量で存在する。例えば、架橋の量を調整することによって所望の圧縮を得ることができる。このことは、例えば、架橋剤の型及び量を変えることにより行うことができ、方法は当業者に周知である。架橋剤は典型的には、反発弾性ポリマー成分の約0.1%より多い量で、好ましくは反発弾性ポリマー成分の約10〜40%の量で、より好ましくは反発弾性ポリマー成分の約10〜30%の量で存在する。cis−trans触媒に有機硫黄が含まれる場合、架橋剤としてジアクリル酸亜鉛を選択することができ、約25phrより少ない量で存在する。
【0037】
ゴルフボールの一又は複数の部分に添加する充填材は典型的には、加工性を目的として又はレオロジー及び混合特性、比重(すなわち密度調整用充填材)、弾性率、引き裂き強度、強化及び類似の性質に影響を与えるために含まれる。充填材は一般的には無機質であり、適切な充填材は多数の金属又は金属酸化物、例えば酸化亜鉛及び酸化スズ、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、クレー、タングステン、炭化タングステン、一連のシリカ、及びこれらの混合物である。充填材は種々の発泡剤又は気泡剤を含むことができ、当業者は直ちにこれを選択することができる。発泡ポリマーブレンドを、セラミック又はガラスの微小球体とポリマー材料とを混合することによって製造することができる。ポリマー、セラミック、金属及びガラスの微小球体は中実又は中空であることができ又充填していてもしていなくてもよい。充填材を典型的にはゴルフボールの一又は複数の部分に添加してその密度を変えて均一なゴルフボールの標準に合わせる。充填材を、センター又は少なくとも一つの専用ボール(例えば低質量ボールはスイング速度が遅いプレーヤーに好まれる)の付加的な層の質量を変化させるために使用する。
【0038】
反発弾性ポリマー成分は一又は複数の付加的なポリマー、例えば熱可塑性コポリエステルブロックコポリマー、動的に加硫した熱可塑性エラストマー、水素添加した又は水素添加していないスチレン−ブタジエンエラストマーであって無水マレイン酸又はスルホン酸のような官能基が結合したもの、熱可塑性ポリウレタン又はメタロセン触媒を使用して製造したポリマー、又はこれらのブレンドも含むことができる。適切な熱可塑性コポリエーテルエステルはHYTREL(登録商標)3078及びHYREL(登録商標)4069を含み、これらはWilmington, DEのE.I.DuPont de Nemors & Co.から市場を通じて入手可能である。適切な動的に加硫した熱可塑性エラストマーはAkron, OHのAdvanced Elastomer Systemsから市場を通じて入手可能なSANTOPRENE(登録商標)を含む。適切な官能化したスチレン−ブタジエンエラストマーはKRATON FG-1901及びFG-1921Xを含み、これらはHouston, TXのShell Corporationから市場を通じて入手可能である。適切な熱可塑性ポリウレタンの例はESTANE(登録商標)58133及びESTANE(登録商標)58144を含み、これらはCleveland, OHのB.F. Goodrich Companyから市場を通して入手可能である。さらに、上記したマンテル層用の材料は発泡ポリマー材料の形態であってもよい。例えば、適切なメタロセンポリマーは、メタロセン単一サイト触媒をベースとするフォームをベースとする熱可塑性エラストマーのフォームを含む。適切な熱可塑性ポリエーテルアミドはPEBAX(登録商標)2533、PEBAX(登録商標)1205及びPEBAX(登録商標)4033を含み、これらはPhiladelphia, PAのElf-Atochemから入手可能である。適切な熱可塑性アイオノマー樹脂はいずれの数のオレフィンをベースとするアイオノマーを含み、SURLYN(登録商標)及びIOTEK(登録商標)を含み、これらはWilmington, DEのE.I.DuPont de Nemors & Co.から、及びIrving,TXのExxon Corporationそれぞれから市場を通じて入手可能である。反発弾性ポリマー成分がポリブタジエンに加えていずれかの付加的なポリマーを含む場合、ポリブタジエンは反発弾性ポリマー成分の少なくとも50phr、好ましくは約90phrより多い量で存在する。
【0039】
本発明に従ってゴルフボールセンター又はコアのいずれかの部分を製造するのに使用する、反発弾性ポリマー成分、付加的なポリマー、遊離基開始剤、充填材及びいずれかの他の材料を組み合わせて、当業者に公知の混合の型によって混合物を製造することができる。適切な混合の型は、シングルパス及びマルチパス混合、及び類似のやり方を含む。ゴルフボールのセンター又は付加的な層の性質を変化させるのに使用する架橋剤及び他のいずれかの任意の添加剤を、同様に混合のいかなる型とも組み合わせることができる。成分を順次添加するシングルパス方法が好ましく、これはこの方の混合が効率を増加させ、方法のコストを減少させるからである。好ましい混合のサイクルは単一工程であり、この方法では、ポリマー、cis−trans触媒、充填材、ジアクリル酸亜鉛、及びペルオキシドを順次添加する。適切な混合装置は当業者に周知であり、これらの装置はバンバリーミキサー、ツーロールミル、又は二軸スクリュー押出機を含むことができる。ポリマーを混合する常用の混合速度を典型的には使用するが、速度は構成物が実質的に均一に分散するのに十分高くなくてはならない。一方、高速で混合すると混合するポリマーが分解する傾向にあり、特に反発弾性ポリマー成分の分子量が望ましくない程度に減少する傾向があるので、速度は速すぎないようにすべきである。従って、速度を高度のせん断を避けるのに十分な程度に低くすべきであり、この高度のせん断によりポリマー成分の高分子量部分が望ましくない程度に失われることとなる。さらに、混合速度が高すぎると架橋を開始するのに十分な熱を生じるという望ましくない結果となる可能性がある。混合温度はポリマー成分の型に依存し、より重要なことは遊離基開始剤の型に依存するということである。例えば、ジ(2−t−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼンを遊離基開始剤として使用する場合、約80℃〜125℃の混合温度、好ましくは約88℃〜110℃、より好ましくは90℃〜100℃が成分を安全に混合するのに適している。さらに、混合温度をペルオキシドの分解温度より低く保つことが重要である。例えば、ジクミルペルオキシドをペルオキシドとして選択する場合、温度は約93℃(200°F)を超えてはならない。適切な混合速度及び温度は当業者によく知られており、試験をしなくても直ちに決定できるものである。
【0040】
本混合物を例えば圧縮成形又は射出成形してセンター用の中実球体又は中間層用の半球形シェルを得ることができる。ポリマー混合物を、該混合物が鋳型中にあるとき熱と圧力をかける成形サイクルを行う。空洞の形は形成するボールの部分に依存する。圧縮と加熱が一又は複数のペルオキシドの分解して遊離基を解放し、これがcis−trans転換及び架橋を同時に開始させる。成形サイクルの温度及び期間をペルオキシドの型及び選択したcis−trans触媒に基づいて選択する。成形サイクルは、固定した期間について単一の温度における混合物を成形する単一工程を有することができる。単一工程の成形サイクルの例は、ジクミルペルオキシドを含む混合物について、ポリマー混合物を171.1℃(340°F)で15分間保持することである。成形サイクルは二段階工程も含むことができ、この方法ではポリマー混合物を鋳型の中で初期期間の間初期温度で保持し、次いで第2の、典型的には第2の期間の間より高い温度に保つ。二段階成形サイクルの例は、鋳型を143.3℃(290°F)で40分間保持し、次いで鋳型を171.1℃(340°F)まで段階的に上げて20分間保持する。本発明の好ましい態様では、単一工程硬化サイクルを採用する。単一工程法は効果的かつ効率的であり、二段階法の時間と費用を減少させる。本発明に従ってゴルフボールセンター又はコアのすべての部分のいずれかを製造するのに使用する反発弾性成分、ポリブタジエン、cis−trans転換触媒、追加的なポリマー、遊離基開始剤、充填材及び他の材料を組み合わせて射出成型法によってゴルフボールを製造することができ、該方法は当業者に周知でもある。硬化時間は選択した種々の材料に依存するが、特に適切な硬化時間は約5〜18分、好ましくは約8〜15分、より好ましくは約10〜12分である。当業者は使用した材料及び本明細書での説明に基づいて、硬化時間を長く又は短く調整することが直ちに可能である。
【0041】
未硬化の反発弾性ポリマー成分より多量のtrans−ポリブタジエンを含む硬化した反発弾性ポリマー成分を、内部のある点で第1の硬度を有し表面が第2の硬度を有する製品に成形し、ここで第2の硬度は第1の硬度の10%より大きく第1の硬度から相違している。好ましくは、製品は球形で点は製品の中心点である。他の態様では、第2の硬度は第1の硬度の20%より大きく第1の硬度から相違している。硬化した製品は、内部の部位において第1の量のtrans−ポリブタジエンを有し、表面の部位において第2の量のtrans−ポリブタジエンを有し、ここで第1の量は第2の量より少なくとも約6%少なく、好ましくは第2の量より少なくとも約10%少なく、より好ましくは第2の量より少なくとも約20%少ない。内部部位は好ましくは中心であり、製品は好ましくは球形である。
本発明に従って製造したゴルフボールのコア、又はコアの部分の圧縮は、好ましくは約50より小さく、より好ましくは約25より小さい。
【0042】
カバーはボールとクラブの境界をなすものである。カバーにとって望ましい性質は多くの中で、良好な成形性、高い耐摩耗性、高い引き裂き強度、高い反発弾性及び良好な離型性である。カバーは典型的には、十分な強度、良好な作動特性及び耐久性を与えるだけの厚さを有している。ゴルフボールのカバーは典型的には少なくとも約0.762mm(0.03インチ)、好ましくは0.762〜3.175mm(0.03〜0.125インチ)、より好ましくは約1.27〜2.54mm(0.05〜0.1インチ)の厚さを有している。ゴルフボールは典型的にはカバーの表面領域の少なくとも約60%のディンプルカバレッジ、好ましくは少なくとも約70%のディンプルカバレッジを有している。
カバーは当業者に公知のすべての適切なカバー又は中間層の材料を有することができ、これには熱可塑性及び熱硬化性材料が含まれるが、好ましくはカバー又は中間層はすべての適切な材料、例えばエチレンと不飽和モノカルボン酸のイオン性コポリマーを含むことができ、該コポリマーをWilmington, DEのE.I.DuPont de Nemours & Co.,の商標SURLYN、又はExxonのIOTEK若しくはESCORとして入手可能である。これらは、エチレンと亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、ニッケル又は類似物の塩で部分的に中和したメタクリル酸若しくはアクリル酸とのコポリマー若しくはターポリマーであり、該塩は2〜8の炭素原子を有するオレフィンと3〜8の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸との反応生成物である。コポリマーのカルボン酸基をすべて又は部分的に中和してもよく、カルボン酸基はメタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸を含むことができる。
【0043】
本ゴルフボールはさらに一又は複数の例えば以下のホモポリマー又はコポリマーカバー材料を含むことができる:
(1) ビニル樹脂、例えば塩化ビニルの重合により又は塩化ビニルと酢酸ビニル、アクリル酸エステル又は塩化ビニリデンとの共重合により製造されたもの;
(2) ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン及びコポリマー、例えばエチレンメタクリレート、エチレンエチルアクリレート、エチレンビニルアセテート、エチレンメタクリル酸又はエチレンアクリル酸又はプロピレンアクリル酸及び単一サイト触媒を使用して製造したコポリマー及びホモポリマー;
(3) ポリウレタン、例えばポリオールとジイソシアナート又はポリイソシアナートから製造したもの及び米国特許第5,334,673号に開示されたもの;
(4) ポリ尿素、例えば米国特許第5,484,870号に開示されたもの;
(5) ポリアミド、例えばポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びジアミンと二塩基酸から製造された他のもの、並びにアミノ酸から製造されたもの、例えばポリ(カプロラクタム)、及びポリアミドとSURLYN、ポリエチレン、エチレンコポリマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、及び類似物とのブレンド;
(6) アクリル系樹脂及びこれらの樹脂とポリ塩化ビニル、エラストマー、及び類似物とのブレンド;
(7) 熱可塑性物、例えばウレタン;オレフィン系熱可塑性ゴム、例えばポリオレフィンとエチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマーとのブレンド;スチレンとブタジエン、イソプレン又はエチレン−ブチレンゴムとのブロックコポリマー;又はコポリ(エーテル−アミド)、例えばPhiladelphia, PAのELF Atochemが市販するPEBAX;
(8) ポリフェニレンオキシド樹脂又はポリフェニレンオキシドと高耐衝撃性ポリスチレン(Pittsfield, MAのGeneral Electric CompanyによりNORYLの商標で市販されている)とのブレンド;
(9) 熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/グリコール変性及びエラストマー(Wilmington, DEのE.I. DuPont de Nemours & Co.によりHYTRELの商標で、及びPittsfield, MAのGeneral Electric ComoanyによりLOMODとして市販されている);
(10) アクリロニトリルブタジエンスチレンを有するポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、スチレン無水マレイン酸、ポリエチレン、エラストマー及び類似物及びアクリロニトリルブタジエンスチレン又はエチレンビニルアセテート又は他のエラストマーを有するポリ塩化ビニルを含むブレンド又はアロイ;及び
(11) 熱可塑性ゴムとポリエチレン、プロピレン、ポリアセタール、ナイロン、ポリエステル、セルロースエステル及び類似物とのブレンド。
【0044】
好ましくは、カバーはポリマー、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1又はヘキセン−1をベースとするホモポリマー又はコポリマーを含み、これらは官能性モノマー、例えばアクリル酸及びメタクリル酸及び完全に又は部分的に中和されたアイオノマー樹脂及びそのブレンド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルホモポリマー及びコポリマー、イミド化したアミノ基を含むポリマー、ポリカーボネート、強化ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、高耐衝撃性ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルフィド)、アクリロニトリル−ブタジエン、アクリル−スチレン−アクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン)及び官能性コモノマーを含むそのコポリマー、及びこれらのブレンドを含む。適切なカバー組成物は、ポリエーテル又はポリエステル熱可塑性ウレタン、熱硬化性ポリウレタン、低弾性率アイオノマー、例えば酸を含むエチレンコポリマーアイオノマー、E/X/Yを含むターポリマー(Eはエチレン、Xはアクリレート又はメタクリレートをベースとする柔軟化コモノマーで約0〜50質量%存在し、Yはアクリル酸又はメタクリル酸で約5〜35質量%存在する)も含む。より好ましくは、飛距離を最大に設計した低回転速度の態様では、アクリル酸又はメタクリル酸は約15〜35質量%存在し、アイオノマーを高弾性率アイオノマーにしている。高回転の態様では、カバーは、酸が約10〜15質量%存在しかつ柔軟化コモノマーを含むアイオノマーを含む。
【0045】
本明細書で述べたように、カバーも本発明から製造することができる。
所望の性質に依存して、本発明に従って製造したボールは、従来のボールと比較すると、圧縮又は弾性率を減少させた、実質的に同等又は高い反発弾性、反発係数(CoR)を示すことができる。従って、本発明に従って製造したボールは又、従来のボールと比較すると、圧縮を増加させることなく、実質的に高い反発弾性又は反発係数(CoR)も示すことができる。反発弾性の他の指標は“誘電正接”又は“tanδ”であり、これは対象の動的こわさを測定して得られる。このような動的特性に関するロスタンジェント及び用語は典型的にはASTM D4092−90に従って記載されている。従って、低いロスタンジェントは高い反発弾性を示し、これによって高い跳ね返り能力を示している。低いロスタンジェントは、クラブからゴルフボールに与えられたエネルギーの多くが動的エネルギー、すなわち発射速度及びその結果としての飛距離に転換されることを示している。ゴルフボールの剛性又は圧縮こわさを例えば動的こわさで測定することができる。高い動的こわさは高い圧縮こわさを示す。所望の圧縮こわさを有するゴルフボールを製造するためには、架橋した反応生成物材料の動的こわさを−50℃で約50,000N/mより低くすべきである。好ましくは動的こわさを−50℃で約10,000〜40,000N/m、より好ましくは動的こわさを−50℃で約20,000〜30,000N/mとすべきである。
【0046】
動的こわさはいくつかの点で動的弾性率に類似している。動的こわさは本明細書で記載したようにプローブの幾何学に依存しているが、ところが動的弾性率は幾何学に依存しない特異的な材料の性質である。動的こわさの測定は、動的弾性率の定量的測定及び試料製品の特定の点におけるロスタンジェントの正確な測定を可能にするという特異的な性質を有している。本発明の場合、製品はゴルフボールである。ポリブタジエン反応生成物は好ましくは、−50℃で約0.1より低いロスタンジェントを有し、より好ましくは−50℃で約0.07より低いロスタンジェントを有する。
得られたゴルフボールの反発係数は、典型的には約0.7より大きく、好ましくは約0.75より大きく、より好ましくは約0.78より大きい。ゴルフボールのAtti圧縮(従来PGA圧縮といわれていた)も典型的には少なくとも約40、好ましくは約50〜120、より好ましくは約60〜100である。本発明のゴルフボールポリブタジエン材料の曲げ弾性率は、典型的には約3.45MPa(500psi)〜2068MPa(300,000psi)、好ましくは約13.79〜1379MPa(2000〜200,000psi)である。ゴルフボールポリブタジエン材料の硬度は、典型的には少なくとも約15ショアA硬度であり、好ましくは約30ショアA硬度〜80ショアD硬度、より好ましくは約50ショアA硬度〜60ショアD硬度である。ゴルフボールポリブタジエン材料の比重は、典型的には0.7より大きく、好ましくは約1より大きい。ゴルフボールポリブタジエン材料の約23℃におけるせん断貯蔵弾性率又は貯蔵弾性率は、典型的には少なくとも約10,000dyn/cm,好ましくは約10〜1010dyn/cm、より好ましくは約10〜1010dyn/cmである。
【0047】
ゴルフボールの部分を成形する方法及び組成物により典型的には結果として材料の性質が傾斜状になる。先行技術で使用する方法は一般にこの傾斜を定量するのに硬度を使用する。硬度は静的弾性率の定量的尺度であり、ゴルフボールの使用に伴う変形時、すなわちクラブによる打撃時における材料の弾性率を表すものではない。ポリマー科学の当業者に周知のように、時間−温度重なり原理を他の変形速度を模倣するために使用することができる。ポリブタジエンを含むゴルフボール部分では、0℃〜−50℃の温度で1−Hzの振動がゴルフボールの打撃速度に性質的に等価であると考えられている。従って、0℃〜−50℃におけるロスタンジェントと動的こわさの測定は、ゴルフボールの作動性を予測するのに使用することができる。一つの好ましい態様では、これらの測定を−20℃〜−50℃で行うことができる。
さらに、本発明に従って製造したゴルフボールで使用する加硫していないゴム、例えばポリブタジエンのムーニー粘度は、典型的には約20より大きく、好ましくは約30より大きく、より好ましくは約40より大きい。
【0048】
本発明に従ってゴルフボールを製造する場合、ゴルフボールのディンプルカバレッジは、典型的には約60%より大きく、好ましくは約65%より大きく、より好ましくは約70%より大きい。ASTM方法D−790で測定したゴルフボールのカバーの曲げ弾性率は、典型的には約3.45MPa(500psi)より大きく、好ましくは約3.45MPa(500psi)〜1034MPa(150,000psi)である。カバーの硬度は、典型的には約35〜80ショアD硬度、好ましくは約40〜78ショアD硬度、より好ましくは約45〜75ショアD硬度である。
図1を参照すると、本発明のゴルフボール10はコア12及びコア12を取り囲むカバー16を含むことができる。図2を参照すると、本発明のゴルフボール20はセンター22、カバー26及びカバーとセンターの間に配設した少なくとも一つの中間層24を含むことができる。カバーとセンターのそれぞれは一つより多い層を含むことができ、すなわちゴルフボールは従来のスリーピース糸巻きボール、ツーピースボール、多層コア又は一若しくは複数の中間層を有するボール等であってもよい。従って、図3を参照すると、本発明のゴルフボール30はセンター32、カバー38及びカバーとセンターの間に配設した中間層34及び36を含むことができる。図3は二つの中間層しか示していないが、上記したようにどのような数又は型の中間層も使用可能であることは理解されるであろう。
【0049】
【実施例】
表1に、cis−ポリブタジエンアイソマーの部分をtrans−アイソマーに転換することができた種々の金属スルフィドcis−trans触媒を示す。CARIFLEX BR-1220ポリブタジエン(100phr)を酸化亜鉛(5phr)、ジクミルペルオキシド(3phr、遊離基開始剤)及びジアクリル酸亜鉛(25phr)と反応させて、本発明で記載した反応生成物を製造した。
trans−アイソマーの転換率は、2phrより下から5phrを越える範囲の量で存在する種々の触媒について、6%より下から16%を越える範囲までである。表は、多くの異なるcis−trans触媒が種々の濃度でtrans−ポリブタジエン含量を増加させるという有効性を明確に示している。
【表1】
Figure 0004002398
【0050】
実施例1:有機硫黄 cis trans 触媒を使用し本発明に従って製造したコア
有機硫黄化合物をcis−trans転換触媒として使用して、本願発明に従うコアを製造した。得られたコアの性質は、従来技術で構成した例のコアと比較して、本発明に従って製造したゴルフボールコアの利点を明確に示す。成分及び物理的性質を表2に示す。
本発明に従って製造したコアの圧縮負荷は、米国特許第5,697,856号、米国特許第5,252,652号及び米国特許第4,692,497号に従って構成したコアの圧縮負荷の約半分であり、一方同時にほぼ同一の、場合によりさらに高いCoR(反発弾性)を維持している。本発明に従って製造したコアは低い圧縮負荷を有する(柔らかい)が、反発弾性がある(早い)。圧縮負荷は、米国特許第3,239,228号に従って構成したコアの負荷より大きいが、顕著に高いCoRを有している。米国特許第3,239,228号のコアは非常に柔らかくかつ非常に遅い(非常に低いCoR)。
0℃〜−50℃での動的こわさの割合変化も、コアの端部とセンターの両者で測定した。本発明のコアの端部とセンターの両者における動的こわさは、試験した温度範囲にわたってほんのわずか、20%より少なく変動した。同一の温度範囲において、米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは230%を越えて変動し、他の従来技術に従って製造したコアの動的こわさは130%より大きく、典型的には150%まで変動した。
【0051】
trans−傾斜が計算できるように、本発明に従って製造したコアのセンターと端部の両者においてtrans−転換の割合も測定し、上記の同じ4特許に開示されたようにして製造したコアについても測定した。本発明に従うコアは、端部からセンターへ約32%のtrans−傾斜を有していた。本発明に従って製造したコアについて、硬化前及び硬化後のtrans−割合を測定して本方法の有効性を確認した。ポリブタジエンがtrans−アイソマーへ転換した割合は、センターにおけるほぼ40%から端部における55%を越えるまでの範囲であった。従来技術、米国特許第3,239,228号及び米国特許第4,692,497号に従って製造した二つのコアのtrans−傾斜はゼロであった。米国特許第5,697,856号に従って製造した第三のコアはわずかなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまで18%より低かった。米国特許第5,252,652号に従って製造した第四のコアは非常に大きなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまでほぼ65%であった。
【0052】
実施例2:無機スルフィド cis trans 触媒を使用し本発明に従って製造したコア 無機スルフィド化合物をcis−trans転換触媒として使用して本発明に従うコアを製造した。得られたコアの性質は、従来技術で構成した例のコアと比較して、本発明に従って製造したゴルフボールコアの利点を明確に示す。成分及び物理的性質を表2に示す。
圧縮負荷は、米国特許第5,697,856号、米国特許第5,252,652号及び米国特許第4,692,497号に従って構成した三つのコアの圧縮負荷の約半分であり、一方同時にほぼ同一の、場合によりさらに高いCoR(反発弾性)を維持している。本発明に従って製造したコアは柔らかいが、反発弾性がある(早い)。圧縮負荷は、米国特許第3,239,228号に従って構成したコアの負荷より大きいが、顕著に高いCoRを有している。米国特許第3,239,228号のコアは非常に柔らかくかつ非常に遅い(低いCoR)。
【0053】
0℃〜−50℃での動的こわさの割合変化も、コアの端部とセンターの両者で測定した。本発明のコアの端部とセンターの両者における動的こわさは、試験した温度範囲にわたってほんのわずか、125%より少なく変動した。同一の温度範囲において、米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは230%を越えて変動し、他の従来技術に従って製造したコアの動的こわさは130%より大きく、典型的には150%まで変動した。
trans−傾斜が計算できるように、本発明に従って製造したコアのセンターと端部の両者においてtrans−転換の割合も測定し、上記の同じ4特許に開示されたようにして製造したコアについても測定した。本発明に従うコアは、端部からセンターへ約45%のtrans−傾斜を有していた。米国特許第3,239,228号及び米国特許第4,692,497号に従って製造した二つのコアのtrans−傾斜はゼロであった。米国特許第5,697,856号に従って製造した第三のコアはわずかなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまで18%より低かった。米国特許第5,252,652号に従って製造した第四のコアは非常に大きなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまでほぼ65%であった。
【0054】
実施例3:有機硫黄と無機スルフィドのブレンド cis trans 触媒を使用し本発明に従って製造したコア
有機硫黄と無機スルフィド化合物のブレンドをcis−trans転換触媒として使用して本発明に従うコアを製造した。得られたコアの性質は、従来技術で構成した例のコアと比較して、本発明に従って製造したゴルフボールコアの利点を明確に示す。成分及び物理的性質を表2に示す。
圧縮負荷は、米国特許第5,697,856号、米国特許第5,252,652号及び米国特許第4,692,497号に従って構成した三つのコアの圧縮負荷の約半分であり、一方同時にほぼ同一の、場合によりさらに高いCoR(反発弾性)を維持している。本発明に従って製造したコアは柔らかいが、反発弾性がある(早い)。本発明の圧縮負荷は、米国特許第3,239,228号に従って構成した第四のコアの負荷より大きいが、顕著に高いCoRを有している。米国特許第3,239,228号に従って構成したコアは非常に柔らかくかつ非常に遅い(低いCoR)。
【0055】
0℃〜−50℃での動的こわさの割合変化も、コアの端部とセンターの両者で測定した。本発明のコアの端部とセンターの両者における動的こわさは、試験した温度範囲にわたってほんのわずか、121%より少なく変動した。同一の温度範囲において、米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは230%を越えて変動し、他の従来技術に従って製造したコアの動的こわさは130%より大きく、典型的には150%まで変動した。
trans−傾斜が計算できるように、本発明に従って製造したコアのセンターと端部の両者においてtrans−転換の割合も測定し、上記の同じ4特許に開示されたようにして製造したコアについても測定した。本発明に従うコアは、端部からセンターへ約44%のtrans−傾斜を有していた。本発明に従って製造したコアについて、硬化前及び硬化後のtrans−割合も測定して、本方法の有効性を確認した。ポリブタジエンがtrans−アイソマーへ転換した割合は、センターにおけるほぼ26%から端部における45%を越えるまでの範囲であった。米国特許第3,239,228号及び米国特許第4,692,497号に従って製造した二つのコアのtrans−傾斜はゼロであった。米国特許第5,697,856号に従って製造した第三のコアはわずかなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまで18%より低かった。米国特許第5,252,652号に従って製造した第四のコアは非常に大きなtrans−傾斜を有し、端部からセンターまでほぼ65%であった。
【0056】
【表2】
Figure 0004002398
【0057】
【表3】
表2の続き
Figure 0004002398
【0058】
実施例4:従来の二重コアボールと本発明に従って製造した二重コアボールの比較
中実のセンター、中実のセンターを取り巻く中間層及び中間層の回りに同心状に配設したカバーを有する本発明に従う二重コアゴルフボールを製造した。成分と物理的性質を表3に示す。
本発明のゴール及び従来技術のボールのために中実のセンターを構成した。両者のセンターを、出発材料としてCARIFLEX BR1220ポリブタジエンから製造し、VAROX 802-40KE-HPペルオキシド(従来技術)を本発明ではDTDScis−trans触媒とジクミルペルオキシドで置き換えた点だけが異なる。この置き換えにより、ポリブタジエン材料の部分が成形中にtrans−構造に変換されることが可能となる。得られた中実のセンターは約2.92cm(1.15インチ)の外部直径を有する。これで製造されたポリブタジエン反応生成物は、従来技術のボールが1.5%のtrans−アイソマー含量であるのと比較して40%のtrans−アイソマー含量を有していた。約4.01cm(1.58インチ)の外部直径を有する同一の中間層を各中実のセンターの回りに構成してコアを製造した。
【0059】
二つのコアの圧縮値とCoR値を測定した。本発明に従って製造したコアの圧縮を測定したところ77であり、従来のボールのコアの圧縮を測定したところ78であった。CoRの測定値は、従来のセンターが0.774であり、本発明のコアが0.789であった。従って、本発明により、従来技術で構成されたセンターと比較して同様の圧縮においてより高い反発弾性を有するセンター及びコアが得られた。
同一のカバーを両方のセンターに加えて再度圧縮とCoRの値を測定した。両者のボールの圧縮を測定したところ89であり、従来のボールと本発明のボールのCoR値はそれぞれ0.791と0.802であった。本発明により、従来技術で構成したボールと比較して、圧縮が同じでより高い反発弾性(CoR)を有するボールが得られた。
【0060】
表3(1)
Figure 0004002398
【0061】
実施例5:従来の二重カバーボールと本発明に従って製造した二重カバーボールの比較
中実のセンター、中実のセンターを取り巻く内部カバー及び内部カバーの回りに同心状に配設したカバーを有する本発明に従う二重カバーゴルフボールを製造した。成分と物理的性質を表3に示す。
本発明のボール及び従来技術のボールのために中実のセンターを構成した。両者のセンターを、出発材料としてCARIFLEX BR1220ポリブタジエンから製造し、一対のペルオキシド、VAROX 231 XL及びDBDB-60(従来技術)を本発明ではDTDScis−trans触媒とジクミルペルオキシドで置き換えてcis−trans転換反応を容易にした点だけが異なる。得られた中実のセンターは約3.53cm(1.39インチ)の外部直径を有する。本発明のポリブタジエン反応生成物は、従来技術のセンターが1.5%のtrans−アイソマー含量であるのと比較して55%のtrans−アイソマー含量を有していた。約3.84cm(1.51インチ)の外部直径を有する同一の内部カバーを中実のセンターの回りに構成した。
同一のカバーを両方のセンターに加えて圧縮とCoRの値を測定した。両者のボールの圧縮を測定したところ、本発明のボールが70であったのに比較して従来のボールは89であった。CoR値は両者とも0.793であった。本発明により、従来技術で構成したボールと比較して、反発弾性(CoR)が同じで圧縮が顕著に低いボールが得られた。
【0062】
表3(2)
Figure 0004002398
【0063】
実施例6:従来の中実コアボールと本発明に従って製造した中実コアボールの比較
本発明のボール及び従来技術のボールのために中実のコアを構成した。成分と物理的性質を表3に示す。
両者のコアを、出発材料としてCARIFLEX BR1220ポリブタジエンから製造した。一方のコアはVAROX 231 XL及びDBDB-60(従来技術)を含み、他方のコアは本発明のDTDScis−trans触媒とジクミルペルオキシドを含む。得られた中実のコアは約4.01cm(1.58インチ)の外部直径を有する。本発明のポリブタジエン反応生成物は、従来技術のコアが1.5%のtrans−アイソマー含量であるのと比較して45%のtrans−アイソマー含量を有していた。
同一のカバーを両方のコアに加えて圧縮とCoRの値を測定した。本発明のボールの測定値が48であったのに比較して、従来のボールの圧縮を測定すると91であった。CoR値は両者とも0.791であった。本発明により、従来技術で構成したボールと比較して、反発弾性(CoR)が同じで圧縮が顕著に低いボールが得られた。
【0064】
表3(3)
Figure 0004002398
【0065】
実施例7〜10:従来のゴルフボールと本発明に従って製造したゴルフボールの比較
本発明に従うポリブタジエン反応生成物を以下の配合に従って製造した:
Figure 0004002398
a ジ−(2−t−ブチルイソプロピルペルオキシ)−ベンゼンペルオキシド Norwalk, CTのR.T. Vanderbiltから市場を通じて入手可能。
b 実施例7のコアは硬すぎて反発係数の試験中に割れた。
【0066】
これらの成分を混合し成形して、ある割合のcis−構造をtrans−構造に変換し、ゴルフボールのコアと同じ大きさの中実の球体とした。それぞれ4.0132cm(1.580インチ)の直径を有するこれらのコアの圧縮と反発係数を測定した。硫黄触媒が存在しない実施例7〜9で転換が起こらないのに比較して、本発明に従って硫黄のcis−trans触媒が存在する場合は、実施例9〜10がcis−ポリブタジエンからtrans−ポリブタジエンへの顕著な転換を示している。さらに、実施例9〜10は、圧縮が顕著に変化することなく反発係数が改良されたことを示しており、このことは本発明に従う反応生成物を含むゴルフボールによって達成できる。
本明細書に開示した特定の態様は本発明のいくつかの観点を説明するためのものであるから、本明細書に記載されクレームされた発明は、これらの態様によって範囲が制限されるものではない。均等な態様は本発明の範囲内であることを意図している。実際、本明細書に示しかつ記載したものに加えて本発明の種々の変形は、当業者にとって先の記載から明らかであろう。このような変形も付記したクレーの範囲内のものであるという意図である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明に従うカバーとコアを有するツーピースゴルフボールの断面図である。
【図2】は、本発明に従うカバーとセンターの間に中間層を有するゴルフボールの断面図である。
【図3】は、本発明に従うカバーとセンターの間に一以上の中間層を有するゴルフボールの断面図である。

Claims (19)

  1. 一定量のポリブタジエン、遊離基源及び少なくとも一つの芳香族成分を含むcis−trans触媒の転換反応から製造した材料を含むゴルフボールであって、以下を含むポリブタジエン反応生成物を形成するのに十分な温度で該反応が起こる、ゴルフボール:
    転換反応の前に存在するtrans−ポリブタジエンの量より多くの量のtrans−ポリブタジエン;及び
    少なくとも一つの芳香族成分を含むcis−trans触媒、ここで該芳香族成分は式(R1)x−R3−M−R4−(R2)yを含み、式中R1及びR2はそれぞれ水素又は置換若しくは未置換のC1-20の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、又はアルコキシ基又は単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基であり;x及びyはそれぞれ0から5の整数であり;R3及びR4をそれぞれ単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基から選択し;かつMはアゾ基又は金属成分を含む。
  2. 60%より大きいディンプルカバレッジ、35〜80のショアDの硬度又は3.45MPa(500psi)より大きい曲げ弾性率の少なくとも一つを有するカバーをゴルフボールが有し、該ゴルフボールが50〜120の圧縮又は0.7より大きい反発係数の少なくとも一つを有する、請求項1のゴルフボール。
  3. 反応生成物が0℃で測定した第2の動的こわさの130%より小さい−50℃で測定した第1の動的こわさを有する、請求項1のゴルフボール。
  4. 第1の量のtrans−ポリブタジエンを有する中心と第2の量のtrans−ポリブタジエンを有する表面とを有するゴルフボールコアの部分を反応生成物が含み、第1の量が第2の量より少なくとも6%少ない、請求項1のゴルフボール。
  5. Mがテルル又はセレンの少なくとも一つを含む、請求項1のゴルフボール。
  6. 3及びR4をそれぞれC6〜C10の芳香族基から選択しかつR1及びR2をそれぞれ置換若しくは未置換のC1-10の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、又はアルコキシ基又はC6〜C10の芳香族基から選択する、請求項1のゴルフボール。
  7. cis−trans触媒がポリブタジエン100部当たり0.1〜25部の量で存在する、請求項6のゴルフボール。
  8. cis−trans触媒が無機硫黄化合物、有機硫黄化合物、芳香族有機金属化合物、金属−有機硫黄化合物、VIA族成分、又は芳香族有機化合物の少なくとも一つをさらに含む、請求項1のゴルフボール。
  9. さらに加硫促進剤を含む、請求項8のゴルフボール。
  10. 加硫促進剤が0.05phr〜2phrの量で存在する、請求項9のゴルフボール。
  11. ゴルフボールがコア及びコアの回りに同心状に配設したカバーを含み、かつ少なくともコアの一部に反応生成物が配置されている、請求項1のゴルフボール。
  12. 以下の工程を含むゴルフボールの製造方法:
    (a)少なくとも一つの式(R1)x−R3−M−R4−(R2)yを有する芳香族成分を含むcis−trans触媒;(b)遊離基源;及び(c)全ポリマー成分の70%より多い量で存在するcis−ポリブタジエン成分を含む第1の反発弾性ポリマー成分を組み合わせる工程;
    少なくとも一部分のcis−ポリブタジエン成分をtrans−ポリブタジエン成分に転換するのに十分な温度で、5〜18分、第1の反発弾性ポリマー成分の一部分を第2の反発弾性ポリマー成分に転換する工程、この工程において、第2の反発弾性ポリマー成分におけるポリブタジエンの少なくとも10%はtrans−ポリブタジエンでありビニル−ポリブタジエンは7%より少ない;及び
    第2の反発弾性ポリマー成分をゴルフボールの少なくとも一部分へ形成する工程、式中R1及びR2はそれぞれ水素又は置換若しくは未置換のC1-20の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、又はアルコキシ基又は単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基であり;x及びyはそれぞれ0から5の整数であり;R3及びR4をそれぞれ単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基から選択し;かつMはアゾ基又は金属成分を含む。
  13. 第2の反発弾性ポリマー成分を中実の球体に形成する、請求項12の方法。
  14. 形成が、第1の量のtrans−ポリブタジエンを有する中心と第2の量のtrans−ポリブタジエンを有する表面とを有する球体であって、第1の量が第2の量より少なくとも6%少ないものを形成することを含む、請求項12の方法。
  15. Mがテルル又はセレンの少なくとも一つを含む、請求項12の方法
  16. cis−trans触媒が全反発弾性ポリマー成分100部当たり0.1〜25部の量で存在する、請求項12の方法。
  17. cis−trans触媒を、少なくとも一つの無機スルフィド、有機硫黄化合物、芳香族有機金属化合物、金属−有機硫黄化合物、VIA族の成分、又は芳香族有機化合物をさらに含むように選択する、請求項12の方法。
  18. 形成が以下の工程を含む、請求項12の方法:
    5〜18分で、第1の反発弾性ポリマー成分を単一工程で圧縮成形して第1の反発弾性ポリマー成分を第2の反発弾性ポリマーに転換する工程;及び
    第2の反発弾性ポリマー成分を中実の球体に形成する工程。
  19. 十分量のポリブタジエン、遊離基源及び少なくとも一つの式(R1)x−R3−M−R4−(R2)yを有する芳香族成分を含むcis−trans触媒の転換反応から製造した材料を含むゴルフボールであって、以下を含むポリブタジエン反応生成物を形成するのに十分な温度で該反応が起こる、ゴルフボール:
    転換反応の前に存在するtrans−ポリブタジエンの量より多くの量のtrans−ポリブタジエン;及び
    少なくとも一つの芳香族成分を含むcis−trans触媒、ここで反応生成物は第1の硬度を有する中心と第2の硬度を有する表面を有する球体含み、第2の硬度は第1の硬度の10%より大きく第1の硬度と相違しており、式中R1及びR2は水素又は置換若しくは未置換のC1-20の直鎖の、分岐した若しくは環状のアルキル、又はアルコキシ基又は単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基であり;x及びyはそれぞれ0から5の整数であり;R3及びR4をそれぞれ単環式、多環式若しくは縮合環式C6〜C24の芳香族基から選択し;かつMはアゾ基又は金属成分を含む。
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